JP3933127B2 - 旅行時間予測方法、装置及びプログラム - Google Patents
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Description
特に、ある道路区間に注目して、当日の将来時刻の旅行時間を予測することが重要である。将来時刻の旅行時間を予測できれば、渋滞などが予測できるので、当該道路区間を避けた目的地までの経路を探索して車両に通知したり、車両に迂回指示を出したりすることができ、未然に交通渋滞の回避ができる。
このような特異な変動傾向のパターンに基づき旅行時間を予測すると、実際の旅行時間とは大きくはずれてしまい、誤った予測を与えてしまうことになる。
さらに本発明の旅行時間予測装置は、前記旅行時間予測方法を実施するものである(請求項6)。
図1は道路地図であり、交差点から交差点までの間の一方向の道路区間Lを示している。車両感知器や路側ビーコンは、この道路区間Lのいずれかの位置、例えば両端に設けられている。車両感知器は、道路の上から超音波や光のパルスを発射して、戻ってくる時間を測定することによって車両の存在を感知するセンサである。路側ビーコンは、車載通信装置と双方向通信を行うことによって、車両の識別を行うとともに、その車両が前回通過した路上ビーコンの情報やその通過時刻の情報を取得する通信装置である。
以上の他に、カメラの計測画像から車両のプレートナンバーをマッチングして車両を同定し、同一車両が道路区間の端を通過した時刻と道路区間の他の端を通過した時刻とから、道路区間を走行するのに要した時間Tを求めるようにしてもよい。この場合も、単位時間(例えば5分間)内に複数の車両を同定できたときは、各車両の旅行時間の平均をとる。
処理装置1は、旅行時間のデータを、道路区間ごと時間帯ごとに記憶装置2に蓄積する。この蓄積されたデータを「旅行時間統計データ」という。この蓄積をするときに、時系列データのばらつきを排除するため、データの平滑化を行うことが望ましい。平滑化は、後述するように、移動平均、指数平滑等の平滑化手法を用いて行う。しかし、これ以外に、時系列データに対して離散コサイン変換をして複数の周波数成分に分解し、分解された周波数成分のうち、周波数の高い部分は除去し、残った周波数の低い成分だけを用いて離散コサイン逆変換をして、ばらつきの影響が排除された時系列データを作成してもよい。前記離散コサイン変換に代えて、フーリエ変換やウェーブレット変換を採用してもよい。
図3は、旅行時間の予測処理を説明するためのフローチャートである。
まず、処理装置1は、管轄道路の中から予測したい道路区間を指定する。そして、当日と同じ日、曜日、天候、催事の有無などを満たす日を選定し、その日の時間帯(例えば5分間)ごとの旅行時間統計データを抽出する(ステップS1)。ここに、日、曜日、天候、催事の有無など、旅行時間とその分布に影響を与える条件を「交通条件」という。交通条件の同じ日の旅行時間統計データを抽出するのは、交通条件が同じ日であれば、その日に突発的な事象(事故、道路工事、異常気象など)が起こらなかった限り、旅行時間とその分布が似ていると考えられるので、精度のよい旅行時間の予測ができるからである。
次に処理装置1は、記憶装置2から当日収集された旅行時間データ(「旅行時間実績データ」という)を読み出す。これにより、特定された各道路区間について、現在時刻に至るまでの時間帯(例えば5分間)ごとの時系列データが得られる。処理装置1は、交通条件の同じ日の旅行時間統計データの中から、この当日の旅行時間実績データと時間変動の傾向(パターン、トレンド)の似ている旅行時間統計データを、通常は複数選定する(ステップS2)。この選定方法は、後に詳述する。
そして、除外済みの旅行時間統計データに対して、それらのデータを代表するデータを算出する(ステップS4)。例えば、単純平均をとる、重み付け平均をとる、中央値をとる、などである。
次に以上の各ステップの手順を、具体例をあげて詳しく説明する。
まず記号を導入する。当日の旅行時間実測データをT0(j)と書く。添え字“0”は当日であることを表す。また、旅行時間統計データをTk(j)と書く。添え字kが“1”であれば交通条件が同じである前日を表し、添え字kが“2”であれば交通条件が同じである前々日などを表す。括弧内の“j”は時間帯を表す。現在の時間帯ならばj=0、1つ前の時間帯ならばj=−1、2つ前の時間帯ならばj=−2、1つ先の時間帯ならばj=1、2つ先の時間帯ならばj=2、などである。
ここで、旅行時間実測データT0(j)と旅行時間統計データT1(j) ,T2(j) ,...,TN(j)とは、前述したように、平滑化されたデータを用いる。平滑化されていないデータを用いれば、変動が多すぎて、実用になりにくいからである。
F(k)={Σ[T0(j)−Tk(j)]2}1/2
ここで総和Σは、現在時刻からj=0から、過去に遡った所定の時刻(例えば当日の始まり、早朝の時刻)までとる。1つ1つの旅行時間統計データTk(j)に対応するF(k)が小さいほど、T0(j)とTk(j)との距離が短く、時間変動の傾向(パターン、トレンド)が似ている。
G(k)={Σ[(T0(j)−T0(j-1))−(Tk(j)−Tk(j-1))]2}1/2
総和Σは、現在時刻からj=0から、過去に遡った所定の時刻までとる。G(k)が小さいほどT0(j)の傾きとTk(j)の傾きが近いので、時間変動の傾向(パターン、トレンド)が似ている。
H(k)=αF(k)+βG(k)
を評価関数としてもよい。
この評価関数の値(評価値という)がしきい値よりも小さな旅行時間統計データTk(j)を、1又は複数選択する。しきい値よりも大きな旅行時間統計データは捨てる。
図6は、しきい値を変数とした場合の旅行時間統計データTk(j)の個数分布を示すグラフである。もっとも評価値の小さな旅行時間統計データTk(j)の評価値aに定数rをかけた値raをしきい値としている。
次に、これらの選定された旅行時間統計データに対して、現在時刻より後の値に基づいた処理を行う。
ここで、旅行時間統計データT1(j) ,T2(j)等は、平滑化されたデータを用いる。平滑化されていないデータを用いれば、変動が多すぎて、実用になりにくいからである。平滑化方法として、当該時刻を含む前後の範囲の時刻にわたって平均をとることが望ましい。例えば移動平均をとる。移動平均とは、今回のデータとその前後一定数のデータとを重みをつけて足すことにより平滑化する方法である。旅行時間統計データは、すでに全時間にわたって取得され蓄積されているデータであるので、平均をとるにあたって、将来時刻のデータも含めることができる。
この平均旅行時間統計データTm(j)から大きく離れた旅行時間統計データを考慮すれば旅行時間予測精度の低下につながるので、そのような、平均旅行時間統計データTm(j)から大きく離れた部分を除外する。このために時間帯jにおける偏差値Y(k.j)を導入する。
この偏差値Y(k.j)がしきい値以上あれば、平均旅行時間統計データTm(j)から距離が離れているとして、当該時間帯のデータTk(j)を除外する。
なお、平均旅行時間統計データTm(j)を求めたときに求まった標準偏差を含む、次のような偏差値Z(k,j)を用いてもよい。
この偏差値Z(k,j)が、例えば30未満又は70以上の場合、当該時間帯のデータTk(j)を除外する。
これらの平均的傾向からかけ離れたデータは、突発的な事象(事故、道路工事、異常気象など)に基づくものと考えられるので、旅行時間の予測精度の低下要因になると考えられるからである。
除外処理が終われば、除外されなかった旅行時間統計データの平均をとる。この除外されなかった旅行時間統計データについての平均旅行時間統計データをTm′(j)と書く。この平均旅行時間統計データTm′(j)は、平均的傾向からかけ離れたデータが除外されているという点で、前述した平均旅行時間統計データTm(j)よりもさらに精度がよくなっている。
図8に示すように、旅行時間予測データ(破線)は、当日の旅行時間実測データの現在値T0(0)と、平均旅行時間統計データの現在値Tm′(0)との差ΔTを、平均旅行時間統計データTm′(j)に加えることにより求まる。
以上のようにして、当日と交通条件が同じ日の旅行時間統計データの中から、旅行時間実測データとパターン、トレンドの類似する旅行時間統計データを採用し、さらに将来時刻において、その旅行時間統計データの中からかけ離れた値を除外した上で旅行時間統計データの平均をとり、この平均をとった旅行時間統計データに基づいて、旅行時間実測データを延長することにより、当日の旅行時間予測データを算出する。この処理により、当日の将来時刻の旅行時間を精度よく算出することができる。
前記時間差だけ前にすらした旅行時間統計データTk′(j)を提供することにより、旅行時間統計データTk′(j)は、旅行時間統計データTk(j)と比較して、実際の交通流である旅行時間実測データT0(j)に、より近い形をとってくる。このように時間差だけ前にすらした旅行時間統計データTk′(j)を用いれば、特に、午前5時あたりからの旅行時間の立ち上がり(車両が混み始める時刻)を素早くとらえることができる。
2 記憶装置
3 インターフェイス
4 入出力装置
L 道路
Claims (7)
- 次の(a)から(e)までの手順を含むことを特徴とする旅行時間予測方法。
(a)旅行時間を予測しようとする道路区間の、当日の現在時刻までの旅行時間実測データを収集する。
(b)前記道路区間について、当日と同じ交通条件の日の、過去に収集された複数の、旅行時間データの平滑化がなされた旅行時間統計データを取得する。
(c)前記(b)で取得された旅行時間統計データの中から、前記旅行時間実測データと時間変動傾向の類似した旅行時間統計データを複数選択する。
(d)前記(c)で選択された複数の旅行時間統計データの、現在時刻以後のデータに対して、分布からかけ離れたデータを除外する。
(e)前記除外されなかった残りの現在時刻以後の旅行時間統計データに基づき、それらのデータを代表するデータ列を作成し、当日の現在時刻の旅行時間実測データとの差又は比に基づいて、現在時刻以後の旅行時間予測データを求める。 - 前記(c)の手順で用いる旅行時間実測データ及び旅行時間統計データは、当該時刻を含む過去の範囲の時間にわたって平滑化された旅行時間実測データ及び旅行時間統計データである請求項1記載の旅行時間予測方法。
- 前記(d)の手順で用いる旅行時間統計データは、当該時刻を含む前後の範囲の時間にわたって平滑化された旅行時間統計データである請求項1記載の旅行時間予測方法。
- 前記(e)の手順で現在時刻以後のある時刻の旅行時間予測データを求めた後に、旅行時間予測データを、当該時刻より所定時間前の時点の予測データとして提供する請求項1記載の旅行時間予測方法。
- 前記(b)の手順で、当日と同じ交通条件の日の旅行時間統計データとは、次の(1)から(4)までのいずれかの旅行時間統計データである請求項1記載の旅行時間予測方法。
(1) 当日と同じ日の旅行時間統計データ、
(2) 当日と同じ曜日の旅行時間統計データ、
(3) 当日と同じ天気の日の旅行時間統計データ、
(4) 当日に催事があれば同じ催事があった日の旅行時間統計データ。 - 道路ネットワーク上で収集された各道路区間の旅行時間実績データを記憶した旅行時間データベースを用いて、道路区間の将来の旅行時間を予測する装置であって、
旅行時間を予測しようとする道路区間の、当日の現在時刻までの旅行時間実測データを収集する手段と、
前記道路区間について、当日と同じ交通条件の日の、過去に収集された複数の、旅行時間データの平滑化がなされた旅行時間統計データを取得する手段と、
前記取得された旅行時間統計データの中から、前記旅行時間実測データと時間変動傾向の類似した旅行時間統計データを複数選択する手段と、
前記選択された複数の旅行時間統計データの、現在時刻以後のデータに対して、分布からかけ離れたデータを除外する手段と、
前記除外されなかった残りの現在時刻以後の旅行時間統計データに基づき、それらのデータを代表するデータ列を作成し、当日の現在時刻の旅行時間実測データとの差又は比に基づいて、現在時刻以後の旅行時間予測データを求める手段とを有することを特徴とする旅行時間予測装置。 - 道路ネットワーク上で収集された各道路区間の旅行時間実績データを記憶した旅行時間データベースを用いて、道路区間の将来の旅行時間を予測するためのプログラムであって、
旅行時間を予測しようとする道路区間の、当日の現在時刻までの旅行時間実測データを収集するステップと、
前記道路区間について、当日と同じ交通条件の日の、過去に収集された複数の、旅行時間データの平滑化がなされた旅行時間統計データを取得するステップと、
前記取得された旅行時間統計データの中から、前記旅行時間実測データと時間変動傾向の類似した旅行時間統計データを複数選択するステップと、
前記選択された複数の旅行時間統計データの、現在時刻以後のデータに対して、分布からかけ離れたデータを除外するステップと、
前記除外されなかった残りの現在時刻以後の旅行時間統計データに基づき、それらのデータを代表するデータ列を作成し、当日の現在時刻の旅行時間実測データとの差又は比に基づいて、現在時刻以後の旅行時間予測データを求めるステップとを有し、これらのステップをコンピュータに実行させることを特徴とする旅行時間予測プログラム。
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