JP6054260B2 - ロータリーエンコーダ - Google Patents
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Description
特許文献1には、光学式スケール方式のロータリーエンコーダにおいて、回転軸とハウジング(ケーシング)との間の隙間を、磁性流体を保持したシーリング材で塞ぐ構成についての開示がある。
そして、開口部から突出した回転軸の周囲のハウジングの外面に環状に溝部を形成する。
さらに、回転軸の突出部に固定され、少なくとも回転軸の突出部から溝部までの範囲を覆うカバーを設ける。このカバーは、回転軸の近傍から溝部までハウジングの外面に近づくように傾斜した第1の傾斜面と、溝部から離れるように傾斜した第2の傾斜面とを有する。
まず、図1および図2を参照して、ロータリーエンコーダ全体の構成を説明する。図1は全体構成を示す斜視図であり、図2は図1のI−I線に沿う断面図である。
ロータリーエンコーダ100は、ベース部101の上に接続された円筒形のハウジング部110を備える。ベース部101やハウジング部110は、一例として金属製としている。
図2の断面図に示すように、ハウジング部110の中央には、中空の回転軸120が取り付けられている。回転軸120は、その周囲に配置されたベアリング501を介して固定側に回転可能に支持される。
そして、回転軸120が回転したとき、磁気ヘッド102で、磁気スケールの磁化方向の変化の検出に対応した検出信号を得る。この磁気ヘッド102の検出信号が、ハウジング部110内に配置された回路基板103,104上に形成された検出信号処理回路に供給され、検出信号の位相から、回転軸120の回転角度の算出処理が行われる。このとき、磁気ヘッド102で検出される位相が変化する方向で、回転方向についても検出される。また、回転角度の変化に基づいて累積回転数を算出することで、移動距離を判断することもできる。なお、図2では、回路基板103,104上の回路部品の記載は省略する。
さらに、本例のロータリーエンコーダ100は、シール材130が取り付けられた回転軸120の突出部124の外周部を覆うように、回転軸120にカバー200を取り付ける。カバー200は回転軸120に固定され、回転軸120と一緒に回転する。このカバー200は、ハウジング部110と近接する位置までを覆う構成としてあり、カバー200とほぼ接するハウジング部110の上面111には、環状溝部112が形成されている。本例のカバー200は、金属板よりなる。
図3は、シール材130とカバー200をロータリーエンコーダ100から外した状態を分解して示す図である。
Vリングであるシール材130は、内周面131が回転軸120の突出部124の外周面の径とほぼ等しいサイズであり、リップ132が環状に形成され、このリップ132がシール面であるハウジング部110の上面111と接する。
そして、シール材130のリップ132が接する位置よりも外側の上面111に、環状溝部112が形成されている。環状溝部112は、例えば幅、深さともに数mm程度である。
また、カバー200の上面210には、回転軸120の突出部124の外径に対応した開口部212が形成されている。
さらにカバー200には、第1傾斜面220の下端部221から、外側に折り返すように第2傾斜面230が形成されている。第2傾斜面230は、回転軸120の軸心から径方向に離れるに従いハウジング部110の上面111から離れるように傾斜している。
図4は、ロータリーエンコーダ100のハウジング部110の上面111に、シール材130及びカバー200が取り付けられた状態の断面を拡大して示す図であり、図5は、その周辺を斜視図で示した図である。
ここまでの説明と一部重複するが、図4及び図5に示すシール材130及びカバー200について説明する。Vリングであるシール材130は、内周面131が回転軸120の突出部124の外周面と接している。そして、シール材130の下側に環状に突出したリップ132の下端が、シール面であるハウジング部110の上面111と接している。したがって、ハウジング部110の上面111の開口部113は、シール材130により塞がれた状態となる。
図4に示した角度θ1は、カバー200の第1傾斜面220が、回転軸120の軸方向となす角度を示し、角度θ2は、カバー200の第2傾斜面230が、回転軸120の軸方向となす角度を示す。この図4から判るように、角度θ1,θ2は回転軸120の軸方向から見て互いに逆の方向の角度であり、いずれも45°以下の鋭角である。但し、この図4に示す角度とするのは1つの例であり、より緩い角度に設定してもよい。
環状溝部112は、シール材130のリップ132がハウジング部110の上面111と接する箇所よりも多少径方向外側に配置してある。
下端部221から径方向の外側に広がった第2傾斜面230は、高さが数mm程度である。
しかしながら、シール材130はある程度柔軟性を有するゴムなどで製作され、材料の性質上使用状態や使用環境によって劣化する可能性がある。例えば、ロータリーエンコーダ100が使用される環境が、クーラントと称される液体がかかる可能性がある場合、そのクーラントがシール材130に直接触れた場合、シール材130が劣化する可能性がある。また、ロータリーエンコーダ100が切削作業を行う工作機械に取り付けられた場合、その切削作業で生じる切粉などの塵が侵入して、シール材130によるシール性が劣化する可能性がある。
また、単にカバー200を配置しただけでなく、そのカバー200の第1傾斜面220の下端部221が、ハウジング部110の上面111の環状溝部112と接近していることでも、液体や塵の侵入が効果的に防止される。すなわち、外部からハウジング部110の内部に液体や塵などの異物が侵入しようとしたとき、その液体や塵は、環状溝部112に入る。そして、第1傾斜面220の下端部221が、環状溝部112に溜まった液体に浸るため、外部からの塵等の異物の混入を防ぐことができる。
ここで、環状溝部112にはカバー200の第1傾斜面220の下端部221が近接しており、しかもカバー200は回転軸120と連動して回転する。このため、下端部221についた液体や該液体に混入している塵等が回転した第2傾斜面230によって環状溝部112から外側にはね飛ばされるようになる。したがって、環状溝部112にクーラントなどの液体や切粉などの塵が溜まったとしても、カバー200の内側への侵入が阻止され、結果的にシール材130の劣化が極力防止される。
実験した例では、例えばカバー200の回転速度が1000rpm以上で、環状溝部112内の水滴が、良好にはね飛ばされる効果を確認できた。但し、1000rpm以上というのは1つの例であり、異物をはね飛ばすことができる回転数は、カバー200や環状溝部112の形状によって異なる。
実験した例では、本例のカバー200を配置したロータリーエンコーダ100と、カバー200がない従来のロータリーエンコーダとを比較したとき、本例の場合、回路基板103,104に形成された回路に混入する電磁波ノイズを39%抑制することができた。
図6及び図7は、変形例(例1)のカバー200aを示す図である。この図6及び図7において、図1〜図5に示したロータリーエンコーダ100の各部と同一の部材については同一の符号を付し、その詳細説明は省略する。
カバー200aのその他の部分については、図1〜図5に示したカバー200と同様に構成する。
図8及び図9は、変形例(例2)のカバー200bを示す図である。この図8及び図9においても、図1〜図5に示したロータリーエンコーダ100の各部と同一の部材については同一の符号を付し、その詳細説明は省略する。
切り欠き部223は、図9の断面に示すように、貫通した孔にならない程度のサイズに形成する。
また、図6及び図7に示したカバー200aの第1傾斜面220と第2傾斜面222との境界部に、同様の切り欠き部223を複数配置するようにしてもよい。
図10は、変形例(例3)のカバー200cを示す図である。この図10においても、図1〜図5,図8、図9に示したロータリーエンコーダ100の各部と同一の部材については同一の符号を付し、その詳細説明は省略する。
図10に示すカバー200cは、図8に示すカバー200bの第2傾斜面230に、さらに細溝224を設けたものである。この細溝224は、第2の傾斜面230をそれぞれの切り欠き部223から直線上に上側に伸びるように形成される。この細溝224は、例えば、カバー200bを構成する金属板の厚さが1.0mmであるとき、0.1mm程度の非常に細い幅にする。
なお、図6及び図7に示したカバー200aの第1傾斜面220と第2傾斜面222との境界部に、同様の切り欠き部223を複数配置した場合にも、同様の細溝224を配置してもよい。
なお、上述した実施の形態の例で説明した各例のカバー200,200a,200b,200cは、金属製であることが好ましいが、樹脂製のカバーであってもよい。本実施の形態では磁性流体を用いたシーリング材を用いないので、樹脂製のカバーであっても内部の回路に電磁的な影響を及ぼすことがない。なお、樹脂製のカバーを用いて外部からの電磁波ノイズの侵入を防ぐ場合には、例えば表面又は裏面に、電磁シールド効果がある磁性材の膜を形成させてもよい。あるいは、アルミ製のシートなどをシール材130とカバー200の間に挟むようにして、電磁波ノイズの侵入を防ぐようにしてもよい。また、電磁シールド効果がない、樹脂だけで構成されるカバーでもよい。樹脂だけで構成されるカバーであっても、そのカバー自体が電磁ノイズを発することがないため、ロータリーエンコーダでの検出に悪影響を与えることがなく、ロータリーエンコーダの検出精度の向上に繋がる。
また、本実施の形態の例のロータリーエンコーダ100では、ハウジング部110の上側に突出した回転軸120に装着されるシール材130の周囲に取り付けられるカバーに適用した。これに対して、図2に示したような回転軸120の下側に取り付けられるシール材140の配置箇所についても同様の形状として、カバーを取り付けるようにしてもよい。
Claims (5)
- 少なくとも1つの開口部を有するハウジングと、
前記ハウジングの内部で軸受を介して支持され、前記ハウジングの前記開口部から前記ハウジングの外部に突出する突出部を有する回転軸と、
前記ハウジングの内部に配置され、前記回転軸の回転角を検出する検出部と、
前記開口部から突出した回転軸の周囲の前記ハウジングの外面に環状に形成された溝部と、
前記回転軸の前記突出部に固定され、少なくとも前記回転軸の前記突出部から前記溝部までの範囲を覆い、前記回転軸の近傍から前記溝部まで前記ハウジングの外面に近づくように傾斜した第1の傾斜面と、前記溝部から離れるように傾斜した第2の傾斜面とを有するカバーとを備えた
ロータリーエンコーダ。 - 前記カバーの前記第1の傾斜面と前記第2の傾斜面との境界の端部の下側に、複数の切り欠きを有する
請求項1に記載のロータリーエンコーダ。 - 前記カバーの前記第2の傾斜面のハウジングに面した側に、前記第2の傾斜面の回転方向と直交する周方向に延在する複数の細溝を有する
請求項1又は2に記載のロータリーエンコーダ。 - 前記ハウジングの前記開口部を覆うシール材が、前記カバーの内側の前記回転軸に装着された
請求項1〜3のいずれか1項に記載のロータリーエンコーダ。 - 前記カバーが金属で形成されている
請求項1〜4のいずれか1項に記載のロータリーエンコーダ。
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