JP6051878B2 - ポリカーボネート樹脂の製造方法 - Google Patents
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Description
[2]前記ポリマー融液通液前に、前記濾過装置内部が、不活性ガスで置換されている前記[1]に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
[3]前記濾過装置が略垂直竪型に配置され、前記ポリマー融液が該濾過装置の下部より流入し、上部より流出する前記[1]又は[2]に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
[4]前記ポリマーフィルターが、キャンドルフィルターまたはリーフディスク型フィルターである前記[1]〜[3]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
[5]前記濾過装置が、切り替え自在に複数設けられた濾過装置のうちの切り替える側の濾過装置である前記[1]〜[4]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
ポリマー融液をポリマーフィルターを有する濾過装置により濾過する場合、ポリマーフィルター内の残存ガスに起因する劣化異物が生成するおそれがあるが、本発明の製造方法では、濾過装置へのポリマー融液通液前に、該濾過装置内部を1.33kPa以下、かつ、250℃以上とし、濾過装置内部の残存ガスを除去した後にポリマーフィルターにポリマー融液を通液することにより、ポリマーフィルター内に劣化異物が生成することを抑制することができる。そして、濾過装置内部の残存ガスが後段のペレット化工程に供されることがないため、得られるペレットをより高品質化し、かつガス混入を防止しペレット化工程が安定するまでの時間を短縮することができる。
濾過装置の加熱には、通常、電気ヒーターや熱媒が加熱源として使用される。濾過装置は、ポリマー融液の通液前に上記の温度に昇温しておくことが必要である。温度測定は、熱電対や測温抵抗体などの通常の温度計を用いて行う。
濾過装置におけるポリマーフィルターの形態は、ポリマー融液の濾過を行うことができるものであればよいが、例えば、キャンドルフィルター、リーフディスク型フィルター、パックフィルター等を単独、または組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、濾過精度や濾圧、濾過面積、フィルター交換の作業性等の観点から、リーフディスク型フィルター、またはキャンドルフィルターを用いることが好ましい。
例えば、リーフディスク型フィルターを具備する濾過装置の場合、部材としてセンターポストを有しているものが用いられる。リーフディスク型フィルターは、通常円板形で、直径100mm〜600mm程度、厚み5mm〜10mm程度であり、種々の線径及び開口率を有する織金網や金属パウダーの焼結物を1層以上重ねたものが用いられる。センターポストに装着されるリーフディスク型ポリマーフィルターの枚数は、ポリマーの流量や粘度にもよるが、通常十枚程度から数百枚になる。リーフディスク型ポリマーフィルターのセンターポストへの装着は、例えば、中央に円形の孔を設けたリーフディスク型ポリマーフィルターを所定枚数、表面に多数の小貫通孔を設けた円筒形のセンターポストに通し、リーフディスク型ポリマーフィルター間を十分に締め付けることによって行われる。
キャンドルフィルターの取り付けは、流路を設けたプレートの末端部をネジ込方式で固定させ、もう一方の末端部は、必要に応じて、フィルターの本数や長さにあわせたリング状の固定治具などを用いて等間隔に固定させて用いられる。
図1に示す濾過装置1aと濾過装置1bは、内部に濾材としてポリマーフィルターを具備し、重合工程において生成したポリマー融液を濾過するための装置である。濾過装置1aと濾過装置1bは、それぞれが切り替え自在に配設されている。なお、本実施形態では、切り替え自在の2基の濾過装置を並列に配置しているが、3基以上の濾過装置を切り替え自在に並列に配置してもよい。
ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(別名:ビスフェノールA)、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(別名:テトラブロモビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1−トリクロロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;イソソルビト、イソマンニド、イソイデット等の複素環基を有するジヒドロキシ化合物類;2−(5−エチル−5−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキサン−2−イル)−2−メチルプロパン−1−オール、3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデロン等のスピロ炭化水素誘導体;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン等のカルド構造含有ビスフェノール類;4,4'−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメチルジフェニルエーテル等のジヒドロキシジアリールエーテル類;4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類;ハイドロキノン、レゾルシン、4,4'−ジヒドロキシジフェニル等が挙げられる。これらの中では、ビス(ヒドロキシアリール)アルカン類が好ましく、特に耐衝撃性の点からビスフェノールA(以下、BPAと略称することがある。)が好ましい。さらに、難燃性を高める目的で、上記のジヒドロキシ化合物にスルホン酸テトラアルキルホスホニウムが1個以上結合した化合物も使用することが出来る。これらのジヒドロキシ化合物は、二種以上を混合することができる。
炭酸ジエステルとしては、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
通常、エステル交換反応によりポリカーボネート樹脂を製造する際には、触媒としてエステル交換触媒が使用される。触媒は、特に制限されないが、周期表第1族金属化合物および/または周期表第2族金属化合物が好ましい。また、補助的に、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性窒素化合物などの塩基性化合物を併用することも可能である。これらの触媒の中では、実用的観点から周期表第1族金属化合物が好ましい。これらの触媒は2種類以上を組み合わせて使用してもよい。触媒の使用量は、ジヒドロキシ化合物1モルに対し、通常1×10-9モル〜1×10-1モル、好ましくは1×10-7モル〜1×10-3モル、更に好ましくは1×10-7モル〜1×10-6モルの範囲である。
ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのエステル交換反応は次のように行うことが出来る。
先ず、原料調製段階として、窒素、アルゴン等の不活性ガスの雰囲気下、バッチ式、半回分式または連続式の撹拌槽型の装置を使用し、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの混合溶融液を調製する。溶融混合の温度は、例えば、ジヒドロキシ化合物としてビスフェノールAを使用し、炭酸ジエステルとしてジフェニルカーボネートを使用する場合は、通常120℃〜180℃、好ましくは125℃〜160℃の範囲である。または、攪拌槽型装置で混合させることなく、個別に溶融させた原料を、ラインミキサなどを用いて直接混合して、エステル交換反応のための反応器に供給することもできる。
そして、多段方式の各反応器においては、エステル交換反応の進行と共に副生するフェノール等のモノヒドロキシ化合物をより効果的に系外に除去するため、上記の反応条件内において、段階的により高温、より高真空に設定し、最終的には266.6Pa以下の減圧とする。これにより、モノヒドロキシ化合物などの副生成物を除去しながらエステル交換反応を行うことが出来る。なお、得られるポリカーボネート樹脂の色相などの品質低下を防止するため、上記の範囲内で出来るだけ低温かつ短滞留時間の設定が好ましい。
なお、得られたポリカーボネート樹脂の分析は下記の測定方法により行った。
(1)粘度平均分子量(Mv)
ウベローデ粘度計を使用し、ポリカーボネート樹脂試料の塩化メチレン溶液(0.6g/dl)を調製し、20℃におけるηspを測定し、以下の式(1)及び(2)より粘度平均分子量(Mv)を求めた。
ηsp/C=[η]×(1+0.28ηsp) (1)
[η]=1.23×10-4×(Mv)0.83 (2)
(式(1)中、ηspはポリカーボネート樹脂試料の塩化メチレン溶液を20℃で測定した比粘度であり、Cはこの塩化メチレン溶液の濃度である。塩化メチレン溶液としては、ポリカーボネート樹脂試料の濃度が0.6g/dlの溶液を使用する。)
得られたポリカーボネート樹脂ペレットを、120℃、5時間乾燥した後、射出成形機(日本製鋼所製「J75EII」)を使用し、バレル温度300℃、金型温度90℃の条件下にて厚み3.2mm、一辺60mm角のシートを連続成形し、当該シート4枚を色差計(ミノルタ株式会社製、製品名CM−3700D)で色の絶対値である三刺激値XYZを測定し、次の関係式に黄色度の指標であるYI値を計算した。
YI=(100/Y)×(1.28X−1.06Z)
YI値が大きいほど着色していることを示す。
<第1反応器内の反応>
窒素ガス雰囲気下、ビスフェノールA(BPA)とジフェニルカーボネート(DPC)とを、一定のモル比(DPC/BPA=1.065)で混合し、140℃に加熱して、溶融混合物を得た。これを、140℃に加熱した原料導入管を介して、常圧、窒素雰囲気下、210℃に制御した第1竪型撹拌反応器内に連続供給した。平均滞留時間が60分になるように、槽底部のポリマー排出ラインに設けられたバルブ開度を制御しつつ、液面レベルを一定に保った。また、上記溶融混合物と共に、触媒として炭酸セシウム水溶液を、ビスフェノールA1モルに対し、0.5×10-6モルの割合で第1竪型撹拌反応器内に連続供給した。
第1竪型撹拌反応器の槽底より排出されたエステル交換反応液は、引き続き第2、第3の竪型撹拌反応器及び第4の横型撹拌反応器に、逐次、連続供給された。反応の間、各槽の平均滞留時間が60分になるように、液面レベルを制御し、また同時に副生するフェノールの留去も行った。第2竪型撹拌反応器〜4横型撹拌反応器のエステル交換反応条件は、それぞれ、第2竪型撹拌反応器(210℃、13300Pa)、第3竪型撹拌反応器(240℃、2000Pa)、第4横型撹拌反応器(270℃、67Pa)で、反応の進行とともに高温、高真空、低撹拌速度に条件を設定した。ポリカーボネート樹脂の製造速度は、50kg/Hrである。こうして得られたポリカーボネート樹脂の分子量Mvは、15500であった。
得られた溶融状態のポリカーボネート樹脂(ポリマー融液)を、ギヤポンプにて2軸押出機(L/D=42、バレル温度240℃)に導入し、p−トルエンスルホン酸ブチルを7ppm添加した後、ポリマーフィルターを具備する濾過装置を通して、ポリマー融液の濾過を行った後に、ポリカーボネート樹脂のペレット化を行った。
使用した濾過装置のポリマーフィルターには、リーフディスク型ポリマーフィルターを用いた。絶対濾過精度20μmの織金網製のリーフディスク(直径約18cm)10枚をセンターポストに装着したものを使用した。
ポリマー融液通液前に、濾過装置内部を300℃に昇温させ、その後、濾過装置内部を670Paまで真空ポンプで減圧させ、次いで、窒素を供給して大気圧まで復圧させた。 このような窒素置換をもう一度繰り返し行い、最終的に、濾過装置内部を670Paまで減圧させ、濾過装置を待機させた。
本状態で、濾過装置にポリマー融液を通液したところ、濾過装置出口に設置されたペレット化のためのダイプレートからの同伴ガス量は非常に少なく、ポリマーフィードを開始してから5分でガス切れ(ガス混入によるポリマー融液の途切れ)がなくなり、パージされるポリマー色相(プレートYI)は1.5で良好であり、その後すぐにペレット化開始でき製品ポリマーを得ることができた。
濾過工程において、窒素置換を行わず空気雰囲気下にて昇温、減圧を行った以外は、実施例1と同様に、濾過装置内部を670Paまで減圧させた後に、ポリマー融液の通液を開始した。その結果、ダイプレートからパージされるポリマー中のガス同伴は少なく、約5分でペレット化を開始することができたが、ペレット化開始直後の色相(プレートYI)は1.8であった。ポリマー色相は徐々に良好になり、濾過装置にポリマー融液通液を開始してから、約15分以降は色相不良のポリマーが発生することはなかった。
濾過工程において、濾過装置内部の窒素置換を行わず空気雰囲気のまま、かつ濾過装置内部の減圧を行わずに、他の条件は実施例1と同様に300℃に昇温後、ポリマー融液を通液させた。その結果、ダイプレートからパージされるポリマー中のガス同伴がなくなるまでに約30分の時間を要し、大量のポリマーロスが発生した。さらに、ペレット化開始直後のポリマー色相(プレートYI)は1.9であり、ポリマー色相が良好になったのは、ポリマーフィルターにポリマー融液通液を開始してから、約1時間後であった。
濾過工程において、濾過装置内部の窒素置換を行ったが、濾過装置内部の減圧を行わず大気圧の状態として、他の条件は実施例1と同様に300℃に昇温後、ポリマー融液の通液を開始した。その結果、ペレット化開始直後からポリマーの色相(プレートYI)は1.6であり、良好であったが、ダイプレートからパージされるポリマー中のガス同伴がなくなるまでに約30分の時間を要し、大量のポリマーロスが発生した。
2a,2b ケーシングヒーター
3a,3b 流路切換えバルブ
3c〜3f 開閉バルブ
4a,4b 真空ポンプ
5a,5b 窒素供給タンク
6a,6b 圧力計
7a,7b 温度計
Claims (5)
- ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのエステル交換反応によって生成するポリマー融液を、ポリマーフィルターを具備する濾過装置により濾過する工程を有するポリカーボネート樹脂の製造方法において、該濾過装置へのポリマー融液通液前に、該濾過装置内部を1.33kPa以下、かつ、250℃以上とした後にポリマー融液を通液することを特徴とするポリカーボネート樹脂の製造方法。
- 前記ポリマー融液通液前に、前記濾過装置内部が、不活性ガスで置換されていることを特徴とする請求項1に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
- 前記濾過装置が略垂直竪型に配置され、前記ポリマー融液が該濾過装置の下部より流入し、上部より流出することを特徴とする請求項1又は2に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
- 前記ポリマーフィルターが、キャンドルフィルターまたはリーフディスク型フィルターであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
- 前記濾過装置が、切り替え自在に複数設けられた濾過装置のうちの切り替える側の濾過装置であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
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