JP6036180B2 - イオン液体 - Google Patents
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Description
イオン液体は上記のように従来の有機溶媒にない優れた特徴を持っている。しかし、一方では粘度が高いという特徴も有する。粘度が高いと液体の移送や濾過の作業性が低下する。また、反応用溶媒として用いる場合は、反応速度が低下し、電池の電解液として用いる場合は、充放電に関与するイオンの移動度が低くなる結果、充放電速度が低下する。このように、イオン液体を利用する場合、粘度の高さが障害となることが多く、低粘度のイオン液体が求められている。
しかしながら、低粘度のイオン液体であっても、従来の溶媒と比較すると粘度は高い。そのため、さらに低粘度のイオン液体が望まれている。
イオン液体に関しては幾つかの定義が提唱されている(イオン液体II―驚異的な進歩と多彩な近未来―,シーエムシー出版,pp4−15,2006)。本発明において、イオン液体とは、少なくとも一方が有機イオンであるカチオンとアニオンのみから成り、融点が100℃以下である物質を示す。また、本発明のイオン液体は、少なくとも常温で液体であることが好ましい。
本発明のイオン液体を構成するアニオン成分には下記化学式(1)で示されるアニオンが用いられる。
本発明において用いられるカチオン成分は特に制限されない。ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンやテトラフルオロボレートアニオン等とイオン液体を形成するカチオンを本発明に於いても用いることができる。好ましいカチオンとしては下記化学式(3)で示されるカチオンが挙げられる。但し、式中、Zは窒素原子又はリン原子、R1〜R4は、水素原子、炭素数が20以下のアルキル基、アルコキシアルキル基、トリアルキルシリルアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又は複素環基を示し、R´1〜R´12は水素原子、炭素数が10以下のアルキル基、アルコキシアルキル基、トリアルキルシリルアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又は複素環基を示す。
本発明のイオン液体の代表的な製造法を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<第一の製造法>
<第一の製造法>
製造した化合物の構造確認は元素分析又はNMRにより行う。NMR測定装置はVarian社製Mercury−300又はINOVA−600を使用する。基準物質として1H及び13C−NMRはテトラメチルシラン、19F−NMRはCFCl3を使用する。元素分析装置はPerkinElmer社製2400IIを使用する。
全ての操作は窒素雰囲気で行う。また、使用する溶媒は脱水剤で十分に脱水し、窒素バブリングにより脱酸素したものを使用する。また、1−メチルイミダゾールは予め蒸留精製したものを使用する。ジムロート冷却管を備えた1Lの4つ口フラスコに、1−ブロモエタン345.6g(3.172mol)とアセトニトリル500mLとを入れる。フラスコ内を攪拌し、0〜3℃に冷却しながら、1−メチルイミダゾール130.2g(1.585mol)を2時間かけて滴下する。そのまま0℃で67時間攪拌した後、室温へ昇温する。反応混合物を減圧濃縮し、少量のトルエンを加える。析出した結晶を濾過し、ジエチルエーテルで洗浄、減圧乾燥する。その結果、が1−エチル−3−メチルイミダゾリウムブロマイド137.7g(収率45%)が得られる。元素分析の結果を下記に示す。
〔元素分析値/mass%〕
理論値:C37.72,H5.80,N14.66
分析値:C37.98,H6.43,N14.76
1−エチル−3−メチルイミダゾリウムブロマイド12.52g(65.53mmol)を窒素雰囲気下で100mLナス型フラスコに秤量し、水30mLを加え溶液とする。シアン酸銀(I)9.82g(65.5mmol)を500mLナス型フラスコに秤量し、水250mLを加え懸濁液とする。室温で攪拌しながらシアン酸銀(I)の懸濁液に1−エチル−3−メチルイミダゾリウムブロマイドの溶液を10分間かけて滴下する。50℃で3時間攪拌した後、さらに室温で15時間攪拌を続ける。沈殿を濾過し、水80mLで洗浄する。濾液を減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィーで精製すると、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムシアネート9.09g(収率91%)が得られる。元素分析の結果を下記に示す。
〔元素分析値/mass%〕
理論値:C54.89,H7.24,N27.43
分析値:C54.76,H7.01,N27.44
全ての操作は窒素雰囲気で行う。また、使用する溶媒は脱水剤で十分に脱水し、窒素バブリングにより脱酸素したものを使用する。また、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体は予め蒸留精製したものを使用する。滴下ロートを備えた50mLのナス型フラスコに、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムシアネート1.753g(11.44mmol)とジクロロメタン4mLとを入れる。フラスコ内を攪拌し、0℃に冷却しながら、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体1.959g(13.80mmol)をジクロロメタン2mLに溶解した溶液を14分間かけて滴下する。滴下終了後、0℃で1時間攪拌し、さらに室温で19時間攪拌を続ける。副生成物の沈殿を濾過し、ジクロロメタンで洗浄する。濾液を減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィーで精製すると、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロ(イソシアナト)ボレート0.894g(収率35%)が得られる。製造したイオン液体の構造は元素分析及びNMRにて確認した。結果を下記に示す。
〔元素分析値/mass%〕
理論値:C38.04,H5.02,N19.01
分析値:C38.36,H4.93,N18.93
〔NMRスペクトルデータ〕
1H−NMR(600MHz,アセトン−d6)
δ(ppm)8.94(1H,s),7.73(1H,s),7.66(1H,s),4.38(2H,q,J=7.3Hz),4.04(3H,s),1.57(3H,t,J=7.3Hz)
13C−NMR(150MHz,アセトン−d6)
δ(ppm)137.11,124.69,123.02,120.53(br),45.70,36.51,15.54
19F−NMR(564MHz,アセトン−d6)
δ(ppm)−136.90(brm)
全ての操作は窒素雰囲気で行う。また、使用する溶媒は脱水剤で十分に脱水し、窒素バブリングにより脱酸素したものを使用する。また、トリメチルシリルシアニド及び三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体は予め蒸留精製したものを使用する。滴下ロートを備えた500mLの3つ口フラスコに、トリメチルシリルシアニド180.21g(1.8164mol)を入れる。フラスコ内を攪拌しながら、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体30.75g(0.2167mol)を室温で105分間かけて滴下する。滴下終了後、室温で16時間攪拌を続ける。反応混合物を減圧乾固し、残った固体をジクロロメタンで洗浄、乾燥する。その結果、トリシアノボラントリメチルシリルシアニド錯体25.28g(収率62%)が得られる。
全ての操作は窒素雰囲気で行う。また、使用する溶媒は脱水剤で十分に脱水し、窒素バブリングにより脱酸素したものを使用する。還流冷却器を備えた1Lの4つ口フラスコに、トリシアノボラントリメチルシリルシアニド錯体27.46g(0.1460mol)とピリジン322.34g(4.0751mol)とを入れる。75℃で24時間攪拌した後、反応混合物を減圧乾固する。残渣をクロロホルムで抽出し、クロロホルムを減圧留去すると粗生成物が得られる。さらに昇華精製を行うと、トリシアノボランピリジン錯体錯体13.14g(収率64%)が得られる。元素分析の結果を下記に示す。
〔元素分析値/mass%〕
理論値:C57.21,H3.00,N33.36
分析値:C57.14,H2.78,N33.14
全ての操作は窒素雰囲気で行う。また、使用する溶媒は脱水剤で十分に脱水し、窒素バブリングにより脱酸素したものを使用する。また、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムチオシアネートはIoLiTec社製のものを使用する。滴下ロートを備えた200mLのナス型フラスコに、トリシアノボランピリジン錯体17.00g(0.1012mol)とアセトニトリル60mLとを入れる。室温でフラスコ内を攪拌しながら、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムチオシアネート17.13g(0.1012mol)をアセトニトリル20mLに溶解した溶液を10分間かけて滴下する。滴下終了後、室温でさらに17時間攪拌を続ける。室温でアセトニトリルを減圧留去し、さらに80℃、40Paでピリジンを留去すると1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリシアノ(イソチオシアナト)ボレート26.12g(収率100%)が得られる。製造したイオン液体の構造は元素分析及びNMRにて確認した。結果を下記に示す。
〔元素分析値/mass%〕
理論値:C46.53,H4.30,N32.55
分析値:C46.58,H4.32,N32.48
〔NMRスペクトルデータ〕
1H−NMR(300MHz,CD3CN)
δ(ppm)8.40(1H,s),7.37(1H,t,J=1.8Hz),7.32(1H,t,J=1.7Hz),4.16(2H,q,J=7.3Hz),3.81(3H,s),1.45(3H,t,J=7.3Hz)
13C−NMR(150MHz,CD3CN)
δ(ppm)135.33,134.63(br),123.76,122.18,45.17,36.32,14.99
イオン液体の粘度は、E型粘度計(東機産業株式会社製、TVE−35L)を用い、窒素雰囲気のグローブボックス内で測定する。試料の温度は恒温水循環装置で一定に保ち、10℃、25℃、40℃で測定する。また、全ての測定でコーンロータは同じものを使用し、同じ回転数で測定する。表1に実施例のイオン液体の粘度測定の結果を示す。また、比較例1として1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジシアンアミド(IoLiTec社製)、比較例2として1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド(関東化学株式会社製)の粘度測定の結果も示す。
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