JP6057816B2 - 舗装面の補修方法 - Google Patents

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Description

本発明は、アスファルト常温合材を用いて、補修部分の耐久性を高めることが可能な舗装面の補修方法に関する。
従来より、アスファルト舗装に生じた轍やポットホール等の損傷を補修するために、アスファルト常温合材が用いられている。アスファルト常温合材としては、特許文献1に記載されるようにアスファルト乳剤と骨材を混合したものや、特許文献2に記載されるようにカットバックアスファルトと骨材を混合したものがある。
前記アスファルト常温合材を用いたアスファルト舗装の補修方法では、アスファルト舗装の損傷部分にアスファルト常温合材を充填し、充填したアスファルト常温合材をタンパー等で締め固める。アスファルト常温合材は、アスファルト乳剤の水分が蒸発し、また、カットバックアスファルトの揮発成分が揮発することにより、硬化が促進される。
特開平11−12475号公報 特開2008−74919号公報
しかしながら、前記従来のアスファルト常温合材は、アスファルト乳剤又はカットバックアスファルトによる粒子間の接着力と、アスファルト舗装に対する接着力が比較的弱いので、補修から数週間程度でアスファルト舗装から粒子が離脱し、損傷部分が露出する問題がある。すなわち、前記従来のアスファルト常温合材による補修部分は、耐久性が低いという問題がある。
また、前記従来のアスファルト常温合材は、水によって硬化が妨げられるので、雨天時や水溜りの存在下では、アスファルト舗装の補修作業ができないという問題がある。
補修部分の耐久性を高めるためには、アスファルト加熱合材を用いれば解決できるが、アスファルト加熱合材は、アスファルト舗装の損傷部に充填する前に140℃以上に加熱して混合する必要がある。したがって、バーナ等の加熱機器が必要となると共に作業工数が増え、補修作業に手間とコストがかかる問題がある。また、アスファルト加熱合材を締め固めた後に、高温のアスファルト舗装を冷却するための養生が必要であり、舗装路を早期に開放できないという問題がある。
そこで、本発明の課題は、アスファルト常温合材を用いて耐久性の高い硬化物が得られると共に、水の存在する環境においても補修作業ができ、更に、少ない使用機器と作業工数により施工が可能な舗装面の補修方法を提供することにある。
前記課題を解決するため、本発明の舗装面の補修方法は、変性エポキシ樹脂エマルジョン、イソシアネート化合物及び無機紛体を混合してなるアスファルト常温合材用混合剤を、アスファルト常温合材に混合して補修材を作成する工程と、
前記補修材を、舗装面の被補修部に配置する工程と
を備えることを特徴としている。
上記構成によれば、変性エポキシ樹脂エマルジョン、イソシアネート化合物及び無機紛体を混合してなるアスファルト常温合材用混合剤は、アスファルト常温合材に混合されて補修材が形成されると、一部が前記アスファルト常温合材の粒子の表面を取り囲むと共に、他の一部が前記アスファルト常温合材のアスファルト成分の一部を溶出して流下する。前記アスファルト常温合材の粒子の表面を取り囲んだアスファルト常温合材用混合剤が硬化し、粒子相互を固定する。一方、前記アスファルト常温合材のアスファルト成分を溶出して流下したアスファルト常温合材用混合剤は、補修材が設置された被補修部に流下する。この設置面に流下したアスファルト常温合材用混合剤及びアスファルト成分が硬化し、補修材の硬化物を設置面に固定する。このように、本発明によれば、アスファルト常温合材用混合剤により、アスファルト常温合材の粒子相互を固定して強度の高い硬化物を形成すると共に、この硬化物を強固に設置面に固定する。その結果、被補修部に配置された補修材の硬化物は、高い耐久性を有する。
本発明において、アスファルト常温合材用混合剤と混合されるアスファルト常温合材とは、アスファルトと骨材を含み、常温で粒状をなし、混合の際に110℃以上の加熱が不要なアスファルト合材をいう。本発明のアスファルト常温合材用混合剤は、市販のアスファルト常温合材に広く適用可能であり、アスファルト常温合材に含まれるアスファルトは、アスファルト乳剤でもよく、カットバックアスファルトでもよく、硬化樹脂成分を含んでもよい。市販のアスファルト常温合材としては、密粒度の骨材を用いた非透水性のものと、開粒度又は単粒度の骨材を用いた透水性のもののいずれも採用できる。
ここで、変性エポキシ樹脂とは、エポキシ基を末端に2つ以上有するエポキシ化合物又はこの物質と末端に1つのエポキシ基を有するエポキシ化合物との混合物と、脂肪酸との反応生成物である。これらと反応させることによって、OH基を分子内に多数存在させるのである。よって、原則として反応性エポキシ基は残存していない。エポキシ化合物としては、ビスフェノールA又はFとエピクロルヒドリンとの反応生成物が好適である。このエポキシ化合物と脂肪酸との化合物について、脂肪酸としてはヒドロキシカルボン酸が好ましい。
更に、変性エポキシ樹脂は複数種を混合して用いてもよい。これらの変性エポキシ樹脂の分子量としては、200〜1000程度が好適である。
なかでも、次の式(1)と式(2)で表される化合物の混合物が好適である。両者の混合比率は適宜設定できるが、式(1)の化合物100重量部に対して、式(2)の化合物50〜150重量部が好ましい。
Figure 0006057816
R1は芳香族構造を示し、R2、R3、R4、R5、は脂肪族構造を示す。
Figure 0006057816
R6は芳香族構造を示し、R7、R8は脂肪族構造を示す。
これらの化合物の中で、R1、R6はビスフェノールA又はFであり、R2、R3、R4、R5、R7、R8は炭素数2〜5程度が好適である。
この変性エポキシ樹脂は、エマルジョンとして用いる。よって、水と分散剤が必要である。混合量としては、樹脂成分100重量部に対して、水が30〜100重量部程度であり、好ましくは樹脂成分65重量%及び水35重量%である。変性エポキシ樹脂エマルジョンは、可塑剤、顔料その他の一般的な混合物を混合してもよい。
イソシアネート化合物は、NCO基を有する化合物であり、なかでもジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)や、ポリメリックMDI等がよい。これはNCO分として25〜35%程度がよい。化学式(3)で示されるものがMDIである。また、ポリメリックMDIとしては、化学式4で示されるようなものが好適である。
Figure 0006057816
Figure 0006057816
nは1〜数十である。
このイソシアネート化合物は、粘度を下げるための溶剤を加えてもよい。この溶剤としては、芳香族系ではなく、酢酸エチル等のエステル系やアセトン等のケトン系等が望ましい。これは、芳香族系のもの(ベンゼン、トルエン、キシレン等)ではアスファルト乳剤が溶解し、接着力が著しく減少したり、アスファルト骨材が外れて飛散したりするからである。溶剤の混合量としては、1〜10重量%程度で十分である。変性エポキシ樹脂エマルジョンとイソシアネート化合物の合計量に対しては、溶媒混合量は、0.5〜25重量%程度が適当である。
無機紛体とは、例えばセメント、珪素、炭酸カルシウム等の無機物の紛体であり、好ましくはセメントである。セメントは、水と混合されて硬化する無機質の粉であり、ポルトランドセメント、高炉セメント、アルミナセメント等を用いることができ、ポルトランドセメントが特に好ましい。
変性エポキシ樹脂エマルジョン、イソシアネート化合物、及びセメント粉の混合比率は、イソシアネート化合物100重量部に対して、変性エポキシ樹脂エマルジョン(水を含む)60〜180重量部、セメント粉60〜150重量部が好適である。
本発明の舗装面の補修方法は、前記アスファルト常温合材用混合剤をアスファルト常温合材と混合してなる補修材を用いる。アスファルト常温合材用混合剤と混合するアスファルト常温合材は、アスファルトと骨材を含み、常温で粒状をなし、混合の際に110℃を超える温度での加熱が不要なアスファルト合材をいう。すなわち、混合の際に110℃以下の温度で加熱するものも、本発明におけるアスファルト常温合材である。アスファルト常温合材に含まれるアスファルトは、アスファルト乳剤でもよく、カットバックアスファルトでもよく、硬化樹脂成分を含んでもよい。前記アスファルト常温合材用混合剤とアスファルト常温合材を、人力又はミキサーで混合し、補修材を作成する。アスファルト常温合材用混合剤とアスファルト常温合材を混合する工程では、加熱は不要であり、0〜40℃の常温環境下で実行できる。本発明のアスファルト常温合材用混合剤を用いて補修材を作成する場合、110℃以下の加熱が必要な加熱型のアスファルト常温合材であっても加熱は不要である。前記アスファルト常温合材用混合剤とアスファルト常温合材を混合して作成された補修材は、舗装面に生じた例えばポットホールや轍やひび割れ等の被補修部に配置され、アスファルト常温合材よりも短い時間で硬化する。
本発明で用いるアスファルト常温合材用混合剤は、変性エポキシ樹脂とイソシアネートが重合反応し、硬化する。これは、OH基とNCO基との反応であり、化学反応式(5)のように縮合する。
Figure 0006057816
よって、多数のOH基にNCO基が反応し、線状分子及び平面状または三次元状の高分子が生成される。また、アスファルト常温合材用混合剤は、セメントがエマルジョンの水と反応し、セメント状硬化物を作る。更に、アスファルト常温合材用混合剤は、アスファルト常温合材から溶出したアスファルト成分と共に、樹脂アスファルト混合硬化物を作る。これらの高分子及び硬化物により、補修材のアスファルト常温合材の粒子の相互が固定されると共に、硬化した補修材が舗装面の被補修部に固定される。
前記補修材は、アスファルト常温合材100重量部に対して、アスファルト常温合材用混合剤10〜30重量部を混合して作成するのが好ましい。
本発明の補修方法において、アスファルト常温合材に、アスファルト常温合材用混合剤と共に弾性骨材を混合することにより、補修材の硬化物の可撓性を高め、硬化物のひび割れに対する耐性を高めることができる。弾性骨材としては、天然又は合成の樹脂を平均粒径0.5〜30mmに破砕したものを用いることができ、樹脂としては、加硫をしていない天然ゴム又は合成ゴムである生ゴムが好ましい。なお、樹脂として加硫ゴムを用いてもよい。また、弾性骨材として、廃タイヤを破砕してなる廃ゴムチップを用いてもよい。更に、弾性骨材として、樹脂の破砕片で形成された芯材の表面に、表面材を接着剤で固着させてなる複合弾性骨材を用いてもよい。
複合弾性骨材は、平均粒径0.5〜30mmの樹脂芯材の表面に、この樹脂芯材の1/100〜1/10の平均粒径の表面材を接着して形成したものが好ましい。表面材の平均粒径は、あくまでも樹脂心材との相対的な関係で定めればよいが、具体的には、平均粒径0.01μm〜1mmである。表面材としては、珪砂の細粒や粉、セメントの粉、炭酸カルシウム、シリカ、セラミック等の無機粉体や、プラスチックの粉砕品等の有機粉体を用いることができる。紛体は、球状のものでも、無数の凹凸を有するものでも、繊維状のものでも、フライアッシュ等の微粉末でもよい。本明細書において、平均粒径とは、質量を基準とするメジアン径である。
前記弾性骨材を用いた補修材は、アスファルト常温合材98〜92重量部に対して、弾性骨材2〜8重量部と、アスファルト常温合材用混合剤10〜30重量部を混合して作成するのが好ましい。
本発明のアスファルト常温合材用混合剤を用いた補修材は、水により硬化反応が妨げられない。したがって、本発明のアスファルト常温合材用混合剤により、アスファルト常温合材とアスファルト常温合材用混合剤を混合して補修材を作成する工程と、この補修材を、水分が存在する舗装面の被補修部に配置する工程とを備える舗装面の補修方法が実現可能となる。ここで、水分が存在するとは、舗装面の被補修部に、水溜りや、水による染みが存在することをいう。本発明によれば、雨天時や、降雨や他の理由により存在する水が乾燥していない状態でも、舗装面の補修作業が可能となる。
本発明のアスファルト常温合材用混合剤とアスファルト常温合材との混合物である補修材は、種々の舗装の被補修部に適用できる。補修材を、アスファルト舗装の被補修部に配置する場合、補修材を形成するアスファルト常温合材用混合剤の粘度が100mPa・s以上1000mPa・s以下であるのが好ましい。アスファルト常温合材用混合剤の粘度を100mPa・s以上1000mPa・s以下に設定することにより、アスファルト常温合材のアスファルト成分を溶出して流下したアスファルト常温合材用混合剤が、アスファルト舗装の被補修部の表面に留まることなく、適切な深さに浸透する。このアスファルト舗装の被補修部の表面から適切な深さに浸透した成分が硬化することにより、補修材の硬化物を被補修部に強固に固定することができる。その結果、補修材の硬化物の耐久性を効果的に高めることができる。アスファルト舗装の被補修部への浸透深さの点で、アスファルト常温合材用混合剤の粘度は、100mPa・s以上500mPa・s以下が特に好ましい。ここで、粘度は20℃の温度で測定された値である。
ここで、アスファルト常温合材用混合剤の粘度は、溶剤や水を添加して調整するのが好ましく、溶剤としては、酢酸エチル等のエステル系が好適である。
また、補修材には、硬化促進剤として、水反応性のアミン系触媒を添加してもよい。このアミン系触媒は、アスファルト常温合材用混合剤に対して100〜1000ppm添加するのが好ましく、145〜700ppmが特に好ましい。また、補修材には顔料を適宜添加してもよい。
本発明は、補修の対象である舗装の材質は限定されないが、アスファルト舗装が好適である。また、舗装の用途は特に限定されず、例えば自動車道路、歩行者用道路、駐車場、公園、競技場及び建築物の外構等、種々の用途の舗装に適用できる。
本発明によれば、アスファルト常温合材用混合剤とアスファルト常温合材を混合してなる補修材は、硬化によって高い強度を発現すると共に被補修部に対してしっかりと固定されるので、硬化物が高い耐久性を有し、安定した補修を行うことができる。
また、補修材の流動成分が被補修部に浸透して硬化し、補修材の硬化物を強固に固定するので、被補修部に塗布するプライマーを削除できる。
また、補修材は水中でも硬化するので、雨天時や水溜りの存在する環境でも補修作業を行うことができ、これにより得られた補修材の硬化物は、気中で硬化した場合と遜色の無い強度が得られる。
また、アスファルト常温合材用混合剤とアスファルト常温合材を混合して補修材を形成し、この補修材を被補修部に配置するのみにより補修作業が完了するので、加熱が不要であり、補修作業を簡易にできる。
また、補修材は硬化時間が比較的短いので、補修を行った舗装面を早期に開放できる。
また、アスファルト常温合材用混合剤は、種々のアスファルト常温合材と組み合わせて補修材を作成できる。
また、アスファルト常温合材用混合剤及びアスファルト常温合材に弾性骨材を組み合せて補修材を作成することにより、補修材の硬化物のひび割れに対する耐性を高めることができる。
また、舗装面の空隙率に応じてアスファルト常温合材用混合剤の粘度を設定することにより、被補修部の表面から適切な深さに補修材の流動成分を浸透させることができ、補修材の硬化物を確実に舗装面に固定して硬化物の耐久性を更に高めることができる。
以下、本発明を実施の形態に沿って詳細に説明する。
(実施例1)
次のように各成分を混合しアスファルト常温合材用混合剤を準備した。
(1)エマルジョン:100重量部
変性エポキシ樹脂:70重量部
水:30重量部
(2)イソシアネート:140重量部
ポリメリックMDI:123重量部
溶剤:17重量部
(3)セメント:100重量部
ポルトランドセメント:97重量部
顔料:3重量部
変性エポキシ樹脂は、式(1)で示す化合物と式(2)で示す化合物の等量(重量比)混合物であり、R1、R6はビスフェノールAであり、R2、R4、R7はブチレン基であり、R3、R5、R8はメチル基である。また、ここでポリメリックMDIには、45%の変性MDIを含むものを使用し、平均分子量は、500〜1000程度である。
この3種の成分を混合、撹拌し実施例1とした。
(実施例2)
(1)エマルジョン:140重量部
変性エポキシ樹脂:100重量部
水:40重量部
(2)イソシアネート:100重量部
ポリメリックMDI:97重量部
溶剤:3重量部
(3)セメント:100重量部
ポルトランドセメント:97重量部
顔料:3重量部
変性エポキシ樹脂とポリメリックMDIは、実施例1と同じものを用いた。
この3種を混合、撹拌し実施例2とした。
(実施例3)
(1)エマルジョン:140重量部
変性エポキシ樹脂:100重量部
水:40重量部
(2)イソシアネート:100重量部
ポリメリックMDI:87.7重量部
溶剤:12.3重量部
(3)セメント:140重量部
ポルトランドセメント:136重量部
顔料:4重量部
変性エポキシ樹脂とポリメリックMDIは、実施例1と同じものを用いた。
この3種を混合、撹拌し実施例3とした。
(実施例4〜17)
前記実施例1〜3のアスファルト常温合材用混合剤を、アスファルト常温合材と混合して補修材を作成し、この補修材を硬化して試験体を作成した。これらの試験体について試験を行い、圧縮強度、残留歪率及びせん断強度を測定した。アスファルト常温合材は、透水性のものと非透水性のものの2種類を設定した。また、アスファルト常温合材用混合剤とアスファルト常温合材の配合と、硬化時の環境と、弾性骨材の有無とについて複数の条件を設定し、実施例4〜17の補修材を作成した。また、比較例として、アスファルト常温合材用混合剤を混合しないアスファルト常温合材のみによる補修材を作成し、硬化させて試験体を作成した。比較例のアスファルト常温合材は、透水性のものと非透水性のものを設定した。比較例の透水性のアスファルト常温合材は、乳化アスファルトを含むものと、エポキシ樹脂を含むものの2例を設定した。比較例の非透水性のアスファルト常温合材は、カットバックアスファルトを含むものを用いた。各実施例及び比較例の詳細は、表1に示すとおりである。
Figure 0006057816
ここで、実施例4〜11、17、比較例1、4の非透水性のアスファルト常温合材は、前田道路株式会社製の常温合材DRミックスを用いた。実施例12〜16、比較例2の透水性のアスファルト常温合材は、光工業株式会社製のPPアスコンを用いた。比較例3の透水性のアスファルト常温合材は、ニチレキ株式会社製のテクノパッチタフを用いた。生ゴム骨材は、生ゴムを平均粒径2〜5mmに破砕したものを用いた。複合弾性骨材は、平均粒径2〜5mmの生ゴムの表面に、平均粒径0.01μm〜1mmのセメント紛を接着して形成した。
(圧縮試験)
前記実施例4〜17及び比較例1〜5の補修材について圧縮試験を行い、圧縮強度及び残留歪率を測定した。試験方法は、JIS A 1216土の一軸圧縮試験に準拠した。試験体は、各実施例に応じたアスファルト常温合材とアスファルト常温合材用混合剤を混合して作成した補修材を、円筒形のモールド内に打設し、7日の養生の後にモールドから取り出して作成した。試験体は、直径40mm、高さ50mmの円筒形に作成した。この試験体に対して1軸方向に一定の変位速度で荷重を与え、最大荷重の値を圧縮強度とする。荷重が最大値を超えた後も載荷を継続し、最大荷重の1/2の荷重強度を示すまで変形させる。荷重が零から最大荷重に達するまでの歪に対し、最大値荷重から最大荷重の1/2に減少するまでの歪の割合を、残留歪率とする。いずれの条件も2つの試験体を作成し、2つの試験体の圧縮強度及び残留歪率を求め、算術平均を行って試験結果とした。硬化条件が水中のものは、試験体の作成過程のうちの打設と養生を水中で行った。
(せん断試験)
前記実施例4〜6、9、12、3についてせん断試験を行い、せん断強度を測定した。せん断強度の測定試験は、アスファルト乳剤を塗布したスレート平板の表面に、各実施例に応じたアスファルト常温合材とアスファルト常温合材用混合剤を混合してなる補修材を円筒形のモールドを用いて打設し、7日の養生の後にモールドを撤去して試験体を作成した。試験体は、直径40mm、高さ50mmの円筒形に形成した。前記スレート平板を固定し、試験体の側面に接触させた半割円筒形状の治具により、スレート平板と平行方向の荷重を与えた。試験体がスレート平板から離脱するときの荷重を試験体の断面積で除して、せん断抵強度を算出した。いずれの条件も2つの試験体を作成し、2つの試験体のせん断強度を求め、算術平均を行って試験結果とした。硬化条件が水中のものは、試験体の作成過程のうちの打設と養生を水中で行った。
実施例及び比較例の圧縮強度、残留歪率及びせん断強度の試験結果は、表2に示すとおりである。
Figure 0006057816
表2から分かるように、実施形態1乃至3のアスファルト常温合材用混合剤を用いた補修材の硬化物は、比較例1乃至3のアスファルト常温合材のみによる硬化物よりも高い圧縮強度とせん断強度を有する。また、実施形態1乃至3のアスファルト常温合材用混合剤を用いた補修材の硬化物は、比較例のうち圧縮強度が最も高い比較例3と同等以上の圧縮強度と、比較例3よりも高いせん断強度が得られる。
比較例1、2及び4については、アスファルト常温合材が硬化せず、試験体の作成過程においてモールドを脱型したときに不定形となり、圧縮試験及びせん断試験の実施が不可能であった。
硬化環境が水中である比較例4及び5は、アスファルト常温合材の硬化が実質的に起こらず、圧縮強度及びせん断強度のいずれも得られなかった。これに対して、実施形態16及び17のアスファルト常温合材用混合剤を用いた補修材の硬化物は、硬化環境が水中であっても、十分な圧縮強度とせん断強度が得られた。特に、透水性のアスファルト常温合材用混合剤を用いた実施例16は、硬化環境が気中の実施例1よりも大幅に高い圧縮強度が得られた。
また、弾性骨材として生ゴム骨材を用いた実施例11及び15は、アスファルト常温合材の種別、混合剤及び配合が実質的に同じで弾性骨材を用いない実施例6及び12よりも、残留歪率が高い。また、弾性骨材として複合弾性骨材を用いた実施例8、9及び14は、アスファルト常温合材の種別、混合剤及び配合が実質的に同じで弾性骨材を用いない実施例5、6及び12よりも、残留歪率が高い。よって、弾性骨材を添加した補修材の硬化物は、高い変形追従性を有し、ひび割れに対する耐久が高いといえる。
上記実施例において、補修材には、硬化促進剤を添加して硬化時間を短縮してもよい。硬化促進剤としては、水反応性のアミン系触媒が好ましい。硬化促進剤は、アスファルト常温合材用混合剤に対して100〜1000ppm添加するのが好ましく、145〜700ppmが特に好ましい。

Claims (5)

  1. 式(1)及び式(2)で表される化合物の混合物を含む変性エポキシ樹脂エマルジョン、MDI及び/又はポリメリックMDIであるイソシアネート化合物及び無機紛体を混合してなるアスファルト常温合材用混合剤を、アスファルト常温合材に混合して補修材を作成する工程と、
    前記補修材を、舗装面の被補修部に配置する工程と
    を備えることを特徴とする舗装面の補修方法。
    Figure 0006057816
    R1は芳香族構造を示し、R2、R3、R4、R5、は脂肪族構造を示す。
    Figure 0006057816
    R6は芳香族構造を示し、R7、R8は脂肪族構造を示す。
  2. 請求項1に記載の舗装面の補修方法において、
    前記アスファルト常温合材100重量部に対して、前記アスファルト常温合材用混合剤10〜30重量部を混合して補修材を作成することを特徴とする舗装面の補修方法。
  3. 請求項1に記載の舗装面の補修方法において、
    前記アスファルト常温合材98〜92重量部に対して、弾性骨材2〜8重量部と、前記アスファルト常温合材用混合剤10〜30重量部を混合して補修材を作成することを特徴とする舗装面の補修方法。
  4. 請求項1乃至3のいずれかに記載の舗装面の補修方法において、
    前記被補修部は、水分が存在することを特徴とする舗装面の補修方法。
  5. 請求項1乃至4のいずれかに記載の舗装面の補修方法において、
    前記アスファルト常温合材用混合剤は、粘度が100mPa・s以上1000mPa・s以下であり、
    前記舗装面は、アスファルト舗装の舗装面であることを特徴とする舗装面の補修方法。
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