以下、実施形態を図面に基づいて説明する。以下の説明は例示である。
《実施形態1》
図1は、実施形態1に係るエンジン1の構成を示している。エンジン1のクランクシャフト15は、図示しないが、変速機を介して駆動輪に連結されている。エンジン1の出力が駆動輪に伝達されることによって、車両が推進する。ここで、エンジン1の燃料は、本実施形態ではガソリンであるが、バイオエタノール等を含むガソリンであってもよく、少なくともガソリンを含む液体燃料であれば、どのような燃料であってもよい。
エンジン1は、シリンダブロック12と、その上に載置されるシリンダヘッド13とを備えており、シリンダブロック12の内部に複数のシリンダ11が形成されている(図1では、1つのみ示す)。エンジン1は、多気筒エンジンである。シリンダブロック12及びシリンダヘッド13の内部には、図示は省略するが冷却水が流れるウォータージャケットが形成されている。各シリンダ11内には、コネクティングロッド14を介してクランクシャフト15に連結されたピストン16が摺動自在に嵌挿されている。ピストン16は、シリンダ11及びシリンダヘッド13と共に燃焼室17を区画している。
本実施形態では、燃焼室17の天井部130(シリンダヘッド13の下面)は、吸気ポート18の開口部180が設けられかつ、シリンダ11の中央に向かって登り勾配となった吸気側斜面131と、排気ポート19の開口部190が設けられかつ、シリンダ11の中央に向かって登り勾配となった排気側斜面132と、吸気側斜面131と排気側斜面132とを連結する谷部133とを備えている。燃焼室17は、ペントルーフ型の燃焼室である。尚、谷部133は、ペントルーフの稜部であり、シリンダ11のボア中心(軸心)を通る場合、及び通らない場合の両方があり得る。
また、ピストン16の頂面160は、天井部130の吸気側斜面131及び排気側斜面132に対応するように三角屋根状に隆起している。具体的には、頂面160は、吸気側においてピストン16の中央に向かって登り勾配となった吸気側斜面161と、排気側においてピストン16の中央に向かって登り勾配となった排気側斜面162と、吸気側斜面161と排気側斜面162とを連結する稜部163(図3参照)とを有する。吸気側斜面161は、吸気側斜面131と対向し、排気側斜面162は、排気側斜面132と対向する。稜部163は、谷部133と対向している。これにより、このエンジン1の幾何学的圧縮比は、15以上の高い圧縮比に設定されている。また、ピストン16の頂面160には、凹状のキャビティ164が形成されている。ピストン16の頂面160の形状については、後で詳述する。
図1には1つのみ示すが、シリンダ11毎に2つの吸気ポート18がシリンダヘッド13に形成されている。吸気ポート18の開口部180は、シリンダヘッド13の吸気側斜面131に、エンジン出力軸(つまり、クランクシャフト15)の方向に並んで設けられ、吸気ポート18は、この開口部180を通じて燃焼室17に連通している。2つの吸気ポート18の開口部180は、シリンダ11のボア中心に対して対称に配設されていると共に、吸気ポート18のスロート部の軸線は、シリンダ11のボア中心に対して対称となるように設けられている。同様に、シリンダ11毎に2つの排気ポート19がシリンダヘッド13に形成されている。排気ポート19の開口部190は、シリンダヘッド13の排気側斜面132に、エンジン出力軸の方向に並んで設けられ、排気ポート19は、この開口部190を通じて燃焼室17に連通している。2つの排気ポート19の開口部190は、シリンダ11のボア中心に対して対称に配設されている。
吸気ポート18は、吸気通路181に接続されている。吸気通路181には、図示は省略するが、吸気流量を調節するスロットル弁が介設されている。排気ポート19は、排気通路191に接続されている。排気通路191には、図示は省略するが、1つ以上の触媒コンバータを有する排気ガス浄化システムが配設されている。触媒コンバータは、三元触媒を含む。
シリンダヘッド13には、吸気弁21及び排気弁22が、それぞれ吸気ポート18及び排気ポート19を燃焼室17から遮断(閉)することができるように配設されている。吸気弁21は吸気弁駆動機構により、排気弁22は排気弁駆動機構により、それぞれ駆動される。吸気弁21及び排気弁22は所定のタイミングで往復動して、それぞれ吸気ポート18及び排気ポート19を開閉し、シリンダ11内のガス交換を行う。吸気弁駆動機構及び排気弁駆動機構は、図示は省略するが、それぞれ、クランクシャフト15に駆動連結された吸気カムシャフト及び排気カムシャフトを有し、これらのカムシャフトはクランクシャフト15の回転と同期して回転する。吸気弁駆動機構及び排気弁駆動機構は、この例では、吸気カムシャフトの位相を所定の角度範囲内で連続的に変更可能な、液圧式又は電動式の位相可変機構(Variable Valve Timing:VVT)23、24を、少なくとも含んで構成されている。尚、吸気弁駆動機構及び/又は排気弁駆動機構は、VVT23、24と共に、弁リフト量を変更可能なリフト可変機構を備えるようにしてもよい。リフト可変機構は、リフト量を連続的に変更可能なCVVL(Continuous Variable Valve Lift)としてもよい。尚、吸気弁21及び排気弁22を駆動する動弁機構は、どのようなものであってもよく、例えば油圧式や電磁式の駆動機構を採用してもよい。
シリンダヘッド13には、燃焼室17内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁6が取り付けられている。つまり、エンジン1は、直噴エンジンである。燃料噴射弁6は、天井部130の谷部133に設けられ、図2に示すように、シリンダ11のボア中心に対して、エンジン出力軸方向の一側(図2における紙面左側であり、これは、この実施形態ではエンジン1において反トランスミッション側の、いわゆるエンジン前側に相当する)に、ずれて配設されている。燃料噴射弁6はまた、その噴射軸心が、シリンダ11の軸心に沿うように配設されて、噴口が、燃焼室17内に臨んでいる。燃料噴射弁6は、キャビティ164に対向するように設けられている。燃料噴射弁6は、このキャビティ164内に向かって、燃料を噴射する。
燃料噴射弁6は、詳細は後述するが、図2に概念的に示すように、燃焼室17内(つまり、キャビティ164内)に、(可燃)混合気層と、その周囲の断熱ガス層とが形成可能に構成されている。燃料噴射弁6は、例えば外開弁式の燃料噴射弁としてもよい。外開弁式の燃料噴射弁は、リフト量を調整することにより、噴射する燃料噴霧の粒径を変更することが可能である。本願出願人が先に出願した特願2013−242597号に開示しているように、この外開弁式の燃料噴射弁の特性を利用して、多段噴射を基本とした燃料噴射態様を、適宜制御することにより、燃料噴霧の進行方向への飛散距離及び燃料噴霧の噴射軸心に対する広がりを調整することができるため、圧縮上死点付近のタイミングで燃料を噴射することにより、キャビティ164の中央部に混合気層を、その外周囲に断熱ガス層を形成することが可能である。また、外開弁式の燃料噴射弁に限らず、VOC(Valve Covered Orifice)ノズルタイプのインジェクタも、ノズル口に発生するキャビテーションの度合い調整することにより、噴口の有効断面積を変更して、噴射する燃料噴霧の粒径を変更することが可能である。従って、外開弁式の燃料噴射弁と同様に、圧縮上死点付近のタイミングで噴射する燃料噴霧の進行方向への飛散距離及び燃料噴霧の噴射軸心に対する広がりを調整することにより、キャビティ164内の中央部に混合気層を、その外周囲に断熱ガス層を形成することが可能である。
また、ヒータによって所定の温度まで加熱した燃料を、高圧雰囲気の燃焼室17内に噴射することにより、燃料を超臨界状態とすることによっても、キャビティ164内の中央部に混合気層を、その外周囲に断熱ガス層を形成することが可能である。この技術は、燃焼室17内に噴射した燃料を瞬時に気化させることによって燃料噴霧のペネトレーションが短くなり、図2に示すように、キャビティ164内における燃料噴射弁6の近傍に、混合気層を形成するものである。尚、燃料噴射弁は、例えば複数の噴口を有するマルチホールタイプの燃料噴射弁において、燃料を加熱するヒータを備えて構成される。また、この構成以外の燃料噴射弁であってもよい。こうした燃料噴射弁の構成は、公知であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
シリンダヘッド13には、点火プラグ7が取り付けられている。点火プラグ7は、図2に示すように、天井部130の谷部133に設けられ、シリンダ11の軸心(ボア中心)Xに対してエンジン出力軸方向の他側(つまり、エンジン後側)にずれて配設されている。点火プラグ7は、先端が燃料噴射弁6に近づく方向に、シリンダ11の軸線に対し傾いて配設されている。これにより、燃料噴射弁6と点火プラグ7とは、シリンダ11のボア中心近傍に、互いに近接して配設される。
このエンジン1は、前述したように、幾何学的圧縮比εが15以上に設定されている。幾何学的圧縮比は、40以下とすればよく、特に20以上35以下が好ましい。エンジン1は圧縮比が高いほど膨張比も高くなる構成から、高圧縮比と同時に、比較的高い膨張比を有するエンジン1でもある。このエンジン1は、基本的には全運転領域でシリンダ11内に噴射した燃料を圧縮着火により燃焼させるよう構成されており、高い幾何学的圧縮比は、圧縮着火燃焼を安定化する。
燃焼室17は、シリンダ11の内周面と、ピストン16の頂面160と、シリンダヘッド13の下面(天井部130)と、吸気弁21及び排気弁22それぞれのバルブヘッドの面と、によって区画形成されている。冷却損失を低減すべく、これらの区画面に、遮熱層を設けることによって、燃焼室17が遮熱化されている。遮熱層は、これらの区画面の全てに設けてもよいし、これらの区画面の一部に設けてもよい。また、燃焼室17を直接区画する壁面ではないが、吸気ポート18や排気ポート19における、燃焼室17の天井部130側の開口近傍のポート壁面に遮熱層を設けてもよい。
これらの遮熱層は、燃焼室17内の燃焼ガスの熱が、区画面を通じて放出されることを抑制するため、燃焼室17を構成する金属製の母材よりも熱伝導率が低く設定される。
また、遮熱層は、冷却損失を低減する上で、母材よりも容積比熱が小さいことが好ましい。つまり、遮熱層の熱容量を小さくして、燃焼室17の区画面の温度が、燃焼室17内のガス温度の変動に追従して変化するようにすることが好ましい。
前記遮熱層は、例えば、母材上にZrO2等のセラミック材料をプラズマ溶射によってコーティングして形成すればよい。このセラミック材料の中には、多数の気孔を含んでいてもよい。このようにすれば、遮熱層の熱伝導率及び容積比熱をより低くすることができる。
本実施形態では、前記の燃焼室の遮熱構造に加えて、シリンダ11内(つまり、燃焼室17内)においてガス層による断熱層を形成することで、冷却損失を大幅に低減するようにしている。
具体的には、燃焼室17内の外周部に新気を含むガス層が形成されかつ中心部に混合気層が形成されるように、圧縮行程以降において燃料噴射弁6の噴射先端からキャビティ164内に燃料を噴射させることにより、図2に示すように、燃料噴射弁6の近傍の、キャビティ164内の中心部に混合気層が形成されかつ、その周囲に新気を含むガス層が形成されるという、成層化が実現する。尚、ここでいう混合気層は、可燃混合気によって構成及び形成される層であり、可燃混合気は、例えば当量比φ=0.1以上の混合気としてもよい。ガス層は、新気のみであってもよく、新気に加えて、既燃ガス(EGRガス)を含んでいてもよい。尚、ガス層に少量の燃料が混じっても問題はなく、ガス層が断熱層の役割を果たせるように混合気層よりも燃料リーンであればよい。
前記のようにガス層と混合気層とが形成された状態で燃料が圧縮着火燃焼すれば、混合気層とシリンダ11の壁面との間のガス層により、混合気層の火炎のシリンダ11の壁面への接触が抑制され、そのガス層が断熱層となって、シリンダ11の壁面からの熱の放出を抑えることができるようになる。この結果、冷却損失を大幅に低減することができる。
尚、冷却損失を低減させるだけでは、その冷却損失の低減分が排気損失に転換されて図示熱効率の向上にはあまり寄与しないところ、このエンジン1では、高圧縮比化に伴う高膨張比化によって、冷却損失の低減分に相当する燃焼ガスのエネルギを、機械仕事に効率よく変換している。すなわち、エンジン1は、冷却損失及び排気損失を共に低減させる構成を採用することによって、図示熱効率を大幅に向上させているということができる。
このような混合気層とガス層とを燃焼室17内に形成するために、燃料を噴射するタイミングにおいては、燃焼室17内のガス流動は弱いことが望ましい。そのため、吸気ポートは、燃焼室17内でスワールが生じない、又は、生じ難いようなストレート形状を有していると共に、タンブル流もできるだけ弱くなるように、構成されている。
次に、燃焼室を構成するピストン16の頂面160の形状について、図を参照しながらさらに詳細に説明をする。図3は、ピストン16の頂面160の形状を示す斜視図である。図3における紙面右手前が吸気側、紙面左奥が排気側であり、紙面左手前がエンジン出力軸方向の一側(つまり、エンジン前側)、紙面右奥がエンジン出力軸方向の他側(つまり、エンジン後側)である。
前述したように、ピストン16の頂面160は、吸気側斜面161と排気側斜面162とがそれぞれ、ピストン16の中央に向かって登り勾配となって構成されており、これにより、ピストン16の頂面160は、エンジン出力軸における一方の側から、エンジン出力軸に沿う方向にピストン16を見たときに、両側それぞれから中央部に向かって次第に隆起した三角屋根状を成している。排気側斜面162は、相対的に凹んだバルブリセス162aと、相対的に突出した島状部162bとを有している。バルブリセス162aの表面及び島状部162bの表面は、実質的に平坦な面である。バルブリセス162aは、開動作を行うときの排気弁22との干渉を避けるための部分である。バルブリセス162aは、平面視で排気弁22の外形よりも少し大きい形状をしている。天井部130の排気側斜面132には2つの排気弁22が近接して設けられ且つ排気弁22のバルブヘッドの外形は円形状であるので、バルブリセス162aは、2つの円が部分的に重なり合ったような形状をしている。バルブリセス162aがこのような形状に形成された結果、排気側斜面162のうち稜部163とは反対側の部分であって2つの排気弁22のバルブヘッドの間に相当する部分に略三角形状の島状部162bが形成される。
一方、吸気側斜面161は、排気側斜面162のような凹凸はなく、実質的に平坦な面である。吸気側斜面161は、バルブリセスが形成されていないというよりはむしろ、全面がバルブリセスである。つまり、吸気側斜面161の高さは、ピストン16が上死点に位置するときでも、開動作を行う吸気弁21と干渉しない高さとなっている。
稜部163は、尖鋭な形状ではなく、湾曲したR面となっており、吸気側斜面161と排気側斜面162とを滑らかに連結している。稜部163は、エンジン出力軸方向に延びている。
また、ピストン16の頂面160は、ピストン16の側周面16aと稜部163との間に設けられ、稜部163に向かうにつれてキャビティ164に近づくように傾斜しながら側周面16aと稜部163とを繋ぐテーパ面165をさらに有する。
テーパ面165は、側周面16aと稜部163との間において屈曲している。この屈曲する部分を屈曲部166とする。テーパ面165は、屈曲部166よりも側周面16a側に位置する第1テーパ面165aと、屈曲部166よりも稜部163側に位置する第2テーパ面165bとを含んでいる。シリンダ11の軸心Xに対して、第2テーパ面165bは、第1テーパ面165aよりも傾いている。シリンダ11の軸心Xに対する第1テーパ面165aの傾斜角は、シリンダ11の軸心Xに対する第2テーパ面165bの傾斜角よりも小さくなっている。
第1テーパ面165aは、円錐の側面と同様の形状をしている。つまり、第1テーパ面165aの断面は、直線となる。一方、第2テーパ面165bは、自由曲面であり、第2テーパ面165bの断面は、曲線となる。第2テーパ面165bは、該曲線を軸心X回りに回転させて形成される回転体の側面と同様の形状をしている。
前述したように、ピストン16の頂面160にはキャビティ164が凹陥している。キャビティ164は、図2に示すように、開口縁から凹陥するに従い、その大きさが次第に縮小するように設けられており、キャビティ164は、ピストン16の頂面160に連続する側壁1641と、側壁1641に連続する底壁1642とから構成されている。図2に示すように、ピストン16の中心を通る縦断面において、キャビティ164は、バスタブのような形状を有している。側壁1641は、ピストン16の頂面160及び底壁1642とは異なる角度を有しており、ピストン16の頂面160と側壁1641との間、及び、側壁1641と底壁1642との間には、それぞれR面が設けられている。
キャビティ164は、図3に示すように、略楕円形状の開口縁164aを有する。この楕円は、広義の楕円であり、オーバル形状や長円形状も含む。キャビティ164はまた、図2に示すように、その中心位置(より正確には、キャビティ164の最大幅に相当する箇所において吸気側の端縁と排気側との端縁との中点でかつ、エンジン出力軸方向の一側の端縁と他側の端点との中点である中心位置)が、燃料噴射弁6の噴射軸心に一致するように設けられている。これは、前述したように、キャビティ164内の中心部に混合気層を形成する上で有利な構成である。前述したように、燃料噴射弁6の噴射軸心は、エンジン出力軸方向の一側にずれているため、キャビティ164もまた、ピストン16の頂面160において、ピストン16の中心に対し、エンジン出力軸方向の一側にずれて位置することになる。
キャビティ164は、稜部163を横切って吸気側斜面161及び排気側斜面162に亘って形成されている。これにより、稜部163は、キャビティ164を挟んで2つに分割される。また、キャビティ164の開口縁164aが略楕円形状であり且つ、吸気側斜面161及び排気側斜面162は下り勾配なので、吸気側斜面161及び排気側斜面162の一部はそれぞれ、キャビティ164によって抉られる。吸気側斜面161及び排気側斜面162におけるキャビティ164の開口縁164aは、両側の稜部163から次第に下方に窪むように湾曲した形状となっている。さらに、キャビティ164が前述のようにシリンダ11のボア中心からずれて設けられることに伴い、吸気側斜面161及び排気側斜面162におけるキャビティ164の開口縁164aもまた、図2に示すように、ボア中心に対称となるのではなく、エンジン出力軸方向の一側にずれることになる。それに加え、エンジン出力軸方向の一側の稜部163が相対的に短くかつ、エンジン出力軸方向の他側の稜部163が相対的に長くなる。
このように、シリンダヘッド13の天井部130に対応させて、ピストン16の頂面160を隆起させた構成においては、スキッシュエリアが大きくなる。詳しくは、燃焼室17は、図2に示すように、シリンダヘッド13の天井部130とピストン16のキャビティ164とで囲まれた主燃焼室174と、シリンダヘッド13の天井部130とピストン16の頂面160とで挟まれたスキッシュエリア175とを有している。
ここで、吸気側斜面161及び排気側斜面162を合わせた面積は、頂面160(キャビティ164を除く)の全面積の1/2以上となっている。つまり、ピストン16は、主燃焼室174に比べてスキッシュエリア175が比較的大きく、これにより、高圧縮比の実現が可能となっている。
スキッシュエリア175には、シリンダヘッド13の谷部133とピストン16の稜部163との間の稜部スキッシュエリア176(図4参照)と、シリンダヘッド13の吸気側斜面131及び排気側斜面132とピストン16の吸気側斜面161及び排気側斜面162との間の斜面スキッシュエリア177(図5参照)と、シリンダヘッド13のうち、ピストン16のテーパ面165と対向する部分である対向部134と該テーパ面165との間のテーパスキッシュエリア178(図7参照)とが含まれる。稜部スキッシュエリア176は、キャビティ164を挟んで対向する2箇所に形成されている。斜面スキッシュエリア177は、キャビティ164を挟んで対向する2か所に形成されている。
尚、斜面スキッシュエリア177を吸気側と排気側とで区別するときには、吸気側斜面131と吸気側斜面161との間の斜面スキッシュエリア177を吸気側スキッシュエリア177aと称し、排気側斜面132と排気側斜面162との間の斜面スキッシュエリア177を排気側スキッシュエリア177bと称する。
スキッシュエリア175においては、圧縮行程の終盤(上死点近傍)に、キャビティ164の方へ向かうスキッシュ流が発生する。スキッシュ流は、キャビティ164の開口縁164aからキャビティ164内へ流入する。ピストン16の吸気側斜面161及び排気側斜面162におけるキャビティ164の開口縁164aは、前述の如く、下方に窪むように湾曲しているので、斜面スキッシュエリア177のスキッシュ流は、比較的低い位置からキャビティ164内に流入する。一方、稜部163におけるキャビティ164の開口縁164aは、比較的高い位置に位置しているので、稜部スキッシュエリア176のスキッシュ流は、比較的高い位置からキャビティ164内に流入する。
ここで、図6に示すように、稜部スキッシュエリア176’の隙間が狭い場合には、稜部スキッシュエリア176’のスキッシュ流Sが強くなる。スキッシュ流Sは、キャビティ164内に流入するときに拡散するが、スキッシュ流Sの流れが強い場合には、キャビティ164内においてもスキッシュエリアでの流れ方向と同じ方向へ進む成分が多くなる。つまり、稜部スキッシュエリア176’からのスキッシュ流Sは、谷部133に沿ってキャビティ164の中央に向かって進んでいき、反対側の稜部スキッシュエリア176’からのスキッシュ流Sとキャビティ164の略中央で衝突する。2つのスキッシュ流Sは、略同一平面上の流れであり且つ比較的高い位置で衝突するので、衝突後に下降流となる。この下降流は、燃料噴霧及び混合気をキャビティ164の底壁1642に押し付けるように作用する。その結果、キャビティ164の底壁1642の近傍で燃焼が発生し、ピストン16へ伝達する熱量が増加してしまう。特に、2つのスキッシュ流Sが衝突する部分の近傍には、燃料噴射弁6の噴口が位置するので、燃料噴射弁6から噴射された燃料噴霧は、下降流に乗りやすい。
それに対し、図4に示すように、稜部スキッシュエリア176の間隔G1が広くなっている。尚、本明細書において、スキッシュエリアの間隔とは、頂面160と天井部130との、頂面160の法線方向への距離を意味する。具体的には、図5に示す排気側スキッシュエリア177bの間隔G2よりも広くなっている。尚、排気側スキッシュエリア177bの間隔G2とは、排気側斜面162のうち島状部162bと天井部130の排気側斜面132との間隔である。このように、稜部スキッシュエリア176の間隔G1を広くすることにより、稜部スキッシュエリア176からのスキッシュ流Sが弱くなる。それにより、稜部スキッシュエリア176からのスキッシュ流Sの大部分が、キャビティ164内に流入するときに拡散し、該スキッシュ流Sに起因する下降流が抑制される。尚、この例では、稜部スキッシュエリア176の間隔G1は、排気側斜面162のうちバルブリセス162aと天井部130の排気側斜面132との間隔よりも広い。
それに加えて、テーパスキッシュエリア178のスキッシュ流を弱めることによって、稜部スキッシュエリア176からのスキッシュ流Sを弱くしている。詳しくは、図7に示すように、シリンダヘッド13のうちピストン16のテーパ面165と対向する対向部134は、テーパ面165と同様に傾斜し、テーパ面165との間にテーパスキッシュエリア178を形成している。詳しくは、対向部134は、シリンダ11の内周面と谷部133との間に設けられ、谷部133に向かうにつれて軸心Xに近づくように傾斜しながらシリンダ11の内周面と谷部133とを繋いでいる。テーパスキッシュエリア178は、稜部スキッシュエリア176よりも半径方向外側に位置し、テーパスキッシュエリア178よりも半径方向外側にはシリンダ11の内周面が存在するので、テーパスキッシュエリア178で発生したスキッシュ流は半径方向外側には行き場がない。一方、テーパスキッシュエリア178の半径方向内側には稜部スキッシュエリア176やキャビティ164が存在するので、テーパスキッシュエリア178で発生したスキッシュ流は、稜部スキッシュエリア176へ向かう流れとなる。つまり、稜部スキッシュエリア176からキャビティ164へ流入するスキッシュ流には、テーパスキッシュエリア178で発生したスキッシュ流が含まれている。
図8に、ピストン16が上死点に位置するときのスキッシュエリアの断面形状を示し、(A)は、第1テーパ面165a(図7の(A)点)におけるテーパスキッシュエリア178の断面を、(B)は、第2テーパ面165b(図7の(B)点)におけるテーパスキッシュエリア178の断面を、(C)は、稜部163(図7の(C)点)における稜部スキッシュエリア176の断面を示す。各断面は、シリンダ11の軸心Xを中心とする扇形状に切断したスキッシュエリアの断面であり、シリンダ11の軸心Xを含む平面に直交する平面であって且つ各点における頂面160の法線を含む平面でスキッシュエリアを切断した断面である。
ピストン16のテーパ面165とシリンダヘッド13の対向部134との間隔(テーパ面165の法線方向におけるテーパ面165と対向部134との距離)は、ピストンの側周面16a側の部分に比べて、稜部163側の部分の方が広くなっている。詳しくは、図8の(A),(B)に示すように、第2テーパ面165bと対向部134との間隔G5は、第1テーパ面165aと対向部134との間隔G4よりも広くなっている。さらに詳しくは、第1テーパ面165aと対向部134との間隔G4は、ピストン16の側周面16a側から稜部163側に向かってしだいに広くなっている。また、第2テーパ面165bと対向部134との間隔G5は、ピストン16の側周面16a側から稜部163側に向かってしだいに広くなっている。その結果、テーパスキッシュエリア178の全体に亘って、テーパ面165と対向部134との間隔は、ピストン16の側周面16a側から稜部163側に向かってしだいに広くなっている。
また、図8の(B),(C)に示すように、稜部スキッシュエリア176の間隔G1は、第2テーパ面165bと対向部134との間隔G5よりも広くなっている。
図9に、シリンダ11の軸心Xからの半径方向への距離に対する、スキッシュエリアの断面積の関係を示。図9における(A),(B),(C)は、それぞれ図7,8の(A),(B),(C)に対応している。
前述のようにスキッシュエリアの間隔を設定することによって、図9に示すように、テーパスキッシュエリア178の断面積をリンダ軸心Xに向かってしだいに大きくすることができ、さらには、稜部スキッシュエリア176の断面積をテーパスキッシュエリア178の断面積よりも大きくすることができる。
詳しくは、テーパ面165は、ピストン16の側周面16aから稜部163に向かうにつれてキャビティ164に近づくように、即ち、シリンダ11の軸心Xに近づくように傾斜している。そのため、テーパ面165と対向部134と間に形成されるスペースの円周方向の寸法は、図8(A)〜(C)に示すように、軸心Xに近づくにつれて小さくなる。そのため、スキッシュエリアの間隔がピストン16の側周面16aからキャビティ164に向かって一定であれば、図9の二点鎖線で示すようにスキッシュエリアの断面積も軸心Xに向かってしだいに小さくなる。その結果、スキッシュ流の流速は、軸心Xに向かってしだいに速くなってしまう。
それに対し、テーパスキッシュエリア178の間隔を、ピストン16の側周面16a側から稜部163側に向かってしだいに広くすることによって、テーパスキッシュエリア178の断面積が軸心Xに向かってしだいに拡大している。さらには、第2テーパ面165bにおけるテーパスキッシュエリア178の間隔G5よりも稜部スキッシュエリア176の間隔G1を広くすることによって、稜部スキッシュエリア176の断面積がテーパスキッシュエリア178の断面積よりも拡大している。これにより、テーパスキッシュエリア178を稜部163側へ向かって流れるスキッシュ流の流速の上昇を抑制することができる。さらには、スキッシュ流がテーパスキッシュエリア178から稜部スキッシュエリア176へ流入する際に流速が上昇することを抑制することができる。
尚、稜部スキッシュエリア176の間隔G1は、半径方向外側においては半径方向内側へ向かって拡大するものの、キャビティ164の近傍においては略一定となっている。そのため、キャビティ164の近傍においては、半径方向内側に向かって稜部スキッシュエリア176の円周方向寸法が縮小することに伴い、稜部スキッシュエリア176の断面積も縮小している。しかしながら、稜部スキッシュエリア176の断面積が最も小さくなったときでも、その断面積はテーパスキッシュエリア178の断面積の最大値よりも大きい。
こうして、テーパスキッシュエリア178から稜部スキッシュエリア176へ向かうスキッシュ流を弱めることによって、稜部スキッシュエリア176からキャビティ164へ流入するスキッシュ流も弱めることができる。これにより、稜部スキッシュエリア176からのスキッシュ流に起因するキャビティ164内における下降流を低減することができ、キャビティ164の底面に到達する燃料噴霧及び混合気を低減することができる。その結果、スキッシュ流による冷却損失の増大を防止することができる。
さらに、テーパ面165が屈曲部166において屈曲することによって、テーパスキッシュエリア178も屈曲することになる。そのため、テーパスキッシュエリア178におけるスキッシュ流が第1テーパ面165aと対向部134との隙間から第2テーパ面165bと対向部134との隙間へ流入する際に屈曲部166において減衰する。これによっても、テーパスキッシュエリア178から稜部スキッシュエリア176へ向かうスキッシュ流を弱めることができる。
また、このエンジン1は、前述のように、燃焼室17内で成層化を実施している。その観点においても、稜部スキッシュエリア176からのスキッシュ流Sに起因する下降流を抑制することが有効である。つまり、成層化を実現するためには、燃焼室17、特に、キャビティ164(主燃焼室174)内でのガス流動が弱いことが好ましい。稜部スキッシュエリア176からのスキッシュ流Sを弱めることによって、キャビティ164内でのガス流動を抑制することができる。
以上のように、エンジン1の燃焼室構造は、谷部133で連結された吸気側斜面131及び排気側斜面132を含む天井部130を有し、ペントルーフ型の燃焼室17の一部を区画するシリンダヘッド13と、稜部163で連結され、天井部130の吸気側斜面131及び排気側斜面132と対向する吸気側斜面161及び排気側斜面162を含む頂面160を有し、シリンダ11に内挿されるピストン16と、天井部130の谷部133に設けられた燃料噴射弁6とを備え、頂面160には、凹陥するキャビティ164が稜部163を横切って吸気側斜面161及び排気側斜面162に亘って形成され、頂面160は、ピストン16の側周面16aと稜部163との間に設けられ、稜部163に向かうにつれてキャビティ164に近づくように傾斜しながら側周面16aと稜部163とを繋ぐテーパ面165をさらに含み、稜部163と谷部133との間には稜部スキッシュエリア176が形成され、天井部130のうちテーパ面165と対向する部分である対向部134は、テーパ面165との間にテーパスキッシュエリア178を形成するように傾斜しており、テーパ面165と対向部134との間隔は、ピストン16の側周面16a側の部分に比べて、稜部163側の部分の方が広くなっている。
この構成によれば、テーパスキッシュエリア178から稜部スキッシュエリア176へ向かうスキッシュ流を弱めることによって、稜部スキッシュエリア176からキャビティ164へ流入するスキッシュ流も弱めることができる。これにより、稜部スキッシュエリア176からのスキッシュ流に起因するキャビティ164内における下降流を低減することができ、キャビティ164の底面に到達する燃料噴霧及び混合気を低減することができる。その結果、スキッシュ流による冷却損失の増大を防止することができる。
また、エンジン1の幾何学的圧縮比は、15以上に設定されている。
このように幾何学的圧縮比が大きなエンジン1においては、スキッシュエリア175が比較的大きく、キャビティ164が比較的小さくなり、その結果、燃料噴霧及び混合気に与えるスキッシュ流の影響が比較的大きくなる傾向にある。そのため、前述の構成が特に有効となる。
《実施形態2》
続いて、実施形態2に係るエンジン1について説明する。図10は、図3のIV−IV線における稜部スキッシュエリア及びテーパスキッシュエリアを示す燃焼室の拡大縦断面図である。図11は、ピストン16が上死点に位置するときの、稜部163(図10の(D)点)における稜部スキッシュエリア176の断面形状である。図12に、シリンダ11の軸心Xからの半径方向への距離に対する、スキッシュエリアの断面積の関係を示す。尚、図11における断面は、シリンダ11の軸心Xを中心とする扇形状に切断したスキッシュエリアの断面であり、シリンダ11の軸心Xを含む平面に直交する平面であって且つ各点における頂面160の法線を含む平面でスキッシュエリアを切断した断面である。図12における(A),(B),(C),(D)は、図10の(A),(B),(C),(D)に対応している。
実施形態2に係るエンジン1は、シリンダヘッド13の天井部の形状が実施形態1と異なる。以下では、実施形態1と異なる部分を中心に説明し、実施形態1と同様の構成については同様の符号を付して、説明を省略する場合がある。
実施形態2に係るエンジン1のシリンダヘッド13の天井部2130は、吸気側斜面131と同様の吸気側斜面(図示省略)と、排気側斜面132と同様の排気側斜面(図示省略)と、吸気側斜面と排気側斜面とを連結する谷部133と、ピストン16のテーパ面165と対向する対向部134とを有している。そして、谷部133と対向部134とで形成される隅部には、凹部135が形成されている。凹部135によって、谷部133と対向部134とで形成される隅部は、ピストン16の頂面160から離れる方向に凹んでいる。
稜部スキッシュエリア176とテーパスキッシュエリア178とは屈曲しており、凹部135は、2つのスキッシュエリアの屈曲部の外側に位置する。そのため、テーパスキッシュエリア178で発生したスキッシュ流は、稜部スキッシュエリア176に流入する際に凹部135内に進入する。凹部135を出たスキッシュ流は、稜部スキッシュエリア176を通ってキャビティ164へ流入する。ここで、スキッシュ流は、凹部135に一旦入って凹部135から出てくる際に、凹部135が凹む方向とは反対向きに案内される。凹部135は、キャビティ164とは反対側に凹んでいるので、凹部135から出てくるスキッシュ流は、シリンダ11の軸心Xに直交する平面と平行ではなく、該平面よりもキャビティ164の方へ向かうようになる。その結果、稜部スキッシュエリア176からキャビティ164内に流入するスキッシュ流のうち、軸心Xに直交する方向に飛散して燃料噴射弁6の噴口の方へ向かう成分が減少し、キャビティ164の底壁1642の方へ向かう成分が増える。これにより、キャビティ164内で発生する下降流を低減することができる。
尚、凹部135が形成される構成においても、テーパスキッシュエリア178において、ピストン16のテーパ面165とシリンダヘッド13の対向部134との間隔は、ピストンの側周面16a側の部分に比べて、稜部163側の部分の方が広くなっている。ただし、図11に示すように、凹部135が形成されることによって、スキッシュエリアの断面積は拡大される。そのため、図12に示すように、凹部135が位置する部分のスキッシュエリアの断面積は、実施形態1に比べて大きくなっている。
以上のように、実施形態2に係るエンジン1の燃焼室構造によっても、テーパスキッシュエリア178から稜部スキッシュエリア176へ向かうスキッシュ流を弱めることによって、稜部スキッシュエリア176からキャビティ164へ流入するスキッシュ流も弱めることができる。これにより、稜部スキッシュエリア176からのスキッシュ流に起因するキャビティ164内における下降流を低減することができ、キャビティ164の底壁1642に到達する燃料噴霧及び混合気を低減することができる。それに加えて、谷部133と対向部134との隅部に凹部135を形成することによって、稜部スキッシュエリア176からキャビティ164内に流入するスキッシュ流のうち、燃料噴射弁6の噴口の方へ向かう成分を減少させ、キャビティ164内で発生する下降流を低減することができる。その結果、スキッシュ流による冷却損失の増大を防止することができる。
《その他の実施形態》
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、上記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
前記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
ピストン16の構成は一例に過ぎず、これに限定されるものではない。例えば、キャビティ164がオフセットして配置されているが、キャビティ164がボア中心に配置されていてもよい。また、バルブリセスや島状部の形状も任意に設定することができる。
例えば、図13に示すように、吸気側斜面161に島状部を設け、稜部163を島状部で構成してもよい。つまり、吸気側斜面161に、バルブリセス161aと島状部161bとを有している。稜部163は、排気側斜面162のバルブリセス162a及び吸気側斜面161のバルブリセス161aから段差状に隆起する島状に形成されている。ただし、稜部163の表面は、一様に湾曲したR面となっている。
また、図13の構成に限らず、図3の構成において排気側斜面162の島状部162bを削除して、排気側斜面162を吸気側斜面161と同様の実質的に平坦な面としてもよい。つまり、吸気側斜面161、排気側斜面162及び稜部163における島状部の有無は任意に設定することができる。
また、テーパ面165及び対向部134の形状も前記の構成に限られるものではない。例えば、テーパ面165は、屈曲していなくてもよい。
テーパ面165と対向部134との間隔は、ピストン16の側周面16aから稜部163に向かってしだいに増大するものに限られない。例えば、第1テーパ面165aと対向部134との間隔はその全域に亘って一律であり、第2テーパ面165bと対向部134との間隔はその全域に亘って一律であって且つ第1テーパ面165aと対向部134との間隔より広くなっていてもよい。
さらに、稜部163と谷部133との間隔G1、排気側斜面162と排気側斜面132との間隔G2、及び吸気側斜面161と吸気側斜面131との間隔G3の関係も前記の関係に限られるものではない。
また、稜部163は、エンジン出力軸方向に延びているがこれに限られるものではない。例えば、稜部163は、キャビティ164に向かって、斜め下方、即ち、キャビティ164の底壁1642の方へ傾斜しながら延びていてもよい。