JP3607330B2 - 感知器データを用いる渋滞計測方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、車両感知器からのデータをもとに、渋滞長等を求める計測方法に関するものである。特に車両感知器の設置が少なくてもその車両感知器からのデータで渋滞長等を求めることができる計測方法に関するものである。
【0002】
【従来技術】
道路上のある瞬間に渋滞している区間の先頭位置(以下「渋滞先頭位置」と称する。)、長さ(以下「渋滞長」と称する。)等の渋滞情報は、信号制御および交通管理上、交通状況を評価するための最も重要な基礎的指標の一つである。渋滞先頭位置、渋滞長は空間的な物理量であるため、従来は道路に沿って配置した複数の超音波式車両感知器等の車両感知器から得られる交通流量、占有率等の計測データを集め、計算によって求めていた。従来の方法の概要を、図1、図2を参照しながら以下に示す。
【0003】
次式により速度を算出する。
【0004】
【数2】
Figure 0003607330
【0005】
ただし、
【0006】
【数3】
Figure 0003607330
【0007】
予め感知器毎に設定した速度閾値s1 ,s2 ,s3 と先に求めた速度との関係から感知器位置での待行列波及の程度を表わす待行列列波及度を求める。
【0008】
s1 :待行列波及度1.0に対応し、待行列末尾が感知器位置を十分に越えている状態の速度閾値
s2 :待行列波及度0.5に対応し、待行列末尾が感知器位置付近に存在する状態の速度閾値
s3 :待行列波及度0に対応し、待行列が感知器速度に影響を及ぼさない状態の速度閾値
感知器の設置位置と待行列波及度を下図のようにプロットし、各点を直線で結んで待行列波及度が0.5未満となる地点を渋滞の末尾とする。渋滞末尾より下流方向に連続して待行列波及度が0.5以上である区間の長さを渋滞長(図2参照)とする。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
この従来の方法では、渋滞判定精度は感知器の設置密度に依存し、高い精度を得るには、極めて多くの感知器を設置する必要がある(通常200〜300m間隔に設置する。)ため設置費用およびメンテナンスの労力・費用が大きな負担となっていた。
【0010】
本発明の目的は、渋滞計測のために使用する車両感知器の数を節減し、車両感知器設置費用、およびメンテナンスのための労力、費用を節約することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記本発明の目的を達成するために、請求項1の方法は、特定の区間について、区間の両端に設けた車両感知器からの得られる特定車両の旅行時間と時系列に得られる車両感知器データを用いて、渋滞部の通過台数累積値から渋滞部の交通流量Qjを、非渋滞部の通過台数累積値から非渋滞部の交通流量Qaを、非渋滞部の通過車両の速度から非渋滞部の速度Vをそれぞれ算出し、以下の式を用いてある時刻tにおける区間内の渋滞長L(t)を計測することを特徴とする。
【数2】
Figure 0003607330
ただし、E(t):時刻tにおける特定区間に存在する車両台数、
Lo:特定の区間の長さ
km、a:定数
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の方法において、前記車両感知器データを用いて、該車両感知器が非渋滞部にあると判定された場合、当該非渋滞部にあると判定された車両感知器を通過する車両の通過台数を所定期間累積して当該累積された値を該所定期間で割ることにより前記非渋滞部の交通流量Qaを算出することを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の方法において前記車両感知器データを用いて、該車両感知器が渋滞部にあると判定された場合、当該渋滞部にあると判定された車両感知器を通過する車両の通過台数を所定期間累積して当該累積された値を該所定期間で割ることにより前記渋滞部の交通流量Qjを算出することを特徴とする。
【0013】
【作用】
本発明は、特定区間を走行するのにかかる所要時間(以下「旅行時間」と称する。)を計測し、それと1地点で計測した車の通過時系列データ等の感知器データを用いて当該区間内の渋滞情報を求める計測方法である。すなわち、本発明の計測方法は地点で計測した時間軸上のデータを空間軸上に投影することによって空間的な物理量である渋滞先頭位置、渋滞長に変換しており、必要な設置車両感知器数を大幅に節減することが可能となる。
【0014】
【実施例】
以下に本発明の計測方法の一例を説明する。
【0015】
図3に対象とする道路区間と車両感知器の配置を示す。ここで位置座標は車の走行方向に対して下流から上流方向へ正にとるものとする。車両感知器SU は区間上流端位置PU に、車両感知器SD は区間下流端位置PD に設置されている。またLo (=PU−PD )は区間長である。車両感知器SU ,SD は例えば光感知器が考えられ、車の車両IDおよび車の通過を時系列に計測することができる。
【0016】
図4の車両の走行軌跡図に示すように時刻tU に上流端位置PU に設置された車両感知器SU によってある車両IDが計測され、その後同一車両IDが時刻tD に下流端位置に設置された車両感知器SD によって計測されたならば、下流端PD を時刻tD に通過した車の区間における旅行時間Tは式3で求められる。
【0017】
【数5】
T=tD −tU …(3)
また時刻tU ′に車両感知器SU によって計測された車両IDが時刻tU に車両感知器SD によって計測されたならば区間下流端を時刻tU に通過した車の旅行時間T′は式4で求められる。これらの旅行時間は以下で渋滞情報算出のため感知器データを集計する際に用いられている。
【0018】
【数6】
T′=tU −tU ´ …(4)
車両感知器SD で計測した車両通過データから、区間下流端の通過台数をtU 〜tD の間累積した値は、時刻tU における区間内の車の存在台数E(tU )を表す。また車両感知器SU で計測した車両通過データから区間上流端の通過台数をtU 〜tD の間、累積した値は、時刻tD における区間内の車の存在台数E(tD )を表す。
【0019】
さらに車両感知器SU ,SD で計測された通過時系列データから区間上流端、下流端での渋滞状況を判断することができる。通過時系列データは車両感知器下に車が存在する時はオンパルス、車が存在しない時はオフパルスとして得られる。そこでパルス間隔(隣合うオンパルスとオンパルスの時間間隔)が比較的小さくパルス幅(オンパルスの時間)が比較的大きい場合は、車の流れは飽和流であり、当該車両感知器位置は渋滞している。逆に、パルス間隔が比較的大きくパルス幅が比較的小さい場合は、車の流れは非飽和流であり、当該車両感知器位置は非渋滞とみなすことができる。
【0020】
車両感知器から得られるこれらの情報を元にある瞬間における渋滞長、渋滞先頭位置を算出する。ただし区間内に渋滞は一つだけ存在するものとする。
【0021】
(1)時刻tU における渋滞情報算出
既知である時刻tU における区間内の存在台数E(tU )は、渋滞部の密度をKj 、非渋滞部の密度をKa とすると式5のように表わすことができる。
【0022】
【数7】
E(tU )=L(tU )・Kj +{LO −L(tU )}・Ka …(5)
密度Kj は渋滞部の交通流量(単位時間当たりの通過台数)Qj の一次式で近似することができ、式6で表わされる。
【0023】
【数8】
Kj =km −a・Qj …(6)
ここでkm ,aは設定値である。Qj は時刻tU 〜tD の間に車両感知器SD で計測された飽和流の通過台数累積値と、時刻tU ′〜tU の間に車両感知器SU で計測された飽和流の通過台数累積値との和を各飽和流の継続時間の和で割って求める。
【0024】
密度Ka は非渋滞部の旅行速度V、非渋滞部の交通流量Qa を用いて式7のように表わすことができる。
【0025】
【数9】
Ka =Qa /V …(7)
ただし、Vは個々の車の停止時間と走行速度を計測して求められるが、適当な設定値を用いる簡便な方法も考えられる。Qa は時刻tU 〜tD の間に車両感知器SD で計測された非飽和流の通過台数と、時刻tU ′〜tU の間に車両感知器SU で計測された非飽和流の通過台数累積値との和を各非飽和流の継続時間の和で割って求める。
【0026】
式5〜7から(tU )は式8のように求められる。
【0027】
【数10】
Figure 0003607330
【0028】
ただし、区間の途中から途中までしか渋滞が存在しない場合は、Qj を計測できないので、このままでは正確な渋滞長は求められない。この場合(Qj を計測できず、かつL(tU )>0の場合)はQj の近似値として過去の計測値から適当と思われる値(例として時刻tU 〜tD の間に車両感知器SU で計測された飽和流の通過台数累積値を飽和流の継続時間で割った値)を設定する。
【0029】
次に、時刻tU における渋滞先頭位置P(tU )は車両感知器SU ,SD で計測された渋滞の状況に応じて以下のように求められる。
【0030】
1.時刻tU において下流端が渋滞先頭、すなわち車両感知器SD が飽和流の場合、渋滞先頭位置P(tU )は式9で求められる。
【0031】
【数11】
P(tU )=PD …(9)
2.時刻tU において上流端が渋滞末尾、すなわち車両感知器SU が飽和流の場合、渋滞先頭位置P(tU )は式10で求められる。
【0032】
【数12】
P(tU )=PD +LO −L(tU ) …(10)
3.上記1.,2.以外でかつL(tU )>0の場合、PD <P(tU )<PU であるが、渋滞先頭位置P(tU )の値を算出することはできない。しかし渋滞先頭位置はその渋滞が発生している間は通常、変化しないと考えられるので、同じ渋滞についてすでに渋滞先頭位置が上記1.または2.で得られていれば、その渋滞先頭位置をP(tU )とする。渋滞先頭位置がまだ得られていない場合は、事前の調査により最も渋滞先頭位置となる確率が高いとされる地点をP(tU )とする。
【0033】
(2)最新時刻tD における渋滞情報算出
時刻tD における渋滞情報は、算出に必要なデータが常に得られているとは限らないが、不足するデータを近似することによって以下のようにして求められる。
【0034】
既知である時刻tD における存在台数E(tD )を用いて、式8より渋滞長L(tD )が求められる。ただし式8の交通流量Qj は時刻tU 〜tD の間に車両感知器SU で飽和流が計測された場合は、その通過台数累積値を飽和流の継続時間で割って求める。車両感知器SU で飽和流が計測されなかった場合は、近似値として過去の計測値から適当と思われる値(例として時刻tU 〜tD の間に車両感知器SD で計測された飽和流の通過台数累積値を飽和流の継続時間で割った値)を設定する。Qa は時刻tU 〜tD の間に車両感知器SU で計測された非飽和流の通過台数を非飽和流の継続時間で割って求める。車両感知器SU で非飽和流が計測されなかった場合は、近似値として過去の計測値から適当と思われる(例として時刻tU 〜tD の間に車両感知器SD で計測された非飽和流の通過台数を非飽和流の継続時間で割った値)を設定する。
【0035】
渋滞先頭位置は式9〜10のtU をtD と置き換えることによって算出することができる。
【0036】
(3)未来における渋滞情報算出
ボックス−ジェンキンスモデル等の予測方法を用いて旅行時間および車の通過時系列データを予測し、それらの予測値を上記の式5〜10に代入することによって未来の時刻における渋滞情報を予測することが可能となる。
【0037】
(4)補足
これまでの処理では区間途中の流入出交通を無視したが、区間途中に交差道路がある場合は、交差部または本線上に設置した車両感知器によって計測した流入出交通量を存在台数算出時に付加することによって正確な渋滞情報が得られる。
【0038】
【発明の効果】
渋滞判定のために使用する車両感知器の数を節減することができるため、車両感知器設置費用、およびメンテナンスのための労力、費用を節約することが可能となる。
【0039】
【図面の簡単な説明】
【図1】感知器で計測された速度から待ち行列波及度を求める関係を示すグラフである。
【図2】待ち行列波及度から渋滞長を求める関係を示すグラフである。
【図3】本発明に用いた感知器の設置位置を説明する図である。
【図4】本発明の関係式を説明するための車両の走行軌跡図である。

Claims (3)

  1. 特定の区間について、区間の両端に設けた車両感知器からの得られる特定車両の旅行時間と時系列に得られる車両感知器データを用いて、渋滞部の通過台数累積値から渋滞部の交通流量Qjを、非渋滞部の通過台数累積値から非渋滞部の交通流量Qaを、非渋滞部の通過車両の速度から非渋滞部の速度Vをそれぞれ算出し、以下の式を用いてある時刻tにおける区間内の渋滞長L(t)を計測する方法。
    Figure 0003607330
    ただし、E(t):時刻tにおける特定区間に存在する車両台数、
    Lo:特定の区間の長さ
    km、a:定数
  2. 前記車両感知器データを用いて、該車両感知器が非渋滞部にあると判定された場合、当該非渋滞部にあると判定された車両感知器を通過する車両の通過台数を所定期間累積して当該累積された値を該所定期間で割ることにより前記非渋滞部の交通流量Q a を算出することを特徴とする請求項1に記載の方法
  3. 前記車両感知器データを用いて、該車両感知器が渋滞部にあると判定された場合、当該渋滞部にあると判定された車両感知器を通過する車両の通過台数を所定期間累積して当該累積された値を該所定期間で割ることにより前記渋滞部の交通流量Q j を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の方法
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