以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る排ガス採取装置を示す模式図である。図2は、実施形態1に係る採取管の周辺を拡大して示す模式図である。排ガス採取装置1は、例えば火力発電所等の排ガスGに含まれるアンモニア濃度を測定するために、排ガスGが流れる排気流路10から排ガスGを採取する装置である。
排気流路10の内部を流れる排ガスGに含まれる窒素酸化物(NOx)を取り除くために、脱硝装置が用いられている。脱硝装置は、排ガスにアンモニア(NH3)を注入し触媒に接触させることによって、窒素酸化物(NOx)を窒素(N2)および水(H2O)に分解する。
脱硝装置が排ガスG中に注入するアンモニアの一部は、窒素酸化物と反応せずに触媒を通過することがある。脱硝装置を通過した排ガスGに含まれるアンモニア(未反応のアンモニア)は、排ガスGに含まれる硫黄酸化物(SOx)と反応して硫酸水素アンモニウム(NH4HSO4)を生成する。生成された酸性硫安は、脱硝装置の下流に配置されるエアヒーターを閉塞させる可能性がある。このため、火力発電所を円滑に運転するために、脱硝装置を通過した排ガスGに含まれるアンモニア濃度を把握する必要がある。
排ガス採取装置1に採取された排ガスGのアンモニア濃度は、例えばJISK0099に規定される「排ガス中のアンモニア分析方法」に基づいて測定される。排ガス採取装置1は、採取した排ガスGを、図1に示す吸収ビン13に貯留される吸収液131に吸収させる。吸収液131は、ほう酸溶液である。そして、排ガスG中のアンモニア濃度が、インドフェノール青吸光光度法によって測定される。
図1に示すように、排ガス採取装置1は、外管3と、採取管2と、搬送管23と、吸収ビン13と、接続管24と、吸引ポンプ14と、接続管25と、ガスメータ15と、導入管21と、洗浄液ポンプ11と、接続管22と、洗浄液ビン12と、を備える。外管3は、排ガスGが流れる排気流路10の内部に一端が配置され、排気流路10の外部に他端が配置される中空部材である。外管3は、例えば円柱状であり、外周面から径方向に突出するフランジ4を備える。フランジ4は、図1に示すように、排気流路10と外管3との間の隙間を密閉している。採取管2は、排気流路10の内部に一端が配置され、排気流路10の外部に他端が配置されるように外管3を貫通している。採取管2は、図2に示すように、排気流路10の内部で開口する開口部2aと、外管3の内部に位置する外壁に設けられる孔2hと、を備える。
搬送管23は、一端が採取管2に接続されており、他端が吸収ビン13に貯留された吸収液131に浸かっている。接続管24は、吸収ビン13と吸引ポンプ14を接続している。接続管24の吸収ビン13側の端部は、内部空間に配置されており、吸収液131に浸かっていない。吸収ビン13は、搬送管23および接続管24が通過する部分を除き密閉されている。このため、吸引ポンプ14が稼働すると、吸収ビン13の内部および採取管2の内部が負圧となり、採取管2の開口部2aから排ガスGが吸引される。搬送管23は、採取管2が開口部2aから採取した排ガスGを、吸収ビン13に搬送する。吸収ビン13に搬送された排ガスGは、吸収液131を通過し、接続管25を介してガスメータ15に搬送される。ガスメータ15は、吸引ポンプ14が吸入した排ガスGの流量を測定する。
導入管21は、一端が外管3に接続され、他端が洗浄液ポンプ11に接続されている。接続管22は、一端が洗浄液ポンプ11に接続され、他端が洗浄液ビン12に貯留された洗浄液121に浸かっている。洗浄液121は、例えば純水である。このため、洗浄液ポンプ11が稼働すると、接続管22によって洗浄液121が吸い上げられ、導入管21を介して外管3の内部に洗浄液121が導入される。このため、導入管21は、外管3に洗浄液121を導入できる。
排ガスGに含まれるアンモニア濃度を測定するとき、まず吸引ポンプ14が稼働する。これにより、排ガスGが吸収液131を通過するので、排ガスGに含まれるアンモニアが吸収液131に吸収される。アンモニアを吸収された排ガスGは、ガスメータ15によって流量を測定されたのち、廃棄される。所定流量の排ガスGが採取されたのち、吸引ポンプ14が稼働した状態のまま洗浄液ポンプ11が稼働する。これにより、外管3の内部に洗浄液121が導入される。外管3の内部に導入された洗浄液121は、孔2hを通じて採取管2の内部に導入される。吸引ポンプ14が稼働しているので、採取管2の内部に導入された洗浄液121は、吸収ビン13の方向に向かって吸引される。このため、採取管2の内壁に付着していたアンモニアが洗浄液121に吸収される。その後、アンモニアを吸収した洗浄液121が吸収ビン13に搬送される。吸収ビン13は、吸収液131とともにアンモニアを吸収した洗浄液121を貯留する。その後、吸収ビン13に貯留された液体が、図示しない分析装置に搬送され、アンモニア濃度が測定される。
ところで、火力発電所の発電機が稼働している間、排ガスGが流れる排気流路10の内部の温度は350℃程度の高温に保たれるが、発電機が停止すると排気流路10の内部の温度は低下するので、採取管2が冷却される。その後、発電機が再び稼働し始めると、排ガスGが発生し、排気流路10の内部にアンモニアが供給される。アンモニアが冷却された採取管2の内壁に接触すると、アンモニアが硫黄酸化物等と反応して、硫酸水素アンモニウム、ピロ硫酸アンモニウム((NH4)2S2O7)、および硫酸アンモニウムアルミニウム(ALNH4(SO4)2)等のアンモニア化合物が採取管2の内壁に生成される可能性がある。これらのアンモニア化合物は、水に溶解しやすいため、水による洗浄で除去される。また、これらのアンモニア化合物は、高温で分解する。
上述したように、排ガスGに含まれるアンモニア濃度を測定するとき、吸引ポンプ14が稼働している状態で採取管2に洗浄液121を供給するので、採取管2に導入された洗浄液121は孔2hから吸収ビン13に向かう方向へ流れる。これにより、排ガスGに含まれるアンモニア濃度を測定する工程の中では、採取管2のうち孔2hよりも排気流路10側の部分には洗浄液121が達しにくい。このため、採取管2のうち孔2hよりも排気流路10側の部分に付着したアンモニア化合物は、洗浄液121を用いたアンモニア濃度の測定を繰り返しても、付着したままである可能性がある。
発電機が稼働している間の排気流路10の内部の温度は、350℃程度の高温である。このため、採取管2のうち孔2hよりも排気流路10側の部分に付着したアンモニア化合物は、徐々に分解してアンモニアを生成する。これにより、アンモニア化合物が分解しきらない間、アンモニア化合物から生成されたアンモニアが排気流路10内から採取される排ガスGに混ざる可能性がある。このため、アンモニア濃度の測定結果が安定するまで時間がかかる可能性があった。そこで、実施形態1に係る排ガス採取装置1は、アンモニア濃度の測定結果が安定するまで時間を短縮できることを以下で説明する。
実施形態1に係る排ガス採取装置1は、図1に示すように、温度計5と、制御部30と、補助管26と、を備える。温度計5は、図2に示すように、先端に測温部51を有するプローブ52を備えている。測温部51およびプローブ52は、採取管2の内部に挿入される。測温部51は、孔2hよりも排気流路10側に位置する採取管2の内壁の温度を測定する。温度計5の測温部51は、例えば、採取管2の開口部2aとは反対側の端部から採取管2の内部に挿入されている。採取管2の開口部2aとは反対側の端部において、温度計5と採取管2の内壁の間に生じる隙間は密閉される。図2に示すように、温度計5は、先端にばね状の測温部51を備える。これにより、測温部51が採取管2の内壁に接触しやすくなるので、温度計5は、採取管2の内壁の温度を容易に測定することができる。また、測温部51は、採取管2の内壁のうちより排気流路10側に配置されていることが望ましい。温度計5は、制御部30に接続されており、測定結果を制御部30に送信できる。
制御部30は、パーソナルコンピュータ(PC)等のコンピュータであり、入力インターフェースと、出力インターフェースと、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、内部記憶装置と、を含んでいる。入力インターフェース、出力インターフェース、CPU、ROM、RAM及び内部記憶装置は、内部バスで接続されている。制御部30は、入力信号の変化に応じて、出力信号を変化させることができる。温度計5の測定結果は、一定時間毎に内部記憶装置に記憶される。
補助管26は、一端が導入管21に接続され、他端が採取管2に接続されている。補助管26は、中間部に第1バルブ16を備える。第1バルブ16は、例えば制御部30に接続されており、制御部30の出力信号に応じて開閉する。また、搬送管23は、中間部に第2バルブ17を備える。第2バルブ17は、例えば制御部30に接続されており、制御部30の出力信号に応じて開閉する。また、制御部30は、洗浄液ポンプ11および吸引ポンプ14に接続されている。制御部30は、洗浄液ポンプ11および吸引ポンプ14を稼働または停止することができる。
排ガス採取装置1は、排ガスGを採取する前に、導入管21および外管3を通じて洗浄液121を採取管2に導入することができる。排気流路10の内部が350℃程度の高温であるため、採取管2も高温になっている。このため、採取管2に導入された洗浄液121は、蒸発して気体になる。採取管2に洗浄液121が導入され続けると、採取管2が徐々に冷却される。採取管2の内壁の温度が洗浄液121の沸点である100℃以下になると、洗浄液121が液体の状態で採取管2を通過する。採取管2の内壁に付着する可能性があるアンモニア化合物は、液体の状態の洗浄液121に溶解して、採取管2の内壁から除去される。排ガス採取装置1は、温度計5を備えているので、孔2hよりも排気流路10側に位置する採取管2の内壁に洗浄液121が液体の状態で通過することを確認できる。よって、排ガス採取装置1は、孔2hよりも排気流路10側に位置する採取管2の内壁に付着したアンモニア化合物を容易に除去することができる。このため、排ガスGの採取中に、アンモニア化合物が分解することで生成されるアンモニアが排ガスGに混ざる可能性が低くなる。したがって、排ガス採取装置1は、測定結果が安定するまでの時間を短縮することができる。
(採取管の清掃方法)
図3は、実施形態1に係る採取管の清掃方法を示すフローチャートである。排ガス採取装置1は、アンモニア濃度の測定を行う前に、採取管2を清掃することができる。まず、火力発電所の発電機が停止後に再起動される(ステップS101)。これにより、採取管2が冷却されるため、採取管2の内壁にアンモニア化合物が付着する可能性がある。
次に、温度計5の測温部51が採取管2に挿入される(ステップS102)。その後、採取管2の開口部2aとは反対側の端部において、温度計5と採取管2の内壁の間に生じる隙間は密閉される。なお、温度計5の測温部51は、ステップS101以前から、予め採取管2に挿入されていてもよい。
次に、温度計5が採取管2の内壁の温度測定を開始する(ステップS103)。温度計5は、例えば一定時間毎に測定結果を制御部30に送信する。制御部30は、温度計5から取得した測定結果を記憶する。
次に、制御部30が、温度計5の測定結果が250℃以上であるかどうかを判断する。温度計5の測定結果が250℃以上でない場合、制御部30は採取管2の内壁の温度を取得し続ける(ステップS104、No)。温度計5の測定結果が250℃以上である場合、ステップS105に進む(ステップS104、Yes)。温度計5の測定結果が250℃以上である場合、排気流路10の内部が350℃程度の高温になっている可能性が高い。排気流路10の内部が高温であれば、清掃により採取管2が冷却された後、採取管2が高温になるまでの時間が短くなる。これにより、採取管2の清掃後において採取管2の内壁にアンモニア化合物が再び付着する可能性が低減される。
次に、制御部30が、吸引ポンプ14が停止しているかどうかを判断する。吸引ポンプ14が停止している場合、ステップS106に進む(ステップS105、Yes)。吸引ポンプ14が停止していない場合(ステップS105、No)、制御部30が吸引ポンプ14を停止し(ステップS107)、その後ステップS106に進む。
次に、制御部30が、第1バルブ16および第2バルブ17の切替を行う(ステップS106)。制御部30は、第1バルブ16を開け、第2バルブ17を閉める。ステップS106の前に吸引ポンプ14は停止しているので、第2バルブ17は容易に閉められる。第1バルブ16が開けられると、導入管26が開通する。第2バルブ17が閉められると、搬送管23が封鎖される。
次に、制御部30が洗浄液ポンプ11を稼働させ、洗浄液121が導入管21に導入される(ステップS108)。これにより、洗浄液121は、導入管21を通じて外管3の内部に導入されるとともに、補助管26を通じて採取管2の内部に導入される。外管3の内部に導入された洗浄液121は、孔2hを通じて採取管2の内部に導入される。すなわち、導入管21および補助管26を通じて洗浄液121が採取管2に導入される。第2バルブ17が閉められているので、採取管2の内部に導入された洗浄液121は、排気流路10側へ移動する。排気流路10の内部が350℃程度の高温であるため、採取管2も高温になっている。このため、採取管2に導入された洗浄液121は、蒸発して気体になる。採取管2に洗浄液121が導入され続けると、採取管2の温度が徐々に低下する。
次に、制御部30が、温度計5の測定結果が100℃以下であるかどうかを判断する。温度計5の測定結果が100℃以下でない場合、ステップS108に戻り、洗浄液121の導入が継続される(ステップS109、No)。温度計5の測定結果が100℃以下である場合、ステップS110に進む(ステップS109、Yes)。温度計5の測定結果が100℃以下である場合、孔2hよりも排気流路10側に位置する採取管2の内壁に洗浄液121が液体の状態で供給されている。これにより、孔2hよりも排気流路10側に位置する採取管2の内壁に付着したアンモニア化合物が洗浄液121に吸収されて除去される。
次に、制御部30は、洗浄液ポンプ11を停止させ、採取管2の清掃を終了する(ステップS110)。以上に述べた清掃方法により、排ガス採取装置1は、孔2hよりも排気流路10側に位置する採取管2の内壁に付着したアンモニア化合物を容易に除去することができる。したがって、排ガス採取装置1は、アンモニア濃度の測定結果が安定するまでの時間を短縮することができる。
(アンモニア濃度の測定方法)
図4は、実施形態1に係る排ガス採取装置を用いたアンモニア濃度の測定方法を示すフローチャートである。図4に示すステップS201からステップS210までの工程は、図3に示したステップS101からステップS110までの工程と同じ工程であるため、ステップS201からステップS210までの説明は省略する。
ステップS210の次に、制御部30が、第1バルブ16および第2バルブ17の切替を行う(ステップS211)。制御部30は、第1バルブ16を閉め、第2バルブ17を開ける。
次に、制御部30が、温度計5の測定結果が300℃以上であるかどうかを判断する。温度計5の測定結果が300℃以上でない場合、温度計5は採取管2の内壁の温度を測定し続ける(ステップS212、No)。温度計5の測定結果が300℃以上である場合、ステップS213に進む(ステップS212、Yes)。温度計5の測定結果が300℃以上である場合、排気流路10から排ガスGを採取しても、採取管2の内壁にアンモニア化合物が付着しにくい。これにより、採取管2の清掃後において採取管2の内壁にアンモニア化合物が再び付着する可能性が低減される。
次に、制御部30は、吸引ポンプ14を稼働させる(ステップS213)。第2バルブ17が既に開けられているので、排ガスGが搬送管23を通じて吸収ビン13に搬送される。これにより、排ガスGに含まれるアンモニアが吸収液131に吸収される。
次に、制御部30が洗浄液ポンプ11を稼働させ、洗浄液121が導入管21に導入される(ステップS214)。これにより、外管3の内部に洗浄液121が導入される。外管3の内部に導入された洗浄液121は、孔2hを通じて採取管2の内部に導入される。吸引ポンプ14が稼働しているので、採取管2の内部に導入された洗浄液121は、吸収ビン13の方向に向かって吸引される。このため、採取管2の内壁に付着していたアンモニアが洗浄液121に吸収される。その後、アンモニアを吸収した洗浄液121が吸収ビン13に搬送される。吸収ビン13は、吸収液131とともにアンモニアを吸収した洗浄液121を貯留する。
次に、吸収ビン13に貯留された液体が、図示しない分析装置に搬送され、アンモニア濃度が測定される(ステップS215)。以上に述べた測定方法により、排ガス採取装置1は、孔2hよりも排気流路10側に位置する採取管2の内壁に付着したアンモニア化合物が除去された状態で、アンモニア濃度を測定することができる。したがって、排ガス採取装置1は、アンモニア濃度の測定結果が安定するまでの時間を短縮することができる。
以上述べたように、実施形態1に係る排ガス採取装置1は、排ガスGが流れる排気流路10内に一端が配置され、排気流路10の外部に他端が配置される中空部材である外管3を備える。排ガス採取装置1は、外管3を貫通し、排気流路10内に一端が配置され、排気流路10の外部に他端が配置されて、排気流路10側の端部に設けられる開口部2aと、外管3の内部に位置する外壁に設けられる孔2hと、を備える採取管2を備える。排ガス採取装置1は、外管3に洗浄液121を導入できる導入管21と、孔2hよりも排気流路10側に位置する採取管2の内壁の温度を測温部51により測定する温度計5と、備える。
これにより、排ガス採取装置1は、排ガスGを採取する前に、導入管21および外管3を通じて洗浄液121を採取管2に導入することができる。排気流路10の内部が350℃程度の高温であるため、採取管2も高温になっている。このため、採取管2に導入された洗浄液121は、蒸発して気体になる。採取管2に洗浄液121が導入され続けると、採取管2が徐々に冷却される。採取管2の内壁の温度が洗浄液121の沸点以下になると、洗浄液121が液体の状態で採取管2を通過する。採取管2の内壁に付着する可能性があるアンモニア化合物は、液体の状態の洗浄液121に溶解して、採取管2の内壁から除去される。排ガス採取装置1は、温度計5を備えているので、孔2hよりも排気流路10側に位置する採取管2の内壁に洗浄液121が液体の状態で通過することを確認できる。よって、排ガス採取装置1は、孔2hよりも排気流路10側に位置する採取管2の内壁に付着したアンモニア化合物を容易に除去することができる。このため、排ガスGの採取中に、アンモニア化合物が分解することで生成されるアンモニアが排ガスGに混ざる可能性が低くなる。したがって、排ガス採取装置1は、測定結果が安定するまでの時間を短縮することができる。
また、実施形態1に係る排ガス採取装置1は、採取管2に洗浄液121を導入できる補助管26と、補助管26に設けられる第1バルブ16と、を備える。このため、排ガス採取装置1は、外管3に洗浄液121を導入する導入管21だけを用いる場合に比較して、より早く洗浄液121を採取管2に導入することができる。また、第1バルブ16を閉めることで、採取管2が排ガスGを採取する際に、排ガスGが採取管2の孔2hを通じて導入管21の方向に導かれる可能性が抑制される。
また、実施形態1に係る排ガス採取装置1は、採取管2が開口部2aから採取した排ガスGを、採取管2の外部に搬送する搬送管23と、搬送管23に設けられる第2バルブ17と、を備える。このため、排ガス採取装置1は、搬送管23に設けられた第2バルブ17を閉めることで、採取管2に導入された洗浄液121が、搬送管23の方向へ移動することを抑制することができる。このため、排ガス採取装置1は、採取管2に導入された洗浄液121を、孔2hよりも排気流路10側に位置する採取管2の内壁に導きやすくなる。
また、実施形態1に係る採取管2の清掃方法は、導入管21および補助管26を通じて洗浄液121を採取管2に導入するステップと、温度計5の測定結果が100℃以下の場合、洗浄液121の導入を停止するステップと、を含む。これにより、温度計5の測定結果が100℃以下になるまで採取管2に洗浄液121が導入されるので、孔2hよりも排気流路10側に位置する採取管2の内壁を、洗浄液121が液体の状態で通過している可能性が高くなる。よって、採取管2の清掃方法は、孔2hよりも排気流路10側に位置する採取管2の内壁に付着したアンモニア化合物を容易に除去することができる。したがって、採取管2の清掃方法は、孔2hよりも排気流路10側に位置する採取管2の内壁に付着したアンモニア化合物を容易に除去することができる。このため、排ガスGの採取中に、アンモニア化合物が分解することで生成されるアンモニアが排ガスGに混ざる可能性が低くなる。したがって、採取管2の清掃方法は、測定結果が安定するまでの時間を短縮することができる。
(実施形態2)
図5は、実施形態2に係る排ガス採取装置を示す模式図である。図6は、実施形態2に係る採取管の周辺を拡大して示す模式図である。なお、上述した実施形態1で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
実施形態2に係る排ガス採取装置1Aは、図5に示すように、ヒーター6と、制御部30Aと、を備える。ヒーター6は、加熱部61を備え、加熱部61が採取管2の開口部2aとは反対側の端部から採取管2の内部に挿入されている。加熱部61は、図6に示すように、採取管2の内部で孔2hよりも排気流路10側に配置される。これにより、ヒーター6は、加熱部61により、孔2hよりも排気流路10側に位置する採取管2の内壁を効率的に加熱することができる。また、制御部30Aは、ヒーター6に接続されており、ヒーター6を稼働または停止できる。
ヒーター6で加熱された採取管2の内壁は、例えば、500℃以上になる。採取管2の内壁に付着する可能性のあるアンモニア化合物は、上述したように、例えば硫酸水素アンモニウム、ピロ硫酸アンモニウム、および硫酸アンモニウムアルミニウムである。硫酸水素アンモニウムの分解温度は250℃程度であり、ピロ硫酸アンモニウムの分解温度は350℃程度であり、硫酸水素アンモニウムの分解温度は500℃程度である。このため、採取管2の内壁が500℃以上に加熱された場合、採取管2の内壁に付着する可能性のあるアンモニア化合物が分解する。
排ガス採取装置1Aは、ヒーター6を備えるので、孔2hよりも排気流路10側に位置する採取管2の内壁を効率的に加熱することができる。ヒーター6で加熱し続けると、採取管2の内壁の温度が上昇する。採取管2の内壁の温度が、付着している可能性のあるアンモニア化合物の分解温度である500℃以上になると、アンモニア化合物が分解され、採取管2の内壁から除去される。排ガス採取装置1Aは、温度計5を備えているので、孔2hよりも排気流路10側に位置する採取管2の内壁の温度が500℃以上であることを確認できる。よって、排ガス採取装置1Aは、孔2hよりも排気流路10側に位置する採取管2の内壁に付着したアンモニア化合物を容易に除去することができる。このため、排ガスGの採取中に、アンモニア化合物が分解することで生成されるアンモニアが排ガスGに混ざる可能性が低くなる。したがって、排ガス採取装置1Aは、アンモニア濃度の測定結果が安定するまでの時間を短縮することができる。
また、排ガス採取装置1Aは、図5に示すように、第3バルブ19と、空気導入管27と、を備える。第3バルブ19は、例えば三方弁であり、接続管22に設けられている。空気導入管27は、第3バルブ19によって接続管22から分岐して設けられている。空気導入管27の一端は第3バルブ19に接続され、他端は開口している。第3バルブ19は、制御部30Aに接続されている。第3バルブ19は、制御部30Aにより、洗浄液ポンプ11と洗浄液ビン12とを接続する洗浄液導入状態、または洗浄液ポンプ11と空気導入管27とを接続する空気導入状態のいずれかの状態に保たれる。第3バルブ19が空気導入状態のときに洗浄液ポンプ11が稼働すると、空気導入管27に空気が導入される。なお、空気導入管27は、導入する空気に含まれる不純物を除去するために、フィルターを備えていることが望ましい。
(採取管の清掃方法)
図7は、実施形態2に係る採取管の清掃方法を示すフローチャートである。排ガス採取装置1Aは、アンモニア濃度の測定を行う前に、採取管2を清掃することができる。まず、火力発電所の発電機が停止後に再起動される(ステップS301)。これにより、採取管2が冷却されるため、採取管2の内壁にアンモニア化合物が付着する可能性がある。
次に、温度計5の測温部51およびヒーター6の加熱部61が採取管2に挿入される(ステップS302)。その後、採取管2の開口部2aとは反対側の端部において、温度計5と採取管2の内壁の間に生じる隙間は密閉される。なお、温度計5の測温部51およびヒーター6の加熱部61は、ステップS301以前から、予め採取管2に挿入されていてもよい。
次に、温度計5が採取管2の内壁の温度測定を開始する(ステップS303)。温度計5は、例えば一定時間毎に測定結果を制御部30Aに送信する。制御部30Aは、温度計5から取得した測定結果を記憶する。
次に、制御部30Aが、温度計5の測定結果が250℃以上であるかどうかを判断する。温度計5の測定結果が250℃以上でない場合、制御部30Aは採取管2の内壁の温度を取得し続ける(ステップS304、No)。温度計5の測定結果が250℃以上である場合、ステップS305に進む(ステップS304、Yes)。温度計5の測定結果が250℃以上である場合、排気流路10の内部が350℃程度の高温になっている可能性が高い。排気流路10の内部が高温であれば、清掃により採取管2が冷却された後、採取管2が高温になるまでの時間が短くなる。これにより、採取管2の清掃後において採取管2の内壁にアンモニア化合物が再び付着する可能性が低減される。
次に、制御部30Aが、吸引ポンプ14が停止しているかどうかを判断する。吸引ポンプ14が停止している場合、ステップS306に進む(ステップS305、Yes)。吸引ポンプ14が停止していない場合(ステップS305、No)、制御部30Aが吸引ポンプ14を停止し(ステップS307)、その後ステップS306に進む。
次に、制御部30Aが、第1バルブ16および第2バルブ17の切替を行う(ステップS306)。制御部30Aは、第1バルブ16を開け、第2バルブ17を閉め、第3バルブ19を空気導入状態にする。ステップS306の前に吸引ポンプ14は停止しているので、第2バルブ17は容易に閉められる。第1バルブ16が開けられると、導入管26が開通する。第2バルブ17が閉められると、搬送管23が封鎖される。
次に、制御部30Aが洗浄液ポンプ11を稼働させ、空気導入管27を通じて導入管21に空気が導入される(ステップS308)。これにより、空気が、導入管21を通じて外管3の内部に導入されるとともに、補助管26を通じて採取管2の内部に導入される。外管3の内部に導入された空気は、孔2hを通じて採取管2の内部に導入される。すなわち、導入管21および補助管26を通じて空気が採取管2に導入される。第2バルブ17が閉められているので、採取管2の内部に導入された空気は、排気流路10側へ移動する。これにより、採取管2の内部に、排気流路10側に向かう空気の流れが形成される。
次に、制御部30Aがヒーター6を稼働させ、採取管2の内壁が加熱される(ステップS309)。これにより、採取管2の内壁に付着したアンモニア化合物の分解が促進される。
次に、制御部30Aが、温度計5の測定結果が500℃以上であるかどうかを判断する。温度計5の測定結果が500℃以上でない場合、ステップS309に戻り、ヒーター6による加熱が継続される(ステップS310、No)。温度計5の測定結果が500℃以上である場合、ステップS311に進む(ステップS310、Yes)。温度計5の測定結果が500℃以上である場合、孔2hよりも排気流路10側に位置する採取管2の内壁に付着したアンモニア化合物が十分に分解される。また、アンモニア化合物が分解して生成されるアンモニアは、空気の流れによって排気流路10に排出される。これにより、孔2hよりも排気流路10側に位置する採取管2の内壁に付着したアンモニア化合物が除去される。
次に、制御部30Aは、ヒーター6を停止させる(ステップS311)。次に、制御部30Aは、洗浄液ポンプ11を停止させ、採取管2の清掃を終了する(ステップS312)。以上に述べた清掃方法により、排ガス採取装置1Aは、孔2hよりも排気流路10側に位置する採取管2の内壁に付着したアンモニア化合物を容易に除去することができる。したがって、排ガス採取装置1Aは、アンモニア濃度の測定結果が安定するまでの時間を短縮することができる。
(アンモニア濃度の測定方法)
図8は、実施形態2に係る排ガス採取装置を用いた採取方法を示すフローチャートである。図8に示すステップS401からステップS412までの工程は、図7に示したステップS301からステップS312までの工程と同じ工程であるため、ステップS401からステップS412までの説明は省略する。
ステップS412の次に、制御部30Aが、第1バルブ16および第2バルブ17の切替を行う(ステップS413)。制御部30Aは、第1バルブ16を閉め、第2バルブ17を開ける。
次に、制御部30Aが、温度計5の測定結果が300℃以上であるかどうかを判断する。温度計5の測定結果が300℃以上でない場合、温度計5は採取管2の内壁の温度を測定し続ける(ステップS414、No)。温度計5の測定結果が300℃以上である場合、ステップS415に進む(ステップS414、Yes)。温度計5の測定結果が300℃以上である場合、排気流路10から排ガスGを採取しても、採取管2の内壁にアンモニア化合物が付着しにくい。これにより、採取管2の清掃後において採取管2の内壁にアンモニア化合物が再び付着する可能性が低減される。
次に、制御部30Aは、吸引ポンプ14を稼働させる(ステップS415)。第2バルブ17が既に開けられているので、排ガスGが搬送管23を通じて吸収ビン13に搬送される。これにより、排ガスGに含まれるアンモニアが吸収液131に吸収される。
次に、制御部30Aが洗浄液ポンプ11を稼働させ、洗浄液121が導入管21に導入される(ステップS416)。これにより、外管3の内部に洗浄液121が導入される。外管3の内部に導入された洗浄液121は、孔2hを通じて採取管2の内部に導入される。吸引ポンプ14が稼働しているので、採取管2の内部に導入された洗浄液121は、吸収ビン13の方向に向かって吸引される。このため、採取管2の内壁に付着していたアンモニアが洗浄液121に吸収され、アンモニアを含む洗浄液121が吸収ビン13に搬送され、吸収液131とともに貯留される。
次に、吸収ビン13に貯留された液体が、図示しない分析装置に搬送され、アンモニア濃度が測定される(ステップS417)。以上に述べた測定方法により、排ガス採取装置1Aは、孔2hよりも排気流路10側に位置する採取管2の内壁に付着したアンモニア化合物が除去された状態で、アンモニア濃度を測定することができる。したがって、排ガス採取装置1Aは、アンモニア濃度の測定結果が安定するまでの時間を短縮することができる。
以上述べたように、実施形態2に係る排ガス採取装置1Aは、採取管2の内部で孔2hよりも排気流路10側に配置される加熱部61を備えるヒーター6を備える。排ガス採取装置1Aは、ヒーター6を備えるので、孔2hよりも排気流路10側に位置する採取管2の内壁を効率的に加熱することができる。ヒーター6で加熱し続けると、採取管2の内壁の温度が上昇する。採取管2の内壁の温度が、付着している可能性のあるアンモニア化合物の分解温度以上になると、アンモニア化合物が分解され、採取管2の内壁から除去される。排ガス採取装置1Aは、温度計5を備えているので、孔2hよりも排気流路10側に位置する採取管2の内壁の温度がアンモニア化合物の分解温度以上であることを確認できる。よって、排ガス採取装置1Aは、孔2hよりも排気流路10側に位置する採取管2の内壁に付着したアンモニア化合物を容易に除去することができる。このため、排ガスGの採取中に、アンモニア化合物が分解することで生成されるアンモニアが排ガスGに混ざる可能性が低くなる。したがって、排ガス採取装置1Aは、アンモニア濃度の測定結果が安定するまでの時間を短縮することができる。
また、実施形態2に係る採取管2の清掃方法は、開口部2aから排気流路10の内部に排出されるように空気を採取管2に導入するステップと、ヒーター6によって採取管2を加熱するステップと、温度計5の測定結果が500℃以上の場合、ヒーター6による加熱を停止するステップと、ヒーター6による加熱が停止した後、空気の採取管2への導入を停止するステップと、を含む。これにより、温度計5の測定結果がアンモニア化合物の分解温度である500℃以上の状態で採取管2に空気が導入されるので、孔2hよりも排気流路10側に位置する採取管2の内壁に付着する可能性のあるアンモニア化合物が分解する。また、採取管2に導入される空気は、アンモニア化合物が分解して生成されるアンモニアとともに排気流路10側に排出される。よって、採取管2の清掃方法は、孔2hよりも排気流路10側に位置する採取管2の内壁に付着したアンモニア化合物を容易に除去することができる。このため、排ガスGの採取中に、アンモニア化合物が分解することで生成されるアンモニアが排ガスGに混ざる可能性が低くなる。したがって、実施形態2に係る採取管2の清掃方法は、測定結果が安定するまでの時間を短縮することができる。