JP6057059B2 - 建物嵩上げ方法、及び、建物構造 - Google Patents
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Description
次に、建設後の建物荷重によって地盤沈下が生じると、両揚重用梁部材の下方の地盤上にそれぞれジャッキ装置をセットし、それらのジャッキ装置の揚重力を揚重用梁部材に作用させ、揚重用梁部材を介して柱を上昇させる。続いて、フィラープレート等の支持部材を、基礎部と柱との間に挟んだ後、ジャッキ装置の揚重力を開放して基礎部に対して支持部材を介して柱を固定することで建物の嵩上げを行う(例えば、特許文献1、特に図1参照)方法があった。
また、揚重用梁部材は、嵩上げ操作を実施しない時でも、柱の両側面に固着されたままになっているので、柱周りの空間は揚重用梁部材によって占用され、自由に使用できる床面積が少なくなる問題点もある。
また、柱の外周部を、化粧パネルで覆うような場合、柱の梁貫通孔の軸芯上に位置する化粧パネル部分に、同様の梁貫通孔を形成しておけば、化粧パネルを取り外したり壊さずに嵩上げ作業を実施することができ、柱周りの良好な意匠性を確保できる。特に、化粧パネルの梁貫通孔に、着脱自在な蓋部材を設けておけば、通常時の美観性を向上させることができる。
即ち、H形鋼のフランジに梁貫通部を設けるのに比較して、断面欠損に伴う断面性能(断面二次モーメントや断面係数等)の低下をより少なくすることができ、強度の低下を最小限に抑えることができる。
また、嵩上げ作業を実施しない時には、柱の梁貫通部から揚重用梁部材を撤去して、柱周りを広く使用することができる。
また、揚重用梁部材は、どの柱にも貫通させて使用できるから、従来のように、全ての柱に揚重用梁部材を予め固着しておく必要が無くなり、固着手間を掛けずに、且つ、材料コストの削減を図ることができる。
以上の結果、嵩上げを行わない通常時には床面積を広く使用でき、且つ、手間を掛けずに経済的に建物嵩上げを実施できる。
また、柱の外周部を、化粧パネルで覆うような場合、柱の梁貫通孔の軸芯上に位置する化粧パネル部分に、同様の梁貫通孔を形成しておけば、化粧パネルを取り外したり壊さずに嵩上げ作業を実施することができ、柱周りの良好な意匠性を確保できる。特に、化粧パネルの梁貫通孔に、着脱自在な蓋部材を設けておけば、通常時の美観性を向上させることができる。
また、基礎コンクリート1における柱Pの立設位置の両側方には、基礎コンクリート1に反力を確保して柱Pを揚重自在なジャッキ装置(揚重装置の一例)Uの設置予定部(揚重装置設置予定部の一例)2がそれぞれ確保されている。
ベースプレート4には、上述の各アンカーボルト1aを挿通自在な挿通部4aがそれぞれ形成されており、この挿通部4aにアンカーボルト1aが貫通する状態に柱Pは配置され、貫通したアンカーボルト1aに固定ナット1bを螺合させて締め付けることで、基礎コンクリート1に柱Pが固定してある。
尚、地盤の不同沈下が発生した場合、該当する部分の柱Pは沈下前の高さに戻すために嵩上げが実施されるが、その嵩上げに伴って、後述する支持高さ調整用支持板(支持部材の一例)5が、基礎コンクリート1とベースプレート4との間に介在される。
平面視において柱本体3のウェブ3Aの表裏面が対向する方向に、上述のジャッキ装置Uの設置予定部2が設けられている。
尚、梁貫通部3Aaの設置高さに関しては、柱Pの反曲点、又は、その近傍に設けておけば、断面欠損による断面性能の低下を最小限に抑えることができる。
建物Bの通常の状態においては、アングル取付部8には、アングル部材7は取り付けてなくてもよい。
このようにアングル部材7をアングル取付部8に取り付けることで、前記梁貫通部3Aaに挿通させた揚重用梁部材6をジャッキ装置Uで持ち上げる際、アングル部材7の下面部7aの広い範囲で揚重用梁部材6の上面を受け止めることができると共に、揚重用梁部材6の姿勢を、水平に近い状態に保ち易くなる(図4〜6参照)。
よって、柱Pの嵩上げ操作に伴って、梁貫通部3Aaと揚重用梁部材6との相対姿勢の維持を、アングル部材7によって図ることができる。
アングル部材7は、当該発明に係る面支持部の一例であると同時に、姿勢維持手段Sの一例でもある。
建物嵩上げ方法の手順について、次に説明する。
[2]梁貫通部3Aaに、揚重用梁部材6を挿通する。揚重用梁部材6の長手方向中央部が柱本体3のウェブ3Aの位置に合うようにセットする(図4参照)。
[3]揚重用梁部材6の両端部の下方に位置する両設置予定部2にジャッキ装置Uをそれぞれ設置する(図4参照)。
[4]基礎コンクリート1のアンカーボルト1aから固定ナット1bを取り外す。
[5]両ジャッキ装置Uによる揚重を行う(図5参照)。
[6]揚重によって基礎コンクリート1とベースプレート4との間にできた隙間に、所定高さ分の支持高さ調整用支持板5を挿入する(図5参照)。
[7]ジャッキ装置Uによる揚重を解除し、支持高さ調整用支持板5の上にベースプレート4を載置させた状態で、アンカーボルト1aに固定ナット1bを取り付けて、柱Pを基礎コンクリート1に固定する(図6参照)。
[8]ジャッキ装置U、揚重用梁部材6、アングル部材7等の揚重アイテムを撤去する。
また、揚重アイテムは、どの柱Pにも使用できるから、兼用化によって固定費用を低減でき、経済的に建物嵩上げを実施できる。
しかも、梁貫通部3Aaは、柱Pのウェブ3Aに設けてあるから、構造が簡単で加工性に富んでおり、安価に提供できることに加えて、フランジ3Bに設けるのに比べて強度の低下を抑制することができる。
更には、面支持部や姿勢維持手段となるアングル部材7を設けてあることで、嵩上げ作業を、無理なく安定した状態で進めることができる。
以下に他の実施の形態を説明する。
例えば、建物が鉄骨構造の場合、柱Pは、H形鋼に限るものではなく、例えば、I形鋼やC形鋼や角形鋼管や鋼管や他の形鋼等の単独、又は、組合せで構成してあってもよい。
また、基礎部1は、先の実施形態で説明した独立フーチングの基礎コンクリートに限るものではなく、例えば、基礎梁や、土間であってもよく、要するに、柱Pの荷重を受けて地盤に伝達する構成であればよく、それらを含めて基礎部1という。
また、前記面支持部7は、先の実施形態で説明したアングル部材に限るものではなく、例えば、溝形鋼や角形鋼管等で構成してあってもよい。また、図7に示すように、ウェブ3Aにおける梁貫通部3Aaの上縁部に嵌合できるように形成された面支持部材10で構成してあってもよい。
面支持部材10は、揚重用梁部材6の上面と当接自在な長方形の平板部10Aと、平板部10Aの長手方向の中間部に隙間kをあけて立設された一対の縦板部10Bと、平板部10Aと縦板部10Bとにわたって設けられた一対の補強リブ10Cと、一対の縦板部10B間に嵌入するウェブ3Aと、一方の縦板部10Bとの間で、双方に押圧力を作用させて抜け止めを図る板バネ部材10Dとを設けて構成してある。
この面支持部材10は、前記板バネ部材10Dを、一方の縦板部10Bに係合させた状態で、梁貫通部3Aaに位置させて、前記隙間kに、ウェブ3Aの梁貫通部3Aaの上縁部が嵌入するように上昇させると、前記板バネ部材10Dの弾性復元力の作用で、梁貫通部3Aaの上縁部に抜け止め状態で設置することができる。先のアングル部材に比べて、着脱作業の効率化を図ることができる。尚、面支持部材10は、本発明に係る「面支持部」の機能と「姿勢維持手段」の機能とを併せもっている。
また、梁貫通部13Aに、図11に示すように、開閉操作自在な蓋部材13Bを設けておけば、嵩上げ作業を行わない時の柱P周りの美観性の向上を図ることができる。
2 設置予定部(揚重装置設置予定部の一例)
3A ウェブ
3Aa 梁貫通部
5 支持高さ調整用支持板(支持部材の一例)
6 揚重用梁部材
7 アングル部材(面支持部の一例)
B 建物
P 柱
S 姿勢維持手段
U ジャッキ装置(揚重装置の一例)
Claims (4)
- 基礎部の上に柱を設置してある建物において、地盤沈下に伴って揚重装置で前記柱を上昇させ、前記基礎部と前記柱との間に生じた隙間に、前記柱の軸力を支持させる支持部材を設置する建物嵩上げ方法であって、
前記柱としてH形鋼を用い、
前記揚重装置の揚重力を前記柱に伝達する揚重用梁部材が横方向に貫通自在な梁貫通部を、前記柱のウェブに形成しておき、
前記梁貫通部に前記揚重用梁部材を貫通させると共に前記ウェブの左右両側に前記揚重用梁部材からの揚重力を面で支持する左右一対の面支持部を設け、
前記揚重用梁部材の左右両端側部分の夫々に前記揚重装置を配置し、
前記揚重用梁部材の左右両端側部分の夫々に前記揚重装置の揚重力を作用させ、前記左右一対の面支持部を介して前記柱を上昇させる建物嵩上げ方法。 - 前記面支持部を、前記梁貫通部に前記揚重用梁部材を挿入する前に、前記柱に取り付けておく請求項1に記載の建物嵩上げ方法。
- 前記揚重装置による前記揚重用梁部材を介した前記柱の上昇操作状態において、前記梁貫通部と前記揚重用梁部材との相対姿勢の維持を図る姿勢維持手段を、前記面支持部に設ける請求項1または2に記載の建物嵩上げ方法。
- 請求項1〜3の何れか一項に記載の建物嵩上げ方法に使用する建物構造であって、
前記柱に、前記揚重用梁部材を横方向に貫通自在な梁貫通部が設けてあり、前記梁貫通部に貫通させた前記揚重用梁部材の両端部の下方側に位置する建物部に、前記揚重装置を設置自在な揚重装置設置予定部がそれぞれ設けてある建物構造。
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