JP6050714B2 - エンジンのノッキング制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、エンジンのノッキング制御装置に関する。
エンジン(内燃機関)により駆動される車両では、発進時、又は低速からの加速時等に、アクセルペダルを大きく踏み込むと、ノッキング(所謂低速ノック)を生じることがある。一方、近年、エンジンの熱効率向上(すなわち燃費改善)の観点から圧縮比の高圧縮比化が進んでいる。また、燃料価格の上昇に対処するために、高オクタン価燃料よりも価格の安い低オクタン価燃料の使用が増える傾向にある。すなわち、エンジンにとっては、ノッキングが厳しくなる傾向にある。
ここで、特許文献1には、車両の発進時又は加速時に、エンジンの吸入空気温度を検出し、検出した吸入空気温度が高くなるにしたがって、吸入空気温度が低い場合の開度変化率と比較して開度変化率がより緩慢になるようにスロットルバルブを制御する技術(電子スロットルバルブの制御方法)が開示されている。
特開2002−195078号公報
特許文献1に記載の技術によれば、上述したように、吸入空気温度が高くなるほどスロットルバルブの開度変化率がより緩慢にされるため、吸入空気温度が高い場合にノッキングが発生することを抑制することができる。ところで、吸入空気温度の上昇要因は様々に異なることが有り得るため、吸入空気温度が同じであっても、例えばエンジンの温度状態等によってノッキングの発生し易さが異なることがあり得る。例えば、エンジンが高負荷運転状態から停止(アイドリングストップを含む)されたとき(所謂デッドソーク時)にはエンジンの温度が急上昇し、エンジンルーム内の空気温度も上昇する。そのような高温状態でエンジンが再始動されてアクセルペダルが踏み込まれた場合には、他の要因で単に吸入空気温度のみが上昇したときよりもノッキングが発生し易くなると考えられる。
ここで、特許文献1に記載の技術によれば、吸入空気温度が高くなるにしたがってスロットルバルブの開度変化率が緩慢にされるものの、エンジンの温度等は考慮されていないため、例えば上述したデッドソーク直後の発進時等においては、ノッキングを完全に防ぐことができないおそれがある。
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、エンジンの温度状態を考慮して、ノッキングをより確実に回避することが可能なエンジンのノッキング制御装置を提供することを目的とする。
本発明に係るエンジンのノッキング制御装置は、車両の速度を検出する車速検出手段と、車速検出手段により検出された車両の速度が所定速度以下である状態が継続している継続時間を計時する計時手段と、アクセルペダルの操作量を検出する開度検出手段と、開度検出手段により検出されたアクセルペダルの操作量に基づいてスロットルバルブの開度を制御することにより、エンジンの吸入空気量を調節する制御手段とを備え、制御手段が、計時手段により計時された継続時間が所定のしきい値以上の場合に、アクセルペダルの操作量の変化に対するスロットルバルブの開度変化率が緩慢になるように、該スロットルバルブの開度を制御することを特徴とする。
低車速状態(停車状態を含む)が継続すると、エンジン温度及びエンジンに吸入される空気の温度が上昇し、ノッキングが発生しやすくなると推定される。本発明に係るエンジンのノッキング制御装置によれば、低車速状態の継続時間が所定のしきい値以上になった場合に、ノッキングが生じる程度にエンジン温度及び吸入空気温度が上昇すると推定され、アクセルペダルの操作量の変化に対するスロットルバルブの開度変化率が緩慢にされる。そのため、吸入空気量の増大が抑制され、燃焼室内の圧力が低減されることにより、ノッキングが回避される。その結果、エンジンの温度状態を考慮して、ノッキングをより確実に回避することが可能となる。
本発明に係るエンジンのノッキング制御装置は、外気の温度を検出する外気温検出手段を備え、制御手段が、外気温検出手段により検出された外気の温度が高くなるほど、所定のしきい値が短くなるように可変設定することが好ましい。
外気温度が上昇するほど、吸気温度が上昇し、ノッキングが発生しやすくなると推定される。この場合、外気温度が高くなるに従って、上記所定のしきい値が短く設定される。そのため、外気温度が高くなるほど、低車速状態の継続時間が短くてもスロットルバルブが緩やかに開弁されることとなる。よって、ノッキングを適切に回避することが可能となる。
本発明に係るエンジンのノッキング制御装置では、制御手段が、外気の温度が同一の場合には、継続時間が長くなるほど、アクセルペダルの操作量の変化に対するスロットルバルブの開度変化率がより緩慢になるように、該スロットルバルブの開度を制御することが好ましい。
低車速状態(停車状態を含む)の継続時間が長くなるほど、エンジン温度及び吸入空気温度がより上昇し、ノッキングが発生しやすくなると推定される。この場合、外気の温度が同一の場合には、継続時間が長くなるほど、スロットルバルブの開度変化率がより緩慢にされる。よって、ノッキングをより確実に回避することが可能となる。
本発明に係るエンジンのノッキング制御装置は、エンジンの冷却水の温度を検出する水温検出手段と、アクセルペダルの操作量を検出する開度検出手段と、開度検出手段により検出されたアクセルペダルの操作量に基づいてスロットルバルブの開度を制御することにより、エンジンの吸入空気量を調節する制御手段とを備え、制御手段が、水温検出手段により検出されたエンジン始動時の冷却水の温度が所定のしきい値以上の場合に、アクセルペダルの操作量の変化に対するスロットルバルブの開度変化率が緩慢になるように、該スロットルバルブの開度を制御することを特徴とする。
エンジン始動時に、冷却水の温度が高い場合(冷却水温度と外気温度との偏差が大きい場合)には、十分にソークされておらず、すなわちエンジン温度及び吸入空気温度が高く、ノッキングが発生しやすい状態であると推定することができる。本発明に係るエンジンのノッキング制御装置によれば、始動時水温が所定のしきい値以上の場合に、ノッキングが生じやすいと推定され、アクセルペダルの操作量の変化に対するスロットルバルブの開度変化率が緩慢にされる。そのため、吸入空気量の増大が抑制され、燃焼室内の圧力が低減されることにより、ノッキングが回避される。その結果、エンジンの温度状態を考慮して、ノッキングをより確実に回避することが可能となる。
本発明に係るエンジンのノッキング制御装置は、外気の温度を検出する外気温検出手段を備え、制御手段が、外気温検出手段により検出された外気の温度が高くなるほど、所定のしきい値が低くなるように可変設定することが好ましい。
外気温度が上昇するほど、吸気温度が上昇し、ノッキングが発生しやすくなると推定される。この場合、外気温度が高くなるに従って、上記所定のしきい値が低く設定される。そのため、外気温度が高くなるほど、始動時の冷却水温度が低くてもスロットルバルブが緩やかに開弁されることとなる。よって、ノッキングを適切に回避することが可能となる。
本発明に係るエンジンのノッキング制御装置では、制御手段が、外気の温度が同一の場合には、冷却水の温度が高くなるほど、アクセルペダルの操作量の変化に対するスロットルバルブの開度変化率がより緩慢になるように、該スロットルバルブの開度を制御することが好ましい。
始動時の冷却水温度が高いほど、ソークが十分にされておらす、ノッキングが発生しやすくなると推定される。この場合、外気温度が同一の場合には、始動時の冷却水温度が高いほど、スロットルバルブの開度変化率がより緩慢にされる。よって、ノッキングをより確実に回避することが可能となる。
本発明によれば、エンジンの温度状態を考慮して、ノッキングをより確実に回避することが可能となる。
実施形態に係るエンジンのノッキング制御装置が適用されたエンジンの構成を示す図である。 始動時用の反映率マップの例を示す図である。 低車速継続時用の反映率マップの例を示す図である。 発進時のアクセル開度、通常時のスロットル開度、及び、ノッキング回避時のスロットル開度の変化を示すタイミングチャートである。 実施形態に係るエンジンのノッキング制御装置によるノッキング回避処理の処理手順を示すフローチャートである。
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
まず、図1を用いて、実施形態に係るノッキング制御装置が適用されたエンジン10の構成について説明する。図1は、ノッキング制御装置が適用されたエンジン10の構成を示す図である。
エンジン10は、例えば水平対向型の4気筒ガソリンエンジンである。エンジン10では、エアクリーナ16から吸入された空気が、吸気管15に設けられた電子制御式スロットルバルブ(以下、単に「スロットル」ともいう)13により絞られ、インテークマニホールド11を通り、エンジン10に形成された各気筒に吸入される。ここで、エアクリーナ16から吸入された空気の量は、エアクリーナ16とスロットル13との間に配置されたエアフローメータ14により検出される。また、インテークマニホールド11を構成するコレクター部(サージタンク)の内部には、インテークマニホールド11内の圧力(吸気管圧力)を検出する圧力センサ30が配設されている。さらに、スロットル13には、該スロットル13の開度を検出するスロットル開度センサ31が配設されている。
インテークマニホールド11と連通する吸気ポート22近傍には、各気筒毎に、燃料を噴射するインジェクタ12が取り付けられている。インジェクタ12は、燃料タンク23からフィードポンプ24により吸い上げられて送出された燃料を吸気ポート22内に噴射する。また、各気筒のシリンダヘッドには混合気に点火する点火プラグ17、及び該点火プラグ17に高電圧を印加するイグナイタ内蔵型コイル21が取り付けられている。エンジン10の各気筒では、吸入された空気とインジェクタ12によって噴射された燃料との混合気が点火プラグ17により点火されて燃焼する。燃焼後の排気ガスは排気管18を通して排出される。
排気管18には、排気ガス中の酸素濃度に応じた信号を出力する空燃比センサ19が取り付けられている。空燃比センサ19としては、排気空燃比をリニアに検出することのできるリニア空燃比センサ(LAFセンサ)が用いられる。
また、空燃比センサ19の下流には排気浄化触媒20が配設されている。排気浄化触媒20は三元触媒であり、排気ガス中の炭化水素(HC)及び一酸化炭素(CO)の酸化と、窒素酸化物(NOx)の還元を同時に行い、排気ガス中の有害ガス成分を無害な二酸化炭素(CO)、水蒸気(HO)及び窒素(N)に清浄化するものである。
上述したエアフローメータ14、空燃比センサ19、圧力センサ30、スロットル開度センサ31に加え、エンジン10のカムシャフト近傍には、エンジン10の気筒判別を行うためのカム角センサ32が取り付けられている。また、エンジン10のクランクシャフト近傍には、クランクシャフトの回転位置を検出するクランク角センサ33が取り付けられている。カム角センサ32及びクランク角センサ33としては、例えば電磁ピックアップ式のものなどが用いられる。これらのセンサは、電子制御装置(以下「ECU」という)50に接続されている。
さらに、ECU50には、エンジン10の冷却水の温度を検出する水温センサ34、潤滑油の温度を検出する油温センサ35、及び、アクセルペダルの踏み込み量すなわちアクセルペダルの操作量を検出するアクセル開度センサ36、外気の温度を検出する外気温センサ37、及び、車両の速度を検出する車速センサ38等の各種センサも接続されている。ここで、水温センサ34は、特許請求の範囲に記載の水温検出手段として機能し、アクセル開度センサ36は、特許請求の範囲に記載の開度検出手段として機能する。また、外気温センサ37は、特許請求の範囲に記載の外気温検出手段として機能し、車速センサ38は、特許請求の範囲に記載の車速検出手段として機能する。
ECU50は、演算を行うマイクロプロセッサ、該マイクロプロセッサに各処理を実行させるためのプログラム等を記憶するROM、演算結果などの各種データを記憶するRAM、12Vバッテリによってその記憶内容が保持されるバックアップRAM、及び入出力I/F等を有して構成されている。また、ECU50は、インジェクタ12を駆動するインジェクタドライバ、点火信号を出力する出力回路、及び、電子制御式スロットル13を開閉する電動モータ13aを駆動するモータドライバ等を備えている。
ECU50では、カム角センサ32の出力から気筒が判別され、クランク角センサ33の出力からエンジン回転数が求められる。すなわち、クランク角センサ33は、特許請求の範囲に記載の回転数検出手段に相当する。また、ECU50では、上述した各種センサから入力される検出信号に基づいて、吸入空気量、吸気管圧力、アクセル開度、混合気の空燃比、及びエンジン10の水温や油温等の各種情報が取得される。そして、ECU50は、取得したこれらの各種情報に基づいて、燃料噴射量や点火時期、及び、スロットル13(電動モータ13a)等の各種デバイスを制御することによりエンジン10を総合的に制御する。
また、ECU50は、エンジン10の温度状態を考慮して、例えば、発進時、又は低速からの加速時等に発生するノッキング(所謂低速ノック)を回避するように、スロットル13の開度を制御し、エンジン10の吸入空気量を調節する。そのため、ECU50は、タイマ部51、及びスロットル制御部52を機能的に備えている。ECU50では、ROMに記憶されているプログラムがマイクロプロセッサによって実行されることにより、タイマ部51、及びスロットル制御部52の各機能が実現される。
タイマ部51は、車両の速度が所定速度(例えば10km/h、停車状態を含む)以下である状態が継続している継続時間(低車速継続時間)を計時する。すなわち、タイマ部51は、特許請求の範囲に記載の計時手段として機能する。なお、タイマ部51により計時された低車速状態の継続時間は、スロットル制御部52に出力される。なお、タイマに代えて、カウンタを用いて、低車速状態の継続時間を計時してもよい。
スロットル制御部52は、電動モータ13aを駆動して、スロットル13の開度を調節することにより、エンジン10の吸入空気量を調節する。スロットル制御部52は、通常運転時(後述するノッキング回避制御が実行されていない時)には、例えば、アクセル開度センサ36により検出されたアクセル開度から目標スロットル開度を求め、該目標スロットル開度と実開度とが一致するように、電動モータ13aを駆動する。より具体的には、ECU50のROM等には、アクセル開度とスロットル開度との関係(通常時の関係)を定めた通常スロットル開度マップが記憶されており、アクセル開度に基づいてこの通常スロットル開度マップが検索されることにより、スロットル開度の目標値が設定される。
ここで、通常発進時における、アクセル開度の変化に対するスロットル開度の変化の例を図4の上段と中段に示す。図4は、発進時のアクセル開度、通常時のスロットル開度、及びノッキング回避時のスロットル開度の変化を示すタイミングチャートである。なお、図4の横軸は時刻であり、縦軸は、上段から、アクセル開度(°)、通常時のスロットル開度(°)、ノッキング回避時のスロットル開度(°)である。
通常発進時には、図4の上段に示されるようにアクセル開度が変化した場合(アクセルペダルが操作された場合)に、図4の中段に示されるように、アクセルペダルの開度変化に対して、若干緩やかに(ただし、後述するノッキング回避時よりは急峻に)スロットル13が開弁される。
また、スロットル制御部52は、エンジン始動時(アイドリングストップからの再始動時を除く)に、水温センサ34により検出された冷却水の温度が始動時水温しきい値(特許請求の範囲に記載の所定のしきい値に相当)以上の場合(すなわち、エンジン始動時の冷却水温度と外気温度との偏差が小さい場合)に、アクセルペダルの操作量の変化に対するスロットル13の開度変化率が、上述した通常時よりも緩慢になるように、該スロットル13の開度を制御する。すなわち、スロットル制御部52は、特許請求の範囲に記載の制御手段として機能する。
その際に、スロットル制御部52は、外気温度が高くなるほど、上記始動時水温しきい値が低くなるように、始動時水温しきい値を可変設定する。また、スロットル制御部52は、外気温度が同一の場合には、冷却水の温度が高くなるほど、アクセルペダルの操作量の変化に対するスロットル13の開度変化率がより緩慢になるように、該スロットル13の開度を制御する。
より具体的には、ECU50のROM等には、上述した通常スロットル開度マップに加えて、ノッキング回避用のスロットル開度マップ、すなわち、アクセル開度とスロットル開度との関係を定めたノッキング回避スロットル開度マップが記憶されている。さらに、ECU50のROM等には、始動時冷却水温度と、外気温度と、通常スロットル開度マップに対するノッキング回避スロットル開度マップの反映率(以下、単に「反映率」ともいう)との関係を定めた反映率マップ(始動時用)が記憶されている。ここで、始動時における反映率マップ(始動時用)の例を図2に示す。なお、詳細については後述する。
ノッキング回避スロットル開度マップは、通常スロットル開度マップよりも、アクセルペダルの開度変化に対して、より緩慢にスロットル13が開弁されるように設定されている(図4の下段参照)。また、図2に示した反映率マップ(始動時用)中の反映率0%のラインは、外気温度と、ノッキング回避制御の実行要否を判断するための始動時水温しきい値との関係を定めたテーブル(始動時水温しきい値テーブル)となる。
スロットル制御部52は、まず、外気温度に応じて、上述した始動時水温しきい値テーブルを検索することにより始動時水温しきい値(図2の上段の表及び反映率0%のライン参照)を取得する。図2に示した例では、始動時水温しきい値テーブルは、外気温度が−30℃〜20℃の範囲内では外気温度の上昇に伴って始動時水温しきい値が60℃から40℃に低下するように設定されている。また、外気温度が20℃以上の領域では、始動時水温しきい値が40℃に固定されるように設定されている。
次に、スロットル制御部52は、始動時水温が、取得した始動時水温しきい値以上であるか否かを判断することにより、ノッキング回避が必要であるか否かを判断する。ここで、始動時冷却水温度が始動時水温しきい値未満の場合に、スロットル制御部52は、上述した通常時のスロットル制御を実行する。
一方、始動時冷却水温度が始動時水温しきい値以上の場合に、スロットル制御部52は、ノッキング回避が必要と判断し、アクセル開度に基づいて上述した通常スロットル開度マップを検索して通常のスロットル開度(反映率0%)を取得するとともに、ノッキング回避スロットル開度マップを検索してノッキング回避のスロットル開度(反映率100%)を取得する。また、スロットル制御部52は、始動時冷却水温度と外気温度とに基づいて、反映率マップ(始動時用)を検索することにより、通常スロットル開度マップに対するノッキング回避スロットル開度マップの反映率を取得する。
図2に示されるように、通常スロットル開度マップに対するノッキング回避スロットル開度マップの反映率は、始動時冷却水温度と外気温度とに基づいて、0%から100%まで可変設定される。外気温度が同一の場合には、始動時冷却水温度が上昇するほど、反映率が大きくなうように(すなわち、アクセルペダルの操作量の変化に対するスロットル13の開度変化率がより緩慢になるように)設定される。ここで、図2に示されるように、例えば、外気温度20℃のときには、冷却水温度が40℃以下で反映率は0%、70℃以上で反映率は100%に設定される。なお、反映率0%と100%との間は直線的に設定される。すなわち、例えば、冷却水温度が55℃のときに反映率は50%に設定される。
そして、スロットル制御部52は、通常のスロットル開度(反映率0%)と、ノッキング回避のスロットル開度(反映率100%)と、反映率とに応じて、スロットル開度の目標値を設定する。その結果、ノッキング回避時(始動後発進時)には、スロットル開度は、反映率に応じて、図4の中段に示された反映率0%の通常時のスロットル開度と、下段に示された反映率100%のノッキング回避時のスロットル開度との間に制御される。すなわち、例えば、反映率50%の場合には、通常のスロットル開度と、ノッキング回避のスロットル開度との中間の開度に制御される。その結果、吸入空気量の増大が抑制され、燃焼室内の圧力が低減されることにより、ノッキングが回避される。
また、スロットル制御部52は、タイマ部51により計時された低車速継続時間が、低車速継続時間しきい値(特許請求の範囲に記載の所定のしきい値に相当)以上の場合に、アクセルペダルの操作量の変化に対するスロットル13の開度変化率が緩慢になるように、該スロットル13の開度を制御する。その際に、スロットル制御部52は、外気温度が高くなるほど、上記低車速継続時間しきい値が短くなるように、低車速継続時間しきい値を可変設定する。また、スロットル制御部52は、外気温度が同一の場合には、継続時間が長くなるほど、アクセルペダルの操作量の変化に対するスロットル13の開度変化率がより緩慢になるように、該スロットル13の開度を制御する。
ECU50のROM等には、上述した、通常スロットル開度マップ、ノッキング回避スロットル開度マップ、及び、反映率マップ(始動時用)に加えて、低車速継続時間と、外気温度と、ノッキング回避スロットル開度マップの反映率との関係を定めた反映率マップ(低車速継続時用)が記憶されている。ここで、低車速継続時における反映率マップ(低車速継続時用)の例を図3に示す。なお、図3に示した反映率マップ(低車速継続時用)中の反映率0%のラインは、外気温度と、ノッキング回避制御の実行要否を判断するための低車速継続時間しきい値との関係を定めたテーブル(低車速継続時間しきい値テーブル)となる。
スロットル制御部52は、まず、外気温度に応じて、上述した低車速継続時間しきい値テーブルを検索することにより低車速継続時間しきい値(図3の上段の表及び反映率0%のライン参照)を取得する。図3に示した例では、低車速継続時間しきい値テーブルは、外気温度が20℃以下の領域では、低車速継続時間しきい値が300s.に固定されるように設定されている。また、20℃〜50℃の範囲内では外気温度の上昇に伴って低車速継続時間しきい値が300s.から0s.に低下するように設定されている。
次に、スロットル制御部52は、低車速継続時間が、取得した低車速継続時間しきい値以上であるか否かを判断することにより、ノッキング回避が必要であるか否かを判断する。ここで、低車速継続時間が低車速継続時間しきい値未満の場合に、スロットル制御部52は、上述した通常時のスロットル制御を実行する。
一方、低車速継続時間が低車速継続時間しきい値以上の場合に、スロットル制御部52は、ノッキング回避が必要と判断し、アクセル開度に基づいて上述した通常スロットル開度マップを検索して通常のスロットル開度(反映率0%)を取得するとともに、ノッキング回避スロットル開度マップを検索してノッキング回避用のスロットル開度(反映率100%)を取得する。また、スロットル制御部52は、低車速継続時間と外気温度とに基づいて、反映率マップ(低車速継続時用)を検索することにより、通常スロットル開度マップに対するノッキング回避スロットル開度マップの反映率を取得する。
ここで、図3に示されるように、通常スロットル開度マップに対するノッキング回避スロットル開度マップの反映率は、低車速継続時間と外気温度とに基づいて、0%から100%まで可変設定される。外気温度が同一の場合には、低車速継続時間が長くなるほど、反映率が大きくなうように(すなわち、アクセルペダルの操作量の変化に対するスロットル13の開度変化率がより緩慢になるように)設定される。ここで、図3に示されるように、例えば、外気温度30℃のときには、低車速継続時間が200s.以下で反映率は0%、350s.以上で反映率は100%に設定される。なお、反映率0%と100%との間は直線的に設定される。すなわち、例えば、低車速継続時間が275s.のときに反映率は50%に設定される。
そして、スロットル制御部52は、通常のスロットル開度(反映率0%)と、ノッキング回避のスロットル開度(反映率100%)と、反映率とに応じて、スロットル開度の目標値を設定する。その結果、ノッキング回避時(低車速継続時)には、スロットル開度は、反映率に応じて、図4の中段に示された反映率0%の通常時のスロットル開度と、下段に示された反映率100%のノッキング回避時のスロットル開度との間に制御される。すなわち、例えば、反映率50%の場合には、通常時のスロットル開度と、ノッキング回避のスロットル開度との中間の開度に制御される。その結果、吸入空気量の増大が抑制され、燃焼室内の圧力が低減されることにより、ノッキングが回避される。
次に、図5を参照しつつ、エンジンのノッキング制御装置の動作について説明する。ここで、図5は、ノッキング制御装置によるノッキング(低速ノック)回避処理の処理手順を示すフローチャートである。本処理は、ECU50において、所定のタイミングで繰り返して実行される。
ステップS100では、イグニッションスイッチがオンされて、エンジンが初始動(すなわち、アイドリングストップからの再始動は含まれない)されたか否かについての判断が行われる。ここで、初始動である場合には、ステップS102に処理が移行する。一方、初始動ではないときには、ステップS106に処理が移行する。
ステップS102では、始動時水温(TWSTART)が、外気温度に基づいて取得された始動時水温しきい値(TRNG(TAIR))以上であるか否かについての判断が行われる。なお、始動時水温しきい値の取得方法については上述した通りであるので、ここでは詳細な説明を省略する。ここで、始動時水温が始動時水温しきい値以上の場合には、ステップS104に処理が移行する。一方、始動時水温が始動時水温しきい値未満のときには、ステップS106に処理が移行する。
ステップS104では、始動時のノッキング回避スロットル制御が実行される。より具体的には、まず、外気温度及び始動時水温に基づいて、反映率(始動時用)が取得される。次に、通常スロットル開度マップ(反映率0%)、ノック回避時スロットル開度マップ(反映率100%)、及び、反映率(始動時用)に基づいて、スロットル13の目標開度が設定される。なお、スロットル13の目標開度の設定方法については上述した通りであるので、ここでは詳細な説明を省略する。そして、スロットル13の目標開度と実開度とが一致するように電動モータ13aが駆動(すなわち、スロットル13がより緩やかに開弁)される。その後、一旦本処理から抜ける。
一方、ステップS106では、水温(TWN)が水温条件(TWNHOT、例えば60℃)以上であり、かつ、車速(VSP)が低車速条件(LSP、例えば10km/h)以下であるか否かについての判断が行われる。ここで、双方の条件が満足された場合には、ステップS110に処理が移行する。いずれか一方、又は双方の条件が満足されなかったときには、ステップS108処理が移行する。
ステップS108では、通常のスロットル制御が実行される。より具体的には、まず、通常スロットル開度マップに基づいて、スロットル13の目標開度が設定される。そして、スロットル13の目標開度と実開度とが一致するように、電動モータ13aが駆動される。その後、本処理から一旦抜ける。
ステップS110では、低車速継続時間を計時する低車速継続時間タイマが起動される。続いて、ステップS112では、低車速継続時間タイマの値(すなわち低車速継続時間)が、外気温度に基づいて取得された低車速継続時間しきい値(LSPT(TAIR))以上であるか否かについての判断が行われる。なお、低車速継続時間しきい値の取得方法については上述した通りであるので、ここでは詳細な説明を省略する。ここで、低車速継続時間が低車速継続時間しきい値以上の場合には、ステップS114に処理が移行する。一方、低車速継続時間が低車速継続時間しきい値未満のときには、上述したステップS108において通常のスロットル制御が実行された後、本処理から一旦抜ける。
ステップS114では、低車速継続時のノッキング回避スロットル制御が実行される。より具体的には、まず、外気温度及び低車速継続時間に基づいて、反映率(低車速継続時用)が取得される。次に、通常スロットル開度マップ(反映率0%)、ノック回避時スロットル開度マップ(反映率100%)、及び、反映率(低車速継続時用)に基づいて、スロットル13の目標開度が設定される。なお、スロットル13の目標開度の設定方法については上述した通りであるので、ここでは詳細な説明を省略する。そして、スロットル13の目標開度と実開度とが一致するように電動モータ13aが駆動(すなわち、スロットル13がより緩やかに開弁)される。その後、一旦本処理から抜ける。
以上、詳細に説明したように、本実施形態によれば、エンジン始動時に、始動時水温が始動時水温しきい値以上の場合、すなわち、十分にソークされておらず、よって、エンジン温度及び吸入空気温度が高くノッキングが発生しやすい状態であると推定される場合に、アクセルペダルの操作量の変化に対するスロットル13の開度変化率が緩慢にされる。そのため、吸入空気量の増大が抑制され、燃焼室内の圧力が低減されることにより、ノッキングが回避される。その結果、エンジン10の温度状態を考慮して、ノッキング(低速ノック)をより確実に回避することが可能となる。
また、本実施形態によれば、外気温度が高くなるに従って、始動時水温しきい値が低く設定される。そのため、外気温度が上昇し、吸気温度が上昇すると推定される場合には、外気温度が高くなるほど、始動時の冷却水温度が低くてもスロットル13が緩やかに開弁されることとなる。よって、ノッキングを適切に回避することが可能となる。
本実施形態によれば、外気温度が同一の場合には、始動時の冷却水温度が高いほど、スロットル13の開度変化率がより緩慢にされる。よって、始動時の冷却水温度が高く、ソークが十分にされておらす、ノッキングが発生しやすいと推定される場合に、ノッキングをより確実に回避することが可能となる。
本実施形態によれば、低車速状態(停車状態を含む)が継続し、低車速状態の継続時間が低車速継続時間しきい値以上になった場合、すなわち、エンジン温度及びエンジンに吸入される空気の温度が上昇し、ノッキングが発生しやすいと推定される場合に、スロットル13の開度変化率が緩慢にされる。そのため、吸入空気量の増大が抑制され、燃焼室内の圧力が低減されることにより、ノッキングが回避される。その結果、エンジン10の温度状態を考慮して、ノッキング(低速ノック)をより確実に回避することが可能となる。
本実施形態によれば、外気温度が高くなるに従って、上記低車速継続時間しきい値が短く設定される。そのため、外気温度が上昇し、吸気温度が上昇すると推定される場合には、外気温度が高くなるほど、低車速状態の継続時間が短くてもスロットル13が緩やかに開弁されることとなる。よって、ノッキングを適切に回避することが可能となる。
本実施形態によれば、外気温度が同一の場合には、継続時間が長くなるほど、スロットルバルブの開度変化率がより緩慢にされる。よって、低車速状態(停車状態を含む)の継続時間が長くなり、エンジン温度及び吸入空気温度がより上昇すると推定される場合に、ノッキングをより確実に回避することが可能となる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、図2に示した反映率マップ(始動時用)、始動時水温しきい値テーブル、及び。図3に示した反映率マップ(低車速継続時用)、低車速継続時間しきい値テーブル等は例示であり、上記実施形態に限定されることなく、任意に設定することができる。
また、上記実施形態では、例えば10(km/h)以下で走行している状態(停車中を含む)を低車速状態としたが、低車速状態か否かを判定する車速は任意に設定することができる。また、低車速状態と停車状態(デッドソーク状態)とを区別するようにしてもよい。
上記実施形態では、本発明をポート噴射式のエンジンに適用した場合を例にして説明したが、本発明は、筒内噴射式のエンジン、及び、筒内噴射とポート噴射とを組み合わせたエンジンにも適用することができる。
10 エンジン
13 電子制御式スロットルバルブ
17 点火プラグ
31 スロットル開度センサ
32 カム角センサ
33 クランク角センサ
34 水温センサ
35 油温センサ
36 アクセル開度センサ
37 外気温センサ
38 車速センサ
50 ECU
51 タイマ部
52 スロットル制御部

Claims (5)

  1. 車両の速度を検出する車速検出手段と、
    前記車速検出手段により検出された前記車両の速度が所定速度以下である状態が継続している継続時間を計時する計時手段と、
    アクセルペダルの操作量を検出する開度検出手段と、
    前記開度検出手段により検出された前記アクセルペダルの操作量に基づいてスロットルバルブの開度を制御することにより、エンジンの吸入空気量を調節する制御手段と、を備え、
    前記制御手段は、前記計時手段により計時された前記継続時間が所定のしきい値以上の場合に、前記アクセルペダルの操作量の変化に対する前記スロットルバルブの開度変化率が緩慢になるように、該スロットルバルブの開度を制御することを特徴とするエンジンのノッキング制御装置。
  2. 外気の温度を検出する外気温検出手段を備え、
    前記制御手段は、前記外気温検出手段により検出された外気の温度が高くなるほど、前記所定のしきい値が短くなるように可変設定することを特徴とする請求項1に記載のエンジンのノッキング制御装置。
  3. 前記制御手段は、外気の温度が同一の場合には、前記継続時間が長くなるほど、前記アクセルペダルの操作量の変化に対する前記スロットルバルブの開度変化率がより緩慢になるように、該スロットルバルブの開度を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載のエンジンのノッキング制御装置。
  4. エンジンの冷却水の温度を検出する水温検出手段と、
    アクセルペダルの操作量を検出する開度検出手段と、
    前記開度検出手段により検出された前記アクセルペダルの操作量に基づいてスロットルバルブの開度を制御することにより、前記エンジンの吸入空気量を調節する制御手段と、
    外気の温度を検出する外気温検出手段と、を備え、
    前記制御手段は、前記水温検出手段により検出されたエンジン始動時の冷却水の温度が所定のしきい値以上の場合に、前記アクセルペダルの操作量の変化に対する前記スロットルバルブの開度変化率が緩慢になるように、該スロットルバルブの開度を制御し、かつ、前記外気温検出手段により検出された外気の温度が高くなるほど、前記所定のしきい値が低くなるように可変設定することを特徴とするエンジンのノッキング制御装置。
  5. 前記制御手段は、外気の温度が同一の場合には、前記冷却水の温度が高くなるほど、前記アクセルペダルの操作量の変化に対する前記スロットルバルブの開度変化率がより緩慢になるように、該スロットルバルブの開度を制御することを特徴とする請求項4に記載のエンジンのノッキング制御装置。
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