本発明のバイアス回路を適用した実施の形態について説明する前に、図1乃至3を用いて、前提技術によるバイアス回路について説明する。
図1は、前提技術によるバイアス回路1を示す図である。
バイアス回路1は、PMOS(P-channel Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ11、NMOS(n-channel Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ12、抵抗器13、バイパスコンデンサ14、PMOSトランジスタ21、NMOSトランジスタ22及び23、スタートアップ回路80、及び出力端子1Aを含む。
PMOSトランジスタ11のソースは、電源VDDとバイパスコンデンサ14の一端(図中上側の端子)に接続される。PMOSトランジスタ11のドレインは、自己のゲート、出力端子1A、バイパスコンデンサ14の他端(図中下側の端子)、スタートアップ回路80の出力端子80A、及びNMOSトランジスタ12のドレインに接続される。PMOSトランジスタ11のゲートは、自己のドレインとPMOSトランジスタ21のゲートに接続される。
PMOSトランジスタ11は、PMOSトランジスタ21とカレントミラー回路を構築する。また、バイパスコンデンサ14は、PMOSトランジスタ11のゲート-ソース間に接続されている。
NMOSトランジスタ12のドレインは、PMOSトランジスタ11のドレインとゲート、出力端子1A、及びスタートアップ回路80の出力端子80Aに接続されている。NMOSトランジスタ12のソースは、抵抗器13の一端(図中上側の端子)に接続されている。NMOSトランジスタ12のゲートは、NMOSトランジスタ22のゲートとドレインに接続されている。
NMOSトランジスタ12は、NMOSトランジスタ22とカレントミラー回路を構築する。また、NMOSトランジスタ12は、PMOSトランジスタ11と縦積みされており、互いのドレイン-ソース間の主経路が直列に接続されている。
抵抗器13は、一端(図中上側の端子)がNMOSトランジスタ12のソースに接続され、他端(図中下側の端子)が接地されている。抵抗器13の抵抗値はR1である。
バイパスコンデンサ14は、一端(図中上側の端子)がPMOSトランジスタ11のソースに接続され、他端(図中下側の端子)がPMOSトランジスタ11のゲートに接続されている。すなわち、バイパスコンデンサ14の一端は電源に接続され、他端は出力端子1Aに接続されている。
NMOSトランジスタ23のドレインは、NMOSトランジスタ22のソースと、自己のゲートに接続されている。NMOSトランジスタ23のソースは接地されている。 NMOSトランジスタ23は、NMOSトランジスタ22と縦積みされており、互いのドレイン-ソース間の主経路が直列に接続されている。
出力端子1Aは、バイアス回路1の出力端子であり、BGR(Band Gap Reference)回路90が接続される。
ここでは、出力端子1Aの電圧値をVBとする。BGR回路90は、バイアス回路1の出力電圧VBが入力され、所定の基準電圧を出力する。
スタートアップ回路80は、バイアス回路1の起動時に、出力端子80Aの電圧を一時的に接地電圧に切り替える。スタートアップ回路80の出力電圧が一時的に接地電圧に切り替わることにより、バイアス回路1は起動する。
このようなバイアス回路1において、スタートアップ回路80の出力端子80Aの出力電圧が所定の正電圧から接地電圧に切り替わると、PMOSトランジスタ11のゲート電圧がLレベルになるため、PMOSトランジスタ11及び21がオンになる。
また、PMOSトランジスタ21がオンになると、NMOSトランジスタ12及び22のゲート電圧が上昇するため、NMOSトランジスタ12及び22がオンになる。これにより、PMOSトランジスタ11、NMOSトランジスタ12、及び抵抗器13を含む電流経路に電流が流れ始める。
また、NMOSトランジスタ22がオンになることにより、NMOSトランジスタ23がオンになる。これにより、PMOSトランジスタ21、NMOSトランジスタ22及び23を含む電流経路に電流が流れる。
PMOSトランジスタ11と21はカレントミラー回路であるため、各々のソース-ドレイン間に流れる電流は等しい。
また、NMOSトランジスタ12と22もカレントミラー回路であるため、両者には等しい電流が流れる。この時、NMOSトランジスタ12と22のソース電位がほぼ等しい電圧になるため、電流経路に流れる電流値は、NMOSトランジスタ23の閾値電圧と、抵抗器13の抵抗値R1とによって決まる。
このようなバイアス回路1は、例えば、携帯端末機器のようにバッテリで駆動される機器に用いられる。
携帯端末機器のようなモバイル電子機器に用いられる半導体集積回路には、アナログ回路が集積化されている。BGR回路90は、安定した基準電圧を生成できるため、アナログ回路の基準電圧を生成する回路として多く用いられている。
BGR回路90に代表されるようなアナログ回路を動作させるためには、所定の電流値のバイアス電流、又は、所定の電圧値のバイアス電圧が必要である。このようなバイアス電流又はバイアス電圧を供給するために、バイアス回路1が用いられる。
ここで、バイアス回路1には、主に次の2つの特性を有することが要求される。1つは、電源電圧VDDの変動に対して高い安定性を保つことである。すなわち、高いPSRR(Power Supply Rejection Ratio:電源電圧変動除去比)を持つことである。もう1つは、電源電圧VDDの立ち上がりに対して高速起動性(高速応答性)を有することである。すなわち、出力電圧VBが急峻に所望の電位に立ち上がることである。
高いPSRRを実現するための一般的な手段は、図1に示すようにバイパスコンデンサ14を挿入することである。バイパスコンデンサ14は、電源電圧VDDが変動した場合においても、出力電圧VBを電源電圧VDDと同様に変動させることによって、PMOSトランジスタ11にかかるゲートソース電圧VGSを一定に保ち、PMOSトランジスタ11と21をそれぞれ含む2つの電流経路に流れる電流を安定化させている。
次に、図2を用いて、電源電圧VDDの立ち上がりに対するバイアス回路1の高速起動の必要性について説明する。
図2は、バイアス回路1、BGR回路90、及びLDO(Low Drop Out)電源回路91を含む回路を示す図である。
LDO電源回路91は、入力電圧VINが入力されることによって動作し、所定の出力電圧VLDOを出力する。LDO電源回路91の出力電圧VLDOは、バイアス回路1、及びBGR回路90の電源電圧として入力される。
また、LDO電源回路91の出力電圧VLDOは、分圧回路92によって分圧される。
LDO電源回路91は、BGR回路90の出力電圧VBGRと、分圧回路92の出力電圧が等しくなるように内部でフィードバック制御を行うことにより、所望の出力電圧VLDOを出力する。所望の出力電圧VLDOは、分圧回路92の2つの抵抗比を適切に設定することで得られる。
図3は、バイアス回路1、BGR回路90、及びLDO電源回路91の起動時における入力電圧VIN、出力電圧VLDO、及び出力電圧VBGRの波形を示す図である。ここでは、入力電圧VINが携帯端末機器のバッテリに接続されていないVIN=0(t0)の状態から、バッテリに接続され徐々に電圧が供給される時の様子を示している。特に、図3は入力電圧VINが供給された瞬間の拡大図を示している。
なお、出力電圧VLDOは、図1に示すバイアス回路1における電源電圧VDDとして入力される電圧である。
出力電圧VLDOを立ち上げて一定にするためには、先にBGR回路90を立ち上げ、BGR回路90の出力電圧VBGRを参照しながら、LDO電源回路91の出力電圧VLDOを調節する必要がある。このため、理想的には図3の実線で示すように、時刻t1までで出力電圧VBGRを先に立ち上げることにより、その後の時刻t2で出力電圧VLDOが内部フィードバック制御により一定値に安定する。
ここで、例えば、高いPSRRを確保するために、バイパスコンデンサ14の静電容量Cpを非常に大きくして動作の安定化を図った場合を考える。このような場合には、バイアス回路1の起動(出力電圧VBの立ち上がり完了)が遅くなり、その結果、BGR回路90の出力電圧VBGRの立ち上がりが遅くなる。
このため、図3の破線で示すように出力電圧VBGRが所定の基準電圧V1に到達するまでの時間(t0〜t3)が長くなり、LDO電源回路91の出力電圧を上昇させるためのフィードバック制御が長時間にわたって継続することになる。
この場合、LDO電源回路91の出力電圧VLDOが、破線で示すように所定の電圧V2よりも上昇するため、LDO電源回路91に含まれるトランジスタの耐圧を超えてしまい、LDO電源回路91が破壊される可能性がある。
このような理由から、バイアス回路1には高速起動性が要求される。
ここで、例えば、バイアス回路1の高速起動性を実現するために、バイアス回路1がバイパスコンデンサ14を含まない場合を考える。
この場合は、バイアス回路1の起動は速くなり、出力電圧VBGRは高速に立ち上がるが、時刻t4以降の短い破線で示すように、出力電圧VBGRは、起動完了後の電源電圧VDD(=VLDO)の変動の影響を受けやすくなり、高いPSRRを得ることが困難になる。
以上のように、バイアス回路1のPMOSトランジスタ11のソース-ドレイン間にバイパスコンデンサ14を挿入すれば高速起動性が損なわれ、また、バイパスコンデンサ14を用いなければ高いPSRRを確保することが困難になる。すなわち、高いPSRRと高速起動性の両立を実現することが困難になる。
従って、以下で説明する実施の形態では、高いPSRRと高速起動性の両立を実現したバイアス回路を提供する。
<実施の形態1>
図4は、実施の形態1のバイアス回路100を示す図である。
バイアス回路100は、PMOSトランジスタ11、NMOSトランジスタ12、抵抗器13、PMOSトランジスタ21、NMOSトランジスタ22及び23、スタートアップ回路80、及び出力端子100Aを含む。
バイアス回路100は、さらに、PMOSトランジスタ131、NMOSトランジスタ132及び133、バイパスコンデンサ140、スイッチ150、及びコンパレータ151を含む。
実施の形態1のバイアス回路100において、前提技術のバイアス回路1と同様の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。
実施の形態1のバイアス回路100は、例えば、前提技術のバイアス回路1と同様に、図2に示すLDO電源回路91の出力電圧VLDOが電源電圧VDDとして供給され、出力端子100Aから所定の出力電圧(バイアス電圧)VBを出力する。出力端子100Aは、例えば、前提技術のバイアス回路1の出力端子1Aと同様に、図2に示すBGR回路90に接続されており、バイアス回路100は、BGR回路90に所定の出力電圧VBを供給する。
ここで、バイアス回路100の起動が完了するとは、バイアス回路100が出力する出力電圧VBが立ち上がり、安定することをいう。
また、実施の形態1のバイアス回路100では、PMOSトランジスタ11、NMOSトランジスタ12、及び抵抗器13を含む電流経路をPath1とする。PMOSトランジスタ21と、NMOSトランジスタ22及び23とを含む電流経路をPath2とする。
また、PMOSトランジスタ131と、NMOSトランジスタ132及び133を含む電流経路をPath3とする。
Path1、Path2、Path3は、それぞれ、第1電流経路、第2電流経路、第3電流経路の一例である。
PMOSトランジスタ11は、第1トランジスタの一例であり、PMOSトランジスタ21は、第2トランジスタの一例である。PMOSトランジスタ11と21で構成するカレントミラー回路は、第1カレントミラー回路の一例である。
また、バイアス回路100の出力電圧VBを示す出力ノードをノードVBとする。ノードVBは、第1ノードの一例である。
また、NMOSトランジスタ12及び抵抗器13で構成される回路は、第1基準電流素子の一例であり、NMOSトランジスタ22及び23によって構成される回路は、第2基準電流素子の一例である。
また、NMOSトランジスタ12及び抵抗器13と、NMOSトランジスタ22及び23とによって構成される回路は、基準電流生成部の一例である。この基準電流生成部に含まれるNMOSトランジスタ12と22は、第3カレントミラー回路の一例である。この基準電流生成部では、抵抗器13の一端(図中上側の端子)の電位と、NMOSトランジスタ23のドレインの電位とが等しくなるように動作点が決まる。
この結果、Path2には、NMOSトランジスタ23の閾値電圧Vthと、抵抗器13の抵抗値R1とによって決まる電流I2(I2=Vth/R1)が流れる。
なお、Path1に流れる電流I1は、NMOSトランジスタ12及び22のカレントミラー回路の電流比によって決まる。
スタートアップ回路80は、実施の形態1では、出力端子80A、NMOSトランジスタ81、抵抗器82、及びNMOSトランジスタ83を含む。
NMOSトランジスタ81のドレインは、出力端子80Aに接続されており、NMOSトランジスタ81のソースは接地されている。NMOSトランジスタ81のゲートは、抵抗器82とNMOSトランジスタ83のドレインとの間に接続されている。ここで、NMOSトランジスタ81のゲート電圧をVSとし、抵抗器82の抵抗値をRSとする。
抵抗器82は、一端(図中上側の端子)が電源VDDに接続され、他端(図中下側の端子)がNMOSトランジスタ81のゲートと、NMOSトランジスタ83のドレインとに接続されている。
NMOSトランジスタ83のソースは接地されており、ゲートは、NMOSトランジスタ12及び22のゲートと、NMOSトランジスタ22のドレインと、NMOSトランジスタ132のゲートに接続されている。
ここで、NMOSトランジスタ83のゲート電圧をVLとする。
スタートアップ回路80は、バイアス回路100の起動時に、電源電圧VDDが上昇すると、NMOSトランジスタ81のゲート電圧VSが上昇するため、まずNMOSトランジスタ81がオンになる。これにより、出力端子80Aの電圧は接地電圧(L(Low)レベル)に低下する。
また、出力端子80Aの出力電圧VBがLレベルになると、PMOSトランジスタ11及び21がオンになり、これによって電圧VLがH(High)レベルになるためNMOSトランジスタ12及び22がオンになり、まずPath1に電流が流れる。この直後に、NMOSトランジスタ23がオンになることにより、Path2に電流が流れる。
次に、電圧VLがHレベルになると、NMOSトランジスタ83がオンになるので、NMOSトランジスタ81のゲート電圧VSは接地電圧(Lレベル)になり、NMOSトランジスタ81はオフになる。
すなわち、スタートアップ回路80のNMOSトランジスタ81は、バイアス回路100の起動直後にオンになり、PMOSトランジスタ11及び21に電流が流れVLがHレベルになると、オフに切り替わる。このため、Path1、Path2に流れる電流は、スタートアップによって一度電流が流れると、PMOSトランジスタ11及び21、及びNMOSトランジスタ12及び22の2つのカレントミラーによって電流がI2になるようにフィードバックがかかり、安定した一定電流になる。これにより、出力電圧VBは一定電圧になる。
一方、PMOSトランジスタ131のソースは電源VDDに接続される。PMOSトランジスタ131のドレインは、自己のゲート、NMOSトランジスタ132のドレイン、バイパスコンデンサ140の他端(図中下側の端子)、及び、スイッチ150の一端(図中左側の端子)に接続されている。
NMOSトランジスタ132のドレインは、PMOSトランジスタ131のドレイン及びゲート、バイパスコンデンサ140の他端(図中下側の端子)、及び、スイッチ150の一端(図中左側の端子)に接続されている。
NMOSトランジスタ132のソースは、NMOSトランジスタ133のドレイン及びゲートに接続されている。NMOSトランジスタ132のゲートは、ノードVLを介して、NMOSトランジスタ12及び22のゲート、NMOSトランジスタ22のドレイン、及びNMOSトランジスタ83のゲートに接続されている。
NMOSトランジスタ133のソースは接地されており、ゲートは、自己のドレインに接続されている。
ここで、Path3を構成するPMOSトランジスタ131、及びNMOSトランジスタ132、133は、Path2を構成するPMOSトランジスタ21、及びNMOSトランジスタ22、23と同様である。
PMOSトランジスタ131は、ゲートとドレインが接続されている。PMOSトランジスタ131は、PMOSトランジスタ21とカレントミラー回路を構築する。このカレントミラー回路は、第2カレントミラー回路の一例である。
また、NMOSトランジスタ132は、NMOSトランジスタ22とカレントミラー回路を構築する。このカレントミラー回路は、第4カレントミラー回路の一例である。
また、NMOSトランジスタ132のグランド側にNMOSトランジスタ133を縦積みしたのは、NMOSトランジスタ22に対するNMOSトランジスタ23と同様の縦積みの構成を実現することにより、NMOSトランジスタ23とNMOSトランジスタ133に等しい電流が流れるようにするためである。
NMOSトランジスタ132と133によって構築される回路は、第3基準電流素子の一例である。
バイパスコンデンサ140の一端(図中上側の端子)は電源VDDに接続される。バイパスコンデンサ140の他端(図中下側の端子)は、PMOSトランジスタ131のゲート及びドレイン、NMOSトランジスタ132のドレイン、スイッチ150の一端(図中左側の端子)、及びコンパレータ151の反転入力端子に接続されている。
ここで、バイパスコンデンサ140の他端の電圧をVCとし、このノードをノードVCとする。ノードVCは、第2ノードの一例である。
スイッチ150の一端(図中左側の端子)は、ノードVCに接続され、他端(図中右側の端子)はノードVBに接続される。スイッチ150の制御端子は、コンパレータ151の出力端子に接続されている。スイッチ150は、コンパレータ151の出力がHレベルであるときにオンにされ、コンパレータの出力がLレベルであるときにオフにされる。
スイッチ150は、例えば、ゲートがコンパレータ151の出力端子に接続されるNMOSトランジスタによって実現される。スイッチ150は、第1スイッチの一例である。
コンパレータ151の反転入力端子は、ノードVCに接続され、非反転入力端子は、ノードVBに接続され、出力端子は、スイッチ150の制御端子に接続される。コンパレータ151は、ノードVBとノードVCの電位を比較し、ノードVBの電位がノードVCの電位よりも低いときは、Lレベルの信号を出力端子から出力する。また、コンパレータ151は、ノードVBの電位がノードVCの電位以上であるときは、Hレベルの信号を出力する。
ここで、図4に示すバイアス回路100の動作について説明する。
電源電圧VDDが上昇し、スタートアップ回路80が起動すると、まず、コンパレータ151の出力がLレベルになるように設定される。コンパレータ151の出力をLレベルにするためには、ノードVBの電位よりもノードVCの電位の方が高くなるように設定するが、これは、例えば、次の(1)又は(2)のようにして実現する。
(1)スタートアップ回路80の起動時に一時的に流れる電流が、コンパレータ151の内部に用いる電流よりも大きくなるようにすることにより、スタートアップ回路80がコンパレータ151よりも速く動作するように設定する。これにより、ノードVBの電位がノードVCの電位よりも速く応答し、VB<VCの関係になる。この結果、スタートアップ回路80の起動時に、コンパレータ151の出力はLレベルになる。
(2)Path1に流れる電流がPath3に流れる電流よりも大きくなるようにする。これにより、ノードVBの電位がノードVCの電位よりも速く応答し、VB<VCの関係になる。この結果、スタートアップ回路80の起動時に、コンパレータ151の出力はLレベルになる。
なお、バイアス回路100を(1)と(2)の両方を満たすように設定してもよい。
起動時にスタートアップ回路80に一度電流が流れると、PMOSトランジスタ11及び21に電流が流れ、VBの電位が下降する。次にNMOSトランジスタ22及び12のカレントミラーによって電流がコピーされる。Path2, Path1間で電流のフィードバックがかかり、最終的には安定した一定電流I2=Vth/R1が得られる。スタートアップ回路80の起動時は、コンパレータ451の出力がLレベルであるため、バイアス回路100の起動は、スイッチ150がオフの状態、すなわち、出力電圧VBからバイパスコンデンサ140を切り離した状態で、出力電圧VBの高速起動が実現できる。
一方、Path2に電流が流れると、NMOSトランジスタ22と132で構成される第2カレントミラー回路によりPath3に電流I3が流れ始める。
Path3はPath2と同様の回路構成を有するため、Path3に流れる電流I3は、Path2に流れる電流I2と等しい。ノードVCの電位は、Path3に電流が流れていない初期状態では電源電圧VDDであり、Path3に電流が流れることにより、電源電圧VDDから徐々に下がる。ノードVCの電位が安定電位VCに到達するまでに要する時間をtとすると、t=Cp×(VDD−VC)/I3で規定される。バイパスコンデンサCpを接続しているため、ノードVCの電位の変化はノードVBに比べ時間tだけ遅くなる。
その後、ノードVCの電位が下降して、VC≦VBになると、コンパレータ151の出力信号がHレベルに切り替わり、スイッチ150がオンになる。これにより、ノードVBとノードVCは接続され、等電位になる。
スイッチ150がオンになると、PMOSトランジスタ11のゲート-ソース間にバイパスコンデンサ140が接続された状態になるので、PMOSトランジスタ11にかかるゲートソース電圧VGSを一定に保つことができる。
この結果、PMOSトランジスタ11と21をそれぞれ含むPath1, Path2に流れる電流を安定化させることができ、高いPSRRを実現することができる。
以上のように、実施の形態1のバイアス回路100によれば、Path1, Path2に含まれるPMOSトランジスタ11、12による第1カレントミラー回路のノードVBと、バイパスコンデンサ140とをスイッチ150で切り離すことにより、出力電圧VBの高速起動が実現できる。
また、Path3のPMOSトランジスタ131のゲート-ソース間にバイパスコンデンサ140を接続し、出力電圧VBが立ち上がったときに、スイッチ150をオンにしてノードVBとノードVCを接続するので、出力電圧VBが立ち上がった後は、高いPSRRを実現することができる。
このため、実施の形態1によれば、高いPSRRと高速起動性の両立を図ったバイアス回路100を提供することができる。
次に、図5を用いて、実施の形態1のバイアス回路100のシミュレーション結果について説明する。ここでは、図2に示す前提技術のバイアス回路1の代わりに、図4に示す実施の形態1のバイアス回路100を用いた場合について説明する。
図5は、実施の形態1のバイアス回路100のシミュレーション結果を示す図である。図5(A)には、電源電圧VDD(上段)とBGR回路90の出力電圧VBGR(下段)の動作波形を示す。また、図5(B)には図5(A)に示す初期(立ち上がり時)の動作波形を時間軸方向に拡大した動作波形を示す。図5(B)においても、上段が電源電圧VDDであり、下段がBGR回路90の出力電圧VBGRである。
また、図5(C)には図5(A)に示す電源電圧VDDが変動した際の動作波形を時間軸方向に拡大した動作波形を示す。図5(C)においても、上段が電源電圧VDDであり、下段がBGR回路90の出力電圧VBGRである。
また、図5(A)〜(C)には、比較のために、前提技術のバイアス回路1(図1参照)を用いて、バイアスコンデンサ14(図1参照)の有り/無しの場合について計算した出力電圧VBGRのシミュレーション結果も示す。
図5(A)及び(B)の上段に示すように、バイアス回路100の立ち上がり時に、電源電圧VDDは線形的に上昇する。また、図5(A)及び(B)の下段に示すように、バイアス回路100の出力電圧VBGRは、高速で立ち上がっている(特に図5(B)下段参照)。
これは、前提技術のバイアス回路1でバイパスコンデンサ14を取り外した場合と同様の速さである。
また、図5(B)の下段に破線で示すのは、前提技術のバイアス回路1(バイパスコンデンサ14有り)の場合の出力電圧VBGRであるが、実施の形態1のバイアス回路100の出力電圧VBGRの立ち上がりに比べて大幅に遅れている。
以上より、実施の形態1のバイアス回路100は、高速起動性を達成できていることが分かった。
また、図5(A)及び(C)の上段に示すように、電源電圧VDDが変動した場合は、図5(C)の下段に示すように、実施の形態1のバイアス回路100を用いた場合のBGR回路90の出力電圧VBGRの変動は、微小である。
この変動は、時刻t=20.0ms前後でバイパスコンデンサ140が接続されることによって生じたノイズと同程度であり、VBGRの電位変動が±0.5%以下であり問題の無いレベルに安定している。バイパスコンデンサ140の静電容量は、ノードVBの電位が完全に立ち上がった後にスイッチ150がオンできるように、前述の変形式
Cp=(t・I3)/(VDD−VC)によって設計する。 また、図5(C)の下段に破線で示すのは、前提技術のバイアス回路1(バイパスコンデンサ14有り)の場合の出力電圧VBGRであり、こちらも安定している。
また、図5(C)の下段に一点鎖線で示すのは、前提技術のバイアス回路1でバイパスコンデンサ14を取り外した場合の出力電圧VBGRであり、変動が大きい。
以上より、実施の形態1のバイアス回路100は、高いPSRRを達成できていることが分かった。実施の形態1のバイアス回路100のPSRRは、前提技術のバイアス回路1(バイパスコンデンサ14有り)とほぼ同じ特性を示す。
図4に示す回路では、Path1, Path2に、基準電流生成部の一例として、NMOSトランジスタ12及び抵抗器13と、NMOSトランジスタ22及び23とによって構築される回路を含む形態について説明した。
しかしながら、基準電流生成部の回路構成は、図4の回路に限定されるものではなく、基準電流生成部は、Path1, Path2のPMOSトランジスタ11、21の下流側で、基準電流を生成できる回路であれば、他の回路構成であってもよい。
また、この場合には、Path3のPMOSトランジスタ131の下流側に配設される第3トランジスタは、Path2のPMOSトランジスタ21の下流側と同様の回路であればよい。
また、以上では、Path3はPath2と同様の回路構成を有し、Path3に流れる電流I3は、Path2に流れる電流I2と等しい形態について説明した。
しかしながら、電流I3の値は、NMOSトランジスタ22と132によって構成される第2カレントミラー回路の電流比(トランジスタのサイズの比)を変えた場合、すなわち、電流I3と電流I2の電流値が異なる場合であってもよい。
<実施の形態2>
図6は、実施の形態2のバイアス回路200を示す図である。
実施の形態2のバイアス回路200は、実施の形態1のバイアス回路100に、インバータ152、スイッチ153及び154を追加したものである。その他の構成は、実施の形態1のバイアス回路100と同様であるため、同様の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。
インバータ152の入力端子は、コンパレータ151の出力端子に接続されており、インバータ152の出力端子は、スイッチ153の制御端子に接続されている。
スイッチ153は、一端(図中左側の端子)がPMOSトランジスタ132のゲートに接続されており、他端(図中右側の端子)がPMOSトランジスタ12及び22のゲートと、PMOSトランジスタ22のドレインとに接続されている。スイッチ153の制御端子は、インバータ152の出力端子に接続されている。スイッチ153は、第2スイッチの一例である。
スイッチ153は、実施の形態1のバイアス回路100のノードVLの間に挿入されたものである。
スイッチ153は、例えば、ゲートがインバータ152の出力端子に接続されるNMOSトランジスタによって実現される。スイッチ153は、インバータ152の出力がHレベルのときにオンにされ、Lレベルのときにオフにされる。すなわち、スイッチ153は、スイッチ150とは逆位相でオン/オフが行われる。
ここで、スイッチ153の一端(図中左側の端子)と、PMOSトランジスタ132のゲートとの間のノードをVNとする。
スイッチ154の一端(図中上側の端子)は、ノードVNに接続され、他端(図中下側の端子)は接地される。スイッチ154の制御端子は、コンパレータ151の出力端子に接続されている。スイッチ154は、第3スイッチの一例である。
スイッチ154は、例えば、ゲートがコンパレータ151の出力端子に接続されるNMOSトランジスタによって実現される。スイッチ154は、コンパレータ151の出力がHレベルのときにオンにされ、Lレベルのときにオフにされる。
以上のようなバイアス回路200の起動時は、ノードVBの電位がノードVCの電位よりも低いため、スイッチ150とスイッチ154はオフであり、かつ、スイッチ153はオンである。このため、立ち上がり時の動作は、実施の形態1のバイアス回路100と同様である。
ところが、ノードVCの電位がノードVBの電位以下に下がることによってコンパレータ151の出力がHレベルに切り替わると、スイッチ150と154がオンになるとともに、スイッチ153がオフにされる。
スイッチ150がオンになることにより、ノードVBはノードVCに接続され、バイアス回路200の出力端子200Aから出力される出力電圧VBは安定する。
また、スイッチ153がオフになるとともにスイッチ154がオンになることにより、ノードVNの電位がLレベルになるため、NMOSトランジス132がオフになる。これにより、Path3には電流I3が流れなくなり、起動後に省電力化が可能になる。
このため、実施の形態2によれば、高いPSRRと高速起動性の両立を図るとともに、省電力化を図ったバイアス回路200を提供することができる。
<実施の形態3>
図7は、実施の形態3のバイアス回路300を示す図である。
実施の形態3のバイアス回路300は、実施の形態1のバイアス回路100のNMOSトランジスタ133を抵抗器333に置き換えたものである。その他の構成は、実施の形態1のバイアス回路100と同様であり、同様の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。
抵抗器333の一端(図中上側の端子)はNMOSトランジスタ132のソースに接続されており、他端(図中下側の端子)は接地されている。抵抗器333の抵抗値はR1であり、これは抵抗器13の抵抗値と等しい。
バイアス回路300の動作は、Path3に流れる電流I3がPath1に流れる電流I1と同様になること以外は、実施の形態1のバイアス回路100と同様である。すなわち、Path3にはPath1の電流I1のレプリカ電流としての電流I3が流れる。
実施の形態3によれば、実施の形態1と同様に、高いPSRRと高速起動性の両立を図ったバイアス回路300を提供することができる。
また、Path3に流れる電流I3をI1とI2のどちらに合わせるかは、実施の形態1のバイアス回路100のようにNMOSトランジスタ133を形成することが適しているか、又は、実施の形態3のバイアス回路300のように抵抗器333を形成することが適しているかによって決めればよい。
<実施の形態4>
図8は、実施の形態4のバイアス回路400を示す図である。
実施の形態4のバイアス回路400は、実施の形態1のバイアス回路100に対して、電源VDDとGNDとの間における各構成要素の接続、及び、PMOSトランジスタとNMOSトランジスタを入れ替えて逆にしたものである。
バイアス回路400は、NMOSトランジスタ411、PMOSトランジスタ412及び413、NMOSトランジスタ421、PMOSトランジスタ422、抵抗器423、スタートアップ回路(Start Up)480、及び出力端子400Aを含む。
バイアス回路400は、さらに、NMOSトランジスタ431、PMOSトランジスタ432及び433、バイパスコンデンサ440、スイッチ450、及びコンパレータ451を含む。
実施の形態4のバイアス回路400は、例えば、前提技術のバイアス回路1と同様に、図2に示すLDO電源回路91の出力電圧VLDOが電源電圧VDDとして供給され、出力端子400Aから所定の出力電圧(バイアス電圧)VB2を出力する。出力端子400Aは、例えば、前提技術のバイアス回路1の出力端子1Aと同様に、図2に示すBGR回路90に接続されており、バイアス回路400は、BGR回路90に所定の出力電圧VB2を供給する。
ここで、実施の形態4のバイアス回路400では、NMOSトランジスタ411と、PMOSトランジスタ412及び413とを含む電流経路をPath1とする。NMOSトランジスタ421、PMOSトランジスタ422、及び抵抗器423を含む電流経路をPath2とする。
また、NMOSトランジスタ431と、PMOSトランジスタ432及び433を含む電流経路をPath3とする。
Path1、Path2、Path3は、それぞれ、第1電流経路、第2電流経路、第3電流経路の一例である。
NMOSトランジスタ411のドレインは、PMOSトランジスタ412のドレイン及びゲート、PMOSトランジスタ422のゲート、PMOSトランジスタ432のゲート、及びスタートアップ回路480の出力端子に接続されている。NMOSトランジスタ411のドレインは、スタートアップ回路480の出力端子480Aを介して、図6に示すNMOSトランジスタ83のゲートに接続されている。
NMOSトランジスタ411のソースは接地されており、ゲートは、ノードVB2に接続されている。
ノードVB2には、NMOSトランジスタ411及び421のゲート、バイアス回路400の出力端子400A、スイッチ450の他端(図中右側の端子)、スタートアップ回路480の出力端子480A、及びコンパレータ450の反転入力端子が接続されている。
ノードVB2は、スタートアップ回路480の出力端子480Aを介して、図6に示すNMOSトランジスタ81のドレインに接続されている。
NMOSトランジスタ411は、NMOSトランジスタ421とカレントミラー回路を構成する。
PMOSトランジスタ412のソースは、PMOSトランジスタ413のドレイン及びゲートに接続されている。
PMOSトランジスタ412は、PMOSトランジスタ422とカレントミラー回路を構成する。また、PMOSトランジスタ412は、NMOSトランジスタ411と縦積みされており、互いのドレイン-ソース間の主経路が直列に接続されている。
ここで、図8に示すようにスタートアップ回路480の出力端子480Aが接続されるノードをノードVHとする。
PMOSトランジスタ413のソースは電源VDDに接続されている。 PMOSトランジスタ413は、PMOSトランジスタ412と縦積みされており、互いのドレイン-ソース間の主経路が直列に接続されている。
NMOSトランジスタ421のソースは接地されている。NMOSトランジスタ421のドレイン及びゲートは、ノードVB2に接続されており、
NMOSトランジスタ421は、NMOSトランジスタ411とカレントミラー回路を構成する。
PMOSトランジスタ422のドレインは、ノードVB2を介して、NMOSトランジスタ411のゲートと、NMOSトランジスタ421のドレイン及びゲートと、コンパレータ451の反転入力端子とに接続されている。
PMOSトランジスタ422のソースは、抵抗器423の他端(図中下側の端子)に接続されている。また、PMOSトランジスタ422のゲートは、PMOSトランジスタ412のゲートと、ノードVHを介して、PMOSトランジスタ432のゲートに接続されている。
PMOSトランジスタ422は、PMOSトランジスタ412とカレントミラー回路を構成する。
抵抗器423は、一端(図中上側の端子)が電源VDDに接続され、他端(図中下側の端子)がPMOSトランジスタ422のソースに接続されている。抵抗器413の抵抗値はR2である。
NMOSトランジスタ411は、第1トランジスタの一例であり、NMOSトランジスタ421は、第2トランジスタの一例である。NMOSトランジスタ411と421は、第1カレントミラー回路の一例である。
また、バイアス回路400の出力電圧VB2を示す出力ノードをノードVB2とする。ノードVB2は、第1ノードの一例である。
また、PMOSトランジスタ412及び413で構成される回路は、第1基準電流素子の一例であり、PMOSトランジスタ422及び抵抗器423で構成される回路は、第2基準電流素子の一例である。
また、PMOSトランジスタ412及び413と、PMOSトランジスタ422及び抵抗器423とによって構成される回路は、基準電流生成部の一例である。この基準電流生成部に含まれるPMOSトランジスタ412と422は、第3カレントミラー回路の一例である。この基準電流生成部では、PMOSトランジスタ413のドレインの電位と、抵抗器423の他端(図中下側の端子)の電位とが等しくなるように動作点が決まる。
この結果、Path1には、PMOSトランジスタ413の閾値電圧Vthpと、抵抗器423の抵抗値R2とによって決まる電流I1(I1=Vthp/R2)が流れる。
なお、Path2に流れる電流I2は、PMOSトランジスタ412及び422のカレントミラー回路の電流比によって決まる。
スタートアップ回路480は、バイアス回路400の起動時に、電源電圧VDDが上昇すると、一時的にノードVHを電源電圧VDDに持ち上げ、NMOSトランジスタ421及び411に電流を流す回路である。図8には、スタートアップ回路(Start Up)480の内部の詳細を省略することによって簡略化して示すが、スタートアップ回路480の構成は、図4に示すスタートアップ回路80に対して、電源VDDとGNDとの間における各構成要素の接続、及び、PMOSトランジスタとNMOSトランジスタを入れ替えて逆にしたものである。
NMOSトランジスタ431のソースは接地される。NMOSトランジスタ431のドレインは、自身のゲート、及びPMOSトランジスタ432のドレインに接続されている。NMOSトランジスタ431のゲートは、自身のドレイン、及びバイパスコンデンサ440の一端(図中上側の端子)、スイッチ450の一端(図中左側の端子)、及びコンパレータ451の非反転入力端子に接続されている。
ここで、バイパスコンデンサ440の一端が接続されるノードをVC2とする。ノードVC2は、第2ノードの一例である。
PMOSトランジスタ432のゲートはノードVHに、ソースは、PMOSトランジスタ433のドレイン及びゲートに接続されている。PMOSトランジスタ433のソースは電源VDDに接続されている。ここで、Path3を構成するNMOSトランジスタ431、及びPMOSトランジスタ432、433は、Path1を構成するNMOSトランジスタ411、及びPMOSトランジスタ412、413と、同様の構成である。
NMOSトランジスタ431は、ゲートとドレインが接続されている。NMOSトランジスタ431は、NMOSトランジスタ411とカレントミラー回路を構築する。このカレントミラー回路は、第2カレントミラー回路の一例である。
PMOSトランジスタ432は、PMOSトランジスタ412とカレントミラー回路を構築する。このカレントミラー回路は、第4カレントミラー回路の一例である。
また、PMOSトランジスタ432の電源VDD側にPMOSトランジスタ433を縦積みしたのは、PMOSトランジスタ412に対するPMOSトランジスタ413と同様の縦積みの構成を実現することにより、PMOSトランジスタ413とPMOSトランジスタ433に等しい電流が流れるようにするためである。
PMOSトランジスタ432と433によって構築される回路は、第3基準電流素子の一例である。
バイパスコンデンサ440の一端(図中上側の端子)はノードVC2に接続される。バイパスコンデンサ440の他端(図中下側の端子)は、接地される。
スイッチ450の一端(図中左側の端子)は、ノードVC2に接続され、他端(図中右側の端子)はノードVB2に接続される。スイッチ450の制御端子は、コンパレータ451の出力端子に接続されている。スイッチ450は、コンパレータ451の出力がHレベルであるときにオンにされ、コンパレータの出力がLレベルであるときにオフにされる。
スイッチ450は、例えば、ゲートがコンパレータ451の出力端子に接続されるNMOSトランジスタによって実現される。スイッチ450は、第1スイッチの一例である。
コンパレータ451の非反転入力端子は、ノードVC2に接続され、反転入力端子は、ノードVB2に接続され、出力端子は、スイッチ450の制御端子に接続される。コンパレータ451は、ノードVB2とノードVC2の電位を比較し、ノードVC2の電位がノードVB2の電位よりも低いときは、Lレベルの信号を出力する。また、コンパレータ451は、ノードVC2の電位がノードVB2の電位以上であるときは、Hレベルの信号を出力する。
ここで、図8に示すバイアス回路400の動作について説明する。
電源電圧VDDが上昇し、スタートアップ回路480が起動すると、まず、コンパレータ451の出力がLレベルになるように設定される。コンパレータ451の出力をLレベルにするためには、ノードVB2の電位よりもノードVC2の電位の方が低くなるように設定するが、これは、例えば、次の(3)又は(4)のようにして実現する。
(3)スタートアップ回路480の起動時に一時的に流れる電流が、コンパレータ451の内部に用いる電流よりも大きくなるようにすることにより、スタートアップ回路480がコンパレータ451よりも速く動作するように設定する。これにより、ノードVB2の電位がノードVC2の電位よりも速く応答し、VB2>VC2の関係になる。この結果、スタートアップ回路480の起動時に、コンパレータ451の出力はLレベルになる。
(4)Path1に流れる電流がPath3に流れる電流よりも大きくなるようにする。これにより、ノードVB2の電位がノードVC2の電位よりも速く応答し、VB2>VC2の関係になる。この結果、スタートアップ回路480の起動時に、コンパレータ451の出力はLレベルになる。
なお、バイアス回路400を(3)と(4)の両方を満たすように設定してもよい。
起動時にスタートアップ回路480に電源電圧VDDから一度電流が流れると、NMOSトランジスタ421及び411に電流が流れ、VB2の電位が上昇する。次にPMOSトランジスタ412及び422のカレントミラーによって電流がコピーされる。Path1, Path2間で電流のフィードバックがかかり、最終的には安定した一定電流I1=Vthp/R2が得られる。スタートアップ回路480の起動時は、コンパレータ451の出力がLレベルであるため、バイアス回路400の起動は、スイッチ450がオフの状態、すなわち、出力電圧VB2からバイパスコンデンサ440を切り離した状態で、高速に出力ノードVB2を立ち上げることができ、高速起動性を実現することができる。
一方、Path1に電流が流れると、PMOSトランジスタ412と432で構成されるカレントミラーによりPath3に電流が流れ始め、ノードVCの電位が上昇して、VC2≧VB2になると、コンパレータ451の出力信号がHレベルに切り替わり、スイッチ450がオンになる。これにより、ノードVB2とノードVC2は接続され、等電位になる。
スイッチ450がオンになると、NMOSトランジスタ411のゲート-ソース間にバイパスコンデンサ440が接続された状態になるので、NMOSトランジスタ421にかかるゲートソース電圧VGSを一定に保つことができる。
この結果、電源電圧VDDが変動しても、NMOSトランジスタ411と421をそれぞれ含むPath1, Path2に流れる電流を安定化させることができ、高いPSRRを実現することができる。
以上のように、実施の形態4のバイアス回路400によれば、Path1, Path2に含まれるNMOSトランジスタ411、421による第1カレントミラー回路のノードVB2と、バイパスコンデンサ440とをスイッチ450で切り離すことにより、出力電圧VB2の高速起動が実現できる。
また、ノードVC2とGNDとの間にバイパスコンデンサ440を接続し、ノードVC2の電位がノードVB2の電位よりも高くなったときに、スイッチ450をオンにしてノードVB2とノードVC2を接続するので、出力電圧VB2が立ち上がった後は、高いPSRRを実現することができる。
このため、実施の形態4によれば、高いPSRRと高速起動性の両立を図ったバイアス回路400を提供することができる。
また、実施の形態4では、図9に示す実施の形態4の変形例のバイアス回路401のように、インバータ452、スイッチ453及び454を追加してもよい。これは、図8のバイアス回路400に、インバータ452、スイッチ453及び454を追加したことと同様である。
インバータ452の入力端子は、コンパレータ451の出力端子に接続され、出力端子は、スイッチ453の制御端子に接続される。
スイッチ453の一端(図中左側の端子)は、PMOSトランジスタ432のゲートと、スイッチ454の他端(図中下側の端子)とに接続される。スイッチ453の他端(図中右側の端子)は、ノードVHに接続される。スイッチ453の制御端子はインバータ452の出力端子に接続される。スイッチ453は、第2スイッチの一例である。
スイッチ454の一端(図中上側の端子)は電源VDDに接続される。スイッチ454の制御端子は、コンパレータ451の出力端子によって制御される。スイッチ454は、第3スイッチの一例である。
なお、PMOSトランジスタ432のゲートに接続されるノードをVPとする。
バイアス回路401の起動時など、コンパレータ451の出力がLレベルのときは、スイッチ450がオフ、スイッチ453がオン、スイッチ454がオフである。すなわち、ノードVB2の電位がノードVC2の電位よりも高い(コンパレータ451の出力がLレベルである)間は、図8に示すバイアス回路400と同様の動作を行う。
また、ノードVC2の電位がノードVB2以上になると、スイッチ450がオン、スイッチ453がオフ、スイッチ454がオンになるため、ノードVB2とノードVC2が接続され、NMOSトランジスタ421にかかるゲートソース電圧VGSを一定に保つためのバイパスコンデンサ440を付与させることができる。
この結果、NMOSトランジスタ411と421をそれぞれ含むPath1, Path2に流れる電流を安定化させることができ、高いPSRRを実現することができる。
また、このとき、PMOSトランジスタ432はオフされるため、Path3には電流が流れなくなる。
従って、実施の形態4の変形例によるバイアス回路401によれば、高いPSRRと高速起動性の両立を図るとともに、低消費電力化を図ることができる。
<実施の形態5>
図10は、実施の形態5のバイアス回路500を示す図である。
バイアス回路500は、実施の形態1のバイアス回路100からコンパレータ151を取り除き、比較回路510と制御回路520を追加したものである。その他の構成は、実施の形態1のバイアス回路100と同様であるため、同様の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。また、図10には、バイアス回路500に加えて、BGR回路90を示す。
実施の形態1乃至4のバイアス回路100乃至401を含むような電源回路又はシステムには、パワーオンリセット(POR: Power On Reset)信号を生成する回路が内蔵されていることが多く、この回路にはコンパレータが含まれている。パワーオンリセット信号は、電源回路又はシステムに含まれるマイクロコンピュータ等をリセットまたは、パワーダウン等のために用いられる信号である。
実施の形態5のバイアス回路500は、パワーオンリセット信号を用いて、スイッチ150のオン/オフを切り替える。スイッチ150のオン/オフの切り替えは、実施の形態1と同様である。すなわち、バイアス回路500の起動開始直後は、スイッチ150をオフにして高速起動性を実現し、出力電圧VBが立ち上がり、VBGRが立ち上がった後は、スイッチ150をオンにして高いPSRRを得る。
比較回路510は、コンパレータ511と分圧回路512を含む。
コンパレータ511は、パワーオンリセット信号を生成する回路に含まれるものであり、実施の形態5では、パワーオンリセット信号を生成する回路と、バイアス回路500内部で用いるコンパレータを兼用している。
コンパレータ511の反転入力端子には、BGR回路90の出力端子が接続され、非反転入力端子には、分圧回路512の出力端子(直列接続された2つの抵抗器の中点)が接続される。コンパレータ511の出力端子は、POR信号出力端子530と、スイッチ150の制御端子とに接続されている。
分圧回路512は、直列接続された2つの抵抗器を含み、電源VDDから入力される電源電圧VDDを分圧する。分圧回路512の2つの抵抗器の中点は、分圧回路512の出力端子であり、コンパレータ511の非反転入力端子が接続される。
制御回路520は、NMOSトランジスタ521、抵抗器522、及びNMOSトランジスタ523を含む。
NMOSトランジスタ521のゲートは、BGR回路90の出力端子に接続されている。NMOSトランジスタ521のドレインは、抵抗器522の他端(図中下側の端子)と、NMOSトランジスタ523のゲートとに接続されている。NMOSトランジスタ521のソースは接地されている。
抵抗器522の一端(図中上側の端子)は電源VDDに接続されている。
NMOSトランジスタ523のドレインは、POR信号出力端子530と、スイッチ150の制御端子とに接続されている。NMOSトランジスタ523のソースは接地されている。
このようなバイアス回路500を起動させると、電源電圧VDDが徐々に上昇し始め、出力電圧VBがLレベルから徐々に上昇し始める。これにより、BGR回路90の出力電圧VBGRも徐々に上昇する。
BGR回路90の出力電圧VBGRが低く、NMOSトランジスタ521がオフである間は、NMOSトランジスタ523のゲート端子に抵抗522を介して電源VDDが供給されるため、NMOSトランジスタ523がオンになることにより、コンパレータ511の出力に関係なく、POR信号出力端子530の信号レベルをLレベルにする。
このため、バイアス回路500の起動直後は、スイッチ150はオフされ、Path1, Path2に含まれるPMOSトランジスタ11、21による第1カレントミラー回路のノードVBと、バイパスコンデンサ140とをスイッチ150で切り離すことにより、出力電圧VBの高速起動が実現できる。
また、BGR回路90の出力電圧VBGRが上昇するとともに、電源電圧VDDが上昇し(図5(A),(B)参照)、コンパレータ511の反転入力端子に入力されるBGR回路90の出力電圧VBGRよりも、分圧回路512から非反転入力端子に入力される電源電圧VDDの分圧が高くなると、コンパレータ511の出力はHレベルになる。
また、BGR回路90の出力電圧VBGRが上昇することにより、NMOSトランジスタ521はオンになる。これにより、NMOSトランジスタ523は、ゲート電圧がLレベルになるため、オフになり、POR信号出力端子530は制御回路520の制約を受けず、コンパレータ511の出力がそのまま現れる。
この結果、スイッチ150がオンになる。スイッチ150がオンになるのは、バイス電圧500の出力電圧VBが立ち上がり、かつ、BGR回路90の出力電圧VBGRが安定した状態にあるときである。
従って、実施の形態5のバイアス回路500は、出力電圧VBが立ち上がったときに、スイッチ150をオンにしてノードVBとノードVCを接続するので、出力電圧VBが立ち上がった後は、高いPSRRを実現することができる。
このため、実施の形態5によれば、高いPSRRと高速起動性の両立を図ったバイアス回路500を提供することができる。
以上、本発明の例示的な実施の形態のバイアス回路について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
以上の実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
電源端子と基準電位端子との間の第1電流経路及び第2電流経路にそれぞれ配設される第1基準電流素子及び第2基準電流素子を有する基準電流生成部と、
前記第1電流経路において前記第1基準電流素子と直列に接続される第1トランジスタと、前記第2電流経路において前記第2基準電流素子と直列に接続される第2トランジスタとを有し、前記第1トランジスタ及び前記第2トランジスタの制御端子に接続される第1ノードから所定のバイアス電圧を出力する第1カレントミラー回路と、
前記電源端子と前記基準電位端子との間の第3電流経路に配設される第3基準電流素子と、
前記第3電流経路において前記第3基準電流素子と直列に接続され、前記第1トランジスタ又は前記第2トランジスタと第2カレントミラー回路を構築する第3トランジスタと、
前記第3トランジスタの制御端子に接続される第2ノードと、前記電源端子との間に接続されるバイパスコンデンサと、
前記第1ノードに接続され、前記第1ノードの電位を制御して前記第1トランジスタを起動する起動回路と、
前記第1ノードと前記第2ノードとの間に接続され、前記第1ノードの電位が立ち上がるとオンになる第1スイッチと
を含む、バイアス回路。
(付記2)
前記第1ノードに接続される一方の入力端子と、前記第2ノードに接続される他方の入力端子と、前記第1スイッチの制御端子に接続される出力端子とを有し、前記一方の入力端子の入力電圧が前記他方の入力電圧以上になると、前記第1スイッチをオンにさせる信号を前記出力端子から出力する比較器をさらに含む、付記1記載のバイアス回路。
(付記3)
前記基準電流生成部の制御端子と前記第3基準電流素子の制御端子との間に接続され、前記第1スイッチがオンになるとオフにされる第2スイッチと、
前記第3基準電流素子の制御端子と、前記基準電位端子との間に接続され、前記第1スイッチがオンになるとオンにされる第3スイッチと
をさらに含む、付記1又は2に記載のバイアス回路。
(付記4)
前記第1スイッチをオンにする制御信号を反転し、前記第2スイッチをオフにする制御信号を出力するインバータをさらに含む、付記3に記載のバイアス回路。
(付記5)
電源端子と基準電位端子との間の第1電流経路及び第2電流経路にそれぞれ配設される第1基準電流素子及び第2基準電流素子を有する基準電流生成部と、
前記第1電流経路において前記第1基準電流素子と直列に接続される第1トランジスタと、前記第2電流経路において前記第2基準電流素子と直列に接続される第2トランジスタとを有し、前記第1トランジスタ及び前記第2トランジスタの制御端子に接続される第1ノードから所定のバイアス電圧を出力する第1カレントミラー回路と、
前記電源端子と前記基準電位端子との間の第3電流経路に配設される第3基準電流素子と、
前記第3電流経路において前記第3基準電流素子と直列に接続され、前記第1トランジスタ又は前記第2トランジスタと第2カレントミラー回路を構築する第3トランジスタと、
前記第3トランジスタの制御端子に接続される第2ノードと、前記基準電位端子との間に接続されるバイパスコンデンサと、
前記基準電流生成部の制御端子に接続され、前記基準電流生成部の制御端子の電位を制御して前記基準電流生成部を起動する起動回路と、
前記第1ノードと前記第2ノードとの間に接続され、前記第2ノードの電位が立ち上がるとオンになる第1スイッチと
を含む、バイアス回路。
(付記6)
前記第1ノードに接続される一方の入力端子と、前記第2ノードに接続される他方の入力端子と、前記第1スイッチの制御端子に接続される出力端子とを有し、前記他方の入力端子の入力電圧が前記一方の入力電圧以上になると、前記第1スイッチをオンにさせる信号を前記出力端子から出力する比較器をさらに含む、付記5記載のバイアス回路。
(付記7)
前記基準電流生成部の制御端子と前記第3基準電流素子の制御端子との間に接続され、前記第1スイッチがオンになるとオフにされる第2スイッチと、
前記第3基準電流素子の制御端子と、前記電源端子との間に接続され、前記第1スイッチがオンになるとオンにされる第3スイッチと
をさらに含む、付記5又は6に記載のバイアス回路。
(付記8)
インバータ
前記第1スイッチをオンにする制御信号を反転し、前記第2スイッチをオフにする制御信号を出力するインバータをさらに含む、付記3に記載のバイアス回路。