以下、本発明の実施の形態および変形例について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態および変形例においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態に係る湿式画像形成装置の概略図である。図1を参照して、本実施の形態に係る湿式画像形成装置について説明する。
図1に示すように、本実施の形態に係る湿式画像形成装置100は、後述する感光体20上の静電潜像を現像することによってトナー像を形成し、かつ、形成されたトナー像を記録媒体90に転写する画像形成ユニット1、および記録媒体90に転写されたトナー像93を記録媒体90上に定着させるまでの各処理を行なう定着手段2を備える。
画像形成ユニット1は、液体現像装置10、感光体20、帯電装置21、露光装置22、感光体用クリーニング装置23、中間転写体30、中間転写体用クリーニング装置31装置および転写ローラー40を含む。
液体現像装置10は、液体現像剤を収容する現像槽11、供給ローラー12、受け渡しローラー13、現像ローラー14および帯電装置15を有する。供給ローラー12は、現像槽11内の液体現像剤に接触するように設けられている。供給ローラー12がAR12方向に回転することによって、液体現像剤は供給ローラー12の表面に汲み上げられる。液体現像剤は、供給ローラー12の表面上に付着した状態で保持されるとともに、供給ローラー12の回転によって、供給ローラー12と受け渡しローラー13とが相互に対向している部分に向かって搬送される。
供給ローラー12の表面上の液体現像剤は、ドクターブレード(不図示)によって余剰の分量が掻き落とされた状態で、供給ローラー12から受け渡しローラー13に受け渡される。液体現像剤は、受け渡しローラー13の表面上に担持されるとともに、受け渡しローラー13が矢印AR13方向に回転することによって、受け渡しローラー13と現像ローラー14とが相互に対向している部分に向かって搬送される。
その後、受け渡しローラー13の表面上の液体現像剤は、受け渡しローラー13から矢印AR14方向に回転している現像ローラー14に受け渡される。液体現像剤は、現像ローラー14の表面上に担持されるとともに、現像ローラー14の回転によって、感光体20と現像ローラー14の接点である現像位置P1に向かって搬送される。なお、受け渡しローラー13の表面に残留した液体現像剤は、クリーニングブレード(不図示)によって受け渡しローラー13の表面から除去される。
以上のような工程を経て、膜厚が長手方向において均一になるように調整された液体現像剤が、液体現像装置10の現像ローラー14に担持される。液体現像剤は、現像ローラー14の表面上において薄層を形成する。薄層を形成した液体現像剤中のトナー粒子は、上述の現像位置P1に到着する前に帯電装置15によって所定の極性(たとえば正極)に帯電される。
感光体20は、表面に感光体層(不図示)が形成された円筒形状を有し、矢印AR20方向に回転する。感光体20の外周には、中間転写体30、感光体用クリーニング装置23、帯電装置21、露光装置22および液体現像装置10が感光体20の回転方向に沿って順次配置される。
帯電装置21は、感光体20の表面を所定の電位に帯電させる。露光装置22は、感光体20の表面に所定の画像情報に基づいた光を照射し、照射領域内の帯電レベルを低下させて静電潜像を形成する。液体現像装置10は、静電潜像が形成された感光体20の表面に上述の現像ローラー14によって液体現像剤を供給する。これにより、液体現像剤によって静電潜像が現像され、この結果、感光体20の表面にトナー像が形成される。
なお、現像ローラー14の表面に残留した液体現像剤は、クリーニングブレード(不図示)によって現像ローラー14の表面から除去される。
トナー像を形成する際にあっては、トナー粒子と同極性の現像バイアス電圧が電源(不図示)から液体現像装置10の現像ローラー14に印加される。これにより、感光体20上の静電潜像の電位と現像ローラー14の電位とのバランスで生じた電界に従って液体現像剤中のトナー粒子が感光体20の潜像部分に静電吸着され、感光体20上の静電潜像が現像される。この結果、感光体20の表面には静電潜像の形状に対応したトナー像が形成される。
中間転写体30は、感光体20と対向するように配置されており、感光体20と接触しながら矢印AR30方向に回転する。感光体20上に担持されたトナー像は、中間転写体30とのニップ領域(転写位置N1)に移動し、転写位置N1において中間転写体30に転写される。
感光体20上に担持されたトナー像が転写される際にあっては、トナー粒子と逆極性の転写バイアス電圧が電源(不図示)から中間転写体30に印加される。これにより、転写位置N1における中間転写体30と感光体20との間に電界が形成され、感光体20上のトナー像が中間転写体30に転写される。中間転写体30に転写されたトナー像は、記録媒体90に転写されるまで中間転写体30上に担持される。
なお、トナー像が中間転写体30に転写されると、感光体用クリーニング装置23は、感光体20上の残存トナーを除去する。これにより、次の画像形成を実行することが可能になる。
転写ローラー40は、記録媒体90の搬送経路を挟んで中間転写体30に対向するように配置されており、記録媒体90を介して接触回転する。転写ローラー40は、中間転写体30に圧接されることによって中間転写体30との間にニップ部(転写位置N2)を形成する。
中間転写体30に担持されたトナー像は、転写位置N2において記録媒体90の搬送方向(図中矢印AR90方向)に沿って搬送された記録媒体90の転写面91に転写される。記録媒体90は、この転写のタイミングに合わせて転写位置N2へ搬送される。
中間転写体30に担持されたトナー像が記録媒体90に転写される際にあっては、転写ローラー40に電源(不図示)からトナー粒子と逆極性の転写バイアス電圧が印加される。これにより、中間転写体30と転写ローラー40との間に電界が形成されて、中間転写体30と転写ローラー40との間に搬送された記録媒体90の転写面91に中間転写体30上のトナー像が移動する。この結果、記録媒体90の転写面91上にトナー像93が転写される。トナー像93が転写された記録媒体90は、定着手段2に向けて搬送される。
なお、トナー像が記録媒体90の転写面91に転写されると、中間転写体用クリーニング装置31は、中間転写体30上の残存トナーを除去する。これにより、次の画像形成を実行することが可能になる。
ここで、本実施の形態に用いられる液体現像剤は、溶媒であるキャリア液と、着色されたトナー粒子とを含有している。液体現像剤には、分散剤および荷電制御剤などの添加剤が適宜選択され添加されていてもよい。
キャリア液としては、キャリア液中で荷電したトナー粒子を電界によって移動させるために絶縁性溶媒が用いられる。絶縁性溶媒としては、たとえば、イソパラフィン系のアイソパー(G、H、L、Mなど)(エクソンモビール社製)、IPソルベント(1620、2028、2835など)(出光興産社製)や、パラフィン系のモレスコホワイト(P−40,P−70,P−120)(松村石油研究所製)を挙げることができる。また、シリコンオイル、ミネラルオイルを用いることも可能である。
上記のようなキャリア液は、常温では揮発しない溶媒、あるいは常温で揮発する溶媒に分類することができる。本実施の形態にあっては、常温では揮発しない溶媒を低揮発性キャリア液、常温で揮発する溶媒を高揮発性キャリア液と称して区別する。
低揮発性キャリア液として、具体的には、モレスコホワイトP−40(引火点:142℃)、モレスコホワイトP−120(引火点:198℃)、IPソルベント2028(引火点:86℃)、IPソルベント2835(引火点:139℃)、アイソパーM(引火点95℃)等を用いることができる。本実施の形態においては、引火点70℃以上の上記のような溶媒が低揮発性キャリアに相当する。
IPソルベント2028は、常温において若干揮発するが、非接触加熱手段60にてトナー像を約100℃に加熱した状態であってもその揮発には数十秒を要する。このため、本実施の形態にあっては、トナー像93を定着させる際にIPソルベント2028を十分に揮発させることができないため、IPソルベント2028は低揮発性キャリアに属することとする。
一方、高揮発性キャリアとして、具体的には、アイソパーL(引火点66℃)、アイソパーH(引火点54℃)、アイソパーG(引火点43℃)、IPソルベント1620(引火点:49℃)等を用いることができる。
非接触加熱手段60にてトナー像を約100℃に加熱した状態にあっては、アイソパーLはトナー像から大部分が揮発する。
トナー粒子は、樹脂材料と、着色のための顔料または染料とから構成される。樹脂材料は、顔料または染料を樹脂材料中に均一に分散させる機能と、トナー粒子が記録媒体90に定着される際のバインダーとしての機能を有している。樹脂材料としては、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、または、ポリウレタン樹脂等の、熱可塑性を有する樹脂材料を用いることができる。トナー粒子に用いる樹脂材料としては、これらのうちから選択された複数の樹脂材料が、混合された状態で用いられても良い。
トナーを着色するために用いられる顔料または染料としては、一般的に市販されているものを用いることができる。顔料としては、カーボンブラック、ベンガラ、酸化チタン、シリカ、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、スカイブルー、ベンジジンイエロー、または、レーキレッドD等を用いることができる。染料としては、ソルベントレッド27、またはアシッドブルー9等を用いることができる。
液体現像剤の調製方法としては、一般に用いられる方法を用いることができる。たとえば、まず、樹脂材料と顔料とを所定の配合比で加圧ニーダーまたはロールミルなどを用いて溶融および混練し、次に、樹脂材料と顔料とを均一に分散させることによって得られた分散体をジェットミル等によって微粉砕する。次に、微粉砕によって得られた微粉末を風力分級機などにより分級する。これにより、所定の粒径を有する着色トナーが得られる。次に、得られた着色トナーとキャリア液としての絶縁性液体とを所定の配合比で混合する。この混合物をボールミル等の分散手段により均一に分散させる。以上の方法によって、液体現像剤が得られる。
液体現像剤中におけるトナー粒子の体積平均粒子径は、0.1μm以上5μm以下であることが好ましい。液体現像剤中におけるトナー粒子の体積平均粒子径が0.1μm以上である場合には、トナー粒子は、静電潜像を現像しやすくなる。また、液体現像剤中におけるトナー粒子の体積平均粒子径5μm以下である場合には、トナー画像の品質が向上する。
液体現像剤の質量に対するトナー粒子の質量の割合は、10%以上50%以下であることが好ましい。液体現像剤の質量に対するトナー粒子の質量の割合が10%以上である場合には、トナー粒子の沈降が生じにくく、長期保管時においてトナー粒子が経時的に高いい安定性を有し、また、所望の画像濃度を得るために必要な液体現像剤の量を低減することができる。これにより、トナー画像を定着させる際に多くのキャリア液を乾燥させる必要がなくなり、キャリア液から多くの蒸気が発生することを防止できる。液体現像剤の質量に対するトナー粒子の質量の割合が50%以下である場合には、液体現像剤の粘度が適切な値となり、製造時における取扱いが良好となる。
液体現像剤の粘度は、25℃において、0.1mPa・s以上、10000mPa・s以下であるとよい。液体現像剤の粘度が10000mPa・s以下であると、液体現像剤を撹拌したり液体現像剤を送液したりする際の液体現像剤の取り扱いが容易となり、均一な液体現像剤を得るための各装置への負担が軽減される。
定着手段2は、非接触加熱手段60、帯電手段70、除去手段80および加圧加熱手段50を含む。定着手段2は、記録媒体90の搬送経路において転写位置N2の下流側に位置する。記録媒体90の搬送経路に沿って非接触加熱手段60および帯電手段70の下流側に、除去手段80、加圧加熱手段50がこの順に配置される。
ここで、非接触加熱手段60とは、記録媒体90の転写面91に接触せずに、記録媒体90および転写面91上のトナー像93を加熱可能な加熱部材である。また、帯電手段70は、後述する非接触加熱手段60のベルト部材63およびコロナ帯電器71を含む。
非接触加熱手段60は、記録媒体90の搬送方向において帯電手段70が設けられた位置と同じ位置に設けられている。具体的には、非接触加熱手段60およびコロナ帯電器71は、記録媒体90の搬送経路を挟んで互いに対向するように配置され、コロナ帯電器71が記録媒体90の転写面91側に配置され、非接触加熱手段60が記録媒体90の転写面91の反対に位置する裏面92側に配置される。
非接触加熱手段60、支持ローラー61、62およびベルト部材63を含む。支持ローラー61、62は記録媒体の搬送方向に沿って互いに離隔して配置される。ベルト部材63は、環状のベルトであり、支持ローラー61、62に張架される。
支持ローラー61、62の一方は、駆動機構(不図示)に接続され、駆動回転される。当該駆動回転に伴って、ベルト部材63は矢印AR63方向に回転する。また、支持ローラー61、62の他方は、ベルト部材63を介して従動回転される。なお、ベルト部材63の走行安定性を向上させるために、別途テンションローラー等が設けられてもよい。
支持ローラー61にはヒーターランプ61Hが内蔵されている。ベルト部材63は、ヒーターランプ61Hが内蔵された支持ローラー61によって加熱される。この際ヒーターランプ61Hは、制御手段(不図示)によって所定の温度に制御され、これによりベルト部材63の表面温度も所定の温度(たとえば80℃〜200℃)に制御される。
ベルト部材63は、記録媒体90の転写面91と反対側の裏面92に摺接するように、記録媒体90の裏面92側に配置される。これにより、記録媒体90および転写面91上のトナー像93がベルト部材63によって裏面92側から加熱される。また、ベルト部材63は、記録媒体90の搬送方向に沿った下流側に位置する加圧加熱手段50に記録媒体90を搬送する。
ベルト部材63は、その表面が導電性を有するように構成され、所定の安定電位に接地される。これにより、ベルト部材63は、接地電極として機能し、後述するコロナ帯電器71とともに、記録媒体上のトナー粒子を帯電させる帯電手段70として機能する。ベルト部材63としては、たとえば樹脂材料と導電性粒子とを含む導電性ベルトを採用することができる。
コロナ帯電器71は、帯電ワイヤ72およびシールド73を含む。コロナ帯電器71は、シールド73に帯電バイアス電圧が印加された状態で、帯電ワイヤ72に高電圧を印加することによりコロナ放電を発生させることができる。当該コロナ放電によって、転写面に91に転写されたトナー像93に含まれるトナー粒子を帯電させることができる。
転写面91に転写されたトナー像93がベルト部材63を介して加熱されることによりトナー軟化温度以上となった状態で帯電するように、コロナ帯電器71は、ベルト部材63における搬送方向の下流寄りにベルト部材63と対向して配置されることが好ましい。
コロナ帯電器71は、転写前のトナーの帯電極性と同極性の電荷をトナー像に付与することが好ましい。このため、コロナ帯電器71には、トナーの帯電極性と同極性の帯電バイアス電圧が印加されることが好ましい。
このように、非接触加熱手段60およびコロナ帯電器71を対向配置することにより、記録媒体90の転写面91に転写されたトナー像93に含まれるトナー粒子を非接触加熱手段60が加熱している時に、帯電手段70は、当該トナー像93を帯電させることができる。これにより、軟化されたトナー粒子同士が近接し一体化(膜化)され、トナー膜が形成される。
なお、トナー粒子を確実に帯電させ、トナー膜を確実に形成するために、複数のコロナ帯電器71が、ベルト部材63に対向して配置されてもよい。
除去手段80は、記録媒体90の搬送方向において、非接触加熱手段60および帯電手段70の下流側であり、かつ加圧加熱手段50よりも上流側に配置されている。除去手段80は、キャリア液除去ローラー81、与圧ローラー82およびクリーニングブレード83を有する。キャリア液除去ローラー81および与圧ローラー82は、記録媒体90の搬送経路を挟んで対向するように配置されており、記録媒体90を介して接触回転する。与圧ローラー82は、キャリア液除去ローラー81に圧接されることによってキャリア液除去ローラー81との間にニップ領域N3を形成する。
キャリア液除去ローラー81は、記録媒体90がニップ領域N3を通過する際に、非接触加熱手段60によって加熱されたトナー像93に接触して、当該トナー像93から余剰のキャリア液95を除去する。除去されたキャリア液95は、クリーニングブレード83によって掻き取られて回収される。また、与圧ローラー82は、キャリア液除去ローラー81と記録媒体90との接触性を高める。
キャリア液除去ローラー81および与圧ローラー82は、金属製芯金と、この芯金の外周に設けられたシリコーンゴム層と、このシリコーンゴム層の外周に設けられたフッ素系樹脂製離型層とを含む。
キャリア液除去ローラー81および与圧ローラー82は、各々の両端側が軸受部材(不図示)によって回動自在に支持されている。キャリア液除去ローラー81および与圧ローラー82は、カムまたはバネなどを有する圧接離隔機構(不図示)によって、記録媒体90の搬送経路において圧接可能となるように支持されている。圧接離隔機構は、キャリア液を除去可能な状態とキャリア液を除去不能な状態とを切り替えることができる。
たとえば、キャリア液に低揮発性キャリアが用いられる場合には、上述のように非接触加熱手段60にトナー像93が加熱されたとしてもキャリア液の大部分が残存することとなり、当該除去手段80によって余剰のキャリア液を除去することが好ましい。この場合には、圧接離隔機構は、記録媒体90の搬送経路においてキャリア液除去ローラー81および与圧ローラー82を圧接されるように付勢する。これにより、除去手段80は、キャリア液を除去可能な状態となる。
一方、キャリア液に高揮発性キャリアが用いられる場合には、上述のように非接触加熱手段60にトナー像93が加熱されることによりキャリア液の大部分が揮発するため、除去手段80は用いられないことが好ましい。この場合には、圧接隔離機構は、キャリア液除去ローラー81および与圧ローラー82を互いに離隔する。これにより、除去手段80は、キャリア液を除去不能な状態となる。
加圧加熱手段50は、記録媒体90の搬送経路を挟んで対向するように配置された定着ローラー51および加圧ローラー52を含む。定着ローラー51および加圧ローラー52は、各々の回転軸が互いに平行になるように配置される。定着ローラー51および加圧ローラー52の各々の軸方向の両端には、軸受部材(不図示)が設けられており、定着ローラー51および加圧ローラー52は、これらの軸受部材によって回転自在に支持されている。
加圧ローラー52には、バネなどを用いた加圧機構(不図示)がさらに設けられる。加圧ローラー52は、当該加圧機構により、定着ローラー51に対して所定の力で圧接するように、定着ローラー51が位置する側に向けて付勢されている。これにより、定着ローラー51と加圧ローラー52との間には、圧接ニップ部N4が形成される。
また、加圧ローラー52は、駆動機構(不図示)によって、所定の周速度で回転駆動される。定着ローラー51は、加圧ローラー52からの圧接摩擦力を受けて従動回転する。なお、定着ローラー51を回転駆動させて、加圧ローラー52を従動回転させてもよい。
定着ローラー51および加圧ローラー52は、それぞれヒーターランプ51Hおよびヒーターランプ52Hを内蔵する。定着ローラー51および加圧ローラー52の各々の表面温度は、所望の温度(たとえば80℃〜200℃)に制御される。
定着ローラー51および加圧ローラー52は、金属製芯金と、この芯金の外周に設けられたシリコーンゴム層と、このシリコーンゴム層の外周に設けられたフッ素系樹脂製離型層とをそれぞれ含む。
金属製芯金は、アルミ等の熱伝導率の高い部材から構成される。シリコーンゴム層は、弾性層として、圧接ニップ幅を確保するために設けられる。フッ素系樹脂製離型層は、ローラー表面の離型性を高めるために設けられる。フッ素系樹脂製離型層の厚さは、たとえば10μm〜50μmであり、その材質はたとえばPTFE(polytetrafluoroethylene)樹脂またはPFA(perfluoroalkoxy polymer)樹脂である。
加圧加熱手段50に搬送された記録媒体90は、定着ローラー51および加圧ローラー52の圧接ニップ部N4において加圧および加熱される。この際、トナー像93に含有されるトナー粒子の溶融が促進され、トナー粒子が溶融結合する。溶融結合したトナー粒子が加圧されることにより記録媒体90の転写面91にトナー像93が定着して、トナー画像が形成される。
図2は、トナー粒子の弾性率についての常用対数と温度との関係を示す図である。図3は、トナー像が記録媒体に転写された際の記録媒体等の状態を模式的に示す模式断面図である。図4は、トナー像に含まれるトナー粒子がトナー軟化温度以上に加熱された状態で帯電されている場合の記録媒体等の状態を模式的に示す模式断面図である。図2から図4を参照して、本実施の形態における湿式画像形成装置100が、定着強度および光沢度を向上させることができる理由、および、オフセットおよび裏抜けを抑制することができる理由について説明する。
なお、記録媒体としてPETフィルム等のフィルム媒体を使用した場合について説明する。ここで、フィルム媒体とは、転写面がキャリア液を浸透させない非浸透性を有する記録媒体のことを指す。
図2に示すように、一般的に、トナー粒子は、トナー軟化温度Tg以下では固体状態であり、この状態においてはトナー粒子の弾性率が高くなっている。トナー粒子の温度がトナー軟化温度Tg以上になる場合には、トナー粒子は、その弾性率が低下してガラス状からゴム状(半溶融状態)に変化する。トナー粒子の温度が融点Tm以上になる場合には、トナー粒子は、その弾性率がさらに低下して流動状態に変化する。
図3に示すように、トナー像93が記録媒体90の転写面91に転写された場合においては、トナー粒子の温度は、トナー軟化温度Tg以下であり、トナー粒子は、ガラス状になって転写面91に付着する。この際、キャリア液95中に含まれる分散剤等の添加物によってキャリア液95中のトナー粒子94は分散されており、トナー粒子94間の隙間にキャリア液が介在する。
トナー像93が転写された記録媒体90は非接触加熱手段60および帯電手段70に搬送されて、該トナー像93に含まれるトナー粒子が非接触加熱手段60によってトナー軟化温度Tg以上に加熱される。これにより、加熱されたトナー粒子は、弾性率が低下して外力によって変形しやすい状態となる。しかしながら、上述のようにトナー粒子94はキャリア液95中に分散されているため、加熱のみでは、トナー粒子94間の隙間に介在するキャリア液95によってトナー粒子94同士が一体化(膜化)することが阻害されやすくなる。
図4に示すように、非接触加熱手段60によってトナー粒子94が軟化された状態では、コロナ帯電器71および接地されたベルト部材63によって、トナー粒子94が帯電され、かつトナー粒子94が記録媒体90の転写面91に移動するように電界が形成される。このため、軟化されたトナー粒子94は、転写面91に向けて押しつける方向に作用する静電気力によって、変形されながら転写面91に引き寄せられる。
この際、トナー粒子94間の隙間に介在していたキャリア液95は、トナー像93の表層側に移動し、キャリア液95とトナー粒子94との分離が促進される。さらに、トナー粒子94同士が静電気力によって近接しその接触面積が増加することにより、トナー粒子94同士の一体化(膜化)が促進されることになる。この結果、複数のトナー粒子94が互いに一体化してトナー膜96が形成される。
このように、非接触加熱手段60および帯電手段70は、トナー粒子をトナー軟化温度以上に加熱した状態で帯電させることにより、トナー粒子とキャリア液とが互いに分離するようにトナー粒子同士を膜化させる。
上記のトナー粒子94同士の一体化(膜化)は、低揮発性キャリア液を用いた場合にも、高揮発性キャリア液を用いた場合にも共通する現象である。以下、低揮発性キャリア液を用いた場合と、高揮発性キャリア液を用いた場合とを区別して、トナー像93が記録媒体90の転写面91上に定着するまでの状態を説明する。
低揮発性キャリア液を用いた場合には、上記の非接触加熱手段60および帯電手段70の加熱および帯電によってトナー像に含まれるトナー粒子が膜化されることにより分離されたキャリア液95の一部は、除去手段80のキャリア液除去ローラー81によって除去される。この際、トナー粒子94は膜化しているため、キャリア液95中に分散されたトナー粒子94が減少しており、キャリア液除去ローラー81にトナー粒子94が付着することを抑制することができる。
また、過剰のキャリア液95が除去された記録媒体90は、加圧加熱手段50に搬送される。トナー粒子94同士が膜化して形成されたトナー膜96は、加圧加熱手段50の定着ローラー51および加圧ローラー52によって加圧および加熱されることにより、さらに強固に結合される。この際、トナー膜96の表面形状が平滑化された状態でトナー像93が転写面91上に定着する。これにより、転写面91上にトナー画像が形成される。このように、トナー粒子94同士が膜化して形成されたトナー膜96を定着させることにより、定着強度を向上させることができ、かつ、良好な光沢度を得ることができる。
また、トナー像93が加圧加熱手段50によって加圧加熱される際には、トナー粒子94同士が一体化(膜化)しているため、残存したキャリア液95中に分散されたトナー粒子94は減少している。これにより、トナー粒子94が定着ローラー51に付着されにくくなり、膜化されたトナー粒子94が転写面91に定着される。このようにトナー像93からトナー粒子94が離脱することを抑制することができる。
したがって、本実施の形態に係る湿式画像形成装置100においては、非浸透性のフィルム媒体および低揮発性キャリア液を用いることにより、トナー像を定着させる際にキャリア液が過剰に残存することで低温オフセットが発生しやすくなる環境下においても、低温オフセットを抑制することができる。
一方、高揮発性のキャリア液を用いた場合には、非接触加熱手段60によって、キャリア液95の大部分が揮発するため、除去手段80によってキャリア液95が除去されずに記録媒体90が加圧加熱手段50に搬送される。トナー粒子94同士が膜化して形成されたトナー膜96は、上述同様に平坦化され、かつ強固に結合された状態で転写面91に定着する。したがって、トナー粒子94同士が膜化して形成されたトナー膜96を定着させることにより、定着強度を向上させることができ、かつ、良好な光沢度を得ることができる。
また、定着の際には、トナー膜96を覆うキャリア液95はほとんど残存しないため、トナー膜96は、加圧加熱手段50によって溶融されやすくなる。このため、定着ローラー51および加圧ローラー52の温度を低く設定することが可能になる。この場合おいては、非接触加熱手段60および帯電手段70によって膜化されたトナー粒子が定着される前の記録媒体の温度よりも、加圧加熱手段50によって膜化されたトナー粒子が定着された後の記録媒体の温度の方が低くなることが好ましい。
また、トナー像93が加圧加熱手段50によって加圧加熱される際には、トナー粒子94同士は膜化しておりトナー膜96にはトナー粒子94間の隙間(境界部)がほとんど存在しないため、個々のトナー粒子94が定着ローラー51に接触してもその境界部から分断されにくい。これにより、トナー粒子94が定着ローラー51に付着することなく、膜化されたトナー粒子94が転写面91に定着される。
さらに、非接触加熱手段60の加熱によって揮発されなかったキャリア液は、トナー粒子94同士が膜化する際に、上述のようにトナー像93の表層側に分離される。この表層側に分離されたわずかなキャリア液は、定着の際に離型剤として機能する。このようにトナー像93からトナー粒子94が離脱することを抑制することができる。
したがって、本実施の形態に係る湿式画像形成装置100においては、非浸透性のフィルム媒体および高揮発性キャリア液を用いることにより、トナー像を定着させる際にキャリア液が不足することで高温オフセットが発生しやすくなる環境下においても、高温オフセットを抑制することができる。
以上においては、本実施の形態に係る湿式画像形成装置100において、非浸透性を有する記録媒体(フィルム媒体)を使用した場合に、特に発生しやすいオフセットを抑制することができることを説明したが、浸透性を有する記録媒体を使用した場合についても、特に発生しやすい裏抜けを抑制することができる。以下、その理由について説明する。なお、浸透性を有する記録媒体とは、転写面がキャリア液を浸透させる浸透性を有するコート紙等の紙媒体からなる記録媒体のことを指す。
一般的に、浸透性の記録媒体を加圧加熱手段によって加圧加熱を行なう場合には、トナー粒子の溶融変形に伴ってキャリア液の絞り出しが行なわれるため、当該キャリア液が記録媒体中に浸透する。ここで、浸透性の記録媒体を構成する紙繊維とキャリア液との屈折率が近いことから、紙繊維中に浸透したキャリア液は、紙繊維と空気層との界面で生じていた光散乱を低下させ、紙自体の不透明性が損なわれる。これにより、記録媒体の裏面側から転写面上のトナー画像が透けて見える裏抜けの問題が発生する。
しかしながら、本実施の形態に係る湿式画像形成装置100にあっては、上述のように、非接触加熱手段60および帯電手段70によって、トナー粒子94同士が膜化して、トナー膜96が形成される際に、キャリア液95がトナー像93の表層に分離される。これにより、トナー粒子94間の隙間に介在するキャリア液95が記録媒体90に浸透することを抑制することができ、記録媒体90に浸透するキャリア液95の総量を低減させることができる。この結果、裏抜けを抑制することができる。
特に、低揮発性のキャリア液を用いる場合には、トナー像93の表層に分離されたキャリア液95を除去手段80にて容易に除去することにより、効果的に裏抜けを抑制することができる。
以上のように本実施の形態に係る湿式画像形成装置100にあっては、キャリア液に起因する定着不良を低減させることができる。
(変形例)
図5は、本変形例に係る湿式画像形成装置の概略図である。図5を参照して、本変形例に係る湿式画像形成装置100Aについて説明する。
図5に示すように、本変形例に係る湿式画像形成装置100Aは、実施の形態1に係る湿式画像形成装置100と比較した場合に、非接触加熱手段60Aおよび帯電手段70Aの構成が相違し、その他の構成はほぼ同様である。
具体的には、本変形例に係る湿式画像形成装置100Aにあっては、記録媒体90の搬送方向(AR90)に沿って転写位置N2から順に4つの非接触加熱手段60A、帯電手段70A、除去手段80、加圧加熱手段50が配置されている。すなわち、記録媒体90の搬送方向において帯電手段70Aは、非接触加熱手段60Aと加圧加熱手段50との間に位置する。
非接触加熱手段60Aは4つ配置されており、具体的には、記録媒体90の搬送経路を挟んで互いに対向する1対の非接触加熱手段60Aが記録媒体90の搬送方向(図中AR90方向)に沿って2組並んで配置されている。これら非接触加熱手段60Aの各々は、非接触加熱ヒーター65および断熱カバー66を含む。
非接触加熱ヒーター65は、記録媒体90の搬送経路から離れて配置されており、転写面91に転写されたトナー像93に接触することなくトナー像93および記録媒体90を加熱する。
転写面91に転写されたトナー像93が加熱されることにより、トナー像93に含まれるトナー粒子が溶融して変形する。また、トナー像93に含まれるキャリア液95として、高揮発性キャリア液が用いられた場合には、その大部分が揮発する。一方、キャリア液95として低揮発性キャリア液が用いられた場合には、その大部分が揮発することなく残存する。
非接触加熱ヒーター65の加熱面の温度は、不図示の制御部によって所望の温度(たとえば300℃〜700℃)に設定される。非接触加熱ヒーター65としては、記録媒体90の転写面91に転写された黒トナーと、それ以外の部分(たとえば、記録媒体上に転写されたイエロー、マゼンタ、シアンタ等の各色のトナーまたは、トナーが転写されていない非画像形成部)との光吸収の差を考慮して、セラミックヒーター等の遠赤外線を放射するものを採用することができる。
断熱カバー66は、非接触加熱ヒーター65に対して記録媒体90の搬送経路側とは反対側から非接触加熱ヒーター65を覆うように設けられる。断熱カバー66によって、非接触加熱ヒーター65の周辺の温度が高温の状態で保持され、非接触加熱ヒーター65の加熱効率を向上させることが可能となる。断熱カバー66の材質としては、セラミックファイバー等の、高い断熱性および高い耐熱性を有するものを採用することができる。なお、断熱カバー66は、必ずしも設けられている必要はなく、これが不要な場合にはその設置が省略可能である。
なお、4つの非接触加熱手段60Aが配置される場合を例示して説明したが、これに限定されず1つ以上の非接触加熱手段60Aが配置されていればよい。たとえば、1つの非接触加熱手段60Aが、記録媒体90の転写面91側または裏面92側のいずれかに配置されていてもよい。また、複数の非接触加熱手段60Aが記録媒体90の搬送経路を挟んで千鳥状に対向配置されていてもよいし、記録媒体90の転写面91側または裏面92側のいずれかに並列して配置されていてもよく、その配置については、適宜変更することが可能である。
帯電手段70Aは、一対のコロナ帯電器71,74を含む。コロナ帯電器71,74は、非接触加熱手段60の出口部において記録媒体90の搬送経路を挟んで対向するように配置される。コロナ帯電器71、74は、記録媒体90に接触することなく、記録媒体90の転写面91および裏面92を帯電させる。
コロナ帯電器71は、帯電ワイヤ72およびシールド73を含み、コロナ帯電器74は、帯電ワイヤ75およびシールド76を含む。コロナ帯電器71,74は、シールド73,76に帯電バイアス電圧が印加された状態で、帯電ワイヤ72,75に高電圧を印加することによりコロナ放電を発生させることができる。当該コロナ放電によって、記録媒体90の転写面91ならびに裏面92および転写面91上に転写されたトナー像93に含まれるトナー粒子を帯電させることができる。
コロナ帯電器71の帯電ワイヤ72とコロナ帯電器74の帯電ワイヤ75とには互いに逆極性の高電圧が印加される。これにより、帯電ワイヤ72,75近傍で発生したコロナ電荷が記録媒体90に向かって照射される。この際、コロナ帯電器71は、記録媒体90の転写面91を転写前のトナー粒子の極性と同一の極性に帯電させ、コロナ帯電器74は、記録媒体90の裏面92をトナー粒子の極性と反対の極性に帯電させることが好ましい。
なお、記録媒体90の転写面91を転写前のトナー粒子の極性と同一の極性に帯電させ、記録媒体90の裏面92をトナー粒子の極性と反対の極性に帯電させるために、コロナ帯電器71の帯電ワイヤ72に転写前のトナー粒子の極性と同一の極性の直流高電圧を印加し、コロナ帯電器74の帯電ワイヤ75に交流高電圧を印加してもよい。
このような構成とすることにより、本変形例に係る湿式画像形成装置100Aにおいては、非接触加熱手段60Aによってトナー軟化点以上に加熱されたトナー像93を非接触加熱手段60Aよりも記録媒体90の搬送方向の下流に位置する一対のコロナ帯電器71、74により帯電させることが可能となる。これにより、トナー粒子同士を膜化させることができる。
このように本変形例に係る湿式画像形成装置100Aにおいても、実施の形態1に係る湿式画像形成装置100とほぼ同様の効果を得ることができる。また、記録媒体90の裏面92をトナー粒子の極性と反対の極性に帯電させることによって、トナー膜を転写面91にさらに静電吸着させることができ、トナー粒子とキャリア液との分離を促進することができる。
なお、本変形例では、帯電手段70Aが一対のコロナ帯電器71,74を含む場合を例示して説明したがこれに限定されず、記録媒体90の裏面92側に配置されるコロナ帯電器74が接地電極で構成されていてもよい。この場合、接地電極は、所定の安定電位に接地されており、記録媒体90の裏面92に摺接するように構成される。
(実施の形態2)
図6は本実施の形態に係る湿式画像形成装置の概略図である。図6を参照して本実施の形態に係る湿式画像形成装置100Bについて説明する。
図6に示すように本実施の形態に係る湿式画像形成装置100Bは、実施の形態1に係る湿式画像形成装置100と比較した場合に、加圧加熱手段50を備えていない点において相違し、その他の構成はほぼ同様である。
より具体的には、本実施の形態に係る湿式画像形成装置100Bの定着手段2は、非接触加熱手段60、帯電手段70および除去手段80を含む。非接触加熱手段60およびコロナ帯電器71を対向配置することにより、非接触加熱手段60および帯電手段70は、トナー粒子をトナー軟化温度以上に加熱した状態で帯電させることにより、トナー粒子とキャリア液とが分離するようにトナー粒子を膜化させ、転写面91に定着させる。
たとえば、低揮発性のキャリア液を用いた場合においては、膜化したトナー粒子が転写面91に定着された後に、トナー像の表層側へ分離されたキャリア液が除去手段80によって除去される。
一方、高揮発性のキャリア液を用いた場合においては、膜化したトナー粒子が転写面91に定着される際に、キャリア液の大部分が揮発するため余剰のキャリア液95を除去する必要がなくなり、除去手段80は用いなくてもよい。
以上のような構成とすることにより、本実施の形態に係る湿式画像形成装置100Bにおいても、非接触加熱手段60によって、記録媒体90の転写面91に転写されたトナー像93に含まれるトナー粒子をトナー軟化点以上に加熱している時に、帯電手段70は、当該トナー像93を帯電させることが可能となる。これにより、軟化されたトナー粒子同士を膜化してかつ、転写面に定着させることができる。このため、本実施の形態に係る湿式画像形成装置100Bにあっては、実施の形態1に係る湿式画像形成装置100とほぼ同様の効果が得られ、さらに加圧加熱手段を備えていない構成とすることによってオフセットをより確実に抑制することができる。
図7は、本発明の効果を検証するために行なった実験の条件および結果を示す表である。図7を参照して上述の実施の形態1、2および変形例に関して行なった検証実験について説明する。
図7に示す実施例1、3、4および比較例1から7については、実施の形態に係る湿式画像形成装置100を用いてトナー画像を形成し、比較例1から7について一部の条件を変更した。実施例2については、変形例に係る湿式画像形成装置100Aを用いてトナー画像を形成した。実施例5、6および比較例8、9については、実施の形態2に係る湿式画像形成装置100Bを用いてトナー画像を形成した。なお、比較例8、9については、実施の形態2に係る湿式画像形成装置100Bを用いたが、一部の条件を変更してトナー画像を形成した。
図7に示す条件に基づいて、実施例1から6および比較例1から9のそれぞれについて、記録媒体90に形成したトナー画像の評価を行なった。その際、トナー画像の寸法は、縦寸法を3cm、横寸法を3cmとした。また、各実施例および各比較例に共通するトナー画像の評価としては、定着強度、像乱れ、オフセットおよび光沢度を評価し、実施例4、比較例6,7については、さらに裏抜けを評価した。また、実施例5,6および比較例8,9については、実施の形態2に係る湿式画像形成装置100Bを用いており、加圧加熱手段を備えておらずオフセットを抑制することが可能であることから、オフセットの評価は行わなかった。
定着強度の評価においては、定着後の記録媒体90上のトナー画像にテープ(メンディングテープ(住友スリーエム社製))を貼り付け、テープを剥離した後にテープに付着したトナー量を目視で観察した。その際、テープにトナーが付着しなかった場合を「可」、テープにトナーが付着した場合を「不可」と判定した。
像乱れの評価においては、定着後の記録媒体上のトナー画像の乱れを目視で観察した。その際、トナー画像が乱れていない場合を「可」、トナー画像が乱れている場合を「不可」と判定した。
オフセットの評価においては、定着後の定着ローラー51へのトナー粒子の付着の有無を目視で観察した。その際、定着ローラー51にトナー粒子が付着していない場合を「可」と判定し、トナー粒子が付着していた場合を「不可」と判断した。
光沢度の評価においては、光沢度計(VG 2000、日本電色工業社製)を用い、75度鏡面光沢を測定した。トナーの膜化(一体化)の進行度の目安として、光沢度が30度以上の場合を「可」とし、30度以下の場合を「不可」と判断した。
裏抜けの評価においては、定着後の画像を裏面から観察し、転写面91上の画像の透け具合を目視で確認した。その際、定着後の画像とキャリア液を浸透させた記録媒体(コート紙)を乾燥させた状態とを比較して、当該状態と透け具合が同等である場合を「可」と判定し、当該状態よりも透け具合が悪化している場合を「不可」と判断した。
(実施例1)
実施例1については、実施の形態1に係る湿式画像形成装置を使用した。キャリア液としては、低揮発性のモレスコホワイトP−40を使用し、記録媒体90としては、厚み25μmのPETフィルムを使用した。また、2次転写後の帯電時のフィルム温度をトナー軟化温度Tgより高い90℃となるように非接触加熱手段60の温度を設定した。また、コロナ帯電器71には+5kVの電圧を印加した。定着ローラー51および加圧ローラー52の設定温度は、共に130℃に設定した。
この場合において、定着強度の評価については「可」、像乱れの評価については「可」、オフセットの評価については「可」、光沢度の評価については「可」と判定され、品質の良好なトナー画像が得られた。
(実施例2)
実施例2については、変形例に係る湿式画像形成装置を使用した。キャリア液としては、低揮発性のモレスコホワイトP−40を使用し、記録媒体90としては、厚み25μmのPETフィルムを使用した。また、2次転写後の帯電時のフィルム温度をトナー軟化温度Tgより高い90℃となるように非接触加熱手段60の温度を設定した。また、転写面91側のコロナ帯電器71には+5kVの電圧を印加し、裏面92側のコロナ帯電器74には−5kVの電圧を印加した。定着ローラー51および加圧ローラー52の設定温度は、共に130℃に設定した。
この場合において、定着強度の評価については「可」、像乱れの評価については「可」、オフセットの評価については「可」、光沢度の評価については「可」と判定され、品質の良好なトナー画像が得られた。
(実施例3)
実施例3については、実施の形態1に係る湿式画像形成装置を使用した。この際、除去手段80は除去不能の状態とした。キャリア液としては、高揮発性のアイソパーLを使用し、記録媒体90としては、厚み25μmのPETフィルムを使用した。また、2次転写後の帯電時のフィルム温度をトナー軟化温度Tgより高い100℃となるように非接触加熱手段60の温度を設定した。また、コロナ帯電器71には+5kVの電圧を印加した。定着ローラー51および加圧ローラー52の設定温度は、共に90℃に設定した。
この場合において、定着強度の評価については「可」、像乱れの評価については「可」、オフセットの評価については「可」、光沢度の評価については「可」と判定され、品質の良好なトナー画像が得られた。
(実施例4)
実施例4については、実施の形態1に係る湿式画像形成装置を使用した。キャリア液としては、低揮発性のモレスコホワイトP−40を使用し、記録媒体90としては、坪量84.9g/m2のコート紙(OKトップコート+(王子製紙))を使用した。また、2次転写後の帯電時の用紙温度をトナー軟化温度Tgより高い90℃となるように非接触加熱手段60の温度を設定した。また、コロナ帯電器71には+5kVの電圧を印加した。定着ローラー51および加圧ローラー52の設定温度は、共に130℃に設定した。
この場合において、定着強度の評価については「可」、像乱れの評価については「可」、オフセットの評価については「可」、裏抜けの評価については「可」、光沢度の評価については「可」と判定され、品質の良好なトナー画像が得られた。
(実施例5)
実施例5については、実施の形態2に係る湿式画像形成装置を使用しており、加圧加熱手段を備えていない湿式画像形成装置を使用した。キャリア液としては、低揮発性のモレスコホワイトP−40を使用し、記録媒体90としては、厚み25μmのPETフィルムを使用した。また、2次転写後の帯電時のフィルム温度をトナー軟化温度Tgより高い120℃となるように非接触加熱手段60の温度を設定した。また、コロナ帯電器71には+5kVの電圧を印加した。
この場合において、定着強度の評価については「可」、像乱れの評価については「可」、光沢度の評価については「可」と判定され、品質の良好なトナー画像が得られた。
(実施例6)
実施例5については、実施の形態2に係る湿式画像形成装置を使用しており、加圧加熱手段を備えていない湿式画像形成装置を使用した。この際、除去手段80は除去不能の状態とした。キャリア液としては、高揮発性のアイソパーLを使用し、記録媒体90としては、厚み25μmのPETフィルムを使用した。また、2次転写後の帯電時のフィルム温度をトナー軟化温度Tgより高い120℃となるように非接触加熱手段60の温度を設定した。また、コロナ帯電器71には+5kVの電圧を印加した。
この場合において、定着強度の評価については「可」、像乱れの評価については「可」、光沢度の評価については「可」と判定され、品質の良好なトナー画像が得られた。
(比較例1)
比較例1については、実施例1と比較した場合に、2次転写後の帯電時のフィルム温度をトナー軟化温度Tgよりも低い50℃となるように非接触加熱手段60の温度を設定した点において条件が相違し、その他の条件については、実施例1と同様である。
この場合において、定着強度の評価については「不可」、像乱れの評価については「不可」、オフセットの評価については「不可」、光沢度の評価については「不可」と判定された。
(比較例2)
比較例2については、実施例1と比較した場合に、コロナ帯電器71に電圧を印加しなかった点において条件が相違し、その他の条件については、実施例1と同様である。
この場合において、定着強度の評価については「不可」、像乱れの評価については「不可」、オフセットの評価については「不可」、光沢度の評価については「不可」と判定された。
(比較例3)
比較例3については、実施例3と比較した場合に、2次転写後の帯電時のフィルム温度をトナー軟化温度Tgより低い50℃となるように非接触加熱手段60の温度を設定した点において条件が相違し、その他の条件については、実施例3と同様である。
この場合において、定着強度の評価については「不可」、像乱れの評価については「可」、オフセットの評価については「可」、光沢度の評価については「不可」と判定された。
(比較例4)
比較例4については、実施例3と比較した場合に、コロナ帯電器71に電圧を印加しなかった点において条件が相違し、その他の条件については、実施例3と同様である。
この場合において、定着強度の評価については「不可」、像乱れの評価については「可」、オフセットの評価については「可」、光沢度の評価については「不可」と判定された。
(比較例5)
比較例5については、実施例3と比較した場合に、定着ローラー51および加圧ローラー52の設定温度を共に130℃に設定した点において条件が相違し、その他の条件については、実施例3と同様である。
この場合において、定着強度の評価については「可」、像乱れの評価については「可」、オフセットの評価については「不可」、光沢度の評価については「可」と判定された。
(比較例6)
比較例6については、実施例4と比較した場合に、2次転写後の帯電時の用紙温度をトナー軟化温度Tgより低い50℃となるように非接触加熱手段60の温度を設定した点において条件が相違し、その他の条件については、実施例4と同様である。
この場合において、定着強度の評価については「可」、像乱れの評価については「可」、オフセットの評価については「可」、裏抜けの評価については「不可」、光沢度の評価については「可」と判定された。
(比較例7)
比較例7については、実施例4と比較した場合に、2次転写後の帯電時の用紙温度をトナー軟化温度Tgより低い50℃となるように非接触加熱手段60の温度を設定した点およびコロナ帯電器71に電圧を印加しなかった点において条件が相違し、その他の条件については、実施例4と同様である。
この場合において、定着強度の評価については「可」、像乱れの評価については「可」、オフセットの評価については「可」、裏抜けの評価については「不可」、光沢度の評価については「可」と判定された。
(比較例8)
比較例8については、実施例5と比較した場合に、コロナ帯電器71に電圧を印加しなかった点において条件が相違し、その他の条件については、実施例5と同様である。
この場合において、定着強度の評価については「不可」、像乱れの評価については「不可」、光沢度の評価については「不可」と判定された。
(比較例9)
比較例9については、実施例6と比較した場合に、コロナ帯電器71に電圧を印加しなかった点において条件が相違し、その他の条件については、実施例6と同様である。
この場合において、定着強度の評価については「可」、像乱れの評価については「可」、光沢度の評価については「不可」と判定された。
(考察)
実施例1と比較例1,2との結果を比較して、低揮発性のキャリア液および非浸透性の記録媒体を用いた際に、非接触加熱手段による温度が低くトナー像に含まれるトナー粒子の温度がトナー軟化温度Tgよりも低い場合、またはトナー像に含まれるトナー粒子の温度がトナー軟化温度Tg以上ではあるがトナー粒子が帯電されない場合には、トナー粒子同士の一体化(膜化)が促進されず、キャリア液とトナー粒子とが分離されないため定着の際に定着強度、像乱れ、オフセット、光沢度が悪化することが考察される。
実施例3と比較例3,4との結果を比較して、高揮発性のキャリア液および非浸透性の記録媒体を用いた際に、非接触加熱手段による温度が低くトナー像に含まれるトナー粒子の温度がトナー軟化温度Tgよりも低い温度となる場合、またはトナー像に含まれるトナー粒子の温度がトナー軟化温度Tg以上ではあるがトナー粒子が帯電されない場合には、トナー粒子同士の一体化(膜化)が促進されず、キャリア液とトナー粒子とが分離されないため定着の際に定着強度、光沢度が悪化することが考察される。
実施例3と比較例5との結果を比較して、定着ローラーおよび加圧ローラーの設定温度が130℃より低く設定された高温オフセットの発生しない温度領域において、良好なトナー画像品質を得られることが考察される。
実施例4と比較例6,7との結果を比較して、低揮発性のキャリア液および浸透性の記録媒体を用いた際に、非接触加熱手段による温度が低くトナー像に含まれるトナー粒子の温度がトナー軟化温度Tgよりも低い温度となる場合、またはトナー像に含まれるトナー粒子の温度がトナー軟化温度Tg以上ではあるがトナー粒子が帯電されない場合には、トナー粒子同士の一体化(膜化)が促進されず、キャリア液とトナー粒子とが分離されないため定着の際に裏抜けが悪化することが考察される。
実施例5と比較例8との結果を比較して、低揮発性のキャリア液および非浸透性の記録媒体を用いた際に、非接触加熱手段によるトナー像に含まれるトナー粒子の温度がトナー軟化温度Tgよりも十分に高くてもトナー粒子が帯電されない場合には、トナー粒子同士の一体化(膜化)が促進されず、キャリア液とトナー粒子とが分離されないため、十分な定着強度が得られず、像乱れ、光沢度が悪化することが考察される。
実施例6と比較例9との結果を比較して、高揮発性のキャリア液および非浸透性の記録媒体を用いた際に、非接触加熱手段によるトナー像に含まれるトナー粒子の温度がトナー軟化温度Tgよりも十分に高くてもトナー粒子が帯電されない場合には、トナー粒子同士の一体化(膜化)が促進されず、キャリア液の揮発により定着強度は確保できるものの、光沢度が悪化することが考察される。
さらに、実施例1と実施例3との結果を比較して、高揮発性のキャリア液を用い場合には、非接触加熱手段に加熱によってキャリア液が揮発することにより、トナー粒子を容易に軟化させた状態で帯電させることができ、定着の際に低揮発性のキャリア液を用いた場合よりも定着ローラーおよび加圧ローラーの設定温度を低く設定できることが考察される。
また、実施例1と、実施例2および実施例5との結果を比較して、変形例に係る湿式画像形成装置100Aおよび実施の形態2に係る湿式画像形成装置100Bにおいても実施の形態1に係る湿式画像形成装置100と同様の効果が得られることが実験的にも確認されたと言える。
以上の考察および実験の結果から、記録媒体の転写面に転写されたトナー像に含まれるトナー粒子を非接触加熱手段および帯電手段によってトナー軟化温度以上に加熱された状態で帯電することで、トナー粒子同士を一体化(膜化)させることができることが実験的にも確認されたと言える。
さらに、トナー粒子同士が膜化することにより、トナー粒子間の隙間に介在するキャリア液をトナー像の表層へ移動(分離)させることができることが実験的にも確認されたと言える。
上述のように本発明の実施の形態1,2および変形例にあっては、非接触加熱手段60,60Aおよび帯電手段70,70Aによってトナー粒子が膜化されることにより分離されたキャリア液を除去手段80によって除去する場合を例示して説明したが、これに限定されず、非接触加熱手段60,60Aのみを用いて分離されたキャリア液を除去してもよい。この際、実施の形態においては、非接触加熱手段60の加熱時間を増加させるようにベルト部材の搬送速度を低下させてもよい。また、変形例においては、非接触加熱手段60Aの数を増加させてもよい。この場合には、本発明の趣旨に逸脱しない範囲内にて、非接触加熱手段60Aと帯電手段70Aの配置を適宜選択できるものとする。
また、上述のように本発明の実施の形態1,2および変形例にあっては、液体現像装置10が1つである場合を例示して説明したが、これに限定されず、2つ以上であってもよい。この場合には、最終的に形成されるトナー画像が有する所望の色に対応して適宜着色されたトナーを選択すればよい。たとえば、液体現像装置10が4つある場合には、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のトナーを用いることができる。
また、上述のように本発明の実施の形態1,2および変形例にあっては、湿式画像形成装置100,100Aが除去手段80を備えた構成としたが、高揮発性のキャリア液のみを用いてトナー画像を形成する構成とする場合には、除去手段80の設置が省略されてもよい。
また、上述のように本発明の実施の形態1,2および変形例にあっては、非接触加熱手段60が帯電手段70に対向して配置される場合および非接触加熱手段60Aが記録媒体90の搬送方向において帯電手段70Aよりも上流側に配置される場合を例示して説明したが、これに限定されず、非接触加熱手段60,60Aが記録媒体の搬送方向において帯電手段70,70Aが設けられた位置と同じ位置に設けられてもよい。
この場合にあっては、実施の形態1,2においては、接地電極としてのベルト部材63に変えて、安定電位に接地された板状電極が記録媒体90の裏面92に摺接するように配置され、非接触加熱手段60としての支持ローラー61,62およびベルト部材63に変えて、非接触加熱ヒーターが帯電手段70または板状電極に対して記録媒体90の搬送経路側とは反対側に配置されてもよい。変形例においては、非接触加熱手段60Aが一対のコロナ帯電器71,74を挟み込むように対向配置されていてもよい。このような構成としても、非接触加熱手段がトナー像を加熱している時にトナー像を帯電させることができる。
以上、本発明の実施の形態および変形例について説明したが、今回開示された実施の形態および変形例はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。