JP6054327B2 - オリビン型シリケート化合物の製造方法 - Google Patents

オリビン型シリケート化合物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、充放電容量が大きな正極材料を得ることのできるオリビン型シリケート化合物の製造方法に関する。
リチウムイオン電池は、非水電解質電池の1種であり、携帯電話、デジタルカメラ、ノートPC、ハイブリッド自動車、電気自動車等広い分野に利用されている。リチウムイオン電池は、正極材料としてリチウム金属酸化物を用い、負極材料としてグラファイト等の炭素材を用いるものが主流となっている。
この正極材料としては、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、マンガン酸リチウム(LiMnO2)、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)、ケイ酸鉄リチウム(Li2FeSiO4)等が知られている。このうち、LiFePO4やLi2FeSiO4等は、オリビン構造を有し、高容量のリチウムイオン電池用正極材料として有用であり、特にLi2FeSiO4等のいわゆるオリビン型シリケート化合物は、優れた正極材料として注目を浴びている。
こうしたオリビン型シリケート化合物は、リチウム源、ケイ酸源及び遷移金属源を水熱反応に付することにより得られることが知られており、低い温度での処理が可能であるため簡便な製造方法として有用である。かかる水熱合成を利用した製造方法は、より微細で高純度なオリビン型シリケート化合物を得るべく、種々の研究がなされている。例えば、特許文献1には、リチウム源、ケイ酸源及び酸化防止剤を用いて塩基性水分散液としておき、これに遷移金属源を添加した後、水熱反応に付する方法が開示されている。また、特許文献2には、遷移金属源、リチウム源及びケイ酸源を塩基性水分散液としておき、次いで水熱反応に付する方法が開示されている。
特開2012−193087号公報 特開2012−193088号公報
しかしながら、通常充放電を加速させるにつれて電池物性が低下する傾向にあり、上記特許文献に記載の方法により得られたオリビン型シリケート化合物を用いた正極材料であっても、急速な充放電にも十分対応可能な高い電池物性を発現させるには、依然として改善の余地がある。
したがって、本発明の課題は、急速な充放電下においても高い電池物性を発現する正極材料を得ることのできるオリビン型シリケート化合物の製造方法を提供することにある。
そこで本発明者らは、オリビン型シリケート化合物を製造するにあたり、特定の炭素材料を用いて水熱合成に付することにより、充放電容量を十分に高めることのできる正極材料が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)MSO4(式中、Mは、Fe、Ni、Co、Al、Zn、V、Zr又はMnを示す)で表される遷移金属硫酸塩又は(R)2M(式中、Rは有機酸残基を示し、Mは、Fe、Ni、Co、Al、Zn、V、Zr又はMnを示す)で表される有機酸遷移金属塩、 (B)リチウム化合物、
(C)ケイ酸化合物、及び
(D)水熱反応させることにより得られる球状カーボン粒子
を混合し、次いで水熱反応させることを特徴とするオリビン型シリケート化合物の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、上記製造方法により得られたオリビン型シリケート化合物にカーボン担持し、次いで焼成することを特徴とするリチウムイオン電池用正極活物質の製造方法を提供するものである。
さらに、本発明は、上記製造方法により得られたリチウムイオン電池用正極活物質を含む正極を有するリチウムイオン電池を提供するものである。
本発明の製造方法により得られるオリビン型シリケート化合物であれば、急速な充放電下においても十分に対応可能な、高い充放電容量を有するリチウムイオン電池を実現することができる。
実施例1で得られたオリビン型シリケート化合物のTEM像を示す。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の製造方法では、まず、次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)MSO4(式中、Mは、Fe、Ni、Co、Al、Zn、V、Zr又はMnを示す)で表される遷移金属硫酸塩又は(R)2M(式中、Rは有機酸残基を示し、Mは、Fe、Ni、Co、Al、Zn、V、Zr又はMnを示す)で表される有機酸遷移金属塩、 (B)リチウム化合物、
(C)ケイ酸化合物、及び
(D)水熱反応させることにより得られる球状カーボン粒子
を混合する。
成分(A)の遷移金属硫酸塩MSO4としては、FeSO4、NiSO4、CoSO4、Al2(SO43、ZnSO4、V2(SO43、Zr(SO42又はMnSO4が挙げられ、これらは1種単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。これらのうち、FeSO4、MnSO4がより好ましく、FeSO4がさらに好ましい。遷移金属硫酸塩(MSO4)の添加量は、オリビン型シリケート化合物の合成収率を高める観点、及び得られる電池の物性を高める観点から、成分(A)〜成分(D)を含む反応混合液全量中に、0.15〜1.50mol/lとなる量が好ましく、0.50〜1.40mol/lとなる量がより好ましく、0.80〜1.40mol/lとなる量がさらに好ましい。
なお、この場合における反応混合液中のLiの含有量は、Mに対して2モル以上が好ましい。
成分(A)の有機酸遷移金属塩(R)2MのRで示される有機酸としては、炭素数1〜20の有機酸が好ましく、炭素数2〜12の有機酸がより好ましい。より具体的な有機酸としては、シュウ酸、フマル酸等のジカルボン酸、乳酸等のヒドロキシカルボン酸、酢酸等の脂肪酸が挙げられる。成分(A)〜成分(D)を含む反応混合液全量中の有機酸遷移金属塩(R)2Mの濃度は、オリビン型シリケート化合物の合成収率を高める観点、及び得られる電池の物性を高める観点から、0.15〜1.50mol/lが好ましく、0.5〜1.40mol/lがより好ましく、0.80〜1.40mol/lがさらに好ましい。
なお、この場合における反応混合液中のLiは、遷移金属に対してモル比で2倍以上用いることが好ましく、Li:Mが2.5:1〜3:1程度がより好ましい。
成分(B)のリチウム化合物としては、水酸化リチウム(例えばLiOH・H2O)、炭酸リチウム(Li2CO3)、硫酸リチウム、酢酸リチウムが挙げられるが、水酸化リチウム、炭酸リチウムが特に好ましい。成分(A)〜成分(D)を含む反応混合液全量中のリチウム化合物の濃度は、オリビン型シリケート化合物の合成収率を高める観点、及び得られる電池の物性を高める観点から、0.30〜3.00mol/lが好ましく、1.00〜2.80mol/lがより好ましく、1.50〜2.80mol/lがさらに好ましい。
成分(C)のケイ酸化合物としては、反応性のあるシリカ化合物であれば特に限定されず、非晶質シリカ、Na4SiO4(例えばNa4SiO4・H2O)が好ましい。このうち、副反応を抑制する観点から、Na4SiO4を用い、成分(A)〜成分(D)を含む反応混合液を塩基性にするのが好ましい。成分(A)〜成分(D)を含む反応混合液全量中のケイ酸化合物の濃度は、オリビン型シリケート化合物の合成収率を高める観点、及び得られる電池の物性を高める観点から、0.15〜1.50mol/lが好ましく、0.50〜1.40mol/lがより好ましく、0.80〜1.40mol/lがさらに好ましい。
成分(D)は、水熱反応させることにより得られる球状カーボン粒子であり、焼成等の熱処理により炭化させることで高い導電性を発揮する、極めて微細な球状を呈する粒子である。かかる成分(D)は、成分(A)〜成分(C)とともに混合することによって、オリビン型シリケート化合物の一次粒子又は二次粒子の表面や粒子間の間隙に付着又は侵入するため、熱処理により炭化させることで、かかるオリビン型シリケート化合物の電子伝導面積(電子伝導パス)を効果的に増大させることができる。そのため、十分な電子伝導性を確保することができ、かかるオリビン型シリケート化合物を用いたリチウムイオン電池において、急速な充放電にも対応可能な高い充放電容量を実現することができる。
成分(D)は、球状カーボン粒子用炭素材料に溶媒を添加して、水熱反応に付することにより得ることができ、カーボンスフィアとも称される粒子である。かかる成分(D)は、例えば、Procedia Environmental Sciences,11(2011,p1322−1327)に記載の製造方法を用いることによって得ることができる。
具体的には、例えば、用い得る球状カーボン粒子用炭素材料としては、グルコース、デンプン、キシロース、スクロース、セルロース、デキストリン、フルクトース、N−アセチルグルコサミン、ラクトース、ラムノース、フロログルシノールが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組わせて用いてもよい。なかでも、電池物性をより高める観点、及び製造上の効率化を図る観点から、グルコースが好ましい。
溶媒としては、水のみを用いるほか、水とポリオールを溶媒として用いることができる。水とともにポリオールを用いると、かかるポリオールがキレート剤又は界面活性剤として作用し、各成分の分散性を高めつつ、水熱反応を介して得られるオリビン型シリケート化合物の合成収率を効果的に高めることができるものと推定される。
水としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等が挙げられる。
ポリオールとしては、不純物の生成を有効に抑制して、オリビン型シリケート化合物の合成収率を高める観点から、2〜3価のアルコールが好ましい。水とポリオールを溶媒として用いる場合、溶媒中におけるポリオールの含有量は、好ましくは20〜80質量%であり、より好ましくは20〜70質量%であり、さらに好ましくは22〜60質量%であり、またさらに好ましくは25〜55質量%である。
2価のアルコールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロ−ルペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオールが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
これら2価のアルコールのなかでも、オリビン型シリケート化合物の合成収率を高める観点、及び得られる電池の物性を高める観点から、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、及び1,4−ブタンジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、エチレングリコール、ポリエチレングリコールがより好ましく、エチレングリコールがさらに好ましい。ポリエチレングリコールにおけるエチレンオキシ基の平均付加モル数は、好ましくは10〜600であり、より好ましくは50〜500であり、さらに好ましくは100〜400である。
3価のアルコールとしては、具体的には、例えば、グリセリン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−アダマンタントリオール、1,3,5−シクロヘキサントリオール、1,2,3−シクロヘキサントリオールが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
これら3価のアルコールのなかでも、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、2−メチルプロパントリオールからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、グリセリンがより好ましい。
また、上記2〜3価のアルコールのなかでも、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、及びグリセリンからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、エチレングリコール、グリセリンがより好ましい。
溶媒を添加した後、得られた溶液中における球状カーボン粒子用炭素材料の含有量は、電池物性をより高める観点、及び製造上の効率化を図る観点から、好ましくは1〜70質量%であり、より好ましくは5〜50質量%である。
球状カーボン粒子用炭素材料に溶媒を添加して得られた溶液を水熱反応に付する。水熱反応の温度は、球状カーボン粒子の合成収率を高める観点から、好ましくは130〜200℃であり、より好ましくは140〜170℃である。また、水熱反応時間は、好ましくは1〜12時間であり、より好ましくは3〜9時間である。反応時の圧力は、好ましくは0.2〜1.5MPaであり、より好ましくは0.3〜0.7MPaである。
次いで、得られた反応物を水やエタノール等を用いて洗浄した後、乾燥することにより成分(D)の球状カーボン粒子を得ることができる。なお、この際、水熱反応後の反応物を水で洗浄することによって得られた溶液を乾燥させることなく、そのまま成分(D)を含有する溶液、すなわち後述する成分(D)'として用いてもよい。
このようにして得られる成分(D)は、熱処理により炭化させることで高い導電性を発揮する、球状を呈した微細な粒子であり、電池物性を高める上で非常に有用な成分である。成分(D)の炭化度は、好ましくは1〜100であり、より好ましくは1.1〜100であり、さらに好ましくは1.2〜100である。なお、成分(D)の炭化度とは、ラマン分光分析法によって測定された炭素に起因するDバンド(1350cm-1)のピーク強度(ID)とGバンド(1600cm-1)のピーク強度(IG)の比、すなわちIG/IDで計算された値を意味する。
成分(D)の平均粒径は、好ましくは1〜1000nmであり、より好ましくは1〜500nmであり、さらに好ましくは1〜100nmである。なお、成分(D)の平均粒径は、走査型電子顕微鏡もしくは透過型電子顕微鏡における観察によって測定することができる。
成分(A)〜成分(D)の混合順序は特に限定されず、これらを全て同時に混合してもよく、予め成分(D)を調製した後、これを成分(A)〜(C)と混合してもよい。予め成分(D)を調製するにあたり、オリビン型シリケート化合物の合成収率の向上を図る観点等から、成分(D)を水に分散させて、成分(D)を含有する溶液(D)'を得た後、かかる成分(D)'と成分(A)、(B)及び(C)とを混合するのが好ましい。成分(D)'を用いることにより、後にこれらの混合物を水熱反応に付してオリビン型シリケート化合物を得る際、あらためて溶媒を添加することなく、これらの成分を混合した後にそのまま水熱反応に移行することができる。
さらに、これらの成分を混合する際、ポリオールを混合してもよい。これにより、ポリオールがキレート剤又は界面活性剤として作用し、各成分の分散性を高めつつ、水熱反応を介して得られるオリビン型シリケート化合物の合成収率を効果的に高めることが期待できる。ポリオールとしては、成分(D)を得る際に用いるポリオールと同様のものを用いることができる。なお、成分(D)を得る際にポリオールを用いた場合、ここでポリオールを混合する必要はない。成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計量と、ポリオールの量との質量比({(A)+(B)+(C)}/ポリオール)は、電池物性を効果的に高める観点から、好ましくは1〜10であり、より好ましくは1.5〜8であり、さらに好ましくは2〜6である。
成分(D)を含有する溶液である成分(D)'を用いる場合、上述のとおり、成分(D)を製造する際、水での洗浄後に得られる溶液を乾燥させることなくそのまま用いてもよく、又は洗浄及び乾燥後に得られた成分(D)を水に分散させて成分(D)'を調製してもよい。このとき、成分(D)'中における成分(D)の含有量は、電池物性を効果的に高める観点から、好ましくは1〜70質量%であり、より好ましくは3〜60質量%であり、さらに好ましくは5〜50質量%である。
また、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計量と、成分(D)'の量との質量比({(A)+(B)+(C)}/(D)')は、電池物性を効果的に高める観点から、好ましくは0.2〜3であり、より好ましくは0.4〜2であり、さらに好ましくは0.5〜1.5である。
上記成分(A)〜成分(D)のほか、水熱合成に付する前に、さらに酸化防止剤を添加してもよい。酸化防止剤としては、ハイドロサルファイトナトリウム(Na224)、アンモニア水、亜硫酸ナトリウム等を使用することができる。上記成分(A)〜成分(D)の反応混合液及び酸化防止剤を含む混合液全量中の酸化防止剤の含有量は、多量に添加するとオリビン型シリケート化合物の生成を抑制してしまうため、遷移金属(M)に対して等モル量以下が好ましく、遷移金属(M)に対してモル比で0.5以下がさらに好ましい。
得られた反応混合液は、副反応を防止し、ケイ酸化合物を溶解する観点から、塩基性とするのが好ましく、具体的には、該反応混合液のpHが12.0〜13.5であるのが好ましい。反応混合液のpHの調整は、塩基、例えば、水酸化ナトリウムを添加することにより行ってもよいが、ケイ酸化合物としてNa4SiO4を用いるのがより好ましい。
本発明の製造方法では、上記成分(A)〜成分(D)を混合し、次いで水熱反応させる。水熱反応の温度は、100℃以上であればよく、オリビン型シリケート化合物の合成収率を高める観点から、130〜200℃が好ましく、さらに140〜180℃が好ましい。水熱反応は耐圧容器中で行うのが好ましく、130〜200℃で反応を行う場合の圧力は0.3〜1.5MPaであるのが好ましく、140〜180℃で反応を行う場合の圧力は0.4〜1.0MPaであるのが好ましい。水熱反応時間は1〜24時間が好ましく、さらに3〜12時間が好ましい。
当該水熱反応により、成分(D)の球状カーボン粒子が随所に散在する遷移金属Mを含むオリビン型シリケート化合物の一次粒子が高収率で得られる。かかるオリビン型シリケート化合物は、具体的には下記式(1)〜(5)のいずれかで表わされる。
Li2M'SiO4 ・・・(1)
(式中、M'はFe、Ni、Co及びMnから選ばれる1種又は2種以上を示す。)
Lia'FexMnyAlzSiO4 ・・・(2)
(式中、a'、x、y及びzは、1<a'≦2、0≦x<1、0≦y<1、0<z<2/3、a'+2x+2y+3z=4、及びx+y≠0を満たす数を示す。)
Lia"FexMnyz'SiO4 ・・・(3)
(式中、a"、x、y及びz'は、1<a"≦2、0≦x<1、0≦y<1、0<z'<1、a"+2x+2y+(2〜5)z'=4、及びx+y≠0を満たす数を示す。)
Lia"FexMnyZrz"SiO4 ・・・(4)
(式中、a"、x、y及びz"は、1<a"≦2、0≦x<1、0≦y<1、0<z"<0.5、a"+2x+2y+4z"=4、及びx+y≠0を満たす数を示す。)
Li2FexMnyZnqSiO4 ・・・(5)
(式中、x、y及びqは、0≦x<1、0≦y<1、0<q<1、x+y+q=1、及びx+y≠0を満たす数を示す。)
得られたオリビン型シリケート化合物の一次粒子は、洗浄後にろ過し、次いで乾燥することにより二次粒子として単離することができる。乾燥手段としては、噴霧乾燥、箱型乾燥、流動床乾燥、外熱式乾燥、凍結乾燥、真空乾燥が挙げられる。なかでも、スプレードライヤーを用いた噴霧乾燥が好ましい。また、乾燥する際、予めオリビン型シリケート化合物の一次粒子を用いて調製したスラリーを用いるのがよい。一次粒子とともに成分(D)の球状カーボン粒子をスラリー中に分散させることで、得られる二次粒子の表面や粒子間の間隙にも球状カーボン粒子を効率よく配置させることができる。かかるスラリーにおけるオリビン型シリケート化合物の一次粒子の含有量(固形分濃度)は、得られる電池の物性を高める観点から、好ましくは20〜60質量%であり、より好ましくは30〜50質量%であり、さらに好ましくは35〜45質量%である。
この際、分散剤や増粘剤をスラリーに少量添加してもよく、分散剤としては、例えば、ポリカルボン酸系、ポリエーテル系、ポリアクリル酸系などを用いることができる。
増粘剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、アンモニアなどの塩基や酢酸、クエン酸などの有機酸を用いることができる。
こうして得られる乾燥物については、乾燥時又は乾燥後にセパレータ、サイクロン、篩等で分級してもよく、また乳鉢ピンミル、ロールミル、クラッシャー等を用いて粉砕してもよい。
なお、さらに成分(D)及び成分(D)'以外の導電性炭素材料を用い、予め得られたオリビン型シリケート化合物の一次粒子又は二次粒子にカーボン担持する処理を施してもよい。このようにすることで、成分(D)の球状カーボン粒子が付着する粒子表面に、さらにカーボン薄膜を形成させることができ、オリビン型シリケート化合物の電子伝導面積をさらに増加させ、より十分な電子伝導性を確保することが可能となる。
カーボン担持する処理に用いる導電性炭素材料としては、例えば、セルロース、リグニン、キトサン、キチン、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラフェンオキサイド、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛、グラファイト、合成繊維等の炭素含有化合物が挙げられる。この際における導電性炭素材料の添加量は、水熱反応後に得られるオリビン型シリケート化合物の一次粒子理論生成量中に、導電性炭素材料に含まれる炭素原子換算で、0.5〜20質量%となる量で添加するのが好ましく、2.5〜17.5質量%となる量で添加するのがより好ましい。導電性炭素材料を添加するにあたり、分散性を高める点から、溶媒を用いて溶液とするのがよい。かかる溶液中の導電性炭素材料の含有量は、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下である。溶媒としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等が挙げられる。
導電性炭素材料の添加量は、良好な充放電容量及び経済性の点から、スラリー中のオリビン型シリケート化合物の一次粒子100質量部に対し、炭素原子換算で0.5〜20質量部の量が好ましく、さらに2.5〜17.5質量部の量が好ましい。
このように、必要に応じて溶媒を用いて導電性炭素材料を添加した後、焼成することにより、リチウムイオン電池用正極活物質とすることができる。カーボン担持する処理における焼成条件は、不活性ガス雰囲気下又は還元条件下に400℃以上、好ましくは400〜800℃で10分〜3時間、好ましくは0.5〜1.5時間行うのが好ましい。
このようにして得られた本発明のリチウムイオン電池用正極活物質を用いてリチウムイオン電池を製造する方法は特に限定されず、公知の方法をいずれも使用できる。例えば、かかる正極活物質を結着剤や溶剤等の添加剤とともに混合して塗工液を得る。この際、必要に応じて、さらに導電助剤を添加して混合してもよい。かかる結着剤としては、特に限定されず、公知の剤をいずれも使用できる。具体的には、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルクロライド、エチレンプロピレンジエンポリマー等が挙げられる。また、かかる導電助剤としては、特に限定されず、公知の剤をいずれも使用できる。具体的には、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、天然黒鉛、人工黒鉛、繊維状炭素等が挙げられる。次いで、かかる塗工液をアルミ箔等の正極集電体上に塗布し、乾燥させて正極とする。
本発明のリチウムイオン電池用正極活物質は、リチウムイオン電池の正極として非常に優れた放電容量を発揮する点で有用である。かかる正極を適用できるリチウムイオン電池としては、正極と負極と電解液とセパレータを必須構成とするものであれば特に限定されない。
ここで、負極については、リチウムイオンを充電時には吸蔵し、かつ放電時には放出することができれば、その材料構成で特に限定されるものではなく、公知の材料構成のものを用いることができる。たとえば、リチウム金属、グラファイト又は非晶質炭素等の炭素材料等である。そしてリチウムを電気化学的に吸蔵・放出し得るインターカレート材料で形成された電極、特に炭素材料を用いることが好ましい。
電解液は、有機溶媒に支持塩を溶解させたものである。有機溶媒は、通常リチウムイオン電池の電解液の用いられる有機溶媒であれば特に限定されるものではなく、例えば、カーボネート類、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、ケトン類、ニトリル類、ラクトン類、オキソラン化合物等を用いることができる。
支持塩は、その種類が特に限定されるものではないが、LiPF6、LiBF4、LiClO4及びLiAsF6から選ばれる無機塩、該無機塩の誘導体、LiSO3CF3、LiC(SO3CF32及びLiN(SO3CF32、LiN(SO2252及びLiN(SO2CF3)(SO249)から選ばれる有機塩、並びに該有機塩の誘導体の少なくとも1種であることが好ましい。
セパレータは、正極及び負極を電気的に絶縁し、電解液を保持する役割を果たすものである。たとえば、多孔性合成樹脂膜、特にポリオレフィン系高分子(ポリエチレン、ポリプロピレン)の多孔膜を用いればよい。
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[製造例1:球状カーボン粒子の製造]
グルコース2.82gに超純水27.5cm3を加えて混合した。得られた混合液をオートクレーブに投入し、150℃で6hr水熱反応を行った。反応液として球状カーボン粒子を含有する溶液(D)'(球状カーボン粒子9質量%含有)を得た。
[実施例1]
LiOH・H2O 4.20g(100mol)、Na4SiO4・nH2O 13.98(50mmol)に、グリセリン10.0cm3を加えて混合した(この時のpHは約13)。この混合液にFeSO4・7H2O 3.92g(14.1mmol)、MnSO4・5H2O 7.93g(32.9mmol)、ZrSO4・4H2O0.53g(1.5mmol)及び製造例1で得られた球状カーボン粒子を含有する溶液(D)'を添加し、混合した((A)+(B)+(C))/(D)'=1)。得られた混合液をオートクレーブに投入し、150℃で12hr水熱反応を行った。反応液をろ過後、凍結乾燥した。凍結乾燥(約12時間)して得られた粉末8.4gにグルコース(炭素濃度として10%)及び超純水10cm3を加え、還元雰囲気下で650℃で1hr焼成してオリビン型シリケート化合物を得た。
得られたオリビン型シリケート化合物のTEM像を図1に示す。なお、図1によれば、実施例1で得られたオリビン型シリケート化合物は、二次粒子の表面及び粒子間の間隙に、効率よく球状カーボン粒子が付着又は侵入していることがわかる。
次いで、得られたオリビン型シリケート化合物を用い、リチウムイオン電池の正極を作製した。得られた化合物、ケッチェンブラック(導電剤)、ポリフッ化ビニリデン(粘結剤)を質量比75:20:5の配合割合で混合し、これにN−メチル−2−ピロリドンを加えて充分混練し、正極スラリーを調製した。正極スラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔からなる集電体に塗工機を用いて塗布し、80℃で12時間の真空乾燥を行った。その後、φ14mmの円盤状に打ち抜いてハンドプレスを用いて16MPaで2分間プレスし、正極とした。
次いで、上記の正極を用いてコイン型リチウムイオン電池を構築した。負極には、φ15mmに打ち抜いたリチウム箔を用いた。電解液には、エチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネートを体積比1:1の割合で混合した混合溶媒に、LIPF6を1mol/lの濃度で溶解したものを用いた。セパレータには、ポリプロピレン等の高分子多孔フィルム等、公知のものを用いた。これらの電池部品を露点が−50℃以下の雰囲気で常法により組み込み収容し、コイン型リチウムイオン電池(CR−2032)を製造した。
製造したリチウムイオン電池を用いて定電流密度での充放電を1サイクル行った。このときの充電条件は電流0.1CA(33.3mA/g)、電圧4.5Vの定電流定電圧充電とし、放電条件は電流0.6CA、終止電圧1.5Vの定電流放電とした。温度は全て30℃とした。実施例1で得られた正極材で構築した電池の充放電容量を表1に示す。
[比較例1]
製造例1で得られた球状カーボン粒子を含有する溶液(D)'の代わりに超純水27.5cm3を用いた以外、実施例1と同様にしてオリビン型シリケート化合物を得た。次いで、実施例1と同様にしてリチウムイオン電池を製造し、充放電を1サイクル行った。比較例1で得られた正極材で構築した電池の充放電容量を表1に示す。
表1の結果より、実施例1で得られた電池は、比較例1に比して、急速な充放電下においても優れた電池物性を有することがわかる。

Claims (6)

  1. 次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):
    (A)MSO4(式中、Mは、Fe、Ni、CoZn、V、Zr又はMnを示す)で表される遷移金属硫酸塩又は(R)2M(式中、Rは有機酸残基を示し、Mは、Fe、Ni、CoZn、V、Zr又はMnを示す)で表される有機酸遷移金属塩、 (B)リチウム化合物、
    (C)ケイ酸化合物、及び
    (D)水熱反応させることにより得られる球状カーボン粒子
    を混合し、次いで水熱反応させることを特徴とするオリビン型シリケート化合物の製造方法。
  2. 予め成分(D)を溶媒に分散させて、成分(D)を含有する溶液(D)'を得た後、成分(D)'と成分(A)、(B)及び(C)とを混合する請求項1に記載のオリビン型シリケート化合物の製造方法。
  3. 成分(D)'中における成分(D)の含有量が、1〜70質量%である請求項2に記載のオリビン型シリケート化合物の製造方法。
  4. 成分(D)の炭化度が、1〜100である請求項1〜3のいずれか1項に記載のオリビン型シリケート化合物の製造方法。
  5. 成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計量と、成分(D)'の量との質量比({(A)+(B)+(C)}/(D)')が、0.2〜3である請求項2〜4のいずれか1項に記載のオリビン型シリケート化合物の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のオリビン型シリケート化合物にカーボン担持し、次いで焼成することを特徴とするリチウムイオン電池用正極活物質の製造方法。
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