JP6028451B2 - 駆動力配分装置 - Google Patents
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Description
<実施例1の構成>
図1は、本発明の一実施例になる駆動力配分装置が適用される四輪駆動車両のパワートレーンを、車両上方から見て示す概略平面図である。この四輪駆動車両は、エンジン2からの回転を変速機3による変速後、リヤプロペラシャフト4及びリヤファイナルドライブユニット5を順次経て左右後輪6L,6Rに伝達するようにした後輪駆動車をベース車両とし、左右後輪(主駆動輪)6L,6Rへのトルクの一部を、トランスファーとしての駆動力配分装置1により、フロントプロペラシャフト7及びフロントファイナルドライブユニット8を順次経て左右前輪(従駆動輪)9L,9Rへ伝達することにより、四輪駆動走行が可能となるようにした車両である。
図1〜4につき上述した駆動力配分装置1の駆動力配分作用を以下に説明する。変速機3(図1参照)から駆動力配分装置1の入力軸12に達したトルクは、一方でこの入力軸12からそのままリヤプロペラシャフト4及びリヤファイナルドライブユニット5(ともに図1参照)を経て左右後輪6L,6R(主駆動輪)へ伝達される。
上記した四輪駆動走行中は駆動力配分装置1が、上記のごとく左右後輪(主駆動輪)6L,6Rへのトルクの一部を左右前輪(従駆動輪)9L,9Rへ分配して出力するため、第1ローラ31及び第2ローラ32間のトラクション力TFμを、左右前輪9L,9Rへ分配すべき目標前輪駆動力に対応させる必要がある。この要求にかなうトラクション力制御のために本実施例においては、図1に示すようにトランスファコントローラ100を設け、これによりモータ35の回転位置制御(クランクシャフト回転角θの制御)を行うものとする。
本実施例のトランスファコントローラ100は、駆動力配分装置1におけるジャダーの発生を抑制する制御を行う手段として、上記アクセル操作量検出部102と、速度差増加傾向判定部103と、トラクション力補正制御部104とを備える。速度差増加傾向判定部103は、ローラ間の回転速度差(滑り速度)Δvが増加傾向にあるか否かを判定する。具体的には、アクセル操作量検出部102により検出されるアクセル操作量が増大すると、回転速度差Δvが増加傾向にあると判定する。トラクション力補正制御部104は、ローラ間の回転速度差Δvが増加傾向にあると判定されると、ローラ間の径方向押付力TETSを増加する。具体的には、トラクション力TFμが少なくとも低下しないように、トラクション力制御部101において算出される径方向押付力TETSを増加する。トラクション力制御部101は、この増加補正された径方向押付力TETSを用いてモータ35を駆動制御する。
ステップS1では、アクセル操作量検出部102が、現在のアクセル開度ACC(0)を読み込む(サンプリングする)。その後、ステップS2へ進む。
ステップS2では、トラクション力補正制御部104が、現在のアクセル開度ACC(0)がゼロより大きいか否かを判定する。ゼロより大きければステップS3へ進み、ゼロであればステップS9へ進む。
ステップS3では、速度差増加傾向判定部103が、現在のアクセル開度ACC(0)が1サンプリング前のアクセル開度ACC(-1)よりも大きいか否かを判定する。大きければアクセル開度ACCが増大していると判断し、ステップS4へ進む。大きくなければ、アクセル開度ACCが前回値と同じであり保持されていると判断し、ステップS8へ進む。
ステップS4では、トラクション力補正制御部104が、現在の押付力指令値TETS(0)が、初期押付力TETS-S(トラクション力制御部101において算出される押付力TETS)以上であるか否かを判定する。TETS-S以上であればステップS6へ進み、TETS-S未満であればステップS5へ進む。なお、本制御フローを最初に実行する際の現在の押付力指令値TETS(0)はゼロに設定する。よって、本制御フローを最初に実行する際には本ステップS4で否定判断されてステップS5へ進む。
ステップS5では、トラクション力補正制御部104が、次回の(1サンプリング後の)押付力指令値TETS(1)として初期押付力TETS-Sを設定した後、ステップS7へ進む。
ステップS8では、トラクション力補正制御部104が、次回の押付力指令値TETS(1)として現在の押付力指令値TETS(0)を設定(すなわちTETS(0)を保持)した後、今回の制御周期を終了する。
ステップS9では、トラクション力補正制御部104が、次回の押付力TETS指令値TETS(1)を初期押付力TETS-S(トラクション力制御部101において算出される押付力TETS)に設定した後、今回の制御周期を終了する。
時刻t1以前では、アクセルペダルが踏まれておらず、車両は停止状態である。
時刻t1で、アクセルペダルが踏まれる(アクセル開度ACCが増加し始める)。時刻t1以後、エンジンコントローラ20がアクセル開度ACCに応じたエンジントルクTENGを発生させると共に、トランスファコントローラ100がアクセル開度ACC等に基づく押付力指令TETSを出力し、装置1がトラクション力TFμを発生する。車速Vが発生して車両が四輪駆動状態で発進する。
時刻t1では、図5のフローチャートでステップS1→S2→S3→S4→S5へ進む流れとなり、押付力指令値TETSとして初期押付力TETS-Sを設定する。その後、時刻t2まで、ステップS1→S2→S3→S4→S6→S7→S1へ進む流れとなり、押付力指令値TETSを初期押付力TETS-Sから所定の勾配m-TETSで徐々に増加させる。
時刻t1以後、エンジントルクTENGの増大によりローラ間の回転速度差Δvが増加する。ここで、ローラ間の回転速度差Δvは前後輪6,9の車輪速差ΔVに対応するため、前後輪6,9の車輪速差ΔVが徐々に増加する。ローラ間の回転速度差Δvが増加すると、この回転速度差Δvに対するトラクション係数μが負勾配となる(減少する)領域に入りやすくなる。しかし、回転速度差Δvの増加によりトラクション係数μが減少するようになっても、上記のように押付力指令値TETSを増加させることで、トラクション係数μの減少は押付力TETSの増加によりいわば相殺され、トラクション力TFμは低下しない(図6では、ジャダーを抑制できる最低値以上の所定値TFμ1に維持される)。また、押付力TETSの増加により回転速度差Δv(車輪速差ΔV)の過大な増加が抑制されるため、車輪速差ΔVは閾値ΔV1以下となり(TCSフラグが立たず)、TCSコントローラ10によるTCS制御が介入しない。
時刻t3で、アクセルペダルが踏み戻され(アクセル開度ACCが減少し始め)、これに応じてエンジントルクTENGが減少する。
時刻t4で、アクセル開度ACCが0となる。このため、図5でステップS1→S2→S9へ進む流れとなり、押付力TETS指令値TETSを初期押付力TETS-S(トラクション力制御部101において算出される押付力指令値TETS)に設定する。すなわち、押付力指令値TETSの補正を終了する。時刻t4以後、トラクション力制御部101が押付力指令値TETSをゼロまで減少させる。これに伴いトラクション力TFμもゼロまで減少し、四輪駆動状態から二輪駆動状態に切り替る。
図5の制御フローは、上記フィードフォワード的な制御の一例であり、ローラ間に径方向押付力TETSを作用させた状態で回転速度差Δvが発生する場合のみならず、ローラ間に回転速度差Δvがある状態で径方向押付力TETSを発生させる場合にも、このフローに従い制御を実行することでジャダーを抑制することができる。なお、後者の場合、アクチュエータ(モータ35等)の応答性の問題は前者の場合に比べて小さいため、回転速度差Δvを直接検知してその増加傾向を判断すると共に、検知した回転速度差Δvに応じて(フィードバック的に)押付力指令値TETSを補正することとしてもよい。例えば、トラクション係数μが回転速度差Δvに対して負勾配で減少する、回転速度差Δvが比較的大きい上記領域(Δv>Δv*)でのみTETSを補正するように設けることも可能である。
以下、実施例1の装置1が奏する効果を列挙する。
(1)主駆動輪伝動系と共に回転する第1ローラ31と、従駆動輪伝動系と共に回転する第2ローラ32とを備え、第1ローラ31及び第2ローラ32を相互に径方向に押し付け、トラクション力TFμを発生させてローラ間で動力を伝達し、従駆動輪(左右前輪9L,9R)への駆動力配分が可能であると共に、径方向押付力TETSを加減することによりローラ間のトラクション力TFμを可変とし、主駆動輪(左右後輪6L,6R)及び従駆動輪間の駆動力配分を制御するようにした駆動力配分装置1において、ローラ間の回転速度差Δvが増加傾向にあるか否かを判定する速度差増加傾向判定手段(速度差増加傾向判定部103)と、ローラ間の回転速度差Δvが増加傾向にあると判定されると、径方向押付力TETSを増加するトラクション力補正制御手段(トラクション力補正制御部104)と、を備えた。
よって、トラクションカーブ(トラクション係数μの減少勾配)に起因する自励振動を径方向押付力TETSの増加により抑制し、ジャダーの発生を抑制することができる。
よって、トラクション力TFμの低下に起因する自励振動を、より確実に抑制することができる。
よって、自励振動が発生するおそれを事前に検知することで、これをより確実に抑制することができる。
以上、本発明を実施するための形態を、図面に基づく実施例により説明したが、本発明の具体的な構成は、実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
例えば、主駆動輪は前輪でも後輪でもどちらでもよい。実施例では、クランクシャフト51L,51Rの回転により第2ローラ32を旋回させることでローラ間径方向押付力TETSを加減することとしたが、第1ローラ31を旋回させるクランクシャフトを設け、第1ローラ31を旋回させることで径方向押付力TETSを加減するようにしてもよい。また、実施例では、ローラを旋回させるローラ旋回駆動メンバとして中空アウターシャフト型式のクランクシャフトを用いたが、他の形式の旋回駆動メンバを用いてもよい。さらに、ローラを旋回させる以外の方法で径方向押付力TETSを加減するようにしてもよい。
実施例では、運転者のアクセル操作量としてアクセル開度ACCを検出することとしたが、回転速度差Δvの増加を事前に検知できるパラメータであればよく、例えばスロットルバルブ開度等を検出してもよい。
6L,6R 左右後輪(主駆動輪)
9L,9R 左右前輪(従駆動輪)
31 第1ローラ
32 第2ローラ
102 アクセル操作量検出部(アクセル操作量検出手段)
103 速度差増加傾向判定部(速度差増加傾向判定手段)
104 トラクション力補正制御部(トラクション力補正制御手段)
Claims (4)
- 主駆動輪伝動系と共に回転する第1ローラと、従駆動輪伝動系と共に回転する第2ローラとを備え、
前記第1ローラ及び前記第2ローラを相互に径方向に押し付け、前記径方向押付力とトラクション係数との積に応じたトラクション力を発生させて前記ローラ間で動力を伝達し、前記従駆動輪への駆動力配分が可能であり、
前記径方向押付力を加減することにより前記トラクション力を可変とし、前記主駆動輪及び前記従駆動輪間の駆動力配分を制御すると共に、
前記ローラ間の回転速度差が所定の領域にあるとき、前記回転速度差の増加に対して前記トラクション係数が減少する特性を有する駆動力配分装置において、
前記回転速度差が増加傾向にあるか否かを判定する速度差増加傾向判定手段と、
前記回転速度差が増加傾向にあると判定されると、前記回転速度差の増加に対する前記トラクション係数の減少による前記トラクション力の低下を抑制するよう、前記回転速度差の増加に応じて徐々に前記径方向押付力を増加するトラクション力補正制御手段と、を備えた
ことを特徴とする駆動力配分装置。 - 請求項1に記載の駆動力配分装置において、
前記トラクション力補正制御手段は、前記回転速度差が増加傾向にあると判定されると、前記回転速度差の増加に対する前記トラクション係数の減少により前記トラクション力が低下しないよう、前記回転速度差の増加に応じて徐々に前記径方向押付力を増加することを特徴とする駆動力配分装置。 - 請求項1に記載の駆動力配分装置において、
前記トラクション力補正制御手段は、前記回転速度差が増加傾向にあると判定されると、前記回転速度差の増加に対して前記トラクション係数が減少しても、前記トラクション力が、ジャダーを所定の許容範囲内に抑制できる最低値以上となるよう、前記回転速度差の増加に応じて徐々に前記径方向押付力を増加することを特徴とする駆動力配分装置。 - 請求項1ないし3のいずれかに記載の駆動力配分装置において、
運転者のアクセル操作量を検出するアクセル操作量検出手段を備え、
前記速度差増加傾向判定手段は、前記検出されるアクセル操作量が増大すると、前記回転速度差が増加傾向にあると判定することを特徴とする駆動力配分装置。
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