JP6037096B2 - インクジェット捺染装置及び印捺物の製造方法 - Google Patents
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Description
この両面視認可能な印捺の場合には、布帛の一方の面に、インクを吐出するのに先立ってインクの浸透を促進させるために浸透液を付与し、該浸透液が付与された状態の布帛の面にインクを吐出する技術が下記の特許文献2に開示されている。
本願明細書で「印捺」とは前記被捺染材に印刷することを意味する。
例えば、第2のテンション付与状態で被捺染材の織り目を拡げた状態でインクを吐出して形成した一次画像の上に、第1のテンション付与状態に切り換えて、即ち前記拡がった織り目を元に戻して単に皺の無い程度のテンションの状態にして、再度インクを吐出して二次画像(最終の印捺画像)を形成する。こうすることで、インクが被捺染材の内部にまで進入し(一次画像)且つ画像の輪郭部は明確である印捺(二次画像)を実現することができる。また、これにより滲みも低減された印捺を実現することができる。
また、浸透液を用いることで両面視認可能な印捺を行う場合にも、本態様によれば、浸透液付与時とその後のインク吐出時とで前記テンションを切り換えることによって、浸透液を被捺染材に深く且つムラ無く浸透させることができる(浸透性の向上)。これにより、両面視認可能な印捺画像の品質を向上することができる。また、これにより滲みも低減された印捺を実現することができる。
すなわち本態様によれば、第1のテンション付与状態と第2のテンション付与状態とを切り換えて印捺を実行することで、印捺画像の品質を向上することができる。
次に、前記浸透液がムラ無く進入された被捺染材を相対的に小さな第1のテンション付与状態にして印捺を実行するので、被捺染材の他方の面からの印捺画像の視認性を向上させることができる。そして、インクの滲みを抑えた明瞭な印捺画像が得られるようになる。
ここで、「切り換え」は繰り返し行われることが印捺画像のデフォルメを進める上では好ましい。
最初に、本発明の実施例に係るインクジェット捺染装置1の概略構成を図1に基づいて説明する。
インク吐出部3は、図示しないインクカートリッジ等からチューブ等を介して供給されるインクCを被捺染材Tの一方の面7に吐出して直接、印捺を実行する部材である。また、該インク吐出部3としては、キャリッジ5に搭載されて被捺染材Tの搬送方向Aと交差する幅方向Bを走査方向として往復移動しながらインクCを吐出する、いわゆるシリアル方式のインク吐出部3と、被捺染材Tの幅方向Bの印捺範囲を一挙に印捺する、いわゆるライン方式のインク吐出部3とのいずれの方式のインク吐出部3でも適用可能である。
第1のテンション付与機構18としては、例えば印捺実行領域4を挟んで前記搬送用ローラー13の下流側に設けられる一対のニップローラーによって構成されるテンションローラー21を備える構成が採用できる。この場合には、前記テンションローラー21の回転速度を前記搬送用ローラ13の回転速度よりも幾分、速く回転させることによってテンションFを得る。
また、前記テンションFの付与状態の設定は、ユーザーからの設定情報31等に基づいて実行され、該設定情報31には、当該被捺染材Tが伸び易いか伸び難いかの性状の違いや被捺染材の素材、厚さ、織り方、繊維の太さ、織り目の間隔等によって区分けされる種類の違い、あるいはユーザーの意思決定に基づく情報等が含まれる。
そして、前記テンション付与機構17を使用することによって実行されるテンションFの付与状態での印捺の実行に関する構成が本発明のインクジェット捺染装置1の特徴的構成になっている。
図1に実施例1に係るインクジェット捺染装置1Aの要部の概略構成が図示されている。本実施例に係るインクジェット捺染装置1Aは、インク吐出部3としてシリアル方式のインク吐出部3が採用されており、搬送手段11として搬送用ローラー13を備えた構成が採用されている。
また、テンション付与機構17として、被捺染材Tの搬送方向AにテンションFを付与する第1のテンション付与機構18と、被捺染材Tの幅方向BにテンションFを付与する第2のテンション付与機構19との両方が設けられている。
また、本実施例では、前記インク吐出部3の往路走行時と復路走行時の両方で連続して印捺を実行する図3に示す第1の印捺動作35と、前記インク吐出部3の往路走行時と復路走行時のいずれか一方のみで印捺を実行する図4に示す第2の印捺動作37を採ることができる。
一方、前記インク吐出部3の図4に示す第3の印捺動作37は、乾燥に時間がかかるインクCや浸透性の低いインクCを使用した場合に適した印捺動作で、往路走行時と復路走行時の一方がインクCを吐出しないで移動することになる分、印捺速度が遅くなるが、その時間を被捺染材T上のインクCの乾燥と浸透性を促進させるために充てることが可能になる。
従って、前記第1の印捺動作35によって印捺を実行する場合には、例えば図5中の(A)から(C)に示す最初の片道の走行時に相対的に大きなテンションFをかける第2のテンション付与状態33で印捺を実行することによって、被捺染材Tの織り目を広げて織り目内部へのインクCの浸透性を促進させ、図5中の(D)から(F)に示す次の片道の走行時に相対的に小さなテンションFをかける第1のテンション付与状態32で印捺を実行することによって、印捺画像Gの輪郭を明瞭にした印捺ができるようになる。
そして、このような態様で印捺を実行した場合には、インクCの塗布量を多くした場合でも滲みの少ない印捺画像Gの印捺物Uが得られるようになり、最初に印捺したインクCの輪郭の多くが次に印捺したインクCの輪郭内に収まるため表面に現れる印捺画像Gのシャープな輪郭はそのまま維持される。
そして、該吐出ヘッド39は、前記インク吐出部3と共にキャリッジ5に搭載されて該キャリッジ5と一体になって、被捺染材Tの幅方向Bを走査方向として往復移動しながら浸透液Sを吐出できる。
尚、本実施例で使用する浸透液Sとしては、インクジェット印捺用のインクCとして通常使用されている浸透剤や界面活性剤が使用できる。
また、多価アルコールのアルキルエーテル類としては、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチエレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ヘキサエチレングリコールモノエチルヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルヘキシルエーテルを一種または二種以上を組み合わせて用いてもよい。
浸透液は、上記した浸透剤を、浸透液の全質量に対して概ね10〜30質量%、また、界面活性剤を概ね0.1〜3.0質量%含むことが好ましい。
尚、前記第1の印捺実行モード41は、テンション付与機構17を有しない一般のインクジェット捺染装置において実行されている印捺実行モードと同じか、該印捺実行モードに近い通常印捺仕様の印捺実行モードになっており、前記第2の印捺実行モード43は、被捺染材Tの性状や種類の違い等に応じて当該被捺染材TにテンションFを加えて印捺を実行するテンション印捺仕様の印捺実行モードになっている。
印捺の実行が指令されると、先ず、ステップS1で第1の印捺実行モード41で印捺を実行するか否かの判断が行われる。ステップS1では、ユーザーの設定情報31等に基づいて被捺染材Tの性状や種類及びユーザーの意思決定等に適合した判断が行われる。
次に、ステップS3に移行して第1の印捺実行モード41での印捺が実行される。
ステップS4ではテンション付与機構17を駆動して被記録材Tに設定値aより大きなテンションFをかけた状態にする。
また、前記ステップS3の第1の印捺実行モード41での印捺実行後と、前記ステップS5の第2の印捺実行モード43での印捺実行後は、それぞれステップS6に移行して当該部位の印捺の実行を継続するか否かの判断が行われる。
因みに、前述した図5に示す2回の印捺を連続的に実行する場合と、前述した図6に示す浸透液Sの吐出とインクCの吐出を連続的に実行する場合には、図7のフローチャートのステップS1からステップS4、S5、S6へと移行し、ステップS6から再びステップS1に戻り、ステップS2、S3、S6へと移行して当該部位の一連の印捺が終了することになる。
図8に実施例2に係るインクジェット捺染装置1Bの要部の概略構成が図示されている。本実施例に係るインクジェット捺染装置1Bは、前記実施例1に係るインクジェット捺染装置1Aと大部分の構成が同じであり、テンション付与機構17の一部の構成と、制御部15で扱う印捺実行モードの一部の構成のみが前記実施例1と相違している。
従って、ここでは前記実施例1と共通の構成については基本的に説明を省略し、前記実施例1と相違する構成を中心にして説明する。
そして、前記制御部15は、本実施例では第3の印捺実行モードとして、前記第1のテンション付与状態32と前記第2のテンション付与状態33を含む複数の多段階のテンション付与状態から選定された二以上のテンション付与状態を、前記インク吐出部3から被捺染材Tにインクを吐出して印捺画像を形成しつつ切り換える制御モードを備えている。
以下、図9に基づいて説明すると、図9(A)に示すテンションFをかけない状態で印捺実行領域4に供給された被捺染材Tは、印捺の実行の開始と並行してテンションFをかけたり、かけなかったり、テンションFの大きさを規則的にないし不規則的に変化させることによって伸び縮みを繰り返す。
次に、図9(C)のプロセスに移行すると、被捺染材TにかかっていたテンションFが取り除かれて被捺染材Tが元の大きさに縮むため、前記図9(B)のプロセスで形成した印捺画像G1も縮んで小さくなる。また、図9(C)の状態でインクCを吐出すると、印捺データ通りの大きさの印捺画像G2が形成されるため、図9(C)に示すように前記印捺画像G1との間に段差ができた印捺画像Gとなる。
更に、第3のテンション付与状態45を採択して印捺を実行した場合には、図10(C)に示すように前述したようにデフォルメされた印捺画像Gが形成される。
尚、前記第1の印捺実行モード41と第2の印捺実行モード43は前述した実施例1で述べたのと同様の印捺仕様の印捺実行モードになっており、前記第3の印捺実行モード47は、ユーザーの意思によって、印捺画像Gに変化を持たせたい場合に採択される伸縮印捺仕様の印捺実行モードになっている。
印捺の実行が指令されると、先ず、ステップS11で第1の印捺実行モード41で印捺を実行するか否かに判断が行われる。ステップS11では、ユーザーの設定情報31等に基づいて被捺染材Tの性状や種類及びユーザーの意思決定等に適合した判断が行われる。
次に、ステップS13に移行して第1の印捺実行モード41での印捺が実行される。
ステップS14で第2の印捺実行モード43で印捺を実行すると判断された場合には、ステップS15に移行し、被捺染材Tに設定値aより大きなテンションFをかけた状態にする。
また、前記ステップS14で第2の印捺実行モード43で印捺を実行しないと判断された場合には、第3の印捺実行モード47で印捺を実行すると判断されてステップS17に移行する。
ステップS17ではテンション付与機構17を駆動して被捺染材Tに規則的ないし不規則的に大きさが変化するテンションFをかけた状態にする。
また、前記ステップS13の第1の印捺実行モード41での印捺実行後と、前記ステップS16の第2の印捺実行モード43での印捺実行後と、前記ステップS18の第3の印捺実行モード47での印捺実行後は、それぞれステップS19に移行して当該部位の印捺の実行を継続するか否かの判断が行われる。
そして、このような構成の本実施例に係るインクジェット捺染装置1Bと、該インクジェット捺染装置1Bを使用することによって実行される印捺物の製造方法によれば、被捺染材Tの性状や種類あるいはユーザーの意思に応じて前記第1にテンション付与状態32と、第2のテンション付与状態33と、第3のテンション付与状態45と、切り換えることによって、当該被捺染材Tの性状や種類あるいはユーザーの意思に適合した印捺画像Gが形成された印捺物Uを得ることができる。
本発明に係るインクジェット捺染装置1及び印捺物の製造方法は、以上述べたような構成を有することを基本とするものであるが、本願発明の要旨を逸脱しない範囲内の部分的構成の変更や省略等を行うことも勿論可能である。
例えばテンション付与機構17は、前記実施例1及び実施例2のように搬送方向AにテンションFを付与する第1のテンション付与機構18と、幅方向BにテンションFを付与する第2のテンション付与機構19と、を二つとも備える他、いずれか一方のみを備える構成であっても構わない。テンションを付与する構造も前記構造に限定されず、テンションの切り換えが可能な他の構造も適用可能である。
従って、例えば被捺染材Tの性状や種類に応じて第1のテンション付与状態32と第2のテンション付与状態33とを切り換える制御を行う場合に、当該被捺染材Tの印捺に先立って前記第1のテンション付与状態32と第2のテンション付与状態33のいずれか一方を採択し、採択した第1のテンション付与状態32または第2のテンション付与状態33のまま印捺画像Gが形成される最後まで当該被捺染材Tに対する印捺を実行することが可能である。
そして、その場合には、インク吐出部3ないし吐出ヘッド39の往路走行時と復路走行時でテンションFの付与状態を切り換えたり、所定幅ごとの印捺を行う、いわゆるバンド印捺を行う場合には、バンドごとにテンションFの付与状態を切り換えることが可能である。更に細かく往路走行時及び復路走行時中にテンションFの付与状態を複数回、切り換えることも可能である。
この他、前記実施例1及び実施例2において採用した浸透液Sの付着部材である吐出ヘッド39を省略してインク吐出部3のみをキャリッジに搭載した構成とすることも可能である。
5 キャリッジ、7 一方の面(表側の面)、9 他方の面(裏側の面)、
11 搬送手段、13 搬送用ローラー、15 制御部、17 テンション付与機構、
18 第1のテンション付与機構、19 第2のテンション付与機構、
21 テンションローラー、23 軸、25 テンションローラー対、
27 第1テンションローラー、29 第2テンションローラー、31 設定情報、
32 第1のテンション付与状態、33 第2のテンション付与状態、
35 第1の印捺動作、37 第2の印捺動作、39 吐出ヘッド、
41 第1の印捺実行モード、43 第2の印捺実行モード、
45 第3のテンション付与状態、47 第3の印捺実行モード、
T 被捺染材(布帛)、C インク、S 浸透液、A 搬送方向、B 幅方向、
U 印捺物、G 印捺画像、F テンション、a 設定値
Claims (7)
- 被捺染材の一方の面にインクを吐出するインク吐出部と、
前記被捺染材にテンションを付与するテンション付与機構と、
前記テンション付与機構によって前記被捺染材に付与されるテンションを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
テンションを付与しない状態から任意の設定値までの範囲内の大きさのテンションを付与する第1のテンション付与状態と、前記設定値より大きなテンションを付与する第2のテンション付与状態とを切り換え可能であり、
前記被捺染材への或る印捺と他の印捺との間で前記切り換えを行うことを特徴とするインクジェット捺染装置。 - 被捺染材の一方の面にインクを吐出するインク吐出部と、
前記被捺染材にテンションを付与するテンション付与機構と、
前記テンション付与機構によって前記被捺染材に付与されるテンションを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、テンションを付与しない状態から任意の設定値までの範囲内の大きさのテンションを付与する第1のテンション付与状態と、前記設定値より大きなテンションを付与する第2のテンション付与状態とを切り換えて前記被捺染材に印捺を行い、
前記被捺染材の一方の面にインクを吐出するのに先行してインクの浸透液を付着させる付着部材を備え、
前記被捺染材に対する前記浸透液の付着は前記第2のテンション付与状態で行い、前記インクの吐出は前記第1のテンション付与状態で行うことを特徴とするインクジェット捺染装置。 - 請求項1又は2に記載されたインクジェット捺染装置において、
前記制御部は、前記第1のテンション付与状態と前記第2のテンション付与状態とを含む複数の多段階のテンション付与状態から選定された二以上のテンション付与状態を、前記インク吐出部から被捺染材にインクを吐出して画像を形成しつつ切り換える制御モードを備えていることを特徴とするインクジェット捺染装置。 - 請求項1から3のいずれか一項に記載されたインクジェット捺染装置において、
前記インク吐出部は、被捺染材の搬送方向と交差する方向に往復移動可能なシリアル方式のインク吐出部であり、
前記インク吐出部の往路走行時と復路走行時とで前記第1のテンション付与状態と第2のテンション付与状態とを切り換えることを特徴とするインクジェット捺染装置。 - 請求項1から4のいずれか一項に記載されたインクジェット捺染装置において、
前記テンション付与機構は、被捺染材に対して搬送方向にテンションを付与する第1のテンション付与機構と、前記搬送方向と交差する幅方向にテンションを付与する第2のテンション付与機構との少なくとも一方を備えることを特徴とするインクジェット捺染装置。 - 請求項1から5のいずれか一項に記載されたインクジェット捺染装置を使用することによって実行される印捺物の製造方法であって、
前記第1のテンション付与状態で印捺を実行する第1の印捺実行モードと、
前記第2のテンション付与状態で印捺を実行する第2の印捺実行モードと、を切り換えて印捺を実行することを特徴とする印捺物の製造方法。 - 請求項1から5のいずれか一項に記載されたインクジェット捺染装置を使用することによって実行される印捺物の製造方法であって、
前記第1のテンション付与状態と前記第2のテンション付与状態とを含む複数の多段階のテンション付与状態から選定された二以上のテンション付与状態で印捺を実行する二以上の印捺実行モードを、前記インク吐出部から被捺染材にインクを吐出して画像を形成しつつ切り換えることを特徴とする印捺物の製造方法。
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