しかし、プローブ情報を送信することができる車載装置を搭載した車両の割合は比較的少ない。このため、交通情報を提供するのに必要な量のプローブ情報を取得することは困難である。このため、車両感知器の設置密度が低い路線であって、プローブ情報の取得頻度も少ない場合でも、正確な交通情報を提供することが望まれていた。
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、渋滞に関する交通情報を精度よく推定することができる交通情報推定装置、該交通情報推定装置を実現するためのコンピュータプログラム及び交通情報推定方法を提供することを目的とする。
第1発明に係る交通情報推定装置は、道路に設けられた2つの車両感知器で画定される区間での渋滞に関する交通情報を推定する交通情報推定装置であって、各車両感知器で得られた感知データに基づいて、各車両感知器が設けられた上流地点及び下流地点の任意の時点での地点交通量を取得する交通量取得手段と、前記区間内の流入路及び流出路それぞれの前記任意の時点での入出路交通量を記憶する交通量記憶手段と、前記区間を走行した車両のプローブ情報を取得する取得手段と、前記地点交通量、入出路交通量及び前記取得手段で取得した所定時点でのプローブ情報に基づいて、前記任意の時点での前記区間内に存在する車両の区間台数を推定する第1推定手段と、該第1推定手段で推定した区間台数に基づいて、前記任意の時点での前記区間内の渋滞区間の位置を推定する渋滞位置推定手段と、前記地点交通量、入出路交通量及び前記第1推定手段で推定した区間台数に基づいて前記区間の前記任意の時点での旅行時間を推定する旅行時間推定手段とを備えることを特徴とする。
第2発明に係る交通情報推定装置は、第1発明において、前記取得手段で取得したプローブ情報に基づいて、プローブ情報取得時点での前記区間内に存在する車両の区間台数を推定する第2推定手段を備え、前記第1推定手段は、前記第2推定手段で推定した区間台数に基づいて前記任意の時点での前記区間内に存在する車両の区間台数を推定するようにしてあることを特徴とする。
第3発明に係る交通情報推定装置は、第2発明において、前記取得手段で取得したプローブ情報に基づいて、前記上流地点と流出路との間の第1旅行時間、該流出路と流入路との間の第2旅行時間、及び該流入路と下流地点との間の第3旅行時間を算出する旅行時間算出手段を備え、前記第2推定手段は、前記地点交通量、入出路交通量及び前記旅行時間算出手段で算出した各旅行時間に基づいて、前記プローブ情報取得時点での前記区間内に存在する車両の区間台数を推定するようにしてあることを特徴とする。
第4発明に係る交通情報推定装置は、第2発明又は第3発明において、前記取得手段で取得したプローブ情報に基づいて、プローブ情報取得時点での前記区間内の渋滞区間の位置を算出する渋滞位置算出手段と、該渋滞位置算出手段で算出した渋滞区間の位置及び前記第2推定手段で推定した区間台数に基づいて、前記プローブ情報取得時点での前記渋滞区間に存在する車両の渋滞台数を推定する渋滞台数推定手段と、該渋滞台数推定手段で推定した渋滞台数を用いて、前記任意の時点での渋滞区間の位置を推定する渋滞位置推定手段とを備えることを特徴とする。
第5発明に係る交通情報推定装置は、第4発明において、各車両感知器で得られた感知データに基づいて、前記上流地点及び下流地点での車両の地点速度を算出する地点速度算出手段を備え、前記渋滞位置推定手段は、前記地点速度算出手段で算出した地点速度、所定の地点速度閾値、前記渋滞位置算出手段で算出したプローブ情報取得時点での渋滞区間の位置、前記渋滞台数推定手段で推定した渋滞台数及び前記第2推定手段で推定した区間台数に基づいて、前記任意の時点での渋滞区間の位置を推定するようにしてあることを特徴とする。
第6発明に係る交通情報推定装置は、第4発明において、各車両感知器で得られた感知データに基づいて、前記上流地点及び下流地点での車両の地点速度を算出する地点速度算出手段を備え、前記渋滞台数推定手段は、前記地点交通量、地点速度、渋滞位置算出手段で算出した渋滞区間の位置及び前記第2推定手段で推定した区間台数に基づいて、前記プローブ情報取得時点での渋滞台数を推定するようにしてあることを特徴とする。
第7発明に係る交通情報推定装置は、第6発明において、前記渋滞位置推定手段で推定した渋滞区間の位置及び前記第1推定手段で推定した区間台数の時間経過に伴う増減に基づいて、前記プローブ情報取得時点後の時点での前記渋滞区間の渋滞長を推定する渋滞長推定手段を備えることを特徴とする。
第8発明に係る交通情報推定装置は、第1発明において、前記区間の旅行時間に対する前記上流地点と流出路との間の第1旅行時間の第1比率、前記旅行時間に対する前記流出路と流入路との間の第2旅行時間の第2比率、及び前記旅行時間に対する前記流入路と下流地点との間の第3旅行時間の第3比率を記憶する記憶手段を備え、前記旅行時間推定手段は、前記記憶手段に記憶した各比率を用いて前記区間の旅行時間を推定するようにしてあることを特徴とする。
第9発明に係る交通情報推定装置は、第1発明乃至第8発明のいずれか1つにおいて、前記流入路及び流出路それぞれの交通量を取得する交通量取得手段を備え、前記交通量記憶手段は、前記交通量取得手段で取得した交通量に基づく入出路交通量を記憶してあることを特徴とする。
第10発明に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに、道路に設けられた2つの車両感知器で画定される区間での渋滞に関する交通情報を推定させるためのコンピュータプログラムであって、コンピュータに、各車両感知器が設けられた上流地点及び下流地点の任意の時点での地点交通量、前記区間内の流入路及び流出路それぞれの前記任意の時点での入出路交通量並びに前記区間を走行した車両の所定時点でのプローブ情報に基づいて、前記任意の時点での前記区間内に存在する車両の区間台数を推定するステップと、推定した区間台数に基づいて、前記任意の時点での前記区間内の渋滞区間の位置を推定するステップと、前記地点交通量、入出路交通量及び推定した区間台数に基づいて前記区間の前記任意の時点での旅行時間を推定するステップとを実行させることを特徴とする。
第11発明に係る交通情報推定方法は、道路に設けられた2つの車両感知器で画定される区間での渋滞に関する交通情報を推定する交通情報推定装置が行う交通情報推定方法であって、各車両感知器で得られた感知データに基づいて、各車両感知器が設けられた上流地点及び下流地点の任意の時点での地点交通量を取得するステップと、前記区間を走行した車両のプローブ情報を取得するステップと、取得された地点交通量、記憶手段に予め記憶された前記区間内の流入路及び流出路それぞれの前記任意の時点での入出路交通量並びに取得された所定時点でのプローブ情報に基づいて、前記任意の時点での前記区間内に存在する車両の区間台数を推定するステップと、推定された区間台数に基づいて、前記任意の時点での前記区間内の渋滞区間の位置を推定するステップと、前記地点交通量、入出路交通量及び推定された区間台数に基づいて前記区間の前記任意の時点での旅行時間を推定するステップとを含むことを特徴とする。
第1発明、第10発明及び第11発明にあっては、道路の区間の上流地点(始点)及び下流地点(終点)には車両感知器が設置されている。また、区間内には、流出路(オフランプ)及び流入路(オンランプ)が設けられている。流出路及び流入路は、インターチェンジの出入口である。すなわち、インターチェンジ間に1個の車両感知器が設置されている場合、インターチェンジを挟んで2つの車両感知器が設置された地点間が区間である。交通量取得手段は、車両感知器で得られた感知データに基づいて、車両感知器が設けられた上流地点の任意の時点tでの地点交通量Q1(t)及び下流地点の当該任意の時点tでの地点交通量Q4(t)を取得する。交通量は単位時間当たりに通過した車両の台数である。交通量記憶手段は、入出路交通量である流入路の当該任意の時点tでの交通量Qin(t)及び流出路の当該任意の時点tでの交通量Qout(t)を記憶する。
取得手段は、区間を走行した車両の所定時点でのプローブ情報を取得する。所定時点は、例えば、プローブデータの取得時点である。プローブ情報は、フローティングカーデータ又はプローブカーデータとも称し、例えば、車両の位置を含む情報を所定の周期(例えば、0.1秒、1秒など)で記録したものであり、車両から路側装置など外部の装置へ送信される。プローブ情報には、車両の位置情報の他に、車両を識別する識別番号(車両ID)、速度情報、時刻情報、方位情報などの情報を含めることができる。
第1推定手段は、地点交通量、入出路交通量及びプローブ情報に基づいて、当該任意の時点tでの区間内に存在する車両の区間台数E(t)を推定する。第1推定手段で推定する区間台数を第1推定値とも称する。時刻tにおける区間台数E(t)は、時刻(t−Δt)における区間台数をE(t−Δt)とした場合、例えば、時刻(t−Δt)における区間台数E(t−Δt)に、時間Δtの間の、上流地点の交通量Q1(t)及び流入路の交通量Qin(t)の合計から、下流地点の交通量Q4(t)及び流出路の交通量Qout(t)の合計を差し引いた値を加算して求めることができる。すなわち、時刻(t−Δt)における区間台数E(t−Δt)に、時間Δtの間の区間への流入出台数の差分を加算したものが時刻tにおける区間台数E(t)となる。
渋滞位置推定手段は、推定した区間台数に基づいて、当該任意の時点tでの区間内の渋滞区間の位置を推定する。渋滞区間の位置は、渋滞区間の先頭位置、末尾位置、渋滞長などを含む。区間内に渋滞区間が存在するとし、時刻(t−Δt)における渋滞区間内に存在する渋滞台数をEc(t−Δt)とし、時刻tにおける渋滞区間内に存在する渋滞台数をEc(t)とする。時間Δtの間に区間台数が増減した場合、区間台数の増減は渋滞台数の増減と考えることができる。時刻tにおける渋滞台数の増減dEc(t)は、Ec(t)−Ec(t−Δt)=E(t)−E(t−Δt)となり、dEc(t)に応じて渋滞区間の先頭位置又は末尾位置を変化させることにより渋滞区間の位置を推定する。なお、渋滞台数に、渋滞時の車頭間距離及び車長の合計値を乗算することにより渋滞長を求めることができる。これにより、渋滞に関する交通情報(渋滞区間の位置)を精度よく推定することができる。
旅行時間推定手段は、任意の時点tでの交通量Qout(t)、Qin(t)、Q4(t)及び第1推定手段で推定した区間台数E(t)に基づいて、当該任意の時点tでの区間の旅行時間を推定する。区間台数E(t)が求められた場合、旅行時間は区間で捌ける交通量から推定することができる。これにより、渋滞に関する交通情報(旅行時間)を精度よく推定することができる。
第2発明にあっては、第2推定手段は、取得したプローブ情報に基づいて、プローブ情報取得時点での区間内に存在する車両の区間台数E(t)を推定する。第2推定手段で推定する区間台数を第2推定値とも称する。第2推定値は、プローブ情報が得られたときに推定した区間台数である。
第1推定手段は、第2推定手段で推定したプローブ情報取得時点での区間台数に基づいて、任意の時点での区間台数を推定する。すなわち、プローブ情報が得られない時点での区間台数(第1推定値)を、プローブ情報が得られた時点で推定した区間台数(第2推定値)に基づいて推定する。例えば、第1推定手段で推定した区間台数を、カルマン状態方程式として、E(t)=E(t−Δt)+u(t)+ξ(t)と表し、第2推定手段で推定した区間台数を、観測方程式として、y(t)=E(t)+η(t)と表してカルマン方程式を構成することにより、時刻tの状態変数E(t)の最適推定値EE(t)を求めることができる。なお、E(t)は時刻tの区間台数の真値(未知)であり、y(t)は第2推定値であり、u(t)は時刻tでの区間への流入出台数の差分であり、ξ(t)は状態方程式の誤差であり、η(t)は観測方程式の誤差である。これにより、プローブ情報を取得することができない時点であっても、精度よく区間台数を推定することができる。
第3発明にあっては、旅行時間算出手段は、取得したプローブ情報に基づいて、上流地点と流出路との間の第1旅行時間T1、流出路と流入路との間の第2旅行時間T2、及び流入路と下流地点との間の第3旅行時間T3を算出する。
第2推定手段は、地点交通量Q1(t)又はQ4(t)、流入路の交通量Qin(t)、流出路の交通量Qout(t)及び算出した各旅行時間T1、T2、T3に基づいて、プローブ情報取得時点での区間内に存在する車両の区間台数E(t)を推定する。第2推定手段で推定する区間台数を第2推定値とも称する。第2推定値は、プローブ情報が得られたときに推定した区間台数である。例えば、区間の旅行時間をT(=T1+T2+T3)とすると、時刻tにおける区間台数E(t)は、時刻t−Tから時刻tまでの間の上流地点の交通量Q1(t)と、時刻t−T3から時刻tまでの間の流入路の交通量Qin(t)との合計値から、時刻t−(T2+T3)から時刻tまでの間の流出路の交通量Qoutを差し引いた値となる。これにより、プローブ情報を取得することができた時点(周期)で精度よく区間台数(第2推定値)を推定することができる。
第4発明にあっては、渋滞位置算出手段は、取得したプローブ情報に基づいて、プローブ情報取得時点での区間内の渋滞区間の位置を算出する。例えば、区間の上流地点から下流地点に向かってプローブ情報を探索し、車両の時刻と位置とにより速度Vを求めることができる。速度Vが、所定距離LT1を超えて連続で閾値速度VT1を下回った場合、所定距離LT1の位置を渋滞の末尾位置と推定する。また、さらに区間の下流地点に向かって探索し、速度Vが、所定距離LT2を超えて連続で閾値速度VT2を上回った場合、所定距離LT2の位置を渋滞の先頭位置と推定する。渋滞長は、先頭位置と末尾位置との間の距離とすることができる。
なお、区間と渋滞区間との関係を示す渋滞パターンは、例えば、区間全体が渋滞区間である場合(パターンA)、渋滞区間がない場合(パターンB)、区間に渋滞区間の末尾のみ存在する場合(パターンC)、区間に渋滞区間の先頭のみ存在する場合(パターンD)、区間に渋滞区間の先頭及び末尾が存在する場合(パターンE)に分けることができる。
渋滞台数推定手段は、渋滞位置算出手段で算出した渋滞区間の位置及び第2推定手段で推定した区間台数に基づいて、プローブ情報取得時点での渋滞区間に存在する車両の渋滞台数を推定する。渋滞位置推定手段は、推定した渋滞台数を用いて、任意の時点での渋滞区間の位置を推定する。これにより、任意の時点で精度よく交通情報(渋滞区間の位置)を推定することができる。
第5発明にあっては、車両感知器で得られた感知データに基づいて、上流地点の車両の地点速度V1(t)及び下流地点での車両の地点速度V4(t)を算出する。渋滞位置推定手段は、算出した地点速度、所定の地点速度閾値、渋滞位置算出手段で算出したプローブ情報取得時点での渋滞区間の位置、渋滞台数推定手段で推定した渋滞台数及び第2推定手段で推定した区間台数に基づいて、任意の時点での渋滞区間の位置を推定する。例えば、上流地点の地点速度V1(t)が地点速度閾値VTより小さい場合には、上流地点は渋滞区間内にあると考えることができる。一方、上流地点の地点速度V1(t)が地点速度閾値VTより大きい場合には、車両がスムーズに走行しており、上流地点は渋滞区間内にないと考えることができる。同様に、下流地点の地点速度V4(t)が地点速度閾値VTより小さい場合には、下流地点は渋滞区間内にあると考えることができる。一方、下流地点の地点速度V4(t)が地点速度閾値VTより大きい場合には、車両がスムーズに走行しており、下流地点は渋滞区間内にないと考えることができる。従って、上流地点又は下流地点の地点速度が地点速度閾値より小さくなったか、あるいは大きくなった場合には、前述の渋滞区間のパターンA〜EがどのパターンA〜Eに変化したかを判定することができる。また、地点速度と地点速度閾値との大小関係に変化がない場合には、渋滞パターンに変化がないと判定することができる。これにより、プローブ情報を取得することができない場合でも、渋滞区間の位置を精度よく推定することができる。
第6発明にあっては、車両感知器で得られた感知データに基づいて、上流地点の車両の地点速度V1(t)及び下流地点での車両の地点速度V4(t)を算出する。渋滞台数推定手段は、地点交通量、地点速度、渋滞位置算出手段で算出した渋滞区間の位置及び第2推定手段で推定した区間台数に基づいて、プローブ情報取得時点での渋滞台数を推定する。
前述の渋滞区間のパターンが、パターンAの場合は、渋滞台数Ec(t)は、区間台数E(t)に等しい。パターンBの場合は、渋滞台数Ec(t)は0である。パターンCの場合は、下流地点の交通量をQ4(t)及び車両の速度をV4(t)とすると、渋滞台数Ec(t)は、l(t)×Q4(t)/V4(y)と推定することができる。l(t)は渋滞長である。パターンDの場合は、上流地点の交通量をQ1(t)及び車両の速度をV1(t)とすると、渋滞台数Ec(t)は、l(t)×Q1(t)/V1(y)と推定することができる。パターンEの場合は、上流地点から渋滞末尾までの距離をle(t)、渋滞先頭から下流地点までの距離をls(t)とすると、渋滞台数Ec(t)は、E(t)−ls(t)×Q4(t)/V4(t)−le(t)×Q1(t)/V1(t)と推定することができる。これにより、渋滞区間内の渋滞台数を精度よく推定することができる。
第7発明にあっては、渋滞長推定手段は、渋滞位置推定手段で推定した渋滞区間の位置及び第1推定手段で推定した区間台数の時間経過に伴う増減に基づいて、プローブ情報取得時点後の時点での渋滞区間の渋滞長を推定する。推定した渋滞区間の位置は、例えば、前述の渋滞パターンA〜Eのいずれかのパターンとして求めることができる。時刻t−Δtから時刻tまでのΔtの間の区間台数の増減は渋滞台数の増減と考えることができる。すなわち、時間Δtの間の渋滞台数の増減をdEc(t)とし、区間台数の増減をdE(t)とすると、dEc(t)=Ec(t)−Ec(t−Δt)=dE(t)=E(t)−E(t−Δt)となる。また、渋滞区間では飽和状態であるので、車両の密度(距離当たりの車両の台数)は変化しないものと考えることができる。すなわち、時刻tにおける渋滞長をl(t)とすると、Ec(t)/l(t)=Ec(t−Δt)/l(t−Δt)となる。時刻tにおける渋滞長l(t)は、l(t−Δt)×Ec(t)/Ec(t−Δt)で求めることができる。これにより、プローブ情報を取得することができない場合でも、渋滞長を精度よく推定することができる。
第8発明にあっては、区間の旅行時間をT、上流地点と流出路との間の第1旅行時間をT1、流出路と流入路との間の第2旅行時間をT2、流入路と下流地点との間の第3旅行時間をT3とすると、第1比率cは、c=T1/Tであり、第2比率bは、b=T2/Tであり、第3比率aは、a=T3/Tである。なお、各旅行時間T、T1、T2、T3は、区間を走行した車両が送信したプローブ情報を取得した時点で算出することができ、各比率a、b、cは算出した各旅行時間T、T1、T2、T3に基づいて求めることができ、求めた各比率a、b、cを記憶手段に記憶しておけばよい。また、流出路の交通量Qout(t)、流入路の交通量Qin(t)、下流地点での交通量Q4(t)それぞれの統計値を記憶手段に記憶しておく。統計値は、例えば、1日24時間の時間経過に対する交通量の変化を示すものであり、交通調査等により平日、休日、特定の日毎に予め作成しておくことができる。
旅行時間推定手段は、各比率a、b、c、交通量Qout(t)、Qin(t)、Q4(t)の統計値及び第1推定手段で推定した区間台数E(t)に基づいて区間の旅行時間を推定する。区間台数E(t)が求められた場合、旅行時間は区間で捌ける交通量から推定することができる。例えば、時刻tに上流地点を出発する車両が下流地点に到着するまでの旅行時間(出発旅行時間)をTとすると、時刻tにおける区間台数E(t)から、時刻tから時刻t+Tまでの間に下流地点から捌ける交通量Q4(t)及び時刻tから時刻t+T1までの間に流出路から捌ける交通量Qout(t)の合計を減算し、減算した値に時刻(t+T1+T2)から時刻t+Tまでの間に流入路から流入した交通量Qin(t)を加算した値が0に等しくなる。推定する旅行時間Tの間、各比率a、b、cが変化しないものとし、旅行時間T1、T2を比率a、b、cを用いて旅行時間Tで表した上で、区間台数E(t)が0となるTを求めることにより、旅行時間Tを推定することができる。これにより、渋滞に関する交通情報(旅行時間)を精度よく推定することができる。
第9発明にあっては、流入路及び流出路それぞれの交通量を取得し、取得した交通量に基づく入出路交通量を記憶してある。例えば、流入路及び流出路には料金所が存在するので、料金所を通過する車両を感知することにより、流入路及び流出路それぞれの交通量をリアルタイムで取得することができる。また、流入路及び流出路に車両感知器が設置されている場合には、感知データに基づいて、流入路及び流出路それぞれの交通量をリアルタイムで取得することができる。
本発明によれば、渋滞に関する交通情報を精度よく推定することができる。
以下、本発明に係る交通情報推定装置の実施の形態を示す図面に基づいて説明する。図1は本実施の形態の交通情報推定装置が交通情報を推定する対象となる道路の区間の一例を示す模式図である。道路は、途中に複数のインターチェンジ(IC)が存在する高速道路、有料道路などである。図1に示すように、道路の区間の上流地点P1(始点)及び下流地点P4(終点)には車両感知器1が設置されている。また、区間内には、流出路(オフランプ)及び流入路(オンランプ)が設けられている。流出路及び流入路は、インターチェンジの出入口である。以下の説明では、流出路をオフランプ、流入路をオンランプと称する。上流地点P1のさらに上流側には別のインターチェンジが存在し(破線で示す)、当該インターチェンジにもオンランプ及びオフランプが存在する。すなわち、インターチェンジ間に1個の車両感知器が設置されている。従って、インターチェンジを挟んで2つの車両感知器が設置された上流地点P1及び下流地点P4の間が区間である。
図1において、地点P2は、オフランプが設けられた地点であり、より具体的には、オフランプに進入する直前の位置を示す。また、地点P3は、オンランプが設けられた地点であり、より具体的には、オンランプに進入する直前の位置を示す。なお、高速道路の平均的なインターチェンジ間長は、13km程度であり、長い場合では23km程度である。本実施の形態では、インターチェンジを挟む区間の交通情報を精度よく推定することができる。また、車両感知器がインターチェンジのオンランプの下流側近くに設置されている場合には、インターチェンジ間の交通情報を精度よく推定することができる。
図2は本実施の形態の交通情報推定装置100の構成の一例を示すブロック図である。本実施の形態の交通情報推定装置100は、装置全体を制御する制御部10、通信部11、地点交通量算出部12、第1推定部13、渋滞位置推定部14、記憶部15、旅行時間推定部16、旅行時間算出部17、第2推定部18、車両速度算出部19、渋滞台数推定部20、地点速度算出部21、渋滞長推定部22などを備える。
通信部11は、車両感知器1、あるいは他の路側装置等との間の通信機能を有し、例えば、車両の感知データ、車載装置が送信したプローブ情報などを取得する。プローブ情報は、プローブデータ、フローティングカーデータ又はプローブカーデータとも称し、例えば、車両の位置を含む情報を所定の周期(例えば、0.1秒、1秒など)で記録したものであり、車両から路側装置などへ送信される。本実施の形態では、プローブ情報をプローブデータと称する。プローブデータには、車両の位置情報の他に、車両を識別する識別番号(車両ID)、速度情報、時刻情報、方位情報などの情報を含めることができる。
地点交通量算出部12は、車両感知器1で得られた感知データに基づいて、車両感知器1が設置された上流地点P1の交通量(地点交通量)Q1(t)及び下流地点P4の交通量(地点交通量)Q4(t)を算出する。交通量Q1(t)、Q4(t)は、それぞれ単位時間当たりに上流地点P1及び下流地点P4を通過した車両の台数である。なお、地点交通量算出部12は必須の構成ではなく、地点交通量算出部12を具備することなく、通信部11を介して、外部の装置で算出した交通量Q1(t)、Q4(t)を取得するようにしてもよい。
記憶部15は、交通量記憶手段としての機能を有し、入出路交通量であるオンランプの交通量Qin(t)及びオフランプの交通量Qout(t)を記憶する。オンランプ及びオフランプには料金所が存在するので、料金所を通過する車両を感知することができる場合には、オンランプ及びオフランプそれぞれの交通量をリアルタイムで取得することができる。また、オンランプ及びオフランプに車両感知器(不図示)が設置されている場合には、車両感知器で得られた感知データに基づいて、オンランプ及びオフランプそれぞれの交通量をリアルタイムで取得することができる。
第1推定部13は、第1推定手段としての機能を有し、上流地点P1の交通量Q1(t)、下流地点P4の交通量Q4(t)、オンランプの交通量Qin(t)及びオフランプの交通量Qout(t)に基づいて、任意の時点での区間内に存在する車両の区間台数E(t)を推定する。
図3は区間の交通量の一例を示す模式図である。図3に示すように、時刻tにおける、上流地点P1の交通量をQ1(t)、下流地点P4の交通量をQ4(t)、オフランプの交通量をQout(t)、オンランプの交通量をQin(t)とする。また、時刻tにおいて、地点P2の交通量をQ2(t)とし、地点P3の交通量をQ3(t)とする。この場合、交通量Q2(t)は、Q2(t)=Qout(t)+Q3(t)の関係となる。また、交通量Q3(t)は、Q3(t)+Qin(t)=Q4(t)の関係となる。
図3に示すように、時刻t−Δtでの区間の存在台数をE(t−Δt)とし、時刻tでの区間の存在台数E(t)とすると、存在台数E(t)の漸化式は、式(1)で表すことができる。
また、Q2(t)=Qout(t)+Q3(t)の関係、及びQ3(t)+Qin(t)=Q4(t)の関係を式(1)に代入してQ2(t)、Q3(t)を消去すると式(2)を得ることができる。式(2)で表す存在台数E(t)は、第1推定部13で推定する第1推定値である。
式(2)から解るように、時刻tにおける区間台数E(t)は、時刻(t−Δt)における区間台数E(t−Δt)に、時間Δtの間の、上流地点の交通量Q1(t)及び流入路の交通量Qin(t)の合計から、下流地点の交通量Q4(t)及び流出路の交通量Qout(t)の合計を差し引いた値を加算して求めることができる。すなわち、時刻(t−Δt)における区間台数E(t−Δt)に、時間Δtの間の区間への流入出台数の差分を加算したものが時刻tにおける区間台数E(t)となる。
オフランプの交通量Qout(t)、オンランプの交通量Qin(t)をリアルタイムで取得することができない場合には、オフランプの交通量Qout(t)、オンランプの交通量Qin(t)の統計値を記憶部15に記憶しておき、交通量の統計値を用いることができる。
図4はオンランプ及びオフランプの交通量の統計値の一例を示す説明図である。図4に示すように、統計値は、例えば、1日24時間の時間経過に対する交通量の変化を示すものであり、交通調査等により平日、休日、特定の日毎に予め作成しておくことができる。なお、1日24時間に亘る統計値に限定されるものではなく、1日の所要の時間帯における統計値でもよい。なお、図4に例示するような統計値は、区間の上流地点P1及び下流地点P4での交通量についても作成しておくことができる。
図5は統計値を利用して交通量を推定する方法の一例を示す説明図である。図5において、SQは交通量の統計データを時刻でプロットしたものである。交通量SQは、例えば、上流地点P1及び下流地点P4での交通量でもよく、オフランプ及びオンランプの交通量でもよい。時刻tの統計値をSQ(t)とし、時刻t+Δtの統計値をSQ(t+Δt)とする。例えば、時刻tにおいてリアルタイムで得られた交通量をq(t)とすると、時間がΔtだけ経過した時刻t+Δtにおける交通量の推定値EQ(t+Δt)は、EQ(t+Δt)=SQ(t+Δt)+q(t)−SQ(t)により求めることができる。すなわち、Δt後の交通量の推定値は、交通量の統計値とリアルタイムで得られた交通量との差分がΔt時間後の統計値にもそのまま適用されるものとして推定する。また、統計値は、指数平滑法で逐次更新することができる。
本実施の形態では、プローブデータの取得頻度、すなわち、単位時間当たりにプローブデータを送信する固有の車両の数が少ない場合を前提としているが、以下、プローブデータを取得した時点(又は周期)について説明する。
図6はプローブデータを取得した場合の区間の旅行時間の一例を示す模式図である。なお、図6においては、簡便のため、1つのプローブデータだけを示すが、複数の車両からのプローブデータが存在してもよい。
旅行時間算出部17は、旅行時間算出手段としての機能を有し、取得したプローブデータに基づいて、上流地点P1とオフランプとの間の第1旅行時間T1、オフランプとオンランプとの間の第2旅行時間T2、オンランプと下流地点P4との間の第3旅行時間T3、及び区間の旅行時間Tを算出する。なお、複数の車両から得られたプローブデータに基づいて旅行時間の平均値を算出することもできる。
また、旅行時間算出部17は、プローブデータに基づいて算出した第1旅行時間T1、第2旅行時間T2、第3旅行時間T3、及び区間の旅行時間Tを用いて、旅行時間の第1比率c、第2比率b、第3比率aを算出する。第1比率cは、c=T1/Tであり、第2比率bは、b=T2/Tであり、第3比率aは、a=T3/Tである。なお、各比率は、区間を走行した車両が送信したプローブデータを取得した時点で算出することができ、求めた各比率a、b、cを記憶部15に記憶する。
第2推定部18は、第2推定手段としての機能を有し、上流地点P1の交通量Q1(t)又は下流地点の交通量Q4(t)、オンランプの交通量Qin(t)、オフランプの交通量Qout(t)及び旅行時間算出部17で算出した各旅行時間T1、T2、T3に基づいて、プローブデータ取得時点での区間内に存在する車両の区間台数E(t)を推定する。なお、第2推定部18で推定する区間台数を第2推定値とも称する。
プローブデータ取得時点での区間内に存在する車両の区間台数E(t)は、式(3)で求めることができる。
式(3)のとおり、第2推定値は、プローブデータが得られたときに推定した区間台数である。例えば、区間の旅行時間をT(=T1+T2+T3)とすると、時刻tにおける区間台数E(t)は、時刻t−Tから時刻tまでの間の上流地点P1の交通量Q1(t)と、時刻t−T3から時刻tまでの間のオンランプの交通量Qin(t)との合計値から、時刻t−(T2+T3)から時刻tまでの間のオフランプの交通量Qoutを差し引いた値となる。これにより、プローブデータを取得することができた時点(周期)で精度よく区間台数(第2推定値)を推定することができる。
なお、プローブデータ取得時点での区間内に存在する車両の区間台数E(t)は、式(4)で求めることもできる。
次に、プローブデータが得られた場合の第2推定値である区間台数E(t)に基づいて、プローブデータが得られていない時間帯での第1推定値である区間台数E(t)を算出する方法について説明する。
第1推定部13は、第2推定部18で推定したプローブデータ取得時点での区間台数に基づいて、任意の時点での区間台数を推定する。すなわち、プローブデータが得られない時点での区間台数(第1推定値)を、プローブデータが得られた時点で推定した区間台数(第2推定値)に基づいて推定する。より具体的には、区間台数の第1推定値及び第2推定値を表す2つの数式でカルマンフィルタを組み立てることができる。
前述の式(1)を状態方程式とし、式(3)を観測方程式としてカルマン方程式を構成すると、式(5)及び式(6)のようになる。
式(5)、式(6)において、E(t)は時刻tでの区間台数(推定したい変数)の真値(未知)であり、y(t)は時刻tでプローブデータに基づいて算出した旅行時間を用いて求めた区間台数の推定値(第2推定値)であり、u(t)は時刻tでの区間への流入出台数の差分であり、ξ(t)は時刻tの状態方程式の誤差(未知)であり、η(t)は時刻tの観測方程式の誤差(未知)である。
この場合、誤差ξ(t)、η(t)の特性を後述のように仮定すると、時刻tの状態変数E(t)の最適推定値EE(t)とその誤差(分散)Σ(t)は、それぞれ式(7)、式(9)で求めることができる。式(7)はフィルタ方程式であり、式(9)は最適推定値の分散である。また、式(7)において、K(t)は式(8)で表され、カルマンゲインである。なお、最適推定値の初期値EE(0)は、式(10)であるとし、誤差分散の初期値Σ(t)は、式(11)であるとする。
また、誤差の特性は、以下のように仮定することができる。平均α、分散Bの正規分布をN(α、B)で表すと、推定値の初期値E(0)は、N(α、B)であり、ξ(t)はN(0、M(t))と表すことができ、η(t)はN(0、N(t))と表すことができる。
上述のように、第1推定部13で推定した区間台数を、カルマン状態方程式として、E(t)=E(t−Δt)+u(t)+ξ(t)と表し、第2推定部18で推定した区間台数を、観測方程式として、y(t)=E(t)+η(t)と表してカルマン方程式を構成することにより、時刻tの状態変数E(t)の最適推定値EE(t)を求めることができる。これにより、プローブデータを取得することができない時点であっても、精度よく区間台数を推定することができる。
次に、渋滞区間の位置の推定方法について説明する。渋滞区間の位置の推定は、プローブデータが得られた時点、時間帯、周期に推定するものと、プローブデータが得られてない場合に推定するものがある。まず、プローブデータが得られた場合について説明する。
図7はプローブデータが存在する場合の渋滞区間の位置の推定方法の一例を示す模式図である。例えば、時刻t−ΔTから時刻tまでの間にn個のプローブデータ列P(t)を取得したとする。プローブデータ列P(t)は、n個のプローブデータp(xi、yi、ti)を時系列的に並べたものである。ここで、xiは経度、yiは緯度、tiは時刻を表し、iは1からnまでの数値である。
車両速度算出部19は、速度算出手段としての機能を有し、取得したプローブデータに基づいて車両の速度を算出する。車両の速度は、区間を走行した車両のプローブデータを時系列に並べ(プローブデータ列)、例えば、隣り合う2点間の距離と、当該2点間の時刻差により求めることができる。これにより、区間内の複数の地点での車両の速度のデータ列Vi(i=1〜n)を求める。なお、図7Bでは、車両の速度を実線で示している。
渋滞位置推定部14は、渋滞位置推定手段としての機能を有し、算出した速度及び所定の閾値速度に基づいて、プローブデータ取得時点での区間内の渋滞区間の位置を推定する。
例えば、図7Bに示すように、区間の上流地点P1から下流地点P4に向かって速度のデータ列Vi(i=1〜n)を探索し、速度Viが、所定距離LT1を超えて所定の回数N1連続で閾値速度VT1を下回った場合、所定距離LT1の位置を渋滞の末尾位置と推定する(図7C)。また、さらに区間の下流地点P4に向かって速度のデータ列を探索し、速度Viが、所定距離LT2を超えて所定の回数N2(回数N1とは同じ回数である必要はない)連続で閾値速度VT2を上回った場合、所定距離LT2の位置を渋滞の先頭位置と推定する(図7C)。渋滞長は、先頭位置と末尾位置との間の距離とすることができる。
次に、渋滞区間内に存在する車両の渋滞台数を推定する方法について説明する。図8は渋滞区間の末尾が区間内にある場合の渋滞台数の推定方法の一例を示す模式図である。図8の例は、図7に例示した方法により渋滞区間の位置を推定した場合に、渋滞区間の末尾は区間内に存在するが渋滞区間の先頭は区間内になく、区間の下流地点P4の下流側まで渋滞区間が繋がっている場合を示す。また、上流地点P1の交通量をQ1(t)とし、上流地点P1の地点速度をV1(t)とする。また、下流地点P4の交通量をQ4(t)とし、下流地点P4の地点速度をV4(t)とする。
地点速度算出部21は、地点速度算出手段としての機能を有し、車両感知器1で得られた感知データに基づいて、上流地点P1の車両の地点速度V1(t)及び下流地点P4での車両の地点速度V4(t)を算出する。
渋滞台数推定部20は、渋滞台数推定手段としての機能を有し、図7に例示した方法により推定した渋滞区間の位置及び第2推定部18で推定した区間での区間台数に基づいて、プローブデータ取得時点での渋滞区間に存在する車両の渋滞台数を推定する。
例えば、図8の例では、下流地点P4での車両の密度は、Q4(t)/V4(t)で表すことができ、渋滞区間(渋滞長はl(t))での車両の密度(単位距離当たりに存在する車両の台数)は、下流地点P4における車両の密度と同じであると考えることができるので、時刻tでの渋滞台数Ec(t)は、式(12)で求めることができる。
図9は渋滞区間の先頭が区間内にある場合の渋滞台数の推定方法の一例を示す模式図である。図9の例は、図7に例示した方法により渋滞区間の位置を推定した場合に、渋滞区間の先頭は区間内に存在するが渋滞区間の末尾は区間内になく、区間の上流地点P1の上流側まで渋滞区間が繋がっている場合を示す。図9の例では、上流地点P1での車両の密度は、Q1(t)/V1(t)で表すことができ、渋滞区間(渋滞長はl(t))での車両の密度(単位距離当たりに存在する車両の台数)は、上流地点P1における車両の密度と同じであると考えることができるので、時刻tでの渋滞台数Ec(t)は、式(13)で求めることができる。
図10は渋滞区間の先頭及び末尾が区間内にある場合の渋滞台数の推定方法の一例を示す模式図である。図10の例は、図7に例示した方法により渋滞区間の位置を推定した場合に、渋滞区間の先頭及び末尾が区間内に存在する場合を示す。また、予め区間の上流地点P1、下流地点P4の位置は解っているので、渋滞区間の先頭位置及び末尾位置が解れば、上流地点P1と渋滞の末尾位置との間の距離le(t)、及び下流地点P4と渋滞の先頭位置との間の距離ls(t)も求めることができる。
図10の例では、上流地点P1での車両の密度は、Q1(t)/V1(t)で表すことができ、非渋滞区間(渋滞長はle(t))での車両の密度(単位距離当たりに存在する車両の台数)は、上流地点P1における車両の密度と同じであると考えることができる。同様に、下流地点P4での車両の密度は、Q4(t)/V4(t)で表すことができ、非渋滞区間(渋滞長はls(t))での車両の密度(単位距離当たりに存在する車両の台数)は、下流地点P4における車両の密度と同じであると考えることができる。したがって、時刻tでの渋滞台数Ec(t)は、式(14)で求めることができる。
なお、区間全体が渋滞区間である場合、渋滞台数は区間台数に等しいので、時刻tでの渋滞台数Ec(t)は、Ec(t)=E(t)で求めることができる。また、渋滞区間内の車両密度ρc(t)は、式(15)で求めることができる。
図11は区間における渋滞パターンの例を示す模式図である。図11に示すように、区間と渋滞区間との関係を示す渋滞パターンは、区間全体が渋滞区間である場合(パターンA)、渋滞区間がない場合(パターンB)、区間に渋滞区間の末尾のみ存在する場合(パターンC)、区間に渋滞区間の先頭のみ存在する場合(パターンD)、区間に渋滞区間の先頭及び末尾が存在する場合(パターンE)に分けることができる。図11に示す各パターンは、図7に例示した方法により求めることができる。これにより、プローブデータを取得することができた時点(周期)で精度よく交通情報(渋滞区間の位置)を推定することができる。
次に、プローブデータを取得することができない時点、時間帯、周期において渋滞区間の位置を推定する方法について説明する。
プローブデータを取得することができない場合の渋滞区間の位置の推定は、区間の上流地点P1及び下流地点P4での地点速度V1、V4が所定の地点速度閾値VTを境にして増加したか、あるいは減少したかに応じて、プローブデータの取得時点での渋滞パターンがどのように変化したかを判定することにより行うことができる。
すなわち、渋滞位置推定部14は、プローブデータ取得時点での渋滞区間の位置、地点速度及び所定の地点速度閾値に基づいて、プローブデータ取得時点後の時点での渋滞区間の位置を推定する。
図12は渋滞パターンの遷移の例を示す説明図である。図12において、左欄に示すパターンはプローブデータ取得時点Tpにおける渋滞パターンA〜Eを示す。プローブデータ取得時点Tpにおける各渋滞パターンは、プローブデータに基づく時系列の位置及び時刻のデータ列により求めることはでき、地点速度V1、V4は使用しない。また、上欄に示すパターンはプローブデータを取得することができない周期、すなわち任意の時点(Tp+ΔT)における渋滞パターンA〜Eを示す。任意の時点(Tp+ΔT)における各渋滞パターンは、プローブデータ取得時点Tpにおける渋滞パターン、任意の時点(Tp+ΔT)における地点速度V1、V4、及び地点速度閾値VTの組み合わせに応じて求めることができる。また、各欄のV1、V4は、上流地点P1及び下流地点P4での任意の時点(Tp+ΔT)における地点速度であり、VTは所定の地点速度閾値である。
図12に示すように、プローブデータ取得時点Tpの渋滞パターンがAであり、任意の時点(Tp+ΔT)における地点速度V1が、V1<VTであり、任意の時点(Tp+ΔT)における地点速度V4が、V4<VTである場合、任意の時点(Tp+ΔT)における渋滞パターンはAのままである。
また、プローブデータ取得時点Tpの渋滞パターンがAであり、任意の時点(Tp+ΔT)における地点速度V1が、V1>VTであり、任意の時点(Tp+ΔT)における地点速度V4が、V4<VTである場合、任意の時点(Tp+ΔT)における渋滞パターンはCとなる。
また、プローブデータ取得時点Tpの渋滞パターンがAであり、任意の時点(Tp+ΔT)における地点速度V1が、V1<VTであり、任意の時点(Tp+ΔT)における地点速度V4が、V4>VTである場合、任意の時点(Tp+ΔT)における渋滞パターンはDとなる。
また、プローブデータ取得時点Tpの渋滞パターンがAであり、任意の時点(Tp+ΔT)における地点速度V1が、V1>VTであり、任意の時点(Tp+ΔT)における地点速度V4が、V4>VTである場合、任意の時点(Tp+ΔT)における渋滞パターンはEとなる。
図12に示すように、プローブデータ取得時点Tpの渋滞パターンがB〜Eの場合も、パターンAの場合と同様に、任意の時点(Tp+ΔT)における渋滞パターンを求めることができる。
さらに、図12には例示していないが、任意の時点(Tp+2ΔT)における各渋滞パターンは、一周期前の時点(Tp+ΔT)における渋滞パターン、任意の時点(Tp+2ΔT)における地点速度V1、V4、及び地点速度閾値VTの組み合わせに応じて求めることができる。
例えば、一周期前の時点(Tp+ΔT)の渋滞パターンがAであり、任意の時点(Tp+2ΔT)における地点速度V1が、V1<VTであり、任意の時点(Tp+2ΔT)における地点速度V4が、V4<VTである場合、任意の時点(Tp+2ΔT)における渋滞パターンはAのままである。
また、一周期前の時点(Tp+ΔT)の渋滞パターンがAであり、任意の時点(Tp+2ΔT)における地点速度V1が、V1>VTであり、任意の時点(Tp+2ΔT)における地点速度V4が、V4<VTである場合、任意の時点(Tp+2ΔT)における渋滞パターンはCとなる。
また、一周期前の時点(Tp+ΔT)の渋滞パターンがAであり、任意の時点(Tp+2ΔT)における地点速度V1が、V1<VTであり、任意の時点(Tp+2ΔT)における地点速度V4が、V4>VTである場合、任意の時点(Tp+2ΔT)における渋滞パターンはDとなる。
また、一周期前の時点(Tp+ΔT)の渋滞パターンがAであり、任意の時点(Tp+2ΔT)における地点速度V1が、V1>VTであり、任意の時点(Tp+2ΔT)における地点速度V4が、V4>VTである場合、任意の時点(Tp+2ΔT)における渋滞パターンはEとなる。
一周期前の時点(Tp+ΔT)の渋滞パターンがB〜Eの場合も、パターンAの場合と同様に、任意の時点(Tp+2ΔT)における渋滞パターンを求めることができる。このようにして、プローブデータ取得時点Tpの渋滞パターンが求まると、当該取得時点以降の任意の時点(Tp+ΔT)、(Tp+2ΔT)、(Tp+3ΔT)、(Tp+4ΔT)…での渋滞パターンを求めることが可能となる。これにより、プローブデータを取得することができない場合でも、渋滞区間の位置を精度よく推定することができる。
渋滞位置推定部14は、プローブデータを取得した場合に渋滞台数推定部20で推定した区間台数Ec(t)の時間経過に伴う増減に基づいて、任意の時点(プローブデータ取得時後の時点)での区間内の渋滞区間の位置を推定する。渋滞区間の位置は、渋滞区間の先頭位置、末尾位置、渋滞長などを含む。
区間内に渋滞区間が存在するとし、時刻(t−Δt)における渋滞区間内に存在する渋滞台数をEc(t−Δt)とし、時刻tにおける渋滞区間内に存在する渋滞台数をEc(t)とする。時間Δtの間に区間台数が増減した場合、区間台数の増減は渋滞台数の増減と考えることができる。時刻tにおける渋滞台数の増減dEc(t)は、Ec(t)−Ec(t−Δt)=E(t)−E(t−Δt)となり、dEc(t)に応じて渋滞区間の先頭位置又は末尾位置を変化させることにより渋滞区間の位置を推定する。なお、渋滞台数に、渋滞時の車頭間距離及び車長の合計値を乗算することにより渋滞長を求めることができる。
以下、渋滞パターン毎に渋滞区間の渋滞長の推定について説明する。
渋滞長推定部22は、渋滞長推定手段としての機能を有し、渋滞位置推定部14で推定した渋滞区間の位置及び第1推定部13で推定した区間台数の時間経過に伴う増減に基づいて、プローブデータ取得時点後の時点での渋滞区間の渋滞長を推定する。推定した渋滞区間の位置は、例えば、前述の図7で例示した渋滞パターンA〜Eのいずれかのパターンとして求めることができる。
図13は渋滞区間の末尾が区間内にある場合の渋滞長の推定方法の一例を示す模式図であり、図14は渋滞区間の先頭が区間内にある場合の渋滞長の推定方法の一例を示す模式図である。図13及び図14の場合、時刻t−Δtから時刻tまでのΔtの間の区間台数の増減は渋滞台数の増減と考えることができる。すなわち、時間Δtの間の渋滞台数の増減をdEc(t)とし、区間台数の増減をdE(t)とすると、dEc(t)=Ec(t)−Ec(t−Δt)=dE(t)=E(t)−E(t−Δt)となる。また、渋滞区間では車両は飽和状態にあるので、Δt時間経過の前後において渋滞区間の車両の密度は変化しないと考えることができる。この場合、式(16)が成り立つ。
式(5)の左辺をdEc(t)で表すと式(17)が得られる。渋滞区間の渋滞長l(t)は式(18)で求めることができる。
図15は渋滞区間の先頭及び末尾が区間内にある場合の渋滞長の推定方法の一例を示す模式図である。この場合、時刻tでの渋滞台数Ec(t)は、式(14)と同様に、式(19)で推定することができる。
渋滞区間の車両の密度は、渋滞長l(t)が変化した場合でも変わらないと仮定すると、式(20)が成立し、渋滞長l(t)は、式(21)で求めることができる。
また、上流地点P1と渋滞区間の末尾位置との非渋滞区間の車両の密度をρ1(t)とすると密度ρ1(t)は式(22)で求めることができる。また、下流地点P4と渋滞区間の先頭位置との非渋滞区間の車両の密度をρ4(t)とすると密度ρ4(t)は式(23)で求めることができる。
この場合、非渋滞区間の距離le(t)及びls(t)は、式(24)又は式(25)で求めることができる。
上述のように、プローブデータを取得することができない場合でも、渋滞長を精度よく推定することができる。
次に、プローブデータを取得することができないタイミングにおいて、区間の旅行時間を推定する方法について説明する。旅行時間推定部16は、旅行時間推定手段としての機能を有し、旅行時間の各比率a、b、c、交通量Qout(t)、Qin(t)、Q4(t)の統計値及び第1推定部13で推定した区間台数E(t)に基づいて区間の旅行時間を推定する。なお、各比率a、b、cは、前述のとおり、プローブデータを取得することができたときに算出した旅行時間T1、T2、T3、Tに基づいて予め算出しておくことができる。
図16はプローブデータを取得することができない場合の旅行時間の推定方法の一例を示す模式図である。時刻tにおいて区間の存在台数E(t)が求まり、交通量Q1(t)、Q4(t)、Qin(t)及びQout(t)の統計値が得られている場合には、時刻tに区間の上流地点P1を出発する車両の出発旅行時間Tは、式(26)により求めることができる。
すなわち、区間台数E(t)が求められた場合、旅行時間は、区間内の渋滞区間の有無に関わらず、区間で捌ける交通量から推定することができる。例えば、時刻tに上流地点を出発する車両が下流地点に到着するまでの旅行時間(出発旅行時間)をTとすると、時刻tにおける区間台数E(t)から、時刻tから時刻t+Tまでの間に下流地点から捌ける交通量Q4(t)及び時刻tから時刻t+T1までの間に流出路から捌ける交通量Qout(t)の合計を減算し、減算した値に時刻(t+T1+T2)から時刻t+Tまでの間に流入路から流入した交通量Qin(t)を加算した値が0に等しくなる。なお、式(26)において、cTはT1となり、(b+c)Tは、T1+T2となる。
推定する旅行時間Tの間、比率a、b、cは一定であるとし、交通量Qin(t)、Qout(t)の積分範囲をtからt+Tに一致させると、式(28)、式(29)、式(30)が求まる。すなわち、推定する旅行時間Tの間、各比率a、b、cが変化しないものとし、旅行時間T1、T2を比率a、b、cを用いて旅行時間Tで表した上で、式(30)の区間台数E(t)が0となるTを求めることにより、旅行時間Tを推定することができる。これにより、渋滞に関する交通情報(旅行時間)を精度よく推定することができる。なお、下流地点の交通量Q4(t)を用いる代わりに上流地点の交通量Q1(t)を用いて、到着旅行時間Tを算出してもよい。
次に、本実施の形態の交通情報推定装置100の動作について説明する。図17及び図18は本実施の形態の交通情報推定装置100の処理手順を示すフローチャートである。なお、便宜上、処理の主体は制御部10とする。制御部10は、区間の上流地点及び下流地点に設置された車両感知器から感知データを取得し(S11)、区間の上流地点及び下流地点の交通量を算出する(S12)。
制御部10は、オンランプ及びオフランプの交通量を取得し(S13)、プローブデータを取得したか否か、すなわちプローブデータの取得の可否を判定する(S14)。プローブデータを取得することができた場合(S14でYES)、制御部10は、区間台数の第1推定値を算出する(S15)。
制御部10は、プローブデータに基づいて、上流地点とオフランプとの間の第1旅行時間、オフランプとオンランプとの間の第2旅行時間、オンランプと下流地点との間の第3旅行時間及び区間の旅行時間を算出する(S16)。
制御部10は、算出した各旅行時間を用いて区間台数の第2推定値を算出し(S17)、第1推定値及び第2推定値を用いて区間台数の最適推定値を算出する(S18)。制御部10は、プローブデータに基づいて車両速度(速度データの列)を算出し(S19)、車両速度及び閾値速度に基づいて、渋滞区間の位置を推定する(S20)。
制御10は、処理を終了するか否かを判定し(S21)、処理を終了しない場合(S21でNO)、ステップS11以降の処理を続け、処理を終了する場合(S21でYES)、処理を終了する。
ステップS14で、プローブデータを取得することができない場合(S14でNO)、制御部10は、区間台数の第1推定値を算出し(S22)、感知データに基づいて上流地点及び下流地点の地点速度を算出する(S23)。
制御部10は、プローブデータ取得時の渋滞区間の位置、地点速度及び地点速度閾値に基づいて、渋滞区間の位置を推定し(S24)、渋滞区間の渋滞長を算出する(S25)。
制御部10は、プローブデータ取得時の区間旅行時間Tに対する各地点間の旅行時間T1、T2、T3の比率c、b、a、オンランプ及びオフランプの交通量並びに下流地点の交通量に基づいて、区間の旅行時間を推定し(S26)、ステップS21の処理を行う。
本実施の形態の交通情報推定装置100は、CPU、RAMなどを備えた汎用コンピュータを用いて実現することもできる。すなわち、図17及び図18に示すような、各処理手順を定めたコンピュータプログラムをCD、DVD、USBメモリ等のコンピュータプログラム記録媒体に記録しておき、当該コンピュータプログラムをコンピュータに備えられたRAMにロードし、コンピュータプログラムをCPUで実行することにより、コンピュータ上で交通情報推定装置100を実現することができる。
開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。