JP4235913B2 - 旅行時間予測方法、装置及びプログラム - Google Patents
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特に、当日の将来時刻の旅行時間を予測することが重要である。将来時刻の旅行時間を予測できれば、渋滞などが予測できるので、当該道路区間を避けた目的地までの経路を探索して車両に通知したり、車両に迂回指示を出したりすることができ、未然に交通渋滞の回避ができる。
すなわち、当日に事故等の突発事象の影響があり、通常とは違った交通状況では、過去の統計データに基づいて予測値を算出するため、現状に合った予測値の算出ができない。
このような突発事象の影響を受けている場合に、普段の変動傾向のパターンに基づき旅行時間を予測すると、実際の旅行時間とは大きくはずれてしまい、誤った予測を与えてしまうことになる。
ところが、当日突発事象が発生して、旅行時間実測データが、旅行時間統計データの旅行時間とかけ離れたパターンになることがある。この現象を検出した場合であって、かつ現在の交通状況が普段より混雑している場合は、前記算出された旅行時間予測データと現在時刻の旅行時間実測データとの大きな方を現在時刻以後の旅行時間予測データとして提供する。
現在の交通状況が普段より混雑していない場合は、現在時刻の旅行時間実測データを現在時刻以後の旅行時間予測データとして提供する。この理由は、この場合上流で突発事象が発生し、それがボトルネックとなっているため交通量が普段より少ないケースで、交通量は増加せず、現在の旅行時間が継続すると考えられるためである。
前記現在の交通状況が普段より混雑しているかどうかの判定は、以下のRを算出し、Rが所定の閾値より大きければ普段より混雑していると判定し、Rが所定の閾値より小さければ普段より混雑していないと判定する(請求項4)。
前記交通条件が同じ日の旅行時間統計データには、当日と同じ日の旅行時間統計データ、当日と同じ曜日の旅行時間統計データ、当日と同じ天気の日の旅行時間統計データ、当日に催事があれば同じ催事があった日の旅行時間統計データなどがある(請求項5)。
さらに本発明の旅行時間提供装置は、前記旅行時間提供方法を実施するものであり(請求項6)、また本発明の旅行時間提供プログラムは、前記旅行時間提供方法をコンピュータに実行させるものである(請求項7)。
図1は道路地図であり、交差点から交差点までの間の一方向の道路区間Lを示している。車両感知器や路側ビーコンは、この道路区間Lのいずれかの位置、例えば片端に設けられている。車両感知器は、道路の上から超音波や光のパルスを発射して、戻ってくる時間を測定することによって車両の存在を感知するセンサである。路側ビーコンは、車載通信装置と双方向通信を行うことによって、車両の識別を行うとともに、その車両が前回通過した路上ビーコンの情報やその通過時刻の情報を取得する通信装置である。
以上の他に、カメラの計測画像から車両のプレートナンバーをマッチングして車両を同定し、同一車両が道路区間の端を通過した時刻と道路区間の他の端を通過した時刻とから、道路区間を走行するのに要した時間Tを求めるようにしてもよい。この場合も、単位時間(例えば5分間)内に複数の車両を同定できたときは、各車両の旅行時間の平均をとる。
処理装置1は、旅行時間のデータを、道路区間ごと時間帯ごとに記憶装置2に蓄積する。この蓄積されたデータを「旅行時間統計データ」という。この蓄積をするときに、時系列データのばらつきを排除するため、データの平滑化を行うことが望ましい。平滑化は、後述するように、移動平均、指数平滑等の平滑化手法を用いて行う。しかし、これ以外に、時系列データに対して離散コサイン変換をして複数の周波数成分に分解し、分解された周波数成分のうち、周波数の高い部分は除去し、残った周波数の低い成分だけを用いて離散コサイン逆変換をして、ばらつきの影響が排除された時系列データを作成してもよい。前記離散コサイン変換に代えて、フーリエ変換やウェーブレット変換を採用してもよい。
図3は、旅行時間の予測処理を説明するためのフローチャートである。
まず、処理装置1は、管轄道路の中から予測したい道路区間を指定する。そして、当日と同じ日、曜日、天候、催事の有無などを満たす日を選定し、その日の時間帯(例えば5分間)ごとの旅行時間統計データを抽出する(ステップS1)。ここに、日、曜日、天候、催事の有無など、旅行時間とその分布に影響を与える条件を「交通条件」という。交通条件の同じ日の旅行時間統計データを抽出するのは、交通条件が同じ日であれば、その日に突発的な事象(事故、道路工事、異常気象など)が起こらなかった限り、旅行時間とその分布が似ていると考えられるので、精度のよい旅行時間の予測ができるからである。
次に処理装置1は、記憶装置2から当日収集された旅行時間データ(「旅行時間実測データ」という)を読み出す。これにより、特定された各道路区間について、現在時刻に至るまでの時間帯(例えば5分間)ごとの時系列データが得られる。
つぎに、選定された旅行時間統計データの現在時刻以後の将来に注目し、この将来時刻において、平均的傾向からかけ離れたデータ部分を除外する(ステップS3)。これは、その日に突発的な事象(事故、道路工事、異常気象など)が起こって、旅行時間に異常値が現れた場合にそのデータを除外するためである。この除外処理も後述する。
さらにこの代表データの現在時刻の旅行時間に対して、当日の旅行時間実測データの現在時刻の旅行時間と比較をする(ステップS5)。この比較に基づいて、当日の将来時刻の旅行時間予測データを算出する(ステップS6)。
まず記号を導入する。当日の旅行時間実測データをT0(j)と書く。添え字"0"は当日であることを表す。また、旅行時間統計データをTk(j)と書く。添え字kが"1"であれば交通条件が同じである前日を表し、添え字kが"2"であれば交通条件が同じである前々日などを表す。括弧内の"j"は時間帯を表す。現在の時間帯ならばj=0、1つ前の時間帯ならばj=−1、2つ前の時間帯ならばj=−2、1つ先の時間帯ならばj=1、2つ先の時間帯ならばj=2、などである。
ここで、旅行時間実測データT0(j)と旅行時間統計データT1(j) ,T2(j) ,...,TN(j)とは、前述したように、平滑化されたデータを用いる。平滑化されていないデータを用いれば、変動が多すぎて、実用になりにくいからである。
F(k)={Σ[T0(j)−Tk(j)]2}1/2
ここで総和Σは、現在時刻からj=0から、過去に遡った所定の時刻(例えば当日の始まり、早朝の時刻)までとる。1つ1つの旅行時間統計データTk(j)に対応するF(k)が小さいほど、T0(j)とTk(j)との距離が短く、時間変動の傾向(パターン、トレンド)が似ている。
G(k)={Σ[(T0(j)−T0(j-1))−(Tk(j)−Tk(j-1))]2}1/2
総和Σは、現在時刻からj=0から、過去に遡った所定の時刻までとる。G(k)が小さいほどT0(j)の傾きとTk(j)の傾きが近いので、時間変動の傾向(パターン、トレンド)が似ている。G(k)を算出するときに、旅行時間統計データTk(j)の時刻jを少し前後にずらせばG(k)が激減する場合は、旅行時間統計データの時刻をずらしたものを改めて旅行時間統計データとして使用してもよい。この場合も時刻jをずらすのに上限値(例えば前後10分)を設けるとよい。
H(k)=αF(k)+βG(k)
を評価関数としてもよい。
この評価関数の値(評価値という)がしきい値よりも小さな旅行時間統計データTk(j)を、1又は複数選択する。しきい値よりも大きな旅行時間統計データは捨てる。
図6は、しきい値を変数とした場合の旅行時間統計データTk(j)の個数分布を示すグラフである。もっとも評価値の小さな旅行時間統計データTk(j)の評価値aに定数rをかけた値raをしきい値としている。
次に、これらの選定された旅行時間統計データに対して、現在時刻より後の値に基づいた処理を行う。
ここで、旅行時間統計データT1(j) ,T2(j)等は、平滑化されたデータを用いる。平滑化されていないデータを用いれば、変動が多すぎて、実用になりにくいからである。平滑化方法として、当該時刻を含む前後の範囲の時刻にわたって平均をとることが望ましい。例えば移動平均をとる。移動平均とは、今回のデータとその前後一定数のデータとを重みをつけて足すことにより平滑化する方法である。旅行時間統計データは、すでに全時間にわたって取得され蓄積されているデータであるので、平均をとるにあたって、将来時刻のデータも含めることができる。
この平均旅行時間統計データTm(j)から大きく離れた旅行時間統計データを考慮すれば旅行時間予測精度の低下につながるので、そのような、平均旅行時間統計データTm(j)から大きく離れた部分を除外する。このために時間帯jにおける偏差値Y(k.j)を導入する。
この偏差値Y(k.j)がしきい値以上あれば、平均旅行時間統計データTm(j)から距離が離れているとして、当該時間帯のデータTk(j)を除外する。
なお、平均旅行時間統計データTm(j)を求めたときに求まった標準偏差を含む、次のような偏差値Z(k,j)を用いてもよい。
この偏差値Z(k,j)が、例えば30未満又は70以上の場合、当該時間帯のデータTk(j)を除外する。
これらの平均的傾向からかけ離れたデータは、旅行時間統計データを採取した日の突発的な事象(事故、道路工事、異常気象など)に基づくものと考えられるので、旅行時間の予測精度の低下要因になると考えられるからである。
除外処理が終われば、除外されなかった旅行時間統計データの平均をとる。この除外されなかった旅行時間統計データについての平均旅行時間統計データをTm′(j)と書く。この平均旅行時間統計データTm′(j)は、平均的傾向からかけ離れたデータが除外されているという点で、前述した平均旅行時間統計データTm(j)よりもさらに精度がよくなっている。
図8に示すように、旅行時間予測データ(破線)は、当日の旅行時間実測データの現在値T0(0)と、平均旅行時間統計データの現在値Tm′(0)との差ΔTを、平均旅行時間統計データTm′(j)に加えることにより求まる。
以上のようにして、当日と交通条件が同じ日の旅行時間統計データの中から、旅行時間実測データとパターン、トレンドの類似する旅行時間統計データを採用し、さらに将来時刻において、その旅行時間統計データの中からかけ離れた値を除外した上で旅行時間統計データの平均をとり、この平均をとった旅行時間統計データに基づいて、旅行時間実測データを延長することにより、当日の旅行時間予測データを算出する。この処理により、当日の将来時刻の旅行時間を精度よく算出することができる。
旅行時間を予測しようとする当日、突発事象(事故、道路工事、異常気象など)が発生して、旅行時間実測データの旅行時間の変動パターンが、旅行時間統計データの旅行時間の変動パターンとかけ離れることがある。
前述した処理の結果、選択された旅行時間統計データの数があらかじめ設定された閾値より少ない場合、旅行時間実測データの変動パターンと旅行時間統計データの変動パターンとのマッチングの度合いは低いと判定する。
また、現在の交通状況が普段より混雑しているかどうかの判定は、差ΔTを求めて判断すること以外に、以下のRを算出し、Rが所定の閾値より大きければ普段より混雑していると判定し、Rが所定の閾値より小さければ普段より混雑していないと判定してもよい。
閾値は、前記と同様、道路が混雑している日(例えば突発事象が発生した日)にRがどのくらいの大きさになるのかを経験的に計測し、それを閾値とすればよい。
図9の場合、渋滞が発生しているので、旅行時間実測データと旅行時間統計データとの差ΔT又は比Rはかなり大きくなっている。
図10の場合、旅行時間実測データの現在値T0(0)が旅行時間予測データ(破線)を常に上回るので、旅行時間実測データの現在値T0(0)を旅行時間予測データ(一点鎖線)として提供する。もし、旅行時間予測データ(破線)が逆転して旅行時間実測データの現在値T0(0)を上回るようになれば、その時点から提供するデータを旅行時間予測データ(破線)に切り替える。このようにして、常に、旅行時間実測データの現在値T0(0)と旅行時間予測データ(破線)との大きい方を提供する。
以上の本発明の旅行時間提供処理では、当日の旅行時間実測データの現在値T0(0)と、平均旅行時間統計データの現在値Tm′(0)との差ΔTが正であるか比Rが1より大きい、つまり道路が混雑していることを前提としていた。これは、当日の交通需要が普段より大きく超過していることを意味しており、突発事象発生区間の上流の道路区間でこのようなことが起こりやすい。
2 記憶装置
3 インターフェイス
4 入出力装置
L 道路
Claims (7)
- (a)旅行時間を予測しようとする道路区間の、当日の現在時刻までの旅行時間実測データを収集し、
(b)前記道路区間について、当日と同じ交通条件の日の、過去に収集された1又は複数の旅行時間統計データを取得し、
(c)当日の現在時刻の旅行時間実測データと、前記旅行時間統計データのデータ列とに基づき、現在時刻以後の旅行時間予測データを算出し、
(d)前記旅行時間実測データと、前記旅行時間統計データとのパターンマッチングの度合いが低い場合、現在の交通状況が普段より混雑しているかどうかを判定し、現在の交通状況が普段より混雑している場合は、前記算出された旅行時間予測データと現在時刻の旅行時間実測データとの大きな方を現在時刻以後の旅行時間予測データとして提供し、
現在の交通状況が普段より混雑していない場合は、現在時刻の旅行時間実測データを現在時刻以後の旅行時間予測データとして提供することを特徴とする旅行時間提供方法。 - 前記旅行時間実測データと、前記旅行時間統計データとのパターンマッチングの度合いは、マッチングされた旅行時間統計データの数が所定の閾値以下である場合に、低いと判断する請求項1記載の旅行時間提供方法。
- 前記旅行時間実測データと、前記旅行時間統計データとのパターンマッチングの度合いは、マッチングされた旅行時間統計データの評価値が所定の閾値以上である場合に、低いと判断する請求項1記載の旅行時間提供方法。
- 前記現在の交通状況が普段より混雑しているかどうかの判定は、以下のRを算出し、Rが所定の閾値より大きければ普段より混雑していると判定し、Rが所定の閾値より小さければ普段より混雑していないと判定する請求項1記載の旅行時間提供方法。
R=現時刻の旅行時間実測データ/現時刻の旅行時間統計データの平均値 - 前記(b)の手順で、当日と同じ交通条件の日の旅行時間統計データとは、次の(1)から(4)までのいずれかの旅行時間統計データである請求項1から請求項4までのいずれかに記載の旅行時間提供方法。
(1) 当日と同じ日の旅行時間統計データ、
(2) 当日と同じ曜日の旅行時間統計データ、
(3) 当日と同じ天気の日の旅行時間統計データ、
(4) 当日に催事があれば同じ催事があった日の旅行時間統計データ。 - 道路ネットワーク上で収集された各道路区間の旅行時間実測データを記憶した旅行時間データベースを用いて、道路区間の将来の旅行時間を予測し提供する装置であって、
前記請求項1から請求項5までのいずれかに記載の旅行時間提供方法を実施することを特徴とする旅行時間提供装置。 - 道路ネットワーク上で収集された各道路区間の旅行時間実測データを記憶した旅行時間データベースを用いて、道路区間の将来の旅行時間を予測し提供するためのプログラムであって、
前記請求項1から請求項5までのいずれかに記載の旅行時間提供方法をコンピュータに実行させることを特徴とする旅行時間提供プログラム。
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