以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。一実施の形態におけるソレノイドバルブ1は、図1および図2に示すように、中空部Cと外方から開口して中空部Cへ連通されるポート9cを有するハウジングEと、上記中空部C内に軸方向に移動自在に挿入されるスプール弁7と、スプール弁7を軸方向に駆動するソレノイド8とを備えて構成されている。
この実施の形態では、ソレノイドバルブ1は、緩衝器Dに適用されていて、緩衝器Dが伸長する際に発生する減衰力を調節することができるようになっている。この緩衝器Dは、具体的には、シリンダ2と、シリンダ2内に摺動自在に挿入されてシリンダ2内を作動油等の液体が充填される伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン3と、シリンダ2内に挿入されてピストン3に連結されるピストンロッド4と、ピストンロッド4内に設けられ緩衝器Dの伸長時でのみ液体の通過を許容する減衰力調整用の流路5とを備えており、ソレノイドバルブ1は当該流路5の途中に設けられて緩衝器Dの発生する減衰力を調整する。
なお、上記緩衝器Dは、この例では、鞍乗車両に向くように、さらに、ピストンロッド4を二輪車などの鞍乗車両の図示しない車体に連結される車体側チューブ10と、鞍乗車両の図示しない車軸に連結されて車体側チューブ10内へ摺動自在に挿入される車軸側チューブ11とで構成されるフロントフォークF内に収容されている。より詳しくは、緩衝器Dは、ピストンロッド4がハウジング本体6を介して車体側チューブ10へ連結され、シリンダ2が車軸側チューブ11へ連結されて、車体側チューブ10と車軸側チューブ11との間に介装されつつ、車体側チューブ10と車軸側チューブ11で閉鎖されたフロントフォークF内となる空間L内に収容されている。本実施の形態では、フロントフォークFは、車体側チューブ10内に車軸側チューブ11を挿入する倒立型のフロントフォークとされているが、反対に、車体側チューブ10を車軸側チューブ11へ挿入する正立型のフロントフォークとされていてもよい。
また、この緩衝器Dのピストンロッド4とシリンダ2との間には、懸架ばね12が介装されており、この懸架ばね12は緩衝器Dを介して車体側チューブ10と車軸側チューブ11を離間させる方向、つまり、緩衝器Dを伸長させる方向に弾発力を発揮していて、当該懸架ばね12により図外の鞍乗車両の車体が弾性支持されるようになっている。
そして、緩衝器Dは、図1に示すように、車軸側チューブ11に連結されたシリンダ2と、シリンダ2内に摺動自在に挿入されシリンダ2内を2つの作動室である伸側室R1および圧側室R2に区画するピストン3と、一端がピストン3に連結されるとともに他端が車体側チューブ10に連結されたピストンロッド4と、ピストン3に設けられて伸側室R1と圧側室R2とを連通するとともに通過する液体の流れに抵抗を与える減衰通路13と、シリンダ2の下端に設けられて圧側室R2からリザーバRへ向かう液体の流れに抵抗を与える圧側減衰通路15とリザーバRから圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容する吸込通路16とを有するボトム部材14とを備えて構成され、伸側室R1および圧側室R2には液体として作動油等の液体が充満され、リザーバR内には液体と気体が充填されている。
より詳しくは、シリンダ2は、下端に嵌合されたボトム部材14を介して有底筒状に形成された車軸側チューブ11の底部に固定されている。また、シリンダ2の上端には、ピストンロッド4を摺動自在に軸支するロッドガイド17が設けられている。ピストンロッド4は、軸方向に沿って図1中上下に貫通する空孔4bを備えたピストンロッド本体4aと、ピストンロッド本体4aの図1中下端に固定されてピストン3を保持するピストン連結部4cとを備えて構成されており、その図1中上端となる先端がソレノイドバルブ1におけるスプール弁7を収容するハウジングEとソレノイド8のケース30を介して車体側チューブ10の上端に固定されている。ピストン連結部4cは、空孔4bと伸側室R1とを連通する連通路4dと、連通路4dの途中に設けられて伸側室R1から空孔4bへ向かう液体の流れのみを許容する逆止弁4eとを備えて構成されていて、図1中下端に環状のピストン3がピストンナット24を用いて固定されるようになっている。
そして、ロッドガイド17とハウジング本体6の外周に設けた筒状のばね受18との間に懸架ばね12が介装され、緩衝器Dが懸架ばね12により伸長方向に附勢され、これにより、緩衝器Dも懸架ばね12により伸長方向に附勢されるようになっている。
ピストン3は、ピストンロッド4の図1中下端に固定されており、ピストン3に設けられる減衰通路13は、伸側室R1と圧側室R2とを連通する通路13aと、通路13aの途中に設けた減衰弁13bとを備えていて、通過する液体の流れに抵抗を与えるようになっている。この場合、減衰弁13bが絞り弁などとされていて、減衰通路13は、伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れと、圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れの双方向の流れを許容するようになっているが、通路を二つ以上設けて一部の通路に伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容する減衰弁を設けるとともにそれ以外の通路に圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れのみを許容する減衰弁を設けてもよい。
リザーバRは、上記空間L内であって緩衝器D外に形成されており、リザーバRには、液体と気体が充填されている。ボトム部材14に形成される圧側減衰通路15は、圧側室R2とリザーバRとを連通する通路15aと、圧側室R2からリザーバRへ向かう液体の流れのみを許容して通過する液体の流れに抵抗を与える減衰弁15bとを備えて構成されており、圧側室R2からリザーバRへ向かう液体の流れのみを許容する一方通行の通路とされている。他方、ボトム部材14に形成される吸込通路16は、リザーバRと圧側室R2とを連通する通路16aと、リザーバRから圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容する逆止弁16bとを備えて構成されており、圧側減衰通路15とは逆向きにリザーバRから圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容する一方通行の通路とされている。なお、この緩衝器Dにあっては、圧側減衰力を減衰弁15bにて発生することができるので、上記したように圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れのみを許容する通路を設ける場合、当該通路に減衰弁を設けずともよい。
つづいて、ソレノイドバルブ1について説明する。ソレノイドバルブ1は、上記した流路5の途中に設けられており、中空部Cを備えたハウジングEと、ハウジングEの中空部C内に摺動自在に挿入されるスプール弁7と、スプール弁7を可動鉄心として当該スプール弁7をハウジングE内で駆動するソレノイド8とを備えて構成されている。
また、ハウジングEは、筒状のハウジング本体6と、ハウジング本体6の内部に収容される筒状のバルブスリーブ9とで構成されている。ハウジング本体6は、図1および図2に示すように、この場合、筒状であって内部に内径を拡径して形成されて内部に上記したバルブスリーブ9およびスプール弁7を収容する収容部6aと、外周から開口して収容部6aに通じる排出通路6bと、図2中上端に設けた筒状のソレノイド装着部6cを備えて構成されている。また、このハウジング本体6の図2中下方内周には螺子孔部6dを設けてあり、ピストンロッド4の上端の外周には螺子部4fが設けてあって、螺子孔部6dにピストンロッド4の上端を挿入しつつ螺子締結することができるようになっている。なお、この実施の形態では、螺子部4fにナット19を螺着していて、当該ナット19の図2中上端をハウジング本体6の図2中下端に当接させてハウジング本体6に軸荷重をかけることで上記螺子孔部6dと螺子部4fとが緩まないように配慮している。
また、ハウジング本体6のソレノイド装着部6cの外周には、螺子部6fが設けられていて、ハウジング本体6を車体側チューブ10の開口端に螺着することにより、ピストンロッド4を車体側チューブ10に連結することができるようになっている。
バルブスリーブ9は、筒状であって、内周に中空部Cを備え、この中空部Cの周方向に沿って設けた環状溝で形成される凹部9aと、外周に周方向に沿って設けた環状溝9bと、凹部9aと環状溝9bとを連通してバルブスリーブ9の内外を連通するポート9cと、外周であってポート9cよりも図2中上方側に設けた環状溝でなるリング装着溝9dと、図2中下端に周方向に沿って設けられた環状溝でなるリング装着溝9eとを備えて構成されている。このバルブスリーブ9の外径は、ハウジング本体6の収容部6aの内径よりも小径とされており、バルブスリーブ9が収容部6a内に収容されると遊びがあるために径方向へ移動することが可能となっている。また、バルブスリーブ9のリング装着溝9d,9eには、弾性リング25,26が装着されている。弾性リング25,26は、この実施の形態の場合、たとえば、ゴム等の弾性とシール性を発揮する樹脂材料で形成したOリングとされており、外径がハウジング本体6の収容部6aの内径よりも大径に設定されていて、バルブスリーブ9をハウジング本体6の収容部6a内に収容すると、弾性リング25は、収容部6aの内壁に当接し、弾性リング26は収容部6aの下端に形成されてバルブスリーブ9側に面する段部6eに当接して、バルブスリーブ9がハウジング本体6に対してフローティング支持される。つまり、バルブスリーブ9とハウジング本体6の収容部6aとの間には隙間があって、弾性リング25,26でバルブスリーブ9が弾性支持されていて、バルブスリーブ9が収容部6a内で径方向へ移動することが許容されている。このようにバルブスリーブ9が収容部6a内に収容されると、ポート9cは、環状溝9bを介して排出通路6bに対向し、バルブスリーブ9内とポート9cを介して緩衝器Dにおける伸側室R1とリザーバRが連通される。そして、このポート9cは、内径が液体の流れに抵抗を与えることができる径に設定されていて絞り通路として機能するようになっている。なお、この場合、弾性リング25,26は、シールとしても機能し、ポート9cを挟む軸方向両側に配置されているので、バルブスリーブ9とハウジング本体6との間がシールされ、液体がポート9c以外を通過して伸側室R1からリザーバRへ移動することが阻止されている。また、弾性リング25,26は、弾性を備えていればよいので、シール機能を
発揮しないものであってもよいが、その場合には、別途シールが必要となるので、シール機能を備えることで部品点数の削減とコスト低減を図ることができる。
一方の弾性リング25はバルブスリーブ9の外周と収容部6aの内周との間に、他方の弾性リング26は、ハウジング本体6の収容部6aに面する段部6eとバルブスリーブ9の段部6eに対向する端部にそれぞれ介装されるので、バルブスリーブ9は軸方向にも径方向にもハウジング本体6との接触が全くなく、バルブスリーブ9を完全にハウジング本体6から浮いた状態で支持することが可能であり、ハウジング本体6からバルブスリーブ9への熱伝達を抑制することができるとともに、バルブスリーブ9或いは収容部6aの軸方向寸法誤差を弾性リング26で吸収することができる。
このようにハウジング本体6とバルブスリーブ9でなるハウジングEをピストンロッド4に連結すると、バルブスリーブ9内でなる中空部Cがピストンロッド4の空孔4bとが同軸で且つ直列に接続されて、この中空部Cは、当該空孔4bおよび連通路4dを介して緩衝器Dにおける伸側室R1に連通される。また、中空部Cは、凹部9a、ポート9c、環状溝9bおよび排出通路6bを介して緩衝器D外に形成されたリザーバRに連通される。よって、この実施の形態の場合、流路5は、上記した連通路4d、空孔4b、中空部C、凹部9a、ポート9c、環状溝9bおよび排出通路6bとで構成されており、伸側室R1とリザーバRとを連通している。また、流路5は、この場合、逆止弁4eによって、伸側室R1からリザーバRへ向かう液体の通過のみを許容するようになっている。流路5を一方通行に設定する逆止弁は、ピストン連結部4cに設けるのではなく、他の箇所へ設けてもよく、具体的にはたとえば、ピストンロッド本体4aの空孔4b内に設けてもよいし、ピストンロッド本体4aの図1中上端における空孔4bの開口端に設けるようにしてもよい。
スプール弁7は、筒状とされていてバルブスリーブ9内に摺動自在に挿入されており、側方から開口して内部へ通じスプール弁7の内外を連通するスプールポート7aを備えている。また、スプール弁7は、この実施の形態の場合、スプール弁7の一端である下端からスプールポート7aが設けられる範囲Hの内径を当該範囲H外の内径よりも大径とすることで当該範囲Hの肉厚を薄くして設けた薄肉部7bを備えている。換言すれば、スプールポート7aは、スプール弁7の薄肉部7bが設けられる範囲内に設けられている。
なお、スプール弁7の一端から少なくともスプールポート7aが設けられる範囲を薄肉部7bとすることは、薄肉部7bが設けられる範囲Hは、スプール弁7の一端からスプールポート7aにおけるスプール弁他端側の縁まで、つまり、図2中上端縁まででもよいし、この縁よりも図2中上方を含む範囲であってもよい。また、スプール弁7に薄肉部7bを設けるには、内周側を切削する等の加工が必要であるから、スプールポート7aを設ける位置をスプール弁7の一端から軸方向中央までとすることで薄肉部7bを設ける範囲をスプール弁7の軸方向長さの半分以下とすることができ、経済的である。このことから、本実施の形態では、スプールポート7aをスプール弁7に設ける位置をスプール弁7の一端に近くに配置するほど、薄肉部7bを形成する加工長さが短くなり、経済性が向上することになる。なお、薄肉部7bは、これが設けられる範囲Hの外径を範囲H外の外径よりも小径にすることで設けることも可能であるが、この場合、バルブスリーブ9の形状をスプール弁7のストロークを妨害せずに薄肉部7bの外周に摺接する形状に設定する必要があって、バルブスリーブ9の内周をスプール弁7の上記範囲H外の外周にも摺接させる場合には、バルブスリーブ9とスプール弁7の上記範囲Hの外周との間、バルブスリーブ9と上記範囲H外の外周との間の二箇所で同軸度を出す関係上、高度な加工精度を要求されることになるが、スプール弁7の一端である下端からスプールポート7aが設けられる範囲Hの内径を当該範囲H外の内径よりも大径とすることで当該範囲Hの肉厚を薄くして設けた薄肉部7bを設ける場合、スプール弁7の全体がハウジングEの中空部C、この場合、バルブスリーブ9内に摺接するために加工が容易となる利点もある。
また、スプールポート7aは、スプール弁7の軸方向に沿う長孔とされている。スプールポート7aを軸方向に沿う長孔とすることで、周方向幅を短くしつつもバルブスリーブ9の凹部9aにスプールポート7aを対向させた際に有効な流路面積を大きく確保することができる。スプールポート7aを通過する液体の流速が速くなると圧力低下が生じ、スプールポート7a内の圧力がスプール弁7を軸方向へ移動させるように作用する受圧面積はスプールポート7aの周方向幅とスプール弁7の肉厚で決せられるため、スプールポート7aの周方向幅を狭くすればするほど、上記流速の増加に起因する圧力低下によって生じるスプール弁7を軸方向へ移動させようとする力を小さくすることができる。また、スプールポート7aが薄肉部7bに設けられているので、この点でも同様に、上記流速の増加に起因する圧力低下によって生じるスプール弁7を軸方向へ移動させようとする力を小さくすることができる。
なお、このスプール弁7の場合、外周であってスプールポート7aを避ける位置に、周方向に沿って形成した複数の環状溝7cが設けられている。この環状溝7cは、スプール弁7がバルブスリーブ9内に摺動自在に挿入された状態で液体溜まりとして機能し、スプール弁7のバルブスリーブ9への張り付きを防止して、バルブスリーブ9に対して滑らかな軸方向への移動を保証している。
そして、スプール弁7がバルブスリーブ9内で摺動してスプールポート7aが凹部9aに対向すると、スプールポート7aとポート9cとが連通状態におかれ流路5が開放され、反対に、スプールポート7aを凹部9aに対向させずスプール弁7の側面が凹部9aを閉塞すると、スプールポート7aとポート9cの連通が断たれて流路5が遮断されるようになっている。なお、この実施の形態の場合、凹部9aを環状溝としているのは、スプール弁7が周方向に回転してもポート9cとスプールポート7aとを連通可能とするために設けられるものであり、スプール弁7がバルブスリーブ9に対して周方向に回転しないようにしてある場合には凹部を環状溝とせずともよい。
また、スプール弁7の他端となる図2中上端には、環状の可動鉄心22が取り付けられている。また、このスプール弁7は、可動鉄心22よりも比重の小さい非磁性材料で形成されており、たとえば、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム合金或いは合成樹脂といった材料で形成される。
可動鉄心22は、鉄、ニッケル、コバルトやこれらを含む合金、フェライト等といった磁性材料で形成されていて環状とされ、内周に内側へ突出する内周フランジ22aを備えている。そして、この可動鉄心22の外径は、スプール弁7の外径よりも大径とされており、また、その内径は、スプール弁7の上端が嵌合可能な径とされていて、可動鉄心22の図2中下端内周に上記スプール弁7の図2中上端が嵌合されて固定されている。なお、可動鉄心22とスプール弁7の一体化に際して、スプール弁7の上端を可動鉄心22内に圧入することや焼き嵌めすることで両者を一体化してもよいし、両者を接着するようにしてもよく、他の固定方法を採用することもできる。また、この場合、可動鉄心22は、内周フランジ22aを備えているので、スプール弁7を内周フランジ22aに当接するまで可動鉄心22内に押し込むことで、可動鉄心22に対してスプール弁7が軸方向に位置決めされるとともに、それ以上のスプール弁7の可動鉄心22内側への侵入が阻止されるようになっているが、内周フランジ22aを省略することも可能である。
ソレノイド8は、筒状のステータSと、ステータS内に摺動自在に挿入された上記の可動鉄心22と、可動鉄心22を附勢する附勢ばね35とを備えて構成されている。ステータSは、この例では、この場合、内筒30aと外筒30bと内筒30aおよび外筒30bの図2中下端を接続する環状底部30cとでなり磁性体で形成されるケース30と、コイル31aをモールド樹脂31bにてモールドして形成されて上記外筒30bと内筒30aとの間に収容される筒状のモールドコイル31と、モールドコイル31の内周に挿入される筒状であって磁性体であるベース33と、ベース33の外周とケース30の内筒30aの内周に嵌合されてこれらを一体化するとともにベース33とケース30の内筒30aとの間に環状隙間(ギャップ)を設ける非磁性リング32と、ベース33内に螺着されるアジャスタ34とを備えて構成され、上記したアジャスタ34と可動鉄心22との間には附勢ばね35が介装されている。ソレノイド8は、スプール弁7に一体化された可動鉄心22をコイル31aへの通電によって吸引することで、スプール弁7を駆動することができるようになっている。なお、以下にステータSの構造を詳しく説明するが、以下のステータSの構造は一例であって、これに限定されるものではない。
ケース30の内筒30aは、その内径を可動鉄心22が移動自在に挿入可能な径に設定されており、中間部外周が環状底部30cに接続され、この環状底部30cを介して外筒30bに結合されている。この実施の形態の場合、図示はしないが、可動鉄心22の外周にフッ素樹脂等の自己潤滑性を備えた樹脂材料で形成したシートを貼付してあり、このシートが内筒30aに摺接するようになっていて、上記液体が潤滑性に乏しくとも当該シートを設けることで可動鉄心22の内筒30aに対する移動がスムーズとなるが、可動鉄心22の内筒30aに対する摺動性に問題が無ければシートを設けずともよい。
また、ケース30は、ハウジング本体6の図2中上端に設けたソレノイド装着部6c内に収容され、ケース30とハウジング本体6との間に設けたシールリング27でケース30とハウジング本体6との間にシールされる。なお、この場合、ケース30とハウジング本体6を別部品としてケース30とハウジング本体6とを一体化しているが、ケース30とハウジング本体6とを一部品で構成してもよい。このように、ケース30がハウジング本体6に収容されると、ケース30の図2中下端でバルブスリーブ9を介して弾性リング26を押圧するので、バルブスリーブ9とハウジング本体6の段部6eとの間が密にシールされる。
また、ケース30の内筒30aの内径は、可動鉄心22の外周が摺接することが可能な径に設定される一方、バルブスリーブ9の内径はスプール弁7の外周が摺接することが可能な径とされているので、内筒30aの内径は、バルブスリーブ9の内径よりも大径となる。そのため、ケース30の内筒30aの内周面に可動鉄心22を摺接させつつ、バルブスリーブ9の内周面にスプール弁7を摺接させると、内筒30a内であって可動鉄心22によって可動鉄心22の軸方向の両端側に、スプール側室Aと反スプール側室Bが区画される。
スプール側室Aは、可動鉄心22と、内筒30a、バルブスリーブ9とスプール弁7で仕切られた環状の部屋とされており、反スプール側室Bは、可動鉄心22およびスプール弁7の内方を介して流路5に接続されている。また、このスプール側室Aと反スプール側室Bは、可動鉄心22の外周に形成の軸方向に沿う溝22bによって連通され、スプール側室Aが密閉されることがないようになっている。なお、可動鉄心22の外周に貼付されるシートは、上記溝22bを閉塞しないように配慮されるのは当然である。そして、スプール側室Aは、弾性リング25がシール機能を発揮してハウジング本体6とバルブスリーブ9との間をシールし、上記したシールリング27がケース30とハウジング本体6との間をシールするので反スプール側室Bへ連通されるほかはいずれにも連通されずスプール側室を介して液体がリザーバRへ漏洩することはない。このように、スプール側室Aは、密閉されることなく反スプール側室Bに連通されていて、これらスプール側室Aおよび反スプール側室Bは流路5に通じ、スプール弁7と可動鉄心22とで構成されたソレノイドバルブ1における可動部の両端には、ともに流路5から導かれる圧力が作用することになる。つまり、可動部における図2中上方へ押し上げる方向へ圧力を受ける受圧面積と、可動部における図2中下方へ押し下げる方向へ圧力を受ける受圧面積が等しく、流路5からの圧力で可動部を図2中上方へ押し上げる方向の力と同じく流路5からの圧力で可動部を図2中下方へ押し下げる方向の力とが等しくなる関係となっており、可動部が流路5からの圧力で図2中上下方向となる軸方向へ動かされることがないようになっている。なお、スプール側室Aと反スプール側室Bとの連通に際して、可動鉄心22の外周に溝22bを設ける代わりに、スプール弁7或いは可動鉄心22にスプール側室Aをスプール弁7或いは可動鉄心22の内周へ通じる孔を設けるようにしてもよいし、可動鉄心22を軸方向に貫通する透孔を設けてスプール側室Aを反スプール側室Bに連通するようにしてもよい。
戻って、ケース30の外筒30bの図2中上端には、エンドキャップ38が嵌合されており、ソレノイド装着部6cの開口端内周に螺着されるエンドリング37で上記エンドキャップ38を押圧してケース30をハウジング本体6のソレノイド装着部6c内に固定することができるようになっている。なお、エンドリング37の内周には、シール部材としてのシールキャップ40が取り付けてあって、内部への水や埃等の侵入を防止している。
モールドコイル31は、コイル31aへ通電するための電源端子31cを内部に収容する筒状のコネクタ31dを備えており、このコネクタ31dは、モールド樹脂31bによってコイル31aに一体化されている。上記コネクタ31d内の電源端子31cを図外の外部電源へ接続することで、外部からコイル31aへの通電ができるようになっている。
ベース33は、筒状とされてモールドコイル31の内周に挿入されており、図2中下端となるスプール弁側端の外周にスプール弁側へ突出する環状凸部33aを備えており、当該環状凸部33aは、外周がテーパ状に面取りされている。そして、この環状凸部33aの外周とケース30の内筒30aの外周には、アルミニウム、銅、亜鉛、SUS305等の非磁性ステンレス鋼や高マンガン鋼等といった材料で形成した非磁性リング32が嵌めこまれており、当該非磁性リング32によってケース30とベース33とが一体化されている。この非磁性リング32は、コイル31aの通電時に磁化されるベース33で可動鉄心22を吸引できるようにベース33とケース30との間にギャップを形成するとともに、ケース30とベース33とを一体化し、ケース30とベース33との間をシールする役割も果たしている。
なお、ベース33とケース30の内筒30aとの間にギャップを設けるには、非磁性リング32を用いるほか、ケース30の内筒30aとベース33の環状凸部33aとの間に環状の非磁性リングを介装しろう付けする等してケース30とベース33とを一体化するようにしてもよい。
アジャスタ34は、軸状であって図2中上端となる基端外周に螺子部を備えてベース33の内周に螺着されており、その先端となる図2中下端と可動鉄心22との間に附勢ばね35が圧縮状態で介装されている。
なお、附勢ばね35は、図2中下端が可動鉄心22内に挿入されて、この可動鉄心22の内周フランジ22aとアジャスタ34との間に介装されているが、上述したように内周フランジ22aを省略するのであれば、附勢ばね35の下端をスプール弁7の図2中上端で受ければよい。そして、アジャスタ34を送り螺子の要領でベース33に対して軸方向となる図2中上下方向へ進退させて附勢ばね35の圧縮長さを調整することで、スプール弁7へ附勢ばね35が与える初期荷重を調整することができるようになっている。
また、この実施の形態では、可動鉄心22内に附勢ばね35の一部が収容される構造を採用しているため、附勢ばね35の収容スペースが確保され、アジャスタ34を含めたソレノイド8の全長を短くすることができる。
このように構成されたソレノイド8は、コイル31aへ通電すると、ベース33が磁化されて可動鉄心22を吸引する吸引力が発生し、スプール弁7を附勢ばね35の附勢力に抗して図2中上方側へ駆動することができるようになっている。
そして、車両が走行中には緩衝器Dには上下方向の大きな加速度が作用するが、この加速度の方向がスプール弁7の摺動方向とほぼ一致するので、この実施の形態では、スプール弁7の重量を軽量にして上記加速度によるスプール弁7の慣性力を小さくしスプール弁7の振動を抑制すべく、ソレノイドバルブ1における可動部であるスプール弁7と可動鉄心22の全体重量を軽量化するようにしている。
具体的には、このソレノイドバルブ1にあっては、可動鉄心22の外径をスプール弁7の外径よりも大径としている。詳しく説明すると、可動鉄心22をベース33側へ吸引する際に、可動鉄心22も磁路を形成するが、可動鉄心22における磁路の断面積を充分に確保でき得る程度に可動鉄心22の外径を設定する一方で、磁路に影響しないスプール弁7の外径を可動鉄心22の外径よりも小径とすることでスプール弁7の軽量化を図っており、このようにすることで、可動鉄心22とスプール弁7とで構成されるソレノイドバルブ1の可動部の全体重量を軽量化しつつもソレノイド8の吸引力の低下を招くことがないようにしている。なお、可動鉄心22の内周フランジ22aよりも図2中下方であるスプール弁側の肉厚よりも図2中上方であるベース側の肉厚を厚くしており、これにより、磁路の断面積の確保が容易となり、磁束密度が飽和して吸引力が低下してしまうことのないように配慮されている。
戻って、上述のように、スプール弁7を附勢ばね35で附勢すると、スプール弁7は、バルブスリーブ9内で最下方位置に位置決められる。具体的には、可動鉄心22の下端がバルブスリーブ9の図2中上端に当接すると、スプール弁7のそれ以上のピストンロッド4側への移動が制限され、スプール弁7がこの最下方位置に位置決められる。
この最下方位置では、スプール弁7のスプールポート7aがバルブスリーブ9の凹部9aに対向して、スプールポート7aとポート9cが連通状態におかれ、流路5は開放された状態となる。
そして、この実施の形態では、コイル31aへ通電して可動鉄心22をベース33側へ向けて吸引することで、スプール弁7をバルブスリーブ9内で図2中上方へ後退させることができ、このようにすることで、凹部9aとスプールポート7aのラップ面積(凹部9aとスプールポート7aとの対向面積)を変更することで、ソレノイドバルブ1の弁開度を調整できる、つまり、ソレノイドバルブ1における流路面積を調整することができるようになっている。コイル31aへの通電によりスプール弁7を図2中上方向へ駆動でき、コイル31aへの通電を停止すればスプール弁7を図2中下方向へ駆動でき、コイル31aの通電量でスプール弁7の位置を調節できる。要するに、コイル31aの通電量によってスプール弁7の移動量をコントロールすることで、凹部9aとスプールポート7aのラップ面積を調整でき、これによりソレノイドバルブ1の弁開度を調節できる。このように、ソレノイド8でスプール弁7を軸方向となる図2中上下方向へ駆動することができる。
そして、凹部9aとスプールポート7aとで流路5を絞ることで、流路5を通過しようとする液体の流れに与える抵抗を、スプール弁7が最下方位置にある場合に比較して大きくすることができる。この場合、スプール弁7の後退量が大きくなればなるほど、凹部9aとスプールポート7aとのラップ面積が減少してソレノイドバルブ1の弁開度が減少し、流路5の絞り度合が大きくなるので、スプール弁7の後退量の増加に伴って流路5を通過する液体の流れに与える抵抗が大きくなる。
続いて、このように構成された緩衝器Dの作動について説明する。シリンダ2に対してピストン3が図1中上方へ移動する緩衝器Dの伸長時には、ピストン3によって圧縮される伸側室R1内の液体は減衰通路13を介して圧側室R2へ移動する。また、伸側室R1の液体は、ソレノイドバルブ1が開弁状態である場合、伸側室R1からリザーバRへ向かう液体の通過のみを許容するようになっている逆止弁4eを押し開き、流路5を介してリザーバRへ移動しようとする、詳しくは、液体は、連通路4d、空孔4b、収容部6a、スプール弁7内、スプールポート7a、凹部9a、ポート9c、環状溝9bおよび排出通路6bでなる流路5を通過してリザーバRへ移動しようとする。このような液体の流れに対して、この緩衝器Dは、減衰通路13で抵抗を与えるとともに、流路5を介して伸側室R1からリザーバRへ向かう液体の流れに対してソレノイドバルブ1で抵抗を与える。つまり、緩衝器Dは、この実施の形態にあっては、伸長時に減衰通路13およびソレノイドバルブ1によって伸側減衰力を発揮する。したがって、ソレノイドバルブ1で弁開度を調節してやれば、緩衝器Dの伸長時に発生する減衰力を調節することができ、ソレノイドバルブ1の弁開度を小さくすればするほど緩衝器Dは大きな減衰力を発揮することになる。なお、伸長時に拡大する圧側室R2には、ボトム部材14に設けた吸込通路16を介してリザーバRから液体が供給されて、緩衝器Dの伸長時にシリンダ2内からピストンロッド4が退出することで生じるシリンダ2内の容積変化が補償される。
反対に、シリンダ2に対してピストン3が図1中下方へ移動する緩衝器Dの収縮時には、ピストン3によって圧縮される圧側室R2から伸側室R1へ移動する液体の流れに減衰通路13で抵抗を与えるとともに、シリンダ2内へピストンロッド4が侵入することで生じるシリンダ2内の容積減少分の液体がボトム部材14の圧側減衰通路15を介してリザーバRへ排出されてシリンダ2内の体積変化が補償されるので、この圧側減衰通路15でも液体の流れに抵抗を与えることになる。よって、緩衝器Dの収縮時には、減衰通路13および圧側減衰通路15で圧側減衰力を発揮し、この場合、流路5には、液体が流れないようになっているので、ソレノイドバルブ1は圧側減衰力の発生には関与しない。
つまり、この実施の形態では、ソレノイドバルブ1において、スプール弁7を駆動することで流路5の流路面積を可変にすることができるので、この緩衝器Dでは、伸長時における伸側減衰力を調節することができるようになっている。
そして、このソレノイドバルブ1にあっては、ソレノイドバルブ1を通過する液体は、スプール弁7内からスプールポート7a、凹部9aおよび絞り通路であるポート9cを介して外部であるリザーバRへ排出されるようになっている。
ここで、ポート9cが絞り通路として機能せず液体が通過しても圧力損失が殆ど生じない場合、スプールポート7a、凹部9aおよび絞り通路であるポート9cを液体が順に通過する過程において、スプールポート7aと凹部9aとのみで液体の流れが絞られて、ここでのみ圧力損失が生じることになる。そして、この場合において、液体の流速が早くなって圧力低下が生じた際のスプールポート7a内の圧力分布は、凡そ、図3に示すように、スプールポート7aの図3中右端側が低圧となり図3中左端側が高圧となる。したがって、スプールポート7aの内壁のうち、スプール弁7の図2中下端となる先端側の内壁に低圧が、スプール弁7の図2中上端となるソレノイド側の内壁に高圧が作用するので、スプールポート7aの内壁に作用する圧力バランスに偏りが生じ、スプール弁7を閉弁方向となる図2中上方へ押し上げる力が作用する。
これに対して、本発明のソレノイドバルブ1にあっては、ポート9cが絞り通路として機能するので、液体がスプールポート7a、凹部9aおよび絞り通路であるポート9cを順に通過する過程において、スプールポート7aと凹部9aとで液体の流れが絞られるとともに、さらに、凹部9aからポート9cへ向かう液体の流れがポート9cで絞られる結果、凹部9a内の圧力がポート9cよりも下流側の圧力よりも高くなる。そして、この場合において、液体の流速が早くなって圧力低下が生じた際のスプールポート7a内の圧力分布は、凡そ、図4に示すように、ポート9cを絞り通路としない場合に比較して、凹部9a内の圧力が高くなってスプールポート7aの図4中右端側が中圧となり図4中左端側が高圧となる。
したがって、スプールポート7aの内壁のうち、スプール弁7の図2中下端となる先端側の内壁に中圧が、スプール弁7の図2中上端となるソレノイド側の内壁に高圧が作用するので、スプールポート7aの内壁に作用する圧力バランスに偏りが生じるものの、ポート9cを絞り通路としない場合に比較して、スプール弁7を閉弁方向となる図2中上方へ押し上げる力は低減される。
よって、本発明のソレノイドバルブ1にあっては、スプール弁7をハウジングEに対して図2中上方となる閉弁方向へ移動させる力が低減されるので、ソレノイド8でのスプール弁7の駆動に与える影響が軽微となる。そのため、ソレノイド8がスプール弁7を駆動するために必要となる推力も小さくて済み、また、ソレノイド8によるスプール弁7の位置決め精度も向上し、よって、本発明のソレノイドバルブ1は、安定した減衰力を発揮することができる。なお、圧力分布の理解を容易とするために、圧力分布を大まかに低圧、高圧、中圧(低圧と高圧の中間の圧力)として説明し、また、各圧力の境界を示しているが、実際には、圧力は徐々に変化し、液体の流れによって、たとえば、高圧範囲内に低圧が発生することもあるが、本発明の効果に影響しない。
また、このソレノイドバルブ1にあっては、ハウジングEがハウジング本体6と当該ハウジング本体6内に収容される筒状であって凹部9aとポート9cを有するバルブスリーブ9を備え、当該バルブスリーブ9がハウジング本体6に径方向への移動が許容されるフローティング支持されているので、ハウジング本体6に車体側チューブ10側からのモーメントが作用してハウジング本体6が弾性変形したり、長期間にわたる繰り返される応力の作用によってハウジング本体6が塑性変形したりしても、バルブスリーブ9とスプール弁7との径方向の位置関係に変化が生じにくく、スプール弁7の円滑な駆動が保証される。
よって、本発明のソレノイドバルブ1によれば、ハウジング本体6にモーメントが作用するような緩衝器Dに適用されても、緩衝器Dの減衰力発生応答性の劣化を防ぐことができ、安定した減衰力を発揮することができるのである。
また、バルブスリーブ9がハウジング本体6に排出通路6bおよびポート9cの軸方向の両側に配置される環状の弾性リング25,26を介してフローティング支持され、弾性リング25,26がバルブスリーブ9とハウジング本体6との間をシールするシール機能を備えているので、バルブスリーブ9とハウジング本体6との間を別途シールするシール部材が不要となり、部品点数の削減とコスト低減を図ることができる。
さらに、一方の弾性リング25はバルブスリーブ9の外周と収容部6aの内周との間に、他方の弾性リング26は、ハウジング本体6の収容部6aに面する段部6eとバルブスリーブ9の段部6eに対向する端部にそれぞれ介装されるので、バルブスリーブ9は軸方向にも径方向にもハウジング本体6との接触が全くなく、バルブスリーブ9を完全にハウジング本体6から浮いた状態で支持することが可能であり、ハウジング本体6からバルブスリーブ9への熱伝達を抑制することができるので、スプール弁7とバルブスリーブ9の熱膨張による摺動性の悪化を抑制することができ、さらに、バルブスリーブ9或いはハウジング本体6の収容部6aの軸方向寸法誤差を弾性リング26で吸収することができる。なお、弾性リング25,26はともにバルブスリーブ9の外周とハウジング本体6の収容部6aの内周との間に介装することも可能であり、バルブスリーブ9の端部がハウジング本体6に接触しないようにある程度隙間を設けておくことで熱伝達を抑制することも可能であるが、バルブスリーブ9が軸方向へずれると狙った減衰力特性の発揮が難しくなるので、熱伝導が低い部材をバルブスリーブ9と段部6eとの間に介装しておくとよい。ただし、弾性リング25,26はともにバルブスリーブ9の外周とハウジング本体6の収容部6aの内周との間に介装すると、バルブスリーブ9の外周に弾性リング26を装着するスペースを確保する必要があるから、弾性リング26をハウジング本体6の収容部6aに面する段部6eとバルブスリーブ9の段部6eに対向する端部に介装する方がバルブスリーブ9の軸方向長さを短くでき、ソレノイドバルブ1の全長を短くしてコンパクト化することができる。なお、バルブスリーブ9を省略してハウジング本体6の内周にスプール弁7を摺動自在に挿入し、内周に環状溝を設けて排出通路6bをこの環状溝に連通し、この排出通路6bを絞り通路として機能するポートとしてもよいことは当然である。
また、このソレノイドバルブ1にあっては、スプール弁7の一端からスプールポート7aが設けられる範囲Hの内径を当該範囲H外の内径よりも大径とすることで当該範囲Hの肉厚を薄くして設けた薄肉部7bを備えている。
このように薄肉部7bにスプールポート7aが設けられているから、スプール弁7にスプールポート7aをレーザー加工によって穿つ際に、レーザー出力が小さくてもよく、バリの発生量も低減されるため仕上げ加工も容易となる。
さらに、薄肉部7bにスプールポート7aを設けることにより、スプールポート7aを形成する孔の壁面の面積が小さくなる。そのため、ポート9cとスプールポート7aを通過する液体の流れが速くなり圧力が低下しても、この圧力を受ける壁面の面積が小さいので、スプール弁7をバルブスリーブ9に対して図2中上方へ移動させる力はより小さくなり、ソレノイド8でのスプール弁7の駆動に与える影響もポート9cを絞り通路とした効果と相まって非常に軽微となる。よって、本実施の形態におけるソレノイドバルブ1では、加工性に優れ、より一層安定した減衰力を発揮することができる。
また、スプール弁7の薄肉部7bが設けられる範囲Hをスプール弁7の一端から軸方向中央までとすることにより、薄肉部7bを設ける範囲をスプール弁7の軸方向長さの半分以下とすることができ、経済的となる。
さらに、ソレノイド8が筒状のステータSと当該ステータS内に摺動自在に挿入される環状の可動鉄心22とを備え、当該可動鉄心22内にスプール弁7の他端を嵌合して一体化するようにしたので、スプール弁7を可動鉄心22内に圧入する場合、スプール弁7の薄肉部7bとされておらず強度的に充分な他端を可動鉄心22に固定することができ、可動鉄心22とスプール弁7を強固に一体化することができる。
また、この実施の形態のソレノイドバルブ1は、可動鉄心22の外径をスプール弁7の外径よりも大径とし、可動鉄心22でステータS内に可動鉄心22の軸方向両側に区画されるスプール側室Aと反スプール側室Bとを連通している。このように、可動鉄心22の外径をスプール弁7の外径よりも大径としたことで、減衰力調節の際、必要に応じてスプール弁7をソレノイド8で駆動して流路5の流路面積を変化させる際に、ソレノイド8の吸引力の低下を招くことなく可動鉄心22とスプール弁7とで構成されるソレノイドバルブ1の可動部の全体重量を軽量化することができるので、車両走行中に緩衝器Dに入力される上下方向となる伸縮方向の大きな加速度によって上記可動部に作用する慣性力を軽微なものとして、スプール弁7の振動を抑制することができる。
また、スプール弁7と可動鉄心22とが筒状とされていて、可動鉄心22でステータS内に可動鉄心22の軸方向両側に区画されるスプール側室Aと反スプール側室Bとが連通されているので、ソレノイドバルブ1の可動部に流路5の圧力が作用しても、当該可動部を図2中下方へ押し下げる力と図2中上方へ押し上げる力とが拮抗するから、当該圧力によってはスプール弁7が軸方向の何れへも移動することがない。したがって、このソレノイドバルブ1にあっては、流路5の圧力が高圧となっても、ソレノイド8による流路5の流路面積の調整に影響しない。この結果、ソレノイド8の推力を流路5の圧力に打ち勝つように大きくしなければならないという問題を解消でき、小型のソレノイド8でスプール弁7を駆動して減衰力調整を行うことができる。
以上したところから、流路5の圧力によってスプール弁7が軸方向へ駆動されてしまうことがないので、ソレノイド8の可動鉄心22を吸引する力が小さくても流路5の流路面積を調節することが可能となり、可動鉄心22における磁路断面積をより小さくすることができるともに磁路に影響を与えないスプール弁7を可動鉄心22よりも小径にして軽量化することができスプール弁7の振動を抑制することができるから、本発明のソレノイドバルブ1によれば、入力される振動によって、緩衝器Dの発生する減衰力が狙った減衰力とならずに振動的に変化してしまうことを防止できる。このようにソレノイド8を利用しつつも振動入力に対しても安定的な減衰力を発揮することができるので、緩衝器Dにソレノイドバルブ1の利用が可能となる。それゆえ、このソレノイドバルブ1は、緩衝器Dの減衰力調整応答性を飛躍的に向上でき、安定した減衰力を発揮しつつ減衰力調整をスカイフック制御等といったアクティブ制御にて行うことが可能となり、特に、大きな上下加速度が作用する悪路走行に向く鞍乗車両に用いられる緩衝器に最適となる。
さらに、ソレノイド8の大型化を招かずに、スプール弁7の駆動が可能となるから、この緩衝器Dにあっては、鞍乗車両といった小型な車両への搭載性を損なうこともなく、コスト高となって経済性も損なってしまう問題もない。
また、本実施の形態では、スプール弁7を可動鉄心22よりも比重の小さい材料で形成しているので、スプール弁7が可動鉄心22と同じ材料で構成される場合に比較して、ソレノイドバルブ1における可動部であるスプール弁7と可動鉄心22の全体重量の軽量化を図っているので、車両走行中に緩衝器Dに入力される上下方向となる伸縮方向の大きな加速度によってスプール弁7に作用する慣性力をより一層軽微なものとして、スプール弁7の振動を軽微にすることができるので、より一層、ソレノイドバルブ1の発生する減衰力が狙った減衰力とならずに振動的に変化してしまうことを防止でき、より安定した減衰力を発揮することが可能である。
なお、本実施の形態におけるソレノイドバルブ1にあっては、バルブスリーブ9の内周にポート9cに連通されるとともにスプールポート7aに対向可能な環状溝でなる凹部9aを設け、スプールポート7aと凹部9aのラップ面積でソレノイドバルブ1の弁開度を調節するようにしているから、スプール弁7に環状溝を設ける必要がなく、薄肉部7bの肉厚をより一層薄くすることができるから、スプールポート7aを液体が流れる際にスプール弁7を移動させようとする力をより一層低減することができる。
また、本実施の形態のソレノイドバルブ1にあっては、可動鉄心22の外周に軸方向に沿って溝22bを設けてスプール側室Aと反スプール側室Bとを連通するようにしており、小さな可動鉄心22の肉に軸方向に沿って孔を設けてスプール側室Aと反スプール側室Bとを連通することに比較しても、可動鉄心22の外周への溝22bの形成加工は、加工性に優れていて加工が簡単となるとともに、可動鉄心22とスプール弁7の両者を貫く孔を設けてスプール側室Aをスプール弁7内に連通する場合に比較すると、溝22bによる場合、スプール弁7と可動鉄心22との周方向の位置決めが不要であるから組立も簡単となる。
なお、上記したところでは、可動鉄心22の外径は、単一であるが、ベース33に着座した状態でベース側端からケース30の内筒30aのベース側端内周に接する部位までの断面積が磁束密度の飽和を生じさせないようであれば、その部位よりもスプール弁側の肉厚はベース側よりも薄くすることも可能であるし、当該部位よりもスプール弁側の外径を小径にして、よりソレノイドバルブ1の可動部における全体重量を低減するようにしてもよい。このようにする場合、たとえば、図5に示すように、可動鉄心22の反スプール側であって常時内筒30aの内周に摺接する部位までの外径をスプール弁7の外径よりも径を大きくして大径部22cとするが、その大径部22cよりもスプール弁側の外径については小径として小径部22dを設け、この小径部22dをスプール弁7の内周に嵌合して両者を一体化することも可能である。この場合には、重量が重い可動鉄心22の重量をより軽減することができるので、ソレノイドバルブ1の可動部の全体重量をより軽減することができる。なお、スプール側室Aと反スプール側室Bの連通には、大径部22cの外周に溝22eを設ける等とすればよい。
なお、本実施の形態における緩衝器Dは、鞍乗車両の車体に連結される車体側チューブ10と、鞍乗車両の車軸に連結される車軸側チューブ11とを備え、ピストンロッド4の先端に連結したハウジング本体6を介してピストンロッド4を車体側チューブ10に連結するとともにシリンダ2を車軸側チューブ11に連結して緩衝器Dを車体側チューブ10と車軸側チューブ11とで形成される空間L内に収容し、空間L内であって緩衝器D外にリザーバRを形成し、流路5がピストンロッド4を貫通してシリンダ2内の圧側室R2或いは伸側室R1とハウジングEの中空部Cとを連通し、ポート9cがリザーバRに連通される。これにより、ソレノイドバルブ1を車体側チューブ10の上方へ集約することができ、ソレノイド8への通電も容易となるとともに、ソレノイドバルブ1が緩衝器Dにて制振される鞍乗車両の車体側へ連結されることになるから、車両走行中におけるスプール弁7の振動を抑制することができ、当該振動による減衰力変動を抑制することができる。
また、緩衝器Dは、ピストンロッド4が軸方向に沿って流路5の一部を形成する空孔4bを備え、ピストンロッド4と当該ピストンロッド4の先端に連結されるハウジングEとが中空部Cと空孔4bとを同軸かつ直列となるように連結される。これにより、スプール弁7の駆動方向がピストンロッド4の軸方向に一致するからスプール弁7を駆動するソレノイド8が側方へ張り出すことがなく、スプール弁7の駆動方向をピストンロッド4の軸線に対して交差する方向とする場合に比較して、緩衝器Dをスリムにすることができる。無論、当該効果と引き換えにスプール弁7の駆動方向を緩衝器Dの伸縮方向とは異なった方向とする、つまり、ピストンロッド4の軸線と一致させないようにすることもできるが、この場合、車両の振動と上記駆動方向とが一致しないため、当該振動によってスプール弁7の駆動方向へ加振させることを抑制することができる。
さらに、本実施の形態における緩衝器Dは、ソレノイド8の附勢ばね35の初期荷重を調節するアジャスタ34が車体側チューブ10の開口端から緩衝器Dの外方へ臨んで設けられる。これにより、アジャスタ34を外部操作することができるので、上記初期荷重の調整が容易となる。なお、附勢ばね35のばね定数にバラつきがある場合等にこの初期荷重調整を行うことで、製品毎でバラツキのない均一な減衰力調整を行うことができる。緩衝器Dの減衰力調整の均一化は、ソレノイド8に与える電流量を補正することで行ってもよい。
なお、上記したところでは、ソレノイドバルブ1は、緩衝器Dが伸長する際にのみ流路5が液体の通過を許容するようになっており、緩衝器Dの伸側減衰力を発生する減衰力発生要素として機能しているので、緩衝器Dの伸側減衰力を調整することができるが、緩衝器Dが収縮する際にのみ流路5が液体の通過を許容するように設定して、緩衝器Dの圧側減衰力を発生する減衰力発生要素として機能して圧側減衰力の調整をするようにしてもよい。つまり、ピストン連結部4cに設けられる連通路4dで伸側室R1の代わりに圧側室R2を空孔4bへ連通するようにすれば、ソレノイドバルブ1は、圧側減衰力の調整を行うことができる。このようにすると、緩衝器Dの収縮作動時にのみ流路5を液体が通過するように設定できる。
また、流路5が伸側室R1と圧側室R2とを連通するように設定される場合には、ソレノイドバルブ1は、緩衝器Dの伸長時と収縮時の両方で減衰力調整を行うように設定されてもよい。この場合、たとえば、ハウジングをピストンロッド若しくはピストン連結部としてスプール弁を収容し、ピストンロッド若しくはピストン連結部に伸側室R1と圧側室R2とを連通する流路を設けて、ソレノイドでスプール弁を駆動してやればよい。
さらに、上記したところでは、スプール弁7の後退時に流路5の流路面積が減少するように設定されているが、スプール弁7が最下方位置にて流路5の流路面積を最小とするように設定しておき、スプール弁7の後退で流路5の流路面積が大きくなるようにしてもよく、また、流路5を完全に遮断することができるようになっていてもよい。
また、ハウジング本体6は、ピストンロッド4と一体とされて一部品とされてもよく、ハウジング本体6を複数の部品で構成するようにしてもよい。さらに、上記実施の形態では、コイル31aへ通電するためのコネクタ31dをモールドコイル31に一体化しているが、コネクタ31dをモールドコイル31から分離してコイル31aと電源端子31cとをコードで接続するようにしてもよいし、コネクタおよび電源端子を廃してコイル31aをコードのみを介して外部電源に接続するようにしてもよい。
また、緩衝器Dは、ソレノイドバルブ1が緩衝器Dの伸長時に減衰力を発揮する場合には、伸長時にのみ減衰力を発揮する構成とされてもよく、また、ソレノイドバルブ1が緩衝器Dの収縮時に減衰力を発揮する場合には、収縮時にのみ減衰力を発揮する構成を採用しても構わず、緩衝器Dが左右一対で車両に適用されて車輪を支持するような場合、左右の緩衝器Dの一方が伸長時に減衰力を発揮し、他方が収縮時に減衰力を発揮するように設定されてもよい。
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。