以下に添付図面を参照して、本発明に係る配管溶接部のバックシールド装置及び方法並びにシールガス管用支持部材の好適な実施例を詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではなく、また、実施例が複数ある場合には、各実施例を組み合わせて構成するものも含むものである。
図1は、本発明の実施例1に係る配管溶接部のバックシールド装置を表す概略図、図2から図4は、実施例1の配管溶接部のバックシールド方法を表す概略図、図5は、折畳み状態にあるシールガス管用支持部材を表す概略図、図6は、拡大状態にあるシールガス管用支持部材を表す概略図、図7は、シールガス管用支持部材の挿入方法を表す概略図、図8及び図9は、シールガス管用支持部材の抜き出し状態を表す概略図である。
実施例1の配管溶接部のバックシールド装置は、図1に示すように、配管101に対して劣化した配管部102(図2参照)を新しい配管部103に交換するとき、配管101の切断部と配管部103とを突合せ溶接するが、このとき、溶接部104,105の管内面が大気に触れて酸化しないように、配管101内にシールドガスを供給して空気と置換し、管内面に滑らかな溶融金属が得られるようにするものである。この場合、配管101は、開閉弁106が設けられると共に、この開閉弁106の近傍に計測器107(図2参照)を装着するための開口部108が設けられている。
この配管溶接部のバックシールド装置は、シールガス管11と、シール部材12と、2つのシールガス管用支持部材13,14とを有している。
シールガス管11は、フレキシブルチューブにより構成され、所定の長さを有し、基端部にシールガス供給源21が連結されると共に、開閉弁22が装着されている。この場合、シールガスは、アルゴンガスや窒素ガスなどの不活性ガスが好ましい。また、シールガス管11は、先端部にシール部材12が連結されている。このシール部材12は、中空膨張部材であって、例えば、ビニール製の袋やゴム製の風船などであり、連結部31にシールガス管11が連結されると共に、この連結部31の近傍にガス吐出部32が形成されている。即ち、シール部材12は、同じ側、つまり、密閉空間Aを形成する側に連結部31とガス吐出部32が設けられている。
従って、配管101の開閉弁106を閉止し、シールガス管11と共にシールガス管11の先端部に装着されたシール部材12を開口部108から配管101内に挿入し、このシール部材12を溶接部104,105の通過位置に配置した後、開閉弁22を開放し、シールガス供給源21のシールガスをシールガス管11からシール部材12に供給する。すると、シール部材12が膨張して配管101の内面に密着することで、開閉弁106とシール部材12との間に密閉空間Aを形成することができる。
また、このとき、シールガス管11からシール部材12に供給されたシールガスは、ガス吐出部32から密閉空間Aに供給させることで、この密閉空間A内にシールガスを充満させ、密閉空間Aの空気をシールガスに置換することができる。
シールガス管用支持部材13,14は、配管101内でシールガス管11を上方位置、つまり、配管101の内面に接触しない位置に支持することができるものである。このシールガス管用支持部材13,14は、シールガス管11に先端部側で、シール部材12に近接して基端部側に装着されており、必要に応じてシールガス管11に長手方向に沿って移動自在となっている。この場合、シールガス管用支持部材13,14は、耐熱性を有する材料により形成することが望ましく、また、耐熱性を有するテープを貼ったり、耐熱性を有する塗料を塗布したりして保護するようにしてもよい。
以下、このシールガス管用支持部材13,14を詳細に説明するが、両者はほぼ同様の構成をなしていることから、シールガス管用支持部材13についてのみ詳細に説明する。
シールガス管用支持部材13は、図5及び図6に示すように、第1嵌合部41と、第2嵌合部42と、第1、第2嵌合部41,42同士を連結する3個以上(本実施例では、4個)の拡縮部材43とから構成されている。
第1嵌合部41と第2嵌合部42は、ほぼ同様の構成をなし、内径がシールガス管11の外径より若干大きく設定され、シールガス管11の外側に嵌合して長手方向に移動可能となっている。拡縮部材43は、長手方向における中間部に形成された屈曲部44を支点として外側に折曲可能であって、縮径した折畳み状態と拡径した拡大状態との変位可能となっている。
本実施例にて、このシールガス管用支持部材13は、所定長さのフレキシブルチューブにおける中間部に長手方向に沿った切断部Cが周方向に4個形成されることで、第1嵌合部41と、4個の拡縮部材43、第2嵌合部42が形成される。そして、このシールガス管用支持部材13は、各拡縮部材43が屈曲部44を支点として外側に折曲した拡大状態に維持可能となっている。
即ち、シールガス管用支持部材13は、図5に示すように、各拡縮部材43が直線状をなしてシールガス管11の外周面に密着した折畳み位置(折畳み状態)に移動可能であると共に、図6に示すように、各拡縮部材43が外側に折曲した拡大位置(拡大状態)に移動可能である。そして、このシールガス管用支持部材13は、屈曲部44が形成されることで、自身の弾性力により外側に折曲した拡大位置側に戻りやすくなっている。
また、シールガス管用支持部材13は、図5及び図6に示すように、使用時に、一端部、つまり、第2嵌合部42がシールガス管11に固定部材(例えば、耐熱性テープなど)45により固定され、他端部、つまり、第1嵌合部41が長手方向に沿って移動自在に装着されており、この第1嵌合部41がシールガス管11の外側を長手方向に移動することで、折畳み位置(折畳み状態)と拡大位置(拡大状態)とに変位可能となっている。
従って、図1に示すように、シールガス管11と共にシールガス管11の先端部側に装着された折畳み状態にあるシールガス管用支持部材13,14を開口部108から配管101内に挿入すると、このシールガス管用支持部材13,14は、開口部108を通過した後に拡大位置側に戻り、シールガス管用支持部材13,14を溶接部104,105の近傍位置、つまり、溶接部104(または、溶接部105)の前後に配置することで、シールガス管用支持部材13,14によりシールガス管11を配管101の内面から離れた位置に支持することができる。
なお、上述したシールガス管用支持部材13,14にて、第1嵌合部41と第2嵌合部42との間に引張ばねを介装することで、このシールガス管用支持部材13が拡大位置側に付勢支持するようにしてもよい。
ここで、上述した配管溶接部のバックシールド装置を用いた実施例1の配管溶接部のバックシールド方法について説明する。
実施例1の配管溶接部のバックシールド方法は、配管101の切断部111,112に溶接する配管部101を配置する工程と、シールガス管11とその先端部に装着されたシール部材12と複数のシールガス管用支持部材13,14を配管101内及び配管部103内に挿入する工程と、シール部材12を配管101内に配置する工程と、複数のシールガス管用支持部材13,14を拡大状態として溶接部104,105の両側に配置する工程と、シールガス管11からシール部材12にシールガスを供給して膨張させることで配管101内における所定の領域を密閉して密閉空間Aを形成する工程と、この密閉空間Aにシールガスを供給して空気と置換する工程と、を有している。
また、実施例1の配管溶接部のバックシールド方法は、溶接部104,105の溶接作業の終了後に、シールガス管11からのシールガスの供給を停止し、シール部材12及び複数のシールガス管用支持部材13,14を配管101の開口部108から抜き出すようにしている。
即ち、図2に示すように、配管101に対する定期検査により劣化部(薄肉部など)が検出されると、この劣化部に対応した所定長さの配管部102を除去して新しい配管部103に交換する必要がある。この場合、まず、配管101にて、劣化部を有する所定長さの配管部102に対してその前後に位置する開閉弁106を閉止し、内部に流れる流体を除去すると共に、計測器107を取外す。そして、図3に示すように、配管101を切断部111,112で切断することで、配管部102を除去する。
次に、図4に示すように、交換する新しい配管部103を用意し、配管101における配管部102が除去された近傍に配置する。一方、一端部にシールガス供給源21及び開閉弁22が連結されたシールガス管11を用意し、このシールガス管101の先端部側にシール部材12と2つのシールガス管用支持部材13,14を装着する。この場合、交換する新しい配管部103の長さに合わせて、シール部材12に対する各シールガス管用支持部材13,14の位置を位置決めし、図5及び図6に示すように、シールガス管用支持部材13,14における第2嵌合部42を固定部材45によりシールガス管11に固定しておく。
シールガス管11と共にこのシールガス管11の先端部に装着されたシール部材12及びシールガス管用支持部材13,14を配管101の開口部108から配管101内に挿入する。このとき、図7に示すように、シールガス管用支持部材13(14)を折畳み状態として開口部108から配管101内に挿入する。そして、作業者は、シールガス管用支持部材13(14)を開口部108から配管101内に挿入した後、拡大状態として自立させる。
そして、シールガス管11を介してシール部材12とシールガス管用支持部材13,14を配管101内の所定の位置に配置する。このとき、図4に示すように、交換する新しい配管部103が配管101における配管部102が除去された近傍に配置されていることから、作業者は、手作業により、シール部材12を溶接部104,105を通過した位置に配置し、シールガス管用支持部材13,14を拡大状態として溶接部104の前後位置、つまり、溶接部104の両側に配置する。
その後、図1に示すように、交換する新しい配管部103を配管101における配管部102が除去された位置に配置し、配管101を切断部111,112に配管部103の接合部113,114を対接させる。ここで、シールガス管11の位置を調整した後、開口部108にシール部材109を装着する。
ここで、作業者は、開閉弁22を開放し、シールガス供給源21のシールガスをシールガス管11からシール部材12に供給する。すると、シール部材12は、内部にシールガスが充填されて膨張し、配管101の内面に密着することで、配管101内における所定の領域、つまり、開閉弁106からシール部材12までの密閉空間Aを形成する。そして、シール部材12へのシールガスの供給を継続すると、シール部材12のガス吐出部32から密閉空間Aにシールガスが供給されることとなり、この密閉空間Aにある空気がシールガスに置換される。
そのため、この状態で、作業者は溶接装置121により配管101と配管部103の溶接部104を溶接することができ、配管101内にシールガスが充満していることから、内面の酸化が防止され、裏面に滑らかな溶融金属が得られる。このとき、シールガス管11は、シールガス管用支持部材13,14により配管101内で上方位置に支持されるため、この溶接作業によりシールガス管11が損傷を受けることがなく、適正に溶接作業を行うことができる。
配管101と配管部103との溶接部104の溶接作業が完了したら、開閉弁22を閉止し、シールガス供給源21からシールガス管11を通したシール部材12へのシールガスの供給を停止することで、シール部材12を収縮させて配管101の内面から離間させ、密閉空間Aを解除する。そして、作業者は、シールガス管11を介してシール部材12とシールガス管用支持部材13,14を移動し、配管101内の所定の位置に配置する。即ち、シール部材12を溶接部104,105の間に配置し、シールガス管用支持部材13,14を拡大状態のまま溶接部105の前後位置に配置する。
そして、前述と同様に、作業者は、シールガスをシールガス管11からシール部材12に供給して膨張させ、配管101内における開閉弁106からシール部材12までの密閉空間Aを形成すると共に、この密閉空間Aにある空気がシールガスに置換する。そして、この状態で、作業者は溶接装置121により配管101と配管部103の溶接部105を溶接することができ、配管101内にシールガスが充満していることから、内面の酸化が防止され、裏面に滑らかな溶融金属が得られる。
配管101に対する配管部103の接合作業が完了したら、作業者は、開閉弁22を閉止し、シールガス管11からシール部材12へのシールガスの供給を停止することで、密閉空間Aを解除する。そして、作業者は、シール部材109を除去した後、シールガス管11を牽引してシール部材12とシールガス管用支持部材13,14を移動し、開口部108から配管101の外部に取り出す。このとき、シールガス管用支持部材13(14)は、拡大状態にあることから、図8に示すように、第2嵌合部42が開口部108を通過するとき、各拡縮部材43が開口部108に当接するが、図9に示すように、第1嵌合部41がシールガス管11に沿って移動することで折り畳み状態となり、開口部108を通過することができる。ここで、作業が完了する。
このように実施例1の配管溶接部のバックシールド装置にあっては、配管101内における所定の領域を密閉して密閉空間Aを形成可能なシール部材12(開閉弁106)と、密閉空間Aにシールガスを送給可能なシールガス管11と、配管101内でシールガス管11を上方位置に支持可能なシールガス管用支持部材13,14とを設けている。
従って、シール部材12(開閉弁106)により配管101内における所定の領域を密閉して密閉空間Aを形成し、シールガス管11により密閉空間Aにシールガスを送給することで、空気をシールガスに置換することができる。ここで、シールガス管11は、シールガス管用支持部材13,14により配管101内で上方位置に支持されるため、その後に溶接作業を行っても、配管101内面から離間したシールガス管11が溶接時に発生する熱により損傷を受けることが抑制される。その結果、配管101におけるシール部材12やシールガス管用支持部材13,14の配置を容易として作業性を向上することができる。
実施例1の配管溶接部のバックシールド装置では、シールガス管用支持部材13,14をシールガス管11に対して長手方向に沿って移動自在に装着している。従って、配管101の溶接部104,105に対するシールガス管用支持部材13,14の位置調整を可能とすることができ、異なる複数の溶接位置に対して装置の使用が可能となり、汎用性を向上することができる。
実施例1の配管溶接部のバックシールド装置では、シールガス管用支持部材13,14をシールガス管11に装着し、縮径した折畳み状態と拡径した拡大状態との変位としている。従って、シールガス管用支持部材13,14を折畳み状態とすることで、小さい開口部108を通して配管101内へ挿入することができ、また、シールガス管用支持部材13,14を拡大状態とすることで、このシールガス管用支持部材13,14によりシールガス管11を配管101の内面から離間する上方位置に容易に支持することができる。
実施例1の配管溶接部のバックシールド装置では、シールガス管用支持部材13,14の一端部(第2嵌合部42)をシールガス管11に固定し、他端部(第1嵌合部41)を長手方向に沿って移動自在に装着し、他端部を移動することで折畳み状態と拡大状態とに変位可能としている。従って、シールガス管用支持部材13,14を他端部側から開口部108を通して配管101内へ容易に挿入することができ、また、シールガス管用支持部材13,14を一端部側から開口部108を通して配管101外へ抜き取るとき、他端部が移動自在にして折畳み状態となることで、配管101外へ容易に抜き取ることができる。
実施例1の配管溶接部のバックシールド装置では、シールガス管用支持部材13,14を拡大状態に支持している。従って、シールガス管用支持部材13,14を折畳み状態として開口部108から配管101内へ挿入すると、このシールガス管用支持部材13,14は、自力で拡大状態となり、適正にシールガス管11を配管101の内面から離間する上方位置に容易に支持することができる。
実施例1の配管溶接部のバックシールド装置では、シールガス管用支持部材13,14として、シールガス管11に移動自在に嵌合する第1、第2嵌合部41,42と、第1、第2嵌合部41,42同士を連結すると共に中間部が外側に折曲可能な3個以上の拡縮部材43とを設けている。従って、装置の簡素化や低コスト化を可能とすることができる。
実施例1の配管溶接部のバックシールド装置では、シールガス管11の基端部にシールガス供給源21を連結し、先端部に中空膨張部材からなるシール部材12を連結し、シール部材に近接して一対のシールガス管用支持部材13,14を装着している。従って、シールガス管11の先端部側にシール部材12と一対のシールガス管用支持部材13,14を装着することで、シールガス管11、シール部材12、シールガス管用支持部材13,14を一体化して装置の簡素化を可能とすることができる。
また、実施例1の配管溶接部のバックシールド方法は、配管101の切断部111,112に溶接する配管部101を配置する工程と、シールガス管11とその先端部に装着されたシール部材12と複数のシールガス管用支持部材13,14を配管101内及び配管部103内に挿入する工程と、シール部材12を配管101内に配置する工程と、複数のシールガス管用支持部材13,14を拡大状態として溶接部104,105の両側に配置する工程と、シールガス管11からシール部材12にシールガスを供給して膨張させることで配管101内における所定の領域を密閉して密閉空間Aを形成する工程と、この密閉空間Aにシールガスを供給して空気と置換する工程とを設けている。
従って、シールガス管11がシールガス管用支持部材13,14により配管101の内面から上方に離れた位置に支持されるため、その後に溶接作業を行っても、配管101の内面から離間したシールガス管11が損傷を受けることはなく、配管101におけるシール部材12やシールガス管用支持部材13,14の配置を容易として作業性を向上することができる。
また、実施例1の配管溶接部のバックシールド方法では、溶接部104,104の溶接作業の終了後に、シールガス管11からのシールガスの供給を停止し、シール部材12及び各シールガス管用支持部材13,14を配管101の開口部108から抜き出すようにしている。従って、溶接部103,104の溶接作業の終了後に、シール部材や複数のシールガス管用支持部材を容易に配管101の外部に抜く出すことが可能となり、作業性を向上することができる。
また、実施例1のシールガス管用支持部材にあっては、シールガス管11に対して移動自在に装着可能な第1、第2嵌合部41,42と、第1、第2嵌合部41,42同士を連結すると共に中間部が外側に折曲可能な3個以上の拡縮部材43とから構成している。従って、装置の簡素化や低コスト化を可能とすることができる。また、シールガス管用支持部材13,14を第1、第2嵌合部41,42と3個以上の拡縮部材43とから構成することで、簡素化や低コスト化を可能とすることができる。
実施例1のシールガス管用支持部材では、所定長さのフレキシブルチューブにおける中間部に長手方向に沿った切断部Cを周方向に3個以上形成することで、拡縮部材43を形成している。従って、フレキシブルチューブを加工するだけで、シールガス管用支持部材13,14を形成することができ、低コスト化を可能とすることができる。
図10は、本発明の実施例2に係る配管溶接部のバックシールド装置を表す概略図である。なお、上述した実施例と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
実施例2の配管溶接部のバックシールド装置は、図10に示すように、シールガス管11と、シール部材12と、3つのシールガス管用支持部材51,52,53とを有している。
シールガス管11は、基端部にシールガス供給源21が連結されると共に、開閉弁22が装着され、先端部にシール部材12が連結されている。シールガス管用支持部材51,52,53は、配管101内でシールガス管11を上方位置、つまり、配管101の内面に接触しない位置に支持することができるものである。このシールガス管用支持部材51,52,53は、シールガス管11に先端部側で、シール部材12に近接して基端部側に装着されており、必要に応じてシールガス管11に長手方向に沿って移動自在となっている。
なお、このシールガス管用支持部材51,52,53は、実施例1で説明したシールガス管用支持部材13,14(図1参照)とほぼ同様の構成をなしていることから、ここでの説明は省略する。
従って、シールガス管11と共にシールガス管11の先端部側に装着された折畳み状態にあるシールガス管用支持部材51,52,53を開口部108から配管101内に挿入すると、このシールガス管用支持部材51,52,53は、開口部108を通過した後に拡大状態となり、シールガス管用支持部材51,52,53を溶接部104,105の近傍位置、つまり、各溶接部104,105の前後に配置することで、シールガス管用支持部材51,52,53によりシールガス管11を配管101の内面から離れた位置に支持することができる。
ここで、上述した配管溶接部のバックシールド装置を用いた実施例2の配管溶接部のバックシールド方法について説明する。
実施例2の配管溶接部のバックシールド方法は、配管101の切断部111,112に溶接する配管部101を配置する工程と、シールガス管11とその先端部に装着されたシール部材12と複数のシールガス管用支持部材51,52,53を配管101内及び配管部103内に挿入する工程と、シール部材12を配管101内に配置する工程と、複数のシールガス管用支持部材51,52,53を拡大状態として溶接部104,105の両側に配置する工程と、シールガス管11からシール部材12にシールガスを供給して膨張させることで配管101内における所定の領域を密閉して密閉空間Aを形成する工程と、この密閉空間Aにシールガスを供給して空気と置換する工程と、を有している。
即ち、配管101に対する定期検査により劣化部(薄肉部など)が検出されると、この劣化部に対応した所定長さの配管部を除去して新しい配管103に交換する必要がある。この場合、まず、配管101にて、劣化部を有する所定長さの配管部に対してその前後に位置する開閉弁106を閉止し、内部に流れる流体を除去すると共に、計測器107を取外す。そして、配管101を切断部で切断することで、配管部102を除去する。
次に、交換する新しい配管部103を用意し、配管101における配管部102が除去された近傍に配置する。一方、一端部にシールガス供給源21及び開閉弁22が連結されたシールガス管11を用意し、このシールガス管11の先端部側にシール部材12と3つのシールガス管用支持部材51,52,53を装着する。この場合、交換する新しい配管部103の長さに合わせて、シール部材12に対する各シールガス管用支持部材51,52,53の位置を位置決めし、シールガス管用支持部材51,52,53における第2嵌合部42を固定部材45によりシールガス管11に固定しておく。
シールガス管11と共にこのシールガス管11の先端部に装着されたシール部材12及びシールガス管用支持部材51,52,53を配管101の開口部108から配管101内に挿入する。このとき、シールガス管用支持部材51,52,53を折畳み状態として開口部108から配管101内に挿入する。そして、作業者は、シールガス管用支持部材51,52,53を開口部108から配管101内に挿入した後、拡大状態として自立させる。
そして、シールガス管11を介してシール部材12とシールガス管用支持部材51,52,53を配管101内の所定の位置に配置する。即ち、配管101における各溶接部104,105の前後にシールガス管用支持部材51,52,53を配置する。その後、交換する新しい配管部103を配管101における配管部102が除去された位置に配置し、配管101を切断部に配管部103の接合部を対接させる。ここで、シールガス管11の位置を調整した後、開口部108にシール部材109を装着する。
ここで、作業者は、開閉弁22を開放し、シールガス供給源21のシールガスをシールガス管11からシール部材12に供給する。すると、シール部材12は、内部にシールガスが充填されて膨張し、配管101の内面に密着することで、配管101内における所定の領域、つまり、開閉弁106からシール部材12までの密閉空間Aを形成する。そして、シール部材12へのシールガスの供給を継続すると、シール部材12のガス吐出部32から密閉空間Aにシールガスが供給されることとなり、この密閉空間Aにある空気がシールガスに置換される。
そのため、この状態で、作業者は溶接装置121により配管101と配管部103の溶接部104,105を連続して溶接することができ、配管101内にシールガスが充満していることから、内面の酸化が防止され、裏面に滑らかな溶融金属が得られる。このとき、シールガス管11は、シールガス管用支持部材51,52,53により配管101内で上方位置に支持されるため、この溶接作業によりシールガス管11が損傷を受けることがなく、適正に溶接作業を行うことができる。
配管101と配管部103との溶接部104,105の溶接作業が完了したら、開閉弁22を閉止し、シールガス供給源21からシールガス管11を通したシール部材12へのシールガスの供給を停止することで、シール部材12を収縮させて配管101の内面から離間させ、密閉空間Aを解除する。そして、作業者は、シールガス管11を介してシール部材12とシールガス管用支持部材51,52,53を移動し、開口部108から配管101の外部に取り出す。このとき、シールガス管用支持部材51,52,53は、拡大状態にあるが、第2嵌合部42が開口部108を通過するとき、自動的に折畳まれて開口部108を通過することができる。ここで、作業が完了する。
このように実施例2の配管溶接部のバックシールド装置にあっては、配管101内における所定の領域を密閉して密閉空間Aを形成可能なシール部材12(開閉弁106)と、密閉空間Aにシールガスを送給可能なシールガス管11と、配管101内でシールガス管11を上方位置に支持可能なシールガス管用支持部材51,52,53とを設けている。
従って、シール部材12(開閉弁106)により配管101内における所定の領域を密閉して密閉空間Aを形成し、シールガス管11により密閉空間Aにシールガスを送給することで、空気をシールガスに置換することができる。ここで、シールガス管11は、シールガス管用支持部材51,52,53により配管101内で上方位置に支持されるため、その後に溶接作業を行っても、配管101内面から離間したシールガス管11が溶接時に発生する熱により損傷を受けることが抑制される。その結果、配管101におけるシール部材12やシールガス管用支持部材51,52,53の配置を容易として作業性を向上することができる。
この場合、シールガス管11に3個のシールガス管用支持部材51,52,53を装着したことで、溶接作業の途中で、シールガス管11を移動することによりシールガス管用支持部材51,52,53の位置を変える必要はなく、作業性を向上することができる。
図11は、本発明の実施例3に係る配管溶接部のバックシールド装置を表す概略図、図12から図14は、実施例3の配管溶接部のバックシールド方法を表す概略図である。なお、上述した実施例1と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
実施例3の配管溶接部のバックシールド装置は、図11に示すように、シールガス管11と、シール部材12と、4つのシールガス管用支持部材61,62,63,64とを有している。
シールガス管11は、基端部にシールガス供給源21が連結されると共に、開閉弁22が装着され、先端部にシール部材12が連結されている。この場合、シールガス管11は、シールガス供給源21及び開閉弁22が設けられた第1シールガス管11aと、シール部材12及びシールガス管用支持部材61,62,63,64が設けられた第2シールガス管11bがコネクタ65で連結されて構成されている。このシールガス管用支持部材61,62,63,64は、配管101内でシールガス管11を上方位置、つまり、配管101の内面に接触しない位置に支持することができるものである。このシールガス管用支持部材61,62,63,64は、シールガス管11に先端部側で、シール部材12に近接して基端部側に装着されており、必要に応じてシールガス管11に長手方向に沿って移動自在となっている。
なお、このシールガス管用支持部材61,62,63,64は、実施例1で説明したシールガス管用支持部材13,14(図1参照)とほぼ同様の構成をなしていることから、ここでの説明は省略する。
従って、第2シールガス管11bと共にシールガス管11の先端部側に装着されたシール部材12及びシールガス管用支持部材61,62,63,64を配管101と配管部102の隙間から配管101内に挿入し、その後、このシールガス管用支持部材61,62,63,64を拡大状態ら維持し、溶接部104,105の近傍位置、つまり、各溶接部104,105の前後に配置することで、シールガス管用支持部材61,62,63,64によりシールガス管11を配管101の内面から離れた位置に支持することができる。
ここで、上述した配管溶接部のバックシールド装置を用いた実施例3の配管溶接部のバックシールド方法について説明する。
実施例3の配管溶接部のバックシールド方法は、配管101の切断部111,112に溶接する配管部101を配置する工程と、シールガス管11とその先端部に装着されたシール部材12と複数のシールガス管用支持部材61,62,63,64を配管101内及び配管部103内に挿入する工程と、シール部材12を配管101内に配置する工程と、複数のシールガス管用支持部材61,62,63,64を拡大状態として溶接部104,105の両側に配置する工程と、シールガス管11からシール部材12にシールガスを供給して膨張させることで配管101内における所定の領域を密閉して密閉空間Aを形成する工程と、この密閉空間Aにシールガスを供給して空気と置換する工程と、を有している。
即ち、図12に示すように、配管101に対する定期検査により劣化部(薄肉部など)が検出されると、この劣化部に対応した所定長さの配管部を除去して新しい配管103に交換する必要がある。この場合、まず、配管101にて、劣化部を有する所定長さの配管部に対してその前後に位置する開閉弁106を閉止し、内部に流れる流体を除去すると共に、計測器107を取外す。そして、配管101を切断部で切断することで、配管部102を除去する。
次に、図13に示すように、交換する新しい配管部103を用意し、配管101における配管部102が除去された切断部111,112の間で径方向にずれた位置に配置する。一方、図14に示すように、一端部が第1シールガス管11aから切り離された第2シールガス管11bを用意し、この第2シールガス管11bの先端部側にシール部材12と4つのシールガス管用支持部材61,62,63,64を装着する。
続いて、作業者は、シール部材12とシールガス管用支持部材61,62,63,64が装着された第2シールガス管11bを配管101と配管部103との隙間から配管101内に挿入する。そして第2シールガス管11bの端部を開口部108から配管101の外に引き出し、コネクタ65により第1シールガス管11aの端部と連結し、開口部108にシール部材109を装着する。
そして、作業者は、第2シールガス管11bを移動し、シール部材12を配管101内の所定の位置に配置する。即ち、シール部材12を、溶接部104を通過した配管101に配置する。ここで、作業者は、開閉弁22を開放し、シールガス供給源21のシールガスをシールガス管11からシール部材12に供給する。すると、シール部材12は、内部にシールガスが充填されて膨張し、配管101の内面に密着する。
この状態で、作業者は、第2シールガス管11bに対して各シールガス管用支持部材61,62,63,64を移動し、配管101及び配管部103内の所定の位置に配置する。即ち、配管101及び配管部103における各溶接部104,105の前後にシールガス管用支持部材61,62,63,64を配置する。そして、作業者は、シールガス管用支持部材61,62,63,64における第2嵌合部42を固定部材45によりシールガス管11に固定し、拡大状態として自立させる。
なお、第2シールガス管11bに対して各シールガス管用支持部材61,62,63,64を移動し、所定の位置で第2嵌合部42を固定部材45によりシールガス管11に固定して拡大状態として自立させたが、第1嵌合部41を別の固定部材によりシールガス管11に仮固定してもよい。
その後、作業者は、図11に示すように、交換する新しい配管部103を配管101における配管部102が除去された位置に移動し、配管101を切断部に配管部103の接合部を対接させる。すると、シール部材12が膨張して配管101の内面に密着していることから、配管101内における所定の領域、つまり、開閉弁106からシール部材12までの密閉空間Aが形成される。そして、シール部材12へのシールガスの供給を継続すると、シール部材12のガス吐出部32から密閉空間Aにシールガスが供給されることとなり、この密閉空間Aにある空気がシールガスに置換される。
そのため、この状態で、作業者は溶接装置121により配管101と配管部103の溶接部104,105を連続して溶接することができ、配管101内にシールガスが充満していることから、内面の酸化が防止され、裏面に滑らかな溶融金属が得られる。このとき、シールガス管11は、シールガス管用支持部材61,62,63,64により配管101内で上方位置に支持されるため、この溶接作業によりシールガス管11が損傷を受けることがなく、適正に溶接作業を行うことができる。
配管101と配管部103との溶接部104,105の溶接作業が完了したら、開閉弁22を閉止し、シールガス供給源21からシールガス管11を通したシール部材12へのシールガスの供給を停止することで、シール部材12を収縮させて配管101の内面から離間させ、密閉空間Aを解除する。そして、作業者は、シールガス管11を介してシール部材12とシールガス管用支持部材61,62,63,64を移動し、開口部108から配管101の外部に取り出す。このとき、シールガス管用支持部材61,62,63,64は、拡大状態にあるが、第2嵌合部42が開口部108を通過するとき、自動的に折畳まれて開口部108を通過することができる。ここで、作業が完了する。
なお、各シールガス管用支持部材61,62,63,64の第1嵌合部41が固定部材によりシールガス管11に仮固定されていた場合、シールガス管11と共にシールガス管用支持部材61,62,63,64が開口部108を通過するとき、第1嵌合部41の固定力が第2嵌合部42の固定力より低いために強制的に仮固定が解除され、折畳まれて開口部108を通過することができる。
このように実施例3の配管溶接部のバックシールド装置にあっては、配管101内における所定の領域を密閉して密閉空間Aを形成可能なシール部材12(開閉弁106)と、密閉空間Aにシールガスを送給可能なシールガス管11と、配管101内でシールガス管11を上方位置に支持可能なシールガス管用支持部材61,62,63,64とを設けている。
従って、シール部材12(開閉弁106)により配管101内における所定の領域を密閉して密閉空間Aを形成し、シールガス管11により密閉空間Aにシールガスを送給することで、空気をシールガスに置換することができる。ここで、シールガス管11は、シールガス管用支持部材61,62,63,64により配管101内で上方位置に支持されるため、その後に溶接作業を行っても、配管101内面から離間したシールガス管11が溶接時に発生する熱により損傷を受けることが抑制される。その結果、配管101におけるシール部材12やシールガス管用支持部材61,62,63,64の配置を容易として作業性を向上することができる。
この場合、シールガス管11に4個のシールガス管用支持部材61,62,63,64を装着したことで、配管101と配管部103の2つの溶接部104,105を連続して溶接することができ、作業性を向上することができる。
なお、上述した実施例では、シールガス管用支持部材13,14,51,52,53,61,62,63,64を第1嵌合部41と第2嵌合部42と複数の拡縮部材43とから構成したが、この構成に限定されるものではない。例えば、シールガス管用支持部材を、1つの嵌合部と基端部だけ屈曲する複数の拡縮部材とから構成したり、シールガス管用支持部材を、シール部材と同様に、中空膨張部材により構成したりしてもよい。また、配管の開口部が十分な広さを有するときには、シールガス管用支持部材を拡縮可能としなくてもよい。
また、上述した実施例では、シール部材12を中空膨張部材により構成したが、配管101の開口部108が十分な広さを有するときには、膨張しないゴムシールであってもよい。更に、この実施例では、配管101に予め設けられた開閉弁106を一方のシール部材として利用したが、シールガス管に2つの中空膨張部材からなるシール部材を連結し、2つの中空膨張部材にシールガスを供給して膨張させることで密閉空間を形成してもよい。
また、上述した実施例では、配管101における計測器107を取外して開口部108を確保したが、この構成に限らず、例えば、開閉弁106を解体して開口部を確保してもよい。