JP2019183786A - 内燃機関の制御装置及び制御方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】クランク軸に数行程周期の振動が生じた場合でも、精度良く失火検出できる内燃機関の制御装置及び制御方法を提供する。【解決手段】1回の燃焼行程に対応して設定した複数の判定期間のそれぞれにおけるクランク角躍度の積算値又は平均値を算出し、複数の判定期間の間の積算値の変動量又は平均値の変動量を算出し、積算値の変動量又は平均値の変動量に基づいて、1回の燃焼行程における失火の有無を判定する内燃機関の制御装置及び制御方法。【選択図】図3

Description

本願は、クランク軸と一体回転する回転部材に、予め定められた複数のクランク角度に設けられた複数の被検出部と、非回転部材に固定され、前記被検出部を検出する特定クランク角センサと、を備えた内燃機関の制御装置及び制御方法に関するものである。
上記のような制御装置に関して、例えば下記の特許文献1に記載された技術が既に知られている。特許文献1の技術では、クランク角センサの出力信号に基づいて、クランク角速度及びクランク角加速度及びクランク角躍度を算出し、クランク角躍度に基づいてクランク角度間隔の誤差を補正し、補正後のクランク角速度、クランク角加速度に基づいて筒内圧力を推定するように構成されている。また、同文献の〔0119〕には、本技術を用いて失火検出等を行うように構成されても良いことが記載されているが、具体的にどのような方法で失火検出を行うかについては記載されていない。
失火検出に関しては、例えば下記の特許文献2に記載された技術が既に知られている。特許文献2の技術では、BTDC76degCA信号(以下、B76)およびBTDC6degCA信号(以下、B06)に基づいて、B76−B06間を示すTL(i)とB06−B76間を示すTU(i)とB76−B76間を示すTA(i)とB06−B06間を示すTS(i)を算出し、これらに基づいて角加速度α及び周期比Sを更に算出して失火検出を行う方法が記載されている。
特許第6012892号公報 特許第3495463号公報
そこで、本願の発明者は、これらの技術を組み合せて失火検出を行うことを検討した。例えば、特許文献1の技術によりクランク角度間隔の誤差を補正した補正後のクランク角度間隔に基づいて、特許文献2の技術であるB76とB06(又はその近傍のエッジ)に関わる上述の各周期(TL,TU,TA,TS)及び角加速度α等を算出し、それに基づいて失火検出を行うことを検討した。しかしながら、本方法では、ハイブリッド車のようなモータージェネレータと内燃機関が接続されている場合に、特定の内燃機関の回転速度において共振が発生して内燃機関の回転速度に周期変動が重畳することがあり、失火検出の精度が悪化する場合があるという課題があった。
この原因は、以下のように考えられる。まず、TA(i)等に基づいて算出される角加速度αは、一行程前の燃焼時と現在の行程の燃焼時の内燃機関の回転速度を比べた際に、ほぼ同じ内燃機関の回転速度であればα≒0、加速している場合はα>0、減速している場合はα<0となる。失火なし燃焼行程→失火あり燃焼行程の場合はα<0となり、失火あり燃焼行程→失火なし燃焼行程の場合はα>0となることから、ある範囲以上の角加速度変化があった場合に失火と判定される。また、連続失火又は間欠失火といったような失火のパターンによっては、より複雑な判定パターン、又は閾値を用意しておき、それに当てはまる場合にも失火と判定される。ここで、モータージェネレータと内燃機関の共振が、内燃機関の数行程程度の周期で、失火した際の内燃機関の回転速度の低下より大きな振幅にて生じると、失火による角加速度αがモータージェネレータと内燃機関の共振に埋もれてしまい、その結果、失火検出の精度が悪化する。なお、このような場合でも、更に複雑な判定パターン及び閾値を用意しておけば失火検出できる可能性もあるが、このような複雑な判定パターンを用いると、適合工数の増大及び失火誤検出のおそれが生じるため、簡素な演算で精度良く失火検出できる方法が求められる。
また、特許文献1に開示されている技術では筒内圧力を推定することができ、これに基づいて失火検出を行うこともできるが、例えば、同技術を失火検出のみに用いるような場合には演算量が多くなるという課題がある。
そこで、クランク軸に数行程周期の振動が生じた場合でも、精度良く失火検出できる内燃機関の制御装置及び制御方法が求められる。
本願に係る内燃機関の制御装置は、クランク軸と一体回転する回転部材に、予め定められた複数のクランク角度に設けられた複数の被検出部と、非回転部材に固定され、前記被検出部を検出する特定クランク角センサと、を備えた内燃機関の制御装置であって、
前記特定クランク角センサの出力信号に基づいて、クランク角度を検出すると共に、前記クランク角度の時間変化率であるクランク角速度、前記クランク角速度の時間変化率であるクランク角加速度、及び前記クランク角加速度の時間変化率であるクランク角躍度を算出する角度情報算出部と、
前記クランク角躍度に基づいて、前記内燃機関の1回の燃焼行程に対応して設定した複数の判定期間のそれぞれにおける前記クランク角躍度の積算値又は平均値を算出し、前記複数の判定期間の間の前記積算値の変動量又は前記平均値の変動量を算出する角躍度変動量算出部と、
前記積算値の変動量又は前記平均値の変動量に基づいて、前記1回の燃焼行程における失火の有無を判定する失火判定部と、
を備えるものである。
また、本願に係る内燃機関の制御方法は、クランク軸と一体回転する回転部材に、予め定められた複数のクランク角度に設けられた複数の被検出部と、非回転部材に固定され、前記被検出部を検出する特定クランク角センサと、を備えた内燃機関の制御方法であって、
前記特定クランク角センサの出力信号に基づいて、クランク角度を検出すると共に、前記クランク角度の時間変化率であるクランク角速度、前記クランク角速度の時間変化率であるクランク角加速度、及び前記クランク角加速度の時間変化率であるクランク角躍度を算出する角度情報算出ステップと、
前記クランク角躍度に基づいて、前記内燃機関の1回の燃焼行程に対応して設定した複数の判定期間のそれぞれにおける前記クランク角躍度の積算値又は平均値を算出し、前記複数の判定期間の間の前記積算値の変動量又は前記平均値の変動量を算出する角躍度変動量算出ステップと、
前記積算値の変動量又は前記平均値の変動量に基づいて、前記1回の燃焼行程における失火の有無を判定する失火判定ステップと、
を実行するものである。
本願に係る内燃機関の制御装置及びその制御方法によれば、燃焼行程に対応した期間を複数の判定期間に分割し、複数の判定期間の間の積算値の変動量又は平均値の変動量を算出することで、複数の判定期間の間の相対的な積算値又は平均値の変動傾向を表すことができる。よって、運転状態に応じて、クランク角躍度の変動傾向の位相が反転したり、燃焼速度が遅くなったりすることによって、燃焼行程の各時点の瞬間的なクランク角躍度の変動傾向が変化しても、燃焼行程の巨視的なクランク角躍度の変動傾向をとらえることができ、失火の有無を精度よく判定することができる。また、1回の燃焼行程の角躍度の変動量に基づいて、失火の有無を判定できるので、モータージェネレータと内燃機関の共振等による数行程周期の振動の影響を受け難く、精度良く失火の有無を判定することができる。
実施の形態1に係る内燃機関及び制御装置の概略構成図である。 実施の形態1に係る内燃機関及び制御装置の概略構成図である。 実施の形態1に係る制御装置のブロック図である。 実施の形態1に係る制御装置のハードウェア構成図である。 実施の形態1に係る角度情報検出処理を説明するためのタイムチャートである。 実施の形態1に係る、記憶装置に記憶される補正値を説明するための図である。 実施の形態1に係る角度情報算出処理を説明するためのタイムチャートである。 実施の形態1に係る角度情報算出処理を説明するためのタイムチャートである。 実施の形態1に係る、燃焼トルクが大きい運転状態における、燃焼時及び失火時のクランク角躍度の挙動を示す図である。 実施の形態1に係る、往復慣性トルクが大きい運転状態における、燃焼時及び失火時のクランク角躍度の挙動を示す図である。 実施の形態1に係る、燃焼速度が遅い運転状態における、燃焼時及び失火時のクランク角躍度の挙動を示す図である。 実施の形態1に係る、図9から図12のそれぞれにおける、2つの判定期間の間のクランク角躍度の積算値の差を示す図である。 実施の形態1に係る概略的な処理の手順を示すフローチャートである。 その他の実施の形態に係る、燃焼トルクが大きい運転状態における、燃焼時及び失火時のクランク角躍度の挙動を示す図である。 その他の実施の形態に係る、往復慣性トルクが大きい運転状態における、燃焼時及び失火時のクランク角躍度の挙動を示す図である。 その他の実施の形態に係る、燃焼速度が遅い運転状態における、燃焼時及び失火時のクランク角躍度の挙動を示す図である。 図14から図16のそれぞれにおける、2つの判定期間の間のクランク角躍度の積算値の差を示す図である。
1.実施の形態1
実施の形態1に係る内燃機関の制御装置50(以下、単に制御装置50と称す)について図面を参照して説明する。図1及び図2は、本実施の形態に係る内燃機関1及び制御装置50の概略構成図であり、図3は、本実施の形態に係る制御装置50のブロック図である。内燃機関1及び制御装置50は、車両に搭載され、内燃機関1は、車両(車輪)の駆動力源となる。
1−1.内燃機関1の構成
まず、内燃機関1の構成について説明する。図1に示すように、内燃機関1は、空気と燃料の混合気を燃焼する気筒7を備えている。内燃機関1は、気筒7に空気を供給する吸気路23と、気筒7で燃焼した排気ガスを排出する排気路17とを備えている。内燃機関1は、ガソリンエンジンとされている。内燃機関1は、吸気路23を開閉するスロットルバルブ4を備えている。スロットルバルブ4は、制御装置50により制御される電気モータにより開閉駆動される電子制御式スロットルバルブとされている。スロットルバルブ4には、スロットルバルブ4の開度に応じた電気信号を出力するスロットル開度センサ19が設けられている。
スロットルバルブ4の上流側の吸気路23には、吸気路23に吸入される吸入空気量に応じた電気信号を出力するエアフローセンサ3が設けられている。内燃機関1は、排気ガス還流装置20を備えている。排気ガス還流装置20は、排気路17から吸気マニホールド12に排気ガスを還流するEGR流路21と、EGR流路21を開閉するEGRバルブ22と、を有している。吸気マニホールド12は、スロットルバルブ4の下流側の吸気路23の部分である。EGRバルブ22は、制御装置50により制御される電気モータにより開閉駆動される電子制御式EGRバルブとされている。排気路17には、排気路17内の排気ガスの空燃比に応じた電気信号を出力する空燃比センサ18を備えている。
吸気マニホールド12には、吸気マニホールド12内の圧力に応じた電気信号を出力するマニホールド圧センサ8が設けられている。吸気マニホールド12の下流側の部分には、燃料を噴射するインジェクタ13が設けられている。なお、インジェクタ13は、気筒7内に直接燃料を噴射するように設けられてもよい。内燃機関1には、大気圧に応じた電気信号を出力する大気圧センサ33が設けられている。
気筒7の頂部には、空気と燃料の混合気に点火する点火プラグと、点火プラグに点火エネルギーを供給する点火コイル16と、が設けられている。また、気筒7の頂部には、吸気路23から気筒7内に吸入される吸入空気量を調節する吸気バルブ14と、気筒7内から排気路17に排出される排気ガス量を調節する排気バルブ15と、が設けられている。
図2に示すように、内燃機関1は、複数の気筒7(本例では3つ)を備えている。各気筒7内には、ピストン5が備えられている。各気筒7のピストン5は、コンロッド9及びクランク32を介してクランク軸2に接続されている。クランク軸2は、ピストン5の往復運動によって回転駆動される。各気筒7で発生した燃焼ガス圧は、ピストン5の頂面を押圧し、コンロッド9及びクランク32を介してクランク軸2を回転駆動する。クランク軸2は、車輪に駆動力を伝達する動力伝達機構に連結されている。動力伝達機構は、変速装置、ディファレンシャルギヤ等から構成される。なお、内燃機関1を備えた車両は、動力伝達機構内にモータージェネレータを備えたハイブリッド車であってもよい。
内燃機関1は、クランク軸2と一体回転する信号板10を備えている。信号板10は、予め定められた複数のクランク角度に複数の歯を設けている。本実施の形態では、信号板10は、10deg間隔で歯が並べられている。信号板10の歯には、一部の歯が欠けた欠け歯部分が設けられている。内燃機関1は、エンジンブロック24に固定され、信号板10の歯を検出する第1クランク角センサ11を備えている。
内燃機関1は、クランク軸2とチェーン28で連結されたカム軸29を備えている。カム軸29は、吸気バルブ14及び排気バルブ15を開閉駆動する。クランク軸2が2回転する間に、カム軸29は1回転する。内燃機関1は、カム軸29と一体回転するカム用の信号板31を備えている。カム用の信号板31は、予め定められた複数のカム軸角度に複数の歯を設けている。内燃機関1は、エンジンブロック24に固定され、カム用の信号板31の歯を検出するカム角センサ30を備えている。
制御装置50は、第1クランク角センサ11及びカム角センサ30の2種類の出力信号に基づいて、各ピストン5の上死点を基準としたクランク角度を検出すると共に、各気筒7の行程を判別する。なお、内燃機関1は、吸入行程、圧縮行程、燃焼行程、及び排気行程の4行程機関とされている。
内燃機関1は、クランク軸2と一体回転するフライホイール27を備えている。フライホイール27の外周部は、リングギア25とされており、リングギア25は、予め定められた複数のクランク角度に複数の歯を設けている。リングギア25の歯は、周方向に等角度間隔で設けられている。本例では4deg間隔で、90個の歯が設けられている。リングギア25の歯には欠け歯部分は設けられていない。内燃機関1は、エンジンブロック24に固定され、リングギア25の歯を検出する第2クランク角センサ6を備えている。第2クランク角センサ6は、リングギア25の径方向外側に、リングギア25と間隔を空けて対向配置されている。フライホイール27のクランク軸2とは反対側は、動力伝達機構に連結されている。よって、内燃機関1の出力トルクは、フライホイール27の部分を通って、車輪側に伝達される。
第1クランク角センサ11、カム角センサ30、及び第2クランク角センサ6は、クランク軸2の回転による、各センサと歯の距離の変化に応じた電気信号を出力する。各角センサ11、30、6の出力信号は、センサと歯の距離が近い場合と、遠い場合とで信号がオンオフする矩形波となる。各角センサ11、30、6には、例えば、電磁ピックアップ式のセンサが用いられる。
フライホイール27(リングギア25)は、信号板10の歯数よりも多い歯数を有しており、また、欠け歯部分もないため、高分解能の角度検出を期待できる。また、フライホイール27は、信号板10の質量よりも大きい質量を有しており、高周波振動が抑制されるため、高精度の角度検出を期待できる。
本実施の形態では、第2クランク角センサ6が、本願における「特定クランク角センサ」に相当し、フライホイール27が、本願における「回転部材」に相当し、フライホイール27に設けられたリングギア25の歯が、本願における「被検出部」に相当し、エンジンブロック24が、本願における「非回転部材」に相当する。
1−2.制御装置50の構成
次に、制御装置50について説明する。
制御装置50は、内燃機関1を制御対象とする制御装置である。図3に示すように、制御装置50は、角度情報算出部51、角躍度変動量算出部52、失火判定部53、及び失火報知部54等の制御部を備えている。制御装置50の各制御部51、52、53、54等は、制御装置50が備えた処理回路により実現される。具体的には、制御装置50は、図4に示すように、処理回路として、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置90(コンピュータ)、演算処理装置90とデータのやり取りする記憶装置91、演算処理装置90に外部の信号を入力する入力回路92、及び演算処理装置90から外部に信号を出力する出力回路93等を備えている。
演算処理装置90として、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、IC(Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、各種の論理回路、及び各種の信号処理回路等が備えられてもよい。また、演算処理装置90として、同じ種類のもの又は異なる種類のものが複数備えられ、各処理が分担して実行されてもよい。
記憶装置91として、演算処理装置90からデータを読み出し及び書き込みが可能に構成されたRAM(Random Access Memory)、演算処理装置90からデータを読み出し可能に構成されたROM(Read Only Memory)等が備えられている。入力回路92は、各種のセンサ及びスイッチが接続され、これらセンサ及びスイッチの出力信号を演算処理装置90に入力するA/D変換器等を備えている。出力回路93は、電気負荷が接続され、これら電気負荷に演算処理装置90から制御信号を出力する駆動回路等を備えている。
そして、制御装置50が備える各制御部51、52、53、54等の各機能は、演算処理装置90が、ROM等の記憶装置91に記憶されたソフトウェア(プログラム)を実行し、記憶装置91、入力回路92、及び出力回路93等の制御装置50の他のハードウェアと協働することにより実現される。なお、各制御部51、52、53、54等が用いる定数値、テーブル、判定閾値等の設定データは、ソフトウェア(プログラム)の一部として、ROM等の記憶装置91に記憶されている。また、各制御部51、52、53、54等が算出したクランク角度θd、クランク角速度ωd、クランク角加速度αd、クランク角躍度δd、各判定期間のクランク角躍度の積算値又は平均値、積算値又は平均値の変動量、平均化処理値、標準偏差値等の各算出値及び各検出値のデータは、RAM等の書き換え可能な記憶装置91に記憶される。
本実施の形態では、入力回路92には、第1クランク角センサ11、カム角センサ30、第2クランク角センサ6、エアフローセンサ3、スロットル開度センサ19、マニホールド圧センサ8、大気圧センサ33、空燃比センサ18、及びアクセルポジションセンサ26等が接続されている。出力回路93には、スロットルバルブ4(電気モータ)、EGRバルブ22(電気モータ)、インジェクタ13、点火コイル16、及び報知装置34等が接続されている。なお、制御装置50には、図示していない各種のセンサ、スイッチ、及びアクチュエータ等が接続されている。制御装置50は、各種センサの出力信号に基づいて、吸入空気量、吸気マニホールド12内の圧力、大気圧、空燃比、及びアクセル開度等の内燃機関1の運転状態を検出する。
制御装置50は、基本的な制御として、入力された各種センサの出力信号等に基づいて、燃料噴射量、点火時期等を算出し、インジェクタ13及び点火コイル16等を駆動制御する。制御装置50は、アクセルポジションセンサ26の出力信号等に基づいて、運転者が要求している内燃機関1の出力トルクを算出し、当該要求出力トルクを実現する吸入空気量となるように、スロットルバルブ4等を制御する。具体的には、制御装置50は、目標スロットル開度を算出し、スロットル開度センサ19の出力信号に基づき検出したスロットル開度が、目標スロットル開度に近づくように、スロットルバルブ4の電気モータを駆動制御する。また、制御装置50は、入力された各種センサの出力信号等に基づいて、EGRバルブ22の目標開度を算出し、EGRバルブ22の電気モータを駆動制御する。
1−2−1.角度情報算出部51
角度情報算出部51は、特定クランク角センサとされた第2クランク角センサ6の出力信号に基づいて、クランク角度θdを検出すると共に、クランク角度θdの時間変化率であるクランク角速度ωd、及びクランク角速度ωdの時間変化率であるクランク角加速度αd、及びクランク角加速度αdの時間変化率であるクランク角躍度δdを算出する。本実施の形態では、角度情報算出部51は、角度情報検出部60、角度情報補正部61、及び補正後角度情報算出部62を備えており、リングギア25の歯の製造ばらつき等による角度情報の誤差を補正するように構成されている。
<角度情報検出部60>
角度情報検出部60は、図5に示すように、第2クランク角センサ6の出力信号に基づいてクランク角度θdを検出すると共にクランク角度θdを検出した検出時刻Tdを検出する。そして、角度情報検出部60は、検出したクランク角度θdである検出角度θd及び検出時刻Tdに基づいて、検出角度θdの間の角度区間Sdに対応する角度間隔Δθd及び時間間隔ΔTdを算出する。
本実施の形態では、角度情報検出部60は、第2クランク角センサ6の出力信号(矩形波)の立下りエッジ(又は立上りエッジ)を検出した時のクランク角度θdを判定するように構成されている。角度情報検出部60は、基点角度(例えば、第1気筒♯1のピストン5の上死点である0deg)に対応する立下りエッジである基点立下りエッジを判定し、基点立下りエッジを基点にカウントアップした立下りエッジの番号n(以下、角度識別番号nと称す)に対応するクランク角度θdを判定する。例えば、角度情報検出部60は、基点立下りエッジを検出した時に、クランク角度θdを基点角度(例えば、0deg)に設定すると共に角度識別番号nを0に設定する。そして、角度情報検出部60は、立下りエッジを検出する毎に、クランク角度θdを、予め設定された角度間隔Δθd(本例では4deg)ずつ増加させると共に角度識別番号nを1つずつ増加させる。或いは、角度情報検出部60は、角度識別番号nとクランク角度θdとの関係が予め設定された角度テーブルを用い、今回の角度識別番号nに対応するクランク角度θdを読み出すように構成されてもよい。角度情報検出部60は、クランク角度θd(検出角度θd)を角度識別番号nに対応付ける。角度識別番号nは、最大番号(本例では90)の後、1に戻る。角度識別番号n=1の前回の角度識別番号nは90になり、角度識別番号n=90の次回の角度識別番号nは1になる。
本実施の形態では、角度情報検出部60は、後述する、第1クランク角センサ11及びカム角センサ30に基づいて検出した参照クランク角度を参照して、第2クランク角センサ6の基点立下りエッジを判定する。例えば、角度情報検出部60は、第2クランク角センサ6の立下りエッジを検出した時の参照クランク角度が、基点角度に最も近い立下りエッジを、基点立下りエッジと判定する。
また、角度情報検出部60は、第1クランク角センサ11及びカム角センサ30に基づいて判別した各気筒7の行程を参照して、クランク角度θdに対応する各気筒7の行程を判定する。
角度情報検出部60は、第2クランク角センサ6の出力信号(矩形波)の立下りエッジを検出した時の検出時刻Tdを検出し、検出時刻Tdを角度識別番号nに対応付ける。具体的には、角度情報検出部60は、演算処理装置90が備えたタイマー機能を用いて、検出時刻Tdを検出する。
角度情報検出部60は、図5に示すように、立下りエッジを検出した時に、今回の角度識別番号(n)に対応する検出角度θd(n)と、前回の角度識別番号(n−1)に対応する検出角度θd(n−1)との間の角度区間を、今回の角度識別番号(n)に対応する角度区間Sd(n)に設定する。
また、角度情報検出部60は、式(1)に示すように、立下りエッジを検出した時に、今回の角度識別番号(n)に対応する検出角度θd(n)と、前回の角度識別番号(n−1)に対応する検出角度θd(n−1)との偏差を算出して、今回の角度識別番号(n)(今回の角度区間Sd(n))に対応する角度間隔Δθd(n)に設定する。
Δθd(n)=θd(n)−θd(n−1) ・・・(1)
本実施の形態では、リングギア25の歯の角度間隔は、全て等しくされているので、角度情報検出部60は、全ての角度識別番号nの角度間隔Δθdを、予め設定された角度(本例では4deg)に設定する。
また、角度情報検出部60は、式(2)に示すように、立下りエッジを検出した時に、今回の角度識別番号(n)に対応する検出時刻Td(n)と、前回の角度識別番号(n−1)に対応する検出時刻Td(n−1)との偏差を算出して、今回の角度識別番号(n)(今回の角度区間Sd(n))に対応する時間間隔ΔTd(n)に設定する。
ΔTd(n)=Td(n)−Td(n−1) ・・・(2)
角度情報検出部60は、第1クランク角センサ11及びカム角センサ30の2種類の出力信号に基づいて、第1気筒♯1のピストン5の上死点を基準とした参照クランク角度を検出すると共に、各気筒7の行程を判別する。例えば、角度情報検出部60は、第1クランク角センサ11の出力信号(矩形波)の立下りエッジの時間間隔から、信号板10の欠け歯部分の直後の立下りエッジを判定する。そして、角度情報検出部60は、欠け歯部分の直後の立下りエッジを基準にした各立下りエッジと、上死点を基準にした参照クランク角度と対応関係を判定し、各立下りエッジを検出した時の、上死点を基準とした参照クランク角度を算出する。また、角度情報検出部60は、第1クランク角センサ11の出力信号(矩形波)における欠け歯部分の位置と、カム角センサ30の出力信号(矩形波)との関係から、各気筒7の行程を判別する。
<角度情報補正部61>
角度情報補正部61は、角度区間Sdのそれぞれの角度間隔Δθd又は時間間隔ΔTdを、角度区間Sdのそれぞれに対応して1つずつ設けた補正値Kcにより補正する。この補正値Kcは、リングギア25の歯の角度間隔の微小なばらつきを補正するためのものであり、リングギア25を内燃機関1に組み付ける前であれば、例えば、リングギア25を単体で一定速度にて回転させた時の、平均時間間隔と角度区間Sdの時間間隔ΔTdの比を用いて、角度区間Sdのそれぞれの補正値Kcを予め算出しておき、それを記憶しておいて用いることができる。また、リングギア25を内燃機関1に組み付けた後であれば、例えば、特許第6012892号公報に開示されている技術と同様に、内燃機関1が燃料カット中などの一定速度で回転している条件下において、角度区間Sdのそれぞれのクランク角躍度δdがゼロに近づくように、角度区間Sdのそれぞれの補正値Kcを変化させてもよい。より簡単には、補正値Kcで補正する代わりに、角度区間Sdの前後にわたる時間間隔ΔTdの移動平均値又は重み付平均値を、角度区間Sdのそれぞれの補正後の時間間隔ΔTdcとして算出するようにしてもよい。
本実施の形態では、角度情報補正部61は、各角度識別番号nの角度区間Sd(n)に1つずつ補正値Kc(n)を設けている。本例では、角度識別番号n及び角度区間Sdは90設けられているので、補正値Kcも90設けられている。各補正値Kcは、図6に示すように、各角度識別番号nに対応付けられて、制御装置50のRAM等の書き換え可能な記憶装置91に記憶される。
角度情報補正部61は、式(3)に示すように、今回の角度識別番号(n)に対応する角度間隔Δθd(n)又は時間間隔ΔTd(n)に、今回の角度識別番号(n)に対応する補正値Kc(n)を乗算して、今回の角度識別番号(n)に対応する補正後の角度間隔Δθdc(n)又は時間間隔ΔTdc(n)を算出するように構成されている。
Δθdc(n)=Kc(n)×Δθd(n)
又は ・・・(3)
ΔTdc(n)=Kc(n)×ΔTd(n)
本実施の形態では、補正値Kcにより時間間隔ΔTdが補正される場合について説明する。なお、補正値Kcにより補正されていない角度間隔Δθdも、説明の便宜上、補正後の角度間隔Δθdcと称す。
<補正後角度情報算出部62>
補正後角度情報算出部62は、角度区間Sdのそれぞれの補正値Kcによる補正後の角度間隔Δθdc及び時間間隔ΔTdcに基づいて、検出角度θd又は角度区間Sdのそれぞれに対応する、クランク角度θdの時間変化率であるクランク角速度ωd、及びクランク角速度ωdの時間変化率であるクランク角加速度αd、及びクランク角加速度αdの時間変化率であるクランク角躍度δdを算出する。
本実施の形態では、図7に示すように、補正後角度情報算出部62は、処理対象とする角度区間Sd(n)に対応する補正後の角度間隔Δθdc(n)及び時間間隔ΔTdc(n)に基づいて、処理対象の角度区間Sd(n)に対応するクランク角速度ωd(n)を算出する。具体的には、補正後角度情報算出部62は、式(4)に示すように、処理対象の角度区間Sd(n)に対応する補正後の角度間隔Δθdc(n)を補正後の時間間隔ΔTdc(n)で除算して、クランク角速度ωd(n)を算出する。
ωd(n)=Δθdc(n)/ΔTdc(n) ・・・(4)
補正後角度情報算出部62は、処理対象とする検出角度θd(n)の直前1つの角度区間Sd(n)に対応するクランク角速度ωd(n)及び補正後の時間間隔ΔTdc(n)、並びに処理対象の検出角度θd(n)の直後1つの角度区間Sd(n+1)に対応するクランク角速度ωd(n+1)及び補正後の時間間隔ΔTdc(n+1)に基づいて、処理対象の検出角度θd(n)に対応するクランク角加速度αd(n)を算出する。具体的には、補正後角度情報算出部62は、式(5)に示すように、直後のクランク角速度ωd(n+1)から直前のクランク角速度ωd(n)を減算した減算値を、直後の補正後の時間間隔ΔTdc(n+1)と直前の補正後の時間間隔ΔTdc(n)の平均値で除算して、クランク角加速度αd(n)を算出する。
αd(n)={ωd(n+1)−ωd(n)}
/{ΔTdc(n+1)+ΔTdc(n)}×2 ・・・(5)
補正後角度情報算出部62は、式(6)に示すように、対象検出角度θd(n)の直後のクランク角加速度αd(n+1)から直前のクランク角加速度αd(n−1)を減算した減算値を、対象検出角度θd(n)の直後の補正後の時間間隔ΔTdc(n+1)と直前の補正後の時間間隔ΔTdc(n)の合計値で除算して、対象検出角度θd(n)のクランク角躍度δd(n)を算出する。
δd(n)={αd(n+1)−αd(n−1)}
/{ΔTdc(n+1)+ΔTdc(n)} ・・・(6)
また、図8及び式(7)に示すように、差分法による微分演算時に伴う打切り誤差を低減するために、クランク角速度ωd(n)が、1サンプルではなく2サンプルの中心差分から算出されるように構成されてもよい。この場合は、算出したクランク角速度ωd(n)に対応するように、式(8)及び式(9)に示すように、クランク角加速度αd(n)及びクランク角躍度δd(n)が算出される。
ωd(n)={Δθdc(n+1)+Δθdc(n)}
/{ΔTdc(n+1)+ΔTdc(n)} ・・・(7)
αd(n)={ωd(n+1)−ωd(n−1)}
/{ΔTdc(n+1)+ΔTdc(n)} ・・・(8)
δd(n)={αd(n+1)−αd(n−1)}
/{ΔTdc(n+1)+ΔTdc(n)} ・・・(9)
角度情報補正部61及び補正後角度情報算出部62は、リアルタイムに算出された角度間隔Δθd又は時間間隔ΔTdに対して、リアルタイムに補正値Kcにより補正を行い、リアルタイムにクランク角速度ωd、クランク角加速度αd、クランク角躍度δdを算出する。角度情報算出部51の各部は、算出した各角度情報を記憶装置91に記憶する。
1−2−2.角躍度変動量算出部52
1−2−2−1.角躍度による失火判定の原理
クランク角躍度δdにより、失火の有無を判定できる原理について説明する。一般に、回転軸周りの運動方程式は式(10)のように書くことができる。
I×dω/dt=I×α=T ・・・(10)
ここで、Iはイナーシャであり、ωは角速度であり、αは角加速度であり、Tはトルクである。この式は、回転軸周りにトルクがかかると、イナーシャの大きさに反比例した角加速度で回転し、トルクがかからない場合は、一定の角速度で回転すると解釈できる。
この式を内燃機関のクランク軸周りに適用すると式(11)のように書くことができる。
Tcrk=Ieng×dωd/dt=Ieng×αd
=Tubg+ΔTb+Tpstn−Tload
=Tg+Tpstn−Tload ・・・(11)
ここで、Tcrkはクランク軸にかかる合計トルク(以下、軸トルク)であり、Iengは内燃機関のイナーシャであり、ωdはクランク角速度であり、αdはクランク角加速度であり、Tubgは未燃焼時を想定した気筒7内のガス圧により発生するトルク(以下、未燃時ガス圧トルク)であり、ΔTbは未燃焼時のガス圧からの燃焼によるガス圧の上昇分により発生するトルク(以下、燃焼トルク)であり、Tpstnはピストンの往復慣性により発生するトルク(以下、往復慣性トルク)であり、Tloadは負荷トルクであり、内燃機関及び動力伝達機構の摩擦抵抗、車両の走行抵抗などの全ての負荷の合計であり、Tgは気筒7内のガス圧により発生する総ガス圧トルクであり未燃時ガス圧トルクTubgと燃焼トルクΔTbの和で表される。往復慣性トルクTpstn及び未燃時ガス圧トルクTubgはピストンの加速度及びシリンダ容積に応じて変化するため、クランク角度に応じた周期的な変動となる。
この式を、式(10)同様に解釈する際に、以下のように、クランク角加速度、発生トルク及び負荷トルクを1回の燃焼行程間の平均値で考えた場合と、クランク角度間隔(本例では4deg)の平均値で考えた場合で若干異なる結果となる。
<1回の燃焼行程間の平均値で考えた場合>
1回の燃焼行程間の燃焼トルクΔTbの平均値と、その他のクランクシャフトにかかるトルクTpstn、Tubg及びTloadの平均値が一致している場合、Tcrk=0になるので、内燃機関は一定速度で回転していることを示す。これは、例えば内燃機関の回転速度が一定である定常運転状態を示している。また、Tcrk>0の場合は、内燃機関は加速している状態であり、Tcrk<0の場合は減速している状態である。失火時はΔTb=0となり、1回の燃焼行程間の平均値で考えるとTpstn=0、Tubg≦0、Tload>0であるため、減速状態となる。このような複数の燃焼行程の間での加速・減速・定常の変化に基づいて失火検出を行うことが出来る。しかしながら、内燃機関は間欠的にトルクを発生させる機関であるので、1回の燃焼行程間でのトルクの変化を詳細に見ると、少し様子は変わってくる。
<クランク角度間隔間の平均値で考えた場合>
上述のように内燃機関は間欠的にトルクを発生させる機関であるので、1回の燃焼行程間でも、混合気が急速に燃焼している急速燃焼期間と、混合気が急速に燃焼していない非急速燃焼期間が存在している。また、燃焼期間は通常40〜60deg程度の期間であるので、1回の燃焼行程間(3気筒エンジンなら240deg、4気筒エンジンなら180deg)では燃焼していない非燃焼期間の方が一般に長くなる。
ここで、内燃機関が定常運転している場合を考えると、1回の燃焼行程間の燃焼トルクΔTbの平均値と負荷トルクTloadの平均値は同じであるが、負荷トルクは常にかかっているのに対し、燃焼トルクΔTbは短期間しか発生しない。つまり、燃焼トルクΔTbは、瞬間的に大きくなると言える。このように考えると、内燃機関の回転速度が一定の場合でも、クランク角度間隔間の平均値としての燃焼トルクΔTbは、1回の燃焼行程間に大きな変動が重畳することがわかる。また、失火時にはΔTb=0となるので、往復慣性トルクTpstn、未燃時ガス圧トルクTubg及び負荷トルクTloadのみがかかることになる。このように、1回の燃焼行程間のトルク変動を捉えることができれば、容易に失火検出を行うことができることがわかる。
<トルク変動の算出式>
1回の燃焼行程間のトルク変動を検出する方法について説明する。ここで改めて式(10)にて、イナーシャを一定と考えると、トルクと角加速度は比例の関係にあることがわかる。今はトルクの変化が知りたいので、式(10)を更に微分した式(12)を考える。
I×dα/dt=I×δ=dT/dt ・・・(12)
ここでδは角躍度である。式(12)は、トルクの微分値、つまり、トルクの時間変化率と角躍度は比例関係にあることを示しているので、これを内燃機関のクランク軸周りで考えると、トルク変動がクランク角躍度に比例する関係にあると言える。つまり、1回の燃焼行程間のクランク角躍度の変動を捉えることができれば、1回の燃焼行程間のトルク変動を捉えたことになり、前述の通り、容易に失火検出を行うことができるようになる。
<運転状態に応じたトルク変動の傾向差>
ただし、トルク変動及びクランク角躍度は、回転速度及び燃焼状態等の運転状態に応じてトルク変動の傾向が変化する。ここで、トルク変動の違いを説明するために、クランク角躍度の変動の例を図9から図11に示す。
図9は、燃焼時の燃焼トルクΔTbの変動が、燃焼トルクΔTb以外のクランクシャフトにかかるトルクの変動よりも十分に大きい運転状態におけるクランク角躍度δdの挙動を示している。燃焼時は、急速燃焼期間(例えば、B35degからA45deg)において、燃焼トルクΔTbが、他のトルクに比べて大きく増加しているため、合計トルクが大きく増加し、クランク角躍度δdが大きく増加している。非急速燃焼期間(例えば、A55degからA135deg)では、燃焼トルクΔTbの増加が減少するため、合計トルクは小さくなり、クランク角躍度δdが小さくなっている。よって、燃焼時は、急速燃焼期間のクランク角躍度δdは、非急速燃焼期間のクランク角躍度δdに対して大幅に大きくなる。また、急速燃焼期間と非急速燃焼期間との間のクランク角躍度δdの変動量が大きくなっている。ここで、Bは、BTDC(Before Top Dead Center、上死点前)を表し、Aは、ATDC(After Top Dead Center、上死点後)を表す。
一方、失火が発生した場合は、急速燃焼期間及び非急速燃焼期間で、燃焼トルクΔTbがゼロになるため、合計トルクは小さくなり、クランク角躍度δdが小さくなっている。また、他のトルクの変動は小さい。よって、失火時は、急速燃焼期間のクランク角躍度δdは、非急速燃焼期間のクランク角躍度δdに対して大きく変化しない。また、失火時の急速燃焼期間と非急速燃焼期間との間のクランク角躍度δdの変動量は、燃焼時の変動量よりも小さくなっている。
図10は、往復慣性トルクTpstnの変動が、燃焼時の燃焼トルクΔTbの変動よりも大きくなる運転状態におけるクランク角躍度δdの挙動を示している。往復慣性トルクTpstnは、ピストンの往復運動に伴う慣性力から発生するトルクであり、燃焼トルクΔTb及び未燃時ガス圧トルクTubgとは逆方向に力が働く。なお、往復慣性力はピストンの加速度に比例することから、往復慣性トルクTpstnは、クランク角速度、及び回転速度の2乗に比例して変動幅が大きくなる。そのため、高回転速度において往復慣性トルクTpstnが燃焼トルクΔTbを上回る場合がある。
燃焼時は、燃焼トルクΔTbが増加する急速燃焼期間で、往復慣性トルクTpstnが大きく減少するため、合計トルクの変化が小さくなり、クランク角躍度δdの変化が小さくなっている。燃焼トルクΔTbの増加が減少する非急速燃焼期間で、往復慣性トルクTpstnが大きく増加するため、合計トルクが大きく増加し、クランク角躍度δdが大きく増加している。よって、燃焼時は、非急速燃焼期間のクランク角躍度δdは、急速燃焼期間のクランク角躍度δdに対して大幅に大きくなり、図9の運転状態と、位相が反転している。
一方、失火時は、急速燃焼期間で、燃焼トルクΔTbがゼロになり、往復慣性トルクTpstnが大きく減少するため、合計トルクが減少し、クランク角躍度δdが減少している。非急速燃焼期間で、燃焼トルクΔTbがゼロになり、往復慣性トルクTpstnが大きく増加するため、合計トルクが大きく増加し、クランク角躍度δdが大きく増加している。よって、失火時は、非急速燃焼期間のクランク角躍度δdは、急速燃焼期間のクランク角躍度δdに対して大幅に大きくなる。また、失火時の急速燃焼期間と非急速燃焼期間との間のクランク角躍度δdの変動量は、燃焼時の変動量よりも大きくなっており、図9の運転状態と傾向が逆になっている。
しかし、非急速燃焼期間に対する急速燃焼期間の相対的なクランク角躍度δdの変動量(例えば、急速燃焼期間のクランク角躍度δdから非急速燃焼期間のクランク角躍度δdを減算した変動量)に着目すると、図10の場合も、図9の場合も、燃焼時の変動量の方が、失火時の変動量のよりも大きくなっており、失火の有無を判定できる可能性がある。ただし、図10において、急速燃焼期間のクランク角躍度δdのピークは、燃焼時と失火時とで差が小さいが、急速燃焼期間のクランク角躍度δdの積算値又は平均値は、燃焼時と失火時とで差が大きくなるため、相対的な変動量を評価する際、積算値又は平均値の変動量を評価することがよいことがわかる。
図11は、燃焼速度が遅い運転状態におけるクランク角躍度δdの挙動を示している。なお、図11の運転状態では、往復慣性トルクTpstnの変動が大きくなっている。例えば、点火時期の遅角化等によって燃焼速度が遅くなる。燃焼時は、急速燃焼期間における、燃焼トルクΔTbのピークが低くなり、増加期間が遅角側に長くなっている。そのため、急速燃焼期間における、クランク角躍度δdのピークが低くなっている。よって、燃焼時と失火時のピークの差が小さくなっており、急速燃焼期間のクランク角躍度δdのピークでは、失火の有無を判定し難くなっている。
しかし、燃焼時は、急速燃焼期間においてクランク角躍度δdの増加期間が遅角側に長くなっているので、急速燃焼期間におけるクランク角躍度δdの積算値又は平均値に着目した場合、燃焼時の方が失火時よりも大きくなり、失火の有無を判定できる可能性がある。
<運転状態に関わらず失火を判定する方法>
以上の考察から、非急速燃焼期間のクランク角躍度の積算値又は平均値に対する急速燃焼期間のクランク角躍度の積算値又は平均値の相対的な変動量に基づいて、失火の有無を判定できる可能性がある。そこで、図9から図11の運転状態の燃焼時と失火時のそれぞれについて、急速燃焼期間のクランク角躍度の積算値Σδdaと非急速燃焼期間のクランク角躍度の積算値Σδdbとの差ΔΣδd(=Σδda−Σδdb)の算出結果を図12に示す。
図9から図11の運転状態のそれぞれにおいて、失火時の積算値の差ΔΣδdよりも、燃焼時の積算値の差ΔΣδdの方が大きくなっており、失火時の積算値の差ΔΣδdと燃焼時の積算値の差ΔΣδdとの間に適切な判定閾値THRを設定すれば、失火の有無を判定できる。クランク角躍度の平均値は、クランク角躍度の積算値を積算数で除算するだけであるので、平均値の差は、積算値の差と同様の傾向となり、適切な判定閾値を設定すれば、失火の有無を判定できる。
従って、燃焼行程の瞬時的なクランク角躍度ではなく、複数の判定期間のそれぞれのクランク角躍度の積算値又は平均値を算出し、複数の判定期間の間の積算値又は平均値の相対的な変動量を評価することによって、失火の有無を判定できる。
1−2−2−2.角躍度変動量算出部52の構成
そこで、角躍度変動量算出部52は、クランク角躍度δdに基づいて、内燃機関の1回の燃焼行程に対応して設定した複数の判定期間のそれぞれにおけるクランク角躍度の積算値又は平均値を算出し、複数の判定期間の間の積算値の変動量ΔΣδd又は平均値の変動量Δδd_aveを算出する。
この構成によれば、燃焼行程に対応した期間を複数の判定期間に分割し、複数の判定期間の間の積算値の変動量ΔΣδd又は平均値の変動量Δδd_aveを算出することで、複数の判定期間の間の相対的な積算値又は平均値の変動傾向を表すことができる。よって、運転状態に応じて、クランク角躍度の変動傾向の位相が反転したり、燃焼速度が遅くなったりすることによって、燃焼行程の各時点の瞬間的なクランク角躍度の変動傾向が変化しても、燃焼行程における巨視的なクランク角躍度の変動傾向をとらえることができ、失火の有無を精度よく判定することができる。また、1回の燃焼行程の角躍度の変動量に基づいて、失火の有無を判定できるので、モータージェネレータと内燃機関の共振等による数行程周期の振動の影響を受け難く、精度良く失火の有無を判定することができる。なお、1回の燃焼行程の変動量には、数行程周期の振動の影響が表れ難く、失火の判定精度を確保できる。
本実施の形態では、角躍度変動量算出部52は、複数の判定期間として、1回の燃焼行程の前側に対応して前判定期間を設定し、前判定期間の後に後判定期間を設定する。本実施の形態では、図9から図11に示すように、前判定期間は、上記の急速燃焼期間と同様の角度間隔に設定され、例えば、B35degからA45degに設定される。また、後判定期間は、上記の非急速燃焼期間と同様の角度間隔に設定され、例えば、A55degからA135degに設定される。本実施の形態では、前判定期間及び後判定期間は、同じ角度間隔にされている。
角躍度変動量算出部52は、運転状態に応じて、複数の判定期間(本例では、前判定期間、及び後判定期間)を変化させてもよい。例えば、角躍度変動量算出部52は、回転速度及び充填効率に応じて、前判定期間及び後判定期間を変化させてもよい。また、角躍度変動量算出部52は、点火時期に応じて、前判定期間及び後判定期間を変化させてもよい。例えば、角躍度変動量算出部52は、点火時期を基準に、前判定期間及び後判定期間を設定する。
本実施の形態では、角躍度変動量算出部52は、前判定期間算出部70、後判定期間算出部71、及び変動量算出部72を備えている。
<前判定期間算出部70>
前判定期間算出部70は、補正後角度情報算出部62により算出されたクランク角躍度δdに基づいて、前判定期間におけるクランク角躍度の積算値Σδda(以下、前判定期間の積算値Σδdaと称す)又は平均値δda_ave(以下、前判定期間の平均値δda_aveと称す)を算出する。本実施の形態では、前判定期間算出部70は、4deg毎に算出されるクランク角躍度δdを、前判定期間の間、積算して前判定期間の積算値Σδdaを算出する。或いは、前判定期間算出部70は、前判定期間の積算値Σδdaを、前判定期間の積算数で除算して、前判定期間の平均値δda_aveを算出する。
<後判定期間算出部71>
後判定期間算出部71は、補正後角度情報算出部62により算出されたクランク角躍度δdに基づいて、後判定期間におけるクランク角躍度の積算値Σδdb(以下、後判定期間の積算値Σδdbと称す)又は平均値δdb_ave(以下、後判定期間の平均値δdb_aveと称す)を算出する。本実施の形態では、後判定期間算出部71は、4deg毎に算出されるクランク角躍度δdを、後判定期間の間、積算して後判定期間の積算値Σδdbを算出する。或いは、後判定期間算出部71は、後判定期間の積算値Σδdbを、後判定期間の積算数で除算して、後判定期間の平均値δdb_aveを算出する。
<変動量算出部72>
変動量算出部72は、前判定期間の積算値Σδda又は平均値δda_aveと、後判定期間の積算値Σδdb又は平均値δdb_aveとの差を、積算値の変動量ΔΣδd又は平均値の変動量Δδd_aveとして算出する。本実施の形態では、変動量算出部72は、前判定期間の積算値Σδdaから後判定期間の積算値Σδdbを減算して、積算値の変動量ΔΣδd(=Σδda−Σδdb)を算出する。或いは、変動量算出部72は、前判定期間の平均値δda_aveから後判定期間の平均値δdb_aveを減算して、平均値の変動量Δδd_ave(=δda_ave−δdb_ave)を算出する。算出した積算値の変動量ΔΣδd又は平均値の変動量Δδd_aveは記憶装置91に記憶される。
この構成によれば、前判定期間と後判定期間と間の積算値又は平均値の差を算出することで、燃焼行程における巨視的なクランク角躍度の変動の方向及び変動量を表現することができる。図12を用いて説明したように、運転状態に応じて、クランク角躍度の変動傾向の位相が反転したり、燃焼速度が遅くなったりし、燃焼行程の各時点の瞬間的なクランク角躍度の変動傾向が変化しても、失火の有無による、クランク角躍度の変動量の差異を検出することができ、失火の有無を精度よく判定することができる。
1−2−3.失火判定部53
失火判定部53は、積算値の変動量ΔΣδd又は平均値の変動量Δδd_aveに基づいて、1回の燃焼行程における失火の有無を判定する。本実施の形態では、失火判定部53は、閾値算出部80及び閾値比較部81を備えている。
<閾値算出部80>
図12を用いて説明したように、適切な失火判定閾値THRは運転状態に応じて変化する。そこで、閾値算出部80は、過去の燃焼行程毎に算出した積算値の変動量ΔΣδd又は平均値の変動量Δδd_aveの統計量を算出し、統計量に基づいて失火判定閾値THRを算出する。この構成によれば、積算値の変動量ΔΣδd又は平均値の変動量Δδd_aveの統計量により、直近の運転状態における変動量又は平均値の統計的データを得ることができる。そして、この統計量に基づいて、現在の運転状態における適切な失火判定閾値THRを設定することができる。
本実施の形態では、閾値算出部80は、統計量として、過去に算出した積算値の変動量ΔΣδd又は平均値の変動量Δδd_aveの平均化処理値BGL及び標準偏差値SGMを算出する。閾値算出部80は、平均化処理として1次遅れフィルタ等のローパスフィルタを用いる。閾値算出部80は、式(13)に示すように、積算値の変動量ΔΣδd又は平均値の変動量Δδd_aveに対して、1次遅れフィルタ処理を行って、平均化処理値BGLを算出する。なお、以下では、積算値の変動量ΔΣδdを代表して詳細に説明する。ここで、Kbglは、フィルタ係数であり、失火の有無に応じて値が補正される。ここで、(i)は、今回の燃焼行程に対応して算出される値を表し、(i−1)は、前回の燃焼行程に対応して算出された値を表している。
BGL(i)=Kbgl×BGL(i−1)
+(1−Kbgl)×ΔΣδd(i)・・・(13)
或いは、閾値算出部80は、式(14)に示すように、積算値の変動量ΔΣδd又は平均値の変動量Δδd_aveに対して、平均化処理として移動平均処理を行って、平均化処理値BGLを算出する。ここで、Nは、平均化を行うデータ数である。Nが大きくなれば演算量及び記憶すべきデータ量が増大し、Nが小さくなればばらつきが大きくなるので、双方を考慮したNが設定される。
Figure 2019183786
また、閾値算出部80は、積算値の変動量ΔΣδd又は平均値の変動量Δδd_aveの分散値VARを算出する。本実施の形態では、閾値算出部80は、式(15)を用いて分散値VARを算出する。ここで、Kvarは、フィルタ係数であり、失火の有無に応じて値が補正される。
VAR(i)=Kvar×VAR(i−1)
+(1−Kvar)×{ΔΣδd(i)−BGL(i)}
・・・(15)
或いは、閾値算出部80は、分散値を算出する式(16)の理論式を用いて分散値VARを算出してもよい。Nが大きくなれば演算量及び記憶すべきデータ量が増大し、Nが小さくなればばらつきが大きくなるので、双方を考慮したNが設定される。
Figure 2019183786
閾値算出部80は、統計量として、積算値の変動量ΔΣδd又は平均値の変動量Δδd_aveの標準偏差値SGMを算出する。本実施の形態では、閾値算出部80は、式(17)に示すように、分散値VARの平方根を積算値の変動量ΔΣδd又は平均値の変動量Δδd_aveの標準偏差値SGMとして算出する。
Figure 2019183786
そして、閾値算出部80は、積算値の変動量ΔΣδd又は平均値の変動量Δδd_aveの統計量に基づいて失火判定閾値THRを算出する。本実施の形態では、閾値算出部80は、統計量として、平均化処理値BGL及び標準偏差値SGMに基づいて、失火判定閾値THRを設定する。具体的には、閾値算出部80は、式(18)に示すように、標準偏差値SGMにゲインKthrを乗算した値を、平均化処理値BGLから減算して、失火判定閾値THRを設定する。
THR(i)=BGR(i)−Kthr×SGM(i) ・・・(18)
<閾値比較部81>
閾値比較部81は、積算値の変動量ΔΣδd又は平均値の変動量Δδd_aveと、失火判定閾値THRを比較して、失火の有無を判定する。例えば、閾値比較部81は、積算値の変動量ΔΣδd又は平均値の変動量Δδd_aveが、失火判定閾値THRより大きい場合は、対応する1回の燃焼行程で失火が発生しておらず、燃焼したと判定する。閾値比較部81は、積算値の変動量ΔΣδd又は平均値の変動量Δδd_aveが、失火判定閾値THR以下になった場合は、対応する1回の燃焼行程で失火が発生し、燃焼していないと判定する。閾値比較部81は、失火の判定結果を記憶装置91に記憶する。例えば、閾値比較部81は、失火したと判定した場合に、失火したと判定した結果を、失火したと判定した1回の燃焼行程に対応する気筒番号に関連付けて、記憶装置91に記憶する。
1−2−4.失火報知部54
失火報知部54は、失火判定部53による失火の判定結果を、報知装置34を介してユーザに報知する。例えば、失火報知部54は、失火の発生頻度が、予め設定された頻度判定値よりも高い場合は、報知装置34としての故障警告灯を点灯させる。また、失火報知部54は、運転席のメーターパネルに設けられた、報知装置34としての表示画面に、失火の判定結果の情報を表示させる。失火報知部54は、失火の判定結果を、OBD(On Board Diagnostic)の故障情報の1つとして、車両に接続された報知装置34としての車両診断装置に伝達する。
1−2−5.フローチャート
本実施の形態に係る制御装置50の概略的な処理の手順(内燃機関1の制御方法)について、図13に示すフローチャートに基づいて説明する。図13のフローチャートの処理は、演算処理装置90が記憶装置91に記憶されたソフトウェア(プログラム)を実行することにより、例えば所定の演算周期毎に繰り返し実行される。
ステップS01で、角度情報算出部51は、上記のように、特定クランク角センサ6の出力信号に基づいてクランク角度θdを検出すると共に、クランク角度θdの時間変化率であるクランク角速度ωd、クランク角速度ωdの時間変化率であるクランク角加速度αd、及びクランク角加速度αdの時間変化率であるクランク角躍度δdを算出する角度情報検出処理(角度情報検出ステップ)を実行する。
本実施の形態では、角度情報算出部51は、角度情報検出部60、角度情報補正部61、及び補正後角度情報算出部62を備えており、上記のように、角度情報の誤差を補正する誤差補正処理を行うように構成されている。
ステップS02で、角躍度変動量算出部52は、上記のように、クランク角躍度δdに基づいて、1回の燃焼行程に対応して設定した複数の判定期間のそれぞれにおけるクランク角躍度の積算値Σδda又は平均値δda_aveを算出し、複数の判定期間の間の積算値の変動量ΔΣδd又は平均値の変動量Δδd_aveを算出する角躍度変動量算出処理(角躍度変動量算出ステップ)を実行する。
本実施の形態では、角躍度変動量算出部52は、上記のように、複数の判定期間として、1回の燃焼行程の前側に対応して前判定期間を設定し、前判定期間の後に後判定期間を設定し、クランク角躍度δdに基づいて、前判定期間における前記クランク角躍度の積算値Σδda又は平均値δda_aveを算出し、後判定期間におけるクランク角躍度の積算値Σδdb又は平均値δdb_aveを算出し、前判定期間の積算値Σδda又は平均値δda_aveと、後判定期間の積算値Σδdb又は平均値δdb_aveとの差を、積算値の変動量ΔΣδd又は平均値の変動量Δδd_aveとして算出するように構成されている。
ステップS03で、失火判定部53は、上記のように、積算値の変動量ΔΣδd又は平均値の変動量Δδd_aveに基づいて、1回の燃焼行程における失火の有無を判定する失火判定処理(失火判定ステップ)を実行する。
本実施の形態では、失火判定部53は、上記のように、過去の燃焼行程毎に算出した積算値の変動量ΔΣδd又は平均値の変動量Δδd_aveの統計量を算出し、統計量に基づいて失火判定閾値THRを算出し、積算値の変動量ΔΣδd又は平均値の変動量Δδd_aveと、失火判定閾値THRを比較して、失火の有無を判定する。
本実施の形態では、閾値算出部80は、統計量として、過去に算出した積算値の変動量ΔΣδd又は平均値の変動量Δδd_aveの平均化処理値BGL及び標準偏差値SGMを算出する。そして、閾値算出部80は、平均化処理値BGL及び標準偏差値SGMに基づいて、失火判定閾値THRを設定する。
ステップS04で、失火報知部54は、上記のように、失火の判定結果を、報知装置34を介してユーザに報知する失火報知処理(失火報知ステップ)を実行する。
〔その他の実施の形態〕
最後に、本願のその他の実施の形態について説明する。なお、以下に説明する各実施の形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施の形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
(1)上記の実施の形態1においては、第2クランク角センサ6が、本願における「特定クランク角センサ」に相当し、フライホイール27が、本願における「回転部材」に相当し、フライホイール27に設けられたリングギア25の歯が、本願における「被検出部」に相当する場合を例に説明した。しかし、本願の実施の形態はこれに限定されない。すなわち、第1クランク角センサ11が、本願における「特定クランク角センサ」に相当し、信号板10が、本願における「回転部材」に相当し、信号板10に設けられた複数の歯が、本願における「被検出部」に相当してもよい。
(2)上記の実施の形態1においては、内燃機関1は、ガソリンエンジンとされている場合を例として説明した。しかし、本願の実施の形態はこれに限定されない。すなわち、内燃機関1は、ディーゼルエンジン、HCCI燃焼(Homogeneous-Charge Compression Ignition Combustion)を行うエンジン等の各種の内燃機関とされてもよい。
(3)上記の実施の形態1においては、失火判定部53は、積算値の変動量ΔΣδd又は平均値の変動量Δδd_aveの統計量を算出し、統計量に基づいて失火判定閾値THRを設定するように構成されている場合を例として説明した。しかし、本願の実施の形態はこれに限定されない。すなわち、失火判定部53は、回転速度、充填効率、及び点火時期等の運転状態に応じて、失火判定閾値THRを変化させるように構成されてもよい。例えば、失火判定部53は、回転速度、充填効率、及び点火時期等の運転状態と失火判定閾値THRとの関係が予め設定された閾値設定マップを参照し、現在の運転状態に対応する失火判定閾値THRを算出する。
(4)上記の実施の形態1においては、角躍度変動量算出部52は、複数の判定期間として、1回の燃焼行程の前側に対応して前判定期間を設定し、前判定期間の後に後判定期間を設定している場合を例として説明した。しかし、本願の実施の形態はこれに限定されない。すなわち、角躍度変動量算出部52は、内燃機関の1回の燃焼行程に対応した、任意の数の、任意の角度間隔を、複数の判定期間として設定してもよい。例えば、角躍度変動量算出部52は、複数の判定期間として、1回の燃焼行程の前側に対応して前判定期間を設定し、前判定期間よりも前側に直前判定期間を設定するように構成されてもよい。例えば、図14、図15、図16に示すように、前判定期間は、B35degからA45degに設定され、直前判定期間は、B125degからB45degに設定されてもよい。図14は、図9と同じ運転状態であり、図15は、図10と同じ運転状態であり、図16は、図11と同じ運転状態である。
この場合は、角躍度変動量算出部52は、前判定期間におけるクランク角躍度の積算値Σδda又は平均値δda_aveを算出し、直前判定期間におけるクランク角躍度の積算値Σδdc又は平均値δdc_aveを算出してもよい。そして、角躍度変動量算出部52は、前判定期間の積算値Σδda又は平均値δda_aveと、直前判定期間の積算値Σδdc又は平均値δdc_aveとの差を、積算値の変動量ΔΣδd(=Σδda−Σδdc)又は平均値の変動量Δδd_ave(=δda_ave−δdc_ave)として算出してもよい。図12と同様に、図14から図16の運転状態における燃焼時と失火時のそれぞれについて、図17に積算値の変動量ΔΣδdを示す。図17に示すように、各運転状態において、失火時の積算値の変動量ΔΣδdよりも、燃焼時の積算値の変動量ΔΣδdの方が大きくなっており、実施の形態1と同様に、失火時の値と燃焼時の値との間に適切な判定閾値THRを設定すれば、失火の有無を判定できる。
或いは、角躍度変動量算出部52は、後判定期間の積算値Σδdb又は平均値δdb_aveと、直前判定期間の積算値Σδdc又は平均値δdc_aveとの平均値を算出し、後判定期間と直前判定期間との平均値と、前判定期間の積算値Σδda又は平均値δda_aveと、の差を、積算値の変動量ΔΣδd又は平均値の変動量Δδd_aveとして算出してもよい。
(5)上記の実施の形態1においては、前判定期間は、B35degからA45degに設定され、後判定期間は、A55degからA135degに設定されている場合を例として説明した。しかし、本願の実施の形態はこれに限定されない。すなわち、前判定期間及び後判定期間は、それぞれ任意の角度間隔に設定されてもよい。
本開示は、例示的な実施の形態が記載されているが、実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合が含まれるものとする。
1 内燃機関、2 クランク軸、6 第2クランク角センサ(特定クランク角センサ)、7 気筒、24 エンジンブロック(非回転部材)、25 リングギア(被検出部)、27 フライホイール(回転部材)、34 報知装置、50 内燃機関の制御装置、51 角度情報算出部、52 角躍度変動量算出部、53 失火判定部、54 失火報知部、θd クランク角度、ωd クランク角速度、αd クランク角加速度、δd クランク角躍度、Σδa 前判定期間のクランク角躍度の積算値、Σδb 後判定期間のクランク角躍度の積算値、δda_ave 前判定期間のクランク角躍度の平均値、δdb_ave 後判定期間のクランク角躍度の平均値、ΔΣδd 積算値の変動量、Δδd_ave 平均値の変動量

Claims (5)

  1. クランク軸と一体回転する回転部材に、予め定められた複数のクランク角度に設けられた複数の被検出部と、非回転部材に固定され、前記被検出部を検出する特定クランク角センサと、を備えた内燃機関の制御装置であって、
    前記特定クランク角センサの出力信号に基づいて、クランク角度を検出すると共に、前記クランク角度の時間変化率であるクランク角速度、前記クランク角速度の時間変化率であるクランク角加速度、及び前記クランク角加速度の時間変化率であるクランク角躍度を算出する角度情報算出部と、
    前記クランク角躍度に基づいて、前記内燃機関の1回の燃焼行程に対応して設定した複数の判定期間のそれぞれにおける前記クランク角躍度の積算値又は平均値を算出し、前記複数の判定期間の間の前記積算値の変動量又は前記平均値の変動量を算出する角躍度変動量算出部と、
    前記積算値の変動量又は前記平均値の変動量に基づいて、前記1回の燃焼行程における失火の有無を判定する失火判定部と、
    を備える内燃機関の制御装置。
  2. 前記角躍度変動量算出部は、前記複数の判定期間として、前記1回の燃焼行程の前側に対応して前判定期間を設定し、前記前判定期間の後に後判定期間を設定し、
    前記クランク角躍度に基づいて、前記前判定期間における前記クランク角躍度の前記積算値又は前記平均値を算出し、前記後判定期間における前記クランク角躍度の前記積算値又は前記平均値を算出し、
    前記前判定期間の前記積算値又は前記平均値と、前記後判定期間の前記積算値又は前記平均値との差を、前記積算値の変動量又は前記平均値の変動量として算出する請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
  3. 前記失火判定部は、過去の燃焼行程毎に算出した前記積算値の変動量又は前記平均値の変動量の統計量を算出し、前記統計量に基づいて失火判定閾値を算出し、
    前記積算値の変動量又は前記平均値の変動量と、前記失火判定閾値を比較して、失火の有無を判定する請求項1又は2に記載の内燃機関の制御装置。
  4. 前記失火判定部による失火の判定結果を、報知装置を介してユーザに報知する失火報知部を更に備えた請求項1から3のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置。
  5. クランク軸と一体回転する回転部材に、予め定められた複数のクランク角度に設けられた複数の被検出部と、非回転部材に固定され、前記被検出部を検出する特定クランク角センサと、を備えた内燃機関の制御方法であって、
    前記特定クランク角センサの出力信号に基づいて、クランク角度を検出すると共に、前記クランク角度の時間変化率であるクランク角速度、前記クランク角速度の時間変化率であるクランク角加速度、及び前記クランク角加速度の時間変化率であるクランク角躍度を算出する角度情報算出ステップと、
    前記クランク角躍度に基づいて、前記内燃機関の1回の燃焼行程に対応して設定した複数の判定期間のそれぞれにおける前記クランク角躍度の積算値又は平均値を算出し、前記複数の判定期間の間の前記積算値の変動量又は前記平均値の変動量を算出する角躍度変動量算出ステップと、
    前記積算値の変動量又は前記平均値の変動量に基づいて、前記1回の燃焼行程における失火の有無を判定する失火判定ステップと、
    を実行する内燃機関の制御方法。
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