〔パターン修正方法〕
本発明の一実施形態に係るパターン修正方法について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るパターン修正方法を切断端面により示すフロー図である。
本実施形態に係るパターン修正方法においては、平面部11と、平面部11に直交する方向CDに突出してなる微細凸状パターン(微細凸構造部)12とを有する微細凸状パターン形成体(微細凸構造体)1を形成しようとした際に、当該微細凸状パターン形成体1において、当該微細凸状パターン12が平面部11に直交する方向CDに対し傾斜してしまっている場合(図1(a)参照)、当該微細凸状パターン形成体1のうちの少なくとも微細凸状パターン12(の表面)に外部からエネルギーを付与する(図1(b)参照)。
本実施形態に係るパターン修正方法において、修正対象となる微細凸状パターン12は、ナノインプリント法やフォトリソグラフィー法による微細凹凸パターンの形成に一般的に用いられる樹脂材料(熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等)により構成される。このような樹脂材料としては、例えば、オレフィン系、スチレン系、エチレン系、エステル系、チオフォエン系、アニリン系、ナイロン系、ポリエーテル系、ウレタン系、エポキシ系、フェノール系、アクリル系、ポリイミド系、ポリアセチレン系等の樹脂材料;ポリジメチルシロキサン、ポリシロキサン等のシリコーン樹脂;ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリフェニリンオキサイド、ポリフッ化ビニリデン、ポリサルフォン、ポリ乳酸、ポリエチレンテレフタレート(PET)、塩化ビニル等が挙げられる。
本実施形態において、傾斜の修正対象となる微細凸状パターン12の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、ピラー状、ライン状(ラインアンドスペース状)等が挙げられる。
本実施形態において、微細凸状パターン形成体1における微細凸状パターン12の寸法(パターン幅)又はアスペクト比(パターン高さ/パターン幅)は、微細凸状パターン12を収縮させることでその傾斜を修正し得る程度の寸法又はアスペクト比である限り特に制限されるものではない。しかしながら、例えば、微細寸法(寸法20nm〜1.0μm程度)、かつ高アスペクト比(アスペクト比1.5以上程度)の微細凸状パターン12であると、微細凸状パターン形成体1の形成時に微細凸状パターン12が傾斜してしまわないように細心の注意を払ったとしても、当該微細凸状パターン12の傾斜が生じてしまうことがある。
なお、上記微細凸状パターン12の寸法の上限(1.0μm以下程度)は、上述した樹脂材料を用いてアスペクト比1.5の円柱ピラー状の微細凸状パターン12を形成した場合において当該微細凸状パターン12が傾斜してしまう寸法の一例であり、当該寸法1.0μmを超える微細凸状パターン12に対してであっても、本実施形態に係るパターン修正方法を適用可能である。すなわち、微細凸状パターン12の構造(円柱ピラー状、多角ピラー状、ライン状、L字状、十字状等の形状;アスペクト比等)や樹脂材料の種類等によっては、例えば、寸法1.0μmを超える微細凸状パターン12であっても傾斜が生じてしまうことはあるし、その傾斜を修正することも可能である。
また、上記微細凸状パターン12の寸法の下限(20nm)は、本実施形態に係るパターン修正方法を適用可能な微細凸状パターン12の寸法の下限値の一例を示すものである。しかし、本実施形態に係るパターン修正方法においては、後述するように微細凸状パターン12を構成する樹脂材料を収縮させることにより当該微細凸状パターン12の傾斜が修正されるため、傾斜修正後の微細凸状パターン12の寸法やアスペクト比は、その設計寸法やアスペクト比から変化することになる。この寸法やアスペクト比の変化量は、微細凸状パターン12を構成する樹脂材料の収縮率によって決まってくる。そのため、傾斜修正後の微細凸状パターン12の寸法やアスペクト比の変化量の許容範囲、微細凸状パターン12の設計寸法やアスペクト比、微細凸状パターン12を構成する樹脂材料の収縮率等に応じて、上記微細凸状パターン12の寸法の下限は変動し得る。例えば、微細凸状パターン12の設計寸法が20nmで、微細凸状パターン12を構成する樹脂材料の収縮率が3%であるが、寸法の変化量の許容範囲が0.1nm以下である場合、本実施形態に係るパターン修正方法を適用すると、許容範囲を超える寸法変化を引き起こすおそれがあるため、望ましくない。ただし、当該許容範囲が0.1nmよりも大きい場合には寸法変化が問題とならず、本実施形態に係るパターン修正方法を適用することに問題はない。
さらに、上記アスペクト比(1.5以上)についても同様であり、微細凸状パターン12の構造(円柱ピラー状、多角ピラー状、ライン状、L字状、十字状等の形状;アスペクト比等)や樹脂材料の種類等によって、アスペクト比1.5未満の微細凸状パターン12であっても傾斜が生じることはあるし、その傾斜を修正することも可能である。
例えば、フォトリソグラフィーにより微細凸状パターン12を形成する場合、使用する現像液、リンス液の表面張力によって、微細凸状パターン12にかかる応力が異なるため、アスペクト比によらずしても使用する樹脂材料によっては傾斜が生じることはある。
このことはナノインプリントにおいても同様である。例えば、モールドと硬化した樹脂との界面に対して垂直方向に剥離を実施する場合、モールドの全面が同時に樹脂から離れるわけではなく、モールドと樹脂との剥離は、モールドにおける樹脂との接触面外周から生じ、当該接触面中心に向かって進行する。すなわち、モールドの剥離時には、モールド及び樹脂の間にギャップが生じ、モールド及び樹脂(基板)に撓みが生じることになる。よって、モールドと樹脂との接触面積が小さければ、樹脂から離れ始めるモールドの外周から当該外周に最近傍の微細凸状パターン12までの距離が短いために、モールドや硬化した樹脂(基板)の撓み量が小さく、当該撓み量に応じて微細凸状パターン12にかかる面内方向の応力を無視することができるが、当該接触面積が大きくなると当該応力を無視することができなくなり、アスペクト比が1.5未満の微細凸状パターン12であっても、傾斜が生じることがある。これは、モールドと樹脂とが剥離する際に生じる応力の大きさにも依存する。低い応力で剥離が可能であれば微細凸状パターン12の傾斜は生じにくいが、剥離に高い応力が必要な場合には微細凸状パターン12の傾斜が生じやすい。
また、上述したように、微細凸状パターン12を構成する樹脂材料の収縮率によっては、修正後に所望の寸法及びアスペクト比の微細凸状パターン12を得られなくなるおそれがあるため、当該樹脂材料の収縮率に応じて、本実施形態に係るパターン修正方法を適用可能な微細凸状パターン12のアスペクト比を決定することもできる。
このように、微細凸状パターン12の構造やそれを構成する樹脂材料の種類等により本実施形態に係るパターン修正方法を適用可能な微細凸状パターン12の寸法、アスペクト比は変動するものの、少なくとも微細凸状パターン12が自立可能な構造及び樹脂材料等によって構成されている場合において、本実施形態に係るパターン修正方法を用いることで、特に効果的に当該微細凸状パターン12の傾斜を修正することができる。
本実施形態において、平面部11は、ナノインプリント法により基板13上に微細凸状パターン形成体1を形成する場合にモールドの凹状パターン以外の部分に相当する部分として基板13上に残存する樹脂残膜により構成される(図1参照)。なお、フォトリソグラフィー法により微細凸状パターン形成体1を形成した場合には、図2に示すように、微細凸状パターン12が形成されている基板(例えば、シリコン基板、金属基板、ガラス基板、石英基板等)13が上記平面部11として構成される。また、熱ナノインプリントにてフィルム状又は板状の樹脂材料に直接微細凸状パターン12を形成する場合には、微細凸状パターン12以外の部分として残存する樹脂材料により平面部11が構成される。
微細凸状パターン12にエネルギーを付与する方法としては、例えば、活性エネルギー線照射装置(電子線照射装置、イオンビーム照射装置等の荷電粒子線照射装置;紫外線照射装置、赤外線照射装置、可視光線照射装置、レーザー光線照射装置等の光線照射装置;X線照射装置、ガンマ線照射装置等の放射線照射装置等)を用い、活性エネルギー線(電子線、イオンビーム等の荷電粒子線;紫外線、赤外線、可視光線、レーザー光線等の光線;X線、ガンマ線等の放射線等)14を微細凸状パターン12に照射する方法等が挙げられる。
微細凸状パターン12に照射される活性エネルギー線14の種類は、修正対象である微細凸状パターン12を構成する樹脂材料の種類に応じて適宜選択され得る。例えば、微細凸状パターン12を構成する樹脂材料が光硬化性樹脂であって、当該光硬化性樹脂を、架橋(重合)反応を利用して収縮させる場合、一般に、光硬化性樹脂は波長400nm以下の活性エネルギー線の照射により収縮するため、そのような波長を有する活性エネルギー線を照射する必要がある。ここで、仮に活性エネルギー線として紫外線を選択した場合、光硬化性樹脂に含まれる重合開始剤は最適吸収波長を有するため、当該最適吸収波長に適合するピーク波長を有する紫外線を照射すると、微細凸状パターン12は短時間のうちに収縮することになる。そのため、微細凸状パターン12が収縮しすぎないように、紫外線の照射量を厳密に制御する必要がある。すなわち、制御性の観点からも使用するエネルギーを選択する必要がある。
また、微細凸状パターン12を構成する材料の種類によっても活性エネルギー線14の種類が適宜選択され得る。例えば、活性エネルギー線14として波長が400nm以下の光線を選択した場合(活性エネルギー線照射装置として光線照射装置を選択した場合)、本実施形態により奏される効果は、当該樹脂の厚みや物性に依存することになる。具体的には、使用する光の波長に対する透過率が30%以下の樹脂材料から構成される微細凸状パターン12に光線を照射する場合と、透過率が90%以上の樹脂材料から構成される微細凸状パターン12に光線を照射する場合とでは、樹脂の硬化の様態が異なってくる。透過率30%以下の樹脂材料から構成される微細凸状パターン12においては、光線が照射される表面がより収縮するが、透過率90%以上の樹脂材料から構成される微細凸状パターン12においては、全体が略均一に収縮してしまう。このような樹脂材料における光線の透過率の違いにより、光線の透過率の高い(例えば90%)の樹脂材料から構成される微細凸状パターン12においては、微細凸状パターン12全体が略均一に収縮するため、微細凸状パターン12の傾斜を修正し難いが、光線の透過率の低い(例えば30%)の樹脂材料から構成される微細凸状パターン12においては、微細凸状パターン12の傾斜を効果的に修正することができる。また、光線の照射により傾斜を修正する場合には、基板13からの反射光によりさらに樹脂材料の収縮が生じる可能性も懸念される。よって、光線の照射により傾斜を修正する場合においては、修正すべき微細凸状パターン12に対して光線を照射する方向や散乱光などの光学系、微細凸状パターン12を構成する樹脂材料の透過率(吸収率)や波長に対する反応性等の物性を考慮し、適宜選択するのが好ましい。
一方、活性エネルギー線14として電子線を選択した場合(活性エネルギー線照射装置として電子線照射装置を選択した場合)には、照射方向に面した樹脂の表面近傍においてエネルギーが消費されやすくなるため、樹脂の表面に対して強い変化を起すことが可能であり、傾斜の修正が容易となる。なお、電子線の照射条件もまた、適宜に選択することが好ましい。例えば、電子線の照射源から照射方向を見たときの厚さ20nm以下の微細凸状パターン12に対しては、0.1〜10kV程度の加速電圧により生じた電子線を照射することで、微細凸状パターン12の側面のうち電子線の照射された面を構成する樹脂材料をより効果的に収縮させることができるが、当該微細凸状パターン12の電子線照射面に対向する側面(電子線非照射面)を構成する樹脂材料をほとんど収縮させないため、微細凸状パターン12の傾斜を容易に修正することができる。よって、電子線の照射により樹脂材料を収縮させようとする場合には、電子線照射源から照射方向を見たときの微細凸状パターン12の樹脂の厚さに応じて、電子線照射装置における加速電圧を適宜設定するのが望ましい。
本実施形態において、例えば、微細凸状パターン12が平面部11に対して直交する方向に突出するように微細凸状パターン形成体1を形成したときに、当該微細凸状パターン12が傾斜してしまうと、傾斜する微細凸状パターン12の側面のうち、当該微細凸状パターン12の傾斜方向(図1に示す例においては右方向)に対向する側面12a(図1に示す例においては、側面視左側の側面)は相対的に伸長し、傾斜方向側の側面12b(図1に示す例においては、側面視右側の側面)は相対的に収縮することになる。
そのため、本実施形態において微細凸状パターン12にエネルギーを付与する際には、傾斜する微細凸状パターン12の側面のうち、相対的に伸長している側面12aに付与されるエネルギー量が大きくなるように、微細凸状パターン12にエネルギーを付与する。相対的に伸長している側面12aに対して付与されるエネルギー量をより大きくすることで、相対的に収縮している側面12bよりも相対的に伸長している側面12aの収縮量が大きくなり、結果として微細凸状パターン12を平面部11に直交する方向に向かって立ち上がらせるようにすることができ、微細凸状パターン12の傾斜を修正することができる。
具体的には、傾斜した微細凸状パターン12における相対的に伸長している側面12aに活性エネルギー線(電子線、イオンビーム、紫外線、赤外線、可視光線、レーザー光線、X線、ガンマ線等)14が重点的に照射されるようにするのが好ましく、そのために、微細凸状パターン12の傾斜方向や傾斜角度、隣接する微細凸状パターン12,12の間隔等を考慮して、活性エネルギー線源(電子銃やイオン銃;紫外線、赤外線、可視光線、レーザー光線の光源;X線、ガンマ線の照射源等)の設置位置を設定し、活性エネルギー線の照射方向を設定するのが好ましい。
例えば、図1(b)に示すように、微細凸状パターン形成体1の上方から平面部11に対する直交方向CDに沿って活性エネルギー線14を照射することにより、微細凸状パターン12の側面12aに効率的に活性エネルギー線14を照射することができる一方、微細凸状パターン12の側面12bには活性エネルギー線14が照射され難くなるため、微細凸状パターン12の側面12bよりも側面12aに対して付与されるエネルギー量を大きくすることができる。この結果、当該側面12aにおける微細凸状パターン12の収縮量が、側面12bの収縮量よりも大きくなるため、図1(c)に示すように、平面部11に直交する方向に向かって立ち上がるようにして微細凸状パターン12の傾斜が修正されることになる。
上述した活性エネルギー線の照射工程(図1(b))においては、微細凸状パターン12の傾斜角度、隣接する微細凸状パターン12,12の間隔等に応じて、微細凸状パターン12の側面12aにより効率的に活性エネルギー線14が照射されるように、活性エネルギー線14の照射方向を設定してもよい。例えば、微細凸状パターン形成体1の側面視において、微細凸状パターン12が右側に向かって傾斜しており、図3に示すように、微細凸状パターン12の傾斜(平面部11の直交方向CDに対し、微細凸状パターン12の軸線方向のなす角度θ)が大きく、微細凸状パターン形成体1の上面視において一の微細凸状パターン12の側面12aの一部が隣接する微細凸状パターン12により隠れてしまうような場合、活性エネルギー線14の照射方向を左下方向に設定するのが好ましく、図4に示すように、微細凸状パターン12の傾斜(平面部11の直交方向CDに対し、微細凸状パターン12の軸線方向のなす角度θ)が小さく、微細凸状パターン形成体1の上面視において一の微細凸状パターン12の側面12a全体が露見されるような場合、活性エネルギー線14の照射方向を右下方向に設定するのが好ましい。
なお、微細凸状パターン形成体1において、微細凸状パターン12の傾斜方向は必ずしも一定方向であるとは限らず、各微細凸状パターン12が様々な方向に傾斜していることが考えられる。このような場合において微細凸状パターン形成体1の全体に活性エネルギー線14を照射することで微細凸状パターン12の傾斜を修正しようとする場合には、微細凸状パターン形成体1の上方から平面部11に対する直交方向に沿って活性エネルギー線14を照射するのが好ましい(図1(b)参照)。
また、微細凸状パターン12の傾斜方向に基づいて微細凸状パターン形成体1を複数の領域に分割し、各領域における微細凸状パターン12の傾斜方向に従い、活性エネルギー線14の照射方向を設定し、分割された領域ごとに当該設定された方向から活性エネルギー線14を照射するようにしてもよい。このようにすることで、微細凸状パターン形成体1におけるすべての微細凸状パターン12(の側面12a)に、効果的に活性エネルギー線を照射することができる。
本実施形態において、エネルギーの付与による微細凸状パターン12の収縮は、微細凸状パターン12を構成する樹脂材料の化学構造の変化に起因する収縮、微細凸状パターン12に付与されるエネルギーにより生じる熱に起因する収縮等のうちの少なくとも1つのメカニズムにより生じているものと考えられる。
これらのうち、樹脂材料の化学構造の変化に起因する収縮としては、例えば、微細凸状パターン12を構成する樹脂材料の架橋(重合)反応が進行することにより起こる収縮;微細凸状パターン12を構成する樹脂材料が環構造を有する材料であって、当該環構造が開環により直鎖構造となることで微細凸状パターン12中の樹脂材料が高密度化されることにより起こる収縮;微細凸状パターン12を構成する樹脂材料の分子鎖を切断し、微細凸状パターン12の構造に影響を与えない程度(微細凸状パターン12に損傷が生じない程度)の一部の分子を脱離させることにより起こる収縮;微細凸状パターン12の外部から加わった力(圧力)により樹脂材料の分子鎖が伸びた状態となっていたものが、エネルギーの付与により相互に安定な状態となる距離へと移行することによる収縮等が挙げられ、これらのうちの少なくとも1つのメカニズムにより微細凸状パターン12が収縮しているものと考えられる。
そのため、例えば、微細凸状パターン12を構成する樹脂材料が活性エネルギー線硬化性樹脂である場合、当該活性エネルギー線硬化性樹脂の架橋反応を進行させ得るが、分子鎖を切断し得ない程度のエネルギー強度を有する活性エネルギー線を微細凸状パターン12の側面12aに向けて照射する。これにより、活性エネルギー線が照射された部分(側面12a)近傍における活性エネルギー線硬化性樹脂の架橋反応が進行し、微細凸状パターン12の側面12a近傍がより収縮することになる。この結果として、微細凸状パターン12の傾斜を修正することができる。
また、微細凸状パターン12を構成する樹脂材料が環構造を有する樹脂材料である場合、当該環構造の開環反応を進行させ得る程度のエネルギー強度を有する活性エネルギー線を微細凸状パターン12の側面12aに向けて照射する。これにより、活性エネルギー線が照射された部分(側面12a)近傍における樹脂材料の開環反応が進行して環構造が直鎖構造に変化することで当該側面12a近傍の樹脂材料の高密度化が生じるため、微細凸状パターン12の側面12a近傍がより収縮し、微細凸状パターン12の傾斜を修正することができる。
さらに、微細凸状パターン12を構成する樹脂材料の分子鎖を切断し、一部の分子を脱離させ得る程度のエネルギー強度を有する活性エネルギー線を微細凸状パターン12の側面12aに向けて照射する。これにより、活性エネルギー線が照射された部分(側面12a)近傍における樹脂材料の分子鎖が切断されて一部の分子が脱離し、微細凸状パターン12の側面12a近傍がより収縮する。この結果として、微細凸状パターン12の傾斜を修正することができる。
さらにまた、微細凸状パターン12の側面12aに向けて活性エネルギー線を照射することにより、当該照射された部分(側面12a)近傍を加熱する。これにより、微細凸状パターン12の側面12a近傍を熱収縮させることができ、その結果として、微細凸状パターン12の傾斜を修正することができる。
本実施形態においては、微細凸状パターン12に活性エネルギー線を連続的に照射してもよいが、パルス状に活性エネルギー線を照射することで、微細凸状パターン形成体1における微細凸状パターン12に過剰なエネルギーが付与されないようにするのが好ましい。微細凸状パターン12に過剰なエネルギーが付与されてしまうと、主に収縮させたい部分(微細凸状パターン12の側面12a)以外の部分も収縮してしまうこと等により、微細凸状パターン形成体1が変形してしまうおそれがある。
この場合において、活性エネルギー線照射のパルス幅及びパルス休止時間を含む活性エネルギー線照射条件は、微細凸状パターン形成体1を構成する樹脂材料の種類、微細凸状パターン12の寸法やアスペクト比、微細凸状パターン12の傾斜角度等に応じて、微細凸状パターン12の傾斜を修正し得る程度であって、微細凸状パターン形成体1の変形を生じさせない程度に適宜設定すればよい。
なお、微細凸状パターン12の側面のうちの相対的に伸長している側面12aに重点的に活性エネルギー線を照射したとしても、当該側面12a以外の部分(他の側面、平面部11、基板13等)にも活性エネルギー線が照射されたり、側面12aからエネルギーが伝播したりすることで、側面12a以外の部分にもエネルギーが付与される。このような場合に、平面部11及び微細凸状パターン12が樹脂材料により構成される微細凸状パターン形成体1においては、微細凸状パターン形成体1が全体的に収縮することになるが、微細凸状パターン形成体1を構成する樹脂材料と、基板13を構成する材料との収縮率が相違することにより、微細凸状パターン形成体1の全体的な収縮に伴い基板13の反り返りによる変形が生じるおそれがある。したがって、状況に応じてこのような弊害を防止するために、図5に示すように、微細凸状パターン形成体1を製造する際に平面部11にスリット15を形成しておいたり、微細凸状パターン形成体1と基板13との間に断熱性、絶縁性、吸収性等のエネルギーの伝播を遮る特性を有する層を設けておくことで、エネルギーの伝播が生じるのを抑制したりするのが好ましい。
上述した本実施形態に係るパターン修正方法によれば、微細凸状パターン12にエネルギーを付与するだけで、微細凸状パターン12の傾斜を簡易に修正することができるため、微細凸状パターン形成体1からなる製品(例えば、細胞培養シート、メタマテリアル、親水性膜、撥水性膜等)を高精度で得ることができ、また当該微細凸状パターン形成体1をマスクとするエッチング工程等により得られる製品の歩留まりを向上させることができる。
〔微細凸状パターン形成体の製造方法〕
本実施形態における微細凸状パターン形成体の製造方法は、微細凸状パターン形成体1を形成する工程と、上述した本実施形態に係るパターン修正方法(図1参照)を用いて微細凸状パターン12の傾斜を修正する工程とを含む。
微細凸状パターン形成体1を形成する工程は、ナノインプリント法により微細凸状パターン形成体1を製造する場合、インプリント用樹脂膜16が形成されてなる所定の基板13を用意し(図6(a)参照)、当該基板13上のインプリント用樹脂膜16に、微細凹状パターンを有するインプリント用モールド21を押圧し、その状態で当該インプリント用樹脂膜16を硬化させる転写工程(図6(b)参照)と、硬化したインプリント用樹脂膜16からインプリント用モールド21を剥離する離型工程(図6(c)参照)とを含む。なお、熱ナノインプリント法により微細凸状パターン形成体1を製造する場合、基板13を用いることなくフィルム状又は板状の樹脂材料に直接インプリント用モールド21を押圧し、当該樹脂材料を硬化させてもよい。
一方、フォトリソグラフィー法により微細凸状パターン形成体1を製造する場合、上記微細凸状パターン形成体1を形成する工程は、フォトレジスト膜17が形成されてなる所定の基板13を用意し(図7(a)参照)、当該基板13上のフォトレジスト膜17を、所定の開口パターン22a及び遮光パターン22bを有するフォトマスク22を介して露光する露光工程(図7(b)参照)と、露光されたフォトレジスト膜17を、所望の現像液を用いて現像する現像工程(図7(c)参照)と、その後純水等のリンス液を用いてリンスするリンス工程とが含まれる。
上述したように、微細凸状パターン12を有する微細凸状パターン形成体1を形成することができるが、例えば、ナノインプリント法における離型工程において、インプリント用モールド21の凹状パターン内壁とインプリント用樹脂膜16(微細凸状パターン12)との付着等により当該微細凸状パターン12が引っ張られたり、インプリント用モールド21がインプリント用樹脂膜16に対する直交方向よりも傾いた方向に引き上げられたりすること等により、傾斜した微細凸状パターン12が形成されてしまうことがある(図6(c)参照)。また、フォトリソグラフィー法における現像工程(図7(c)参照)やリンス工程後、現像液やリンス液の乾燥時に生じる表面張力の影響等により、隣接する微細凸状パターン12が倒れてしまうことがある。特に、形成された微細凸状パターン形成体1において、微細凸状パターン12が上述したような寸法やアスペクト比を有するような場合には、微細凸状パターン12の倒れが顕著に生じるおそれがある。
このような場合に、上述した本実施形態に係るパターン修正方法(図1参照)を用いて、微細凸状パターン12の傾斜を修正する。これにより、傾斜した微細凸状パターン12を、平面部11に対する直交方向に立設させるように修正することができるため、平面部11に対する略直交方向に突出してなる微細凸状パターン12を有する微細凸状パターン形成体1を高精度に製造することができる。
なお、微細凸状パターン12が平面部11に対する略直交方向に突出するとは、微細凸状パターン12を上方に、平面部11を下方に位置させた微細凸状パターン形成体1の一の方向からの側面視及び当該一の方向に直交する他の方向からの側面視のいずれにおいても、微細凸状パターン12の底部(平面部11に接する部分)の幅方向中心と、微細凸状パターン12の頂部の幅方向中心とを通る線分(微細凸状パターン12の軸線)の、平面部11に対するなす角度が実質的に90°であることを意味し、当該平面部11に対するなす角度は、微細凸状パターン形成体1の用途(リソグラフィー用マスク等の用途)等に依存する許容範囲内にあればよく、具体的には90°±10°以内であればよい。
本実施形態における微細凸状パターン形成体の製造方法においては、微細凸状パターン形成体1の形成後、微細凸状パターン12が傾斜しているか否かを検知し、微細凸状パターン12が傾斜していると検知された微細凸状パター形成体1のみに、本実施形態に係るパターン修正方法を適用するようにしてもよい。このようにすることで、微細凸状パターン形成体1の製造効率を向上させることができる。
この場合において、微細凸状パターン12が傾斜しているか否かを検知する方法としては、例えば、形状を観察し評価する方法、形状の変化により得られる情報から傾斜の有無を判断する方法等が挙げられる。
具体的には、微細凸状パターン形成体1をその上面又は側面からレーザー顕微鏡やSEM等を用いて撮像して、微細凸状パターン12の傾斜の有無を判断したり、AFM等を用いて微細凸状パターン形成体1に探針を近接又は接触させ、微細凸状パターン12の傾斜の有無を判断したりすることができる。一方、光学顕微鏡を用いると、微細凸状パターン12に応答する分解能が十分ではなく、各微細凸状パターン12を識別することは難しいが、微細凸状パターン12の傾斜が修正されたことが分かっている領域の画像と比較したり、そのような領域を同一解像度にて撮像した画像と比較したりすることで、当該画像のコントラストや色味等の光学特性の違いにより微細凸状パターン12の傾斜の有無を判断することもできるし、透過率、屈折率、反射率等の測定データに基づいて微細凸状パターン12の傾斜の有無を判断してもよく、さらにはこれらの方法を組み合わせて用いてもよい。また、本実施形態において、傾斜した微細凸状パターン12にSEM等を用いて電子線を照射することで当該微細凸状パターン12の側面12aにエネルギーを付与する場合には、当該SEM等で電子線を照射しながら微細凸状パターン12の傾斜の有無を判断することもできる。
上述した本実施形態における微細凸状パターン形成体の製造方法によれば、微細凸状パターン形成体1の製造過程において意図せずして傾斜してしまった微細凸状パターン12を容易に修正することができるため、当該微細凸状パターン形成体1からなる製品(例えば、細胞培養シート、メタマテリアル、親水性膜、撥水性膜等)を高精度で得ることができ、また当該微細凸状パターン形成体1をマスクとするエッチング工程等により得られる製品の歩留まりを向上させることができる。
〔微細凸状パターン形成体製造システム〕
続いて、上述した微細凸状パターン形成体の製造方法を実施し得るシステムについて説明する。図8は、本実施形態における微細凸状パターン形成体製造システムの概略構成を示すブロック図である。
図8に示すように、本実施形態における微細凸状パターン形成体製造システム30は、微細凸状パターン形成体1を製造する製造部31と、製造部31において製造された微細凸状パターン形成体1の微細凸状パターン12が傾斜しているか否かを検知する検知部32と、検知部32により傾斜していると検知された微細凸状パターン形成体1の微細凸状パターン12の傾斜を修正する修正部33とを有する。
製造部31は、微細凸状パターン形成体1を製造するために一般的に用いられる単一の装置又は複数の装置群により構成される。例えば、ナノインプリント法により微細凸状パターン形成体1を製造する製造部31としては、モールド保持部、基板ステージ、インプリントチャンバー等を備える光ナノインプリント装置や熱ナノインプリント装置;ベルト状又は回転体状ナノインプリント用モールドを用い、長尺シート状の被転写体(樹脂シート)を搬送しながら、ベルト状又は回転体状ナノインプリント用モールドを当該被転写体に押圧することで微細凸状パターン形成体1を製造し得るシートナノインプリント装置等が挙げられる。特に、シートナノインプリント装置を用いて微細凸状パターン形成体1を製造すると、ベルト状又は回転体状ナノインプリント用モールドが被転写体(樹脂シート)から引き離される際に、微細凸状パターン12に面内方向の力が加わる(微細凸状パターン12が被転写体(樹脂シート)の搬送方向と反対の方向に引っ張られる)ため、微細凸状パターン12の倒れが生じやすくなる。特に微細凸状パターン12の寸法が小さくなり、アスペクト比が大きくなると、微細凸状パターンの倒れが顕著に生じやすくなる。したがって、かかるシートナノインプリント装置を用いて製造された微細凸状パターン形成体1における微細凸状パターン12の傾斜を修正する方法として、本実施形態に係るパターン修正方法は特に好適な方法であると言える。
また、フォトリソグラフィー法により微細凸状パターン形成体1を製造する製造部31としては、例えば、所定のフォトマスクを介して基板上のフォトレジスト膜を露光する露光装置と、露光装置により露光された基板上のフォトレジスト膜を所定の現像液により現像する現像装置とを含むフォトリソグラフィー装置等が挙げられる。
検知部32としては、微細凸状パターン12の傾斜の有無を検知し得るものである限り、特にその装置構成に制限はなく、例えば、撮像装置及び制御装置を有し、撮像装置にて微細凸状パターン形成体1をその上面又は側面から撮影し、撮像データに基づいて制御装置により微細凸状パターン12の傾斜の有無を判別するものであってもよいし、撮像装置にて微細凸状パターン形成体1に起因する光学特性を計測し、計測値に基づいて制御装置により微細凸状パターン12の傾斜の有無を判別するものであってもよい。
修正部33としては、微細凸状パターン形成体1における微細凸状パターン12の側面12aにエネルギーを付与し、その傾斜を修正し得るものである限り、特にその装置構成に制限はなく、例えば、電子線照射装置、イオンビーム照射装置、紫外線照射装置、赤外線照射装置、可視光線照射装置、レーザー光線照射装置、X線照射装置、ガンマ線照射装置等の活性エネルギー線照射装置等が挙げられる。
なお、製造部31がシートナノインプリント装置からなる場合、修正部33よりも上流側に製造部31により製造された、長尺シート状の微細凸状パターン形成体1を所定の大きさに切断する切断装置を有していてもよい。この場合において、検知部32により微細凸状パターン12が傾斜していると判断された場合に、製造部31により製造された長尺シート状の微細凸状パターン形成体1における当該傾斜部位を含む所定の大きさ部分のみが切断装置により切断され、当該切断された部分のみが修正部33に搬送されるようにしてもよい。
上述した構成を有する微細凸状パターン形成体製造システム30において、製造部31にて製造された微細凸状パターン形成体1が、検知部32に搬送され、検知部32にて当該微細凸状パターン形成体1における微細凸状パターン12の傾斜の有無が検知される。このとき、微細凸状パターン12が傾斜していると検知部32にて判断された場合には、当該微細凸状パターン形成体1は修正部33に搬送され、修正部33にて上述した本実施形態に係るパターン修正方法を用いて微細凸状パターン12の傾斜が修正される。これにより、平面部11と平面部11に対する略直交方向に立設してなる微細凸状パターン12とを有する微細凸状パターン形成体1を製造することができる。
このように、本実施形態における微細凸状パターン形成体製造システム30によれば、製造部31にて製造された微細凸状パターン形成体1において、意図せずして微細凸状パターン12が傾斜してしまった場合においても、修正部33にて当該微細凸状パターン12の傾斜を簡易に修正することができる。その結果として、平面部11に対する略直交方向に立設してなる微細凸状パターン12を有する微細凸状パターン形成体1を容易に、かつ高精度に製造することができる。
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
上記実施形態においては微細凸状パターン形成体1における全微細凸状パターン12(の側面12a)に、活性エネルギー線照射によりエネルギーを付与しているが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、微細凸状パターン形成体1の一部の領域の微細凸状パターン12(の側面12a)のみに活性エネルギー線を照射することにより、当該一部の領域の微細凸状パターン12のみにエネルギーを付与し、その領域内の微細凸状パターン12の傾斜を修正するようにしてもよい。かかる態様においては、微細凸状パターン形成体1の一部の領域内の微細凸状パターン12のみが傾斜しているような場合に、検知工程又は検知部32にて微細凸状パターン12が傾斜していると判断された当該一部の領域のみに活性エネルギー線を照射し、当該一部の領域の微細凸状パターン12(の側面12a)のみにエネルギーを付与することで、その領域内の微細凸状パターン12の傾斜を修正することができる。
また、上記実施形態における微細凸状パターン形成体製造システム30は、微細凸状パターン12の傾斜を検知する検知部32を有しているものであるが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、当該検知部32を有していなくてもよい。
さらに、上記実施形態の微細凸状パターン形成体の製造方法又は製造システム30における検知工程又は検知部32において、微細凸状パターン12の傾斜角度(微細凸状パターン形成体1の側面視(一の方向及びそれに直交する他の方向からの側面視)において、平面部11の直交方向CDに対する微細凸状パターン12の軸線ALのなす角度θ)に基づいて、当該微細凸状パターン12の傾斜の有無を判断し、所定の傾斜角度以上の微細凸状パターン12(当該微細凸状パターン12を含む所定の領域)を特定するようにしてもよい。この場合において、特定された微細凸状パターン12(当該微細凸状パターン12を含む所定の領域)のみにエネルギーを付与することで、その微細凸状パターン12の傾斜を修正することができる。
さらにまた、上記実施形態においては、微細凸状パターン形成体の製造方法における修正工程にて微細凸状パターン12の傾斜の修正処理が施された微細凸状パターン形成体1について、当該傾斜が修正されたか否かを確認する工程をさらに含むものであってもよい。この場合において、上記検知工程と同様の方法により傾斜が修正されたか否かを確認することができる。また、上記実施形態における微細凸状パターン形成体製造システム30においては、修正部33にて修正処理が施された微細凸状パターン形成体1を検知部32に搬送し、検知部32にて微細凸状パターン12の傾斜が修正されたか否かを確認すればよい。
上記実施形態においては、傾斜の修正対象となる微細凸状パターン12は、平面部11の直交方向に突出することを目的として形成されるものであるため、平面部11に対する略直交方向に突出させるように、傾斜する微細凸状パターン12を修正している。しかしながら、目的とする微細凸状パターン形成体における微細凸状パターンが所定の角度で傾斜してなるものの場合であって、当該所定の角度よりも傾斜してしまっている場合においても、本発明を適用することができる。言い換えると、微細凸状パターン形成体における微細凸状パターンの平面部からの突出角度(微細凸状パターンを上方に、平面部を下方に位置させた微細凸状パターン形成体の側面視において、微細凸状パターンの幅方向中心を通る線分(軸線)と平面部との交点を通る平面部の接線に対する当該軸線のなす角度)が、本来目的とする角度よりも傾斜してしまっている場合に、当該微細凸状パターンの突出角度を本来目的とする角度に修正するためにも、本発明を適用することができる。
例えば、突出角度が70°の微細凸状パターン12を有する微細凸状パターン形成体1を製造しようとしたところ、得られた微細凸状パターン形成体1における微細凸状パターン12の突出角度が30°であった場合、当該微細凸状パターン12にエネルギーを付与するとともに、微細凸状パターン12を構成する樹脂材料の収縮量(微細凸状パターン12に付与されるエネルギー量)を制御することで、突出角度を70°にするように修正することができる。なお、微細凸状パターン12が所定の角度で傾斜する微細凸状パターン形成体1をナノインプリントにより製造する方法としては、微細凹状パターンを有するインプリントモールドであって、当該微細凹状パターンの側壁が微細凸状パターン12の突出角度に対応する角度に傾斜する傾斜面により構成されるインプリントモールドを用いる方法を例示することができる。また、当該微細凸状パターン形成体をフォトリソグラフィーにより製造する方法としては、感光性レジストに対する露光光(UV、電子線等)の入射角を制御する方法を例示することができる。
以下、実施例等を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例等に何ら限定されるものではない。
〔試験例1〕
シクロオレフィン系熱可塑性樹脂フィルム(製品名:ゼオノア,日本ゼオン社製,大きさ:10mm角,厚み:2.0mm)の一方の面のみに電子線を照射し(加速電圧:800V,電子線積算照射量:188.6μC/cm2)、電子線照射前後における当該フィルムの平坦度(反り)を、Flatmaster(コーニング社製)により計測した。その結果、電子線照射後に照射面側が凹むようにして反り返っていることが確認された。この結果から、電子線を照射することにより、上記樹脂フィルムの電子線照射面において樹脂がより収縮することが判明した。
〔実施例1〕
シクロオレフィン系熱可塑性樹脂フィルム(製品名:ゼオノア,日本ゼオン社製)を所定の温度に加熱し、ホール状の微細凹状パターンを有するインプリント用モールドを押圧し、当該樹脂フィルムの上面に対する略垂直方向にインプリント用モールドを引き上げて離型することで、ピラー状の微細凸状パターン及び平面部を有する微細凸状パターン形成体を製造した。なお、微細凸状パターン形成体における微細凸状パターンの寸法を250nm、アスペクト比を2、隣接する微細凸状パターンの間隔を250nmと設定した。また、樹脂フィルムの厚さは2.0mmであった。
このようにして製造した微細凸状パターン形成体を、SEM(日本電子社製,製品名:JSM−7001F)を用いて観察したところ、図9のSEM写真から明らかなように、微細凸状パターンの傾斜が確認された(電子線照射量:5.8μC/cm2)。そして、上記SEMを用いて加速電圧800Vにて電子線積算照射量が58.0μC/cm2になるまで電子線を微細凸状パターン形成体に連続して照射したところ、図10のSEM写真から明らかなように、微細凸状パターンの傾斜が修正されたことが確認された。
〔実施例2〕
シクロオレフィン系熱可塑性樹脂フィルムをポリスチレン樹脂フィルムに変更した以外は、実施例1と同様にして微細凸状パターン形成体を製造した。
このようにして製造した微細凸状パターン形成体を、SEM(日本電子社製,製品名:JSM−7001)を用いて観察したところ、図11のSEM写真から明らかなように、微細凸状パターンの傾斜が確認された(電子線照射量:5.8μC/cm2)。そして、上記SEMを用いて加速電圧800Vにて電子線積算照射量が63.8μC/cm2になるまで電子線を連続して微細凸状パターン形成体に照射したところ、図12のSEM写真から明らかなように、微細凸状パターンの傾斜が修正されたことが確認された。
〔実施例3〕
実施例1の微細凸状パターン形成体の一部の領域のみにSEMを用いて加速電圧800Vにて電子線積算照射量が63.8μC/cm2になるまで電子線を連続して照射したところ、図13のSEM写真から明らかなように、当該電子線の照射領域内の微細凸状パターンのみの傾斜が修正されたことが確認された。
実施例3の結果から、微細凸状パターン形成体の一部の領域のみに電子線を照射することで、当該一部の領域内の微細凸状パターンのみの傾斜を修正することができると考えられる。また、電子線を照射した部分のみの傾斜を修正することが可能であったことから、照射された電子線によるエネルギーは照射領域外の微細凸状パターン形成体1にまで拡散することなく、照射領域でのみ修正に作用したものと考えられる。
すなわち、上記試験例1及び実施例1〜3の結果を総合すると、傾斜した微細凸状パターンを有する微細凸状パターン形成体に電子線を照射することで、傾斜した微細凸状パターンにおける相対的に伸長している側面に重点的に電子線が照射されることになるため、電子線のエネルギーの作用によって、電子線が重点的に照射された側面における樹脂材料がより収縮し、その結果として、微細凸状パターンの傾斜が修正されたと推察される。