JP7030884B2 - 内燃機関の制御装置 - Google Patents

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Description

本願は、内燃機関の制御装置に関するものである。
内燃機関の制御装置として、例えば下記の特許文献1に記載された技術が既に知られている。特許文献1の技術では、クランク角センサの出力信号に基づいて、クランク角速度およびクランク角加速度およびクランク角躍度を算出し、クランク角躍度に基づいてクランク角度間隔の誤差を補正し、補正後のクランク角速度、クランク角加速度に基づいて筒内圧力を推定するように構成されている。そして、推定した筒内圧力(以下、推定筒内圧力と称す)に基づいて熱発生率および燃焼質量割合MFBといった燃焼パラメータを算出し、例えば算出した燃焼質量割合MFBが50%となるクランク角度(以下、MFB50%位置と称す)が予め設定された目標値に近づくように、または熱発生率が最大値となるように、点火時期およびEGR量の一方、または双方を変化させることで燃焼状態を最適に制御する。
特許文献1の技術では、高価で筒内へのセンサ装着が困難な筒内圧力センサを用いることなく、安価で一般的に広く使用されているクランク角センサを用いて筒内圧力を推定し内燃機関の燃焼制御に利用している。
特許第6012892号
しかし、特許文献1の技術においてMFB50%位置を推定するまでに、特許文献1の段落0084~0096に記載されているように、クランク角度およびクランク角加速度に基づいて燃焼により生じた燃焼ガス圧トルクを算出する処理、燃焼ガス圧トルクおよびクランク角度に基づいて燃焼している気筒(以下、燃焼気筒と称す)の推定筒内圧力を算出する処理、燃焼気筒の推定筒内圧力およびシリンダ容積および単位クランク角度当たりのシリンダ容積変化率に基づいて熱発生率を算出する処理、熱発生率に基づいてMFB50%位置を算出する処理、といった多くの処理が必要なため処理負荷が大きくなり、高性能(高価)な演算処理装置が必要となってコストが増大する課題がある。
また、燃焼気筒の推定筒内圧力を算出するまでに複数の推定処理(例えば、外部負荷トルクの推定、燃焼気筒の圧縮行程の後半~燃焼行程の前半以外の筒内圧力の推定など)があり、一つ一つの推定誤差が小さくても個々の推定誤差の影響が重なることで、推定筒内圧力の推定誤差が大きくなる懸念があることも課題である。
ところで、熱発生率及びMFBの他に、燃焼パラメータとして燃焼変動率COVが知られている。燃焼変動率COVは、図示平均有効圧IMEPの標準偏差を平均値で除算して算出され、図示平均有効圧IMEPのばらつき度合いを示す。図示平均有効圧IMEPは、エンジンの1サイクルにおける筒内圧力と筒内容積に基づいて算出され、サイクル毎の燃焼変動が小さく安定している場合は、燃焼変動率COVは小さくなり、燃焼が不安定でサイクル毎の燃焼変動が大きくなるに従って、燃焼変動率COVは大きくなる。
特許文献1の技術では、熱発生率およびMFB50%位置を算出する過程で推定筒内圧力を算出しているため、推定筒内圧力と筒内容積に基づいて図示平均有効圧IMEPを算出し、燃焼変動率COVを算出する処理を追加することも可能である。
しかし、上述したように、推定筒内圧力の算出には、複数の推定処理が必要であり、推定筒内圧力の推定誤差が大きくなるため、推定筒内圧力に基づいて算出された図示平均有効圧IMEPの誤差も大きくなる課題がある。更に、熱発生率およびMFB50%位置は、主に圧縮行程~膨張行程における推定筒内圧力の推定誤差が影響するのに対して、図示平均有効圧IMEPは、吸気行程~排気行程の1サイクル間全ての推定筒内圧力の推定誤差が影響するため、推定筒内圧力に基づいて算出された図示平均有効圧IMEPの誤差が大きくなる懸念がある。
一方、筒内圧力を推定せずに、クランク角度の情報を用いて、図示平均有効圧IMEP等の出力情報を得ようとすると、クランク角度の情報には、筒内圧力(ガス圧)により生じたガス圧トルクの情報だけでなく、クランク軸に掛る外部負荷トルク、ピストンの往復慣性トルク等の情報が含まれ、燃焼状態を表す筒内圧力の情報を取り出すのが容易でない。
そこで、本願は、筒内圧力を推定せずに、クランク角度の情報から、外部負荷トルク及びピストンの往復慣性トルクの情報を低減して、筒内圧力により生じた出力情報を検出し、燃焼状態の変動度合いを検出できる内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
本願に係る内燃機関の制御装置は、クランク軸と一体回転する回転部材に、予め定められた複数のクランク角度に設けられた複数の被検出部と、非回転部材に固定され、前記被検出部を検出する特定クランク角センサと、を備えた内燃機関を制御する内燃機関の制御装置であって、
前記特定クランク角センサの出力信号に基づいて、クランク角度を検出すると共に、前記クランク角度の時間変化率であるクランク角速度、前記クランク角速度の時間変化率であるクランク角加速度を算出する角度情報算出部と、
燃焼気筒の燃焼行程に積算角度区間を設定し、前記燃焼行程の直前の圧縮行程に積算角度区間を設定し、燃焼行程の積算角度区間において前記クランク角加速度を積算して燃焼行程の加速度積算値を算出し、圧縮行程の積算角度区間において前記クランク角加速度を積算して圧縮行程の加速度積算値を算出し、前記燃焼行程の加速度積算値と前記圧縮行程の加速度積算値との差分を算出し、
前記内燃機関が3気筒エンジン又は6気筒エンジンである場合は、前記差分に基づいて、前記燃焼行程の積算角度区間におけるガス圧トルクの積算値から前記圧縮行程の積算角度区間におけるガス圧トルクの積算値を減算した値に相当する出力相当値を算出し、
前記内燃機関が4気筒エンジンである場合は、前記差分及び前記クランク角速度に基づいて、前記出力相当値を算出する出力相当値算出部と、
同じ気筒において複数サイクルの前記燃焼行程について算出された複数の前記出力相当値のばらつき度合いを算出し、前記ばらつき度合いに基づいて、燃焼状態の変動度合いを検出する燃焼変動検出部と、を備えたものである。
本願に係る内燃機関の制御装置によれば、燃焼行程の加速度積算値と圧縮行程の加速度積算値とには、各気筒内のガス圧により生じるガス圧トルクの成分だけではなく、各気筒のピストンの往復慣性トルクの成分、及びクランク軸に掛る外部負荷トルクの成分が含まれる。角速度積算値の差分を算出することにより、往復慣性トルクの成分、及び外部負荷トルクの成分が、燃焼行程の積算角度区間と圧縮行程の積算角度区間との間で、互いに打ち消し合わされ、クランク角速度から、ガス圧トルクの成分を取り出すことができる。
角速度積算値の差分に含まれるガス圧トルクの成分には、燃焼気筒の燃焼行程のガス圧トルクの積算値だけではなく、燃焼気筒の圧縮行程のガス圧トルクの積算値、燃焼気筒以外の他の気筒の圧縮行程、吸気行程、及び排気行程のガス圧トルクの積算値も含まれる。しかし、燃焼行程以外の圧縮行程、吸気行程、及び排気行程のガス圧トルクの積算値は、燃焼状態の変動の影響をあまり受けず、燃焼状態の変動によりあまり変動しない。そのため、角速度積算値の差分により、燃焼行程のガス圧トルクの積算値の変動を観測することができる。燃焼行程のガス圧トルクの積算値は、燃焼により行われた仕事、すなわち、出力を表すため、角速度積算値の差分に基づいて出力相当値を算出することができる。そして、出力相当値のばらつき度合いに基づいて、燃焼状態の変動度合いを検出することができる。従って、筒内圧力を推定せずに、クランク角速度の情報から、外部負荷トルク及びピストンの往復慣性トルクの情報を低減して、筒内圧力により生じた出力相当値を検出し、出力相当値のばらつき度合いから燃焼状態の変動度合いを検出できる。
実施の形態1に係る内燃機関および制御装置の概略構成図である。 実施の形態1に係る内燃機関および制御装置の概略構成図である。 実施の形態1に係る制御装置のブロック図である。 実施の形態1に係る制御装置のハードウェア構成図である。 実施の形態1に係る角度情報検出処理を説明するためのタイムチャートである。 実施の形態1に係る、記憶装置に記憶される補正値を説明するための図である。 実施の形態1に係る角度情報算出処理を説明するためのタイムチャートである。 実施の形態1に係る燃焼行程の積算角度区間及び圧縮行程の積算角度区間の設定を説明する図である。 実施の形態1に係る燃焼行程の積算角度区間及び圧縮行程の積算角度区間の設定を説明する図である。 実施の形態1に係る3気筒エンジンの場合の中間角度の設定を説明する図である。 実施の形態1に係る4気筒エンジンの場合の中間角度の設定を説明する図である。 実施の形態1に係る出力相当値と図示平均有効圧との関係を説明する図である。 実施の形態1に係る出力相当値のばらつき度合いと図示平均有効圧の燃焼変動率との関係を説明する図である。 実施の形態1に係る概略的な処理の手順を示すフローチャートである。
1.実施の形態1
実施の形態1に係る内燃機関の制御装置50(以下、単に制御装置50と称す)について図面を参照して説明する。図1および図2は、本実施の形態に係る内燃機関1および制御装置50の概略構成図であり、図3は、本実施の形態に係る制御装置50のブロック図である。内燃機関1および制御装置50は、車両に搭載され、内燃機関1は、車両(車輪)の駆動力源となる。
1-1.内燃機関1の構成
まず、内燃機関1の構成について説明する。図1に示すように、内燃機関1は、空気と燃料の混合気を燃焼する気筒7を備えている。内燃機関1は、気筒7に空気を供給する吸気路23と、気筒7で燃焼した排気ガスを排出する排気路17とを備えている。内燃機関1は、ガソリンエンジンとされている。内燃機関1は、吸気路23を開閉するスロットルバルブ4を備えている。スロットルバルブ4は、制御装置50により制御される電気モータにより開閉駆動される電子制御式スロットルバルブとされている。スロットルバルブ4には、スロットルバルブ4の開度に応じた電気信号を出力するスロットル開度センサ19が設けられている。
スロットルバルブ4の上流側の吸気路23には、吸気路23に吸入される吸入空気量に応じた電気信号を出力するエアフローセンサ3が設けられている。内燃機関1は、排気ガス還流装置20を備えている。排気ガス還流装置20は、排気路17から吸気マニホールド12に排気ガスを還流するEGR流路21と、EGR流路21を開閉するEGRバルブ22と、を有している。吸気マニホールド12は、スロットルバルブ4の下流側の吸気路23の部分である。EGRバルブ22は、制御装置50により制御される電気モータにより開閉駆動される電子制御式EGRバルブとされている。排気路17には、排気路17内の排気ガスの空燃比に応じた電気信号を出力する空燃比センサ18を備えている。
吸気マニホールド12には、吸気マニホールド12内の圧力に応じた電気信号を出力するマニホールド圧センサ8が設けられている。吸気マニホールド12の下流側の部分には、燃料を噴射するインジェクタ13が設けられている。なお、インジェクタ13は、気筒7内に直接燃料を噴射するように設けられてもよい。内燃機関1には、大気圧に応じた電気信号を出力する大気圧センサ33が設けられている。
気筒7の頂部には、空気と燃料の混合気に点火する点火プラグと、点火プラグに点火エネルギーを供給する点火コイル16と、が設けられている。また、気筒7の頂部には、吸気路23から気筒7内に吸入される吸入空気量を調節する吸気バルブ14と、シリンダ内から排気路17に排出される排気ガス量を調節する排気バルブ15と、が設けられている。
図2に示すように、内燃機関1は、複数の気筒7(本例では3つ)を備えている。各気筒7内には、ピストン5が備えられている。各気筒7のピストン5は、コンロッド9およびクランク32を介してクランク軸2に接続されている。クランク軸2は、ピストン5の往復運動によって回転駆動される。各気筒7で発生した燃焼ガス圧は、ピストン5の頂面を押圧し、コンロッド9およびクランク32を介してクランク軸2を回転駆動する。クランク軸2は、車輪に駆動力を伝達する動力伝達機構に連結されている。動力伝達機構は、変速装置、ディファレンシャルギヤ等から構成される。なお、内燃機関1を備えた車両は、動力伝達機構内にモータージェネレータを備えたハイブリッド車であってもよい。
内燃機関1は、クランク軸2と一体回転する信号板10を備えている。信号板10は、予め定められた複数のクランク角度に複数の歯を設けている。本実施の形態では、信号板10は、10度間隔で歯が並べられている。信号板10の歯には、一部の歯が欠けた欠け歯部分が設けられている。内燃機関1は、エンジンブロック24に固定され、信号板10の歯を検出する第1クランク角センサ11を備えている。
内燃機関1は、クランク軸2とチェーン28で連結されたカム軸29を備えている。カム軸29は、吸気バルブ14および排気バルブ15を開閉駆動する。クランク軸2が2回転する間に、カム軸29は1回転する。内燃機関1は、カム軸29と一体回転するカム用の信号板31を備えている。カム用の信号板31は、予め定められた複数のカム軸角度に複数の歯を設けている。内燃機関1は、エンジンブロック24に固定され、カム用の信号板31の歯を検出するカム角センサ30を備えている。
制御装置50は、第1クランク角センサ11およびカム角センサ30の2種類の出力信号に基づいて、各ピストン5の上死点を基準としたクランク角度を検出すると共に、各気筒7の行程を判別する。なお、内燃機関1は、吸入行程、圧縮行程、燃焼行程、および排気行程の4行程機関とされている。
内燃機関1は、クランク軸2と一体回転するフライホイール27を備えている。フライホイール27の外周部は、リングギア25とされており、リングギア25は、予め定められた複数のクランク角度に複数の歯を設けている。リングギア25の歯は、周方向に等角度間隔で設けられている。本例では4度間隔で、90個の歯が設けられている。リングギア25の歯には欠け歯部分は設けられていない。内燃機関1は、エンジンブロック24に固定され、リングギア25の歯を検出する第2クランク角センサ6を備えている。第2クランク角センサ6は、リングギア25の径方向外側に、リングギア25と間隔を空けて対向配置されている。フライホイール27のクランク軸2とは反対側は、動力伝達機構に連結されている。よって、内燃機関1の出力トルクは、フライホイール27の部分を通って、車輪側に伝達される。
第1クランク角センサ11、カム角センサ30、および第2クランク角センサ6は、クランク軸2の回転による、各センサと歯の距離の変化に応じた電気信号を出力する。各角センサ11、30、6の出力信号は、センサと歯の距離が近い場合と、遠い場合とで信号がオンオフする矩形波となる。各角センサ11、30、6には、例えば、電磁ピックアップ式のセンサが用いられる。
フライホイール27(リングギア25)は、信号板10の歯数よりも多い歯数を有しており、また、欠け歯部分もないため、高分解能の角度検出を期待できる。また、フライホイール27は、信号板10の質量よりも大きい質量を有しており、高周波振動が抑制されるため、高精度の角度検出を期待できる。
本実施の形態では、第2クランク角センサ6が、本願における「特定クランク角センサ」に相当し、フライホイール27が、本願における「回転部材」に相当し、フライホイール27に設けられたリングギア25の歯が、本願における「被検出部」に相当し、エンジンブロック24が、本願における「非回転部材」に相当する。
1-2.制御装置50の構成
次に、制御装置50について説明する。
制御装置50は、内燃機関1を制御対象とする制御装置である。図3に示すように、制御装置50は、角度情報算出部51、出力相当値算出部52、燃焼変動検出部53、及び燃焼制御部54等の制御部を備えている。制御装置50の各制御部51から54等は、制御装置50が備えた処理回路により実現される。具体的には、制御装置50は、図4に示すように、処理回路として、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置90(コンピュータ)、演算処理装置90とデータのやり取りする記憶装置91、演算処理装置90に外部の信号を入力する入力回路92、および演算処理装置90から外部に信号を出力する出力回路93等を備えている。
演算処理装置90として、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、IC(Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、各種の論理回路、および各種の信号処理回路等が備えられてもよい。また、演算処理装置90として、同じ種類のもの又は異なる種類のものが複数備えられ、各処理が分担して実行されてもよい。
記憶装置91として、演算処理装置90からデータを読み出しおよび書き込みが可能に構成されたRAM(Random Access Memory)、演算処理装置90からデータを読み出し可能に構成されたROM(Read Only Memory)等が備えられている。入力回路92は、各種のセンサ及びスイッチが接続され、これらセンサ及びスイッチの出力信号を演算処理装置90に入力するA/D変換器等を備えている。出力回路93は、電気負荷が接続され、これら電気負荷に演算処理装置90から制御信号を出力する駆動回路等を備えている。
そして、制御装置50が備える各制御部51から54等の各機能は、演算処理装置90が、ROM等の記憶装置91に記憶されたソフトウェア(プログラム)を実行し、記憶装置91、入力回路92、および出力回路93等の制御装置50の他のハードウェアと協働することにより実現される。なお、各制御部51から54等が用いる定数値、マップデータ、上限値等の設定データは、ソフトウェア(プログラム)の一部として、ROM等の記憶装置91に記憶されている。また、各制御部51から54等が算出したクランク角度θd、クランク角速度ωd、クランク角加速度αd等の各算出値および各検出値のデータは、RAM等の書き換え可能な記憶装置91に記憶される。
本実施の形態では、入力回路92には、第1クランク角センサ11、カム角センサ30、第2クランク角センサ6、エアフローセンサ3、スロットル開度センサ19、マニホールド圧センサ8、大気圧センサ33、空燃比センサ18、およびアクセルポジションセンサ26等が接続されている。出力回路93には、スロットルバルブ4(電気モータ)、EGRバルブ22(電気モータ)、インジェクタ13、および点火コイル16等が接続されている。なお、制御装置50には、図示していない各種のセンサ、スイッチ、およびアクチュエータ等が接続されている。制御装置50は、各種センサの出力信号に基づいて、吸入空気量、吸気マニホールド12内の圧力、大気圧、空燃比、およびアクセル開度等の内燃機関1の運転状態を検出する。
制御装置50は、基本的な制御として、入力された各種センサの出力信号等に基づいて、燃料噴射量、点火時期等を算出し、インジェクタ13および点火コイル16等を駆動制御する。制御装置50は、アクセルポジションセンサ26の出力信号等に基づいて、運転者が要求している内燃機関1の出力トルクを算出し、当該要求出力トルクを実現する吸入空気量となるように、スロットルバルブ4等を制御する。具体的には、制御装置50は、目標スロットル開度を算出し、スロットル開度センサ19の出力信号に基づき検出したスロットル開度が、目標スロットル開度に近づくように、スロットルバルブ4の電気モータを駆動制御する。また、制御装置50は、入力された各種センサの出力信号等に基づいて、EGRバルブ22の目標開度を算出し、EGRバルブ22の電気モータを駆動制御する。
1-2-1.角度情報算出部51
角度情報算出部51は、特定クランク角センサである第2クランク角センサ6の出力信号に基づいて、クランク角度θdを検出すると共に、クランク角度θdの時間変化率であるクランク角速度ωd、及びクランク角速度ωdの時間変化率であるクランク角加速度αdを算出する。本実施の形態では、角度情報算出部51は、角度情報検出部60、角度情報補正部61、及び補正後角度情報算出部62を備えており、リングギア25の歯の製造ばらつき等による角度情報の誤差を補正するように構成されている。
<角度情報検出部60>
角度情報検出部60は、図5に示すように、第2クランク角センサ6の出力信号に基づいてクランク角度θdを検出すると共にクランク角度θdを検出した検出時刻Tdを検出する。そして、角度情報検出部60は、検出したクランク角度θdである検出角度θdおよび検出時刻Tdに基づいて、検出角度θdの間の角度区間Sdに対応する角度間隔Δθdおよび時間間隔ΔTdを算出する。
本実施の形態では、角度情報検出部60は、第2クランク角センサ6の出力信号(矩形波)の立下りエッジ(又は立上りエッジ)を検出した時のクランク角度θdを判定するように構成されている。角度情報検出部60は、基点角度(例えば、第1気筒♯1のピストン5の上死点である0度)に対応する立下りエッジである基点立下りエッジを判定し、基点立下りエッジを基点にカウントアップした立下りエッジの番号n(以下、角度識別番号nと称す)に対応するクランク角度θdを判定する。例えば、角度情報検出部60は、基点立下りエッジを検出した時に、クランク角度θdを基点角度(例えば、0度)に設定すると共に角度識別番号nを0に設定する。そして、角度情報検出部60は、立下りエッジを検出する毎に、クランク角度θdを、予め設定された角度間隔Δθd(本例では4度)ずつ増加させると共に角度識別番号nを1つずつ増加させる。或いは、角度情報検出部60は、角度識別番号nとクランク角度θdとの関係が予め設定された角度テーブルを用い、今回の角度識別番号nに対応するクランク角度θdを読み出すように構成されてもよい。角度情報検出部60は、クランク角度θd(検出角度θd)を角度識別番号nに対応付ける。角度識別番号nは、最大番号(本例では90)の後、1に戻る。角度識別番号n=1の前回の角度識別番号nは90になり、角度識別番号n=90の次回の角度識別番号nは1になる。
本実施の形態では、角度情報検出部60は、後述する第1クランク角センサ11およびカム角センサ30に基づいて検出した参照クランク角度を参照して、第2クランク角センサ6の基点立下りエッジを判定する。例えば、角度情報検出部60は、第2クランク角センサ6の立下りエッジを検出した時の参照クランク角度が、基点角度に最も近い立下りエッジを、基点立下りエッジと判定する。
また、角度情報検出部60は、第1クランク角センサ11およびカム角センサ30に基づいて判別した各気筒7の行程を参照して、クランク角度θdに対応する各気筒7の行程を判定する。
角度情報検出部60は、第2クランク角センサ6の出力信号(矩形波)の立下りエッジを検出した時の検出時刻Tdを検出し、検出時刻Tdを角度識別番号nに対応付ける。具体的には、角度情報検出部60は、演算処理装置90が備えたタイマー機能を用いて、検出時刻Tdを検出する。
角度情報検出部60は、図5に示すように、立下りエッジを検出した時に、今回の角度識別番号(n)に対応する検出角度θd(n)と、前回の角度識別番号(n-1)に対応する検出角度θd(n-1)との間の角度区間を、今回の角度識別番号(n)に対応する角度区間Sd(n)に設定する。
また、角度情報検出部60は、式(1)に示すように、立下りエッジを検出した時に、今回の角度識別番号(n)に対応する検出角度θd(n)と、前回の角度識別番号(n-1)に対応する検出角度θd(n-1)との偏差を算出して、今回の角度識別番号(n)(今回の角度区間Sd(n))に対応する角度間隔Δθd(n)に設定する。
Figure 0007030884000001
本実施の形態では、リングギア25の歯の角度間隔は、全て等しくされているので、角度情報検出部60は、全ての角度識別番号nの角度間隔Δθdを、予め設定された角度(本例では4度)に設定する。
また、角度情報検出部60は、式(2)に示すように、立下りエッジを検出した時に、今回の角度識別番号(n)に対応する検出時刻Td(n)と、前回の角度識別番号(n-1)に対応する検出時刻Td(n-1)との偏差を算出して、今回の角度識別番号(n)(今回の角度区間Sd(n))に対応する時間間隔ΔTd(n)に設定する。
Figure 0007030884000002
角度情報検出部60は、第1クランク角センサ11およびカム角センサ30の2種類の出力信号に基づいて、第1気筒♯1のピストン5の上死点を基準とした参照クランク角度を検出すると共に、各気筒7の行程を判別する。例えば、角度情報検出部60は、第1クランク角センサ11の出力信号(矩形波)の立下りエッジの時間間隔から、信号板10の欠け歯部分の直後の立下りエッジを判定する。そして、角度情報検出部60は、欠け歯部分の直後の立下りエッジを基準にした各立下りエッジと、上死点を基準にした参照クランク角度と対応関係を判定し、各立下りエッジを検出した時の、上死点を基準とした参照クランク角度を算出する。また、角度情報検出部60は、第1クランク角センサ11の出力信号(矩形波)における欠け歯部分の位置と、カム角センサ30の出力信号(矩形波)との関係から、各気筒7の行程を判別する。
また、角度情報検出部60は、角度区間Sdのそれぞれの角度間隔Δθd又は時間間隔ΔTdを、角度区間Sdのそれぞれに対応して1つずつ設けた補正値Kcにより補正する。この補正値Kcは、リングギア25の歯の角度間隔の微小なばらつきを補正するためのものである。
<角度情報補正部61>
本実施の形態では、角度情報補正部61は、各角度識別番号nの角度区間Sd(n)に1つずつ補正値Kc(n)を設けている。本例では、角度識別番号nおよび角度区間Sdは90設けられているので、補正値Kcも90設けられている。各補正値Kcは、図6に示すように、各角度識別番号nに対応付けられて、制御装置50のRAM等の書き換え可能な記憶装置91に記憶される。
角度情報補正部61は、式(3)に示すように、今回の角度識別番号(n)に対応する角度間隔Δθd(n)又は時間間隔ΔTd(n)に、今回の角度識別番号(n)に対応する補正値Kc(n)を乗算して、今回の角度識別番号(n)に対応する補正後の角度間隔Δθdc(n)又は時間間隔ΔTdc(n)を算出するように構成されている。
Figure 0007030884000003
本実施の形態では、補正値Kcにより時間間隔ΔTdが補正される場合について説明する。なお、補正値Kcにより補正されていない角度間隔Δθdも、説明の便宜上、補正後の角度間隔Δθdcと称す。
<補正後角度情報算出部62>
補正後角度情報算出部62は、角度区間Sdのそれぞれの補正値Kcによる補正後の角度間隔Δθdcおよび時間間隔ΔTdcに基づいて、検出角度θd又は角度区間Sdのそれぞれに対応する、クランク角度θdの時間変化率であるクランク角速度ωd、およびクランク角速度ωdの時間変化率であるクランク角加速度αdを算出する。
本実施の形態では、図7に示すように、補正後角度情報算出部62は、処理対象とする角度区間Sd(n)に対応する補正後の角度間隔Δθdc(n)および時間間隔ΔTdc(n)に基づいて、処理対象の角度区間Sd(n)に対応するクランク角速度ωd(n)を算出する。具体的には、補正後角度情報算出部62は、式(4)に示すように、処理対象の角度区間Sd(n)に対応する補正後の角度間隔Δθdc(n)を補正後の時間間隔ΔTdc(n)で除算して、クランク角速度ωd(n)を算出する。
Figure 0007030884000004
補正後角度情報算出部62は、処理対象とする検出角度θd(n)の直前1つの角度区間Sd(n)に対応するクランク角速度ωd(n)および補正後の時間間隔ΔTdc(n)、並びに処理対象の検出角度θd(n)の直後1つの角度区間Sd(n+1)に対応するクランク角速度ωd(n+1)および補正後の時間間隔ΔTdc(n+1)に基づいて、処理対象の検出角度θd(n)に対応するクランク角加速度αd(n)を算出する。具体的には、補正後角度情報算出部62は、式(5)に示すように、直後のクランク角速度ωd(n+1)から直前のクランク角速度ωd(n)を減算した減算値を、直後の補正後の時間間隔ΔTdc(n+1)と直前の補正後の時間間隔ΔTdc(n)の平均値で除算して、クランク角加速度αd(n)を算出する。
Figure 0007030884000005
補正後角度情報算出部62および補正後角度情報算出部62は、リアルタイムに算出された角度間隔Δθd又は時間間隔ΔTdに対して、リアルタイムに補正値Kcにより補正を行い、リアルタイムにクランク角速度ωd、クランク角加速度αdを算出する。算出した各角度情報は記憶装置91に記憶する。
1-2-2.出力相当値算出部52
1-2-2-1.クランク角加速度による燃焼状態の検出原理
<クランク軸周りの運動方程式>
まず、クランク角加速度αdによる燃焼状態の検出原理について説明する。クランク軸2に掛かる軸トルクTcrkは、式(6)に示すように、ガス圧トルクTgas、往復慣性トルクTpstn、外部負荷トルクTloadの総和で表せられる。ガス圧トルクTgasは、各気筒内のガス圧がピストンを押す力により発生する各気筒のガス圧トルクを全気筒について合計したトルクであり、3気筒エンジンの場合は、3気筒分のガス圧トルクを合計したものになり、4気筒エンジンの場合は、4気筒分のガス圧トルクを合計したものになる。往復慣性トルクTpstnは、ピストンの往復慣性により発生するトルクである。外部負荷トルクTloadは、内燃機関の機械損失、補機負荷、及び動力伝達機構の摩擦抵抗、車両の走行抵抗などの全ての負荷の合計である。
Figure 0007030884000006
また、クランク軸2に掛かる軸トルクTcrkは、クランク軸2の慣性モーメントIとクランク角加速度αdを用いて式(7)で表せる。
Figure 0007030884000007
式(7)を式(6)に代入し、クランク角加速度αdについて整理すると、式(8)が得られる。
Figure 0007030884000008
式(8)に示すように、クランク角加速度αdには、燃焼気筒の燃焼状態の情報を含むガス圧トルクTgasだけでなく、燃焼状態に相関しない往復慣性トルクTpstn及び外部負荷トルクTloadが含まれる。クランク角加速度αdにより、燃焼状態を精度よく観測するためには、往復慣性トルクTpstn及び外部負荷トルクTloadの影響を低減する必要がある。また、ガス圧トルクTgasには、全ての気筒のガス圧トルクが含まれるため、燃焼気筒の燃焼により生じたガス圧トルクの成分を観測する必要がある。
<角速度積算値の差分ΔΣαの算出によるガス圧トルク成分の観測>
そこで、往復慣性トルクTpstn及び外部負荷トルクTloadの影響を低減し、燃焼気筒のガス圧トルクの成分を観測するために、図8及び図9に示すように、燃焼行程の積算角度区間Acbにおいてクランク角加速度αdを積算した燃焼行程の加速度積算値Σαcbと、圧縮行程の積算角度区間Acpにおいてクランク角加速度αdを積算した圧縮行程の加速度積算値Σαcpとの差分ΔΣαを算出することを考えた。
ここで、燃焼行程の積算角度区間Acbは、燃焼気筒の圧縮行程に設定された角度区間であり、圧縮行程の積算角度区間Acpは、燃焼行程の直前の圧縮行程に設定された角度区間である。燃焼行程の積算角度区間Acbと圧縮行程の積算角度区間Acpとは、圧縮行程と燃焼行程との間の上死点(以下、圧縮上死点と称す)に対して対称に設定されている。よって、クランク角度θを、圧縮上死点の角度を0度として表した場合に、燃焼行程の積算角度区間Acbの開始角度をθα1とすると、圧縮行程の積算角度区間Acpの終了角度は-θα1となり、燃焼行程の積算角度区間Acbの終了角度をθα2とすると、圧縮行程の積算角度区間Acpの開始角度は-θα2となる。図8は、θα1が、圧縮上死点(0度)に設定されている場合を示し、図9は、θα1が、圧縮上死点よりも遅角側に設定されている場合を示す。
この処理を式で表し、式(8)を代入すると、次式を得る。
Figure 0007030884000009
<3気筒エンジンの場合>
ここで、3気筒エンジンの往復慣性トルクTpstnは、式(10)で表せる。
Figure 0007030884000010
ここで、mpは、ピストン等の往復質量であり、rは、クランク32の長さ(クランク半径)であり、Lは、コンロッド9の長さ(コンロッド長)である。
外部負荷トルクTloadは、圧縮行程から燃焼行程の間の短い期間では、一定値であると近似できる。式(10)を式(9)に代入すると、式(11)を得る。ここで、クランク角速度ωdは、平均値に対して変動幅が小さいので一定値と近似している。6気筒エンジンの場合も同様の導出結果となる。
Figure 0007030884000011
式(11)の導出結果からわかるように、3気筒エンジンの場合は、角速度積算値の差分ΔΣαを算出することにより、往復慣性トルクTpstnの成分及び外部負荷トルクTloadの成分が、燃焼行程の積算角度区間Acbと圧縮行程の積算角度区間Acpとの間で、互いに打ち消し合わされ、クランク角速度αから、ガス圧トルクTgasの成分を取り出すことができる。
なお、式(11)のガス圧トルクTgasの成分には、燃焼気筒の燃焼行程のガス圧トルクの積算値だけではなく、燃焼気筒の圧縮行程のガス圧トルクの積算値、燃焼気筒以外の他の気筒の圧縮行程、吸気行程、及び排気行程のガス圧トルクの積算値も含まれる。しかし、燃焼行程以外の圧縮行程、吸気行程、及び排気行程のガス圧トルクの積算値は、燃焼状態の変動の影響をあまり受けず、燃焼状態の変動によりあまり変動しない。そのため、角速度積算値の差分ΔΣαを観測することにより、燃焼行程のガス圧トルクの積算値の変動を観測することができ、燃焼状態の変動を観測することができる。
<4気筒エンジンの場合>
ここで、4気筒エンジンの往復慣性トルクTpstnは、式(12)で表せる。
Figure 0007030884000012
式(12)を式(9)に代入すると、式(13)を得る。3気筒エンジンの場合の、式(11)と同様に、外部負荷トルクTloadの成分は、互いに打ち消し合わされ、0になる。一方、4気筒エンジンの場合は、往復慣性トルクTpstnの成分Kpは、互いに打ち消されないため、0にならないが、式(13)の第2式に示すように、クランク角速度ωd、各角度区間の開始角度及び終了角度θa1、θa2等に基づいて算出される値になる。
Figure 0007030884000013
よって、式(13)の第3式に示すように、4気筒エンジンの場合は、角速度積算値の差分ΔΣαから往復慣性トルクの成分Kpを減算することにより、クランク角速度αから、ガス圧トルクTgasの成分を取り出すことができる。そして、式(11)の場合と同様に、角速度積算値の差分ΔΣα-Kpを観測することにより、燃焼行程のガス圧トルクの積算値を観測することができる。燃焼行程のガス圧トルクの積算値は、燃焼により行われた仕事、すなわち、出力を表すため、燃焼行程のガス圧トルクの積算値の変動を観測することにより、燃焼状態の変動を観測することができる。
1-2-2-2.出力相当値算出部の構成
以上で説明した原理に基づいて、出力相当値算出部52が構成されている。図8及び図9に示すように、出力相当値算出部52は、燃焼気筒の燃焼行程に積算角度区間Acbを設定し、燃焼行程の直前の圧縮行程に積算角度区間Acpを設定する。出力相当値算出部52は、燃焼行程の積算角度区間Acbにおいてクランク角加速度αdを積算して燃焼行程の加速度積算値Σαcbを算出し、圧縮行程の積算角度区間Acpにおいてクランク角加速度αdを積算して圧縮行程の加速度積算値Σαcpを算出する。そして、出力相当値算出部52は、燃焼行程の加速度積算値Σαcbと圧縮行程の加速度積算値Σαcpとの差分ΔΣαに基づいて出力相当値Wcvを算出する。
この構成によれば、燃焼行程の加速度積算値Σαcb及び圧縮行程の加速度積算値Σαcpには、各気筒内のガス圧により生じるガス圧トルクTgasの成分だけではなく、各気筒のピストンの往復慣性により発生する往復慣性トルクTpstnの成分、及びクランク軸2に掛る外部負荷トルクTloadの成分が含まれる。角速度積算値の差分ΔΣαを算出することにより、往復慣性トルクTpstnの成分、及び外部負荷トルクTloadの成分が、燃焼行程の積算角度区間Acbと圧縮行程の積算角度区間Acpとの間で、互いに打ち消し合わされ、クランク角速度αから、ガス圧トルクTgasの成分を取り出すことができる。
角速度積算値の差分ΔΣαに含まれるガス圧トルクTgasの成分には、燃焼気筒の燃焼行程のガス圧トルクの積算値だけではなく、燃焼気筒の圧縮行程のガス圧トルクの積算値、燃焼気筒以外の他の気筒の圧縮行程、吸気行程、及び排気行程のガス圧トルクの積算値も含まれる。しかし、燃焼行程以外の圧縮行程、吸気行程、及び排気行程のガス圧トルクの積算値は、燃焼状態の変動の影響をあまり受けず、燃焼状態の変動によりあまり変動しない。そのため、角速度積算値の差分ΔΣαを観測することにより、燃焼行程のガス圧トルクの積算値を観測することができる。燃焼行程のガス圧トルクの積算値は、燃焼により行われた仕事、すなわち、出力を表すため、角速度積算値の差分ΔΣαの変動を観測することにより、燃焼状態の変動を観測することができる。
出力相当値算出部52は、クランク角度θdを検出する角度間隔Δθd(本例では4度)毎に、クランク角加速度αdを積算して、加速度積算値Σαcb、Σαcpを算出する。よって、クランク角加速度αdの積算は、式(9)等に示したように、クランク角度θについての積分(角度積分)に相当する。
<角度区間の対称設定>
本実施の形態では、出力相当値算出部52は、燃焼行程の積算角度区間Acbと圧縮行程の積算角度区間Acpとを、圧縮行程と燃焼行程との間の圧縮上死点に対して対称に設定している。よって、図8及び図9に示すように、クランク角度θを、圧縮上死点の角度を0度として表した場合に、燃焼行程の積算角度区間Acbの開始角度をθα1とすると、圧縮行程の積算角度区間Acpの終了角度は-θα1となり、燃焼行程の積算角度区間Acbの終了角度をθα2とすると、圧縮行程の積算角度区間Acpの開始角度は-θα2となる。
この構成によれば、燃焼行程の積算角度区間Acbと圧縮行程の積算角度区間Acpとを、圧縮上死点に対して対称に設定することにより、往復慣性トルクTpstnの成分及び外部負荷トルクTloadの成分の打ち消し精度を高めることができる。
なお、燃焼行程の積算角度区間Acbと圧縮行程の積算角度区間Acpとは、圧縮上死点に対して完全に対称に設定されなくてもよい。打ち消しの度合いが低下するものの、対称に設定されている区間の分だけ、往復慣性トルクTpstnの成分及び外部負荷トルクTloadの成分を大幅に低下させることができ、ガス圧トルクTgasの成分の割合を高めることができる。
<燃焼期間に対応した燃焼行程の角度区間の設定>
出力相当値算出部52は、燃焼行程の積算角度区間Acbを、燃焼期間(例えば、質量燃焼割合MFB10%の角度から質量燃焼割合MFB90%の角度までの期間)に対応させて設定する。出力相当値算出部52は、燃焼行程の積算角度区間Acbの開始角度θα1を、点火時期を基準に推定した燃焼期間の開始角度に設定する。例えば、出力相当値算出部52は、クランク角速度ωd、吸入空気量、EGR量等の内燃機関の運転状態と着火遅れ角度幅(例えば、点火時期からMFB10%角度までの角度幅)との関係が予め設定された着火遅れマップデータを参照し、現在の内燃機関の運転状態に対応する着火遅れ角度幅を算出する。そして、出力相当値算出部52は、点火時期(角度)に着火遅れ角度幅を加算した角度を、燃焼行程の積算角度区間Acbの開始角度θα1に設定する。
なお、出力相当値算出部52は、燃焼行程の積算角度区間Acbの開始角度θα1が、圧縮上死点よりも進角側である場合(小さい場合)は、燃焼行程の積算角度区間Acbの開始角度θα1を、圧縮上死点の角度(本例では、0度)に設定する。これは、燃焼行程の積算角度区間Acbと圧縮行程の積算角度区間Acpとがオーバーラップすると、燃焼行程の加速度積算値Σαcbと圧縮行程の加速度積算値Σαcpとの差分を算出することにより、オーバーラップ期間の2つの積算値が互いに打ち消され、オーバーラップ期間の情報がなくなるためである。
また、出力相当値算出部52は、燃焼行程の積算角度区間Acbの終了角度θα2を、点火時期を基準に推定した燃焼期間の終了角度に設定する。例えば、出力相当値算出部52は、クランク角速度ωd、吸入空気量、EGR量等の内燃機関の運転状態と燃焼期間角度幅(例えば、点火時期からMFB90%角度までの角度幅)との関係が予め設定された燃焼期間マップデータを参照し、現在の内燃機関の運転状態に対応する燃焼期間角度幅を算出する。そして、出力相当値算出部52は、点火時期(角度)に燃焼期間角度幅を加算した角度を、燃焼行程の積算角度区間Acbの終了角度θα2に設定する。
なお、出力相当値算出部52は、燃焼行程の積算角度区間Acbの終了角度θα2が、現在の燃焼気筒の圧縮上死点と次の燃焼気筒の圧縮上死点との中間角度θmidよりも遅角側である場合(大きい場合)は、燃焼行程の積算角度区間Acbの終了角度θα2を、中間角度θmidに設定する。図10に示すように、3気筒エンジンの場合は、中間角度θmidは、圧縮上死点後の120度になる。図11に示すように、4気筒エンジンの場合は、中間角度θmidは、圧縮上死点後の90度になる。これは、燃焼行程の積算角度区間Acbの終了角度θα2が中間角度θmidよりも進角側になると、対称設定される圧縮行程の積算角度区間Acpが、直前の燃焼気筒の燃焼行程の積算角度区間Acbと重複し、直前の燃焼気筒の燃焼の影響を受けるため、影響を受けないようにしている。
或いは、着火遅れ角度幅を、全運転条件での最小値等の固定値に設定し、燃焼期間角度幅を、全運転条件での最大値等の固定値に設定してもよい。これにより、マップデータを用いた演算を省くことができる。
或いは、図10及び図11に示すように、単純に、出力相当値算出部52は、燃焼行程の積算角度区間Acbを、圧縮上死点から中間角度θmidまでの区間に設定し、燃焼行程の積算角度区間Acbを圧縮上死点に対して対称にした区間に、圧縮行程の積算角度区間Acpを設定してもよい。
<出力相当値Wcvの算出>
出力相当値算出部52は、加速度積算値の差分ΔΣαに基づいて出力相当値Wcvを算出する。本実施の形態では、3気筒エンジンの場合は、式(11)の導出結果から、次式に示すように、出力相当値算出部52は、加速度積算値の差分ΔΣαをそのまま出力相当値Wcvに設定する。6気筒エンジンの場合も、式(14)を用いて、出力相当値Wcvが算出される。
Figure 0007030884000014
4気筒エンジンの場合は、式(13)の導出結果から、次式に示すように、出力相当値算出部52は、加速度積算値の差分ΔΣαに含まれる、ピストンの往復運動で発生する往復慣性トルクの成分Kpを、クランク角速度ωdと、圧縮行程の積算角度区間Acp及び燃焼行程の積算角度区間Acpの開始角度及び終了角度θa1、θa2と、クランク軸の慣性モーメントIと、往復質量mpと、クランク半径rと、コンロッド長Lと、に基づいて算出する。そして、出力相当値算出部52は、加速度積算値の差分ΔΣαから、往復慣性トルクの成分Kpを減算した値を、出力相当値Wcvに設定する。
Figure 0007030884000015
ここで、出力相当値算出部52は、角度θと余弦値cosθとの関係が予め設定されたマップデータを参照し、2・θa1、4・θa1、2・θa2、4・θa2に対応する余弦値を算出する。θa1、θa2に固定値が用いられる場合は、余弦値の項は、予め設定された値になる。また、クランク軸の慣性モーメントI、往復質量mp、クランク半径r、及びコンロッド長Lは、予め設定された値が用いられる。或いは、燃料カット時に、ΔΣα=Kpになることを利用して、燃料カット時に算出した加速度積算値の差分ΔΣαを、クランク角速度ωdの2乗値、クランク半径rの2乗値、及び余弦値の項等で除算して、mp/Iを同定してもよい。
1-2-3.燃焼変動検出部53
燃焼変動検出部53は、同じ気筒において複数サイクルの燃焼行程について算出された複数の出力相当値Wcvのばらつき度合いを算出し、ばらつき度合いに基づいて、燃焼状態の変動度合いを検出する。
上述したように、出力相当値Wcvを観測することにより、燃焼行程のガス圧トルクの積算値を観測でき、燃焼による出力を観測できる。よって、出力相当値Wcvのばらつき度合いを算出することにより、燃焼状態の変動度合いを検出できる。ばらつき度合いとして、標準偏差、分散等が算出される。
<図示平均有効圧IMEPの相当値への変換>
図12に、出力相当値Wcvと図示平均有効圧IMEPとの関係と示す。図12の細長い楕円形は、あるクランク角速度及び吸入空気量において、点火時期を進角側から遅角側まで振った場合の、出力相当値Wcvと図示平均有効圧IMEPの分布を示し、図12の一点鎖線は、出力相当値Wcvと図示平均有効圧IMEPの分布の近似直線を示す。図12に示すように、出力相当値Wcvと図示平均有効圧IMEPとの間には比例関係があるものの、物理量が異なり、オフセットがある。
そこで、本実施の形態では、次式に示すように、燃焼変動検出部53は、出力相当値Wcvに、内燃機関の運転状態に基づいて設定したゲインAを乗算するゲイン補正と、出力相当値Wcvに、内燃機関の運転状態に基づいて設定したオフセットBを加算するオフセット補正とを行って、出力相当値Wcvを図示平均有効圧に相当する値IMEPcvに変換する。
Figure 0007030884000016
燃焼変動検出部53は、クランク角速度ωd、吸入空気量等の内燃機関の運転状態とゲインAとの関係が予め設定されたゲインマップデータを参照し、現在の内燃機関の運転状態に対応するゲインAを算出する。燃焼変動検出部53は、クランク角速度ωd、吸入空気量等の内燃機関の運転状態とオフセットBとの関係が予め設定されたオフセットマップデータを参照し、現在の内燃機関の運転状態に対応するオフセットBを算出する。或いは、簡略化のため、ゲインA及びオフセットBは、予め設定された固定値でもよい。
この構成によれば、出力相当値Wcvに基づいて、燃焼による仕事・出力を表す一般的な指標である図示平均有効圧IMEPに相当する値を算出することができる。
<図示平均有効圧の燃焼変動率COVの相当値の算出>
燃焼変動検出部53は、同じ気筒において算出した複数の図示平均有効圧の相当値IMEPcvに基づいて、図示平均有効圧の燃焼変動率に相当する値COVcvを算出する。次式に示すように、燃焼変動検出部53は、同じ気筒において算出した複数の図示平均有効圧の相当値IMEPcvの標準偏差σ及び平均値Aveを算出し、標準偏差σを平均値Aveで除算して、図示平均有効圧の燃焼変動率COVに相当する値COVcvを算出する。例えば、100サイクル分の図示平均有効圧の相当値IMEPcvに基づいて、燃焼変動率の相当値COVcvが算出される。
Figure 0007030884000017
この構成によれば、燃焼状態の変動度合いを表す一般的な指標である図示平均有効圧の燃焼変動率COVに相当する値を算出することができ、燃焼状態の変動度合いを判定し易くなる。
或いは、次式に示すように、燃焼変動検出部53は、同じ気筒において複数サイクルの燃焼行程について算出された複数の出力相当値Wcvのばらつき度合いVwcvを算出し、ばらつき度合いVwcvに、内燃機関の運転状態に基づいて設定したゲインCを乗算するゲイン補正と、ばらつき度合いVwcvに、内燃機関の運転状態に基づいて設定したオフセットDを加算するオフセット補正とを行って、燃焼状態の変動度合いとして、図示平均有効圧の燃焼変動率COVに相当する値COVcvを算出してもよい。なお、燃焼変動検出部53は、同じ気筒において算出した複数の出力相当値Wcvの標準偏差σ及び平均値Aveを算出し、標準偏差σを平均値Aveで除算して、出力相当値Wcvのばらつき度合いVwcvを算出する。
Figure 0007030884000018
図13に、出力相当値Wcvのばらつき度合いVwcvと燃焼変動率COVとの関係と示す。図13の細長い楕円形は、あるクランク角速度及び吸入空気量において、点火時期を進角側から遅角側まで振った場合の、ばらつき度合いVwcvと燃焼変動率COVの分布を示し、図13の一点鎖線は、ばらつき度合いVwcvと燃焼変動率COVの分布の近似直線を示す。図13に示すように、ばらつき度合いVwcvと燃焼変動率COVとの間には比例関係があるものの、物理量が異なり、オフセットがある。
燃焼変動検出部53は、クランク角速度ωd、吸入空気量等の内燃機関の運転状態とゲインCとの関係が予め設定されたゲインマップデータを参照し、現在の内燃機関の運転状態に対応するゲインCを算出する。燃焼変動検出部53は、クランク角速度ωd、吸入空気量等の内燃機関の運転状態とオフセットDとの関係が予め設定されたオフセットマップデータを参照し、現在の内燃機関の運転状態に対応するオフセットDを算出する。或いは、簡略化のため、ゲインC及びオフセットDは、予め設定された固定値でもよい。
なお、燃焼変動検出部53は、出力相当値Wcvのばらつき度合いVwcvを図示平均有効圧の燃焼変動率の相当値COVcvに変換しなくてもよく、出力相当値Wcvのばらつき度合いVwcvを、そのまま、燃焼状態の変動度合いとして算出してもよい。
1-2-4.燃焼制御部54
燃焼制御部54は、燃焼状態の変動度合いに基づいて、点火時期およびEGR量の一方又は双方を変化させる燃焼制御を行う。本実施の形態では、燃焼制御部54は、燃焼状態の変動度合い(本例では、図示平均有効圧の燃焼変動率の相当値COVcv)が予め設定された上限値を超えないように、点火時期およびEGR量の一方又は双方を変化させる。上限値には不感帯が設けられてもよい。
例えば、燃焼制御部54は、燃焼変動率の相当値COVcvが上限値を下回る場合は、点火時期を進角側に変化させつつ、EGRバルブ22の開度を増加させてEGR量を増加させる。なお、点火時期が、トルク最大となる点火時期(以下、MBTと称す)を超えてさらに進角側に変化しても、燃焼は安定して、燃焼変動率の相当値COVcvは上限値を下回る場合がある。そのため、点火時期の進角側への変化を、MBTで制限すればよい。MBTは、クランク角速度、吸入空気量、及びEGR量をパラメータとしたマップデータを用いて設定される。
一方、燃焼制御部54は、燃焼変動率の相当値COVcvが上限値を上回る場合は、まずは点火時期がMBTより遅角側であればMBTまで点火時期を進角側に変化させる。点火時期をMBTまで変化させても燃焼変動率の相当値COVcvが上限値を上回る場合は、EGRバルブ22の開度を減少させてEGR量を減少させつつ、点火時期を遅角側に変化させる。
燃焼制御部54は、燃焼状態の変動度合いに基づいて、他の制御パラメータを変化させてもよい。他の制御パラメータとして、吸気バルブ及び排気バルブの開閉タイミング、空燃比、燃焼噴射タイミング、点火エネルギー等の燃焼状態に係る制御パラメータが変化されるとよい。
<処理全体の概略フローチャート>
本実施の形態に係る制御装置50の概略的な処理の手順(内燃機関の制御方法)について、図14に示すフローチャートに基づいて説明する。図14のフローチャートの処理は、演算処理装置90が記憶装置91に記憶されたソフトウェア(プログラム)を実行することにより、例えば一定の演算周期毎に繰り返し実行される。
ステップS01で、角度情報算出部51は、特定クランク角センサ6の出力信号に基づいて、クランク角度θdを検出すると共に、クランク角度の時間変化率であるクランク角速度ωd、クランク角速度ωdの時間変化率であるクランク角加速度αdを算出する角度情報算出処理を実行する。
ステップS02、出力相当値算出部52は、上記のように、燃焼気筒の燃焼行程に積算角度区間Acpを設定し、燃焼行程の直前の圧縮行程に積算角度区間Acpを設定し、燃焼行程の積算角度区間Acpにおいてクランク角加速度αdを積算して燃焼行程の加速度積算値Σαcbを算出し、圧縮行程の積算角度区間Acpにおいてクランク角加速度αdを積算して圧縮行程の加速度積算値Σαcpを算出し、燃焼行程の加速度積算値Σαcbと圧縮行程の加速度積算値Σαcpとの差分ΔΣαに基づいて出力相当値Wcvを算出する出力相当値算出処理を実行する。
ステップS03で、燃焼変動検出部53は、上記のように、同じ気筒において複数サイクルの燃焼行程について算出された複数の出力相当値Wcvのばらつき度合いを算出し、ばらつき度合いに基づいて、燃焼状態の変動度合いを検出する燃焼変動検出処理を実行する。
ステップS04で、燃焼制御部54は、上記のように燃焼状態の変動度合いに基づいて、点火時期およびEGR量の一方又は双方を変化させる燃焼制御処理を実行する。
〔その他の実施の形態〕
本願のその他の実施の形態について説明する。なお、以下に説明する各実施の形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施の形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
(1)上記の実施の形態1においては、第2クランク角センサ6が、本願における「特定クランク角センサ」に相当し、フライホイール27が、本願における「回転部材」に相当し、フライホイール27に設けられたリングギア25の歯が、本願における「被検出部」に相当する場合を例に説明した。しかし、本願の実施の形態はこれに限定されない。すなわち、第1クランク角センサ11が、本願における「特定クランク角センサ」に相当し、信号板10が、本願における「回転部材」に相当し、信号板10に設けられた複数の歯が、本願における「被検出部」に相当してもよい。
(2)上記の実施の形態1においては、内燃機関1は、ガソリンエンジンとされている場合を例として説明した。しかし、本願の実施の形態はこれに限定されない。すなわち、内燃機関1は、ディーゼルエンジン、HCCI燃焼(Homogeneous-Charge Compression Ignition Combustion)を行うエンジン等の各種の内燃機関とされてもよい。
本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
1 内燃機関、2 クランク軸、5 ピストン、6 特定クランク角センサ、9 コンロッド、32 クランク、50 内燃機関の制御装置、51 角度情報算出部、52 出力相当値算出部、53 燃焼変動検出部、54 燃焼制御部、Acb 燃焼行程の積算角度区間、Acp 圧縮行程の積算角度区間、COVcv 燃焼変動率の相当値、I 慣性モーメント、IMEPcv 図示平均有効圧の相当値、Kp 往復慣性トルクの成分、L コンロッド長、Tgas ガス圧トルク、Tload 外部負荷トルク、Tpstn 往復慣性トルク、Wcv 出力相当値、mp 往復質量、r クランク半径、αd クランク角加速度、θα1 燃焼行程の積算角度区間の開始角度、θα2 燃焼行程の積算角度区間の終了角度、θd クランク角度、θmid 中間角度、ωd クランク角速度、Σαcb 燃焼行程の加速度積算値、Σαcp 圧縮行程の加速度積算値、ΔΣα 加速度積算値の差分

Claims (8)

  1. クランク軸と一体回転する回転部材に、予め定められた複数のクランク角度に設けられた複数の被検出部と、非回転部材に固定され、前記被検出部を検出する特定クランク角センサと、を備えた内燃機関を制御する内燃機関の制御装置であって、
    前記特定クランク角センサの出力信号に基づいて、クランク角度を検出すると共に、前記クランク角度の時間変化率であるクランク角速度、前記クランク角速度の時間変化率であるクランク角加速度を算出する角度情報算出部と、
    燃焼気筒の燃焼行程に積算角度区間を設定し、前記燃焼行程の直前の圧縮行程に積算角度区間を設定し、燃焼行程の積算角度区間において前記クランク角加速度を積算して燃焼行程の加速度積算値を算出し、圧縮行程の積算角度区間において前記クランク角加速度を積算して圧縮行程の加速度積算値を算出し、前記燃焼行程の加速度積算値と前記圧縮行程の加速度積算値との差分を算出し、
    前記内燃機関が3気筒エンジン又は6気筒エンジンである場合は、前記差分に基づいて、前記燃焼行程の積算角度区間におけるガス圧トルクの積算値から前記圧縮行程の積算角度区間におけるガス圧トルクの積算値を減算した値に相当する出力相当値を算出し、
    前記内燃機関が4気筒エンジンである場合は、前記差分及び前記クランク角速度に基づいて、前記出力相当値を算出する出力相当値算出部と、
    同じ気筒において複数サイクルの前記燃焼行程について算出された複数の前記出力相当値のばらつき度合いを算出し、前記ばらつき度合いに基づいて、燃焼状態の変動度合いを検出する燃焼変動検出部と、を備えた内燃機関の制御装置。
  2. 前記出力相当値算出部は、前記燃焼行程の積算角度区間と前記圧縮行程の積算角度区間とを、圧縮行程と燃焼行程との間の上死点に対して対称に設定する請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
  3. 前記出力相当値算出部は、前記内燃機関が4気筒エンジンである場合は、前記差分に含まれる、ピストンの往復運動で発生する往復慣性トルクにより生じた成分を、前記クランク角速度と、前記圧縮行程の積算角度区間及び前記燃焼行程の積算角度区間の開始角度及び終了角度と、前記クランク軸の慣性モーメントと、往復質量と、クランク半径と、コンロッド長と、に基づいて算出し、
    前記差分から前記往復慣性トルクの成分を減算した値を、前記出力相当値に設定する請求項1又は2に記載の内燃機関の制御装置。
  4. 前記出力相当値算出部は、前記燃焼行程の積算角度区間の終了角度を、点火時期を基準に推定した燃焼期間の終了角度と、現在の燃焼気筒の圧縮行程の上死点と次の燃焼気筒の圧縮行程の上死点との中間角度と、のいずれか一方に設定し、前記圧縮行程の積算角度区間の開始角度を、前記燃焼行程の積算角度区間の終了角度を上死点に対して対称にした角度に設定する請求項1から3のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置。
  5. 前記出力相当値算出部は、前記燃焼行程の積算角度区間の開始角度を、点火時期を基準に推定した燃焼期間の開始角度と、圧縮行程の上死点とのいずれか一方に設定し、前記圧縮行程の積算角度区間の終了角度を、燃焼行程の積算角度区間の開始角度を上死点に対して対称にした角度に設定する請求項1から4のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置。
  6. 前記燃焼変動検出部は、前記出力相当値に、内燃機関の運転状態に基づいて設定したゲインを乗算するゲイン補正と、前記出力相当値に、内燃機関の運転状態に基づいて設定したオフセットを加算するオフセット補正とを行って、前記出力相当値を図示平均有効圧に相当する値に変換し、前記複数の出力相当値のばらつき度合として、同じ気筒において複数サイクルの前記燃焼行程について算出された複数の前記図示平均有効圧の相当値のばらつき度合いを算出し、複数の前記図示平均有効圧の相当値のばらつき度合いに基づいて、前記燃焼状態の変動度合いとして、図示平均有効圧の燃焼変動率に相当する値を算出する請求項1から5のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置。
  7. 前記燃焼変動検出部は、前記ばらつき度合いに、内燃機関の運転状態に基づいて設定したゲインを乗算するゲイン補正と、前記ばらつき度合いに、内燃機関の運転状態に基づいて設定したオフセットを加算するオフセット補正とを行って、前記燃焼状態の変動度合いとして、図示平均有効圧の燃焼変動率に相当する値を算出する請求項1から5のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置。
  8. 前記燃焼状態の変動度合いに基づいて、前記燃焼状態の変動度合いが上限値を超えないように、点火時期、EGR量の一方又は双方を変化させる燃焼制御部を備え
    前記燃焼制御部は、前記燃焼状態の変動度合いが前記上限値を下回る場合は、トルクが最大となる点火時期であるMBTを上限として、点火時期を進角側に変化させつつ、EGR量を増加させ、
    前記燃焼状態の変動度合いが前記上限値を上回り、且つ点火時期が前記MBTよりも遅角側である場合は、前記MBTを上限として、点火時期を進角側に変化させ、前記燃焼状態の変動度合いが前記上限値を上回り、且つ点火時期が前記MBTである場合は、EGR量を減少させつつ、前記点火時期を遅角側に変化させる請求項1から7のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置。
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