JP6048498B2 - 積層ガスバリア性樹脂基材の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、積層ガスバリア性樹脂基材の製造方法に関する。より詳しくは、主に電子デバイス等のパッケージ、太陽電池や有機EL素子、液晶表示素子等のプラスチック基板といったディスプレイ材料に用いられるガスバリア性フィルムとして使用し得る、積層ガスバリア性樹脂基材の製造方法に関する。
従来、プラスチック基板やフィルム表面に、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化珪素等の金属酸化物の薄膜を形成したガスバリア性フィルムは、水蒸気や酸素等の各種ガスの遮断を必要とする物品の包装、食品や工業用品及び医薬品等の変質を防止するための包装用途等に広く用いられている。また、包装用途以外にも、液晶表示素子、太陽電池、有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELと略記する)素子等で使用されている。特に、液晶表示素子や有機EL素子などでは、水蒸気や空気の内部浸透が品質の劣化を招く要因となるため、高度なガスバリア性(ガス遮断性)が要求されている。
これらの高い水蒸気や空気等のガスバリア性の要望に応える方法の1つとして、ガスバリア層を積層する方法が考えられている。しかしながら、ガスバリア層を積層させる上で、ガスバリア層と下層との間に生じうる、ガスバリア層表面へのハンドリングの際の微小な傷や積層過程での異物の付着が、ガスバリア性を損なう原因となり、高いガス遮断性を実現する上で問題となっている。
これらの問題に対して、下記特許文献1では、ガスバリア層上にラミネートフィルムを付与することで、膜の欠陥や接触を防止し、ガスバリア層のダメージを低減する方法が提案されている。しかしながら、ラミネートフィルムを剥離した際に、ラミネートフィルムに塗布されている粘着物が、下層となるガスバリア層表面に残存することは、その後のガスバリア層を積層する上で異物となり、問題となることが知られている。
そして、こう言った問題から、下記特許文献2では、ガスバリア層に対して0.01N/25mm以上0.06N/25mm以下の剥離力である粘着層を有する粘着フィルム(ラミネートフィルム)を用いることで、粘着物の残存を低減させている。
特開2011−167967号公報 特開2011−84776号公報
しかしながら、本発明者らが確認したところ、上記の剥離力を規定した粘着フィルム(ラミネートフィルム)を用いた従来技術によっても、粘着フィルムの剥離後に粘着物の残存が原因と思われるガスバリア性の低下が起こり、残存粘着物への対策は十分とは言えないことが分かった。
そこで、本発明は、上記従来技術の問題点を鑑みてなされたもので、その目的は、積層したガスバリア性樹脂基材の形成において、樹脂基材上に形成したガスバリア層に離型性を有する樹脂材料をラミネートし、当該樹脂材料を剥離した後の樹脂材料の粘着物の残存の問題を解消し、積層時の異物の影響を極力低減することにより、ガス遮断性に優れた高品位の積層ガスバリア性樹脂基材を提供することにある。
本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
すなわち、樹脂基材上に、膜Aおよび膜Bの少なくとも一方によってガスバリア性を示す、膜Aと膜Bとを有する積層ガスバリア性樹脂基材の製造方法において、
前記樹脂基材上に前記膜Aを形成する工程(A)と、
前記膜A上に離型性を有する樹脂材料をラミネートする工程(B)と、
前記離型性を有する樹脂材料を前記膜Aから剥離する工程(C)と、
前記膜Aにエネルギーを付与する工程(D)と、
前記膜A上に前記膜Bを形成する工程(E)と、
を、順に少なくとも1回経る、積層ガスバリア性樹脂基材の製造方法である。
本発明の積層ガスバリア性樹脂基材の一実施形態の製造工程の概略を説明するための図である。 本発明の積層ガスバリア性樹脂基材の一実施形態の製造工程の概略を説明するための図である。 本発明の積層ガスバリア性樹脂基材の別の実施形態の製造工程の概略を説明するための図である。 大気圧プラズマ処理装置の概略図である。
以下、本発明を実施するための形態について説明する。本発明の製造方法は、樹脂基材上に、膜Aおよび膜Bの少なくとも一方によってガスバリア性を示す、膜Aと膜Bとを有する積層ガスバリア性樹脂基材の製造方法において、前記樹脂基材上に前記膜Aを形成する工程(A)と、前記膜A上に離型性を有する樹脂材料をラミネートする工程(B)と、前記離型性を有する樹脂材料を前記膜Aの面から剥離する工程(C)と、前記膜Aにエネルギーを付与する工程(D)と、前記膜A上に前記膜Bを形成する工程(E)と、を、順に少なくとも1回経る。膜Aまたは膜Bが多数積層される場合は、上記の工程を特に制限なく複数回経て積層ガスバリア性樹脂基材を製造できる。本発明によれば、高いガスバリア性能を有し、尚且つ連続生産性に優れたガスバリア性フィルムが実現される。
以下では、初めに図面を参照しながら、本発明の積層ガスバリア性樹脂基材の製造方法の好ましい実施形態について、概略を説明する。しかしながら、本発明はこの実施形態に限定はされない。次に、本発明の製造工程を、樹脂基材上に膜Aを形成する工程(A)、膜A上に離型性を有する樹脂材料をラミネートする工程(B)、離型性を有する樹脂材料を膜Aから剥離する工程(C)、膜Aにエネルギーを付与する工程(D)、および膜A上に膜Bを形成する工程(E)に区分して本発明の製造方法を説明する。
図1および図3は、本発明の一実施形態である積層ガスバリア性樹脂基材の製造方法の概略を説明するための図である。図1中、ロール3から繰り出された樹脂基材1上に、膜A形成工程5を経て、膜A 2が形成される。膜A 2上に、膜Aの保護のため、離型性を有する樹脂材料8がラミネートされ、ロール4に巻き取られる。次いで、ロール4は必要に応じて搬送や保管等された後、図3に示すように、再びロール4から離型性を有する樹脂材料8がラミネートされた樹脂基材1が繰り出され、離型性を有する樹脂材料8が剥離される。離型性を有する樹脂材料8が剥離された後、膜A 2上に、エネルギー付与工程9によってエネルギーを付与する。次いで、膜B形成工程10によって、膜A 2上に膜B 11を形成し、膜A 2および膜B 11を備える樹脂基材1がロール12に巻き取られる。
図2は、本発明の別の実施形態である積層ガスバリア性樹脂基材の製造方法の概略を説明するための図である。図2の実施形態においては、膜Aが塗布工程6および硬化のためのエネルギー付与工程7を経て形成される。図2中、ロール3から繰り出された樹脂基材1上に、膜A塗布工程6によって膜Aの塗布液が塗布される。次いで、膜A硬化のためのエネルギー付与工程7によって、膜Aの塗布液が硬化し、膜A 2が完成される。この膜A 2上に、膜Aの保護のため、離型性を有する樹脂材料8がラミネートされ、ロール4に巻き取られる。次いで、必要に応じて搬送や保管等された後、図3に示すように、再びロール4から離型性を有する樹脂材料8がラミネートされた樹脂基材1が繰り出され、離型性を有する樹脂材料8が剥離される。離型性を有する樹脂材料8が剥離された後、膜A2上に、エネルギー付与工程9によって、エネルギーを付与する。したがって、図2の実施形態の場合には、エネルギー付与工程自体は少なくとも2ある。その後、図3に示すように、膜B形成工程10によって、膜A 2上に膜B 11を形成し、膜A 2および膜B 11を備える樹脂基材1がロール12に巻き取られる。図3には示さないが、膜Bを塗布工程および硬化のためのエネルギー付与工程によって形成してもよい。
(1)工程(A)
工程(A)は、樹脂基材上に、膜Aおよび膜Bの少なくとも一方あるいは両方によってガスバリア性を示す、膜Aと膜Bとを有する積層ガスバリア性樹脂基材の製造方法において、樹脂基材上に膜Aを形成する工程である。
本発明において、ガスバリア性を示すとは、膜Aおよび膜Bを備える積層ガスバリア性樹脂基材が、全体として、水蒸気透過率0.01g/m/day以下、酸素透過率0.01ml/m/day/atm以下を示すことをいう。水蒸気透過率は、JIS K 712gBや特開2004−333127号公報等に記載された方法により測定することができる(g/m/day)。また、酸素透過率についても同じく、JIS K 7126B等に記載された方法で測定することができる(ml/m/day/atm)。
本発明においては、膜Aおよび膜Bの一方が上記のガスバリア性を示してもよいし、膜Aおよび膜Bを組み合わせることで上記のガスバリア性を達成してもよい。膜Aおよび膜Bについては後述するが、上記のガスバリア性が発揮されれば、互いに同一の材料で構成されてもよいし、異なる材料で構成されてもよい。本発明は、膜Aを形成し、離型性を有する樹脂材料を貼着および剥離した後に、エネルギー付与する工程を有していることが特徴であり、このエネルギー付与工程によって、積層ガスバリア性樹脂基材の最終的なガスバリア性を向上させるものである。したがって、膜Aおよび膜Bは、ガスバリア性を示す構成であれば、どのような材料および形成方法の膜であっても本発明の製造方法を適用することができる。すなわち、以下、膜Aの好ましい具体例を記載するが、これは一例にすぎず、本発明はガスバリア性を示す膜の具体的な種類や材料のいかんを問わない製造方法である。
また、上記のガスバリア性を有するためには、膜Aおよび膜Bは、併せて1×10−14g・cm/(cm・sec・Pa)以下の水蒸気透過係数を有するように形成されることが好ましい。また、水蒸気透過係数は以下の方法で測定することができる。既知の支持体(例えばセルローストリアセテートフィルム;厚み100μm)上に膜Aおよび膜Bを所定の厚みで形成しそのまま試料膜として用い、この試料膜を挟んで隔てた一次側と二次側の2つの容器を真空にする。一次側に相対湿度92%の水蒸気を導入し、試料膜を透過し二次側に出てきた水蒸気量を、250℃において真空計を用いて計測する。これを経時で測定し、縦軸に二次側水蒸気圧(Pa)、横軸に時間(秒)をとり透過曲線を作成する。この透過曲線の直線部の勾配を用いて水蒸気透過係数(g・cm・cm−2・sec−1・Pa−1)を求める。支持体の水蒸気透過係数は既知なので、この厚みおよび支持体上に形成した膜Aおよび膜Bの厚みから、水蒸気透過係数が計算できる。
膜Aの形成工程としては、特に制限はなく従来公知の薄膜形成方法が使用できる。典型的には、物理蒸着法、化学蒸着法等のドライコート法、または、塗布液を用いた、スピンコート法、スプレーコート法、プレートコート法、バーコート法、ディップコート法等のウェットコート法が挙げられる。
ドライコート法としては、大別して、物理気相成長法及び化学気相成長法(化学蒸着法)が挙げられ、物理的気相成長法は、気相中で物質の表面に物理的手法により、目的とする物質、例えば、炭素膜等の薄膜を堆積する方法であり、これらの方法としては、蒸着(抵抗加熱法、電子ビーム蒸着、分子線エピタキシー)法、イオンプレーティング法、スパッタ法等がある。一方、化学気相成長法(化学蒸着法、Chemical Vapor Deposition)は、基材上に、目的とする薄膜の成分を含む原料ガスを供給し、基板表面或いは気相での化学反応により膜を堆積する方法である。また、化学反応を活性化する目的で、プラズマなどを発生させる方法などがあり、熱CVD法、触媒化学気相成長法、光CVD法、プラズマCVD法、大気圧プラズマCVD法など公知のCVD方式等が挙げられるが、本発明においては、いずれも有利に用いることができる。特に限定されるものではないが、製膜速度や処理面積の観点から、プラズマCVD法を適用することが好ましい。
以下、本発明の好ましい態様として、ドライコート法の一例であるプラズマCVD法を用いて膜Aを形成する方法について詳述する。膜AをプラズマCVD法で形成することにより、基材からの水分移行を妨げることができ、膜Bを形成する際の硬化処理(エネルギー照射による改質処理)が進行しやすくなる。
プラズマCVD法、大気圧または大気圧近傍の圧力下でのプラズマCVD法により得られるガスバリア層は、原材料(原料ともいう)である金属化合物、分解ガス、分解温度、投入電力などの条件を選ぶことで、金属炭化物、金属窒化物、金属酸化物、金属硫化物、金属ハロゲン化物、またこれらの混合物(金属酸窒化物、金属酸化ハロゲン化物、金属窒化炭化物など)も作り分けることができるため好ましい。
例えば、珪素化合物を原料化合物として用い、分解ガスに酸素を用いれば、珪素酸化物が生成する。また、亜鉛化合物を原料化合物として用い、分解ガスに二硫化炭素を用いれば、硫化亜鉛が生成する。これはプラズマ空間内では非常に活性な荷電粒子・活性ラジカルが高密度で存在するため、プラズマ空間内では多段階の化学反応が非常に高速に促進され、プラズマ空間内に存在する元素は熱力学的に安定な化合物へと非常な短時間で変換されるためである。
膜Aを形成し得るこのような原料としては、典型または遷移金属元素を有していれば、常温常圧下で気体、液体、固体いずれの状態であっても構わない。気体の場合にはそのまま放電空間に導入できるが、液体、固体の場合は、加熱、バブリング、減圧、超音波照射等の手段により気化させて使用する。又、溶媒によって希釈して使用してもよく、溶媒は、メタノール、エタノール、n−ヘキサンなどの有機溶媒及びこれらの混合溶媒が使用出来る。尚、これらの希釈溶媒は、プラズマ放電処理中において、分子状、原子状に分解されるため、影響は殆ど無視することができる。
しかし、好ましくは大気圧下0℃〜250℃の温度域で蒸気圧を有する化合物であり、さらに好ましくは0℃〜250℃の温度域に液体状態を呈する化合物である。これはプラズマ製膜室内が大気圧近傍の圧力であるために、大気圧下で気化できないとプラズマ製膜室内にガスを送り込むことが難しく、また原料化合物が液体の方が、プラズマ製膜室内に送りこむ量を精度良く管理できるためである。なおガスバリア層を製膜するプラスチックフィルムの耐熱性が270℃以下の場合は、プラスチックフィルム耐熱温度からさらに20℃以下の温度で蒸気圧を有する化合物であることが好ましい。
このような金属化合物としては、特に制限されないが、例えば、ケイ素化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物、アルミニウム化合物、硼素化合物、錫化合物、有機金属化合物などが挙げられる。
これらのうち、ケイ素化合物として、シラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトラt−ブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(エチルアミノ)ジメチルシラン、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、ビス(トリメチルシリル)カルボジイミド、ジエチルアミノトリメチルシラン、ジメチルアミノジメチルシラン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、ヘプタメチルジシラザン、ノナメチルトリシラザン、オクタメチルシクロテトラシラザン、テトラキスジメチルアミノシラン、テトライソシアナートシラン、テトラメチルジシラザン、トリス(ジメチルアミノ)シラン、トリエトキシフルオロシラン、アリルジメチルシラン、アリルトリメチルシラン、ベンジルトリメチルシラン、ビス(トリメチルシリル)アセチレン、1,4−ビストリメチルシリル−1,3−ブタジイン、ジ−t−ブチルシラン、1,3−ジシラブタン、ビス(トリメチルシリル)メタン、シクロペンタジエニルトリメチルシラン、フェニルジメチルシラン、フェニルトリメチルシラン、プロパルギルトリメチルシラン、テトラメチルシラン、トリメチルシリルアセチレン、1−(トリメチルシリル)−1−プロピン、トリス(トリメチルシリル)メタン、トリス(トリメチルシリル)シラン、ビニルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、Mシリケート51等が挙げられる。
チタン化合物としては、例えば、チタンメトキシド、チタンエトキシド、チタンイソプロポキシド、チタンテトライソポロポキシド、チタンn−ブトキシド、チタンジイソプロポキシド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、チタンジイソプロポキシド(ビス−2,4−エチルアセトアセテート)、チタンジ−n−ブトキシド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、チタンアセチルアセトネート、ブチルチタネートダイマー等が挙げられる。
ジルコニウム化合物としては、ジルコニウムn−プロポキシド、ジルコニウムn−ブトキシド、ジルコニウムt−ブトキシド、ジルコニウムトリ−n−ブトキシドアセチルアセトネート、ジルコニウムジ−n−ブトキシドビスアセチルアセトネート、ジルコニウムアセチルアセトネート、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムヘキサフルオロペンタンジオネート等が挙げられる。
アルミニウム化合物としては、アルミニウムエトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムn−ブトキシド、アルミニウムs−ブトキシド、アルミニウムt−ブトキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、トリエチルジアルミニウムトリ−s−ブトキシド等が挙げられる。
硼素化合物としては、ジボラン、テトラボラン、フッ化硼素、塩化硼素、臭化硼素、ボラン−ジエチルエーテル錯体、ボラン−THF錯体、ボラン−ジメチルスルフィド錯体、三フッ化硼素ジエチルエーテル錯体、トリエチルボラン、トリメトキシボラン、トリエトキシボラン、トリ(イソプロポキシ)ボラン、ボラゾール、トリメチルボラゾール、トリエチルボラゾール、トリイソプロピルボラゾール、等が挙げられる。
錫化合物としては、テトラエチル錫、テトラメチル錫、二酢酸ジ−n−ブチル錫、テトラブチル錫、テトラオクチル錫、テトラエトキシ錫、メチルトリエトキシ錫、ジエチルジエトキシ錫、トリイソプロピルエトキシ錫、ジエチル錫、ジメチル錫、ジイソプロピル錫、ジブチル錫、ジエトキシ錫、ジメトキシ錫、ジイソプロポキシ錫、ジブトキシ錫、錫ジブチラート、錫ジアセトアセトナート、エチル錫アセトアセトナート、エトキシ錫アセトアセトナート、ジメチル錫ジアセトアセトナート等、錫水素化合物等、ハロゲン化錫としては、二塩化錫、四塩化錫等が挙げられる。
また、有機金属化合物としては、例えば、アンチモンエトキシド、ヒ素トリエトキシド、バリウム2,2,6,6−テトラメチルヘプタンジオネート、ベリリウムアセチルアセトナート、ビスマスヘキサフルオロペンタンジオネート、ジメチルカドミウム、カルシウム2,2,6,6−テトラメチルヘプタンジオネート、クロムトリフルオロペンタンジオネート、コバルトアセチルアセトナート、銅ヘキサフルオロペンタンジオネート、マグネシウムヘキサフルオロペンタンジオネート−ジメチルエーテル錯体、ガリウムエトキシド、テトラエトキシゲルマニウム、テトラメトキシゲルマニウム、ハフニウムt−ブドキシド、ハフニウムエトキシド、インジウムアセチルアセトナート、インジウム2,6−ジメチルアミノヘプタンジオネート、フェロセン、ランタンイソプロポキシド、酢酸鉛、テトラエチル鉛、ネオジウムアセチルアセトナート、白金ヘキサフルオロペンタンジオネート、トリメチルシクロペンタジエニル白金、ロジウムジカルボニルアセチルアセトナート、ストロンチウム2,2,6,6−テトラメチルヘプタンジオネート、タンタルメトキシド、タンタルトリフルオロエトキシド、テルルエトキシド、タングステンエトキシド、バナジウムトリイソプロポキシドオキシド、マグネシウムヘキサフルオロアセチルアセトナート、亜鉛アセチルアセトナート、ジエチル亜鉛、などが挙げられる。
また、これらの金属を含む原料ガスを分解して無機化合物を得るための分解ガスとしては、水素ガス、メタンガス、アセチレンガス、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス、窒素ガス、アンモニアガス、亜酸化窒素ガス、酸化窒素ガス、二酸化窒素ガス、酸素ガス、水蒸気、フッ素ガス、フッ化水素、トリフルオロアルコール、トリフルオロトルエン、硫化水素、二酸化硫黄、二硫化炭素、塩素ガス、などが挙げられる。また、上記分解ガスを、アルゴンガス、ヘリウムガスなどの不活性ガスと混合してもよい。
金属元素を含む原料ガスと、分解ガスを適宜選択することで所望の膜Aを得ることができる。化学蒸着法により形成される膜Aは、透過性の観点から、金属炭化物、金属窒化物、金属酸化物、金属ハロゲン化物、金属硫化物またはこれらの複合化合物であることが好ましい。具体的には、膜Aは、例えば、酸化珪素、酸窒化珪素、窒化珪素、酸化アルミニウムなどから構成され、ガスバリア性及び透明性の点で酸化珪素、酸窒化珪素または窒化珪素から選ばれる少なくとも1種を有することが好ましく、酸化珪素または酸窒化珪素から選ばれる少なくとも1種を有すること好ましい。また、膜Aは実質的にもしくは完全に無機化合物の層として形成されているのが望ましい。
ここで、膜Aの膜厚は、特に制限されないが、1〜1000nmであることが好ましく、50〜800nmであることがより好ましい。このような範囲であれば、高いガスバリア性能、折り曲げ耐性、断裁加工適性に優れる。
以下、プラズマCVD法についてより具体的に説明する。図4は、本発明で使用できるプラズマCVD装置の一例を示す概略断面図である。図4において、プラズマCVD装置101は、真空槽102を有しており、真空槽102の内部の底面側には、サセプタ105が配置されている。真空槽102の内部の天井側には、サセプタ105と対向する位置にカソード電極103が配置されている。真空槽102の外部には、熱媒体循環系106と、真空排気系107と、ガス導入系108と、高周波電源109が配置されている。
熱媒体循環系106内には熱媒体が配置されている。熱媒体循環系106には、熱媒体を移動させるポンプと、熱媒体を加熱する加熱装置と、冷却する冷却装置と、熱媒体の温度を測定する温度センサーと、熱媒体の設定温度を記憶する記憶装置とを有する加熱冷却装置160が設けられている。
加熱冷却装置160は、熱媒体の温度を測定し、熱媒体を記憶された設定温度まで加熱又は冷却し、サセプタ105に供給するように構成されている。供給された熱媒体はサセプタ105の内部を流れ、サセプタ105を加熱又は冷却して加熱冷却装置160に戻る。このとき、熱媒体の温度は、設定温度よりも高温又は低温になっており、加熱冷却装置160は熱媒体を設定温度まで加熱又は冷却し、サセプタ105に供給する。かくて冷却媒体はサセプタと加熱冷却装置160の間を循環し、サセプタ105は、供給された設定温度の熱媒体によって加熱又は冷却される。
真空槽102は真空排気系107に接続されており、このプラズマCVD装置101によって成膜処理を開始する前に、予め真空槽102の内部を真空排気すると共に、熱媒体を加熱して室温から設定温度まで昇温させておき、設定温度の熱媒体をサセプタ105に供給する。サセプタ105は使用開始時には室温であり、設定温度の熱媒体が供給されると、サセプタ105は昇温される。
一定時間、設定温度の熱媒体を循環させた後、真空槽102内の真空雰囲気を維持しながら真空槽102内に成膜対象の基板110を搬入し、サセプタ105上に配置する。
カソード電極103のサセプタ105に対面する面には、多数のノズル(孔)が形成されている。カソード電極103はガス導入系108に接続されており、ガス導入系108からカソード電極103にCVDガスを導入すると、カソード電極103のノズルから真空雰囲気の真空槽102内にCVDガスが噴出される。カソード電極103は高周波電源109に接続されており、サセプタ105と真空槽102とは接地電位に接続されている。
ガス導入系108から真空槽102内にCVDガスを供給し、加熱冷却装置160から一定温度の熱媒体をサセプタ105に供給しながら高周波電源109を起動し、カソード電極103に高周波電圧を印加すると、導入されたCVDガスのプラズマが形成される。プラズマ中で活性化されたCVDガスがサセプタ105上の基板110の表面に到達すると、基板110の表面に薄膜が成長する。
薄膜成長中は、加熱冷却装置160から一定温度の熱媒体がサセプタ105に供給されており、サセプタ105は、熱媒体によって加熱又は冷却され、一定温度に維持された状態で薄膜が形成される。一般に、薄膜を形成する際の成長温度の下限温度は、薄膜の膜質から決まっており、上限温度は基板110上に既に形成されている薄膜のダメージの許容範囲で決まっている。
下限温度や上限温度は形成する薄膜の材質や、既に形成されている薄膜の材質等によって異なるが、ハイバリアフィルム等に用いられるSiN膜やSiON膜を形成する場合は、膜質を確保するために下限温度が50℃であり、上限温度は基材の耐熱温度以下である。
プラズマCVD方法で形成される薄膜の膜質と成膜温度の相関関係と、成膜対象物(基板110)が受けるダメージと成膜温度の相関関係とは予め求めておく。例えば、プラズマCVDプロセス中の基板110の下限温度は50℃、上限温度は250℃である。
更に、カソード電極103に13.56MHz以上の高周波電圧を印加してプラズマを形成した場合、サセプタ105に供給する熱媒体の温度と基板110の温度の関係が予め測定されており、プラズマCVDプロセス中に基板110の温度を、下限温度以上、上限温度以下に維持するために、サセプタ105に供給する熱媒体の温度が求められている。
例えば、下限温度(ここでは50℃)が記憶され、下限温度以上の温度に温度制御された熱媒体がサセプタ105に供給されるように設定されている。サセプタ105から還流された熱媒体は、加熱又は冷却され、50℃の設定温度の熱媒体がサセプタ105に供給される。例えば、CVDガスとして、シランガスとアンモニアガスと窒素ガスまたは水素ガスの混合ガスが供給され、基板110が、下限温度以上、上限温度以下の温度に維持された状態でSiN膜が形成される。
プラズマCVD装置101の起動直後は、サセプタ105は室温であり、サセプタ105から加熱冷却装置160に還流された熱媒体の温度は設定温度よりも低い。従って、起動直後は、加熱冷却装置160は還流された熱媒体を加熱して設定温度に昇温させ、サセプタ105に供給することになる。この場合、サセプタ105及び基板110は熱媒体によって加熱、昇温され、基板110は下限温度以上、上限温度以下の範囲に維持される。
複数枚の基板110に連続して薄膜を形成すると、プラズマから流入する熱によってサセプタ105が昇温する。この場合、サセプタ105から加熱冷却装置160に還流される熱媒体は下限温度(50℃)よりも高温になっているため、加熱冷却装置160は熱媒体を冷却し、設定温度の熱媒体をサセプタ105に供給する。これにより、基板110を下限温度以上、上限温度以下の範囲に維持しながら薄膜を形成することができる。
このように、加熱冷却装置160は、還流された熱媒体の温度が設定温度よりも低温の場合には熱媒体を加熱し、設定温度よりも高温の場合は熱媒体を冷却し、いずれの場合も設定温度の熱媒体をサセプタに供給しており、その結果、基板110は下限温度以上、上限温度以下の温度範囲が維持される。
薄膜が所定膜厚に形成されたら、基板110を真空槽102の外部に搬出し、未成膜の基板110を真空槽102内に搬入し、上記と同様に、設定温度の熱媒体を供給しながら薄膜を形成する。
以上、真空プラズマCVD法による膜Aの形成方法について一例を挙げたが、膜Aの形成方法としては、真空を必要としないプラズマCVD法が好ましく、大気圧プラズマCVD法がさらに好ましい。
大気圧近傍でのプラズマCVD処理を行う大気圧プラズマCVD法は、真空下のプラズマCVD法に比べ、減圧にする必要がなく生産性が高いだけでなく、プラズマ密度が高密度であるために成膜速度が速く、更には通常のCVD法の条件に比較して、大気圧下という高圧力条件では、ガスの平均自由工程が非常に短いため、極めて均質の膜が得られる。
大気圧プラズマ処理の場合は、放電ガスとしては窒素ガスまたは周期表の第18属原子、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等が用いられる。これらの中でも窒素、ヘリウム、アルゴンが好ましく用いられ、特に窒素がコストも安く好ましい。
〈異なる周波数の電界を二つ以上重畳した大気圧プラズマ処理〉
次に、大気圧プラズマ処理について好ましい形態を説明する。大気圧プラズマ処理は、具体的には、国際公開第2007/026545号に記載されるように、放電空間に異なる周波数の電界を2つ以上形成したもので、第1の高周波電界と第2の高周波電界とを重畳した電界を形成する方式を用いることが好ましい。
具体的には、第1の高周波電界の周波数ω1より第2の高周波電界の周波数ω2が高く、かつ、第1の高周波電界の強さV1と、第2の高周波電界の強さV2と、放電開始電界の強さIVとの関係が、
V1≧IV>V2 または V1>IV≧V2
を満たし、第2の高周波電界の出力密度が、1W/cm以上であることが好ましい。
このような放電条件を採用することにより、例えば、窒素ガスのように放電開始電界強度が高い放電ガスでも、放電を開始し、高密度で安定なプラズマ状態を維持でき、高性能な薄膜形成を行うことができる。
上記の測定により放電ガスを窒素ガスとした場合、その放電開始電界強度IV(1/2Vp−p)は3.7kV/mm程度であり、従って、上記の関係において、第1の印加電界強度を、V1≧3.7kV/mmとして印加することによって窒素ガスを励起し、プラズマ状態にすることができる。
ここで、第1電源の周波数としては、200kHz以下が好ましく用いることができる。またこの電界波形としては、連続波でもパルス波でもよい。下限は1kHz程度が望ましい。一方、第2電源の周波数としては、800kHz以上が好ましく用いられる。この第2電源の周波数が高い程、プラズマ密度が高くなり、緻密で良質な薄膜が得られる。上限は200MHz程度が望ましい。
このような2つの電源から高周波電界を形成することは、第1の高周波電界によって高い放電開始電界強度を有する放電ガスの放電を開始するのに必要であり、また第2の高周波電界の高い周波数及び高い出力密度によりプラズマ密度を高くして緻密で良質な薄膜を形成することができる。
本発明でいう大気圧もしくはその近傍の圧力とは、20kPa〜110kPa程度であり、93kPa〜104kPaが好ましい。
また、励起したガスとは、エネルギーを得ることによって、ガス中の分子の少なくとも一部が、今ある状態からより高い状態へ移ることをいい、励起ガス分子、ラジカル化したガス分子、イオン化したガス分子を含むガスがこれに該当する。
膜Aは、大気圧もしくはその近傍の圧力下で、高周波電界を発生させた放電空間に、珪素を含有する原料ガスを含有するガスを、励起した放電ガスと混合して二次励起ガスを形成し、基材をこの二次励起ガスに晒すことにより無機膜を形成する方法であることが好ましい。
すなわち、第1ステップとして、対向電極間(放電空間)を、大気圧もしくはその近傍の圧力とし、放電ガスを対向電極間に導入し、高周波電圧を対向電極間に印加して、放電ガスをプラズマ状態とし、続いてプラズマ状態になった放電ガスと原料ガスとを、放電空間外で混合させて、この混合ガス(二次励起ガス)に基材を晒して、基材上に膜Aを形成する。
次に、ウェットコート法の好ましい実施形態について説明する。ウェットコート法ではまず、膜Aの塗布液を、後述する珪素化合物等の膜Aの材料を溶媒中に溶解または分散させて調製する。
(膜Aの塗布液の調製)
初めに、膜A形成の塗布液に含まれる、膜Aを形成する材料について説明する。膜Aは無機化合物を含む膜であることが好ましく、無機化合物材料としては珪素化合物が好ましい。珪素化合物としては、珪素化合物を含有する塗布液の調製が可能であれば特に限定はされないが、成膜性、クラック等の欠陥が少ないことや、残留有機物の少なさの点で、パーヒドロポリシラザン、オルガノポリシラザン等のポリシラザン;シルセスキオキサン等のポリシロキサン等が好ましい。
膜Aを形成し得る珪素化合物としては、例えば、パーヒドロポリシラザン、オルガノポリシラザン、シルセスキオキサン、テトラメチルシラン、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラメトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシラザン、1,1−ジメチル−1−シラシクロブタン、トリメチルビニルシラン、メトキシジメチルビニルシラン、トリメトキシビニルシラン、エチルトリメトキシシラン、ジメチルジビニルシラン、ジメチルエトキシエチニルシラン、ジアセトキシジメチルシラン、ジメトキシメチル−3,3,3−トリフルオロプロピルシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、アリールトリメトキシシラン、エトキシジメチルビニルシラン、アリールアミノトリメトキシシラン、N−メチル−N−トリメチルシリルアセトアミド、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、メチルトリビニルシラン、ジアセトキシメチルビニルシラン、メチルトリアセトキシシラン、アリールオキシジメチルビニルシラン、ジエチルビニルシラン、ブチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、テトラビニルシラン、トリアセトキシビニルシラン、テトラアセトキシシラン、3−トリフルオロアセトキシプロピルトリメトキシシラン、ジアリールジメトキシシラン、ブチルジメトキシビニルシラン、トリメチル−3−ビニルチオプロピルシラン、フェニルトリメチルシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、フェニルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ジメチルイソペンチロキシビニルシラン、2−アリールオキシエチルチオメトキシトリメチルシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−アリールアミノプロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、ジメチルエチキシフェニルシラン、ベンゾイロキシトリメチルシラン、3−メタクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、ジメチルエトキシ−3−グリシドキシプロピルシラン、ジブトキシジメチルシラン、3−ブチルアミノプロピルトリメチルシラン、3−ジメチルアミノプロピルジエトキシメチルシラン、2−(2−アミノエチルチオエチル)トリエトキシシラン、ビス(ブチルアミノ)ジメチルシラン、ジビニルメチルフェニルシラン、ジアセトキシメチルフェニルシラン、ジメチル−p−トリルビニルシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、ジエチルメチルフェニルシラン、ベンジルジメチルエトキシシラン、ジエトキシメチルフェニルシラン、デシルメチルジメトキシシラン、ジエトキシ−3−グリシドキシプロピルメチルシラン、オクチロキシトリメチルシラン、フェニルトリビニルシラン、テトラアリールオキシシラン、ドデシルトリメチルシラン、ジアリールメチルフェニルシラン、ジフェニルメチルビニルシラン、ジフェニルエトキシメチルシラン、ジアセトキシジフェニルシラン、ジベンジルジメチルシラン、ジアリールジフェニルシラン、オクタデシルトリメチルシラン、メチルオクタデシルジメチルシラン、ドコシルメチルジメチルシラン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,4−ビス(ジメチルビニルシリル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アセトキシプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリビニルシクロトリシロキサン、1,3,5−トリス(3,3,3−トリフルオロプロピル)−1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラエトキシ−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等を挙げることができる。
シルセスキオキサンとしては、例えば、Mayaterials製Q8シリーズのOctakis(tetramethylammonium)pentacyclo−octasiloxane−octakis(yloxide)hydrate;Octa(tetramethylammonium)silsesquioxane、Octakis(dimethylsiloxy)octasilsesquioxane、Octa[[3−[(3−ethyl−3−oxetanyl)methoxy]propyl]dimethylsiloxy]octasilsesquioxane;Octaallyloxetane silsesquioxane、Octa[(3−Propylglycidylether)dimethylsiloxy]silsesquioxane;Octakis[[3−(2,3−epoxypropoxy)propyl]dimethylsiloxy]octasilsesquioxane、Octakis[[2−(3,4−epoxycyclohexyl)ethyl]dimethylsiloxy]octasilsesquioxane、Octakis[2−(vinyl)dimethylsiloxy]silsesquioxane;Octakis(dimethylvinylsiloxy)octasilsesquioxane、Octakis[(3−hydroxypropyl)dimethylsiloxy]octasilsesquioxane、Octa[(methacryloylpropyl)dimethylsilyloxy]silsesquioxane、Octakis[(3−methacryloxypropyl)dimethylsiloxy]octasilsesquioxane及び有機基を含まない水素化シルセスキオキサン等が挙げられる。
特に、中でも無機ケイ素化合物が好ましく、常温で固体である無機ケイ素化合物がより好ましい。パーヒドロポリシラザン、水素化シルセスキオキサン等がより好ましく用いられる。「ポリシラザン」とは、珪素−窒素結合を持つポリマーで、Si−N、Si−H、N−H等からなるSiO、Si及び両方の中間固溶体SiO等のセラミック前駆体無機ポリマーである。
樹脂基材を損なわないように塗布するためには、比較的低温でセラミック化してシリカに変性する化合物(低温セラミックス化ポリシラザン)がよく、例えば、特開平8−112879号公報に記載の下記一般式(1)で表される単位からなる主骨格を有する化合物が好ましい。
上記一般式(1)において、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素原子数1〜30、より好ましくは炭素原子数1〜20のアルキル基)、アルケニル基(好ましくは、炭素原子数2〜20のアルケニル基)、シクロアルキル基(好ましくは炭素原子数3〜10のシクロアルキル基)、アリール基(好ましくは炭素原子数6〜30のアリール基)、シリル基(好ましくは炭素原子数3〜20のシリル基)、アルキルアミノ基(好ましくは炭素原子数1〜40、より好ましくは炭素原子数1〜20のアルキルアミノ基)またはアルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜30のアルコキシ基)を表す。ただし、R、R及びRの少なくとも1つは水素原子であることが好ましい。
上記R、R及びRにおけるアルキル基は、直鎖または分岐鎖のアルキル基である。炭素原子数1〜30のアルキル基としては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、1,3−ジメチルブチル基、1−イソプロピルプロピル基、1,2−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、1,4−ジメチルペンチル基、3−エチルペンチル基、2−メチル−1−イソプロピルプロピル基、1−エチル−3−メチルブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、3−メチル−1−イソプロピルブチル基、2−メチル−1−イソプロピル基、1−t−ブチル−2−メチルプロピル基、n−ノニル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、イソデシル基、n−ウンデシル基、1−メチルデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基、n−ヘンエイコシル基、n−ドコシル基、n−トリコシル基、n−テトラコシル基、n−ペンタコシル基、n−ヘキサコシル基、n−ヘプタコシル基、n−オクタコシル基、n−トリアコンチル基などが挙げられる。
炭素原子数2〜20のアルケニル基としては、ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基などが挙げられる。
炭素原子数3〜10のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基などが挙げられる。
炭素原子数6〜30のアリール基としては、特に制限はないが、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基などの非縮合炭化水素基;ペンタレニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、フルオレニル基、アセナフチレニル基、プレイアデニル基、アセナフテニル基、フェナレニル基、フェナントリル基、アントリル基、フルオランテニル基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基などの縮合多環炭化水素基が挙げられる。
炭素原子数3〜20のシリル基としては、アルキル/アリールシリル基が挙げられ、具体的にはトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、メチルジフェニルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基等が挙げられる。
炭素原子数1〜40のアルキルアミノ基としては、特に制限はないが、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、メチル−tert−ブチルアミノ基、ジオクチルアミノ基、ジデシルアミノ基、ジヘキサデシルアミノ基、ジ2−エチルヘキシルアミノ基、ジ2−ヘキシルデシルアミノ基などが挙げられる。
炭素原子数1〜30のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ペンタデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、ヘプタデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、ノナデシルオキシ基、エイコシルオキシ基、ヘンエイコシルオキシ基、ドコシルオキシ基、トリコシルオキシ基、テトラコシルオキシ基、ペンタコシルオキシ基、ヘキサコシルオキシ基、ヘプタコシルオキシ基、オクタコシルオキシ基、トリアコンチルオキシ基などが挙げられる。
本発明では、得られるガスバリア膜としての緻密性の観点からは、R、R、及びRの全てが水素原子である前記パーヒドロポリシラザンが特に好ましい。
上記一般式(1)で表される単位からなる主骨格を有する化合物は、数平均分子量は100〜5万であることが好ましい。数平均分子量はゲル浸透クロマトグラフ(GPC)によって測定することができる。
一方、そのSiと結合する水素原子部分の一部がアルキル基等で置換されたオルガノポリシラザンは、メチル基等のアルキル基を有することにより下地である基材との接着性が改善され、かつ硬くてもろいポリシラザンによる膜に靭性を持たせることができ、より(平均)膜厚を厚くした場合でもクラックの発生が抑えられる利点がある。用途に応じて適宜、これらパーヒドロポリシラザンとオルガノポリシラザンを選択してよく、混合して使用することもできる。
パーヒドロポリシラザンは、直鎖構造と6及び8員環を中心とする環構造が存在した構造と推定されている。その分子量は数平均分子量(Mn)で約600〜2000程度(ポリスチレン換算)で、液体または固体の物質があり、その状態は分子量により異なる。これらは有機溶媒に溶解した溶液状態で市販されており、市販品をそのままポリシラザン含有塗布液として使用することができる。
低温でセラミック化するポリシラザンの他の例としては、上記一般式(1)で表される単位からなる主骨格を有するポリシラザンに、ケイ素アルコキシドを反応させて得られるケイ素アルコキシド付加ポリシラザン(例えば、特開平5−238827号公報参照)、グリシドールを反応させて得られるグリシドール付加ポリシラザン(例えば、特開平6−122852号公報参照)、アルコールを反応させて得られるアルコール付加ポリシラザン(例えば、特開平6−240208号公報参照)、金属カルボン酸塩を反応させて得られる金属カルボン酸塩付加ポリシラザン(例えば、特開平6−299118号公報参照)、金属を含むアセチルアセトナート錯体を反応させて得られるアセチルアセトナート錯体付加ポリシラザン(例えば、特開平6−306329号公報参照)、金属微粒子を添加して得られる金属微粒子添加ポリシラザン(例えば、特開平7−196986号公報参照)等が挙げられる。または、ポリシラザンは、市販品を使用してもよい。
ポリシラザン含有の塗布液中には、酸化珪素化合物への転化を促進するため、アミンや金属の触媒を添加することもできる。具体的には、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製のアクアミカ(登録商標) NAX120−20、NN110、NN310、NN320、NL110A、NL120A、NL150A、NP110、NP140、SP140等が挙げられる。
膜Aの塗布液を調製するのに用いることのできる有機溶媒としては、具体的には、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒や、脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル類が使用できる。詳しくは、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、ソルベッソ、ターベン等の炭化水素、塩化メチレン、トリコロロエタン等のハロゲン炭化水素、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類等がある。これらの有機溶媒は、ポリシラザン等膜Aの材料の溶解度や有機溶媒の蒸発速度等の特性にあわせて選択し、複数の有機溶媒を混合してもよい。ポリシラザンの場合には、ポリシラザンと容易に反応するようなアルコール系や水分を含有するものを用いることは好ましくない。
膜Aの塗布液中における材料濃度は、目的とする膜Aの膜厚や塗布液のポットライフによっても異なるが、0.2〜35質量%程度であることが好ましい。
塗布液は、スピンコート法、スプレーコート法、プレートコート法、バーコート法、ディップコート法等で樹脂基材上に所望の膜厚に塗布する。次いで、この塗布膜にエネルギー付与することにより、膜Aを完成させる。
(膜A形成のためのエネルギー付与処理)
膜Aの塗布膜を形成した後、膜Aを完成させるためにエネルギー付与を行うことができる。好ましい形態は、本発明の方法において、前記エネルギーが、紫外光、コロナ放電、プラズマ放電およびレーザー光から選ばれる、積層ガスバリア性樹脂基材の製造方法である。より好ましい形態は、本発明の方法において、前記エネルギーが波長150〜200nmの真空紫外光である、積層ガスバリア性樹脂基材の製造方法である。エネルギー付与により、上記の珪素化合物の酸化素または酸化窒化珪素への転化反応を指し、具体的にはガスバリア性樹脂基材が全体としてガスバリア性を発現するレベルの無機薄膜を形成する。エネルギー照射のエネルギーとしては、好ましくは、紫外光、コロナ放電、プラズマ放電、レーザー、熱から選ばれるいずれかであり、より好ましくは、紫外光である。珪素化合物の置換反応による酸化珪素膜または酸化窒化珪素層の形成には450℃以上の高温が必要であり、プラスチック等のフレキシブル基板においては、適応が難しい。従って、本発明のガスバリア性フィルム作製に際しては、プラスチック基板への適応という観点から、より低温で、転化反応が可能なプラズマやオゾンや紫外線を使う転化反応が好ましい。
(プラズマ処理)
本発明において、膜A形成のために用いることのできるプラズマ処理は、公知の方法を用いることができるが、好ましくは前述の大気圧プラズマ処理等を挙げることができる。
(熱処理)
珪素化合物を含有する塗膜を後述するエキシマ照射処理等と組み合わせて、加熱処理することができる。
加熱処理としては、例えば、ヒートブロック等の発熱体に基板を接触させ熱伝導により塗膜を加熱する方法、抵抗線等による外部ヒーターにより雰囲気を加熱する方法、IRヒーターの様な赤外領域の光を用いた方法等が挙げられるが特に限定はされない。また、珪素化合物を含有する塗膜の平滑性を維持できる方法を適宜選択してよい。
加熱処理時の塗膜の温度としては、50℃〜250℃の範囲に適宜調整することが好ましく、更に好ましくは100℃〜200℃の範囲である。また、加熱時間としては、1秒〜10時間の範囲が好ましく、更に好ましくは、10秒〜1時間の範囲が好ましい。
(紫外線照射処理)
紫外線(紫外光と同義)によって生成されるオゾンや活性酸素原子は高い酸化能力を有しており、低温で高い緻密性と絶縁性を有する酸化珪素膜または酸化窒化珪素膜を形成することが可能である。
この紫外線照射により、基材が加熱され、セラミックス化(シリカ転化)に寄与するOとHOや、紫外線吸収剤、ポリシラザン自身が励起、活性化されるため、ポリシラザンが励起し、ポリシラザンのセラミックス化が促進され、また得られるセラミックス膜が一層緻密になる。紫外線照射は、塗膜形成後であればいずれの時点で実施しても有効である。
本発明に係る方法では、常用されているいずれの紫外線発生装置を使用することも可能である。なお、本発明でいう紫外線とは、一般には、10〜400nmの波長を有する電磁波をいうが、後述する真空紫外線(10〜200nm)処理以外の紫外線照射処理の場合は、好ましくは210〜375nmの紫外線を用いる。
紫外線の照射は、照射される塗膜を担持している基材がダメージを受けない範囲で、照射強度や照射時間を設定することが好ましい。
樹脂基材としてプラスチックフィルムを用いた場合を例にとると、例えば、2kW(80W/cm×25cm)のランプを用い、基材表面の強度が20〜300mW/cm、好ましくは50〜200mW/cmになるように基材−紫外線照射ランプ間の距離を設定し、0.1秒〜10分間の照射を行うことができる。
一般に、紫外線照射処理時の基材温度が150℃以上になると、プラスチックフィルム等の場合には、基材が変形したり、その強度が劣化したりする等、基材の特性が損なわれることになる。しかしながら、ポリイミド等の耐熱性の高いフィルムや、金属等の基板の場合には、より高温での改質処理が可能である。従って、この紫外線照射時の基材温度としては、一般的な上限はなく、基材の種類によって当業者が適宜設定することができる。また、紫外線照射雰囲気に特に制限はなく、空気中で実施すればよい。
このような紫外線の発生手段としては、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、エキシマランプ(172nm、222nm、308nmの単一波長、例えば、ウシオ電機(株)製)、UV光レーザー、等が挙げられるが、特に限定されない。また、発生させた紫外線を照射する際には、効率向上と均一な照射を達成する観点から、発生源からの紫外線を反射板で反射させてから塗膜に当てることが望ましい。
紫外線照射は、バッチ処理にも連続処理にも適合可能であり、使用する基材の形状によって適宜選定することができる。例えば、バッチ処理の場合には、樹脂基材を上記のような紫外線発生源を具備した紫外線焼成炉で処理することができる。紫外線焼成炉自体は一般に知られており、例えば、アイグラフィクス(株)製の紫外線焼成炉を使用することができる。また、樹脂基材が長尺フィルム状である場合には、これを搬送させながら上記のような紫外線発生源を具備した乾燥ゾーンで連続的に紫外線を照射することによりセラミックス化することができる。紫外線照射に要する時間は、使用する樹脂基材や膜Aの組成、濃度にもよるが、一般に0.1秒〜10分であり、好ましくは0.5秒〜3分である。
(真空紫外線照射処理:エキシマ照射処理)
本発明において、最も好ましいエネルギー照射処理方法は、真空紫外線照射による処理(エキシマ照射処理)である。真空紫外線照射による処理は、ポリシラザン化合物内の原子間結合力より大きい100〜200nmの光エネルギーを用い、好ましくは100〜180nmの波長の光エネルギーを用い、原子の結合を光量子プロセスと呼ばれる光子のみの作用により、直接切断しながら活性酸素やオゾンによる酸化反応を進行させることで、比較的低温(約200℃以下)で、酸化珪素膜の形成を行う方法である。膜A形成のために真空紫外線を照射する場合の好ましいエネルギー照射量は、好ましくは10mJ〜100J/cm、より好ましくは10〜10000mJ/cmである。なお、エキシマ照射処理を行う際は、上述したように熱処理を併用することが好ましく、その際の熱処理条件の詳細は上述したとおりである。
これに必要な真空紫外光源としては、希ガスエキシマランプが好ましく用いられる。
Xe、Kr、Ar、Ne等の希ガスの原子は化学的に結合して分子を作らないため、不活性ガスと呼ばれる。しかし、放電等によりエネルギーを得た希ガスの原子(励起原子)は他の原子と結合して分子を作ることができる。希ガスがキセノンの場合には
Xe+Xe→e+Xe
Xe+Xe+Xe→Xe +Xe
となり、励起されたエキシマ分子であるXe が基底状態に遷移するときに172nmのエキシマ光を発光する。
エキシマランプの特徴としては、放射が一つの波長に集中し、必要な光以外がほとんど放射されないので効率が高いことが挙げられる。また、余分な光が放射されないので、対象物の温度を低く保つことができる。さらには始動・再始動に時間を要さないので、瞬時の点灯点滅が可能である。
エキシマ発光を得るには、誘電体バリア放電を用いる方法が知られている。誘電体バリア放電とは、両電極間に誘電体(エキシマランプの場合は透明石英)を介してガス空間を配し、電極に数10kHzの高周波高電圧を印加することによりガス空間に生じる、雷に似た非常に細いmicro dischargeと呼ばれる放電で、micro dischargeのストリーマが管壁(誘電体)に達すると誘電体表面に電荷が溜まるため、micro dischargeは消滅する。このmicro dischargeが管壁全体に広がり、生成・消滅を繰り返している放電である。このため肉眼でも分る光のチラツキを生じる。また、非常に温度の高いストリーマが局所的に直接管壁に達するため、管壁の劣化を早める可能性もある。
効率よくエキシマ発光を得る方法としては、誘電体バリア放電以外には無電極電界放電でも可能である。
容量性結合による無電極電界放電で、別名RF放電とも呼ばれる。ランプと電極及びその配置は、基本的には誘電体バリア放電と同じでよいが、両極間に印加される高周波は数MHzで点灯される。無電極電界放電はこのように空間的にまた時間的に一様な放電が得られるため、チラツキがない長寿命のランプが得られる。
誘電体バリア放電の場合は、micro dischargeが電極間のみで生じるため、放電空間全体で放電を行わせるには外側の電極は外表面全体を覆い、かつ外部に光を取り出すために光を透過するものでなければならない。このため細い金属線を網状にした電極が用いられる。この電極は光を遮らないようにできるだけ細い線が用いられるため、酸素雰囲気中では真空紫外光により発生するオゾン等により損傷しやすい。
これを防ぐためにはランプの周囲、すなわち照射装置内を窒素等の不活性ガスの雰囲気にし、合成石英の窓を設けて照射光を取り出す必要が生じる。合成石英の窓は高価な消耗品であるばかりでなく、光の損失も生じる。
二重円筒型ランプは外径が25mm程度であるため、ランプ軸の直下とランプ側面では照射面までの距離の差が無視できず、照度に大きな差を生じる。従って仮にランプを密着して並べても、一様な照度分布が得られない。合成石英の窓を設けた照射装置にすれば酸素雰囲気中の距離を一様にでき、一様な照度分布が得られる。
無電極電界放電を用いた場合には、外部電極を網状にする必要はない。ランプ外面の一部に外部電極を設けるだけでグロー放電は放電空間全体に広がる。外部電極には、通常アルミのブロックで作られた光の反射板を兼ねた電極がランプ背面に使用される。しかし、ランプの外径は誘電体バリア放電の場合と同様に大きいため一様な照度分布にするためには合成石英が必要となる。
細管エキシマランプの最大の特徴は、構造がシンプルなことである。石英管の両端を閉じ、内部にエキシマ発光を行うためのガスを封入しているだけである。従って、非常に安価な光源を提供できる。
二重円筒型ランプは、内外管の両端を接続して閉じる加工をしているため、細管ランプに比べ取り扱いや輸送で破損しやすい。細管ランプの管の外径は6〜12mm程度で、あまり太いと始動に高い電圧が必要になる。
放電の形態は、誘電体バリア放電でも無電極電界放電のいずれでも使用できる。電極の形状はランプに接する面が平面であってもよいが、ランプの曲面に合わせた形状にすればランプをしっかり固定できるとともに、電極がランプに密着することにより放電がより安定する。また、アルミで曲面を鏡面にすれば光の反射板にもなる。
Xeエキシマランプは、波長の短い172nmの紫外線を単一波長で放射することから発光効率に優れている。この光は、酸素の吸収係数が大きいため、微量な酸素でラジカルな酸素原子種やオゾンを高濃度で発生することができる。また、有機物の結合を解離させる波長の短い172nmの光のエネルギーは能力が高いことが知られている。この活性酸素やオゾンと紫外線放射が持つ高いエネルギーによって、短時間でポリシラザン膜の改質を実現できる。従って、波長185nm、254nmの発する低圧水銀ランプやプラズマ洗浄と比べて高スループットに伴うプロセス時間の短縮や設備面積の縮小、熱によるダメージを受けやすい有機材料やプラスチック基板等への照射を可能としている。
エキシマランプは光の発生効率が高いため、低い電力の投入で点灯させることが可能である。また、光による温度上昇の要因となる波長の長い光は発せず、紫外線領域で単一波長のエネルギーを照射するため、照射対象物の表面温度の上昇が抑えられる特徴を有する。このため、熱の影響を受けやすいとされるポリエチレンテレフタレート等のフレシキブルフィルム材料に適している。
(樹脂基材)
本発明に係る積層ガスバリア性樹脂基材で用いられる樹脂基材は、上述した膜Aを保持することができる樹脂基材であれば特に限定されるものではない。
具体的には、エチレン、ポリプロピレン、ブテン等の単独重合体または共重合体または共重合体等のポリオレフィン(PO)樹脂、環状ポリオレフィン等の非品質ポリオレフィン樹脂(APO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン2,6ナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン12、共重合ナイロン等のポリアミド系(PA)樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)等のポリビニルアルコール系樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、ポリサルホン(PS)樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリビニルブチラート(PVB)樹脂、ポリアリレート(PAR)樹脂、エチレン四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、三フッ化塩化エチレン(PFA)、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(FEP)、フッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニル(PVF)、パーフルオロエチレン−パーフロロプロピレン−パーフロロビニルエーテル共重合体(EPA)等のフッ素系樹脂等を用いることができる。
また、上記に挙げた樹脂以外にも、ラジカル反応性不飽和化合物を有するアクリレ一ト化合物よりなる樹脂組成物や、上記アクリルレート化合物とチオール基を有するメルカプト化合物よりなる樹脂組成物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート等のオリゴマーを多官能アクリレートモノマーに溶解せしめた樹脂組成物等の光硬化性樹脂および、これらの混合物等を用いることも可能である。さらに、これらの樹脂の1または2種以上をラミネートコーティング等の手段によって積層させたものを樹脂基材として用いることも可能である。
これらの素材は単独であるいは適宜混合されて使用することもできる。中でもゼオネックス(登録商標)やゼオノア(登録商標)(日本ゼオン(株)製)、非品質シクロポリオレフィン樹脂フィルムのARTON(ジェイエスアール(株)製)、ポリカーボネートフィルムのピュアエース(登録商標)(帝人(株)製)、セルローストリアセテートフィルムのコニカタックKC4UX、KC8UX(コニカミノルタオプト(株)製)、クリアーハードコート層付ポリエチレンテレフタレートフィルム(きもと社製)などの市販品を好ましく使用することができる。
また、樹脂基材は透明であることが好ましい。樹脂基材が透明であり、樹脂基材上に形成する膜Aおよび膜Bも透明であることにより、透明な積層ガスバリア性樹脂基材とすることが可能となるため、有機EL素子等の透明基板とすることも可能となるからである。
また、上記に挙げた樹脂基材は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。
本発明に係る樹脂基材は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押し出し機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の基材を製造することができる。また、未延伸の基材を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの公知の方法により、基材の流れ(縦軸)方向、または基材の流れ方向と直角(横軸)方向に延伸することにより延伸基材を製造することができる。この場合の延伸倍率は、基材の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向および横軸方向にそれぞれ2〜10倍が好ましい。
また、本発明に係る樹脂基材においては、膜Aを形成する前にコロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、グロー放電処理、粗面化処理、薬品処理などの表面処理を行ってもよい。
樹脂基材は、ロール状に巻き上げられた長尺品が便利である。樹脂基材の厚さは、得られるガスバリア性フィルムの用途によって異なるので一概には規定できないが、ガスバリア性樹脂基材を包装用途とする場合には、特に制限を受けるものではなく、包装材料としての適性から、3〜400μm、中でも6〜150μmの範囲内とすることが好ましい。
(2)工程(B)および工程(C)
工程(B)では、上記のように樹脂基材上に形成した膜Aに、離型性を有する樹脂材料をラミネートする。離型性を有する樹脂材料をラミネートすることにより、膜Aの表面が露出することなく、膜Aを備える樹脂基材を搬送、保管等することができる。工程(C)では、ラミネートされた離型性を有する樹脂材料を、次の膜Bの形成のため、樹脂基材上の膜Aから剥離する。
離型性を有する樹脂材料を膜Aを備える樹脂基材にラミネートする方法は、特に制限はない。離型性を有する樹脂材料をラミネートする工程(B)は、膜Aの形成と連続して樹脂材料をラミネートするオンライン方式であっても、あるいは、膜Aを形成した後、一旦、巻き取り軸で樹脂基材を巻き取った後、別工程で、離型性を有する樹脂材料をラミネートするオフライン方式であってもよい。また、ラミネートした離型性を有する樹脂材料を、膜Aの表面上から剥離する際にも、剥離後に連続して後述するエネルギー付与工程(D)を実施するオンライン方式であってもよく、離型性を有する樹脂基材の剥離後に、膜Aを有する樹脂基材をいったん巻き取り、別工程で工程(D)を実施するオフライン方式であってもよい。
その際、本発明の製造方法においては、離型性を有する樹脂材料をラミネートした膜Aを有する樹脂基材を、ロール状に巻き取り、搬送又は保管し、このロールから樹脂基材を繰り出して膜Aの表面から離型性を有する樹脂材料を剥離する工程(C)、エネルギーを付与する工程(D)および膜Bを形成する工程(E)を実施する、いわゆるロールトゥロールの製造工程を実施することが好ましい。すなわち、工程(B)後に、前記樹脂基材をロール状に巻き取る工程(X)および前記樹脂基材を連続的に繰り出す工程(Y)をさらに含み、離型性を有する樹脂材料を剥離する工程(C)を経た後、後述するエネルギー付与工程(D)が連続的に行われることが好ましい。したがって、本発明の好ましい形態は、本発明の方法において、前記工程(B)後に、前記樹脂基材をロール状に巻き取る工程(X)および前記樹脂基材を連続的に繰り出す工程(Y)をさらに含み、前記工程(C)が連続的に行われる、積層ガスバリア性樹脂基材の製造方法である。
一般的に、積層ガスバリア性樹脂基材は、長尺体として製造されるが、長い製造工程を一つのラインで実施することは、スペースや搬送の点から望ましくない。それと共に、仮にラインの一部に不具合が生じた場合には、ライン全体を止める必要があるなど、稼働率や歩留まりの点からも、複数ラインに分けて製造することが好適である。その際、長尺体である樹脂基材を一度ロールに巻き取って搬送または保管等することが便利である。さらに、ロールに巻き取る際に、製造途中の膜Aの表面が露出していると、樹脂基材の裏面に付着した異物や樹脂基材との擦傷によって膜A表面が損なわれ、結果として最終的なガスバリア性が低下する。そのため、ロールに巻き取る前に離型性を有する樹脂材料で一旦膜Aの表面を保護することにはメリットがある。
以下、工程(B)および(C)の好ましい実施形態について説明する。離型性を有する樹脂材料は、後述するように、主として、基材および基材上に粘着剤を含む粘着層から構成され、更にその上に離型剤を含む離型層を有している。離型性を有する樹脂材料は、好ましくは、離型層を内側にしてロール状に巻いた状態で用意される。次いで、離型性を有する樹脂材料は、ロールから繰り出され、離型層を分離して粘着層を露出させ、分離された離型層は巻き取りロールに巻き取られる。一方、膜Aを積層した樹脂基材は、膜A形成工程から水平方向に、下流側に配置された離型性を有する樹脂材料の位置まで搬送される。次いで、膜A表面に離型性を有する樹脂材料の粘着層を貼り合せ、ラミネートする。離型性を有する樹脂材料をラミネートした樹脂基材は、巻き取り軸に取り付けられた巻き芯に、ロール状に巻き取られる。この際、離型性を有する樹脂材料が膜Aの表面を保護するため、ロール状に巻き取る際の、樹脂基材の裏面に付着する異物の膜Aへの付着や、搬送の際の擦り傷発生等を効果的に防止し得る。
次に、図3に示すように、離型性を有する樹脂材料をラミネートした樹脂基材は、巻き取ったロールから繰り出され、離型性を有する樹脂材料が剥離され、樹脂材料は別のロールに巻き取られる。離型性を有する樹脂材料を剥離した樹脂基材は、膜Aが再び露出し、次のエネルギー照射工程に搬送される。
(離型性を有する樹脂材料)
本発明の製造方法において使用し得る、離型性を有する樹脂材料は、特に制限はないが、少なくとも樹脂材料と、該フィルムの片面に形成された粘着剤を含む粘着層とからなり、粘着層表面に離型層を有していることが好ましい。本発明においては、離型性を有する樹脂材料がどのような材料および形成方法で作製されたものであっても、後述するエネルギー付与工程(D)によって、剥離後に残留する粘着剤の影響を低減することができ、最終的なガスバリア性を向上することができる。したがって、好ましい実施形態は、本発明の方法において、前記樹脂材料は粘着層を有し、後述の工(D)では、膜A上に残った前記粘着層を取り除く、積層ガスバリア性樹脂基材の製造方法である。離型性を有する樹脂材料としては様々なものが汎用されているが、例えば、塗布法により形成されたものであっても、共流延により製造されたものであっても、区別なく本発明のガスバリア性向上の効果を得ることができる。以下、離型性を有する樹脂材料の好ましい形態を説明するが、本発明は基本的にどのような樹脂材料であっても適用し得るものである。
粘着剤としてはアクリル系粘着剤、シリコン系粘着剤及び、ゴム系粘着剤から選ばれる少なくとも1種を使用することができる。また、粘着剤の粘着力が1mN/cm以上、2N/cm以下であることが好ましく、1mN/cm以上、200mN/cm以下であることがより好ましく、さらに好ましくは1mN/cm以上、80mN/cm以下である。
粘着剤の粘着力が1mN/cm以上であれば、樹脂材料と膜Aとの十分な密着力を得ることができ、連続搬送中での剥離が発生しなくなると共に、搬送時のロール等の接触による既に形成した膜Aに対する影響を防止することができる。粘着力が2N/cm以下であれば、樹脂材料を剥離するときに、膜Aに対し過度の力を掛けることなく、膜Aの破壊や、膜A上への粘着剤の残留を起こすことが少ない点で好ましい。
粘着剤の粘着力は、JIS Z 0237(2009)に準拠した測定法に従って、試験板としてコーニング1737を用い、樹脂材料を試験板に圧着して20分後に測定して求めることができる。
また、粘着剤の厚さとしては、0.1μm以上30μm以下であることが好ましい。粘着剤の厚さが0.1μm以上であれば、樹脂材料と膜Aとの十分な密着力を得ることができ、連続搬送中での剥離が発生しなくなると共に、搬送時のロール等の接触による既に形成した膜Aに対する影響を防止することができる。また、粘着剤の厚さが30μm以下であれば、樹脂材料を剥離するときに、膜Aに対し過度の力を掛けることなく、膜Aの破壊や、膜A上への粘着剤の過度の残留を起こすことがない。
また、粘着層を構成する粘着剤の重量平均分子量は、40万以上140万以下であることが好ましい。重量平均分子量が40万以上であれば、過度の粘着力となることはなく、140万以下であれば十分な粘着力を得ることができる。上記の重量平均分子量の範囲であれば、ガスバリア層上への粘着剤の残留を防止することができ、また、特にプラズマ処理法で膜Aを形成する際には、熱やエネルギーがかかるため、適当な分子量範囲であれば、粘着材料の転写や剥離が生じることを防止することができる。
次いで、離型性を有する樹脂材料の各構成材料について説明する。
離型性を有する樹脂材料に用いられる基材としては、特に制限はないが、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィン系フィルム;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム・ヘキサメチレンアジパミド等のポリアミド系フィルム;ポリビニルクロライド、ポリビニリデンクロライド、ポリフルオロエチレン等の含ハロゲン系フィルム;ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、エチレン酢酸ピニル共重合体等の酢酸ビニル及びその誘導体フィルム等のプラスチックフィルムが、紙とは異なり微細塵を発生しないことから好ましい。なお、本発明においては、耐熱性および、入手の容易性の観点からポリエチレンテレフタラートフィルムが好ましく用いられる。
基材の厚さも特に制限はされないが、10μm〜300μmのものが使用される。好ましくは25μm〜150μmのものである。10μm未満であるとフィルムが薄いことから、取り扱いが困難であり、300μmを超えると硬くなり、搬送性やロールへの密着性が悪くなる。
粘着剤の種類としては特に制限はなく、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコン系粘着剤、紫外線硬化型粘着剤、ポリオレフィン系粘着剤、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)系粘着剤などを挙げることができるが、アクリル系粘着剤、シリコン系粘着剤及びゴム系粘着剤から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
アクリル系粘着剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体または他の共重合性モノマーとの共重合体が用いられる。更に、これらの共重合体を構成するモノマーもしくは共重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル、ブチルエステル、2ーエチルヘキシルエステル、オクチルエステル、イソノニルエステル等)、(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル(例えば、ヒドロキシエチルエステル、ヒドロキシブチルエステル、ヒドロキシヘキシルエステル)、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸アミド、(メタ)アクリル酸Nーヒドロキシメチルアミド、(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキルエステル(例えば、ジメチルアミノエチルメタクリレート、t−ブチルアミノエチルメタクリレート等)、酢酸ピニル、スチレン、アクリロニトリルなどが挙げられる。主要成分のモノマーとしては、通常、ホモポリマーのガラス転移点が500℃以下のアクリル酸アルキルエステルが使用される。
アクリル系粘着剤の硬化剤としては、例えば、イソシアネート系、エポキシ系、アリジリン系硬化剤が利用できる。イソシアネート系硬化剤では、長期保存後も安定した粘着力を得ることと、より硬い粘着層とする目的で、トルイレンジイソシアネート(TDI)等の芳香族系のタイプを好ましく用いることができる。更に、この粘着剤には、添加剤として、例えば、安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤を含有させることもできる。
また、再剥離性を付与させるため、あるいは粘着力を低く安定に維持するために、それらの成分が相手基材に移行しない程度に、ワックス等の有機樹脂、シリコン、フッ素等の低表面エネルギーを有する成分を添加しても良い。例えば、ワックス等の有機樹脂では、高級脂肪酸エステルや低分子のフタル酸エステルを用いても良い。
ゴム系粘着剤としては、例えば、ポリイソブチレンゴム、ブチルゴムとこれらの混合物、或いは、これらゴム系粘着剤にアピエチン酸ロジンエステル、テルぺン・フェノール共重合体、テルぺン・インデン共重合体などの粘着付与剤を配合したものが用いられる。
ゴム系粘着剤のベースポリマーとしては、例えば、天然ゴム、イソプレン系ゴム、スチレン−タジエン系ゴム、再生ゴム、ポリイソブチレン系ゴム、更にはスチレン−イソプレンスチレン系ゴム、スチレンブタジエンスチレン系ゴム等が挙げられる。
中でも、ブロックゴム系粘着剤は、一般式A−B−Aで表されるブロック共重合体や一般式A−Bで表されるブロック共重合体(但し、Aはスチレン系重合体ブロック、Bはブタジエン重合体ブロック、イソプレン重合体ブロック、またはそれらを水素添加して得られるオレフィン重合体ブロックであり、以下、スチレン系熱可塑性エラストマーという)を主体に、粘着付与樹脂、軟化剤などが配合された組成物が挙げられる。
上記ブロックゴム系粘着剤において、スチレン系重合体ブロックAは平均分子量が4,000〜120,000程度のものが好ましく、更に10,000〜60,000程度のものがより好ましい。そのガラス転移温度は150℃以上のものが好ましい。また、ブタジエン重合体ブロック、イソプレン重合体ブロックまたはこれらを水素添加して得られるオレフィン重合体ブロックBは、平均分子量が30,000〜400,000程度のものが好ましく、更に60,000〜200,000程度のものがより好ましい。そのガラス転移温度は−150℃以下のものが好ましい。上記A成分とB成分との好ましい質量比はA/B=5/95〜50/50であり、更に好ましくはA/B=10/90〜30/70である。A/Bの値が、50/50を超えると常温においてポリマーのゴム弾性が小さくなり、粘着性が発現しにくくなり、5/95未満ではスチレンドメインが疎になり、凝集力が不足し、所望の接着力が得られないばかりか、剥離時に接着層がちぎれてしまう等の不具合が見られる。
更に、上記粘着剤に、ポリオレフィン系樹脂を添加することにより、剥離紙もしくは剥離フィルムからの離型性を向上することがで、きる。このポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレンαオレフィン共重合体、プロピレンαオレフィン共重合体、エチレンーエチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレンメチルメタクリレート共重合体、エチレンn−ブチルアクリレート共重合体及び、これらの混合物が挙げられる。
このポリオレフィン系樹脂は、低分子量分が少ないことが好ましく、具体的には、n−ペンタンによる沸点乾留で抽出される低分子量分が1.0質量%未満であることが好ましい。低分子量分が1.0質量%を超えて存在すると、この低分子量分が温度変化や経時変化に応じて、粘着特性に悪影響を及ぼし、粘着力を低下させるからである。
また、上記粘着剤には、シリコンオイルを添加することにより、ポリビニルアルコールを主成分とする塗膜が設けられた白背面との親和性を更に低下せしめることができる。このシリコンオイルはポリアルコキシシロキサン鎖を主鎖にもつ高分子化合物で、粘着層の疎水性を高め、更に接着界面、即ち、粘着層表面にブリードするため、粘着剤の接着力を抑制し、接着昂進現象が起き難くする働きがある。
上記ゴム系粘着剤に、架橋剤を添加し架橋することで粘着層とする。
架橋剤としては、例えば、天然ゴム系粘着剤の架橋には、イオウと加硫助剤および加硫促進剤(代表的なものとして、ジブチルチオカーパメイト亜鉛など)が使用される。天然ゴムおよびカルボン酸共重合ポリイソプレンを原料とした粘着剤を室温で架橋可能な架橋剤として、ポリイソシアネート類が使用される。ブチルゴムおよび、天然ゴムなどの架橋剤に耐熱性と非汚染性の特色がある架橋剤として、ポリアルキルフェノール樹脂類が使用される。ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴムおよび天然ゴムを原料とした粘着剤の架橋に有機過酸化物、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイドなどがあり、非汚染性の粘着剤が得られる。架橋助剤として、多官能メタクリルエステル類を使用する。その他紫外線架橋、電子線架橋などの架橋による粘着剤の形成がある。
シリコン系粘着剤としては付加反応硬化型シリコン粘着剤と縮重合硬化型シリコン粘着剤があるが、本発明では付加反応硬化型が好ましく用いられる。
付加反応硬化型シリコン粘着剤組成物の組成としては、以下に挙げるものが好適に用いられる。
(A)1分子中に2個以上のアルケニル基を有するポリジオルガノシロキサン
(B)SiH基を含有するポリオルガノシロキサン
(C)制御剤
(D)白金触媒
(E)導電性微粒子
ここで、(A)成分は、1分子中に2個以上のアルケニル基を有するポリジオルガノシロキサンであり、このようなアルケニル基含有ポリジオルガノシロキサンとしては、下記一般式(1)で示されるものが例示できる。
一般式(1)
(3−a)SiO−(RXSiO)−(RSiO)−(RXSiO)−R(3−a)SiO
一般式(1)において、Rは炭素数1〜10の1価炭化水素基であり、Xはアルケニル基含有の有機基である。aは0〜3の整数で1が好ましく、mは0以上であるが、a=0の場合、mは2以上で、あり、m及びnは、それぞれ100≦m+n≦20,000を満足する数であり、pは2以上である。
Rは炭素数1〜10の1価炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基、フェニル基、トリル基などのアリール基などが挙げられるが、特にメチル基、フェニル基が好ましい。
Xはアルケニル基含有の有機基で炭素数2〜10のものが好ましく、具体的にはピニル基、アリル基、ヘキセニル基、オクテニル基、アクリロイルプロピル基、アクリロイルメチル基、メタクリロイルプロピル基、シクロヘキセニルエチル基、ピニルオキシプロピル基等が挙げられるが、特にビニル基、ヘキセニル基などが好ましい。
このポリジオルガノシロキサンの性状は、オイル状、生ゴム状であればよく、(A)成分の粘度は、250℃において100mPa・s以上、特に1,000mPa・s以上が好ましい。なお、上限としては、特に限定されないが、他成分との混合の容易さから、重合度が20,000以下となるように選定することが好ましい。また、(A)成分は1種を単独で用いても良いし、2種以上を併用してもよい。
(B)成分であるSiH基を含有するポリオルガノシロキサンは架橋剤であり、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個、好ましくは3個以上有するオルガノヒドロポリシロキサンで、直鎖状、分岐状、環状のものなどを使用することができる。
(B)成分としては、下記一般式(2)で表される化合物を挙げることができるが、これらのものには限定されない。
一般式(2)
(3−b)SiO−(HRSiO)−(HRSiO)−SiR (3−b)
一般式(2)において、Rは炭素数1〜6の脂肪族不飽和結合を含有しない1価炭化水素基である。bは0〜3の整数、x、yはそれぞれ整数であり、このオルガノヒドロポリシロキサンの250℃における粘度が1〜5,000mPa・sとなる数を示す。
このオルガノヒドロポリシロキサンの250℃における粘度は、1〜5,000mPa・s、特に5〜1000mPa・Sで、あることが好ましく、また2種以上の混合物でもよい。
付加反応による架橋は、(A)成分と架橋剤の(B)成分の間で生じ、硬化後の粘着層のゲ、ル分率は架橋成分の割合によって決まる(B)成分の使用量は、(A)成分中のアルケニル基に対する(B)成分中のSiH基のモル比が0.5〜20、特に0.8〜15の範囲となるように配合することが好ましい。0.5以上であれば、架橋密度が保たれ、これにともない保持力を得ることができる。一方で、20以下であれば、粘着力及びタックが得られる。
また、耐熱保持力などの耐熱性や溶剤浸透抑制などの耐溶媒性を向上させるためには、組成物中の架橋成分の割合を増やせばよいが、過剰に増やすと粘着力の低下や膜の柔軟性が低下するなどの影響が発生する場合がある。このような点から、(A)/(B)成分の配合質量比は20/80〜80/20とすればよく、特に45/55〜70/30とすることが好ましい。(A)成分の配合割合が20/80以上であれば、粘着力、タックなどの十分な粘着特性を得ることができ、また、80/20以下であれば十分な耐熱性が得られる。
(C)成分は付加反応制御剤であり、シリコン粘着剤組成物を調合し、基材に塗工する際、加熱硬化の以前に処理液が増粘やゲル化をおこさないようにするために添加するものである。
(C)成分の具体例としては、3ーメチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ぺンチン−3−オール、3,5−ジメチル−1ーヘキシン−3−オール、1−エチニルシクロヘキサノール、3ーメチル−3−トリメチルシロキシ−1−ブチン、3−メチル−3−トリメチルシロキシ−1−ぺンチン、3,5−ジメチル−3−トリメチルシロキシ−1ーヘキシン、1−エチニル−1−トリメチルシロキシシクロヘキサン、ピス(2,2−ジメチル−3−ブチノキシ)ジメチルシラン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラピニルシクロテトラシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサンなどが挙げられる。
(C)成分の配合量は、(A)及び(B)成分の合計100質量部に対して0〜5.0質量部の範囲であることが好ましく、特に0.05〜2.0質量部が好ましい。5.0質量部を越えると硬化性が低下することがある。
(D)成分は白金系触媒であり、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とアルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン化合物との反応物、塩化白金酸とビニル基含有シロキサンとの反応物などが挙げられる。
(D)成分の添加量は、(A)及び(B)成分の合計量に対し、白金分として1〜5,000ppm、特に5〜2,000ppmとすることが好ましい。1ppm以上であれば、十分な硬化性が得られ、架橋密度も高く、保持力を維持することができる。
(E)成分の導電性微粒子の形状は、球状、樹枝状、針状など特に制限はない。また、粒径は特に制限はないが、最大粒径が粘着剤の塗工厚みの1.5倍を越えないことが好ましく、これを越えると粘着剤塗工表面に導電性微粒子の突出が大きくなりすぎて、この部分を起点に被着体からの浮きなどが発生しやすくなる。
粘着剤層には種々の添加剤が添加されていても良い。例えば、架橋剤、触媒、可塑剤、酸化防止剤、着色剤、帯電防止剤、充填剤、粘着付与剤、界面活性剤等を添力日してもよい。
粘着層の基材上への塗布方法としては、ロールコーター、ブレードコーター、バーコーター、エアーナイフコーター、グラビアコーター、リバースコーター、ダイコーター、リップコーター、スプレーコーター、コンマコータ一等により行われ、必要によりスムージングや、乾燥、加熱、紫外線等電子線露光工程等を経て、粘着層が形成される。
剥離層として用いられる素材は、塵挨を発生しないプラスチックフィルム等が好ましい。本発明に係る剥離層に用いられるプラスチックフィルムとしては、特に制限はないが、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィン系フィルム;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム;ヘキサメチレンアジパミド等のポリアミド系フィルム;ポリビニルクロライド、ポリビニリデンクロライド、ポリフルオロエチレン等の含ハロゲン系フィルム;ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、エチレン酢酸ピニル共重合体等の酢酸ビニル及びその誘導体フィルムが用いられる。好ましくは、ポリエステル系フィルムであり、例えば、ポリエチレンテレフタレートである。適度な弾性を有するからである。剥離層に用いられるプラスチックフィルムは、剥離剤が塗布されているものであっても良い。離型処理を施すための塗布液の具体例を挙げると、旭化成ワッカーシリコン株式会社製のDEHESIVE(登録商標)シリーズのうち、無溶剤型の636、919、920、921、924、エマルジョン型の929、430、440、39005、39006、溶剤型の940、942、952、953、811等が、GE東芝シリコン株式会社製の剥離紙用シリコン:TPR6500、TPR6501、UV9300、UV9315、XS56A2775、XS56−A2982、TPR6600、TPR6605、TPR6604、TPR6705、TPR6722、TPR6721、TPR6702、XS56−B3884、XS56−A8012、XS56−B2654、TPR6700、TPR6701、TPR6707、TPR6710、TPR6712、XS56−A3969、XS56−A3075、YSR3022等が挙げられる。
(3)工程(D)
工程(D)では、上記のように、離型性を有する樹脂材料を剥離した後、露出した膜Aにエネルギーを付与する。本発明者らは、膜A表面にエネルギー付与することにより、最終的に得られる積層ガスバリア性樹脂基材のガスバリア性が従来より向上することを見出した。
エネルギー付与によって樹脂基材のガスバリア性が向上するメカニズムは明らかではないが、従来は膜A上に残っていた離型性を有する樹脂材料の粘着剤や付着した異物を、エネルギー付与により消失させたことが貢献していると考えられる。このような粘着剤の残留物は、異物となって最終的な積層ガスバリア性樹脂基材のガス遮断性を低下させると考えられるためである。膜A上に残っている粘着層が消失したことは、例えば膜A表面の目視観察、顕微鏡観察、その他エネルギー付与前後の膜Aの表面状態を比較し得る多様な分析方法によって確認できる。
本発明は、基本的にはどのような離型性を有する樹脂材料、粘着剤をラミネートしても、適用することができ、ガスバリア性向上の効果を得ることができる。また、離型性を有する樹脂材料をラミネートし、ロール状に巻き取った後、1〜20時間程度、典型的には一晩保管しておいた際にも、エネルギー付与工程(D)を経ることによって、残留物の影響を低減でき、ガスバリア性向上の効果が得られる。また、エネルギー付与により、膜Aの表面の平滑性が向上し、膜Bとの密着性に寄与するなど、膜Aの表面の物理的特性に影響することも考えられ、本発明により、より平滑な積層ガスバリア性樹脂基材が得られる。
付与するエネルギーとしては、紫外光、コロナ放電、プラズマ放電およびレーザー光から選ばれる一種であることが好ましい。このうち、膜Aの形成に使用したものと同様のエネルギーを使用することが、設備の簡便さやコスト面から好ましい。膜Aの形成と同様、付与するエネルギーは特に波長150〜200nmの真空紫外光であることが好ましい。また、工程(D)におけるエネルギー付与は、膜Aの形成のためのエネルギー付与と同様の方法を用いた場合には、膜Aの形成のために用いるエネルギー付与量の1%以上100%未満、より好ましくは1〜20%、さらに好ましくは5〜15%であればよく、このエネルギー付与量でガスバリア性向上の効果を得られる。このような膜Aの形成時よりも弱いエネルギー付与が、上記の粘着剤の残留物除去のみならず、膜Aの表面に何らかの作用を及ぼし、最終的な積層ガスバリア性樹脂基材のガスバリア性に寄与していることも考えられる。具体的なエネルギー付与量としては、膜Aの組成およびエネルギー源によって異なるため、それらに応じて適宜選択できる。
紫外光照射については、エネルギー照射量を除き、膜Aの形成工程(B)で記載した方法と同様の方法を採用できる。紫外光照射の場合のエネルギー照射量は、1以上360J/cm未満が好ましく、より好ましくは10〜100J/cmである。真空紫外光照射(エキシマ照射)の場合は、1以上10000mJ/cm未満が好ましく、より好ましくは1〜1000mJ/cmである。
プラズマ照射についても、エネルギー照射量を除き、膜Aの形成工程(B)で記載した方法と同様の方法を採用できる。プラズマ照射のうち、特に大気圧プラズマ照射の場合の照射量は、1以上200J/cm未満が好ましく、より好ましくは5〜50J/cmである。
コロナ照射については、特に制限はなく、従来公知のコロナ放電処理装置(例えば、春日電機社製)を使用して膜Aにコロナ放電処理を施すことができる。出力としては、10mW・分/m以上が好ましく、より好ましくは10〜200W・分/mである。
レーザー光照射については、特に制限はなく、例えば、エキシマレーザー(波長λ=248nm)を用いてエネルギー照射を行うことができる。ランプの出力としては400W〜30kW、照度としては100mW/cm〜100kW/cm、照射エネルギー量としては、10〜5000mJ/cmが好ましく、100〜2000mJ/cmがより好ましい。
それぞれ、エネルギー照射量が上記の範囲内であれば、ガスバリア性向上の所期の効果を得ることができ、また、過剰なエネルギー照射による膜Aの不具合が生じることはない。
本発明では、離型性を有する樹脂材料を剥離した後、膜Aを連続的に搬送してすぐにエネルギー付与をすることが好ましい。
(5)工程(E)
工程(E)では、上記のように、離型性を有する樹脂材料を膜A表面から剥離しエネルギー付与した後、膜Aの表面上に膜Bを形成する。
膜Bは、膜Aと共に本発明の積層ガスバリア性樹脂基材のガスバリア性を発揮する。膜Bの材料および形成方法としては、上記の膜Aと同様の材料および方法を採用することができるため、ここでは説明を省略する。膜Bは、膜Aと同様の材料で構成されてもよく、異なっていてもよい。膜Aと膜Bとが同じ材料で構成される場合には、同じ性能の膜を薄い複数層で構成するため、各層にクラックが入りにくい等のメリットがある。膜Aと膜Bとが異なる材料で構成される場合には、それぞれの層に異なる機能を持たせることができ、積層ガスバリア性樹脂基材全体の特性を用途に合わせて向上することができる。また、本発明において、積層ガスバリア性樹脂基材は、膜A及び膜Bを含め2層以上の多層膜で構成されてもよい。このような多層膜の場合には、搬送や保管のために離型性を有する樹脂材料がラミネートされる層が膜Aであり、離型性を有する樹脂材料を剥離した後に形成される層が膜Bであれば、それら以外の層はどのような構成でもよい。例えば、膜A及び膜Bを形成した後に、膜C(膜Aと膜Bとは異なる材料の膜)等を適宜形成してもよいし、樹脂基材上に膜C等を形成した後、当該膜C上に膜A及び膜Bを形成してもよい。つまり、樹脂基材上に形成される膜は、膜A及び膜B以外にも様々な膜を形成することができる。また、膜Aおよび膜Bの組み合わせ(ユニット)が2以上積層(ユニットが2つ以上積層)される場合には、積層ガスバリア性樹脂基材全体のガスバリア性がより向上する効果がある。また、このような多層膜を製造する場合には、本発明の(A)〜(E)の工程が2度以上繰り返されてもよい。
膜Bの膜厚としては、1〜1000nmが好ましく、50〜800nmが更に好ましい。この範囲であれば、ガスバリア性能が十分に発揮され、膜にクラックが入る不具合も避けることができる。
上記の工程(A)〜(E)により、積層ガスバリア性樹脂基材が製造される。
(6)その他の工程
本発明で製造される積層ガスバリア性樹脂基材は、ガスバリア性を担う膜Aおよび膜B以外にも層を有していてもよく、そのための工程をさらに含んでいてもよい。例えば、樹脂基材表面には、膜Aとの密着性の向上を目的としてアンカーコート層を形成してもよく、樹脂基材表面の粗面を平坦化し、凹凸やピンホールを埋めるために、樹脂基材と膜Aとの間に平滑層を設けてもよく、平滑層を設けた場合には、樹脂基材中から未反応のオリゴマーなどが表面へ移行して、接触する面を汚染してしまう現象を抑制する目的で、平滑層を有する樹脂基材の面とは反対側の面にブリードアウト層を設けてもよい。
アンカーコート層としては、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコン樹脂、及びアルキルチタネート等が挙げられる。これらは単独でも、1又は2種以上併せて使用してもよい。
平滑層を形成する光重合性モノマーとしては、例えば、ラジカル反応性不飽和化合物を有するアクリレート化合物を含有する光重合性モノマー組成物、アクリレート化合物とチオール基を有するメルカプト化合物を含有する光重合性モノマー組成物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、グリセロールメタクリレート等の多官能アクリレートモノマーを溶解させた光重合性モノマー組成物等が挙げられる。ブリードアウト防止層は、基本的に平滑層と同じ構成をとっても構わない。
以下、実施例および比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例には限定されない。
(試料1の作製)
〔実施例1〕
ハードコート層つき透明樹脂基材(きもと社製両面クリアハードコート層(CHC)付ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、PET厚さ125μm、長さ50m、CHCの厚さ6μm)上に下記条件で膜Aを形成し、膜Aに樹脂材料A(サンエー化研社製サニテクト(登録商標)PAC3−60、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)、粘着力0.13N/25mm)をラミネートしロール状に巻き取った。巻き取ったロールは、一晩デシケータ内で保管した。その後、ロールから樹脂基材を連続的に繰り出し、樹脂Aを剥離させながら、膜A表面にエネルギーを照射させ、さらに膜Bを形成し試料1を作製した。以下、実施例1の詳細な条件について説明する。
(膜Aの形成)
(塗布)
無触媒のパーヒドロポリシラザンを20質量%含むジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製アクアミカ(登録商標) NN120−20)と、アミン触媒を固形分で5質量%含有するパーヒドロポリシラザンの20質量%ジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製アクアミカ(登録商標) NAX120−20)を混合して用い、アミン触媒を固形分として1質量%になるように調整した後、さらにジブチルエーテルで希釈することにより、ジブチルエーテル溶液として、ポリシラザン化合物含有塗布液を調製した。この溶液をさらにジブチルエーテルで希釈することによりパーヒドロポリシラザン濃度を10質量%に調整してダイコーターを用いて塗布したのち、80℃3分で乾燥し、乾燥後膜厚150nmのパーヒドロポリシラザン含有層を形成した。この際、ポリシラザン含有層は完全に固形化していない。
(真空紫外光の照射)
ポリシラザン層の形成に引き続いて、連続的に、真空紫外光の照射装置により、真空紫外光の照射(エキシマ照射)を行った。エキシマランプは、MDエキシマ社製のキセノンエキシマ照射装置MODEL:MEUTH−1−400(波長172nm)を用い、樹脂基材にエキシマ発光によるVUV光照射した。照射装置は流量計、温度計等を備え、真空紫外光照射庫内にエキシマランプを備えるものであった。このエキシマ照射装置により真空紫外光照射を行い膜Aを形成した。膜A形成の際のエネルギー(真空紫外光)照射量は、2100mJ/cmであった。
(エネルギー照射処理)
樹脂材料Aを剥離しながら、膜Aの表面に、エネルギー照射量を変更した以外は、上記膜Aの形成と同様の方法でエキシマ照射処理を行った。エネルギー(真空紫外光)照射量は、210mJ/cmであり、膜A形成のためのエネルギー照射量の10%であった。
(膜Bの成膜:ポリシロキサン塗膜(塗布))
〈ポリシロキサン化合物含有塗布液の調製〉
ポリシロキサン含有溶液(JSR株式会社製グラスカHPC7003)に、アミン化合物を適宜添加し、更に必要があればブタノールで希釈して塗布液(ポリシロキサン濃度10質量%)とした。
(ポリシロキサン層の形成)
膜A上に、上記塗布液をダイコーターを用いて塗布したのち、120℃10分で乾燥し、乾燥後膜厚600nmのポリシロキサン含有層を形成した。
(真空紫外光照射処理)
上記の様にしてポリシロキサン層塗膜を形成した後、前記膜Aのポリシラザン層に対する真空紫外光照射処理と同様の方法で、ポリシロキサン層への真空紫外光照射処理を行った。このようにして、積層ガスバリア性樹脂基材を完成させた。
(実施例2)
実施例1の積層ガスバリア性樹脂基材の製造方法において、樹脂材料A剥離後のエネルギー照射を大気圧プラズマによって行った以外は、同様の製造方法でガスバリアフィルムを製造した。
(大気圧プラズマ処理)
試料を下記の条件でプラズマ処理を行った。また、製膜時の基材保持温度は、120℃とした。
ロール電極型放電処理装置を用いて処理を実施した。ロール電極に対向する棒状電極を複数個フィルムの搬送方向に対し平行に設置し、各電極部にガス及び電力を投入し以下のように、塗工面が20秒間プラズマ照射されるように適宜処理を行った。
なお、プラズマ放電処理装置の上記の各電極を被覆する誘電体は、対向する両電極共に、セラミック溶射加工により片肉で1mm厚のアルミナを被覆したものを使用した。
また、被覆後の電極間隙は、0.5mmに設定した。また誘電体を被覆した金属母材は、冷却水による冷却機能を有するステンレス製ジャケット仕様であり、放電中は冷却水による電極温度コントロールを行いながら実施した。ここで使用する電源は、応用電機製高周波電源(100kHz)、パール工業製高周波電源(13.56MHz)を使用した。エネルギー照射量は、120J/cm 以下であった。
放電ガス:Nガス
反応ガス:酸素ガスを全ガスに対し7%
低周波側電源電力:100kHzを6W/cm
高周波側電源電力:13.56MHzを10W/cm
プラズマ処理時間;20秒
(実施例3)
実施例1の積層ガスバリア性樹脂基材の製造方法において、樹脂材料Aの剥離後のエネ
ルギー照射を紫外線照射によって行った以外は、同様の製造方法でガスバリアフィルムを
製造した。エネルギー照射量は、360J/cm 以下であった。
(紫外線照射処理)
試料を下記の条件で紫外線照射処理を行った。
〈紫外線照射装置〉
装置:株式会社 ウシオ電機製、紫外照射装置 型式UVH−0252C
〈紫外線照射処理条件〉
稼動ステージ上に固定した試料を以下の条件で紫外線照射処理を行った。
紫外光強度 :2000mW/cm(365nm)
試料と光源の距離 :30mm
ステージ加熱温度 :100℃
照射装置内の酸素濃度:5%
紫外光照射時間 :180秒
(実施例4)
実施例1のガスバリアフィルムの製造方法において、樹脂材料Aを樹脂材料B(PANAC社製Prosave ASR 38ASR、帯電防止層含有粘着剤、粘着力0.04N/25mm、帯電防止粘着層)に変更した以外は、同様の製造方法でガスバリアフィルムを製造した。
(比較例1)
比較例1として、実施例1の製造において、樹脂材料Aを用いず、また、エネルギー照射処理を行わなかった以外は、同様の製造方法でガスバリアフィルムを製造した。
(比較例2)
比較例2として、実施例1の製造において、樹脂材料Aを剥離した後のエネルギー照射処理を行わなかった以外は、同様の製造方法でガスバリアフィルムを製造した。
(比較例3)
比較例3として、実施例1の製造において、樹脂材料Aを樹脂材料Bに変更し、樹脂材料Bを剥離した後のエネルギー照射処理を行わなかった以外は、同様の製造方法でガスバリアフィルムを製造した。
(試料1の評価)
(評価1:水蒸気バリア性の評価)
水蒸気バリア性の評価を行うにあたって、以下の装置と材料を使用した。
〈使用装置〉
蒸着装置:日本電子(株)製真空蒸着装置JEE−400
恒温恒湿度オーブン:Yamato Humidic ChamberIG47M
〈評価材料〉
水分と反応して腐食する金属:カルシウム(粒状)
水蒸気不透過性の金属:アルミニウム(φ3〜5mm、粒状)
〈水蒸気バリア性評価用試料の作製〉
真空蒸着装置(JEE−400)を用い、作製した水蒸気バリアーフィルム(試料No.1〜30)の保護層表面に、マスクを通して12mm×12mmのサイズで金属カルシウムを蒸着させた。
その後、真空状態のままマスクを取り去り、シート片側全面にアルミニウムを蒸着させて仮封止をした。次いで、真空状態を解除し、速やかに乾燥窒素ガス雰囲気下に移して、アルミニウム蒸着面に封止用紫外線硬化樹脂(ナガセケムテックス社製)を介して厚さ0.2mmの石英ガラスを張り合わせ、紫外線を照射して樹脂を硬化接着させて本封止することで、水蒸気バリア性評価用試料を作製した。
そして、恒温恒湿度オーブンを用い、得られた評価用試料を85℃、90%RHの高温高湿下で、20時間、40時間、60時間のそれぞれで保存し、12mm×12mmの金属カルシウム蒸着面積に対する金属カルシウムが腐食した面積を%表示で算出し、下記の基準に従って水蒸気バリア性を評価した。こうして得られた評価結果を、下記表1に示す。
◎:金属カルシウムが腐食した面積が0.5%未満である。
○:金属カルシウムが腐食した面積が0.5%以上、1.0%未満である。
△:金属カルシウムが腐食した面積が1.0%以上、5.0%未満である。
×:金属カルシウムが腐食した面積が、5.0%以上である。
(評価2:膜面品質の評価)
微分干渉顕微鏡として、ニコン社製エクリプスE600および顕微鏡用デジタルカメラDXM1200Fを使用し、前記樹脂基材上に形成した膜A上に樹脂材料をラミネートし、剥離した後の樹脂基材の剥離面を、反射モード400倍の倍率で30×30mmの範囲の観察を行った。観察の際は、下記の基準に従ってガスバリア製樹脂基材の異物や傷、ノリ残りを評価し、下記の基準に従って膜面品質を評価した。こうして得られた評価結果を、下記表1に示す。
○:1μm以上の異物や傷が見られなく、かつ1μm以下の異物や傷、ノリ残りもほぼ見られなかった(1μm以下の異物:5個未満)。
△:1μm以上の異物や傷が見られなかったが、1μm以下の異物や傷、ノリ残りがわずかに見られた(1μm以下の異物:5個以上)。
×:1μm以上の異物や傷が確認され、かつ1μm以下の異物や傷、ノリ残りが多数確認できた。
(評価3:密着性の評価)
密着性を、JIS(日本工業規格)K5600−5−6(ISO2409)に準拠したクロスカット剥離法で調べた。こうして得られた評価結果を、下記表1に示す。
○:剥離しなかった
×:一部でも剥離した。
(実施例5)
実施例1のガスバリアフィルムの製造方法において、膜Aを大気圧プラズマを用いて製膜した以外は、同様の製造方法で積層ガスバリア性樹脂基材を製造した。
(膜Aの成膜)
大気圧プラズマ製膜装置(特開2008−56967号の図3に記載、ロールトゥーロール形態の大気圧プラズマCVD装置)を用いて、大気圧プラズマ法により、ハードコート層付き透明樹脂基材(きもと社製クリアハードコート層(CHC)付ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ハードコート層はアクリル樹脂を主成分とした樹脂より構成、PETの厚さ125μm、CHCの厚さ6μm)上に、以下の薄膜形成条件で酸化珪素の膜A(100nm)を形成した。
(混合ガス組成物)
放電ガス:窒素ガス 94.9体積%
薄膜形成ガス:テトラエトキシシラン 0.1体積%
添加ガス:酸素ガス 5.0体積%
(成膜条件)
〈第1電極側〉
電源種類:ハイデン研究所 100kHz(連続モード) PHF−6k
周波数 :100kHz
出力密度:10W/cm
電極温度:120℃
〈第2電極側〉
電源種類:パール工業 13.56MHz CF−5000−13M
周波数 :13.56MHz
出力密度:10W/cm
電極温度:90℃
(膜Bの成膜)
実施例1と同様にして膜Bを製造した。
(エネルギー照射処理)
実施例1と同様にして、樹脂材料Aを剥離した後のエキシマ照射処理を行った。
(実施例6)
実施例5のガスバリアフィルムの製造方法において、膜Aを真空プラズマを用いて製膜した以外は、同様の製造方法で積層ガスバリア性樹脂基材を製造した。
(真空プラズマ成膜)
真空プラズマCVD装置を用いて、膜Aの形成を行った。この時、使用した高周波電源は、27.12MHzの高周波電源で、電極間距離は20mmとした。原料ガスとして、シランガスを流量として7.5sccm、アンモニアガスを流量として100sccm、亜酸化窒素ガスを流量として50sccmの条件で真空チャンバー内へ導入し、次いで、成膜開始時にフィルム基板温度を100℃とし、成膜時のガス圧を100Paに設定して酸化窒化珪素を主成分とする膜Aを200nmの膜厚で形成し、積層ガスバリア性樹脂基材を得た。
(実施例7)
実施例5の積層ガスバリア性樹脂基材の製造方法において、膜Aをスパッタ製膜した以外は、同様の製造方法で積層ガスバリア性樹脂基材を製造した。
(スパッタ製膜)
スパッタ装置の真空槽内に樹脂基材をセットし10−4Pa台まで真空引きし、放電ガスとしてアルゴンを分圧で0.5Pa導入した。雰囲気圧力が安定したところで放電を開始しSiターゲット上にプラズマを発生させ、スパッタリングプロセスを開始した。プロセスが安定したところでシャッターを開きフィルムへの酸化珪素層の形成を開始した。5nmの膜が堆積したところでシャッターを閉じて成膜を終了した。
(比較例4)
実施例5の製造方法において、樹脂材料Aを剥離した後のエネルギー照射処理を行わなかった以外は、同様の製造方法で製造をした。
(試料1の評価)
上記のように得られた実施例5〜7および比較例4の積層ガスバリア性樹脂基材について、上記実施例1〜4および比較例1〜3と同様にして、水蒸気バリア性、膜面品質、密着性を評価した。評価結果は、後掲の表2に示す。
(試料2の作製)
《有機電子デバイス(有機EL素子)の作製》
実施例5〜7および比較例4で得られたガスバリア性樹脂基材をそれぞれ有機EL用ディスプレイ基板として用い、その上に陽極電極を構成する透明電極、正孔輸送性を有する正孔輸送層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層、および陰極となる背面電極を積層した。
〈第1電極層の形成〉
透明電極:ITO 150nm
正孔輸送層:m−MTDATXA 40nm
発光層:
発光層A:CDBP、Ir−15(3%) 25nm
中間層1:L−98 3nm
発光層B:CDBP、Ir−16(8%) 10nm
正孔阻止層:L−98 10nm
電子輸送層:Alq3 35nm
陰極バッファー層:フッ化リチウム 0.5nm
陰極:アルミニウム 110nm
さらにこれら各層上に、UV(熱)硬化型エポキシ系封止接着材料(スリーボンド3124C)を介して、封止用ガラス缶を用いて、密着、接着・封止した有機EL素子(OLED)を作製した。それぞれ60℃、90%RH、50時間保存した後の50倍の拡大写真を撮影した。
(評価4:有機EL素子の評価)
上記のように実施例5〜7および比較例3の積層ガスバリア性樹脂基材を使用して得られた有機EL素子(試料2)を、60℃90%RHに50時間保管し保管前の状態と比較を行った。
(黒点の評価方法)
試料に1mA/cmの電流を印加し発光させ、100倍のマイクロスコープ(株式会社モリテックス製MS−804、レンズMP−ZE25−200)でパネルの一部分を拡大し、撮影を行った。撮影画像を2mm四方に切り抜き、目視で観察を行い、黒点(DS)の状況を調べた。その結果、本発明の方法で作製したOLED素子は、DS発生が少なかった。DS発生は、積層ガスバリア性樹脂基材のガスバリア性か低下した場合に、素子が酸素や水蒸気によって劣化して生じるものである。評価結果は、下記表3に示す。
なお、本出願は、2012年4月24日に出願された日本国特許出願第2012−99083号および2013年1月28日に出願された日本国特許出願第2013−13763号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として引用されている。
1 樹脂基材、
2 膜A、
3、4、12 ロール、
5 膜A成膜工程、
6 膜Aの塗布工程、
7、9 エネルギー付与工程、
8 離型性を有する樹脂材料、
10 膜B形成工程、
11 膜B、
101 プラズマCVD装置、
102 真空槽、
103 カソード電極、
105 サセプタ、
106 熱媒体循環系、
107 真空排気系、
108 ガス導入系、
109 高周波電源、
110 基板、
160 加熱冷却装置

Claims (9)

  1. 樹脂基材上に、膜Aおよび膜Bの少なくとも一方によってガスバリア性を示す、膜Aと膜Bとを有する積層ガスバリア性樹脂基材の製造方法において、
    前記樹脂基材上に前記膜Aを形成する工程(A)と、
    前記膜A上に離型性を有する樹脂材料をラミネートする工程(B)と、
    前記離型性を有する樹脂材料を前記膜Aから剥離する工程(C)と、
    前記膜Aに紫外光、コロナ放電、プラズマ放電、およびレーザー光から選ばれる一種であるエネルギーを付与する工程(D)と、
    前記膜A上に前記膜Bを形成する工程(E)と、
    を、順に少なくとも1回経る、積層ガスバリア性樹脂基材の製造方法であって、
    前記工程(D)において、前記エネルギーを、下記(1)〜(5)のいずれか1つの条件で付与する、積層ガスバリア性樹脂基材の製造方法;
    (1)前記紫外光として、1J/cm 以上360J/cm 以下のエネルギー照射量で真空紫外線以外の紫外線照射を行うこと;
    (2)前記紫外光として、1mJ/cm 以上10000mJ/cm 未満のエネルギー照射量で真空紫外線照射を行うこと;
    (3)前記コロナ放電として、10mW・分/m 以上の出力でコロナ照射を行うこと;
    (4)前記プラズマ放電として、1J/cm 以上200J/cm 未満のエネルギー照射量でプラズマ照射を行うこと;
    (5)前記レーザー光として、10mJ/cm 以上5000mJ/cm 以下のエネルギー照射量でレーザー光照射を行うこと
  2. 前記工程(D)において、前記エネルギーが、紫外光、およびプラズマ放電から選ばれる一種である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記工程(D)において、前記エネルギーが波長150〜200nmの真空紫外光である、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記工程(B)後に、前記樹脂基材をロール状に巻き取る工程(X)および前記工程(X)で巻き取られたロール状の樹脂基材を連続的に繰り出す工程(Y)をさらに含み、
    前記工程(C)が連続的に行われる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記樹脂材料は粘着層を有し、前記工程(D)では、前記膜A上に残った前記粘着層を取り除く、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記粘着層の粘着力は、1mN/cm以上2N/cm以下である、請求項1〜5に記載の方法。
  7. 前記膜Aが、酸化珪素または酸化窒化珪素を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記工程(A)は、ウェットコート法を用いて、珪素化合物を含む塗布膜を形成すること、またはドライコート法を用いて、珪素化合物を原材料とする薄膜を形成すること、を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記工程(A)は、エネルギーを付与することを含み、
    前記工程(D)における前記エネルギーの付与は、前記工程(A)におけるエネルギーの付与と同様の方法で行い、かつ、
    前記工程(D)におけるエネルギー付与量は、前記工程(A)におけるエネルギー付与量の1%以上100%未満である、
    請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
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