JP6126033B2 - オリビン型シリケート化合物の製造方法 - Google Patents

オリビン型シリケート化合物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、不純物の生成を効果的に抑制することができ、かつ優れた電池物性を有するリチウムイオン電池を実現することが可能なオリビン型シリケート化合物を得るための製造方法に関する。
リチウムイオン電池は、非水電解質電池の1種であり、携帯電話、デジタルカメラ、ノートPC、ハイブリッド自動車、電気自動車等広い分野に利用されている。リチウムイオン電池は、正極材料としてリチウム金属酸化物を用い、負極材料としてグラファイト等の炭素材を用いるものが主流となっている。
この正極材料としては、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、マンガン酸リチウム(LiMnO2)、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)、ケイ酸鉄リチウム(Li2FeSiO4)等が知られている。このうち、LiFePO4やLi2FeSiO4等は、オリビン構造を有し、高容量のリチウムイオン電池用正極材料として有用であり、特にLi2FeSiO4等のいわゆるオリビン型シリケート化合物は、優れた正極材料として注目を浴びている。
こうしたオリビン型シリケート化合物は、リチウム源、ケイ酸源及び遷移金属源を水熱反応に付することにより得られることが知られており、低い温度での処理が可能であるため簡便な製造方法として有用である。かかる水熱合成を利用した製造方法は、より微細で高純度なオリビン型シリケート化合物を得るべく、種々の研究がなされている。例えば、特許文献1には、リチウム源、ケイ酸源及び酸化防止剤を用いて塩基性水分散液としておき、これに遷移金属源を添加した後、水熱反応に付する方法が開示されている。また、特許文献2には、遷移金属源、リチウム源及びケイ酸源を塩基性水分散液としておき、次いで水熱反応に付する方法が開示されている。
特開2012−193087号公報 特開2012−193088号公報
しかしながら、上記特許文献に記載の方法であっても、水熱反応に付した後、通常行う洗浄処理については詳細な検討がなされておらず、不純物の生成を十分に抑制するには、依然として改善の余地がある。
したがって、本発明の課題は、不純物の生成を効果的に抑制することができ、かつ優れた電池物性を有するリチウムイオン電池を実現することが可能なオリビン型シリケート化合物の製造方法を提供することにある。
そこで本発明者らは、オリビン型シリケート化合物を製造するにあたり、所定の化合物を混合して水熱反応に付した後、特定の条件下で洗浄することにより、効果的に不純物の生成を抑制できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、MSO4(式中、Mは、Fe、Ni、Co、Al、Zn、V、Zr又はMnを示す)で表される遷移金属硫酸塩又は(R)2M(式中、Rは有機酸残基を示し、Mは、Fe、Ni、Co、Al、Zn、V、Zr又はMnを示す)で表される有機酸遷移金属塩、リチウム化合物、及びケイ酸化合物を混合し、水熱反応させて一次粒子を得た後、得られた一次粒子を含む20〜50℃のスラリーを調製してろ過し、次いでスラリーの固形分1質量部に対して2.5〜50質量部の洗浄水で洗浄することを特徴とするオリビン型シリケート化合物の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、上記製造方法により得られたオリビン型シリケート化合物にカーボン担持し、次いで焼成することを特徴とするリチウムイオン電池用正極活物質の製造方法を提供するものである。
さらに、本発明は、上記製造方法により得られたリチウムイオン電池用正極活物質を含む正極を有するリチウムイオン電池を提供するものである。
本発明の製造方法によれば、水熱反応に付することにより得られた一次粒子を特定の条件にて洗浄することにより、製造過程において不純物が生成するのを効果的に抑制し、高純度のオリビン型シリケート化合物を容易に得ることができる。したがって、かかるオリビン型シリケート化合物を用いることにより、優れた電池物性を有するリチウムイオン電池を実現することができる。
実施例9で得られたオリビン型シリケート化合物(粉末)のX線回折図を示す。 比較例3で得られたオリビン型シリケート化合物(粉末)のX線回折図を示す。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の製造方法では、まず、MSO4(式中、Mは、Fe、Ni、Co、Al、Zn、V、Zr又はMnを示す)で表される遷移金属硫酸塩又は(R)2M(式中、Rは有機酸残基を示し、Mは、Fe、Ni、Co、Al、Zn、V、Zr又はMnを示す)で表される有機酸遷移金属塩、リチウム化合物、及びケイ酸化合物を混合する。
遷移金属硫酸塩MSO4としては、FeSO4、NiSO4、CoSO4、Al2(SO43、ZnSO4、V2(SO43、Zr(SO42又はMnSO4が挙げられ、これらは1種単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。これらのうち、FeSO4、MnSO4がより好ましく、FeSO4がさらに好ましい。遷移金属硫酸塩(MSO4)の添加量は、不純物の生成を抑制する観点、及び得られる正極活物質の電池特性を高める観点から、水熱反応に付する反応混合液全量中に、0.15〜1.50mol/Lとなる量が好ましく、0.50〜1.40mol/Lとなる量がより好ましく、0.80〜1.40mol/Lとなる量がさらに好ましい。
なお、この場合における反応混合液中のLiの含有量は、Mに対して2モル以上が好ましい。
有機酸遷移金属塩(R)2MのRで示される有機酸としては、炭素数1〜20の有機酸が好ましく、炭素数2〜12の有機酸がより好ましい。より具体的な有機酸としては、シュウ酸、フマル酸等のジカルボン酸、乳酸等のヒドロキシカルボン酸、酢酸等の脂肪酸が挙げられる。水熱反応に付する反応混合液全量中の有機酸遷移金属塩(R)2Mの濃度は、不純物の生成を抑制する観点、及び得られる正極活物質の電池特性を高める観点から、0.15〜1.50mol/Lが好ましく、0.5〜1.40mol/Lがより好ましく、0.80〜1.40mol/Lがさらに好ましい。
なお、この場合における反応混合液中のLiは、遷移金属に対してモル比で2倍以上用いることが好ましく、Li:Mが2.5:1〜3:1程度がより好ましい。
リチウム化合物としては、水酸化リチウム(例えばLiOH・H2O)、炭酸リチウム(Li2CO3)、硫酸リチウム、酢酸リチウムが挙げられるが、水酸化リチウム、炭酸リチウムが特に好ましい。水熱反応に付する反応混合液全量中のリチウム化合物の濃度は、オリビン型シリケート化合物の合成収率を高める観点、及び得られる正極活物質の電池特性を高める観点から、0.30〜3.00mol/Lが好ましく、1.00〜2.80mol/Lがより好ましく、1.50〜2.80mol/Lがさらに好ましい。
成分(C)のケイ酸化合物としては、反応性のあるシリカ化合物であれば特に限定されず、非晶質シリカ、Na4SiO4(例えばNa4SiO4・H2O)が好ましい。このうち、副反応を抑制する観点から、Na4SiO4を用い、水熱反応に付する反応混合液を塩基性にするのが好ましい。成分(A)〜成分(D)を含む反応混合液全量中のケイ酸化合物の濃度は、不純物の生成を抑制する観点、及び得られる正極活物質の電池特性を高める観点から、0.15〜1.50mol/Lが好ましく、0.50〜1.40mol/Lがより好ましく、0.80〜1.40mol/Lがさらに好ましい。
上記有機酸遷移金属塩、リチウム化合物、及びケイ酸化合物の混合順序は特に限定されず、これらを全て同時に混合してもよい。また、これらを水に添加して、水熱反応に付する反応混合液を水分散液としてもよく、副反応を抑制する観点から、かかる水分散液を塩基性にするのがより好ましい。水としては、蒸留水、イオン交換水等のいずれであってもよい。
さらに、上記有機酸遷移金属塩、リチウム化合物、及びケイ酸化合物のほか、水熱合成に付する前に、さらに酸化防止剤を添加してもよい。酸化防止剤としては、ハイドロサルファイトナトリウム(Na224)、アンモニア水、亜硫酸ナトリウム等を使用することができる。上記有機酸遷移金属塩、リチウム化合物、及びケイ酸化合物の反応混合液及び酸化防止剤を含む、水熱反応に付する反応混合液全量中の酸化防止剤の含有量は、多量に添加するとオリビン型シリケート化合物の生成を抑制してしまうため、遷移金属(M)に対して等モル量以下が好ましく、遷移金属(M)に対してモル比で0.5以下がさらに好ましい。
また、上述したように水を用いて上記有機酸遷移金属塩、リチウム化合物、及びケイ酸化合物を含む反応混合液を水分散液とする代わりに、ポリオールと水とを含有する溶媒を用い、上記有機酸遷移金属塩、リチウム化合物、及びケイ酸化合物を含む反応混合液とかかる溶媒とを混合するのが好ましい。ポリオールと水とを含有する溶媒は、ポリオールの残部が水である。これにより、有機酸遷移金属塩、リチウム化合物、及びケイ酸化合物を含む反応混合液と混合した際、ポリオールがキレート剤又は界面活性剤として作用し、各成分の分散性を高めつつ、水熱反応を介して得られるオリビン型シリケート化合物の合成収率を効果的に高めることも可能になると推定される。かかる溶媒に含有されるポリオールとしては、不純物の生成をより有効に抑制して、オリビン型シリケート化合物の合成収率を高める観点から、2〜3価のアルコールが好ましい。
2価のアルコールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロ−ルペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオールが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
これら2価のアルコールのなかでも、オリビン型シリケート化合物の合成収率を高める観点、及び得られる電池の物性を高める観点から、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、及び1,4−ブタンジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、エチレングリコール、ポリエチレングリコールがより好ましく、エチレングリコールがさらに好ましい。ポリエチレングリコールにおけるエチレンオキシ基の平均付加モル数は、好ましくは10〜600であり、より好ましくは50〜500であり、さらに好ましくは100〜400である。
3価のアルコールとしては、具体的には、例えば、グリセリン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−アダマンタントリオール、1,3,5−シクロヘキサントリオール、1,2,3−シクロヘキサントリオールが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
これら3価のアルコールのなかでも、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、2−メチルプロパントリオールからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、グリセリンがより好ましい。
また、上記2〜3価のアルコールのなかでも、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、及びグリセリンからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、エチレングリコール、グリセリンがより好ましい。
ポリオールの含有量は、かかるポリオールをキレート剤又は界面活性剤として有効に作用させる観点、及び水熱合成反応を良好に進行させる観点から、ポリオールと水とを含有する溶媒中に、好ましくは20〜70質量%であり、より好ましくは22〜60質量%であり、さらに好ましくは25〜55質量%である。
なお、かかる溶媒に含有される水としては、蒸留水、イオン交換水等のいずれであってもよい。
ポリオールと水とを含有する溶媒を用いる場合、上記有機酸遷移金属塩、リチウム化合物、及びケイ酸化合物を含む反応混合液とかかる溶媒との混合順序は特に限定されず、これらを全て同時に混合してもよく、あらかじめ有機酸遷移金属塩、リチウム化合物、及びケイ酸化合物を混合し、これをポリオールと水とを含有する溶媒に添加してさらに混合してもよい。なかでも、各成分の分散性又は溶解性を高め、オリビン型シリケート化合物の合成収率の向上を図る観点から、あらかじめ有機酸遷移金属塩、リチウム化合物、及びケイ酸化合物を混合し、これをポリオールと水とを含有する溶媒に添加してさらに混合するのが好ましい。
本発明の製造方法では、上記有機酸遷移金属塩、リチウム化合物、及びケイ酸化合物を混合し、次いで水熱反応させて一次粒子を得る。水熱反応の温度は、100〜200℃が好ましく、130〜200℃がより好ましく、さらに140〜180℃が好ましい。水熱反応は耐圧容器中で行うのが好ましく、130〜200℃で反応を行う場合の圧力は0.3〜1.5MPaであるのが好ましく、140〜180℃で反応を行う場合の圧力は0.4〜1.0MPaであるのが好ましい。水熱反応時間は1〜24時間が好ましく、さらに3〜12時間が好ましい。
当該水熱反応により、遷移金属Mを含むオリビン型シリケート化合物の一次粒子が得られる。かかるオリビン型シリケート化合物は、具体的には下記式(1)〜(5)のいずれかで表わされる。
Li2M'SiO4 ・・・(1)
(式中、M'はFe、Ni、Co及びMnから選ばれる1種又は2種以上を示す。)
Lia'FexMnyAlzSiO4 ・・・(2)
(式中、a'、x、y及びzは、1<a'≦2、0≦x<1、0≦y<1、0<z<2/3、a'+2x+2y+3z=4、及びx+y≠0を満たす数を示す。)
Lia"FexMnyz'SiO4 ・・・(3)
(式中、a"、x、y及びz'は、1<a"≦2、0≦x<1、0≦y<1、0<z'<1、a"+2x+2y+(2〜5)z'=4、及びx+y≠0を満たす数を示す。)
Lia"FexMnyZrz"SiO4 ・・・(4)
(式中、a"、x、y及びz"は、1<a"≦2、0≦x<1、0≦y<1、0<z"<0.5、a"+2x+2y+4z"=4、及びx+y≠0を満たす数を示す。)
Li2FexMnyZnqSiO4 ・・・(5)
(式中、x、y及びqは、0≦x<1、0≦y<1、0<q<1、x+y+q=1、及びx+y≠0を満たす数を示す。)
次いで、得られたオリビン型シリケート化合物の一次粒子を含む20〜50℃のスラリーを調製してろ過する。かかる温度範囲に調整することにより、効果的に不純物の生成を抑制することが可能となる。スラリーの温度は、好ましくは20〜40℃であり、より好ましくは25〜35℃である。
また、スラリーにおけるオリビン型シリケート化合物の一次粒子の含有量(固形分濃度)は、得られる正極活物質の電池特性を高める観点から、好ましくは5〜60質量%であり、より好ましくは10〜50質量%であり、さらに好ましくは35〜45質量%である。
この際、分散剤や増粘剤をスラリーに少量添加しても良く、分散剤としては、例えば、ポリカルボン酸系、ポリエーテル系、ポリアクリル酸系などを用いることができる。
増粘剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、アンモニアなどの塩基や酢酸、クエン酸などの有機酸を用いることができる。
スラリーをろ過した後、ろ過物(スラリーの固形分)1質量部に対し、2.5〜50質量部の洗浄水を用いてろ過物を洗浄する。かかる量の洗浄水でろ過物を洗浄することにより、効果的に不純物の生成を抑制することができる。用いる洗浄水の量は、ろ過物(スラリーの固形分)1質量部に対し、好ましくは5.0〜25.0質量部であり、より好ましくは10.0〜15.0質量部である。
用いる洗浄水のpHは、効果的に不純物の生成を抑制する観点から、好ましくはpH9.0〜13.5であり、より好ましくは10.0〜13.0であり、さらに好ましくは11.0〜13.0である。
なお、pHを調整するにあたり、pH調整剤を用いてもよい。かかるpH調整剤としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、リン酸、リン酸アンモニウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、ピロリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ポリリン酸カリウム、メタリン酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アンモニウム、アンモニア水等が挙げられる。
オリビン型シリケート化合物の一次粒子は、上記洗浄後に乾燥することにより二次粒子として単離することができる。乾燥手段としては、噴霧乾燥、箱型乾燥、流動床乾燥、外熱式乾燥、凍結乾燥、真空乾燥が挙げられる。なかでも、スプレードライヤーを用いた噴霧乾燥が好ましい。
こうして得られる乾燥物については、乾燥時又は乾燥後にセパレータ、サイクロン、篩等で分級してもよく、また乳鉢ピンミル、ロールミル、クラッシャー等を用いて粉砕してもよい。
なお、さらに導電性炭素材料を用い、予め得られたオリビン型シリケート化合物の一次粒子又は二次粒子にカーボン担持する処理を施してもよい。このようにすることで、粒子表面にカーボン薄膜を形成させることができ、オリビン型シリケート化合物の電子伝導面積(電子伝導パス)をさらに増加させ、より十分な電子伝導性を確保することが可能となる。
カーボン担持する処理に用いる導電性炭素材料としては、例えば、セルロース、リグニン、キトサン、キチン、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラフェンオキサイド、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛、グラファイト、合成繊維等の炭素含有化合物が挙げられる。この際における導電性炭素材料の添加量は、水熱反応後に得られるオリビン型シリケート化合物の一次粒子理論生成量中に、導電性炭素材料に含まれる炭素原子換算で、0.5〜20質量%となる量で添加するのが好ましく、2.5〜17.5質量%となる量で添加するのがより好ましい。導電性炭素材料を添加するにあたり、分散性を高める点から、溶媒を用いて溶液とするのがよい。かかる溶液中の導電性炭素材料の濃度は、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下である。溶媒としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等が挙げられる。
導電性炭素材料の添加量は、良好な充放電容量及び経済性の点から、スラリー中のオリビン型シリケート化合物の一次粒子100質量部に対し、炭素原子換算で0.5〜20質量部の量が好ましく、さらに2.5〜17.5質量部の量が好ましい。
このように、必要に応じて溶媒を用いて導電性炭素材料を添加した後、焼成することにより、リチウムイオン電池用正極活物質とすることができる。カーボン担持する処理における焼成条件は、不活性ガス雰囲気下又は還元条件下に400℃以上、好ましくは400〜800℃で10分〜3時間、好ましくは0.5〜1.5時間行うのが好ましい。かかる処理により、オリビン型シリケート化合物の一次粒子又は二次粒子の表面にカーボンが担持された正極活物質とすることができる。
このようにして得られた本発明のリチウムイオン電池用正極活物質を用いてリチウムイオン電池を製造する方法は特に限定されず、公知の方法をいずれも使用できる。例えば、かかる正極活物質を結着剤や溶剤等の添加剤とともに混合して塗工液を得る。この際、必要に応じて、さらに導電助剤を添加して混合してもよい。かかる結着剤としては、特に限定されず、公知の剤をいずれも使用できる。具体的には、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルクロライド、エチレンプロピレンジエンポリマー等が挙げられる。また、かかる導電助剤としては、特に限定されず、公知の剤をいずれも使用できる。具体的には、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、天然黒鉛、人工黒鉛、繊維状炭素等が挙げられる。次いで、かかる塗工液をアルミ箔等の正極集電体上に塗布し、乾燥させて正極とする。
本発明のリチウムイオン電池用正極活物質は、リチウムイオン電池の正極として非常に優れた放電容量を発揮する点で有用である。かかる正極を適用できるリチウムイオン電池としては、正極と負極と電解液とセパレータを必須構成とするものであれば特に限定されない。
ここで、負極については、リチウムイオンを充電時には吸蔵し、かつ放電時には放出することができれば、その材料構成で特に限定されるものではなく、公知の材料構成のものを用いることができる。たとえば、リチウム金属、グラファイト又は非晶質炭素等の炭素材料等である。そしてリチウムを電気化学的に吸蔵・放出し得るインターカレート材料で形成された電極、特に炭素材料を用いることが好ましい。
電解液は、有機溶媒に支持塩を溶解させたものである。有機溶媒は、通常リチウムイオン電池の電解液の用いられる有機溶媒であれば特に限定されるものではなく、例えば、カーボネート類、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、ケトン類、ニトリル類、ラクトン類、オキソラン化合物等を用いることができる。
支持塩は、その種類が特に限定されるものではないが、LiPF6、LiBF4、LiClO4及びLiAsF6から選ばれる無機塩、該無機塩の誘導体、LiSO3CF3、LiC(SO3CF32及びLiN(SO3CF32、LiN(SO2252及びLiN(SO2CF3)(SO249)から選ばれる有機塩、並びに該有機塩の誘導体の少なくとも1種であることが好ましい。
セパレータは、正極及び負極を電気的に絶縁し、電解液を保持する役割を果たすものである。たとえば、多孔性合成樹脂膜、特にポリオレフィン系高分子(ポリエチレン、ポリプロピレン)の多孔膜を用いればよい。
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
LiOH・H2O 4.20g(0.1mol)、Na4SiO4・nH2O 13.97g(0.025mol)に超純水37.5cm3を加えて混合した(この時のpHは約12.5)。この水分散液にFeSO4・7H2O 1.31g(0.005mol)、MnSO4・5H2O 10.20g(0.42mol)、Zr(SO4)2・4H2O 0.53g(0.002mol)を添加し、混合した。得られた混合液をオートクレーブに投入し、150℃で12hr水熱反応を行った。反応後のスラリー(固形分濃度12質量%)を25℃に調整し、ろ過した。
次いで、ろ過物8質量部に対し、pH6.2の蒸留水100mL(ろ過物1質量部に対して12.5質量部)を洗浄液として用いて洗浄し、凍結乾燥した。凍結乾燥(約12時間)して得られた粉末4.2gにポリビニルアルコール(炭素濃度として3%)及び超純水10cm3を加え、還元雰囲気下で700℃で1hr焼成してオリビン型シリケート化合物を得た。
なお、洗浄液のpHは、堀場製作所社製pHメーター(型番:D−51)を用いて測定した。
[実施例2]
洗浄液としての蒸留水を200mL(ろ過物1質量部に対して25質量部)とした以外、実施例1と同様にしてオリビン型シリケート化合物を得た。
[実施例3]
洗浄液としての蒸留水を400mL(ろ過物1質量部に対して50質量部)とした以外、実施例1と同様にしてオリビン型シリケート化合物を得た。
[実施例4]
洗浄液として水酸化リチウム水溶液(1質量%濃度)を用い、pH12.0、100mL(ろ過物1質量部に対して12.5質量部)とした以外、実施例1と同様にしてオリビン型シリケート化合物を得た。
[実施例5]
洗浄液としてリン酸アンモニウム水溶液(1質量%濃度)を用い、pH3.0、100mL(ろ過物1質量部に対して25質量部)とした以外、実施例1と同様にしてオリビン型シリケート化合物を得た。
[実施例6]
洗浄液としてリン酸水素二アンモニウム水溶液(1質量%濃度)を用い、pH2.5、100mL(ろ過物1質量部に対して50質量部)とした以外、実施例1と同様にしてオリビン型シリケート化合物を得た。
[実施例7]
洗浄液としてリン酸二水素アンモニウム水溶液(1質量%濃度)を用い、pH1.8、100mL(ろ過物1質量部に対して50質量部)とした以外、実施例1と同様にしてオリビン型シリケート化合物を得た。
[実施例8]
洗浄液としてリン酸水溶液(1質量%濃度)を用い、pH1.6、100mL(ろ過物1質量部に対して50質量部)とした以外、実施例1と同様にしてオリビン型シリケート化合物を得た。
なお、上記実施例1〜8において、得られたオリビン型シリケート化合物における不純物の生成の有無を目視により観察したところ、不純物の存在は確認されなかった。
[比較例1]
洗浄液を用いなかった以外、実施例1と同様にしてオリビン型シリケート化合物を得た
[試験例1:放電容量の測定]
実施例1〜8及び比較例1〜2で得られたオリビン型シリケート化合物を用い、リチウムイオン電池の正極を作製した。得られた化合物、ケッチェンブラック(導電剤)、ポリフッ化ビニリデン(粘結剤)を重量比75:15:10の配合割合で混合し、これにN−メチル−2−ピロリドンを加えて充分混練し、正極スラリーを調製した。正極スラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔からなる集電体に塗工機を用いて塗布し、80℃で12時間の真空乾燥を行った。その後、φ14mmの円盤状に打ち抜いてハンドプレスを用いて16MPaで2分間プレスし、正極とした。
次いで、上記の正極を用いてコイン型リチウムイオン電池を構築した。負極には、φ15mmに打ち抜いたリチウム箔を用いた。電解液には、エチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネートを体積比1:1の割合で混合した混合溶媒に、LIPF6を1mol/Lの濃度で溶解したものを用いた。セパレータには、ポリプロピレン等の高分子多孔フィルム等、公知のものを用いた。これらの電池部品を露点が−50℃以下の雰囲気で常法により組み込み収容し、コイン型リチウムイオン電池(CR−2032)を製造した。
製造したリチウムイオン電池を用いて定電流密度での充放電を1サイクル行った。このときの充電条件は電流0.1CA(33mA/g)、電圧4.5Vの定電流定電圧充電とし、放電条件は電流0.1CA、終止電圧1.5Vの定電流放電とした。温度は全て30℃とした。これらの正極材で構築した電池の充放電容量を表1に示す。
Figure 0006126033
[実施例9、比較例3〜4]
洗浄液としての蒸留水を100mL(ろ過物1質量部に対して12.5質量部)とし、反応後スラリーを表2に示す温度に調整した以外、実施例1と同様にしてオリビン型シリケート化合物を得た。次いで、試験例1と同様にして、各リチウムイオン電池を製造し、充放電を1サイクル行った。得られた正極材で構築した電池の充放電容量を表2に示す。
Figure 0006126033
[試験例2:不純物の確認]
上記実施例9及び比較例3において得られたオリビン型シリケート化合物を用い、X線回折を行った。得られた回折図を図1(実施例9)及び図2(比較例3)に示す。
図1〜2によれば、実施例9は不純物が確認されなかったのに対し、比較例3は不純物(Na2SO4)が存在することがわかる。

Claims (4)

  1. MSO4(式中、Mは、Fe、Ni、Co、Al、Zn、V、Zr又はMnを示す)で表される遷移金属硫酸塩又は(R)2M(式中、Rは有機酸残基を示し、Mは、Fe、Ni、Co、Al、Zn、V、Zr又はMnを示す)で表される有機酸遷移金属塩、リチウム化合物、及びケイ酸化合物を混合し、水熱反応させて一次粒子を得た後、得られた一次粒子を含む20〜50℃のスラリーを調製してろ過し、次いでスラリーの固形分1質量部に対して2.5〜50質量部の洗浄水で洗浄することを特徴とするオリビン型シリケート化合物の製造方法。
  2. 洗浄水のpHが、9.0〜13.5である請求項1に記載のオリビン型シリケート化合物の製造方法。
  3. 有機酸遷移金属塩、リチウム化合物、及びケイ酸化合物を混合するにあたり、さらに20〜80質量%のポリオールと水とを含有する溶媒を用いる請求項1又は2に記載のオリビン型シリケート化合物の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のオリビン型シリケート化合物にカーボン担持し、次いで焼成することを特徴とするリチウムイオン電池用正極活物質の製造方法。
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