JP6033208B2 - 二次電池用電解質膜、接合体、金属−空気全固体二次電池、及びその接合体の製造方法 - Google Patents
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Description
一般的に、粉末状の固体電解質を用いた金属−空気全固体二次電池は、電極と電解質を接触させるため、電極を構成する粉末と電解質を構成する粉末を同時にプレス成形して圧粉体の電池を作製する。しかし、この方法では、電解質として用いる粒子が互いに隙間なく存在するので、電界質の粒子全面における一部の表面のみに負極となる金属や導電剤となる炭素との接触が制限されてしまい、粒子全面の広い範囲にわたって、その接触を確保することは非常に困難である。
そこで本発明は、上記問題点に鑑み、電解質と電極材料の接触界面を良好に形成することができ、当該良好な接触界面が形成される二次電池用電解質膜及び全固体二次電池を提供することを目的とする。
本発明による金属−空気全固体二次電池は、遷移金属酸化物とアルカリ金属の水酸化物を含む水酸化物イオン伝導性を有する固体電解質粒子が隙間をもって配され、前記固体電解質粒子の少なくとも一部が結着剤により固定されているともに、当該隙間に実質的に電極よりつながる金属を含む負極材料と電子伝導性を持つ炭素材料が存在する二次電池用電解質膜と、炭素及び酸素還元触媒を含む空気極と、結着剤と少なくとも炭素及び金属とを含む負極である金属極とを有し、前記結着剤は、網目構造を有し、前記電解質膜と負極膜の接合界面との接触面積を大きくすべく、前記負極膜に含まれる結着剤が電解質膜に入りこみ、かつ、前記電解質膜に含まれる結着剤が負極膜に入りこみ、網目構造が形成されていて、前記電解質膜に含まれる結着剤と前記負極膜に含まれる結着剤とがお互いに侵入しあっている構成とされていることを特徴とする。
本発明による金属−空気全固体二次電池は、遷移金属酸化物とアルカリ金属の水酸化物を含む水酸化物イオン伝導性を有する固体電解質粒子が隙間をもって配され、前記固体電解質粒子の少なくとも一部が結着剤により固定されているともに、当該隙間に実質的に電極よりつながる金属を含む負極材料と電子伝導性を持つ炭素材料が存在する二次電池用電解質膜と、炭素及び酸素還元触媒を含む空気極と、結着剤と少なくとも炭素及び金属とを含む負極である金属極とを有し、前記結着剤は、炭素とフッ素と水素を含むフッ素系高分子、もしくは炭素と窒素と水素を含む複素芳香族系高分子であり、前記電解質膜と負極膜の接合界面との接触面積を大きくすべく、前記負極膜に含まれる結着剤が電解質膜に入りこみ、かつ、前記電解質膜に含まれる結着剤が負極膜に入りこみ、網目構造が形成されていて、前記電解質膜に含まれる結着剤と前記負極膜に含まれる結着剤とがお互いに侵入しあっている構成とされていることを特徴とする。
ここで、前記アルカリ金属水酸化物はKOHであるとよい。
また、前記遷移金属酸化物はZrO2であるとよい。
さらに、前記固体電解質の粒子を結着する結着剤と、前記電極活物質および前記導電剤の粒子を結着する結着剤が同一の材料であるとよい。
本発明による金属−空気全固体二次電池は、上述のいずれかに記載の接合体と、炭素及び酸素還元触媒を含む空気極と、を有することを特徴とする。
本発明による接合体の製造方法は、電解質スラリーの上部から基材を押し当てて、当該状態で前記電解質スラリーを乾燥させることで、遷移金属酸化物又は層状複水酸化物とアルカリ金属の水酸化物を含む水酸化物イオン伝導性を有する固体電解質粒子と、結着剤を含む電解質スラリーと、を用いた電解質膜を作製する電解質膜作製工程と、前記電解質膜作製工程で得られた電解質膜を負極スラリーの上部から押し当てて、当該状態で前記負極スラリーを乾燥させることで、負極膜と電解質膜とからなる接合体を作製する接合体作製工程と、を備え、前記電解質膜及び負極膜に、結着剤を予め配合しておき、前記電解質膜と負極膜の接合界面との接触面積を大きくすべく、前記負極膜に含まれる結着剤を電解質膜に入り込ませ、かつ、前記電解質膜に含まれる結着剤を負極膜に入り込ませて、網目構造を形成することとし、前記電解質膜に含まれる結着剤と前記負極膜に含まれる結着剤とがお互いに侵入しあっている構成としていることを特徴とする。
(複合電解質膜について)
本実施形態による複合電解質膜は、二次電池用電解質膜であって、水酸化物イオン伝導性を有する固体電解質の粉末と、イオン伝導が可能な又はイオン伝導性のない高分子材料とにより部分的に結着されて構成されている。
複合電解質膜に使用される高分子材料(つまり、結着剤)は、固体電解質の水酸化物イオン伝導を阻害しないように、官能基を持たず疎水性である炭化水素系高分子、芳香族系高分子、フッ素系高分子などが好ましい。ここで、芳香族系高分子は、例えば、環構造に炭素以外の元素を含む複素芳香族化合物であると好ましい。芳香族系高分子及びフッ素系高分子は、置換基を含んでいても誘導体であってもよい。
複合電解質膜に含まれる固体電解質は、前述した特許文献1に記載の固体電解質を用いることが好ましい。具体的には特許文献1に記載されているように、MOa(OH)b(式中、M元素は周期表第4族の元素を表し、添字a,bは、M元素の原子価に応じて電気的に中性となるように定められる値)のゲル化物であって、塩基性水酸化物を含む固体電解質材料を用いることが好ましい。これらの詳細は、特許文献1を参照すれば良いが、その概略は以下のとおりである。
LDH粉末と水酸化カリウム水溶液との混合液を室温で30分間撹拌して、ゲル化物(中間ゲル化物)を得た。LDHに対する水酸化カリウムのモル比(x)は、0,0.5,1,1.5,2とした。得られたゲル化物(中間ゲル化物)を60℃で2日間放置し、固体電解質材料として、水酸化カリウムとハイドロタルサイトの複合体(以下、「KOH−LDH複合体」という)の粉末を形成した。つまり、KOH−LDHは、水酸化カリウムを含むハイドロタルサイト(LDH)であり、LDH粉末と水酸化カリウムの混合液をゲル化することで水酸化カリウムを含むLDH粉末として用いられる。
(負極シートについて)
負極シートの金属元素の含有割合は、電池の放電容量を増やすため、例えば15原子%以上であり、好ましくは20原子%以上、より好ましくは30原子%以上である。なお、その上限は、90原子%以下であることが好ましい。金属は、平均粒径が0.01〜10μm(より好ましくは平均粒径が0.1〜5μm)である金属粉であっても良いし、一方向の長さが0.001〜10μmである箔やロッド、ワイヤーであっても良い。
(金属−空気全固体二次電池について)
次に、本実施形態による上述の複合電解質膜を用いた固体電解質金属−空気全固体二次電池について説明する。この金属−空気全固体二次電池は、空気極と、金属を含む負極材料圧紛体もしくは負極シート(金属極)と、上述の複合電解質膜(二次電池用電解質膜)とを備える。
この金属−空気全固体二次電池における複合電解質膜の厚さは、水酸化物イオンを伝導するという作用を十分に発揮させ、短絡を防ぐため、おおむね0.01mm以上であることが好ましい。但し、上記複合電解質膜の厚さが厚くなりすぎると、実抵抗(電池内部抵抗)が大きくなり、電流を取り出せなくなるため、その上限を、おおむね0.3mm以下とすることが好ましい。
O2+2H2O+4e− → 4OH− ・・・(1)
上記空気極は、炭素と酸素還元触媒を含むことが好ましく、触媒付きカーボン層の使用が推奨される。上記「触媒付きカーボン層」を構成する触媒としては、酸素の還元反応を促進できるものであれば良く、例えば、PtやMnO2などが挙げられる。上記「触媒付きカーボン層」を構成するカーボン層の形態は、例えば炭素粉末の圧粉体であっても良いし、或いは、カーボンペーパーなどを用いても良い。
実施例1について説明する。複合電解質膜の作製は、図1A及び図1Bに示す手順で行った。
本実施例では、図1A及び図1Bに示すように、電解質スラリー3を以下の材料を用いて調製した。
領域(A)はZrO2、領域(B)はKOHとZrO2、PVDF、領域(C)はKOHとZrO2から構成されていた。KOH−ZrO2系固体電解質は、ZrO2を主とする粒子表面に、KOHとZrO2からなる水酸化イオン伝導層が存在している。複合電解質膜では、KOHとZrO2からなる水酸化イオン伝導層の一部にPVDFが吸着し、固体電解質粉末を結着している。
吸水性高分子を用いる場合、複合電解質膜中を水酸化物イオンが伝導するためには、結着剤である高分子材料が水酸化物イオン伝導性を有する方が良く、特に4級アンモニウムなど強塩基性を示す官能基を有するものが好ましい。スルホ基などの酸性官能基を有する高分子は、水酸化物イオン伝導を阻害するので好ましくない。
実施例2について説明する。
本実施例では、高分子材料として12%ポリフッ化ビニリデン(PVDF)溶液(溶媒;N−メチル−2−ピロリドン、株式会社クレハ製)、もしくは10%ポリベンゾイミダゾール(PBI)溶液(溶媒;ジメチルアセトアミド)を用い、固体電解質にはKOH−LDH系固体電解質を用いて複合電解質膜を作製した。複合電解質膜の作製方法および交流導電率の評価方法は、実施例1と同じである。
(実施例3)
実施例3について説明する。
実施例3では、負極シートを構成する負極スラリー5に以下の材料を用いた。酸化鉄担持カーボンと、高分子材料として12wt%PVDF溶液を用いた。酸化鉄担持カーボンの詳細は、上述の特許文献1を参照すれば良いが、その概略は以下のとおりである。鉄アセチルアセトナートのエタノール溶液にカーボンブラック(ケッチェンブラック(KB)、ライオン社製)を含浸し、空気中100℃で1日乾燥させた後、窒素ガス雰囲気中400℃で2時間熱処理し、酸化鉄を担持したカーボンを作製した。負極スラリー5の重量混合比を、以下の表1に示す。
また、金属硫化物を金属極に添加すれば放電特性が向上することが知られており、上記負極スラリー5に、さらに硫化カリウム(K2S)を添加し、負極シートを作製することも可能である。
図1Aを参照して、はじめに、電解質スラリー3を電解質用容器2、実施例1で示したガラスシャーレ(内径φ47mm)に流し込み(工程1−1)、基材1、実施例1で示したガラスシャーレ(外径φ44.7mm)を押し当てた(工程1−2)。
そのままの状態で60℃の電気炉で2〜3日間乾燥させ、その後、基材1と電解質用容器2のすき間からカッターで切り込みを入れ、基材1を電解質用容器2から取り出すことで、基材1に付着した電解質スラリー3を電解質シートとして移し取り複合電解質膜を作製した(工程1−3)。
上記の負極スラリー5を、負極用容器4に入れ(工程2−1)、上記工程で得られた複合電解質膜付き基材(基材1及び電解質スラリー3)を押し当てた(工程2−2)。
その状態で60℃の電気炉で2〜3日間乾燥させ、その後、基材1と負極用容器4のすき間からカッターで切り込みを入れ、基材1上に、電解質膜である複合電解質膜(電解質スラリー3)及び電極膜である負極シート(負極スラリー5)による接合体、つまり電極膜と電解質膜で構成される接合体(電極膜・電解質膜接合体)を移し取った(工程2−3)。以下、電極膜・電解質膜接合体を負極シート・複合電解質膜接合体ともいう。
上述の実施形態及び実施例による製造方法で得られた負極シート・複合電解質膜接合体の概観図を、図10に示す。重量比Fe:ケッチェンブラック:PVDF=1:2:2の負極スラリー5を用いた。電解質シート同様、柔軟性を有する自立膜であり、全体の厚みは約340μmである(負極シート約280μm、電解質シート約60μm)。本製造方法を用いることで、電解質と電極が剥がれることなく、良好に密着している負極シート・複合電解質膜接合体を作製できる。
以上記載した本発明の実施形態及び実施例による二次電池の製造方法は、全固体電池作製時の電極材料のバリ発生による短絡を防ぎ、且つ電解質と電極材料の良好な接触界面を形成することができる。また、電解質は電解液を用いた電池のセパレーターと同程度の厚みの自立膜として利用することが可能であり、金属極材料と空気極材料を確実に分離することができ、電池が短絡する可能性が激減し、長期間の安定した電池動作を得ることができる。
2 電解質用容器
3 電解質スラリー
4 負極用容器
5 負極スラリー
Claims (9)
- 遷移金属酸化物とアルカリ金属の水酸化物を含む水酸化物イオン伝導性を有する固体電解質粒子が隙間をもって配され、前記固体電解質粒子の少なくとも一部が結着剤により固定されているともに、当該隙間に実質的に電極よりつながる金属を含む負極材料と電子伝導性を持つ炭素材料が存在する二次電池用電解質膜と、炭素及び酸素還元触媒を含む空気極と、結着剤と少なくとも炭素及び金属とを含む負極である金属極とを有し、
前記結着剤は、網目構造を有し、
前記電解質膜と負極膜の接合界面との接触面積を大きくすべく、前記負極膜に含まれる結着剤が電解質膜に入りこみ、かつ、前記電解質膜に含まれる結着剤が負極膜に入りこみ、網目構造が形成されていて、
前記電解質膜に含まれる結着剤と前記負極膜に含まれる結着剤とがお互いに侵入しあっている構成とされている
ことを特徴とする金属−空気全固体二次電池。 - 遷移金属酸化物とアルカリ金属の水酸化物を含む水酸化物イオン伝導性を有する固体電解質粒子が隙間をもって配され、前記固体電解質粒子の少なくとも一部が結着剤により固定されているともに、当該隙間に実質的に電極よりつながる金属を含む負極材料と電子伝導性を持つ炭素材料が存在する二次電池用電解質膜と、炭素及び酸素還元触媒を含む空気極と、結着剤と少なくとも炭素及び金属とを含む負極である金属極とを有し、
前記結着剤は、炭素とフッ素と水素を含むフッ素系高分子、もしくは炭素と窒素と水素を含む複素芳香族系高分子であり、
前記電解質膜と負極膜の接合界面との接触面積を大きくすべく、前記負極膜に含まれる結着剤が電解質膜に入りこみ、かつ、前記電解質膜に含まれる結着剤が負極膜に入りこみ、網目構造が形成されていて、
前記電解質膜に含まれる結着剤と前記負極膜に含まれる結着剤とがお互いに侵入しあっている構成とされている
ことを特徴とする金属−空気全固体二次電池。 - 電解質膜と電極膜である負極膜とからなる接合体であって、
前記電解質膜は、アルカリ金属水酸化物と、遷移金属酸化物、層状複水酸化物のうち少なくとも一種以上とを含む固体電解質と、前記固体電解質の粒子を結着する結着剤とを含み、
前記電極膜である負極膜は電極活物質と、導電剤と、前記電極活物質および前記導電剤の粒子を結着する結着剤とを含み、
前記電解質膜と負極膜の接合界面との接触面積を大きくすべく、前記負極膜に含まれる結着剤が電解質膜に入りこみ、かつ、前記電解質膜に含まれる結着剤が負極膜に入りこみ、網目構造が形成されていて、
前記電解質膜に含まれる結着剤と前記負極膜に含まれる結着剤とがお互いに侵入しあっている構成とされている
ことを特徴とする接合体。 - 前記電解質膜の表面に、電極活物質と、導電剤と、結着剤とを含むスラリーが乾燥状態で積層された構造であることを特徴とする請求項3に記載の接合体。
- 前記アルカリ金属水酸化物はKOHであることを特徴とする請求項3または4に記載の接合体。
- 前記遷移金属酸化物はZrO2であることを特徴とする請求項4または5に記載の接合体。
- 前記固体電解質の粒子を結着する結着剤と、前記電極活物質および前記導電剤の粒子を結着する結着剤が同一の材料であることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の接合体。
- 請求項3〜7のいずれかに記載の接合体と、炭素及び酸素還元触媒を含む空気極と、を有することを特徴とする金属−空気全固体二次電池。
- 電解質スラリーの上部から基材を押し当てて、当該状態で前記電解質スラリーを乾燥させることで、遷移金属酸化物又は層状複水酸化物とアルカリ金属の水酸化物を含む水酸化物イオン伝導性を有する固体電解質粒子と、結着剤を含む電解質スラリーと、を用いた電解質膜を作製する電解質膜作製工程と、
前記電解質膜作製工程で得られた電解質膜を負極スラリーの上部から押し当てて、当該状態で前記負極スラリーを乾燥させることで、負極膜と電解質膜とからなる接合体を作製する接合体作製工程と、を備え、
前記電解質膜及び負極膜に、結着剤を予め配合しておき、
前記電解質膜と負極膜の接合界面との接触面積を大きくすべく、前記負極膜に含まれる結着剤を電解質膜に入り込ませ、かつ、前記電解質膜に含まれる結着剤を負極膜に入り込ませて、網目構造を形成することとし、
前記電解質膜に含まれる結着剤と前記負極膜に含まれる結着剤とがお互いに侵入しあっている構成としている
ことを特徴とする接合体の製造方法。
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