JP6041155B2 - 液相中でのマスターバッチの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、1種以上のジエンエラストマー、特に、天然ゴムラテックスと1種以上の充填剤との液相中でのマスターバッチの製造方法に関する。
用語“マスターバッチ”は、1種以上の充填剤と任意構成成分としての他の添加剤を導入しているエラストマー系複合体を意味するものと理解されたい。
タイヤトレッドにおいて充填剤が付与する最適の補強特性を、ひいては高耐摩耗性を得るためには、一般に、この充填剤が、できる限り微細に分割され且つできる限り均質に分布している双方の最終形でエラストマーマトリックス中に存在することが望ましいことが分かっている。実際には、そのような条件は、この充填剤が、一方ではエラストマーとの混合中にマトリックス内に取込まれて解凝集し、他方ではこのマトリックス内で均質に分散する極めて良好な能力を示す限りにおいてのみ達成し得る。
実際には、充填剤のエラストマーマトリックス中での分散性を改良するためには、エラストマーと充填剤の混合を“液”相中で行うことが知られている。この混合を実施するには、ラテックス形のエラストマーと一般に“スラリー”と称する充填剤の水性分散液を使用しなければならない。
充填剤、特に、カーボンブラックのゴム内での均一な分散の問題は、1955年から既に提示されている。そのように、文献BE 541816号からは、ゴムとカーボンブラックとのマスターバッチの液相中での製造方法が既知である。この方法は、連続して実施し、水圧衝撃または強力な機械的撹拌を使用してカーボンブラックのエラストマーマトリックス中での分散をもたらしている。
カーボンブラック以外の充填剤、例えば、シリカを使用することもできる。
特許US 5 763 388号は、ポリマーラテックスと充填剤としてのシリカのマスターバッチの液相中での製造方法であって、上記ラテックス中に変性シリカ、即ち、カップリング剤と反応させているシリカを取込ませることを含む方法を教示している。この文献によれば、シリカのこの変性は、変性シリカをポリマーラテックス中に均一に分散させることを可能にしている。
文献WO 2010/011345号は、その1部において、得られるマスターバッチのスコーチおよび粘度に影響を与えるためのシリカの疎水化を開示している。
これらの文献からは、充填剤のマスターバッチ中での分布の均質性を管理することは困難であり、その制限要因は、特に、管理することが困難である凝固段階に関連していることが浮び上ってくる。
従って、製品全体に亘って充填剤の均一な分布を示し、質量による満足し得る収率を示し、且つ満足し得る充填剤/エラストマー比を示すマスターバッチを産出するマスターバッチの製造方法が探求されている;この方法は、単純な装置を使用して実施するのが容易でなければならない。
さらにまた、均質化および凝固段階をより良好に管理し、実際には統御すらし得て、充填剤の凝固物中での分布に影響を与え得るようにすることが有利であろう。
実際に、本出願法人は、エラストマーと充填剤の混合物の均質化を凝固段階前に管理することが可能であり、従って、充填剤のエラストマーマトリックス中での分布を改良し、且つマトリックス中に存在する充填剤全ての関与をもたらし、従って、前以って導入した充填剤の含有量を監視しながら極めて良好な質量による収率をもたらすことを可能にすることを見出した。
従って、本発明は、下記の連続する段階を含むことを特徴とする、1種以上のジエンエラストマーと、該ラテックスと一緒に自然凝固しない1種以上の充填剤とをベースとする液相中でのマスターバッチの製造方法に関する:
・安定でかつ均質な水性分散液(C)を、1種以上のジエンエラストマーラテックス(A)を該ラテックスと一緒に自然凝固せず且つ部分的に疎水化させた1種以上の充填剤の1種以上の安定な水性分散液(B)と混合することによって調製する段階;
・上記水性分散液(C)を均質化する段階;
・上記水性分散液(C)中で、上記ジエンエラストマーラテックスを、上記ラテックスと一緒に自然凝固しない上記充填剤と一緒に、機械的エネルギーを供給することによって凝固させる段階;
・凝固物を回収する段階;その後の、
・回収した凝固物を乾燥させて前記マスターバッチを得る段階。
また、本発明は、上記の方法に従って製造したジエンエラストマーと充填剤とのマスターバッチにも関する。
本発明のもう1つの主題は、ジエンエラストマーと該ラテックスと一緒に自然凝固しない充填剤との、上記の方法に従って製造した少なくとも1種のマスターバッチをベースとするゴム組成物、上記で定義したような組成物を含む最終物品または半製品および上記で定義したような組成物を含むタイヤトレッドである。
最後に、本発明の主題は、上記で定義したような少なくとも1種のゴム組成物を含むタイヤまたは半製品である。
本発明の他の主題、特徴、局面および利点は、以下の説明および実施例を見れば、なお一層明白となるであろう。
使用した疎水化剤、この場合、ODCSの種々の量において、水性分散液(C)の巨視的不安定化前に観察した時間を示すグラフである。
用語“均質”とは、本発明の意味の範囲内で、また、当業者にとっては通常通りに、所定の容積内の充填剤および/またはエラストマーラテックスの濃度がマスターバッチまたは分散液の総容積中の充填剤および/またはラテックスの濃度と同一であることを意味するものと理解されたい。
当業者であれば、必要に応じて、分散液の種々の容積点(例えば、容器内の表面またはより深いところの)で採取した複数のサンプルを使用して充填剤および/またはエラストマーラテックスの濃度を測定することによって、分散液の均一性を如何にして確認するかは承知していることであろう。
所望の目的は、一般に凝集物として知られるマスターバッチ中の充填剤分散のポケットの形成を回避することである。
“ベースとする”組成物なる表現は、使用する種々の構成成分の混合物および/または反応生成物を含む組成物を意味するものと理解すべきである;これらベース構成成分のある種のものは、上記組成物の種々の製造段階において、特に、その化学架橋中に、少なくとも部分的に互いに反応し得るか或いは反応するように意図する。
本説明においては、特に明確に断らない限り、百分率(%)は、全て、質量パーセントである。さらにまた、“aとbの間”なる表現によって示される値の間隔は、いずれも、aよりも大きくからbよりも小さいまでに及ぶ値の範囲を示し(即ち、限界値aとbを除く)、一方、“a〜b”なる表現によって示される値の間隔は、いずれも、aからbまでに及ぶ値の範囲を意味する(即ち、厳格な限定値aおよびbを含む)。
量の単位“phr”は、エラストマー100質量部当りの質量部を意味する。
水性分散液(C)の調製
本発明に従う方法の第1段階は、安定で且つ均質な水性分散液C)を1種以上のエラストマーラテックス(A)と充填剤の1種以上の水性分散液(B)から調製することからなる。
安定な水性分散液とは、本発明の意味の範囲内で、この分散液の構成成分が、少なくとも巨視的レベルにおいて、凝固していない、凝集していない、凝集物を含んでいない、さらに、沈析していない、即ち、その状態が、周囲温度および大気圧下において、所定の時間に亘って変化しない分散液を意味するものと理解されたい。
さらに詳細には、安定な分散液は、巨視的レベルにおいて、カーボンブラックと天然ゴムラテックスの混合から生じる自然凝固と比較して経時的に変化しない。
ジエンエラストマーラテックス(A)
ラテックス形のエラストマーは、本発明の意味の範囲内において、水中に分散させたエラストマー粒子の形で提供されるエラストマーを意味するものと理解されたい。
本発明は、ジエンエラストマーラテックスに関する;ジエンエラストマーは、下記のように定義する:
“ジエン”エラストマーまたはゴムは、知られている通り、ジエンモノマー(共役型であってもまたはなくてもよい2個の炭素‐炭素二重結合を担持するモノマー)に少なくとも一部由来するエラストマー(即ち、ホモポリマーまたはコポリマー)を意味するものと理解すべきである。
これらのジエンエラストマーは、2つのカテゴリー、即ち、“本質的に不飽和”または“本質的に飽和”に分類し得る。“本質的に不飽和”とは、一般に、15%(モル%)よりも多いジエン由来(共役ジエン)の単位含有量を有する、共役ジエンモノマーに少なくとも一部由来するジエンエラストマーを意味するものと理解されたい;従って、ブチルゴム、またはEPDMタイプのジエンとα‐オレフィンとのコポリマーのようなジエンエラストマーは、上記の定義に属さず、特に、“本質的に飽和”のジエンエラストマー(低いまたは極めて低い、常に15%よりも低いジエン由来の単位含有量)として説明し得る。“本質的に不飽和”のジエンエラストマーのカテゴリーにおいては、“高不飽和”のジエンエラストマーは、特に、50%よりも多いジエン由来(共役ジエン)の単位含有量を有するジエンエラストマーを意味するものと理解されたい。
さらにまた、これらのジエンエラストマーのうちでは、天然ゴムと合成エラストマーに区別される。
天然ゴム(NR)は、本発明において特に適しており、"Latex concentrates: properties and composition", by K.F. Gaseley, A.D.T. Gordon and T.D. Pendle, in "Natural Rubber Science and Technology", A.D. Roberts, Oxford University Press, 1988の第3章に詳細に説明されているように、種々の形で存在する。
特に、数種の形の天然ゴムゴムラテックスは、商業的に入手可能である:農園ラテックスと称する天然ゴムラテックス、濃縮天然ゴムラテックス、エポキシ化ラテックス(ENR)、脱タンパク質ラテックス、アミド結合開裂段階に供しているラテックスまたは予備加硫ラテックス。農園天然ゴムラテックスは、アンモニアを添加して早期の凝固を防止しているラテックスであり、濃縮天然ゴムラテックスは、洗浄およびその後の濃縮に相当する処理に供している農園ラテックスに相当する。種々のカテゴリーの濃縮天然ゴムラテックスが、規格ASTM D 1076‐06に具体的に記載されている。これらの濃縮天然ゴムラテックスのうちでは、特に、HA (高アンモニア)級の濃縮天然ゴムラテックスとLA級の濃縮天然ゴムラテックスに区別される;本発明においては、有利には、HA級の濃縮天然ゴムラテックスを使用し得る。
上記ラテックスは直接使用してもよく、或いは、前以って水中に希釈してその使用を容易にすることもできる。
ジエンエラストマーとして本発明に従って使用することのできる合成ジエンエラストマーは、さらに詳細には、下記を意味するものと理解されたい:
(a) 4〜12個の炭素原子を有する共役ジエンモノマーを重合させることによって得られる任意のホモポリマー;
(b) 1種以上の共役ジエンを他のジエンまたは8〜20個の炭素原子を有する1種以上のビニル芳香族化合物と共重合させることによって得られる任意のコポリマー;
(c) エチレンおよび3〜6個の炭素原子を含有するα‐オレフィンを、6〜12個の炭素原子を含有する非共役ジエンモノマーと共重合させることによって得られる3成分コポリマー、例えば、上記タイプの非共役ジエンモノマー、例えば、特に、1,4‐ヘキサジエン、エチリデンノルボルネンまたはジシクロペンタジエンと一緒のエチレンおよびプロピレンから得られるエラストマー;および、
(d) イソブテンとイソプレンのコポリマー(ブチルゴム)、さらにまた、このタイプのコポリマーのハロゲン化形、特に、塩素化または臭素化形。
以下は、共役ジエン類として特に適している:1,3‐ブタジエン;2‐メチル‐1,3‐ブタジエン;例えば、2,3‐ジメチル‐1,3-ブタジエン、2,3‐ジエチル‐1,3‐ブタジエン、2‐メチル‐3‐エチル‐1,3‐ブタジエンまたは2‐メチル‐3‐イソプロピル‐1,3‐ブタジエンのような2,3‐ジ(C1〜C5アルキル)‐1,3‐ブタジエン;アリール‐1,3‐ブタジエン;1,3‐ペンタジエンまたは2,4‐ヘキサジエン。以下は、例えば、ビニル芳香族化合物として適している:スチレン;オルソ‐、メタ‐またはパラ‐メチルスチレン;“ビニルトルエン”市販混合物;パラ‐(tert‐ブチル)スチレン;メトキシスチレン;クロロスチレン;ビニルメシチレン;ジビニルベンゼンまたはビニルナフタレン。
上記コポリマーは、99〜20質量%のジエン単位と1〜80質量%のビニル芳香族単位を含み得る。これらのエラストマーは、使用する重合条件、特に、変性剤および/またはランダム化剤の存在または不存在並びに使用する変性剤および/またはランダム化剤の量に依存する任意のミクロ構造を有し得る。上記エラストマーは、例えば、ブロック、ランダム、序列または微細序列エラストマーであり得、分散液中または溶液中で調製し得る;これらのエラストマーは、カップリング剤および/または星型枝分れ化剤(star‐branching agent)或いは官能化剤によってカップリングし得および/または星型枝分れ化し得或いは官能化し得る。カーボンブラックとカップリングさせるには、例えば、C‐Sn結合を含む官能基または、例えば、アミノベンゾフェノンのようなアミノ化官能基を挙げることができる;シリカのような補強用無機充填剤とカップリングさせるには、例えば、シラノール基またはシラノール末端を有するポリシロキサン官能基(例えば、FR 2 740 778号またはUS 6 013 718号、およびWO2008/141702号に記載されているような)、アルコキシシラン基(例えば、FR 2 765 882号またはUS 5 977 238号に記載されているような)、カルボキシル基(例えば、WO 01/92402号またはUS 6 815 473号、WO 2004/096865号またはUS 2006/0089445号に記載されているような)、或いはポリエーテル基(例えば、EP 1 127 909号またはUS 6 503 973号、WO 2009/000750号およびWO 2009/000752号に記載されているような)を挙げることができる。また、そのような官能化エラストマーの他の例としては、エポキシ化タイプのエラストマー(SBR、BR、NRまたはIRのような)も挙げることができる。
以下が適している:ポリブタジエン、特に、4%と80%の間の1,2‐単位含有量(モル%)を有するポリブジエンまたは80%よりも多いシス‐1,4‐単位含有量(モル%)を有するポリブタジエン;ポリイソプレン;ブタジエン/スチレンコポリマー、特に、0℃と−70℃の間、特に−10℃と−60℃の間のTg (ガラス転移温度(Tg)、ASTM D3418に従い測定)、5質量%と60質量%の間、特に20質量%と50質量%の間のスチレン含有量、4%と75%の間のブタジエン成分1,2‐結合含有量(モル%)および10%と80%の間のトランス‐1,4‐結合含有量(モル%)を有するコポリマー;ブタジエン/イソプレンコポリマー、特に、5質量%と90質量%の間のイソプレン含有量および−40℃〜−80℃のTgを有するコポリマー;または、イソプレン/スチレンコポリマー、特に、5質量%と50質量%の間のスチレン含有量および−5℃と−50℃の間のTgを有するコポリマー。ブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーの場合は、5質量%と50質量%の間、特に10質量%と40質量%の間のスチレン含有量、15質量%と60質量%の間、特に20質量%と50質量%の間のイソプレン含有量、5質量%と50質量%の間、特に20質量%と40質量%の間のブタジエン含有量、4%と85%の間のブタジエン成分1,2‐単位含有量(モル%)、6%と80%の間のブタジエン成分トランス‐1,4‐単位含有量(モル%)、5%と70%の間のイソプレン成分1,2‐+3,4‐単位含有量(モル%)および10%と50%の間のイソプレン成分トランス‐1,4‐単位含有量(モル%)を有するコポリマー、さらに一般的には、−5℃と−70℃の間のTgを有する任意のブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーが特に適している。
要するに、本発明に従う1種以上の合成ジエンエラストマーは、好ましくは、ポリブタジエン(“BR”と略記する)、合成ポリイソプレン(IR)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマーおよびこれらエラストマーの混合物からなる高不飽和ジエンエラストマーの群から選択する。そのようなコポリマーは、さらに好ましくは、ブタジエン/スチレンコポリマー(SBR)、イソプレン/ブタジエンコポリマー(BIR)、イソプレン/スチレンコポリマー(SIR)およびイソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー(SBIR)からなる群から選択する。
従って、合成エラストマーラテックスとしては、該ラテックスは、特に、エマルジョン形で既に入手可能な合成ジエンエラストマー(例えば、エマルジョン中で調製したブタジエンとスチレンのコポリマー、即ち、SBR)または当初は溶液中での合成ジエンエラストマー(例えば、溶液中で調製したSBR)、これを、有機溶媒と水の混合物中に、一般的には界面活性剤を使用してエマルジョン化したものからなり得る。
SBR、特に、エマルジョン中で調製したSBR(“ESBR”)または溶液中で調製したSBR(“SSBR”)、特に、エマルジョン中で調製したSBRのラテックスは、本発明において特に適している。
スチレンとブタジエンのエマルジョン共重合においては2つの主なタイプの方法が存在し、そのうちの1つは、高枝分れSBRの調製に適する高温法(ほぼ50℃の温度で実施する)であり、一方、他の1つは、より線状のSBRを得るのを可能にする低温法(15℃〜40℃の範囲であり得る温度で実施する)である。
上記高温法において使用することのできる数種の乳化剤の有効性(上記乳化剤の含有量の関数としての)の詳細な説明については、例えば、Journal of Polymer Scienceの1950, Vol. V, No. 2, pp. 201‐206および1951, Vol. VI, No. 1, pp. 73‐81に掲載されているミネソタ州ミネアポリスのミネソタ大学のC. W. Carr、I. M. KolthoffおよびE. J. Meehanによる2つの論文を参照することができる。
上記低温法の比較実施例に関しては、例えば、論文 Industrial and Engineering Chemistry, 1948, Vol. 40, No. 5, pp. 932-937, E. J. Vandenberg, G. E. Hulse, Hercules Powder Company, Wilmington, Delaware、および論文 Industrial and Engineering Chemistry, 1954, Vol. 46, No. 5, pp. 1065‐1073, J. R. Miller and H. E. Diem, B. F. Goodrich Chemical Co., Akron, Ohioを参照することができる。
SBR(ESBRまたはSSBR)エラストマーの場合、特に、例えば20質量%と35質量%の間の中程度のスチレン含有量または例えば35質量%〜45質量%の高スチレン含有量、15%と70%の間のブタジエン成分ビニル結合含有量、15%と75%の間のトランス‐1,4‐結合含有量(モル%)および−10℃と−55℃の間のTgを有するSBRを使用する;そのようなSBRは、有利には、好ましくは90%(モル%)よりも多いシス‐1,4‐結合を有するBRとの混合物として使用し得る。
ブレンドとしての1種以上の天然ゴムラテックス、ブレンドとしての1種以上の合成ゴムラテックス、または1種以上の天然ゴムラテックスと1種以上の合成ゴムラテックスのブレンドの使用を意図することも可能であることに留意すべきである。
本発明の好ましい実施態様によれば、上記方法は、水性天然ゴム分散液、特に、濃縮天然ゴムラテックス、特に、“HA”(高アンモニア)級または“LA”級の濃縮天然ゴムラテックスを使用する。さらに特定的には、“HA”(高アンモニア)級の濃縮天然ゴムラテックスを使用する。
上記水性分散液(A)中の天然ゴムの濃度は、該分散液の総質量に対して、10〜65質量%、好ましくは30〜65質量%、特に40〜65質量%の範囲である。
1種以上の充填剤の安定な水性分散液(B)
水性分散液(C)について上記で定義したような安定な水性分散液とは、この分散液の構成成分、即ち、充填剤が、少なくとも巨視的レベルにおいて、凝固していない、凝集していない、凝集物を含んでいない、さらに、沈析していない、即ち、その状態が、周囲温度および大気圧下において、所定の時間に亘って変化しない分散液を意味するものと理解されたい。
タイヤの製造において使用することのできるゴム組成物を補強するその能力について知られている任意のタイプの補強用充填剤を使用し得る;但し、これらの充填剤は、上記ジエンエラストマーと一緒に自然凝固しないことを条件とする。
本発明に従う充填剤は、補強用有機充填剤、シリカのような補強用無機充填剤、ハイブリッド有機/無機充填剤、ポリマー系充填剤およびこれらの混合物から選択し得る;これらの充填剤は、全て親水性である。
1種以上の補強用無機充填剤の水性分散液
本発明に従う“補強用無機充填剤”とは、本特許出願においては、定義によれば、カーボンブラックと対比して、“白色充填剤”、“透明充填剤”としても、または実際には“非黒色充填剤”としてさえも知られており、それ自体単独で、中間カップリング剤以外の手段によることなく、タイヤの製造を意図するゴム組成物を補強し得る、換言すれば、その補強役割において、通常のタイヤ級カーボンブラックと置換わり得る任意の無機または鉱質充填剤(その色合およびその由来(天然または合成)の如何にかかわらない)を意味するものと理解すべきである;本発明の関連においては、そのような充填剤は、その親水性に、即ち、一般に、知られている通り、その表面でのヒドロキシル(‐OH)基の存在に特徴を有する。
補強用無機充填剤を供給する物理的状態は、粉末、マイクロビーズ、顆粒、ビーズまたは任意の他の適切な高密度化形のいずれの形状であれ重要ではない。勿論、補強用無機充填剤は、種々の補強用無機充填剤、特に、下記で説明するようなシリカ質および/またはアルミナ質充填剤の混合物を意味することも理解されたい。
シリカとしては、沈降、ヒュームドまたはコロイド状シリカを挙げることができる。無機充填剤としては、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、アルミナモノハイドレート(Al2O3.H2O)、水酸化アルミニウム[Al(OH)3]、炭酸アルミニウム[Al2(CO3)3]、水酸化マグネシウム[Mg(OH)2]、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、タルク(3MgO.4SiO2.H2O)、アタパルガイト(5MgO.8SiO2.9H2O)、二酸化チタン(TiO2)、チタンブラック(TiO2n-1)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム[Ca(OH)2]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO.Al2O3)、クレー(Al2O3.2SiO2)、カオリン(Al2O3.2SiO2.2H2O)、パイロフィライト(Al2O3.4SiO2.H2O)、ベントナイト(Al2O3.4SiO2.2H2O)、ケイ酸アルミニウム(Al2SiO5.Al4(SiO4)3.5H2O)、ケイ酸マグネシウム(Mg2SiO4.MgSiO3)、ケイ酸カルシウム(Ca2SiO4)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al2O3.CaO.2SiO2)、ケイ酸カルシウムマグネシウム(CaMgSiO4)、炭酸カルシウム(CaCO3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、水酸化ジルコニウム[ZrO(OH)2.nH2O]、炭酸ジルコニウム[Zr(CO3)2]、およびゼオライトのような、電荷を補う水素原子、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含む結晶性アルミノケイ酸塩、並びにこれらの混合物を挙げることができる。
シリカ質タイプの鉱質充填剤、特にシリカ(SiO2)、またはアルミナ質タイプの鉱質充填剤、特にアルミナ(Al2O3)は、補強用無機充填剤として特に適している。使用するシリカは、当業者にとって既知の任意の補強用シリカ、特に、共に450m2/g未満、好ましくは30〜400m2/gのBET表面積とCTAB比表面積を示す任意の沈降またはヒュームドシリカであり得る。沈降シリカとしては、例えば、Degussa社からのUltrasil 7000およびUltrasil 7005シリカ類;Rhodia 社からのZeosil 1165MP、1135MPおよび1115MPシリカ類;PPG社からのHi‐Sil EZ150Gシリカ;Huber社からのZeopol 8715、8745または8755シリカ類;または、出願 WO 03/16837号に記載されているような高比表面積を有するシリカ類が挙げられる。
本発明のもう1つの実施態様によれば、使用するジエンエラストマーは天然ゴムであり、使用する無機充填剤はシリカである。
カーボンブラックとは対照的に、本発明に従って使用する充填剤は、天然ゴムと一緒に自然凝固しない。シリカの特定の場合においては、シリカ凝集体は、典型的に親水性であり、エラストマー粒子自体とよりも水との方により親和性を有する。
にもかかわらず、種々の解決法が提供されて、上記充填剤の液相中でのエラストマーマトリックス中での凝固および良好な分散を得ることを可能にしている。
そのように、本発明に従う充填剤を表面変性して充填剤粒子とエラストマー粒子間に必要な親和性を創出することが必要である。エラストマーと一緒に凝固する充填剤の能力は、その表面特性に由来する。
実際に、驚くべきことに、水性分散液(B)中の部分疎水化充填剤の存在は水性分散液(C)の凝固を可能にすることを観察している。さらにまた、水性分散液(C)に加える機械的エネルギーの一定供給によれば、水性分散液(C)の均質化段階の時間は上記充填剤の疎水化度の関数であることも観察されている。
本発明に従う充填剤を疎水性にするためには、その粒子に、下記の式(I)を有する1種以上の疎水化剤をグラフトさせる:

En‐F (式I)

(式中、
・nは、1または2に等しい整数であり;
・nが値1を有する場合、Fは、1価の基であり;
・nが値2を有する場合、Fは、2価の基であり;
・Eは、上記充填剤に物理的および/または化学的に結合し得、且つ、その構造内に、基Eに疎水性を付与する1〜18個の炭素原子を含む少なくとも1本のアルキルまたはアルキレン鎖を含む官能基を示し;
・Fは、ジエンエラストマーに物理的および/または化学的に結合し得るまたは結合し得ない基を示す)。
有利には、上記疎水化剤は、下記の式(II)を有する:

[G(3-m)(L‐K)mSi‐L‐]n‐F (II)

(式中、nが値1を有する場合、Fは、以下で定義するK基を示し、mは0〜2の範囲にあり;そして、nが値2を有する場合、Fは、アミノ基、ポリスルフィド(Sx)基またはエポキシ基を示し、mは0〜2の範囲にあり;
G基は、互いに無関係に、水素原子;線状、枝分れまたは環状のアルキル基、アラルキル基、アルキルアリール基およびアリール基、例えば、フェニル、ベンジル、シクロペンチル、シクロヘキシルから選ばれるC1〜C18炭化水素基;アルコキシ(R1O)‐基 (式中、R1は、例えば、メチル、エチルおよびイソプロピル基、好ましくは少なくとも1個のメチルおよびエチル基のような飽和C1〜C8アルキル基を示す);フッ素、塩素、臭素およびヨウ素のようなハロゲン原子;および、ヒドロキシル基から選ばれ;
但し、少なくとも1個のG基は、アルコキシ基、塩素原子またはヒドロキシル基から選ばれることを条件とし;
Lは、必要に応じて酸素原子を含む、例えば、メチレン、エチレン、イソプロピレン、n‐ブチレン、オクタデシレン、フェニレン、シクロペンチレンおよびシクロヘキシレン基のような飽和または不飽和で線状、枝分れまたは環状の、好ましくは1〜8個の炭素原子を有するC1〜C18アルキレン基を示し;
Kは、水素原子;フッ素、塩素、臭素およびヨウ素のようなハロゲン原子;または、アミノ基、ポリアミノアルキル基、メルカプト基、エポキシ基、ヒドロキシル基、ビニル基、アクリルオキシ基、メタクリルオキシ基、‐SCN基またはR(CO)S‐基 (Rは、C1〜C18アルキル基である)から選ばれる官能基を示す)。
好ましくは、m = 0である。
従って、本発明の第1の特定の実施態様によれば、上記疎水化剤は、下記の式(III)を有する:

G3Si‐L‐K (III)

(式中、G、LおよびKは、上記で定義したとおりである)。
本発明の第2の特定の実施態様によれば、上記疎水化剤は、下記の式(IV)を有する:

[G3Si‐L‐]2‐F (IV)

(式中、G、LおよびFは、上記で定義したとおりである)。
好ましくは、上記疎水化剤は、クロロトリメチルシラン、クロロトリエチルシラン、クロロトリプロピルシラン、ブロモトリメチルシラン、ブロモトリエチルシラン、ブロモトリプロピルシラン、フルオロトリメチルシラン、メトキシトリメチルシラン、メトキシトリエチルシラン、メトキシトリプロピルシラン、クロロトリメチルシラン、ジクロロジメチルシラン、トリクロロメチルシラン、ブロモトリメチルシラン、ジブロモジメチルシラン、トリブロモメチルシラン、メトキシトリメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、トリメトキシメチルシラン、テトラメトキシシラン、トリメトキシプロピルシラン、トリメトキシオクチルシラン、トリメトキシへキサデシルシラン、ジメトキシジプロピルシラン、トリエトキシメチルシラン、トリエトキシプロピルシラン、トリエトキシオクチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、オクテニルジメチルクロロシラン、オクトデシルトリクロロシラン、(γ‐アミノプロピル)トリメトキシシラン、(γ‐アミノプロピル)トリエトキシシラン、(ガンマ‐ヒドロキシプロピル)トリプロポキシシラン、(γ‐メルカプトプロピル)トリエトキシシラン、(γ‐アミノプロピル)ジメチルエトキシシラン、(γ‐アミノプロピル)ジヒドロキシメトキシシラン、(グリシジルプロピル)トリメトキシシラン、[γ‐(N‐アミノエチル)アミノプロピル]トリエトキシシラン、(γ‐メタクリルオキシプロピル)トリエトキシシラン、(γ‐メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(β‐メルカプトエチル)トリエトキシシラン、[γ‐(N‐アミノエチル)プロピル]トリメトキシシラン、(N‐メチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、(γ‐チオシアネートプロピル)トリエトキシシラン、ビス‐(3‐トリエトキシチオプロピル)シランテトラスルフィド、ビニルトリエトキシシラン、ビニルフェニルメチルシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルエチルジメトキシシラン、ジメチルビニルクロロシラン、およびこれらの混合物から選択する。
特に、既知のアルコキシシランポリスルフィド化合物のうちでは、特にDegussa社から品名“Si69”として、ポリスルフィドSx (xの平均値はほぼ4である)の市販混合物の形で販売されている、式[(C2H5O)3Si(CH2)3S2]2を有するビス(3‐トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(“TESPT”と略称される)を挙げなければならない。
本発明の好ましい実施態様によれば、上記疎水化剤は、オクテニルジメチルクロロシラン、ビス(3‐トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドおよびこれらの混合物から選択する。
本発明によれば、上記シランが担持するアルコキシ基の1つまたはハロゲン原子が、本発明に従う充填剤がシリカである場合、シリカ表面に存在するシラノール基と反応する。
好ましくは、上記疎水化剤は、上記充填剤に一旦結合すると、多くとも30個の炭素原子、特に1〜25個の炭素原子を含む。
部分疎水化充填剤とは、本発明の意味の範囲内で、充填剤のエラストマーと一緒の凝固を可能にするのに十分な疎水化剤を担持すると同時に充填剤が多過ぎる疎水化剤を担持して水中で分散し得ない充填剤をもたらすのを阻止している充填剤を意味するものと理解されたい。
好ましくは、上記部分疎水化充填剤は、充填剤表面積のnm2当り、充填剤に結合した時点の上記疎水化剤によって0個と1.10個の間の炭素原子が担持されるという疎水化度に特徴を有する。
好ましくは、上記疎水化度は、0個と0.73個の間の炭素原子数/表面積のnm2、特に0.18〜0.30個の炭素原子数/表面積のnm2である。
充填剤のBET比表面積は、一般に、規格ISO 5794/1に相応する"The Journal of the American Chemical Society", Vol. 60, page 309, February 1938に記載されているブルナウアー・エメット・テラー(Brunauer‐Emmett‐Teller)法従い、それ自体既知の方法で測定する。
水性充填剤分散液(B)の調製
その後、本発明に従う充填剤(1種以上)、特に、少なくとも1種の界面活性剤と一緒のカーボンブラックは、水中に分散させて、好ましくは、容易に取扱いし得るに十分な粘度を有する分散液を得るようにする。
有利には、上記分散液は、超音波に供して、水中での凝集物の安定性を得るのを可能にし、この安定性は、引続き製造するマスターバッチ中の水性充填剤分散液の分散性を改良することを可能にする。
上記充填剤を含む水性分散液(B)中の充填剤の濃度は、水性充填剤分散液(B)中に存在する水に対して、好ましくは0.1質量%と20質量%の間、好ましくは1質量%と15質量%の間の濃度である。
2つの分散液の接触および均質化段階
ジエンエラストマーのラテックス(A)と安定な充填剤分散液(B)を接触させる。充填剤スラリーを、エラストマーラテックス中に、撹拌しながら、好ましくはゆっくり撹拌しながら、ゆっくり注ぎ込み、またはその逆を行って、媒質の良好な均質化を確保する。また、管理された流量でもっての分散液(A)と(B)の一緒の同時混合も意図し得る。
上記で説明しているように、シリカの疎水化度は、媒質の凝固の動力学を管理し、この凝固を、2つの分散液を接触させるときに加える機械的エネルギーの供給を一定に保ちながら実施するパラメーターを構成する。
従って、本発明に従う方法は、媒質の凝固を管理する、実際には統御すらすることを可能にする。上記ラテックスとスラリーの均質化段階の時間の管理は、媒質および最終のマスターバッチの均質性に直接影響を与えることを可能にする。
均質段階が有効であるほど、凝固物中での充填剤の分布は均質である。
凝固段階
均質化を実施した時点で、凝固段階に達する。
凝固は、系に、機械的エネルギーの十分な供給を行うことによってもたらし得る。例えば、有意に上昇した剪断速度を媒質に適用し得る。また、系を圧搾することも可能である。機械的エネルギーのこの供給は、全容積を同時に不安定化し、水性分散液(C)の凝固をもたらす。
もう1つの可能性は、水性分散液(C)を、機械的エネルギーの一定の供給下に、即ち、例えば、これらの2つの段階、即ち、均質化および凝固において一定の剪断速度を保持することによる均質化段階において使用した供給と同一の供給下に放置することである。
系に加える機械的エネルギーを剪断作用の形で適用する場合、パドル撹拌機のような静的ミキサーまたは動的ミキサーを使用し得る。
液相中の2つの成分の“有効”な混合を可能にする任意のタイプの装置を使用することが可能である;従って、Noritake Co. Limited社、米国のTAH社、米国のKoflo社、またはTokushu Kika Kogyo Co. Ltd社から販売されているミキサーのような静的ミキサー、或いはTokushu Kika Kogyo Co. Ltd社、ドイツのPUC社、ドイツのCavitron社または英国のSilverson社から販売されているミキサーのような、高剪断を発生させるミキサーを使用することが可能であろう。
これら2つの分散液の凝固段階においては、エラストマーと充填剤の凝固物は、溶液中の1個の固形成分の形または複数の別々の固形成分の形で形成される。
充填剤の水性分散液(B)の容量は、製造するマスターバッチにおいて目標とする充填剤含有量、ジエンエラストマーラテックス(A)の容量およびそれら成分それぞれの濃度に依存する。
従って、上記容量は、結果として、調整されるであろう。
有利には、マスターバッチにおいて目標とする充填剤含有量は、10phrと150phrの間、好ましくは10phrと100phrの間、より好ましくは15phrと90phrの間、さらにより好ましくは15phrと70phrの間の量である。
好ましくは、本発明に従う方法は、凝固剤の添加を含まない。凝固をもたらすのは、系への機械的エネルギーの供給である。
従って、系に加える機械的エネルギーの量およびシリカの疎水化剤度が、均質化および凝固段階の管理を可能にする2つのパラメーターである。
もう1つの実施態様によれば、1種以上の凝固剤を分散液(C)に添加して凝固段階の収率を改良するようにすることが可能である。これを行う場合、凝固剤は、凝固の誘発に寄与する因子ではない。
固形状物の回収
単数または複数の固形物は、例えば、濾過または遠心分離によって回収する。何故ならば、濾過篩いを使用して実施し得る濾過操作は、凝固物が無数の小固形成分の形で存在する場合、不適切であること判明する可能性があるからである。そのような場合、好ましくは、さらなる遠心分離操作を実施する。
この回収段階の終りに、得られた凝固物を、例えば、オーブン内で乾燥させる。
本発明に従う方法は、連続およびバッチ方式の双方で実施し得る。
添加剤
また、本発明に従うジエンエラストマーラテックス(A)および本発明に従う水性充填剤分散液(B)は、例えば、可塑剤または増量剤オイル(後者は、性質的に芳香族系または非芳香族系のいずれかである);顔料;オゾン劣化防止ワックス、化学オゾン劣化防止剤、酸化防止剤のような保護剤;疲労防止剤;補強用樹脂;例えば、出願WO 02/10269号に記載されているような、メチレン受容体(例えば、フェノールノボラック樹脂)またはメチレン供与体(例えば、HMTまたはH3M);イオウまたはイオウ供与体および/または過酸化物および/またはビスマレイミドのいずれかをベースとする架橋系;加硫促進剤;または、加硫活性化剤(勿論、亜鉛系活性化剤を除く、または組成物中で最大0.5phr、好ましくは0.3phr未満の亜鉛に従う)のような、タイヤ、特に、トレッドの製造を意図するエラストマー組成物において一般的に使用する通常の添加剤の全部または1部も含み得る。
好ましくは、これらの分散液は、好ましい非芳香族系または極めて僅かに芳香族系の可塑剤として、ナフテン系オイル、パラフィンオイル、MESオイル、TDAEオイル、グリセリンエステル(特にトリオレアート)、好ましくは30℃よりも高い高Tgを示す可塑化用炭化水素樹脂、およびそのような化合物の混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む。
また、上記の添加剤は、凝固物の形成後のマスターバッチに混入してもよい。
また、凝固後の媒質に、カップリング剤、カップリング活性化剤、補強用無機充填剤用の被覆剤、或いは、より一般的には、知られている通り、ゴムマトリックス中での無機または有機充填剤の分散性を改良し組成物の粘度を低下させることによって、生状態における組成物の加工特性を改良することのできる加工助剤を添加することも可能である;これらの薬剤は、例えば、アルキルアルコキシシラン(特にアルキルトリエトキシシラン)のような加水分解性シラン;ポリオール;ポリエーテル (例えば、ポリエチレングリコール);第一級、第二級または第三級アミン類(例えば、トリアルカノールアミン類);ヒドロキシル化または加水分解性POS類、例えば、α,ω‐ジヒドロキシポリオルガノシロキサン(特にα,ω‐ジヒドロキシポリジメチルシロキサン);例えば、ステアリン酸のような脂肪酸;および、カーボンブラックのような、上述した充填剤以外の補強用充填剤である。
また、本発明は、上述の方法に従って製造したジエンエラストマーと充填剤のマスターバッチにも関する。
本発明のもう1つの主題は、上述の方法に従って製造したジエンエラストマーと充填剤の少なくとも1種のマスターバッチをベースとするゴム組成物である。
また、本発明は、上記で定義したような組成物を含む最終物品または半製品にも関する。
また、本発明は、上記で定義したような組成物を含むタイヤトレッドにも関する。
最後に、本発明の主題は、上記で定義したような少なくとも1種のゴム組成物によって提供されるタイヤまたは半製品である。
以下の実施例は、本発明を例証するために提示する;但し、限定を示すものではない。
本発明の実施例
使用する装置
・500Wの出力を有し、その最高出力の60%で使用するモデルVCX500 Bricel超音波発生器(標章:Fischer W75043);
・10mlと250mlの間の容量の超音波処理に適する、13mmの直径を有する標準超音波処理プローブ(標章:Fischer W75482);
・1基の磁力撹拌機+1本の磁性棒;
・ガラス製品:15ml (標章:VWRN 15 ml 213‐3916)または500ml (標章:VWR 50 ml 212‐9301)のサイズを有するビーカー。
反応物
・タイ国のTrang Latex Co. Ltd社から得られる、60質量%の天然ゴムを含む高アンモニア天然ゴムラテックス;
Michelin社から供給され、乳鉢で粉砕したシリカ粉末、Vozeosilシリカ (Rhodia社からの1165MP);
蒸留水。
部分疎水化シリカの調製
シリカを、乳棒と乳鉢を使用して粉砕して微細粉末を得る。シリカの疎水性を、その表面積のオクテニルジメチルクロロシラン(ODCS)によるシラン処理によって調整する。
部分疎水化シリカを、5gの親水性シリカを種々の量のODCSと50gのトルエンの存在下に反応させることによって調製する(下記の組成1〜6についての表を参照されたい)。
各必要量のODCSをトルエンに溶解する。媒質を、磁力撹拌機を使用して撹拌する。粉砕シリカ粉末を媒質に加え、分散液を2分間撹拌に委ねる。組成物をペトリ皿(18.5cmの直径を有する)内に入れ、70℃の温度に1時間置いて、トルエンの蒸発を可能にする。得られた粉末を、2分間の超音波処理後に、蒸留水中に分散させる。

Figure 0006041155
1. 一定のシリカ疎水化度における凝固動力学に対する供給機械的エネルギーの効果
製造したマスターバッチ
マスターバッチは、本発明に従う方法によって、以下の方法で製造する。
天然ゴムラテックスの水性分散液(A)の調製
天然ゴムラテックスをガラスビーカー中に秤量し、磁性棒をビーカーに入れ、引続き、ラテックスを60質量%天然ゴム濃度まで蒸留水中に希釈する。
水性充填剤分散液(B)の調製
上記の組成4に従って調製した2.32gの部分疎水化シリカを20mlの水中に分散させる。その後、混ぜ合せた混合物を、超音波プローブを使用して2分間均質化する。2分間の終りにプローブ上に凝集したシリカを、スパチュラを使用して、混合物中に混入する。
マスターバッチの製造
3.3gの水性分散液(B)を、磁力撹拌機を備えた15mlのビーカーに導入する。3.3gの水性分散液(A)を上記分散液(B)に添加する。
特性時間τの評価
調製した水性分散液(C)を、各棒回転速度(100および200rpm)で均質化する。
巨視的凝固、即ち、凝固に基づく粘度の強力な上昇の兆候が、ビーカーを磁性棒による運動に供したときに観察される。

Figure 0006041155
結論
これらの結果は、より高い剪断力の供給が一定の疎水化度における均質化段階の時間を短縮していることを示している。
2. 一定の機械的エネルギー供給による凝固の動力学に対するシリカ疎水化の効果
製造したマスターバッチ
マスターバッチは、本発明に従う方法によって、以下の方法で製造する。
天然ゴムラテックスの水性分散液(A)の調製
天然ゴムラテックスをガラスビーカー中に秤量し、磁性棒をビーカーに入れ、引続き、ラテックスを60質量%天然ゴム濃度まで蒸留水中に希釈する。
水性充填剤分散液(B)の調製
上記の組成1〜3、5および6に従って調製した2.32gの各部分疎水化シリカを20mlの水中に分散させる。その後、混ぜ合せた混合物を、超音波プローブを使用して2分間均質化する。2分間の終りにプローブ上に凝集したシリカを、スパチュラを使用して、混合物中に混入する。
マスターバッチの製造
3.3gの各々の水性分散液(B)を15mlのビーカーに導入し、次いで、3.3gの水性分散液(A)を上記分散液(B)に添加する。混合物を、磁力撹拌機を使用して、700rpmの速度で混合する。
特性時間τの評価
図1は、使用した疎水化剤、この場合、ODCSの種々の量において、水性分散液(C)の巨視的不安定化前に観察した時間を示す。

Figure 0006041155
図1は、シリカに結合したときの疎水化剤が担持する炭素数のシリカ表面に対する比率が高いほど、均質化段階の時間が短いことを示している。
従って、凝固段階前の均質化段階の時間は、充填剤の疎水化度、即ち、疎水化が充填剤表面に結合させた炭素原子数の充填剤表面積に対する比率によって、さらに、分散液(C)に供給する機械的エネルギーによって管理することができる。
凝固段階の開始は、機械的エネルギーのさらなる供給によって管理することができる。

Claims (22)

  1. 下記の連続する段階を含むことを特徴とする、1種以上のジエンエラストマーと、該ラテックスと一緒に自然凝固しない1種以上の充填剤とをベースとする液相中でのマスターバッチの製造方法:
    ・安定でかつ均質な水性分散液(C)を、1種以上のジエンエラストマーラテックス(A)を該ラテックスと一緒に自然凝固せず且つ部分的に疎水化させた1種以上の充填剤の1種以上の安定な水性分散液(B)と混合することによって調製する段階、ここで、前記部分的に疎水化させた充填剤は、充填剤に結合した際に疎水化剤によってもたらされる炭素原子が、充填剤表面積のnm 2 あたり0及び1.10の間であるという疎水化度によって特徴付けられる;
    ・前記水性分散液(C)を均質化する段階;
    ・前記水性分散液(C)中で、前記ジエンエラストマーラテックスを、前記ラテックスと一緒に自然凝固しない前記充填剤と一緒に、機械的エネルギーを供給することによって凝固させる段階;
    ・凝固物を回収する段階;その後の、
    ・回収した凝固物を乾燥させて前記マスターバッチを得る段階。
  2. 前記ジエンエラストマーラテックスが、天然ゴムラテックスである、請求項1記載の方法。
  3. 前記ジエンエラストマーラテックスが、濃縮天然ゴムラテックスである、請求項2記載の方法。
  4. 前記充填剤を、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、アルミナモノハイドレート(Al2O3.H2O)、水酸化アルミニウム[Al(OH)3]、炭酸アルミニウム[Al2(CO3)3]、水酸化マグネシウム[Mg(OH)2]、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、タルク(3MgO.4SiO2.H2O)、アタパルガイト(5MgO.8SiO2.9H2O)、二酸化チタン(TiO2)、チタンブラック(TiO2n-1)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム[Ca(OH)2]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO.Al2O3)、クレー(Al2O3.2SiO2)、カオリン(Al2O3.2SiO2.2H2O)、パイロフィライト(Al2O3.4SiO2.H2O)、ベントナイト(Al2O3.4SiO2.2H2O)、ケイ酸アルミニウム(Al2SiO5.Al4(SiO4)3.5H2O)、ケイ酸マグネシウム(Mg2SiO4.MgSiO3)、ケイ酸カルシウム(Ca2SiO4)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al2O3.CaO.2SiO2)、ケイ酸カルシウムマグネシウム(CaMgSiO4)、炭酸カルシウム(CaCO3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、水酸化ジルコニウム[ZrO(OH)2.nH2O]、炭酸ジルコニウム[Zr(CO3)2]、および電荷を補う水素原子、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含む結晶性アルミノケイ酸塩、並びにこれらの混合物から選択する、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
  5. 前記充填剤が、シリカ(SiO2)である、請求項4記載の方法。
  6. 前記充填剤、下記の式 (I)を有する1種以上の疎水化剤を使用して部分的に疎水化されている、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法:

    En‐F (式I)

    (式中、
    ・nは、1または2に等しい整数であり;
    ・nが値1を有する場合、Fは、1価の基であり;
    ・nが値2を有する場合、Fは、2価の基であり;
    ・Eは、上記充填剤に物理的および/または化学的に結合することのできる官能基であって、その構造内に、基Eに疎水性を付与する1〜18個の炭素原子を含む少なくとも1本のアルキルまたはアルキレン鎖を含む前記官能基を示し;
    ・Fは、ジエンエラストマーに物理的および/または化学的に結合し得るまたは結合し得ない基を示す)。
  7. 前記疎水化剤が、下記の式 (II)を有する、請求項6記載の方法:

    [G(3-m)(L‐K)mSi‐L‐]n‐F (II)

    (式中、nが値1を有する場合、Fは、以下で定義するK基を示し、mは0〜2の範囲にあり;そして、nが値2を有する場合、Fは、アミノ基、ポリスルフィド(Sx)基またはエポキシ基を示し、mは0〜2の範囲にあり;
    G基は、互いに無関係に、水素原子;線状、枝分れまたは環状のアルキル基、アラルキル基、アルキルアリール基およびアリール基から選ばれるC1〜C18炭化水素基;アルコキシ(R1O)‐基 (式中、R1は、飽和C1〜C8アルキル基を示す);ハロゲン原子;および、ヒドロキシル基から選ばれ;
    但し、少なくとも1個のG基は、アルコキシ基、塩素原子またはヒドロキシル基から選ばれることを条件とし;
    Lは、必要に応じて酸素原子を含む、飽和または不飽和で線状、枝分れまたは環状のC1〜C18アルキレン基を示し;
    Kは、水素原子;ハロゲン原子;または、アミノ基、ポリアミノアルキル基、メルカプト基、エポキシ基、ヒドロキシル基、ビニル基、アクリルオキシ基、メタクリルオキシ基、‐SCN基またはR(CO)S‐基 (Rは、C1〜C18アルキル基である)から選ばれる官能基を示す)。
  8. 前記アリール基がフェニル基及びベンジル基から選択される、請求項7に記載の方法。
  9. 前記環状アルキル基がシクロペンチル基及びシクロヘキシル基から選択される、請求項7に記載の方法。
  10. 前記C 1 〜C 8 アルキル基がメチル基、エチル基及びイソプロピル基から選択される、請求項7に記載の方法。
  11. 前記C 1 〜C 8 アルキル基がメチル基及びエチル基から選択される、請求項7に記載の方法。
  12. 前記ハロゲン原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選択される、請求項7に記載の方法。
  13. 前記C 1 〜C 18 アルキレン基が1〜8個の炭素原子を含むアルキレン基である、請求項7に記載の方法。
  14. C 1 〜C 18 アルキレン基が、メチレン基、エチレン基、イソプロピレン基、n-ブチレン基、オクタデシレン基、シクロペンチレン基及びシクロヘシキレン基から選択される、請求項7に記載の方法。
  15. 前記疎水化剤を、クロロトリメチルシラン、クロロトリエチルシラン、クロロトリプロピルシラン、ブロモトリメチルシラン、ブロモトリエチルシラン、ブロモトリプロピルシラン、フルオロトリメチルシラン、メトキシトリメチルシラン、メトキシトリエチルシラン、メトキシトリプロピルシラン、クロロトリメチルシラン、ジクロロジメチルシラン、トリクロロメチルシラン、ブロモトリメチルシラン、ジブロモジメチルシラン、トリブロモメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、トリメトキシメチルシラン、テトラメトキシシラン、トリメトキシプロピルシラン、トリメトキシオクチルシラン、トリメトキシへキサデシルシラン、ジメトキシジプロピルシラン、トリエトキシメチルシラン、トリエトキシプロピルシラン、トリエトキシオクチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、オクテニルジメチルクロロシラン、オクトデシルトリクロロシラン、(γ‐アミノプロピル)トリメトキシシラン、(γ‐アミノプロピル)トリエトキシシラン、(ガンマ‐ヒドロキシプロピル)トリプロポキシシラン、(γ‐メルカプトプロピル)トリエトキシシラン、(γ‐アミノプロピル)ジメチルエトキシシラン、(γ‐アミノプロピル)ジヒドロキシメトキシシラン、(グリシジルプロピル)トリメトキシシラン、[γ‐(N‐アミノエチル)アミノプロピル]トリエトキシシラン、(γ‐メタクリルオキシプロピル)トリエトキシシラン、(γ‐メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(β‐メルカプトエチル)トリエトキシシラン、[γ‐(N‐アミノエチル)プロピル]トリメトキシシラン、(N‐メチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、(γ‐チオシアナトプロピル)トリエトキシシラン、ビス‐(3‐トリエトキシチオプロピル)シランテトラスルフィド、ビニルトリエトキシシラン、ビニルフェニルメチルシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルエチルジメトキシシラン、ジメチルビニルクロロシラン、およびこれらの混合物から選択する、請求項7記載の方法。
  16. 前記疎水化剤が、前記充填剤に結合した際に、多くとも30個の炭素原子を含む、請求項6〜15のいずれか1項記載の方法。
  17. 前記疎水化剤を、オクテニルジメチルクロロシラン、ビス(3‐トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドおよびこれらの混合物から選択する、請求項6〜16のいずれか1項記載の方法。
  18. 部分的に疎水化させた充填剤であって、充填剤と結合した際に疎水化剤によってもたらされる炭素原子が、充填剤表面積のnm 2 あたり0及び1.10の間であるという疎水化度によって特徴付けられる、前記部分的に疎水化させた充填剤、及び
    前記部分的に疎水化させた充填剤とともに凝固されている1種以上のジエンエラストマーラテックス
    を含む、マスターバッチ。
  19. 請求項18に記載の少なくとも1種のマスターバッチをベースとするゴム組成物。
  20. 請求項19に記載の少なくとも1種のゴム組成物を含む半製品。
  21. 請求項19に記載の少なくとも1種のゴム組成物を含むタイヤの半製品。
  22. 請求項19に記載の少なくとも1種のゴム組成物或いは請求項20又は21に記載の半製品を含む、タイヤ。
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