以下に、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
参考実施の形態1
図2はこの発明の参考実施の形態1に係る画像形成装置としてのタンデム方式のフルカラー画像形成装置を示すものである。なお、このタンデム方式のフルカラー画像形成装置は、画像読取装置を備えており、フルカラーの複写機としても機能するように構成されているが、画像読取装置を備えていなくとも勿論良い。また、このフルカラー画像形成装置は、単位時間あたりに画像形成可能な記録用紙の枚数である生産性が高く設定されており、例えば、A4サイズのLEF(Long Edge Feed)の記録用紙に毎分当たり100枚(PPM)以上の画像を形成することが可能となっている。ただし、この発明は、高速のタンデム方式の画像形成装置に限定されるものではないことは勿論であり、感光体ドラムを1つのみ備えた単色や所謂4サイクルの画像形成装置であっても適用可能である。
図2において、1は画像形成装置の本体を示すものであり、この画像形成装置本体1の上部の一端(図示例では、左端)には、原稿2の画像を読み取る画像読取装置3が配置されている。この画像読取装置3は、原稿押え部材4によって押圧された状態でプラテンガラス5上に置かれた原稿2を光源6によって照明し、原稿2からの反射光像をフルレートミラー7及びハーフレートミラー8、9及び結像レンズ10からなる縮小光学系を介してCCD等からなる画像読取素子11上に走査露光することにより、画像読取素子11によって原稿2の画像を予め定められたドット密度で読み取るように構成されている。
上記画像読取装置3によって読み取られた原稿2の画像は、例えば、赤(R)、緑(G)、青(B)(例えば、各8bit)の3色の画像データとして画像処理装置12に送られ、この画像処理装置12では、原稿2の画像データに対して、シェーディング補正、位置ズレ補正、明度/色空間変換、ガンマ補正、枠消し、色/移動編集等の予め定められた画像処理が施される。また、上記の如く画像処理装置12で予め定められた画像処理が施された画像データは、同じく画像処理装置12によって例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の4色の画像データに変換される。なお、画像処理装置12によって変換される画像データの色数は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の4色の画像データに限らず、後述するように、高彩度シアン(HC)や高彩度マゼンタ(HM)、あるいは透明トナーや白色トナー等を含む5色以上に変換しても良く、その色数は任意である。また、上記画像処理装置12に入力される画像データとしては、図示しない通信回線を介してパーソナルコンピュータ等から送られてくるものであっても勿論良い。
ところで、この参考実施の形態では、互いに色が異なるか又は同一色であって彩度や濃度が異なるトナーを用いて画像を形成する複数の画像形成手段を備えるように構成されている。
すなわち、この参考実施の形態に係る画像形成装置本体1の内部には、図2に示すように、互いに色が異なるか又は同一色であって彩度や濃度が異なるトナーを用いて画像を形成する複数の画像形成手段が配置されている。これらの複数の画像形成手段は、例えば、第1組の画像形成手段13Aと、第2組の画像形成手段13Bとから構成されている。これら第1組の画像形成手段13Aと第2組の画像形成手段13Bは、いずれか一方の組を1つの画像形成手段から構成しても良く、又、双方の組の画像形成手段13A、13Bとも複数の画像形成手段で構成しても良い。また、上記第1組の画像形成手段13Aは、画像形成装置本体1に対して交換可能に構成され、必要に応じて他の画像形成手段と交換可能となっている。但し、これに限定されるものではなく、第2組の画像形成手段13Bを画像形成装置本体1に対して交換可能に構成しても良い。
この参考実施の形態では、画像形成装置本体1の内部に、図2に示すように、第1組の画像形成手段13Aとして高彩度シアン(HC)、高彩度マゼンタ(HM)の各色に対応した2つの画像形成部13HC、13HM、及び、第2組の画像形成手段13Bとしてイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の各色に対応した4つの画像形成部13Y、13M、13C、13Kが、水平方向に沿って一定の間隔を隔てて並列的に配置されている。なお、高彩度シアン(HC)は、シアン色系の色相を有し、シアン(C)色よりも色調が明るく彩度が相対的に高い高彩度のシアン色である。また、高彩度マゼンタ(HM)は、マゼンタ色系の色相を有し、マゼンタ(M)色よりも色調が明るく彩度が相対的に高い高彩度のマゼンタ色である。なお、上記高彩度シアン(HC)、高彩度マゼンタ(HM)、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、黒(K)色の各画像形成部13HC、13HM、13Y、13M、13C、13Kの配列順序は、図示のものに限定されるものではなく、異なる順序で配列しても良い。
また、上記第1組の画像形成手段13Aとしての高彩度シアン(HC)、高彩度マゼンタ(HM)の各画像形成部13HC、13HMは、それぞれ個別に一体的にユニット化されており、これらの各画像形成部13HC、13HMは、単独で画像形成装置本体1に対して交換可能に装着されている。
上記6つの画像形成部13HC、13HM、13Y、13M、13C、13Kは、図2に示すように、使用するトナーの種類を除いて、基本的にすべて同様に構成されており、大別して、矢印A方向に沿って予め定められた回転速度で駆動される後述する特定の表面層を有する像保持体としての感光体ドラム15と、この感光体ドラム15の表面を一様に帯電する一次帯電手段としてのスコロトロン16と、当該感光体ドラム15の表面に各色に対応した画像を露光して静電潜像を形成する潜像形成手段としての画像露光装置14と、感光体ドラム15上に形成された静電潜像を対応する色の後述する特定のトナー(現像剤)で現像する現像手段としての現像装置17と、感光体ドラム15上に残留した転写残トナー等を除去するクリーニング装置18とを備えるように構成されている。
上記画像露光装置14としては、例えば、レーザ光LBを用いて画像露光を施すものが用いられるが、LED発光素子を感光体ドラム15の軸方向に沿って多数配列したLEDアイレ等を用いた装置を使用しても良い。LEDアイレを用いた画像露光装置14の場合には、レーザ光LBを偏向走査させて画像露光を行う画像露光装置14と比較して、画像露光装置14の大幅な小型化が可能となり、画像形成装置全体を小型化することができ望ましい。
上記高彩度シアン(HC)、高彩度マゼンタ(HM)、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、黒(K)色の各画像形成部13HC、13HM、13Y、13M、13C、13Kの感光体ドラム15HC、15HM、15Y、15M、15C、15Kは、負極性の帯電バイアスが印加されるスコロトロン16によって負極性の予め定められた電位VHに一様に帯電される。
そして、上記画像処理装置12からは、高彩度シアン(HC)、高彩度マゼンタ(HM)、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、黒(K)色の各画像形成部13HC、13HM、13Y、13M、13C、13Kの画像露光装置14HC、14HM、14Y、14M、14C、14Kに各色に対応した画像データが順次出力される。そして、これらの画像露光装置14HC、14HM、14Y、14M、14C、14Kから画像データに応じて出射されたレーザ光LBは、対応する感光体ドラム15HC、15HM、15Y、15M、15C、15Kの表面の画像領域に主走査方向(感光体ドラム15の軸方向)に沿って走査露光され、感光体ドラム15HC、15HM、15Y、15M、15C、15Kの表面には、図3に示すように、レーザ光LBによる画像露光部の電位が予め定められた露光部電位VLに低下した静電潜像が形成される。上記各感光体ドラム15HC、15HM、15Y、15M、15C、15Kの表面に形成された静電潜像は、予め定められて現像バイアスVDが印加される現像装置17HC、17HM、17Y、17M、17C、17Kによって、感光体ドラム15の表面電位が露光部電位VLに低下した画像部に負極性に帯電されたトナーが反転現像され、それぞれ高彩度シアン(HC)、高彩度マゼンタ(HM)、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、黒(K)の各色のトナー像として現像される。
上記各画像形成部13HC、13HM、13Y、13M、13C、13Kの感光体ドラム15HC、15HM、15Y、15M、15C、15K上に、順次形成された高彩度シアン(HC)、高彩度マゼンタ(HM)、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、黒(K)の各色のトナー像は、図2に示すように、各画像形成部13HC、13HM、13Y、13M、13C、13Kの下方に配置された中間転写体としての中間転写ベルト20上に、正極性の一次転写バイアス電圧が印加される一次転写ロール21HC、21HM、21Y、21M、21C、21Kによって互いに重ね合わせた状態で一次転写される。
上記中間転写ベルト20は、駆動ロール22と、従動ロール23と、張力付与ロール24と、二次転写部の背面支持ロール25と、従動ロール26からなる複数のロール間に予め定められた張力で架け渡されている。そして、中間転写ベルト20は、図示しない定速性に優れた専用の駆動モータによって回転駆動される駆動ロール22により、矢印B方向に沿って感光体ドラム15HC、15HM、15Y、15M、15C、15Kの回転速度(周速)と略等しい予め定められた速度で循環移動するように駆動される。上記中間転写ベルト25としては、例えば、可撓性を有するポリイミドやポリアミドイミド等の合成樹脂フィルムを無端ベルト状に形成したものが用いられる。
上記中間転写ベルト20上に多重に転写された高彩度シアン(HC)、高彩度マゼンタ(HM)、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、黒(K)の各色のトナー像は、背面支持ロール25に中間転写ベルト20を介して圧接する二次転写ロール27に印加される正極性の二次転写バイアスによって記録媒体としての記録用紙28上に一括して二次転写される。これらの各色のトナー像が転写された記録用紙28は、二連の搬送ベルト29、30によって定着手段としての定着装置31へと搬送される。そして、上記各色のトナー像が転写された記録用紙28は、定着装置31の加熱ベルト32及び加圧ロール33によって熱及び圧力で定着処理を受けた後、片面プリントの場合には、そのまま画像形成装置本体1の外部に設けられた排出トレイ34上に排出される。
上記記録用紙28は、図2に示すように、例えば、複数の給紙トレイ35、36のうちの何れかから予め定められたサイズや材質のものが、給紙ロール37及び用紙搬送用のロール対38からなる用紙搬送経路39を介して1枚ずつ分離された状態で、レジストロール40まで一旦搬送される。上記給紙トレイ35、36のうちの何れかから供給された記録用紙28は、所定のタイミングで回転駆動されるレジストロール40によって中間転写ベルト20上のトナー像と同期をとって二次転写位置へと送り出される。
また、上記画像形成装置によって記録用紙28の両面に画像を形成する場合には、定着装置31によって片面に画像が定着された記録用紙28を、そのまま機外に排出せずに、切り替えゲート41によって、記録用紙28の搬送経路を下方に切り替え、反転用の用紙搬送経路42を介して給紙ローラ43によって中間トレイ44に一旦収容される。そして、この中間トレイ44に収容された記録用紙28は、給紙ローラ43によってその搬送方向を反転した状態で、両面用の用紙搬送経路45及び通常の用紙搬送経路39を介して、表裏が反転された状態で、再度、中間転写ベルト20の二次転写位置まで搬送され、裏面に画像が転写された後、定着装置31の加熱ベルト32及び加圧ロール33によって熱及び圧力で定着処理を受けて、画像形成装置本体1の外部に設けられた排出トレイ34上に排出される。
なお、トナー像の一次転写が終了した後の感光体ドラム15HC、15HM、15Y、15M、15C、15Kは、その表面がクリーニング装置18HC、18HM、18Y、18M、18C、18Kによって清掃される。また、トナー像の二次転写が終了した後の中間転写ベルト20は、その表面が駆動ロール22の近傍に配置されたベルトクリーニング装置46のクリーニングブレード47及びクリーニングブラシ48によって清掃される。
図2中、符号49HC、49HM、49Y、49M、49C、49Kは、高彩度シアン(HC)、高彩度マゼンタ(HM)、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、黒(K)の各現像装置17HC、17HM、17Y、17M、17C、17Kに少なくともトナーを含む現像剤を供給するトナーカートリッジをそれぞれ示している。
図4は上記高彩度シアン(HC)、高彩度マゼンタ(HM)、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、黒(K)の各画像形成部13HC、13HM、13Y、13M、13C、13Kを示す構成図である。
感光体ドラム15は、例えば、その外径が84mm程度に形成されており、矢印A方向に沿って図示しない駆動手段によって予め定められた速度で回転駆動される。スコロトロン16は、放電シールド50の内部に2本の放電ワイヤー51を備えている。また、現像装置17は、現像装置本体52の内部にトナーとキャリアとからなる二成分現像剤53が収容されており、この二成分現像剤53が攪拌されつつ現像ロール54の表面に供給され、現像ロール54の表面に供給された現像剤が予め定められた層厚に規制された状態で、現像ロール54の回転により現像剤の磁気ブラシとなって感光体ドラム15の表面と対向する現像領域へと搬送され、感光体ドラム15の表面に形成された静電潜像が現像されてトナー像となる。
上記感光体ドラム15の表面に形成されたトナー像は、高圧電源55によって正極性の一次転写バイアス電圧が印加される一次転写ロール21によって中間転写ベルト20上に一次転写される。また、上記感光体ドラム15の表面に残留した転写残ナー像は、クリーニング前コロトロンによって正極性の帯電を受けて残留電荷が除去された後、クリーニング装置18によってクリーニングされる。クリーニング装置18は、装置ハウジング57を有しており、装置ハウジング57の内部には、感光体ドラム15の表面に残留した転写残ナー像を撹乱・除去するため、感光体ドラム15と同一方向に回転するクリーニングブラシ58と、感光体ドラム15の表面に残留した転写残ナー像を掻き取るクリーニングブレード59とが配置されている。また、上記クリーニング装置18は、クリーニングしたトナーが外部に漏れるものを防止するため、感光体ドラム15の回転方向に沿った上流側の端部がシール部材60によって封止されているとともに、感光体ドラム15の回転方向に沿った下流側の端部がクリーニングブレード59によって封止されている。さらに、上記クリーニングブラシ58とクリーニングブレード59によってクリーニングされたトナーは、搬送オーガ61によってクリーニング装置18の外部に搬送されて排出される。また、上記クリーニング装置18によって残留トナーがクリーニングされた感光体ドラム15の表面は、LED等からなるイレーズランプ62による露光を受けて、残留電荷が消去されて次の画像形成工程に備える。
ところで、この参考実施の形態に係る画像形成装置では、感光体ドラム15HC、15HM、15Y、15M、15C、15Kの有機感光体として、末端基の少なくとも一部が水酸基である化合物を脱水縮合反応させることによって得られる表面層を有する感光体が用いられている。
上記感光体ドラム15HC、15HM、15Y、15M、15C、15Kは、図5に示すように、アルミニウム等の金属を含む導電性を有する材料によって円筒形状に形成された基体63と、基体63の表面に積層された帯電で発生するカウンター電荷の注入を阻止する下引層64と、光電変換によって正極性及び負極性の電荷を発生する電荷発生層65と、電荷発生層65で発生した正極性及び負極性の電荷のうち、正極性の電荷を輸送し、表面に帯電された負極性の電荷を中和することで静電潜像を形成する電荷輸送層66と、電荷輸送層66と同様に正極性の電荷を輸送し、表面に帯電された負極性の電荷を中和することで静電潜像を形成するとともに、有機感光体層の表面を保護する電荷輸送性の表面層としての表面保護層67とから構成されている。
このような構造を有する感光体ドラム15は、例えば、次のようにして製造される。
・下引層64
酸化亜鉛(平均粒子径70nm:テイカ社製:比表面積値15m2/g)100重量部をトルエン500重量部と攪拌混合し、シランカップリング剤(KBM603:信越化学社製)1.25重量部を添加し、2時間混合した。その後、トルエンを減圧蒸留にて留去し、120℃で3時間焼き付けを行い、シランカップリング剤にて酸化亜鉛に表面処理を施した。
前記表面処理を施した酸化亜鉛100部を500部のテトラヒロドフランと攪拌混合し、アリザリン1部を50部のテトラヒロドフランに溶解させた溶液を添加し、50℃にて5時間攪拌した。その後、減圧ろ過にてアリザリンを付与させた酸化亜鉛をろ別し、さらに60℃で減圧乾燥を行いアリザリン付与亜鉛顔料を得た。
このアリザリン付与亜鉛顔料60部と硬化剤ブロック化イソシアネート(スミジュール3175、住友バイエルンウレタン社製)13.5部とブチラール樹脂(エスレックBM−1、積水化学社製)15部をメチルエチルケトン85部に溶解した溶液38部と、メチルエチルケトン25部とを混合し、直径1mmのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間の分散を行い、分散液を得た。
得られた分散液に触媒としてジオクチルスズジラウレート0.005部、シリコーン樹脂粒子(トスパール145、GE東芝シリコーン社製)40部を添加し、170℃、40分の乾燥硬化を行い、下引層用塗布液を得た。この下引層用塗布液を浸漬塗布法にて直径84mm、長さ347mm、肉厚1mmのアルミニウム基材63上に浸漬塗布し、厚さ21μmの下引層64を得た。
・電荷発生層65
次いで、電荷発生物質としてX線回折スペクトルにおけるブラッグ角(2θ±0.2°)が、7.4°、16.6°、25.5°、28.3°に強い回折ピークを持つクロロガリウムフタロシアニン結晶1部を、ポリビニルブチラール樹脂(商品名:エスレックBM−S、積水化学社製)1部とともに酢酸ブチル100部を加え、ガラスビーズとともにペイントシェーカーで1時間処理して分散させて、電荷発生層用塗布液を得た。この電荷発生層用塗布液を前記下引層64の表面に浸漬塗布し、100℃にて10分間加熱乾燥して、膜厚0.2μmの電荷発生層65を得た。
・電荷輸送層66
下記式で示される電荷輸送材料(第1の電荷輸送材料)2部、下記構造式で示される高分子化合物(粘度平均分子量:39,000)3部を、テトラヒドロフラン10部およびトルエン5部に溶解して電荷輸送層用塗布液を得た。この電荷輸送層用塗布液を前記電荷発生層65表面に浸漬塗布し、135℃にて35分加熱乾燥して、膜厚22μmの電荷輸送層66を形成し、この感光体を下地感光体とした。
・表面保護層67
4フッ化エチレン樹脂粒子としてルブロンL−2(ダイキン工業社製)4部、および下記構造式2で表わされる繰り返し単位を含むフッ化アルキル基含有共重合体(重量平均分子量50,000。l:m=1:1、s=1、n=60)0.2部を、シクロペンタノン16部に十分に攪拌混合して、4フッ化エチレン樹脂粒子懸濁液を作成した。
次に、下記の構造式Aの電荷輸送材料:94部、ベンゾグアナミン樹脂1部をシクロペンタノン220部に加えて、十分に溶解混合した後、前記4フッ化エチレン樹脂粒子懸濁液を加えて攪拌混合し、微細な流路をもつ貫通式チャンバーを装着した高圧ホモジナイザー(吉田機械興業製、YSNM−1500AR)を用いて700kgf/cm
2まで昇圧しての分散処理を30回繰返した。その後、ジメチルポリシロキサン(グラノール450、共栄化学社製)を0.9部、NACURE5225(キングインダストリー社製)を0.1部加え、表面保護層形成用塗布液を調製した。この表面保護層形成用塗布液を浸漬塗布法で、前述の下地感光体の上に塗布し155℃で40分乾燥し、膜厚6μmの表面保護層67を形成し、この感光体を感光体Aとした。
このようにして製造される感光体は、表面保護層67として構造式Aの電荷輸送材料を含有しており、末端の少なくとも一部がOH基(水酸基)である電荷輸送材料を、ジメチルポリシロキサンを用いて脱水縮合反応させることによって、図6に示すように、表面保護層67を得ている。
そのため、上記構造式Aの電荷輸送材料のOH基(水酸基)は、すべてが脱水縮合反応に寄与するわけではなく、構造式Aの電荷輸送材料の一部のOH基(水酸基)は、図6に示すように、脱水縮合反応に寄与せずに、そのまま表面保護層67中に残ることとなる。
一方、この参考実施の形態に係る画像形成装置で用いられる現像剤53としてのトナーは、例えば、次のようにして製造したものが用いられる。
トナーは、凝集工程を2段階にした湿式トナー作成方法によって作成した。
トナーの構成材料の分散粒子の分散径は、母体凝集に用いる場合も、追加粒子に用いる場合も1ミクロン以下であることが望ましく、それ以上である場合には最終的に生成するトナーの粒径の分布が広くなったり、遊離粒子の発生が生じ、性能低下や信頼性低下の原因となりやすい。
追加する粒子分散液の量は、含まれる粒子の体積分率に依存し、追加粒子の量として最終的に生成する体積で凝集粒子の50%以内であることが望ましい。
それ以上である場合は、母体粒子への凝集ではなく、新たに擬似粒子が生成することにより組成の分布や粒径の分布が著しくなり、所望の性能が得難くなる。
また、粒子の追加を段階的に分割して行ったり、徐々に連続的に行うことにより、新たな微小な凝集粒子の発生を抑制し、粒度分布をシャープにすることができる。
さらに、添加の段階毎に母体凝集粒子または追加粒子のガラス転移温度以下の範囲で温度を上昇させることにより、遊離粒子の発生を抑制することができる。
本発明に使用するトナー用樹脂として用いられる熱可塑性結着樹脂となる重合体の例としては、
スチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン樹脂、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のビニル基を有するエステル類、アクリルニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル類、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類、エチレン、プロピレン、ブタジエンなどのポリオレフィン類などの単量体などの重合体またはこれらを2種以上組み合わせて得られる共重合体またはこれらの混合物、さらにはエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂等、非ビニル縮合系樹脂、あるいはこれらと前記ビニル系樹脂との混合物やこれらの共存下でビニル系単量体を重合する際に得られるグラフト重合体等を挙げることができる。
離型剤の例としては、
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量オレフィン類、
加熱により軟化点を有するシリコーン類、オイレイ酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等のような脂肪酸アミド類やカルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等のような植物系ワックス、ミツロウのような動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等のような鉱物、石油系ワックス、及びそれらの変性物が使用できる。
着色剤については、種々の顔料、染料などを1種もしくは複数種類を併せて使用することができる。
以下に、この参考実施の形態で使用したトナーの作製方法について説明する。
樹脂分散液1の作成
スチレン 370g
nブチルアクリレート 30g
アクリル酸 6g
ドデカンチオール 24g
4臭化炭素 4g
以上を混合溶解しものを非イオン系界面活性剤ノニポール400 6g、アニオン性界面活性剤ネオゲンSC10gをイオン交換水550gに溶解したものにフラスコ中で分散、乳化し10分ゆっくりと混合しながら、過硫酸アンモニウム4gを溶解したイオン交換水50gを投入し、窒素置換をおこなった。そののちフラスコを攪拌しながらオイルバスで内容物が70℃になるまで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続した。
これにより、中心径150nm、ガラス転移点59℃、Mw12000のアニオン性樹脂分散液を得た。
樹脂分散液2の作成
スチレン 280g
nブチルアクリレート 120g
アクリル酸 8g
以上を混合溶解しものを非イオン系界面活性剤ノニポール400 6g、アニオン性界面活性剤ネオゲンSC12gをイオン交換水550gに溶解したものにフラスコ中で分散、乳化し10分ゆっくりと混合しながら、過硫酸アンモニウム3gを溶解したイオン交換水50gを投入し、窒素置換をおこなった。そののちフラスコを攪拌しながらオイルバスで内容物が70℃になるまで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続した。
これにより、中心径105nm、ガラス転移点53℃、Mw550000のアニオン性樹脂分散液を得た。
顔料分散液の作成
カーボンブラック モーガルL(キャボット)50g
非イオン系界面活性剤ノニポール400 5g
イオン交換水 200g
以上を混合溶解し、ホモジナイザー(IKAウルトラタラックス)により10分間分散し、中心粒子径250nmのカーボンブラック分散液を得た。
離型剤分散液の作成
パラフィンワックスHNP0190(融点85℃ 日本蜜蝋)50g
カチオ系界面活性剤サニゾールB50(花王) 5g
イオン交換水 200g
以上を95℃に加熱して、IKAウルトラタラックスT50にて分散後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理し、中心粒子径550nmのワックス分散液を得た。
凝集粒子の作成
樹脂分散液1 120g
樹脂分散液2 80g
顔料分散液 30g
離型剤分散液 40g
サニゾールB50 1.5g
以上を丸型ステンレス製フラスコ中でウルトラタラックスT50で混合分散した後、加熱用オイルバスでフラスコを攪拌しながら48℃まで加熱した。48℃で30分保持した後、光学顕微鏡にて観察すると約5ミクロンの凝集粒子が生成していることが確認された。ここに樹脂分散液1を緩やかに60g追加し、さらに加熱用オイルバスの温度を上げて50℃で1時間保持した。光学顕微鏡にて観察すると約5.7ミクロンの凝集粒子が生成していることが確認された。
その後、ここにネオゲンSC3gを追加した後、ステンレス製フラスコを密閉し、磁力シールを用いて攪拌を継続しながら105℃まで加熱し、3時間保持した。
冷却後、ろ過し、イオン交換水で十分洗浄後、コールターカウンターで粒径を測定すると、5.6ミクロンであった。
上記凝集微粒子100重量部に対して平均粒径12nmのシリカ粒子を0.5重量部および平均粒径40nmのシリカ粒子を1.0重量部ヘンシェルミキサーにて混合してトナー1を調製した。トナー1に帯電制御剤である無機粒子を外添し、ポリメチルメタクリレートをコートした平均粒径50ミクロンのフェライトキャリアと混合することにより現像剤Aを得た。
また、上記凝集微粒子100重量部に対して平均粒径12nmのシリカ粒子を0.5重量部および平均粒径40nmのシリカ粒子を1.0重量部、PTFE粒子(ルブロンL−2)0.3重量部をヘンシェルミキサーにて混合してトナー2を調製した。トナー2に帯電制御剤である無機粒子を外添し、ポリメチルメタクリレートをコートした平均粒径50ミクロンのフェライトキャリアと混合することにより現像剤Bを得た。
ところで、本発明者の研究によれば、上記の如く構成される感光体ドラム15と、上記の如く構成されるトナーを用いた画像形成装置において画像を形成した場合に、図7に示すように、例えば、記録用紙28上に中間調の一様な濃度のベタ画像を形成すると、画像の一部68の濃度が帯状に薄くなる画像欠陥が生じる場合があることが判った。
この画像の一部が帯状に薄くなる画像欠陥は、次のようなメカニズムによって発生すると考えられる。
上記画像形成装置で用いられるトナーは、上述したように、トナーの構成材料をイオン交換水中に分散させて微粒子とした後に微粒子を凝集させた凝集粒子を元に作成される。そのため、製品として製造されたトナー中には、極微量であるものの、製造工程で用いられた水分(H2O)が残留する場合がある。
一方、上記画像形成装置で用いられる感光体ドラム15は、表面保護層67として末端の少なくとも一部がOH基である化合物を脱水縮合反応させることによって得られる表面層を用いている。しかし、末端の少なくとも一部がOH基である化合物のすべてのOH基が脱水縮合反応に寄与する訳ではなく、図6に示すように、化合物のOH基の一部が未反応のまま残留することとなる。
すると、上記画像形成装置では、感光体ドラム15の表面にトナーが付着したままの状態である程度の時間にわたって放置されると、図6に示すように、トナー中に極微量に残留する場合がある水分(H2O)が、感光体ドラム15の表面保護層67を構成する化合物の残留したOH基と水素結合により反応し、水素結合による双極子69が形成される場合がある。
このように、上記画像形成装置において、感光体ドラム15の表面にトナーが付着したままの状態である程度の時間にわたって放置される箇所としては、図4に示すように、感光体ドラム15の表面に残留したトナーをクリーニングするクリーニング装置18のクリーニングブレード69のエッジ部分が挙げられる。上記クリーニング装置18の内部は、回収したトナーが外部に漏れるのを防止するために、クリーニング装置18の感光体ドラム15の回転方向上流側の端部に位置する間隙は、シール部材60によって密閉されているとともに、クリーニング装置18の感光体ドラム15の回転方向下流側の端部に位置する間隙は、クリーニングブレード69によって密閉されており、密閉された空間となっている。
そのため、上記画像形成装置では、特に、画像密度の高い画像を連続して形成した後に、画像形成動作の休止時間が長時間続く場合などに、感光体ドラム15の表面にトナーが付着したままの状態である程度の時間にわたって放置される状態となる。その結果、上述したように、トナー中に極微量に残留する場合がある水分(H2O)が、図6に示すように、感光体ドラム15の表面保護層67を構成する化合物の残留したOH基と水素結合により反応し、水素結合による双極子69が形成され易い。ただし、画像密度の高い画像を連続して形成した後に、画像形成動作の休止時間が長時間続く場合は、例示であって、これに限定されるものではない。
このように、上記画像形成装置では、感光体ドラム15の表面保護層67に水素結合による双極子69が形成されると、長時間休止後の最初の画像形成時などに、感光体ドラム15の表面をスコロトロン16によって一様な負極性の電位に帯電すると、図8に示すように、表面保護層中67の水素結合による双極子69が一次帯電による電界によって分極する。
すると、感光体ドラム15の表面は、図3に示すように、一次帯電後に画像露光が施されると、画像露光によって電荷が移動する電荷輸送層66及び表面保護層67の作用によって、感光体ドラム15表面の画像露光部は、電荷が移動して電位が所謂露光部で電位VLまで低下する。しかし、感光体ドラム15の表面保護層67に水素結合による双極子69が存在すると、画像露光部の電荷が移動しようとしても、水素結合による双極子の分だけ感光体ドラム15の表面には、図8に示すように、負極性の電荷70が残留してしまい、予め定められた露光部電位VLまで電位が低下せず、図3に示すように、予め定められた露光部電位VLよりも低いVL’までしか電位が低下しない領域71が存在することになる。
そのため、一様な濃度の中間調画像などを現像すると、図7に示すように、クリーニング装置18のシール部材60とクリーニングブレード69との間の長さに対応した領域に、感光体ドラム15の軸方向に沿って帯状に濃度が低下した画像欠陥68が発生する場合があることが、本発明者の研究によって明らかとなった。
そこで、この参考実施の形態では、画像形成動作開始前であって予め定められた条件を満たすときに、感光体の表面に通常の帯電極性と逆極性の電荷を付与する電荷付与手段とを備えるように構成されている。
上記電荷付与手段としては、新たに設けたものであっても良いが、部品点数の増加に伴うコストアップや装置の複雑化を回避する観点からは、画像形成装置に既に備えられていて、感光体ドラム15の表面に対して電荷を付与することが可能な電荷付与手段をそのまま用いるのが望ましい。
この画像形成装置に既に備えられていて、感光体ドラム15の表面に対して電荷を付与することが可能な電荷付与手段としては、図1に示すように、例えば、一次帯電用のスコロトロン16、一次転写ロール21、クリーニング前コロトロン56などを挙げることができる。
ただし、この参考実施の形態に係る電荷付与手段は、感光体ドラム15の表面に通常の帯電極性と逆極性の電荷を付与するものである必要があるため、一次帯電用のスコロトロン16は適しておらず、正極性の電圧がそのまま印加される一次転写ロール21やクリーニング前コロトロン56などを電荷付与手段として用いるのが望ましい。この参考
実施の形態では、図1に示すように、電荷付与手段として一次転写ロール21を用いている。
上記一次転写ロール21に印加する電圧としては、一次転写電圧をそのまま用いても良い。また、上記画像形成装置では、温度や湿度等の環境条件に応じて一次転写ロール21に印加する一次転写電圧を制御する機能を備えているものがあるため、一次転写ロール21に印加する電圧を、上述した画像欠陥を抑制乃至防止するのに適した電圧に切り替えるように構成するのが望ましい。
図9は上記の如く構成される画像形成装置を制御する制御装置を示すブロック図である。
図9において、符号100は画像形成装置の動作を制御する制御手段としてのCPUを示すものであり、このCPU100は、ROM101に記憶された制御プログラムやRAM102に記憶されたLUT(ルックアップテーブル)等に基づいて、画像形成動作を制御するとともに、画像形成動作開始前であって予め定められた条件を満たすか否かを判別し、画像形成動作開始前であって予め定められた条件を満たしたときに、感光体ドラム15の表面に通常の帯電極性と逆極性の電荷を付与するように各画像形成部の一次転写ロール21への印加電圧を制御するように構成されている。
また、103は画像形成装置本体1内の少なくとも湿度(この実施の形態では温度及び湿度)を検出する環境センサーを示している。
さらに、上記CPU100は、画像処理装置12から高彩度シアン(HC)、高彩度マゼンタ(HM)、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、黒(K)の各画像形成部13HC、13HM、13Y、13M、13C、13Kの画像露光装置14HC、14HM、14Y、14M、14C、14Kに出力される画像データに基づいて、各画像形成部13HC、13HM、13Y、13M、13C、13Kの現像装置17HC、17HM、17Y、17M、17C、17Kによって現像されたトナー量を累積的に算出する。そして、上記CPU100は、画像形成装置の電源が投入されてから、各現像装置17HC、17HM、17Y、17M、17C、17Kによって現像されたトナー量の累積値が閾値を超えたか否かを判別する。
この各現像装置17HC、17HM、17Y、17M、17C、17Kによって現像されたトナー量の累積的な算出は、例えば、画像処理装置12から出力される画像データの画素数を累積的に算出することによって実行される。その際、画像データの画素数とともに濃度を併せて考慮するように算出しても良い。
また、上記CPU100は、画像形成装置の電源が投入されてから、画像形成動作を連続して休止した休止時間を算出し、当該連続した休止時間が閾値を超えたか否かを判別する。
さらに、上記CPU100は、画像形成装置の電源が投入されてから、各現像装置17HC、17HM、17Y、17M、17C、17Kによって現像されたトナー量の累積値と、画像形成装置の電源が投入されてから、画像形成動作を連続して休止した休止時間の双方が、予め定められた閾値を超えたか否かを判別するように構成しても良い。
以上の構成において、この参考実施の形態に係る画像形成装置では、次のようにして、感光体の表面層と現像剤の特定の組合せによって発生する画像欠陥を抑制することが可能となっている。
すなわち、この参考実施の形態に係る画像形成装置では、図2に示すように、高彩度シアン(HC)、高彩度マゼンタ(HM)、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、黒(K)の各画像形成部13HC、13HM、13Y、13M、13C、13Kにおいて、対応する色のトナー像が形成され、これらの高彩度シアン(HC)、高彩度マゼンタ(HM)、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、黒(K)の各画像形成部13HC、13HM、13Y、13M、13C、13Kの感光体ドラム15HC、15HM、15Y、15M、15C、15K上に形成されたトナー像は、中間転写ベルト20上に多重に一次転写された後、中間転写ベルト20上から記録用紙28上に一括して二次転写され、記録用紙28に転写された各色の未定着トナー像が定着装置31によって加熱・加圧されて定着されることにより、フルカラー画像などが形成される。
その際、CPU100は、環境センサー103によって画像形成装置本体1内の少なくとも湿度、あるいは温度及び湿度を検出し、検出された湿度(例えば、相対湿度)が予め定められた閾値である70%以上であるか否か、あるいは温度及び湿度が予め定められた閾値である高温高湿条件を満たしているか否かを判別し、検出された湿度(例えば、相対湿度)が予め定められた閾値である70%以上である場合、あるいは温度及び湿度が予め定められた閾値である高温高湿条件を満たしている場合には、画像形成動作を開始する直前に、感光体ドラム15HC、15HM、15Y、15M、15C、15Kの表面電位を回復するための電位回復シーケンスを実行するようになっている。なお、電位回復シーケンスの実行時、同時に、感光体ドラム15HC、15HM、15Y、15M、15C、15Kの表面電位は、イレーズランプ62の露光によって消去される。
この電位回復シーケンスは、図1に示すように、高彩度シアン(HC)、高彩度マゼンタ(HM)、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、黒(K)の各画像形成部13HC、13HM、13Y、13M、13C、13Kにおいて、スコロトロン16によって帯電することなく、感光体ドラム15HC、15HM、15Y、15M、15C、15Kを予め定められた回数(例えば、200回程度)、あるいは時間だけ回転駆動させるとともに、各感光体ドラム15HC、15HM、15Y、15M、15C、15Kの表面に、予め定められた正極性の一次転写バイアス電圧が印加された一次転写ロール21HC、21HM、21Y、12M、21C、21Kによって中間転写ベルト20を介して正極性の電荷を付与することによって行われる。
上記各感光体ドラム15HC、15HM、15Y、15M、15C、15Kには、図5に示すように、その表面層として電荷輸送材料を含む表面保護層67が設けられている。この表面保護層67には、図6に示すように、当該表面保護層67を構成する化合物にOH基が残留している場合がある。
ところで、上記画像形成装置では、例えば、相対湿度が70%以上の高湿環境下において、感光体ドラム15の表面にトナーが付着したままの状態である程度の時間にわたって放置されると、図6に示すように、トナー中に極微量に残留する場合がある水分(H2O)が、感光体ドラム15の表面保護層67を構成する化合物の残留したOH基と水素結合により反応し、水素結合による双極子69が形成される場合がある。
すると、感光体ドラム15の表面には、画像形成工程の画像露光時に、その表面保護層67に水素結合による双極子69が存在すると、図8に示すように、画像露光部の電荷が移動しようとしても、水素結合による双極子69の分だけ感光体ドラム15の表面には、図8に示すように、負極性の電荷70が残留してしまい、予め定められた露光部電位VLまで電位が低下せず、図3に示すように、予め定められた露光部電位VLよりも低いVL’までしか電位が低下しない領域71が存在することになる。
そこで、この参考実施の形態では、上述したように、画像形成動作を開始する前に、図1に示すように、感光体ドラム15を回転駆動するとともに、感光体ドラム15の表面に予め定められた正極性の一次転写バイアス電圧が印加された一次転写ロール21HC、21HM、21Y、12M、21C、21Kによって中間転写ベルト20を介して正極性の電荷が付与される。
このように、画像形成動作の開始前に、感光体ドラム15の表面に一次転写ロール21によって正極性の電荷を付与することにより、図10に示すように、表面保護層67中に存在する水素結合による双極子69が反転するか、双極子69の向きが変化することにより、スコロトロン16による一次帯電に続く画像露光時に、双極子69の存在によって感光体ドラム15表面の画像露光部に負極性の電荷が残留することがなく、予め定められて露光部電位VLまで電位を下げることができる。そのため、次の現像装置17による現像工程において、クリーニング装置18のシール部材60とクリーニングブレード59との間の長さに対応した領域に、感光体ドラム15の軸方向に沿って帯状に濃度が低下した画像欠陥68が発生することが抑制乃至防止することができ、感光体の表面層と現像剤の特定の組合せに関わらず、高画質の画像を形成することが可能となる。
実施の形態1
図11はこの発明の実施の形態1を示すものであり、前記参考実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して説明すると、この実施の形態1では、予め定められた条件は、画像形成動作を連続して休止した休止時間と、現像手段によって現像されたトナー量の双方に基づいて決定されるように構成されている。
すなわち、この実施の形態1では、CPU100によって、画像形成装置の電源が投入されてから、各現像装置17HC、17HM、17Y、17M、17C、17Kによって現像されたトナー量の累積値と、画像形成装置の電源が投入されてから、画像形成動作を連続して休止した休止時間の双方が、予め定められた閾値を超えたか否かを判別するように構成されている。
CPU100では、各現像装置17HC、17HM、17Y、17M、17C、17Kによって現像されたトナー量の累積的な算出が、例えば、画像処理装置12から出力される画像データの画素数を累積的に算出することによって実行される。
CPU100は、画像処理装置12から出力される各色に対応した画像データに基づいて、記録用紙28上に記録される画像の面積及びその濃度を検出し、各感光体ドラム15上に現像されるトナー量(DMA)を算出するとともに、当該各感光体ドラム15上に現像されるトナー量(DMA)に基づいてトナー像の転写効率を考慮して、中間転写ベルト20を介して記録用紙28上に二次転写されるトナー量(TMA)を算出する。
こうすることによって、CPU100では、各感光体ドラム15上に残留しクリーニング装置18によってクリーニングされるトナー量を求め、当該クリーニングされるトナー量が閾値を超えているか否かが判別される。
同時に、CPU100では、画像形成装置の電源が投入されてから、画像形成動作を連続して休止した休止時間が算出され、当該休止時間が予め定められた閾値を超えたか否かが判別される。
CPU100は、上記の如くして求められたクリーニング装置18によってクリーニングされるトナー量と、画像形成動作を連続して休止した休止時間とに基づいて、図11に示すように、RAM102に予め記憶されたLUTを参照することにより、電位回復シーケンスを実行するかしないかを判別するように構成されている。
ところで、この実施の形態1では、CPU100は、図11に示すように、画像形成動作を連続して休止した休止時間が第1の閾値である1時間未満の場合、クリーニング装置18によってクリーニングされるトナー量のかかわらず、電位回復シーケンスを実行しない。
また、CPU100は、図11に示すように、画像形成動作を連続して休止した休止時間が第1の閾値である1時間以上、且つ8時間未満の場合、クリーニング装置18によってクリーニングされるトナー量が15g未満であると、電位回復シーケンスを実行せず、トナー量が15g以上である場合には、電位回復シーケンスを実行する。
同様に、CPU100は、図11に示すように、画像形成動作を連続して休止した休止時間が第2の閾値である8時間以上、且つ24時間未満の場合、クリーニング装置18によってクリーニングされるトナー量が6g未満であると、電位回復シーケンスを実行せず、トナー量が6g以上である場合には、電位回復シーケンスを実行する。
さらに、CPU100は、図11に示すように、画像形成動作を連続して休止した休止時間が第3の閾値である24時間以上、且つ48時間未満の場合、クリーニング装置18によってクリーニングされるトナー量が1g未満であると、電位回復シーケンスを実行せず、トナー量が1g以上である場合には、電位回復シーケンスを実行し、画像形成動作を連続して休止した休止時間が第4の閾値である48時間以上である場合には、クリーニング装置18によってクリーニングされるトナー量にかかわらず、常に電位回復シーケンスを実行する。
なお、CPU100は、画像形成装置の電源がオフされた場合であっても、画像形成動作を連続して休止した休止時間の算出値をRAM102に記憶しておくように構成されている。
また、予め定められた条件は、画像形成動作を連続して休止した休止時間と、現像手段によって現像されたトナー量の双方ではなく、いずれか一方が閾値を超えた場合であるように構成しても良い。
その他の構成及び作用は、前記参考実施の形態と同様であるのでその説明を省略する。