JP6049466B2 - ポリアセタール樹脂成形体及び精密機構部品 - Google Patents
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Description
特にポリアセタールホモポリマーはコポリマーに比べて分子構造上、二次収縮による寸法変化量が大きいという問題を有している。
そこで本発明においては、摺動性、寸法精度及び耐久性に優れ、成形体の寸法管理が容易で、より一層寸法安定性に優れるポリアセタール樹脂成形体を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は以下の通りである。
ポリアセタール樹脂(A)と、
50℃の比容積(V50)と90℃の比容積(V90)との差ΔV((V90)−(V50))
が、0.05cm3/g以上であり、脂肪酸アミド化合物又は融点が35〜100℃である低分子量ポリエチレンである化合物(B)と、
粒径0.5〜100μmの結晶核剤(C)と、
を、含むポリアセタール樹脂組成物
を、含有するポリアセタール樹脂成形体。
〔2〕
前記化合物(B)の融点が35〜100℃である、前記〔1〕に記載のポリアセタール
樹脂成形体。
〔3〕
前記結晶核剤(C)が、窒化ホウ素、タルク及びシリカからなる群より選ばれる少なく
とも一つである、前記〔1〕又は〔2〕に記載のポリアセタール樹脂成形体。
〔4〕
前記ポリアセタール樹脂組成物が、前記ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し
、前記化合物(B)を0.06〜1.8質量部含む、前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一
に記載のポリアセタール樹脂成形体。
〔5〕
前記ポリアセタール樹脂組成物が、前記ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し
、前記結晶核剤(C)を0.0001〜0.18質量部含む、前記〔1〕乃至〔4〕のい
ずれか一に記載のポリアセタール樹脂成形体。
〔6〕
前記ポリアセタール樹脂(A)中、ポリアセタールホモポリマーが50質量%以上含有
されている、前記〔1〕乃至〔5〕のいずれか一に記載のポリアセタール樹脂成形体。
〔7〕
前記ポリアセタール樹脂成形体が射出成形品である、前記〔1〕乃至〔6〕のいずれか
一に記載のポリアセタール樹脂成形体。
〔8〕
前記〔1〕乃至〔7〕のいずれか一に記載のポリアセタール樹脂成形体を含む精密機構
部品。
〔9〕
前記精密機構部品が歯車である、前記〔8〕に記載の精密機構部品。
本実施形態のポリアセタール樹脂成形体は、
ポリアセタール樹脂(A)と、
50℃の比容積(V50)と90℃の比容積(V90)との差ΔV((V90)−(V50))が、0.05cm3/g以上である化合物(B)と、
粒径0.5〜100μmの結晶核剤(C)と、
を含むポリアセタール樹脂組成物を含有するポリアセタール樹脂成形体である。
以下、ポリアセタール樹脂組成物、ポリアセタール樹脂組成物の製造方法、ポリアセタール樹脂成形体の特性、ポリアセタール樹脂成形体の製造方法、ポリアセタール樹脂成形体の用途について、順次説明する。
本実施形態のポリアセタール樹脂成形体に含まれるポリアセタール樹脂組成物は、
ポリアセタール樹脂(A)と、
50℃の比容積(V50)と90℃の比容積(V90)との差ΔV((V90)−(V50))が、0.05cm3/g以上である化合物(B)と、
粒径0.5〜100μmの結晶核剤(C)と、
を含む。
本実施形態に用いるポリアセタール樹脂組成物に含まれるポリアセタール樹脂(A)としては、以下に限定されないが、例えば、ポリアセタールホモポリマー及びポリアセタールコポリマーが挙げられる。
ポリアセタールホモポリマーは、ホルムアルデヒド単量体又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーを単独重合したものであり、実質的にオキシメチレン単位だけからなる。具体的には、下記一般式(1)で示されるオキシメチレン単位を全体の95質量%以上、好ましくは98質量%以上、より好ましくは99質量%以上含む。
−(CH2O)− ・・・(1)
また、ポリアセタール樹脂(A)は1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、ポリアセタール樹脂(A)としては、市販されているポリアセタール樹脂を用いてもよい。
前記市販されているポリアセタール樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリアセタール樹脂ホモポリマーとしては、旭化成ケミカルズ社製テナック、デュポン社製デルリン等が挙げられ、ポリアセタール樹脂コポリマーとしては、旭化成ケミカルズ社製テナックC、ポリプラスチック社製ジュラコン、三菱エンプラ社製ユピタール等が挙げられる。
本実施形態に用いるポリアセタール樹脂組成物に含まれる化合物(B)は、50℃の比容積(V50)と90℃の比容積(V90)との差ΔV((V90)−(V50))が0.05cm3/g以上である。好ましくはΔVが0.09cm3/g以上であり、より好ましくは0.1cm3/g以上である。
前記範囲の比容積の差ΔVを有する化合物(B)を用いることにより、より寸法安定性に優れるポリアセタール樹脂成形体を得ることができる。
結晶性樹脂であるポリアセタール樹脂は、成形後に得られる成形体を長時間放置したり、高温雰囲気下に曝したりすると、後収縮、すなわち二次収縮による寸法変化を生じてしまうため、寸法管理が困難である。しかし、前記範囲の比容積の差ΔVを有する化合物(B)を添加することにより、前記収縮による寸法変化を抑制することができる。この効果は物質の分子サイズやポリアセタール樹脂との相溶性などにより異なるが、一般的にはΔVが大きい化合物(B)が寸法変化の抑制には効果的と考えられる。
[比容積測定法]
比容積は東洋精機製作所製「PVT TEST SYSTEM」を用いて測定することができる。
まず化合物(B)を110℃まで昇温したシリンダーに投入し、溶融、脱泡させ、10MPaの圧力をかけ、温度、圧力が安定したらシリンダー内の試料体積を測定することとし、90℃から50℃まで降温させながら5℃毎に体積を測定する。
ここで、同一の測定対象化合物(B)における、50℃と90℃の比容積(cm3/g)の差((V90)−(V50))を算出することによりΔVが得られる。
具体的には、ミリスチン酸セチル(融点49℃)、ラウリン酸アミド(融点87℃)、低分子量ポリエチレン(融点98℃)、ポリエチレングリコール(融点55℃)が挙げられる。
より好ましくは、融点が40℃〜95℃の範囲にある脂肪酸エステル化合物、脂肪酸アミド化合物、低分子量ポリエチレン等、さらに好ましくは、融点が45℃〜90℃の範囲にある脂肪酸エステル化合物、脂肪酸アミド化合物が挙げられる。
融点が前記範囲にある化合物(B)を用いると、本実施形態のポリアセタール樹脂成形体において優れた寸法安定性が得られる。なお、化合物(B)の融点は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
化合物(B)は1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態に用いるポリアセタール樹脂組成物に含まれる結晶核剤(C)は、ポリアセタール樹脂(A)に添加し溶融混練したときに、未添加のポリアセタール樹脂の結晶化時間と比べて、結晶化時間を短縮化する機能を有する物質である。
結晶核剤(C)としては、300ppm添加したとき、結晶化時間の短縮率が25%以上の物質が好ましい。
結晶化時間は、以下の方法により測定できる。
例えば、高感度型示差走査熱量計(エスアイアイナノテクノロジー(株)社製、商品名「EXSTAR DSC7020」)を用い、サンプルをセットし常温から200℃まで300℃/minで昇温し1minホールドし、50℃/minで145℃まで降温し、このときのスペクトルのピークまでの時間を結晶化時間とする。
結晶化時間短縮率は、〔(結晶核剤(C)を加えなかった場合の結晶化時間−結晶核剤(C)を加えた場合の結晶化時間)/(C)を加えなかった場合の結晶化時間〕×100により算出できる。
結晶核剤(C)の粒径が0.5〜100μmの範囲内であると、より一層寸法安定性に優れるポリアセタール樹脂成形体を得ることができる。
なお、結晶核剤(C)の粒径は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
結晶核剤(C)は1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態に用いるポリアセタール樹脂組成物には、本実施形態の目的を損なわない範囲で、適宜公知のその他の添加剤を添加することもできる。
当該添加剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、酸化防止剤、ホルムアルデヒド反応性窒素含有重合体又は化合物、ギ酸捕捉材、耐候(光)安定剤、離型剤、補強剤、導電材、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、顔料、可塑剤、過酸化物分解剤、塩基性補助剤、帯電防止剤、難燃剤、染料、充填剤等が挙げられる。
これらの添加剤は1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、これらの添加剤の添加量は、本実施形態の目的を損なわない範囲であれば特に限定されないが、例えば、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して、0〜10質量部であることが好ましい。
本実施形態のポリアセタール樹脂成形体は、上述したように、ポリアセタール樹脂(A)、50℃の比容積と90℃の比容積との差ΔVが0.05cm3/g以上である化合物(B)、及び粒径0.5〜100μmの結晶核剤(C)を含むポリアセタール樹脂組成物を含有する。
本実施形態に用いるポリアセタール樹脂組成物の製造方法としては、例えば、化合物(B)及び粒径0.5〜100μmの結晶核剤(C)をポリアセタール樹脂(A)に添加して混合し、溶融混練する方法が挙げられる。
化合物(B)及び結晶核剤(C)をポリアセタール樹脂(A)に添加する形態は、特に限定されるものではなく、固体の状態であっても溶融状態であってもよい。
また、化合物(B)及び結晶核剤(C)をポリアセタール樹脂(A)に均一に分散させ、本実施形態のポリアセタール樹脂成形体の寸法安定性・摺動性・精度・耐久性の効果を高めるためには、化合物(B)及び結晶核剤(C)とポリアセタール樹脂(A)とを、溶融混練する前に予め混合しておくことが好ましい。この予め混合する方法は、公知の手法で適宜選択すればよく、特に限定するものではない。
また、ポリアセタール樹脂(A)、化合物(B)、及び結晶核剤(C)を混合する方法に関しては、上述したように、化合物(B)及び結晶核剤(C)をポリアセタール樹脂(A)と混合する方法に限定されず、ポリアセタール樹脂(A)の重合時に上記化合物(B)及び結晶核剤(C)を加えても構わない。本実施形態に用いるポリアセタール樹脂組成物の製造時には、本発明の目的を損なわない範囲で、適宜公知の添加剤を添加することもできる。
本実施形態のポリアセタール樹脂成形体は、寸法変化率が±0.04%の範囲であることが好ましく、±0.035%の範囲であることがより好ましく、±0.03%の範囲であることがさらに好ましい。
実施形態のポリアセタール樹脂成形体の寸法変化率が上記範囲であると、例えば、部品メーカーにおいて当該成形体を製造してから所定の部品へ組み込まれるまでの期間や、船舶等による輸送時の高温条件下においても、優れた寸法安定性が得られる。
なお、ポリアセタール樹脂成形体の寸法変化率は、後述する実施例に記載の方法で測定することができる。
本実施形態のポリアセタール樹脂成形体は、上記ポリアセタール樹脂組成物を成形することにより得られる。
成形方法としては、従来公知のポリアセタール樹脂の成形方法を適用でき、例えば、通常の射出成形に加え、射出圧縮成形、ガスアシスト射出成形、発砲射出成形、金型内複合成形(金属インサート成形、金属アウトサート成形)等の成形方法が挙げられる。
生産性に優れる観点から、射出成形、射出圧縮成形及び金型内複合成形からなる群より選択される少なくとも1種の成形方法が好ましい方法として挙げられる。
本実施形態のポリアセタール樹脂成形体は、経済性及び生産性の観点から、射出成形品であることが好ましい。
本実施形態のポリアセタール樹脂成形体は、従来公知のポリアセタール樹脂成形体と比較して一層優れた寸法安定性、寸法精度、耐久性が得られる観点から、用途としては、精密機構部品等が挙げられる。
本実施形態の精密機構部品は、上記ポリアセタール樹脂成形体を含む。
精密機構部品とは、成形した後の寸法測定又は精度測定や、機構部品として使用されたときの変形量などの確認を必要とする部品であり、以下に限定されるものではないが、例えば、自動車部品、電気・電子部品等に広く用いられている歯車、カム、スライダー、レバー、アーム、クラッチ、プーリー、ローラー、コロ、関節、軸、軸受け等の、機械の動作に影響を与える各種部品が挙げられる。
本実施形態のポリアセタール樹脂成形体の、寸法安定性、寸法精度、耐久性といった優れた特性が発揮できるという観点から、前記精密機構部品の具体的な用途としては、歯車が好ましい用途として挙げられる。
歯車の種類・形状は、特に限定されるものではないが、例えば、平歯歯車、内歯車、ラック、はすば歯車、やまば歯車、すぐばかさ歯車、はすばかさ歯車、まがりばかさ歯車、冠歯車、フェースギヤ、ねじ歯車、円筒ウォームギヤ、ハイポイドギヤ、ノビコフ歯車等が挙げられる。特に、前記フェースギヤ、円筒ウォームギヤ、ハイポイドギヤ等の各種ギヤが好ましい。
(1.ポリアセタール樹脂(A))
ポリアセタール樹脂(A)として用いた(A−1)及び(A−2)を以下に挙げる。
(A−1):ポリアセタールホモポリマー(旭化成ケミカルズ(株)社製 テナック7010)。
(A−2):ポリアセタールコポリマー(旭化成ケミカルズ(株)社製 テナック7520)。
化合物(B)として用いた(B−1)〜(B−6)を以下に挙げる。
(B−1):ミリスチン酸セチル(融点:49℃、ΔV=0.16cm3/g)。
(B−2):ラウリン酸アミド(融点:87℃、ΔV=0.11cm3/g)。
(B−3):低分子量ポリエチレン(融点:98℃、ΔV=0.08cm3/g)。
(B−4):PE−グラフト−PS(融点:105℃、ΔV=0.02cm3/g)。
(B−5):ポリエチレングリコール(融点:55℃、ΔV=0.03cm3/g)。
(B−6):ミリスチン酸メチル(融点:25℃以下、ΔV=0.04cm3/g)。
なお、ΔVは、50℃の比容積((V50)cm3/g)と90℃の比容積((V90)cm3/g)との差((V90)−(V50))である。
まず化合物(B)を110℃まで昇温したシリンダーに投入し、10MPaの圧力をかけ、温度、圧力が安定したらシリンダー内の試料体積を測定することとし、90℃から50℃までは降温させながら5℃毎に化合物(B)の体積を測定した。
ここで、同一の測定対象である化合物(B)の50℃の比容積と、90℃の比容積との差をΔVとして算出した。
まず、化合物(B)を常温から110℃まで昇温し1分間その温度で保持し、その後化合物(B)を0℃まで冷却し、再度2.5℃/分の速度にて昇温し、その時のスペクトルのピークの温度を化合物(B)の融点とした。
ピークがでない化合物については、ホットプレートにて25℃より5℃毎に110℃まで加温し、この5℃毎にスパチュラーにて状態を確認した。表面が柔らかくなっている場合は、この温度を融点とした。常温で液状のものは融点を25℃以下と判断した。
結晶核剤(C)として用いた(C−1)〜(C−4)を以下に挙げる。
(C−1):窒化ホウ素(電気化学工業(株)製、デンカボロンナイトライド、粒径:6.0μm、結晶化時間短縮率25%以上)。
(C−2):タルク(日本タルク(株)製、MSタルク、粒径:15.6μm、結晶化時間短縮率25%以上)。
(C−3):シリカ(アドマテックス(株)製、アドマファイン、粒径:1.6μm、結晶化時間短縮率25%以上)。
(C−4):炭酸カルシウム(白石工業(株)製、BRILLIANT−1500、粒径:0.15μm、結晶化時間短縮率25%未満)。
(C−5):タルク(日本タルク(株)製、タルク、粒径:105μm、結晶化時間短縮率25%以上)。
なお、結晶核剤(C)の粒径は、以下のように測定した。
走査型電子顕微鏡:日本電子(株)製JSM−6700Fにて結晶核剤(C)を測定し、得られた粒子像から無作為に選択した100個の最大粒子径の平均値を結晶核剤(C)の粒径とした。
結晶化時間については、高感度型示差走査熱量計(エスアイアイナノテクノロジー(株)社製、商品名「EXSTAR DSC7020」)を用い、サンプルをセットし常温から200℃まで300℃/minで昇温し1minホールドし、50℃/minで145℃まで降温し、このときのスペクトルのピークまでの時間を結晶化時間とした。
結晶化時間短縮率は、〔(結晶核剤(C)を加えなかった場合の結晶化時間−結晶核剤(C)を300ppm加えた場合の結晶化時間)/(C)を加えなかった場合の結晶化時間〕×100により算出した。
その他の添加剤として用いた(D−1)及び(D−2)を以下に挙げる。
(D−1):エチレン・スチレングラフト共重合体(日油株式会社製、商品名:モディパーA1100)。
(D−2):1−ブテン・エチレン共重合体(三井化学株式会社製、商品名:タフマーA70090)。
(寸法管理の容易性、寸法安定性の評価)
<寸法変化率>
ポリアセタール樹脂成形体の寸法管理の容易性、寸法安定性を評価するため、以下の方法で、寸法変化率の測定を行なった。
後述する実施例及び比較例の歯車成形品について、23℃・50%の環境で168時間放置した後の直径寸法(I)と、その後70℃の温度で4時間加熱し、23℃・50%の環境に168時間放置した後の直径寸法(II)とを、それぞれ(株)ミツトヨ製マイクロメーターで測定し、各測定値から寸法変化率(%)=[((直径寸法(II)−直径寸法(I))/直径寸法(I))×100]を算出した。
測定結果を表1に示す。
<単一ピッチ誤差、隣接ピッチ誤差>
ポリアセタール樹脂成形体の寸法精度及び当該寸法精度の安定性を評価するために、後述する実施例及び比較例の歯車成形品の寸法精度を以下のとおり測定した。
歯車成形品の寸法精度の測定及び寸法精度の安定性の評価には、単一ピッチ誤差、隣接ピッチ誤差を用いた。
ここでピッチ誤差は、諸元(金型と材料の収縮により与えられる理論値)に対する精度であり、JIS B1702で定められる方法で測定した。
実施例及び比較例の歯車成形品について、70℃の温度で4時間加熱し、さらにその後、23℃・50%の環境に168時間放置した後の単一ピッチ及び隣接ピッチを測定した。
単一ピッチ及び隣接ピッチは、JIS B1702:1998に準じて、歯車測定機(大阪精密機械(株)製GC−1HP)を用いて、測定子0.5mmで測定した。
測定結果を表1に示す。
<耐久試験による摩耗量、耐久試験後の目視による確認>
ポリアセタール樹脂成形体の摺動性及び耐久性を評価するために、後述する実施例及び比較例の歯車成形品の耐久試験を以下のとおり実施した。
歯車成形品の摺動性及び耐久試験には、東芝ソシオテック製の歯車耐久試験機を用いた。
具体的には、駆動側・従動側の両方に上記の方法で得られた歯車成形品を軸間距離61.2mm、バックラッシ量0.1mmで噛み合わせ、トルク1.4N・m、回転数636rpmでグリース無しで510hr回転させた後の摩耗量の合計を測定した。
さらに、試験前後における歯車外観等について、以下の基準で評価した。
測定及び評価結果を表1に示す。
◎:試験前後で、肉眼で歯車に肉眼で変形が確認されず、特に問題が無かった。
○:試験前後で、肉眼で歯車に肉眼で変形が確認されたが、作動性には問題が無かった。
△:試験前後で、肉眼で歯車に肉眼で変形が確認され、作動性に一部問題があった。
×:歯の破損や軸穴の変形などによって作動不良となった。
(ポリアセタール樹脂組成物の製造)
(A−1)ポリアセタールホモポリマーを予めクラッシャーを用いて粉砕した。
粉砕した(A−1)ポリアセタールホモポリマーの粉末100質量部、(B−1)ミリ
スチン酸セチル0.05質量部、及び(C−1)窒化ホウ素0.003質量部を、ヘンシ
ェルミキサーを用いて1分間混合して混合物を得た。
その後、200℃に設定したベント付きスクリュー型二軸押出機(BT−30、プラス
チック工業(株)社製;L/D=44)を用いて、スクリュー回転数を100rpmとし
、24アンペアで、前記混合物を溶融混練して、ポリアセタール樹脂組成物のペレット状
サンプルを得た。
(ポリアセタール樹脂成形体の製造)
ポリアセタール樹脂成形体の評価を行なうために、精密機構部品の代表として以下の歯
車成形品を製造した。
詳細には、シリンダー温度200℃に設定されたFANUC(株)製α50i−A成形
機を用いて、金型温度80℃、冷却時間30秒の条件で、上記製造したポリアセタール樹
脂組成物のペレット状サンプルを成形し、下記寸法の歯車成形品を製造した。
得られた歯車成形品を用いて以下のとおり各特性評価を行った。
評価結果を表1に示す。
<歯車金型形状>
モジュール(m)=0.6、歯数(z)=100、歯幅(b)=8.0の平歯車
ポリアセタール樹脂組成物を製造する際の(B−1)ミリスチン酸セチルの配合量を、
下記表1に示すとおり変更した以外は、参考例1に記載の(ポリアセタール樹脂成形体の製造)と同様にして、歯車成形品を製造した。各評価結果を表1に示す。
ポリアセタール樹脂組成物を製造する際の化合物(B)の種類及び配合量を、下記表1
に示すとおり変更した以外は、参考例1に記載の(ポリアセタール樹脂成形体の製造)と同様にして、歯車成形品を製造した。各評価結果を表1に示す。
ポリアセタール樹脂組成物を製造する際の化合物(B)の配合量、及び(C−1)窒化
ホウ素の配合量を、表1に示すとおり変更した以外は、参考例1に記載の(ポリアセタール樹脂成形体の製造)と同様にして、歯車成形品を製造した。各評価結果を表1に示す。
ポリアセタール樹脂組成物を製造する際の化合物(B)の配合量、及び結晶核剤(C)
の種類及び配合量を、表2に示すとおり変更した以外は、参考例1に記載の(ポリアセタール樹脂成形体の製造)と同様にして、歯車成形品を製造した。各評価結果を表2に示す。
ポリアセタール樹脂組成物を製造する際の化合物(B)の配合量、及び結晶核剤(C)
の種類及び配合量を、表2に示すとおり変更し、さらにその他添加剤(D)としてエチレ
ン・スチレングラフト共重合体(D−1)1.5質量部、及び1−ブテン・エチレン共重
合体(D−2)1.0質量部を添加した以外は、参考例1に記載の(ポリアセタール樹脂成形体の製造)と同様にして、歯車成形品を製造した。各評価結果を表2に示す。
ポリアセタール樹脂組成物を製造する際、ポリアセタールホモポリマー(A−1)を一
部又は全部ポリアセタールコポリマー(A−2)に変更し、化合物(B)の配合量を変更
した以外は、参考例1に記載の(ポリアセタール樹脂成形体の製造)と同様にして、歯車成形品を製造した。得られた歯車成形品を用いて参考例1と同様にして各特性評価を行った。評価結果を表2に示す。
ポリアセタール樹脂組成物の代わりにポリアセタールホモポリマー(A−1)を用いた
以外は参考例1に記載の(ポリアセタール樹脂成形体の製造)と同様にして、歯車成形品を製造した。得られた歯車成形品を用いて参考例1と同様にして各特性評価を行った。評価結果を表2に示す。
ポリアセタール樹脂組成物を製造する際、結晶核剤(C)を添加せずに、化合物(B)
のミリスチン酸セチル(B−1)のみを表2に示す配合量でポリアセタールホモポリマー
(A−1)に添加し、溶融混練してポリアセタール樹脂組成物を製造した以外は、参考例1に記載の(ポリアセタール樹脂成形体の製造)と同様にして、歯車成形品を製造した。得られた歯車成形品を用いて参考例1と同様にして各特性評価を行った。評価結果を表2に示す。
ポリアセタール樹脂組成物を製造する際、化合物(B)を添加せずに、結晶核剤(C)
の窒化ホウ素(C−1)のみを表2に示す配合量でポリアセタールホモポリマー(A−1
)に添加し、溶融混練してポリアセタール樹脂組成物を製造した以外は、参考例1に記載の(ポリアセタール樹脂成形体の製造)と同様にして歯車成形品を製造した。得られた歯車成形品を用いて参考例1と同様にして各特性評価を行った。評価結果を表2に示す。
ポリアセタール樹脂組成物を製造する際、化合物(B)の種類を表2に示す通り変更し
た以外は、参考例1に記載の(ポリアセタール樹脂成形体の製造)と同様にして歯車成形品を製造した。得られた歯車成形品を用いて参考例1と同様にして各特性評価を行った。評価結果を表2に示す。
ポリアセタール樹脂組成物を製造する際、化合物(C)の種類を表2に示す通り変更し
た以外は、参考例1に記載の(ポリアセタール樹脂成形体の製造)と同様にして歯車成形品を製造した。得られた歯車成形品を用いて参考例1と同様にして各特性評価を行った。評価結果を表2に示す。
Claims (9)
- ポリアセタール樹脂(A)と、
50℃の比容積(V50)と90℃の比容積(V90)との差ΔV((V90)−(V50))
が、0.05cm3/g以上であり、脂肪酸アミド化合物又は融点が35〜100℃である低分子量ポリエチレンである化合物(B)と、
粒径0.5〜100μmの結晶核剤(C)と、
を、含むポリアセタール樹脂組成物
を、含有するポリアセタール樹脂成形体。 - 前記化合物(B)の融点が35〜100℃である、請求項1に記載のポリアセタール樹
脂成形体。 - 前記結晶核剤(C)が、窒化ホウ素、タルク及びシリカからなる群より選ばれる少なく
とも一つである、請求項1又は2に記載のポリアセタール樹脂成形体。 - 前記ポリアセタール樹脂組成物が、前記ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し
、前記化合物(B)を0.06〜1.8質量部含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記
載のポリアセタール樹脂成形体。 - 前記ポリアセタール樹脂組成物が、前記ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対し
、前記結晶核剤(C)を0.0001〜0.18質量部含む、請求項1乃至4のいずれか
一項に記載のポリアセタール樹脂成形体。 - 前記ポリアセタール樹脂(A)中、ポリアセタールホモポリマーが50質量%以上含有
されている、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂成形体。 - 前記ポリアセタール樹脂成形体が射出成形品である、請求項1乃至6のいずれか一項に
記載のポリアセタール樹脂成形体。 - 請求項1乃至7のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂成形体を含む精密機構部品
。 - 前記精密機構部品が歯車である、請求項8に記載の精密機構部品。
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