以下、本発明の実施形態を説明する。図1は本発明の第1実施形態に係るDC−DCコンバータの一例を示す回路構成図である。本発明の第1実施形態に係るDC−DCコンバータは、1次巻線と2次巻線とを有するトランスTrの1次巻線側に接続される第1回路11と、トランスTrの2次巻線側に接続される複数の第2回路12A、12Bと、トランスTrの2次巻線側の複数の第2回路12A、12Bの入力端に接続されるインダクタンス手段L2、L3と、第1回路11を制御する制御回路13と、第2回路12A、12Bをそれぞれ個別に制御する個別制御回路14A、14Bとを備えている。図1では、2個の第2回路12A、12Bの場合を示しているが、3個以上の場合であってもよい。以下の説明では、2個の第2回路12A、12Bの場合について説明する。
本発明の第1実施形態に係るDC−DCコンバータは、第1端子T1及び第2端子T2側から入力される直流電源Vinの直流電圧E1を第1回路11で交流に変換してトランスTrを介して第2回路12A、12Bに出力し、第2回路12A、12Bは、トランスTrを介して入力した交流をそれぞれ別々の直流電圧E2、E3に変換し、第3端子、第4端子へ電力を供給する。すなわち、第2回路12Aは、出力側の第3端子T31、第4端子T41へ電力を供給し、第2回路12Bは出力側の第3端子T32、第4端子T42へ電力を供給する。以下の説明では、第2回路12A、12BのトランスTrの2次巻線が同じである場合に第2回路12Aの出力電圧E2が第2回路12Bの出力電圧E3より大きい場合について説明する。
第1端子T1、第2端子T2には外付けされる電源からの電力が入力される。第1端子T1、第2端子T2の間にはコンデンサC1が接続され、このコンデンサC1で直流に含まれる交流成分を吸収する。また、第1端子T1、第2端子T2間には第1回路11が接続され、第1回路11は、上下アームがスイッチング素子S11、S12の第1レグ15と、上下アームがスイッチング素子S13、S14の第2レグ16とで構成したフルブリッジの回路となっている。
スイッチング素子S11〜S14は、スイッチ素子Q11〜Q14に逆並列ダイオードD11〜D14と並列コンデンサC11〜C14とをそれぞれ並列に接続して構成されている。逆並列ダイオードD11〜D14はスイッチング素子S11〜S14の内部ダイオードであり、並列コンデンサC11〜C14はスイッチング素子S11〜S14の寄生容量である。
本発明の第1実施形態においては、スイッチ素子Q11〜Q14に並列に接続された逆並列ダイオードD11〜D14は、スイッチング素子S11〜S14の内蔵ダイオードを用いてもよく、スイッチング素子S11〜S14とは別に外付けされたダイオードを用いてもよく、またはこれらの組み合わせであってもよい。同様に、スイッチ素子Q11〜Q14に並列に接続された並列コンデンサC11〜C14は、スイッチング素子S11〜S14の寄生容量を用いてもよく、スイッチング素子S11〜S14とは別に外付けされたコンデンサを用いてもよく、またはこれらの組み合わせであってもよい。
次に、制御回路13は、第1回路11の第1レグ15又は第2レグ16の上アームのスイッチング素子S11、S14と、第2レグ16又は第1レグ15の下アームのスイッチング素子S12、S13とを組にして交互にオンオフ制御し、第1端子T1と第2端子T2との間に入力される直流を交流に変換し、トランスTrを介して第2回路12A、12Bに出力する。例えば、第1レグ15の上アームのスイッチング素子S11と第2レグ16の下アームのスイッチング素子S14とを組にして、また、第1レグ15の下アームのスイッチング素子S12と第2レグ16の上アームのスイッチング素子S13とを組にして交互にオンオフさせる。そして、第1端子T1と第2端子T2との間に入力される直流を交流に変換し、第1回路11からトランスTrを介して第2回路12A、12Bに出力する。
また、この組となるスイッチング素子S11、S14(S12、S13)のうち、いずれか一方を先にオフさせる。これは、後にオフさせるスイッチング素子のオフ時にスイッチング素子に流れる電流を抑制し、オフ時のスイッチング損失を軽減するためである。また、トランスTrの励磁電流を調整して、後でオフさせるスイッチング素子がオンする前に、後でオフさせるスイッチング素子の印加電圧を0V近傍まで下げて、印加電圧が0VでオンさせるZVS(零電圧スイッチング)を実現するためである。
いま、組となるスイッチング素子S11、S14、及びスイッチング素子S12、S13のうち、スイッチング素子S13、S14を先にオフさせるものとする。その先にオフさせるスイッチング素子S13、S14にはそれぞれ並列に第1コンデンサC1a、第2コンデンサC1bが接続されている。これは、スイッチング素子S13、S14のオフ時のスイッチング損失を軽減するためである。すなわち、スイッチング素子S13、S14に並列接続のコンデンサ容量を大きくすることで、充放電動作によるスイッチング素子S13、S14の両端電圧上昇を緩やかにさせ、スイッチング素子S13、S14のオフ時のスイッチング損失を軽減するためである。また、スイッチング素子S13、S14のダイオードD13、D14が導通しているときに、スイッチング素子S13、S14をオンさせ、スイッチング素子S13、S14のZVSを実現するためである。
以上の説明では、組となるスイッチング素子S12、S13のうちの一方のスイッチング素子S13に第1コンデンサC1a、組となるスイッチング素子S11、S14のうちの他方のスイッチング素子S14に第2コンデンサC1bを接続する場合について説明したが、異なる組の上下アームのスイッチング素子S11、S13(S12、S14)のうちの一方のスイッチング素子に第1コンデンサC1aを接続し、他方のスイッチング素子に接続される第2コンデンサC1bを接続するようにしてもよい。
次に、第2回路12A(12B)は、前述したようにトランスTrを介して入力した交流をそれぞれ別々の直流電圧E2(E3)の直流に変換し、第3端子T31(T32)、第4端子T41(T42)へ電力を供給するものである。基本的には、4つの一方向性素子D21、D22、D23、D24(D31、D32、D33、D34)をブリッジ接続した整流回路の機能を有するが、本発明の第1実施形態では、4つの一方向性素子D21、D22、D23、D24(D31、D32、D33、D34)のうち、2つの一方向性素子D21、D22(D31、D32)にそれぞれ並列コンデンサC21、C22(C31、C32)及びスイッチ素子Q21、Q22(Q31、Q32)を並列に接続して直列接続された2つのスイッチング素子S21、S22(S31、S32)を形成している。
そして、直列接続された2つのスイッチング素子S21、S22(S31、S32)と、直列接続された2つの一方向性素子D23、D24(D33、D34)とを用いて第3端子T31(T32)及び第4端子T41(T42)の間にブリッジ接続回路を形成している。
すなわち、第2回路12A(12B)のブリッジ接続回路内で、一方向性素子D21、D22(D31、D32)が同じ極性で直列に接続される接続点側と、一方向性素子D23、D24(D33、D34)が同じ極性で直列に接続される他方の接続点側には、トランスTrの2次巻線が接続される。また、第3端子T31(T32)、第4端子T41(T42)の間にはコンデンサC2(C3)が接続され、交流成分が除去された直流電圧が第3端子T31(T32)、第4端子T41(T41)の間に出力される。
このように、第2回路12A(12B)は、直列接続された2つのスイッチング素子S21、S22(S31、S32)と、直列接続された2つの一方向性素子D23、D24(D33、D34)とを用いて第3端子T31(T32)及び第4端子T41(T42)の間にブリッジ接続回路を形成している。
また、直列接続された2つのスイッチング素子S21、S22(S31、S32)には、それぞれ並列に第3コンデンサC2a(C3a)と第4コンデンサC2b(C3b)が接続されている。これは、スイッチング素子S21、S22(S31、S32)のオフ時のスイッチング損失を軽減するためである。すなわち、スイッチング素子S21、S22(S31、S32)に並列接続のコンデンサ容量を大きくすることで、充放電動作によるスイッチング素子S21、S22(S31、S32)の両端電圧上昇を緩やかにさせ、スイッチング素子S21、S22(S31、S32)のオフ時のスイッチング損失を軽減するためである。また、スイッチング素子S21、S22(S31、S32)のダイオードD21、D22(D31、D32)が導通しているときに、スイッチング素子S21、S22(S31、S32)をオンさせ、スイッチング素子S21、S22(S31、S32)のZVSを実現するためである。
以上の説明では、4つの一方向性素子D21、D22、D23、D24(D31、D32、D33、D34)のうち、2つの一方向性素子D21、D22(D31、D32)にそれぞれ並列コンデンサC21、C22(C31、C32)及びスイッチ素子Q21、Q22(Q31、Q32)を並列に接続して直列接続された2つのスイッチング素子S21、S22(S31、S32)を形成した場合について説明したが、異なる組の上側の一方向性素子または異なる組の下側の一方向性素子にそれぞれ並列コンデンサ及びスイッチ素子を並列に接続して2つのスイッチング素子を形成するようにしてもよい。
第2回路12A(12B)の入力端にはインダクタンス手段L2(L3)が接続されている。このインダクタンス手段L2(L3)は、第2回路12A(12B)のブリッジ接続回路内で一方向性素子D21、D22(D31、D32)が同じ極性で直列に接続される接続点と、一方向性素子D23、D24(D33、D34)が同じ極性で直列に接続される他方の接続点との間に、トランスTrの2次巻線を介して接続されている。また、第2回路12A(12B)には、出力電圧を検出する出力電圧検出手段17A(17B)が設けられ、出力電圧検出手段17A(17B)は、第3端子T31(T32)及び第4端子T41(T42)間に出力される第2回路12A(12B)の出力電圧E2(E3)を検出し、個別制御回路14A(14B)に入力する。
個別制御回路14A(14B)は、自己の第2回路12A(12B)の第3端子T31(T32)及び第4端子T41(T42)の間から出力される電圧が自己の第2回路12A(12B)の負荷条件に応じた個別の目標値に近づくように、スイッチング素子S21、S22(S31、S32)をオンオフ制御する。この場合、個別制御回路14A(14B)は、第2回路12A(12B)を昇圧チョッパとして動作させ、出力電圧を個別の目標値になるように制御する。第1端子T1及び第2端子T2から入力されるエネルギーをインダクタンス手段L2、L3に蓄積させ、その蓄積量を調整して出力電圧を個別の目標値になるように制御する。
具体的には、第1回路11の組となるスイッチング素子S11、S14(S12、S13)の双方がオン状態にある期間に、第2回路12A(12B)の2つのスイッチング素子S21、S22(S31、S32)のスイッチ素子Q21、Q22(Q31、Q32)を交互に順方向に導通させ、第1端子T1及び第2端子T2から入力されるエネルギーをインダクタンス手段L2(L3)に蓄積させる。この場合、インダクタンス手段L2(L3)に蓄積させる蓄積量は、スイッチ素子Q21、Q22(Q31、Q32)の導通時間で調整する。そして、スイッチ素子Q21、Q22(Q31、Q32)は、第1回路11のスイッチング素子S11、S14(S12、S13)のいずれかがオフする前にオフさせる。
これにより、第2回路12A(12B)は、第1回路11から供給されるエネルギーにインダクタンス手段L2(L3)に蓄積されたエネルギーを加算して出力する。このように、第2回路12A(12B)の出力電圧は、個別制御回路14A(14B)により個別の直流電圧E2(E3)に制御される。
次に、本発明の第1実施形態に係るDC−DCコンバータの動作の一例について説明する。図2は、第1回路11のスイッチング素子S11〜S14のスイッチ素子Q11〜Q14、第2回路12Aのスイッチング素子S21、S22のスイッチ素子Q21、Q22、及び第2回路12Bのスイッチング素子S31、S32のスイッチ素子Q31、Q32の駆動信号の一例を示す波形図である。また、図3は、第1回路11のスイッチング素子S11〜S14の電圧、電流の一例を示す波形図、図4は、第2回路12Aのスイッチング素子S21、S22、第2回路12Bのスイッチング素子S31、S32の電圧、電流の一例を示す波形図である。
前述したように、本発明の第1実施形態では、第2回路12A(12B)を昇圧チョッパとして動作させ、第2回路12A(12B)の出力電圧を個別の目標値になるように制御する。以下の説明では、第1回路11のスイッチング素子S11〜S14、第2回路12A(12B)のスイッチング素子S21、S22(S31、S32)を順方向に流れる電流をプラスとし、逆方向に流れる電流をマイナスとしている。スイッチング素子S11〜S14、スイッチング素子S21、S22(S31、S32)に流れる電流は、スイッチ素子Q11〜Q14、スイッチ素子SQ1、Q22(Q31、Q32)を順方向に流れる電流、逆並列ダイオードD11〜D14、D21、D22(D31、D32)、及び並列コンデンサC11〜C14、C21、C22(C31、C32)を流れる電流である。
図2において、いま、時点t1で第1回路11の組となるスイッチング素子S12、S13にオン信号が与えられたとする。第2回路12Aのスイッチング素子S21のスイッチ素子Q21及び第2回路12Bのスイッチング素子S31のスイッチ素子Q31のオン信号は、時点t1以前に既に与えられているとする。そうすると、時点t1ではスイッチ素子Q12、Q13が導通し、スイッチ素子Q21、Q31は既に順方向に導通している。
図5及び図6は、本発明の第1実施形態に係るDC−DCコンバータの各タイミングで形成される回路図である。時点t1では、図5(a)の回路が形成される。すなわち、第1端子T1及び第2端子T2側から供給される入力電力によって、電流が第1端子T1側からスイッチ素子Q13、トランスTrの1次巻線、スイッチ素子Q12、第2端子T2に流れる。トランスTrの2次巻線側では、一方向性素子D23、第2回路12Aのスイッチ素子Q21、インダクタンス手段L2を通る回路が形成され、トランスTrの2次巻線側は短絡状態となり、インダクタンス手段L2にエネルギーが蓄積される。同様に、一方向性素子D33、第2回路12Bのスイッチ素子Q31、インダクタンス手段L3を通る回路が形成され、トランスTrの2次巻線側は短絡状態となり、インダクタンス手段L3にエネルギーが蓄積される。
そして、いま、図2〜図4に示す時点t11で、第2回路12Bの出力電圧検出手段17Bによって検出された第3端子T32、第4端子T42間の出力電圧E3が目標値になったとすると、個別制御回路14Bはそのタイミングで第2回路12Bのスイッチング素子S31のスイッチ素子Q31にオフ信号を与える。そうすると、インダクタンス手段L3へのエネルギーの蓄積を終了し、第1回路11からトランスTrを介して入力されるエネルギーに、インダクタンス手段L3に蓄積されたエネルギーを加算して、第2回路12Bの出力側に供給を開始する。
時点t11では、図4に示すように、第2回路12Bのスイッチング素子S31のスイッチ素子Q31に大きな電流が流れる状態でスイッチ素子Q31をオフさせることになるが、スイッチ素子Q31には、第4コンデンサC3aが並列に接続され、スイッチング素子S31の両端電圧上昇を緩やかにさせるので、スイッチング素子S31のスイッチ素子Q31のオフ時に発生するスイッチング損失を低減できる。
次に、時点t12で、第2回路12Aの出力電圧検出手段17Aによって検出された第3端子T31、第4端子T41間の出力電圧E2が目標値になったとすると、個別制御回路14Aはそのタイミングで第2回路12Aのスイッチング素子S21のスイッチ素子Q21にオフ信号を与える。そうすると、図5(b)の回路が形成される。インダクタンス手段L2へのエネルギーの蓄積を終了し、第1回路11からトランスTrを介して入力されるエネルギーに、インダクタンス手段L2に蓄積されたエネルギーを加算して、第2回路12Aの出力側に供給を開始する。
時点t12では、図4に示すように、第2回路12Aのスイッチング素子S21のスイッチ素子Q21に大きな電流が流れる状態でスイッチ素子Q21をオフさせることになるが、スイッチ素子Q21には、第3コンデンサC2aが並列に接続され、スイッチング素子S21の両端電圧上昇を緩やかにさせるので、スイッチング素子S21のスイッチ素子Q21のオフ時に発生するスイッチング損失を低減できる。
第1回路11の組となるスイッチ素子Q12、Q13が導通している状態で、時点t11で第2回路12Bのスイッチ素子Q31がオフし、時点t12で第2回路12Aのスイッチ素子Q21がオフすると、図5(b)に示すように、トランスTrの2次巻線側は短絡状態ではなくなる。従って、第1回路のスイッチ素子S12の電流、スイッチ素子S13の電流は、時点t12から減少し始める。
つまり、第2回路12Bでは、時点t11からインダクタンス手段L3、一方向性素子D33、第3端子T32、第4端子T42を介した負荷、一方向性素子D32、インダクタンス手段L3の回路が形成され、スイッチング素子S32には逆方向に電流が流れ始める。
同様に、第2回路12Aでは、時点t12からインダクタンス手段L2、一方向性素子D23、第3端子T31、第4端子T41を介した負荷、一方向性素子D22、インダクタンス手段L2の回路が形成され、スイッチング素子S22には逆方向に電流が流れ始める。
この状態で、図4に示す時点t13で、第2回路12Aのスイッチング素子S22に流れる電流が零となると、図5(c)に示す回路が形成される。なお、この時点t13では、第2回路12Bの一方向性素子D32には電流が継続して流れる。第2回路12Aのスイッチング素子S22に流れる電流は、時点t13以降は零となるが、スイッチング素子S32に流れる電流は、時点t13以降も一方向性素子D32には電流が継続して流れる。これは、前述したように、本発明の第1実施形態では、前述したように、第2回路12A、12BのトランスTrの2次巻線が同じである場合に第2回路12Bの出力電圧E3は第2回路12Aの出力電圧E2より小さい場合としており、第2回路12Bの出力電圧値E3が低いほどインダクタンス手段L3に流れる電流の傾きは緩やかになるからである。
この時点t12と時点t13との間において、スイッチング素子S32のスイッチ素子Q32及びスイッチング素子S22のスイッチ素子Q22にオン信号が与えられる。図2〜図4では、これらの時点の図示を省略している。なお、時点t12〜時点t13の間において、スイッチ素子Q32がオンしたときはスイッチング素子S32の逆並列ダイオードD32が導通している。同様に、スイッチ素子Q22がオンしたときはスイッチング素子S22の逆並列ダイオードD22が導通している。
次に、図4に示すように、第2回路12Bのスイッチング素子S32に流れる電流が零となる時点t21以前の時点t2で、第1回路11のスイッチング素子S13のスイッチ素子Q13がオフしたとすると、図5(d)に示す回路が形成される。すなわち、トランスTrの1次巻線、スイッチ素子Q12、スイッチング素子S14の逆並列ダイオードD14、トランスTrの1次巻線の回路が形成される。直流電源Vinからの直流電圧E1の印加がなくなるので、トランスTrの1次巻線の電圧はほぼ零となり、トランスTrの1次巻線の電圧が直流電圧E1から零に急に変化するので、トランスTrの2次側のインダクタンス手段L3の電流の傾きは大きくなる。インダクタンス手段L3の電流は第2回路12Bのスイッチング素子S32に流れる電流であり、図4に示すように、時点t2でスイッチング素子S32に流れる電流の傾きが大きくなる。
そして、図4に示す時点t21で、第2回路12Bのスイッチング素子S32に流れる電流が零となると、図6(e)に示す回路が形成される。すなわち、第1回路11に形成されているトランスTrの1次巻線、スイッチ素子Q12、スイッチング素子S14の逆並列ダイオードD14、トランスTrの1次巻線の回路に流れる電流は、スイッチング素子S12に流れる電流である。
時点t3で、第1回路11のスイッチング素子S12のスイッチ素子Q12がオフすると、図6(f)に示す回路が形成される。すなわち、図6(e)に示す回路に流れていた電流は、スイッチ素子Q12がオフしたことから、スイッチング素子S14の逆並列ダイオードD14、トランスTrの1次巻線、スイッチング素子S11の逆並列ダイオードD11に流れる。また、第2回路12Bでは、第2回路12Bに流れる電流は零となる。
次に、時点t4で、第1回路11の組となるスイッチング素子S11、S14にオン信号が与えられたとすると、図6(g)に示す回路が形成される。すなわち、第1端子T1及び第2端子T2側から供給される入力電力によって、電流が第1端子T1側からスイッチ素子Q11、トランスTrの1次巻線、スイッチ素子Q14、第2端子T2に流れる。トランスTrの2次巻線側では、インダクタンス手段L2、一方向性素子D24、第2回路12Aのスイッチ素子Q22を通る回路が形成され、トランスTrの2次巻線側は短絡状態となり、インダクタンス手段L2にエネルギーが蓄積される。同様に、インダクタンス手段L3、一方向性素子D34、第2回路12Bのスイッチ素子Q32を通る回路が形成され、トランスTrの2次巻線側は短絡状態となり、インダクタンス手段L3にエネルギーが蓄積される。
時点t4以降は、第1回路のスイッチング素子S13、S12のスイッチ素子Q13、Q12がスイッチング素子S11、S14スイッチ素子Q11、Q14に置き換わり、時点t1〜時点t3までと同様な動作となる。この場合、第2回路12Aのスイッチング素子S21(スイッチ素子Q21)がスイッチング素子S22(スイッチ素子Q22)に置き換わり、第2回路12Bのスイッチング素子S31(スイッチ素子Q31)がスイッチング素子S32(スイッチ素子Q32)に置き換わる。そこで、時点t4以降に各タイミングで形成される回路図は省略する。
ここで、時点t3でスイッチ素子Q12にオフ信号を与えてから、時点t4でスイッチ素子Q11、Q14にオン信号を与えるまで期間Td、すなわちスイッチ素子Q11(Q14)、Q12(Q13)を共にオフさせる期間Tdは、スイッチ素子Q12がオフしてからスイッチング素子S12のコンデンサC12の電圧が零になるまで放電させる時間とする。これにより、スイッチ素子Q12のZVSを実現させている。
次に、時点t41、t42は、組となるスイッチ素子Q11、Q14が導通している状態での第2回路12A(12B)のスイッチ素子Q32、Q22のオフのタイミングである。そして、時点t43で第2回路12Aのスイッチング素子S21に流れる電流が零となり、さらに、時点t5で、第1回路11の組となるスイッチ素子Q11、Q14のうちスイッチ素子Q14が先にオフする。
また、時点t6でスイッチ素子Q11が後でオフする。組となるスイッチ素子Q11、Q14のうち、スイッチ素子Q14を先にオフさせるのは、後にオフさせるスイッチ素子Q11のオフ時にスイッチ素子Q11に流れる電流を抑制し、オフ時のスイッチング損失を軽減するためである。また、トランスTrの励磁電流を調整して、後でオフさせるスイッチ素子Q11がオンする前に、後でオフさせるスイッチ素子Q11の印加電圧を0V近傍まで下げてZVSを実現するためである。そして、以下、時点t7から時点t1〜t6までの動作の繰り返しとなる。
本発明の第1実施形態によれば、複数ある第2回路(出力回路)のブリッジ接続回路の直列接続された2つの一方向性素子に、それぞれ並列コンデンサ及びスイッチ素子を並列に接続して、直列接続された2つのスイッチング素子を形成し、スイッチング素子のスイッチ素子をそれぞれ個別に制御するので、部品点数の増加を抑制して、複数の第2回路の出力電圧を個別に制御でき、それぞれの出力電圧を異なる値に可変できる。これにより、精度の高い任意の出力電圧を出力可能な多出力DC−DCコンバータを実現できる。
また、第1回路の組となるスイッチング素子のうち、いずれか一方を先にオフさせ、また、先にオフさせるスイッチング素子にコンデンサを接続し、第2回路12A(12B)のスイッチング素子にコンデンサを接続しているので、スイッチ素子のオン時にZVSができ、オフ時のスイッチング素子の両端電圧上昇を緩やかにしてオフ時のスイッチング損失を軽減できる。
以上の説明では、第1回路の組となるスイッチング素子のうち、いずれか一方を先にオフさせ、その先にオフさせるスイッチング素子にコンデンサを接続し、第2回路のスイッチング素子にもコンデンサを接続するようにしたが、図7に示すように、第2回路のスイッチング素子にはコンデンサを接続するが、第1回路の先にオフさせるスイッチング素子に接続されるコンデンサを省略し、さらに、第1回路の組となるスイッチング素子を同時にオンさせるようにしてもよい。
この場合は、スイッチ素子のオン時にZVSとすることができないことがあるが、ブリッジ接続回路の直列接続された2つの一方向性素子に、それぞれ並列コンデンサ及びスイッチ素子を並列に接続して、直列接続された2つのスイッチング素子を形成するので、これらのスイッチング素子のスイッチ素子をそれぞれ個別に制御できる。つまり、部品点数の増加を抑制しつつ、複数の第2回路の出力電圧を個別に制御でき、それぞれの出力電圧を異なる値に可変できる。従って、精度の高い任意の出力電圧を出力できる。
また、以上の説明では、第1回路の組となるスイッチング素子のうち、いずれか一方を先にオフさせ、その先にオフさせるスイッチング素子にコンデンサを接続し、第2回路のスイッチング素子にもコンデンサを接続するようにしたが、図8に示すように、第2回路のスイッチング素子に接続されるコンデンサを省略し、第1回路の先にオフさせるスイッチング素子に接続されるコンデンサも省略し、さらに、第1回路の組となるスイッチング素子を同時にオンさせるようにしてもよい。
この場合は、スイッチ素子のオン時にZVSとすることができないことがある。また、オフ時のスイッチング素子の両端電圧上昇を緩やかにしてオフ時のスイッチング損失を軽減できないことがあるが、ブリッジ接続回路の直列接続された2つの一方向性素子に、それぞれ並列コンデンサ及びスイッチ素子を並列に接続して、直列接続された2つのスイッチング素子を形成するので、これらのスイッチング素子のスイッチ素子をそれぞれ個別に制御できる。つまり、部品点数の増加を抑制しつつ、複数の第2回路の出力電圧を個別に制御でき、それぞれの出力電圧を異なる値に可変できる。従って、精度の高い任意の出力電圧を出力できる。
ここで、個別制御回路12A(12B)は、第1端子T1及び第2端子T2から入力されるエネルギーをインダクタンス手段L2(L3)に蓄積させ、第2回路12A、12Bの出力電圧E2、E3を目標値に制御する。一方、第2回路12A、12Bの出力電圧E2、E3が目標値であるときは、第1端子T1及び第2端子T2から入力されるエネルギーをインダクタンス手段L2(L3)に蓄積させない。この場合、第1端子T1及び第2端子T2から入力されるエネルギーをインダクタンス手段L2(L3)に蓄積させないように制御しても、出力電流が零にならないことがある。この場合について、以下説明する。
図9は、第1端子T1及び第2端子T2から入力されるエネルギーをインダクタンス手段L2(L3)に蓄積させない場合の主要なスイッチング素子のスイッチ素子の駆動信号の一例を示す波形図である。図9では、図2に示した一例に対し、スイッチング素子S31のスイッチ素子Q31、スイッチング素子S32のスイッチ素子Q32に、オン信号を与えていない点で相違する。
図10及び図11は、図9の場合の各タイミングで形成される回路図である。時点t1で、第1回路11の組となるスイッチング素子S12、S13にオン信号が与えられたとすると、図10(a)の回路が形成される。すなわち、第1回路11では、第1端子T1及び第2端子T2側から供給される入力電力によって、電流が第1端子T1側からスイッチ素子Q13、トランスTrの1次巻線、スイッチ素子Q12、第2端子T2に流れる回路が形成される。また、第2回路12Aでは、第2回路12Aのスイッチ素子Q21がオンしていることから、一方向性素子D23、第2回路12Aのスイッチ素子Q21、インダクタンス手段L2を通る回路が形成され、トランスTrの2次巻線側は短絡状態となり、インダクタンス手段L2にエネルギーが蓄積される。
一方、第2回路12Bでは、スイッチ素子Q31はオフであるが、インダクタンス手段L3、一方向性素子D33、スイッチング素子S31の並列コンデンサC31、第3コンデンサC3aを通る回路が形成されるとともに、インダクタンス手段L3、一方向性素子D33、第3端子T32、第4端子T42を介した負荷、スイッチング素子S32の並列コンデンサC32、第4コンデンサC3bの回路が形成されることがある。これは、インダクタンス手段L3、コンデンサC31、C3a、C32、C3bの共振による。
このように、スイッチ素子Q31がオフであるにもかかわらず、負荷に電流を供給する回路が形成される場合には、第1端子T1及び第2端子T2から入力されるエネルギーをインダクタンス手段L3に蓄積させないように制御しても、出力電流が零にならない状態となる。なお、第2回路12Bに形成される回路により、並列コンデンサC31、第3コンデンサC3a、並列コンデンサC32、第4コンデンサC3bの充放電が行われる。
時点txで、並列コンデンサC31、第3コンデンサC3a、並列コンデンサC32、第4コンデンサC3bの充放電が完了すると、スイッチング素子S32の逆並列ダイオードD32が導通し、図10(b)に示すように、第2回路12Bでは、一方向性素子D33、第3端子T32、第4端子T42を介した負荷、一方向性素子D32、インダクタンス手段L3の回路が形成される。これにより、スイッチ素子Q31がオフであるにもかかわらず、負荷に電流を供給する状態が継続する。
次に、時点t12で、第2回路12Aのスイッチング素子S21のスイッチ素子Q21がオフすると、図10(c)に示すように、第2回路12Aでは、一方向性素子D23、第3端子T31、第4端子T41を介した負荷、一方向性素子D22、インダクタンス手段L2の回路が形成され、インダクタンス手段L2へのエネルギーの蓄積を終了し、第1回路11からトランスTrを介して入力されるエネルギーに、インダクタンス手段L2に蓄積されたエネルギーを加算して、第2回路12Aの出力側に供給を開始する。
時点t13で、第2回路12Aのスイッチング素子S22及び第2回路12Bのスイッチング素子S32に流れる電流が零となると、図10(d)に示す回路が形成される。この状態では、第1回路のスイッチング素子S13のスイッチ素子Q13及び第1回路のスイッチング素子S12のスイッチ素子Q12に流れる電流は、トランスTrの励磁電流である。
時点t12と時点t13との間において、スイッチング素子S22のスイッチ素子Q22にオン信号が与えられる。図9では、この時点の図示を省略している。なお、スイッチ素子Q22にオン信号は、電流がスイッチング素子S22の逆方向、すなわち逆並列ダイオードD22が導通する方向に流れているときに与える。
時点t2で、第1回路11のスイッチング素子S13のスイッチ素子Q13がオフしたとすると、図11(e)に示すように、トランスTrの1次巻線、スイッチ素子Q12、スイッチング素子S14の逆並列ダイオードD14、トランスTrの1次巻線の回路が形成される。
そして、時点t3で、第1回路11のスイッチング素子S12のスイッチ素子Q12がオフすると、図11(f)に示す回路が形成される。すなわち、図11(e)に示す回路に流れていた電流は、スイッチ素子Q12がオフしたことから、スイッチング素子S14の逆並列ダイオードD14、トランスTrの1次巻線、スイッチング素子S11の逆並列ダイオードD11に流れることから、第2端子T2、スイッチング素子S14の逆並列ダイオードD14、トランスTrの1次巻線、スイッチング素子S11の逆並列ダイオードD11、第1端子T1の回路が形成される。
次に、時点t4で、第1回路11の組となるスイッチング素子S11、S14にオン信号が与えられたとすると、図11(g)に示す回路が形成される。すなわち、第1回路11では、第1端子T1及び第2端子T2側から供給される入力電力によって、電流が第1端子T1側からスイッチ素子Q11、トランスTrの1次巻線、スイッチ素子Q14、第2端子T2に流れる回路が形成される。また、第2回路12Aでは、第2回路12Aのスイッチ素子Q22がオンしていることから、インダクタンス手段L2、第2回路12Aのスイッチ素子Q22、一方向性素子D24を通る回路が形成され、トランスTrの2次巻線側は短絡状態となり、インダクタンス手段L2にエネルギーが蓄積される。
一方、第2回路12Bでは、スイッチ素子Q32はオフであるが、インダクタンス手段L3、スイッチング素子S32の並列コンデンサC32、第4コンデンサC3b、一方向性素子D34を通る回路が形成されるとともに、インダクタンス手段L3、スイッチング素子S31の逆並列ダイオードD31、第3端子T32、第4端子T42を介した負荷、一方向性素子D34の回路が形成される。これは、インダクタンス手段L3、コンデンサC31、C3a、C32、C3bの共振による。
このように、スイッチ素子Q32がオフであるにもかかわらず、負荷に電流を供給する回路が形成される場合には、第1端子T1及び第2端子T2から入力されるエネルギーをインダクタンス手段L3に蓄積させないように制御しても、出力電流が零にならない状態となる。 時点t4以降は、第1回路のスイッチング素子S12(スイッチ素子Q12)、スイッチング素子S13(スイッチ素子Q13)がスイッチング素子S11(スイッチ素子Q11)、スイッチング素子S14(スイッチ素子Q14)に置き換わり、時点t1〜時点t3までと同様な動作となる。この場合、第2回路12Aのスイッチング素子S21(スイッチ素子Q21)がスイッチング素子S22(スイッチ素子Q22)に置き換わり、第2回路12Bのスイッチング素子S31がスイッチング素子S32に置き換わる。
図9中の時点t42は、第2回路12Aのスイッチ素子Q22のオフのタイミング、t5は組となるスイッチ素子Q11、Q14のうちスイッチ素子Q14のオフのタイミング、t6は組となるスイッチ素子Q11、Q14のうちスイッチ素子Q11のオフのタイミング、t7は組となるスイッチ素子Q13、Q12のオンのタイミングである。
以上の説明では、第1端子T1及び第2端子T2から入力されるエネルギーをインダクタンス手段L3に蓄積させないように制御した場合について説明したが、インダクタンス手段L2に蓄積させないように制御する場合も同様に、出力電流が零にならないことがある。そこで、個別制御回路12A(12B)は、第2回路12A(12B)の出力電流を第3端子T3及び第4端子T4からの逆流で相殺し出力電流を零とするように制御する本発明の第2実施形態を説明する。
図12は本発明の第2実施形態に係るDC−DCコンバータの一例を示す回路構成図である。この第2実施形態に係るDC−DCコンバータは、図1に示した第1実施形態に対し、第2回路12A、12Bは、一方の直列接続された2つの一方向性素子だけでなく、もう一方の直列接続された2つの一方向性素子D23、D24(D33、D34)にそれぞれ並列コンデンサC23、C24(C33、C34)及びスイッチ素子Q23、Q24(Q33、Q34)を並列に接続して、第3レグ18A(18B)と第4レグ19A(19B)とを形成したものである。第3レグ18A(18B)は、上下アームがスイッチング素子S21、S22(S31、S32)であり、第4レグ18A、18B(19A、19B)は上下アームがスイッチング素子S23、S24(S23、S24)である。その他の構成は、図1と同様であるので、同一要素には同一符号を付し、同一動作についても重複する説明は省略する。
個別制御回路12A(12B)は、第1端子T1及び第2端子T2から入力されるエネルギーをインダクタンス手段L2(L3)に蓄積させないことで、第2回路12A、12Bの出力電流を零に絞る。エネルギーをインダクタンス手段L2(L3)に蓄積させないように制御しても、出力電流が零にならないことがある。そこで、個別制御回路12A(12B)は、第2回路12A(12B)の出力電流を第3端子T31及び第4端子T41からの逆流で相殺し出力電流を零とする。
すなわち、第1回路11の組となるスイッチング素子S11、S14(S12、S13)の双方がオン状態にある期間に第1端子T1及び第2端子T2から入力されるエネルギーをインダクタンス手段L2(L3)に蓄積させないとき(出力電流を零に絞ったとき)は、第1回路の組となるスイッチング素子S11、S14(S12、S13)の双方がオン状態である期間以外の期間に、第2回路の第3レグの2つのスイッチング素子S22、S32(S21、S31)のスイッチ素子を交互に順方向に導通させるとともに、第2回路12A(12B)の第3レグ18A(18B)の上アームのスイッチング素子S21(S31)と第4レグ19A(19B)の下アームのスイッチング素子S24(S34)とを組にして、または、第4レグ19A(19B)の上アームのスイッチング素子S23(S33)と、第3レグ18A(18B)の下アームのスイッチング素子S22(S32)とを組にして、交互にオンオフさせる。
これにより、第2回路12A(12B)が整流回路を形成しているときに、出力側の第3端子T3及び第4端子T4から逆流を取り込めるようにし、第2回路12A(12B)の出力電流を第3端子T3及び第4端子T4からの逆流で相殺し出力電流を零とする。
次に、本発明の第2実施形態に係るDC−DCコンバータの動作の一例について説明する。図13は、第1回路11のスイッチング素子S11〜S14のスイッチ素子Q11〜Q14、第2回路12Aのスイッチング素子S21、S22のスイッチ素子Q21、Q22、及び第2回路12Bのスイッチング素子S31〜S34のスイッチ素子Q31〜Q34の駆動信号の一例を示す波形図である。
図13では、図2に示した第1実施形態に対し、第1回路の組となるスイッチング素子S12、S13の双方がオン状態である期間以外の期間に、第2回路の第3レグの2つのスイッチング素子S22、S32のスイッチ素子を交互に順方向に導通させるとともに、第2回路12Bの第3レグ18Bの上アームのスイッチング素子S31と第4レグ19Bの下アームのスイッチング素子S34とを組にして、または、第4レグ19Bの上アームのスイッチング素子S33と、第3レグ18Bの下アームのスイッチング素子S32とを組にして、交互にオンオフさせるようにした点で相違する。図14及び図15は、図13の場合の各タイミングで形成される回路図である。
第1実施形態の場合と同様に、本発明の第2実施形態においても、第2回路12A(12B)を昇圧チョッパとして動作させ、第2回路12A(12B)の出力電圧を個別の目標値になるように制御する。その場合、出力電流を零に絞るには、昇圧チョッパとして動作させない。つまり、第1端子T1及び第2端子T2から入力されるエネルギーをインダクタンス手段L2(L3)に蓄積させないようにする。昇圧チョッパとして動作させないとき(出力電流を零に絞ったとき)であっても、前述したように出力電流が零にならないことがある。
そこで、第2実施形態では、個別制御回路12A(12B)は、第2回路12A(12B)の第3レグ18A(18B)の上アームのスイッチング素子S21(S31)と第4レグ19A(19B)の下アームのスイッチング素子S24(S34)とを組にして、または、第4レグ19A(19B)の上アームのスイッチング素子S23(S33)と、第3レグ18A(18B)の下アームのスイッチング素子S22(S32)とを組にして、交互にオンオフさせ、第2回路12A(12B)の出力電流を第3端子T3及び第4端子T4からの逆流で相殺し出力電流を零とする。以下の説明では、第2回路12Aは昇圧チョッパとして動作させ、第2回路12Bは昇圧チョッパとして動作させない場合について説明する。
図13において、いま、時点t1で、第1回路11の組となるスイッチング素子S12、S13にオン信号が与えられたとすると、図14(a)に示すように、第1回路11では、第1端子T1及び第2端子T2側から供給される入力電力によって、電流が第1端子T1側からスイッチ素子Q13、トランスTrの1次巻線、スイッチ素子Q12、第2端子T2に流れる回路が形成される。
また、第2回路12Aのスイッチ素子Q21には時点t1以前にオン信号が与えられオン状態を継続している。これは、昇圧チョッパとして動作させてインダクタンス手段L2にエネルギーを蓄積するためである。従って、第2回路12Aでは、スイッチング素子S23の逆並列ダイオードD23、スイッチ素子Q21、インダクタンス手段L2の閉回路(D23→Q21→L2)が形成され、スイッチ素子Q21がオフする時点t12までインダクタンス手段L2にエネルギーが蓄積される。
一方、第2回路12Bのスイッチング素子S32のスイッチ素子Q32は時点t1でオフしている。これは、昇圧チョッパとして動作させずインダクタンス手段L3にエネルギーを蓄積させないためである。従って、第2回路12Bでは、インダクタンス手段L3、スイッチング素子S33の逆並列ダイオードD33、第3端子T32、第4端子T42を介した負荷、スイッチング素子S32の並列コンデンサC32、第4コンデンサC3bの回路が形成される。そして、スイッチング素子S32の並列コンデンサC32、第4コンデンサC3bの充放電後には逆並列ダイオードD32が導通する。
そして、時点tyで、インダクタンス手段L3にエネルギーを蓄積させる際に、第1回路の組となるスイッチング素子S12、S13に対応する第2回路2Bのスイッチング素子S31、S34とは、反対の組の第2回路2Bのスイッチング素子S32、S33に対しオン信号を与える。すなわち、第1回路の組となるスイッチング素子S12、S13の反対の組のスイッチング素子S11、S14の双方がオン状態である期間以外の期間内の時点tyで、第2回路2Bの組となるスイッチング素子S32のスイッチ素子Q32及びスイッチング素子S33のスイッチ素子Q33にオン信号を与える。これにより、スイッチ素子Q32及びスイッチ素子Q33は順方向に導通可能状態となり、第3端子T32及び第4端子T42から逆流を取り込める状態となる。
時点t12でスイッチング素子S21のスイッチ素子Q21がオフし、さらに、スイッチング素子S21の並列コンデンサC21、第3コンデンサC2aの充放電して逆並列ダイオードD23が導通すると、図14(b)に示す回路が形成される。第2回路2Aでは、インダクタンス手段L2、スイッチング素子S23の逆並列ダイオードD23、第3端子T32、第4端子T42を介した負荷、スイッチング素子S22の逆並列ダイオードD22の回路が形成され、負荷に電流を供給する。第2回路2Bでは、スイッチ素子Q32及びスイッチ素子Q33はオン信号により順方向に導通可能状態となっているが、インダクタンス手段L3からの電流が流れるので、インダクタンス手段L3、スイッチング素子S33の逆並列ダイオードD33、第3端子T32、第4端子T42を介した負荷、スイッチング素子S32の逆並列ダイオードD32の回路が形成される。これにより、第3端子T32及び第4端子T42から逆流を取り込み第2回路12Bの出力電流を相殺できるようにする。
次に、図13に示す時点tzでインダクタンス手段L3に流れる電流が零となると、スイッチ素子Q32及びスイッチ素子Q33が順方向に導通し、図14(c)に示す回路が形成される。第3端子T32及び第4端子T42から逆流を取り込む状態となる。時点t13で、第2回路12Aのスイッチング素子S22に流れる電流が零となると、図14(d)に示す回路が形成される。
そして、図13に示す時点t14でスイッチ素子Q33をオフする。ここで、スイッチ素子Q33をオフするタイミングの決め方は、通常のPWM制御と同様に、以下のように行う。第3端子T32、第4端子T42に接続される出力負荷が無負荷であり、第3端子T32、第4端子T42に出力される平均電流が正であると、コンデンサC3(負荷)に流れると電圧が上昇する。そうすると、出力電圧(コンデンサC3の電圧)を所定の目標電圧E3に下げるべく、スイッチ素子Q33のオン時間を広げ(オフするタイミングを遅らせて)、一方向性素子D33の逆方向(スイッチ素子Q33の順方向)に電流が流れるようにする。つまり、第3端子T32及び第4端子T42からの逆流で相殺し出力電流を零とする。
一方、それとは逆に、第3端子T32、第4端子T42に出力される平均電流がコンデンサC3から流れ出していると電圧が低下する。そうすると、所定の目標電圧に上げるべく、スイッチ素子Q33のオン時間を狭め(オフするタイミングを早めて)、第3端子T32及び第4端子T42から逆流する電流を減らす。そうして、出力電流の平均が零となるところで、スイッチ素子Q33のパルス幅が安定する。
次に、時点t14でスイッチ素子Q33をオフし、時点t2で第1回路11のスイッチング素子S13のスイッチ素子Q13がオフすると、図15(e)に示す回路が形成される。第1回路11では、トランスTrの1次巻線、スイッチ素子Q12、スイッチング素子S14の逆並列ダイオードD14、トランスTrの1次巻線の回路が形成される。直流電源Vinからの直流電圧E1の印加がなくなるので、トランスTrの1次巻線の電圧はほぼ零となる。第2回路2Bでは、スイッチング素子S33のスイッチ素子Q33がオフしたことに伴い、インダクタンス手段L3、スイッチング素子S33のスイッチ素子Q32、スイッチング素子S33の逆並列ダイオードD34の回路が形成される。
時点t3で、第1回路11のスイッチング素子S12のスイッチ素子Q12がオフすると、図15(f)に示す回路が形成される。すなわち、図15(e)に示す回路に流れていた電流は、スイッチ素子Q12がオフしたことから、スイッチング素子S14の逆並列ダイオードD14、トランスTrの1次巻線、スイッチング素子S11の逆並列ダイオードD11に流れる。つまり、第2端子T2、スイッチング素子S14の逆並列ダイオードD14、トランスTrの1次巻線、スイッチング素子S11の逆並列ダイオードD11、第1端子T1の回路が形成される。また、第2回路2Bでは、トランスTrの1次巻線の電圧はほぼ零となるので、第2回路2Bに流れる電流は零となる。
次に、時点t4で、第1回路11の組となるスイッチング素子S11、S14にオン信号が与えられたとすると、図15(g)に示す回路が形成される。すなわち、第1端子T1及び第2端子T2側から供給される入力電力によって、電流が第1端子T1側からスイッチ素子Q11、トランスTrの1次巻線、スイッチ素子Q14、第2端子T2に流れる。トランスTrの2次巻線側では、インダクタンス手段L2、スイッチング素子S24の逆並列ダイオードD24を通る回路が形成され、トランスTrの2次巻線側は短絡状態となり、インダクタンス手段L2にエネルギーが蓄積される。同様に、インダクタンス手段L3、スイッチング素子S24の逆並列ダイオードD24を通る回路が形成され、トランスTrの2次巻線側は短絡状態となり、インダクタンス手段L3にエネルギーが蓄積される。
時点t4以降は、第1回路のスイッチング素子S12(スイッチ素子Q12)、スイッチング素子S13(スイッチ素子Q13)がスイッチング素子S11(スイッチ素子Q11)、スイッチング素子S14(スイッチ素子Q14)に置き換わり、時点t1〜時点t3までと同様な動作となるので説明は省略する。さらに、時点t5で、第1回路11の組となるスイッチ素子Q11、Q14のうちスイッチ素子Q14が先にオフし、時点t6でスイッチ素子Q11が後でオフする。以下、時点t7から時点t1〜t6までの動作の繰り返しとなる。
このように、第2実施形態では、エネルギーをインダクタンス手段L2(L3)に蓄積させないとき(出力電流を零に絞ったとき)の第2回路12Bの出力電流を第3端子T3及び第4端子T4からの逆流で相殺し出力電流を零とするので、出力電流を零に調整できる。
以上の第2実施形態についての説明では、第1回路の組となるスイッチング素子のうち、いずれか一方を先にオフさせ、その先にオフさせるスイッチング素子にコンデンサを接続し、第2回路のスイッチング素子にもコンデンサを接続するようにしたが、第1実施形態と同様に、図16に示すように、第2回路のスイッチング素子にはコンデンサを接続するが、第1回路の先にオフさせるスイッチング素子に接続されるコンデンサを省略し、さらに、第1回路の組となるスイッチング素子を同時にオンさせるようにしてもよい。
この場合は、スイッチ素子のオン時にZVSとすることができないことがあるが、ブリッジ接続回路の直列接続された2つの一方向性素子に、それぞれ並列コンデンサ及びスイッチ素子を並列に接続して、直列接続された2つのスイッチング素子を形成するので、これらのスイッチング素子のスイッチ素子をそれぞれ個別に制御できる。つまり、部品点数の増加を抑制しつつ、複数の第2回路の出力電圧を個別に制御でき、それぞれの出力電圧を異なる値に可変できる。従って、精度の高い任意の出力電圧を出力できる。
また、以上の第2実施形態についての説明では、第1回路の組となるスイッチング素子のうち、いずれか一方を先にオフさせ、その先にオフさせるスイッチング素子にコンデンサを接続し、第2回路のスイッチング素子にもコンデンサを接続するようにしたが、第1実施形態と同様に、図17に示すように、第2回路のスイッチング素子に接続されるコンデンサを省略し、第1回路の先にオフさせるスイッチング素子に接続されるコンデンサも省略し、さらに、第1回路の組となるスイッチング素子を同時にオンさせるようにしてもよい。
この場合は、スイッチ素子のオン時にZVSとすることができないことがある。また、オフ時のスイッチング素子の両端電圧上昇を緩やかにしてオフ時のスイッチング損失を軽減できないことがあるが、ブリッジ接続回路の直列接続された2つの一方向性素子に、それぞれ並列コンデンサ及びスイッチ素子を並列に接続して、直列接続された2つのスイッチング素子を形成するので、これらのスイッチング素子のスイッチ素子をそれぞれ個別に制御できる。つまり、部品点数の増加を抑制しつつ、複数の第2回路の出力電圧を個別に制御でき、それぞれの出力電圧を異なる値に可変できる。従って、精度の高い任意の出力電圧を出力できる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。