JP6029726B1 - 内燃機関の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】複数気筒を有する内燃機関に於いて、気筒ごとの燃焼状態を精度よく推定することのできる内燃機関の制御装置を提供する。【解決手段】上死点においてピストンにかかる力によるトルクが発生しないことを利用して外部負荷トルクを推定する。上死点が標本点上に存在しない場合でも、上死点近傍における複数の標本点での演算を行い、線形近似や多項式近似を利用して上死点上の値を求めることにより外部負荷トルクの誤差を低減させ、高精度な筒内圧及び燃焼状態を示すパラメータを推定する。【選択図】図2

Description

この発明は、内燃機関の制御装置に係り、特には内燃機関のトルクや筒内圧などの燃焼状態を推定する内燃機関の制御装置に関するものである。
内燃機関の燃費性能やエミッション性能を向上させるために、内燃機関の燃焼状態を計測し、その計測結果をフィードバックさせて制御する方法が有効である。そのためには、内燃機関の燃焼状態を正確に計測することが重要である。内燃機関の燃焼状態は筒内圧を計測することにより、正確に計測できることが広く知られている。筒内圧の計測方法では筒内圧センサ信号から直接測定する方法の他に、クランク角度信号などのエンジンにおける各機構の情報からガス圧トルクを推定する方法がある。
従来では、例えば特開2009−275618号公報(特許文献1)に、クランク角度センサの出力信号から燃焼状態を推定する燃焼状態推定装置が開示されている。特許文献1に開示された燃焼状態推定装置では、クランク角度センサの信号からクランク角速度及び角加速度を推定し、上下死点における外力トルクと推定した角加速度から求めた軸トルクとの関係により外力トルクを推定し、それを基にガス圧トルクを推定する。
特開2009−275618号公報
しかしながら、クランク角度センサの信号から得られるクランク角度とその時刻データは離散的であり、連続的な角加速度演算を行うことが出来ない。また、クランク軸とピストンの中心位置にはオフセットが存在することから上死点はクランク軸の頂点から微小にずれるため、標本点と上死点が重ならない場合が多い。そのため上死点が標本点上に存在しない場合、外部負荷トルクを推定する際に上死点上での演算を行うことが出来ない。このため、筒内圧力を推定し、筒内圧から燃焼状態を推定する場合において筒内圧波形に上死点近傍の誤差が大きくなりスパイクや段差が発生する。
この発明は、従来の内燃機関の制御装置に於ける前述のような課題を解決するためになされたものであり、複数気筒を有する内燃機関に於いて、気筒ごとの燃焼状態を精度よく推定することのできる内燃機関の制御装置を提供することを目的とするものである。
この発明に係る内燃機関の制御装置は、クランクシャフトに連結された複数の気筒を備えた内燃機関を制御する内燃機関の制御装置において、
前記内燃機関におけるクランク角度と前記クランク角度での時刻とを検出するクランク角度検出手段と、前記クランク角度検出手段から前記内燃機関の燃焼を含む期間に対応する前記クランク角度と前記時刻を読み出し、クランク角速度及び角加速度を推定する角速度及び角加速度推定手段と、前記内燃機関のピストン、コンロッド及び前記クランクシャフトを含む系の運動方程式から、燃焼により発生するトルクが零として上死点近傍の複数の標本点での演算を行い、上死点上の外部負荷トルクを推定する外部負荷トルク推定手段と、前記外部負荷トルク推定手段で推定した前記外部負荷トルクとクランク角速度及び角加速度を前記運動方程式に適用して推定した燃焼によるガス圧トルクから、前記内燃機関
の筒内圧力を推定する筒内圧力推定手段とを備えたものである。
この発明に係る内燃機関の制御装置によれば、標本点上に上死点が存在しない場合でも、上死点で燃焼により発生するトルクが零となるように精度良く演算を行うことが可能となる。このため、精度の良いガス圧トルクと共に外部負荷トルクを推定する外部負荷推定処理、燃焼パラメータ推定処理を含む内燃機関の制御装置を提供することができる。
この発明の実施の形態1に係る内燃機関の制御装置を含む内燃機関の概略構成図である。 この発明の実施の形態1に係る内燃機関の制御装置における燃焼状態推定処理部の動作を示すフローチャートである。 この発明の実施の形態1に係る内燃機関のピストンとクランクシャフトの力学的な関係を示す断面図である。 この発明の実施の形態1に係る内燃機関の制御装置での燃焼状態推定処理部の外部負荷トルク推定手段における近似方法を説明する図である。 この発明の実施の形態1に係る内燃機関の制御装置の燃焼状態推定処理部で推定した筒内圧力と他の内燃機関の制御装置の燃焼状態推定処理部により推定した筒内圧力を比較した図である。 この発明の実施の形態1に係る内燃機関の制御装置の燃焼状態推定処理部で推定した熱発生率と他の内燃機関の燃焼状態推定処理部により推定した熱発生率を比較した図である。
以下、この発明に係る内燃機関の制御装置の好適な実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る内燃機関の制御装置を含む内燃機関の概略構成図である。図1において、内燃機関1の第1気筒#1、第2気筒#2及び第3気筒#3のそれぞれの気筒で発生した燃焼ガス圧は、ピストン2の上面で受け止められ、コンロッド3を介して一つのクランクシャフト4を回転させる動力としてクランクシャフト4に伝達される。そして、クランクシャフト4の回転によって動力として出力される出力トルクに基づいて車輛が駆動される。
クランク角度センサ5は、クランクシャフト4の軸方向の前端部に取り付けられたクランク角度センサ用のシグナルロータ6の側面に対して垂直方向に設置されている。シグナルロータ6には複数の歯が刻まれており、歯の凹凸によるクランク角度センサ5とシグナルロータ6の側面との距離の変化を読み取り、矩形波の信号としてECU(Engine Control Unit)7に入力される。この矩形波の周期時間や立下り位置などによってクランク軸情報を得ることが出来る。
カムシャフト8の角度を検知するため、カム角度センサ用のシグナルロータ9の歯の位置を示すカム角度センサ10の信号をECU7に入力し、この2種類の矩形波信号の関係からクランクシャフト4の角度を検出する。カムシャフト8はクランクシャフト4とチェーン11で連結されており、クランクシャフト4が2回転する間にカムシャフト8は1回転するように構成されており、カム角度を検出することによりエンジンの行程を見極めることが出来る。
また、フライホイール12におけるリングギアについても、第2クランク角度センサ13を用いてクランク角度センサ5と同様に歯の信号を計測するようにしてもよい。これはフライホイール12の質量がシグナルロータ6が位置するエンジン前端部と比較して大きいため高周波振動が抑えられる他、シグナルロータ6よりも歯数が多く、欠け歯もないため色々な特定のクランク角度領域における標本点数が多く、精度の高い演算を行うことが出来るためである。
インマニ圧センサ14ではインテークマニホールドの圧力であるインマニ圧を測定し、大気圧センサ15では大気圧を計測する。大気圧センサ15はECU7に内蔵してもよい。
ECU7には各種センサからの信号が入力され、得られた情報から運転状態を把握し、ECU7がそれに応じて各種アクチュエータの制御を行うことにより燃費性能とエミッション性能の向上を実現する。
図2は、実施の形態1に係る内燃機関の制御装置における燃焼状態推定処理部の動作を示すフローチャートである。図2において、ECU7に設けられた燃焼状態推定処理部は大まかに分けて、クランク角度検出手段16と、クランク角度補正手段17と、角速度及び角加速度推定手段18と、外部負荷トルク推定手段19と、筒内圧力及び燃焼パラメータ推定手段20を備えて構成されている。
クランク角度検出手段16は、クランク角度センサ5における矩形波信号に現れる欠け歯の位置と、その時のカム角度センサ10で測定した矩形波信号の関係から基準となるクランク角度を検出する。そして第2クランク角度センサ13で測定した矩形波信号における基準角度からの立下り、或いは立上がりの回数とその時刻からクランク角度とその時刻を把握し、所定期間だけ記憶する。
前記所定期間は、燃焼状態を推定している対象の気筒が、燃焼により熱量を発生する期間が含まれていれば問題ないが、FFT(高速フーリエ変換)による周波数操作や角速度角加速度を推定する場合は2の乗数の標本点数で行うため、その点数を超える角度領域の時刻を記憶する必要がある。
クランク角度補正手段17は、あらかじめクランク角度検出手段16により割り付けられたクランク角度と、実際のクランク角度との誤差量を把握して補正を掛け、適正な上死点上での外部負荷トルク推定を行う。即ち、クランク角度補正手段17は、燃焼させずにクランクシャフト4を回転させ、シリンダ内部におけるクランク角度に対する筒内圧力を計測し、その圧力波形の頂点におけるクランク角度と幾何学的に推定した圧縮過程における上死点でのクランク角度との差をあらかじめ把握しておき、適正なクランク角度になるように補正を掛ける。
角速度及び角加速度推定手段18は、まず、クランク角度検出手段16により計測したクランク角度を引数とする時刻データから、燃焼状態推定の演算対象となる燃焼を含む期間の時刻データを読み出す。その時刻データを基に生成した周期関数をFFTにより周波数領域の関数に変換し、ノイズとみなす高周波成分を除去、もしくは成分量を補正する。FIR(Finite Impulse Response)フィルタや、IIR(Infinite Impulse Response)フィルタなどのデジタルフィルタによる周波数操作を用いても良い。
そして、周波数空間における代数的微分を利用して、前記クランク角度を引数とするクランク角速度及び角加速度を推定する。またはFIRフィルタやIIRフィルタなどのデジタルフィルタを用いた場合は、差分法による微分を行い、前記クランク角度を引数とするクランク角速度及び角加速度を推定する。
外部負荷トルク推定手段19は、演算対象の気筒における上死点近傍では燃焼により発生するトルクは零であるという仮定の元、上死点近傍における複数の標本点についてクランク軸周りの運動方程式から各標本点上の外部負荷トルクを推定し、線形近似または多項式近似を利用した演算を行い、上死点上での外部負荷トルクを推定する。
筒内圧力及び燃焼パラメータ推定手段20は、クランク軸周りの運動方程式に外部負荷トルク推定手段19により推定した外部負荷トルクを適用して燃焼ガス圧トルクを推定し、クランク角度とピストン2の位置関係から燃焼によってピストン2を押し下げる力を推定し、ピストン面積で割ることで筒内圧を推定する。
更に、筒内圧力と筒内容積を基にクランク角度位置に対する発生熱量を推定し内燃機関1の燃焼状態を示す燃焼パラメータである質量燃焼割合(MFB)を推定する。
次に、図1に示した本実施の形態に係る内燃機関の制御装置が燃焼状態推定処理の過程で、クランク角速度および角加速度の推定、エンジンから出力されるトルクの推定、エンジンの燃焼状態の推定を実施する方法について、図2のフローチャートを用いて具体的に説明する。
図2に於いて、ステップS201では、クランク角度センサ5から読み取った信号の欠け歯位置、及びその際のカム角度センサ10の矩形波信号からクランクシャフト4の角度位置を検出する。同時に第2クランク角度センサ13によりフライホイール12のリングギアの信号を検出する。クランク角度センサ5から読み取っているシグナルロータ6の歯は例えば36歯システムでは10[deg]間隔で並んでいるが、リングギア12は例えば4[deg]間隔の周期で歯が90歯並んでおり、より詳細な角度位置を検出することが出来る。
次に、ステップS202では演算対象の気筒について、燃焼を含む期間に対応するクランク角度と検出時刻を読み出し、クランク角度θに対する時刻のデータ系列t(θ)を構成する。このデータ系列は燃焼状態を推定している対象の気筒が、燃焼により熱量を発生する期間が含まれていることが条件であり、読み出す期間を広げ、サンプル点数を拡大して燃焼状態を推定することも可能である。
次に,ステップS203では、あらかじめピストン2の内部に筒内圧センサを設置し、モータリング計測などの方法から未燃時の筒内圧のピーク位置に対するクランク角度を検出する。未燃時はシリンダ容積が最小となる上死点において筒内圧が最大となることを利用して、その検出したクランク角度と上死点位置との差異δθを調べ、適正なクランク角位置になるように式(1)のように補正を掛ける。クランク角度θは補正後のクランク角、θout_jは補正前である検出直後のクランク角を示す。もしくはクランク角度と上死点位置との差異δθを把握するために燃焼解析装置により上死点位置を把握してもよい。
Figure 0006029726
次に、ステップS204では、クランク角度θとそれに対する時刻のデータ系列t(θ)についてインデックスをj=1,2,・・・,k,・・・,Nとする。Nは標本点数であり、FFTによる周波数処理、クランク角速度及び角加速度の推定を行う場合は2の乗数点数で行う必要がある。本実施の形態においてはFFTによる周波数処理、クランク角速度及び角加速度の推定を行う。FFTにより周波数操作を行うため、データ系列t(θ)を式(2)のように周期関数と見なせる関数x(θ)に変換する。
Figure 0006029726
ここで、αは次式(3)で示される。
Figure 0006029726
式(2)(3)から求めた周期関数x(θ)についてFFTを行い、周波数領域の関数X(ω)(|ω|≦π/Δθ)に変換する。その際にノイズが存在する周波数帯域の成分量を除去又は補正することによってノイズを低減させる。周波数成分調整を行ったX(ω)を<hat>X(ω)(Xの上に“ ^ ” を乗せた文字を文章中では<hat>Xと表記する)とおく。
次にS205では、ステップS204で周波数成分を調整して求めた<hat>X(ω)から代数的微分を行うことによりクランク角速度、角加速度を求める。
クランク角度θの関数としての角速度<dot>θ(θ)(θの上に“ ・ ” を乗せた文字を文章中では<dot>θと表記する)は式(4)から求めることが出来る。
Figure 0006029726
x(θ)のθに関する微分は、FFTにより算出した<hat>X(ω)に(i・ω)を掛けた後に逆FFTすることにより求められる(iを虚数単位とおく)。
クランク角度θjの関数としての角加速度<2dot>θ(θ)(θの上に“ ・・ ” を乗せた文字を文章中では<2dot>θと表記する)は式(5)から求めることが出来る。
Figure 0006029726
x(θ)のθに関する2階微分は、FFTにより算出した<hat>X(ω)に(i・ω)を掛けた後に逆FFTすることにより求められる。
次に、ステップS206、ステップS207では、ステップS204で推定したクランク角速度と角加速度をピストン2、コンロッド3、及びクランクシャフト4を含む系の運動方程式(6)に適用し、上死点における条件として燃焼により発生するトルクは零となることから外部負荷トルクを推定する。図3はクランクシャフト4に対して垂直なエンジンの断面図である。図3に示すように各変数を設定する。
Figure 0006029726
ここでIは慣性モ−メント、Sはピストン2の頂面の投影面積、mはピストン2の質量(往復質量)、rはクランクシャフト4の半径とする。また、iは気筒番号を示し、nは気筒数(本実施の形態はn=3)、Pcyl_iはi番気筒の筒内圧力、aはi番気筒のピストン2の往復方向の加速度、θはi番気筒のクランク角度、φはi番気筒のコンロッド3の角度を表す。また、外部負荷トルクをTloadとする。式(6)における右辺の第一項は各気筒において筒内圧変化によりピストン2を押し下げる力、ピストン2の往復慣性により発生する力が変換されたトルクを推定しており、第二項はフリクションや補機負荷、走行抵抗などエンジンの外部からクランクシャフト4にかかる負荷を外部負荷トルクとして演算を行う。なお、Riはピストン2にかかる力に対するトルク変換係数を示している。
前記式(6)のPcyl_iにおいて、燃焼が行われていない気筒の筒内圧力に関してはインマニ圧センサ14で計測した吸気行程のインマニ圧、大気圧センサ15で計測した排気行程の排気圧(大気圧)、初期筒内圧から推定することが出来、ピストン2の往復方向における加速度はクランクシャフト4の角速度から幾何学的に推定することが出来る。
b番気筒において燃焼が行われている場合、式(7)のように表すことが出来、式(7)は式(7A)のように変換出来る。この式(7A)の右辺第一項は「気筒bの燃焼によるガス圧トルク」を示し、第二項は「未燃焼の気筒におけるガス圧トルクの総和」を示している。また、第三項は、「ピストンの往復慣性により発生するトルク」を示し、第四項が「外部負荷トルク成分」となる。筒内のガス圧にピストン面積を掛けてピストン面の垂直方向に働く力が求まり、トルク変換係数Rを乗算することによってクランクシャフトにおける回転方向のトルク成分に変換される。従って、式(7A)の右辺第一項のP cylb ・S・R がガス圧トルクに相当するパラメータとなる。
Figure 0006029726
ここで、Pub_iはi番気筒の未燃時の筒内圧力を表す。式(7)はb番気筒における上死点上では式(8)として表すことが出来る。
Figure 0006029726
上記の通り未燃時の筒内圧、ピストン2の加速度は各入力情報から推定できるため、式(8)により上死点における外部負荷トルクを推定することが出来る。外部負荷トルクは1サイクルの燃焼の期間において大きな変化がないことから、本実施の形態では外部負荷トルクは1回の燃焼における演算毎に上死点で算出した値を一定値として扱う。
ただし、ピストン2がクランクシャフト4に対して微小にオフセットされており、上死点はクランク角度が零[deg]より遅角側となる。上死点が標本点上に位置しないため、式(8)から直接的にTloadを算出できないので、上死点近傍においても式(8)が成り立つと仮定し、上死点近傍における複数の標本点での演算結果の分布から近似を行い、上死点上での適正なTloadを推定する。
近似方法は上死点を跨ぐ隣接した2点間から線形近似による推定方法である式(9)で最も簡単にTloadを求めることが出来る。ここでのiは上死点直前の標本点におけるクランク角度、Δθは検出するクランク角度の周期間隔、θTDCは上死点のクランク角度を表す。
Figure 0006029726
しかし、式(8)のクランク角度に対する振る舞いが直線的でないため、精度が粗く、推定した筒内圧力波形に上死点近傍で段差が生じる。また、隣接した3点における2次近似からTloadの推定を行った場合でも3点間で大きな曲率変化がある場合には筒内圧
波形に段差が生じる。
出来る限り少ない演算量で実測した筒内圧波形との誤差を解消するために、本実施の形態では、図4のように2通りの上死点を領域に含む隣接した3点から2次近似を行い、推定したTloadの重み平均を取ることで非常に精度良くTloadを推定する。
次に、Tload推定の詳細を説明する。まず遅角側の2点間が上死点を跨ぐ場合の隣接した3点において2次近似を行う。各標本点において、式(8)から算出したTload(θ)を用いて式(10)のような二次方程式における各項の係数を式(11)から式(13)により算出する。算出した係数を適用した式(10)に上死点であるクランク角度を代入し、Tload(θTDC)を推定し、これをTload_とする。
Figure 0006029726
次に参照する標本点を遅角側にずらし、進角側の2点間が上死点を跨ぐ場合の隣接した3点において同様に2次近似を行い、Tload(θTDC)を推定する。これをTload_とする。そして式(14)にTload_、Tload_を適用し、2つの演算結果における加重平均を取り、それをTloadとして筒内圧を推定する。
Figure 0006029726
ここで、gは0≦g≦1の係数であり、基本的に0.5として扱うが適宜調整が可能とする。
次に、ステップS208では、ステップS207により推定した外部負荷トルクを、式(7)に適用することで燃焼によるガス圧トルクを推定し、ガス圧によりピストン2を押し下げる力のベクトルと、クランク角度に対してトルクがかかるベクトル(クランクシャフト4の接線方向)の関係から筒内圧力を推定する。式(7)を推定対象であるPcyl
_bについて変形すると式(15)になる。
Figure 0006029726
次に、ステップS209ではステップS208で得られた燃焼気筒の筒内圧力Pcyl_bを用いて燃焼パラメータを推定する。クランク角度毎に得られた筒内圧力Pcyl_b(θ)より、式(16)を用いてクランク角度に対するシリンダの内部の気体に与えられた熱量を示す熱発生率dQ(θ)を推定する。
Figure 0006029726
ここでκは燃料と空気の混合気の比熱比であり、具体的には1.3から1.4の値である。
次に、燃焼パラメータである質量燃焼割合MFB(θ)を求める。MFB(θ)は、熱発生率の積算値の割合であり、MFB(θ)を推定するための積算領域において、熱発生率における瞬時積算値Q(θ)を全積算値Qで割った値である。よって、MFB(θ)は、次式(17)で表される。
Figure 0006029726
図5は外部負荷トルク推定における近似処理別の推定筒内圧力波形図であり、図6は燃焼パラメータ推定における近似処理別の熱発生率波形図である。
破線で示す近似処理AはS207において線形近似により外部負荷トルクを推定した場合であり、実線で示す近似処理Bは本実施の形態における推定処理である。上死点近傍において近似処理Aでは筒内圧波形に段差が生じている。このように上死点において推定したガス圧トルクが零とならない場合、筒内圧にスパイクや段差が生じ、燃焼パラメータ推定にも影響を与える。それに対し本実施の形態における外部負荷トルク推定によれば、筒内圧力波形に不自然な段差やスパイクが解消される。
前記において説明した実施の形態1では、3気筒エンジンにおける推定処理を説明したが、4気筒エンジンについてもほぼ同様の処理で外部負荷トルクを推定することが可能である。4気筒では各気筒の上下死点における位置が重なるため、式(8)は式(18)と
なる。
Figure 0006029726
しかしながらそれぞれの気筒で燃焼により熱量が発生する期間が重なる場合は、筒内圧及び燃焼パラメータを推定する際に燃焼が重なっていない領域で推定した筒内圧の結果から圧力の変化を予測する、もしくは燃焼が重なる領域を除外して筒内圧力推定を行う必要がある。
燃焼パラメータの推定結果からMFB(θ)が50%となるクランク角度を推定し、その位置が最適になるように点火時期を制御したり、MFB(θ)が10%から80%となる期間を推定し、その値を基にEGR量を調整することで燃費性能やエミッション性能を向上させることができる。
また、これにより気筒別での筒内圧力推定から上記の制御を行うことで、各気筒が最良の燃焼を維持することが出来る。
以上のように、実施の形態1による内燃機関の制御装置によれば、精度良く外部負荷トルクを推定することが出来、筒内圧力推定において上死点近傍でも滑らかな波形となるため、燃焼パラメータ推定における精度の向上とばらつきの低減につながる。
なお、前記においてはこの発明の実施の形態1に係る内燃機関の制御装置について説明したが、この発明は、その発明の範囲において、実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
1 内燃機関、2 ピストン、3 コンロッド、4 クランクシャフト、5 クランク角度センサ、6、9 シグナルロータ、7 ECU、8 カムシャフト、10 カム角度センサ、11 チェーン、12 フライホイール、13 第2クランク角度センサ、14 インマニ圧センサ、15 大気圧センサ、16 クランク角度検出手段、17 クランク角度補正手段、18 角速度及び角加速度推定手段、19 外部負荷トルク推定手段、20 筒内圧力及び燃焼パラメータ推定手段

Claims (4)

  1. クランクシャフトに連結された複数の気筒を備えた内燃機関を制御する内燃機関の制御装置において、
    前記内燃機関におけるクランク角度と前記クランク角度での時刻とを検出するクランク角度検出手段と、
    前記クランク角度検出手段から前記内燃機関の燃焼を含む期間に対応する前記クランク角度と前記時刻を読み出し、クランク角速度及び角加速度を推定する角速度及び角加速度推定手段と、
    前記内燃機関のピストン、コンロッド及び前記クランクシャフトを含む系の運動方程式から、燃焼により発生するトルクが零として上死点近傍の複数の標本点での演算を行い、上死点上の外部負荷トルクを推定する外部負荷トルク推定手段と、
    前記外部負荷トルク推定手段で推定した前記外部負荷トルクとクランク角速度及び角加速度を前記運動方程式に適用して推定した燃焼によるガス圧トルクから、前記内燃機関の筒内圧力を推定する筒内圧力推定手段と、
    を備えたことを特徴とする内燃機関の制御装置。
  2. 前記外部負荷トルク推定手段は、上死点上の外部負荷トルクの推定を線形近似または多項式近似を利用して行うことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
  3. 前記外部負荷トルク推定手段は、上死点近傍の外部負荷トルクの分布において、上死点が進角側の2点間に存在する隣接した3点の標本点の演算値から2次近似により算出した外部負荷トルクと、上死点が遅角側の2点間に存在する隣接した3点の標本点から2次近似により算出した外部負荷トルクの加重平均を求めて最終的な外部負荷トルクを推定することを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関の制御装置。
  4. 前記クランク角度検出手段は、あらかじめ前記クランク角度検出手段により割り付けられたクランク角位置と、実際のクランク位置との誤差量を把握して補正を掛け、適正な上死点上での外部負荷トルク推定を行うクランク角度補正手段を備えたことを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の内燃機関の制御装置。
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