以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
〔A1.本発明の第一実施形態の説明〕
[1.検体情報処理装置]
[1−1.検体情報処理装置の構成例]
<検体情報処理装置の構成>
本発明の第一実施形態にかかる検体情報処理装置1(以下、本装置ともいう)は一例として、図1に示すように、検体情報検出ユニット11と信号処理部61とをそなえて構成されている。
検体情報検出ユニット11は、外部刺激供給源31から供給される外部刺激信号の影響を受けた検体91における血管93の脈動性信号を検出して、信号処理部61に脈動性信号を出力するものであって、筐体部21と、外部刺激供給源31と、第1センサ41とを有する。
筐体部21は、検体情報処理装置1を検体91に装着する際に検体91の皮膚92とゴム製のO−リング24を介して接触する部分であって、筐体部21の筐体25の内部に空洞(Cabity;キャビティ)23を有するとともに、検体91に対向する部位に開口部22を有しており、開口部22を検体91の皮膚92に装着された状態で空洞23が閉鎖された空間構造を有する。このように空洞23が形成する閉鎖された空間構造を、「Closed Cavity;クローズドキャビティ」ということもある。また、筐体部21の筐体25には連通路26が設けてあり、外部刺激供給源31からの外部刺激信号は、連通路26を介して空洞23及び開口部22を通過し、検体91の血管93に向けて供給されるようになっている。なお、筺体部21の筺体25は、例えば、内部に空洞を有する円柱や角柱(例えば、直角柱)の形状のものが使用される。
外部刺激供給源31は、筐体部21に設けられ、筐体部21の空洞23内を通って筐体部21の開口部22を通じ、検体91の血管93へ向けて外部刺激信号を供給する。外部刺激供給源31は、信号処理部61からの信号を受けて、外部刺激信号を発するよう構成されている。
外部刺激供給源31は、断続的な光信号を供給する光源であることが好ましく、例えばレーザーダイオードやLED(Light Emitting Diode;発光ダイオード)を用いることが出来る。外部刺激供給源31がレーザーダイオードである場合、パルス発振源としてパルス光を発振するよう構成されていることが好ましい。
外部刺激供給源31は、主として赤外領域の光を照射する光源が用いられるが、検体91に含まれる分析の対象となる物質が吸収する光の波長を発する光源を選択することが好ましく、例えば血管93中のグルコース濃度の測定を行うのであれば、グルコース分子のC−H基やO−H基の吸収波長に極大を有する光信号を供給する光源を用いることが好ましい。
外部刺激供給源31は、検体91の皮膚92の直下にある血管93に外部刺激信号を効果的に作用させるために、筐体部21における開口部22に対向して設けられていることが好ましい。筺体部21の筺体25が円柱の形状の場合には、筺体25の一方の端面に外部刺激供給源31を設け、筺体25の他方の端面に開口部22を有して検体91と接触させることが好ましい。筺体部21の筺体25が直角柱の形状の場合には、筺体25の一方の端面に外部刺激供給源31を設け、筺体25の他方の端面に開口部22を有して検体91と接触させることが好ましい。また、外部刺激供給源31は、外部刺激供給源31からの外部刺激信号の供給方向と筺体部21の中心軸とが一致するように設けられることが好ましい。
第1センサ41は、外部刺激供給源31からの外部刺激信号の影響を受けた上記検体91における血管93の脈動性信号を、脈動性信号に起因し空洞23内を伝播する圧力情報として検出するものである。第1センサ41のセンサ筐体45には、圧力情報の取込部42が設けられており、筐体部21の空洞23と、第1センサ41の圧力情報の取込部42と、センサ筐体45の内部の空間である空気室44とは連通している。空気室44に、センサ素子43が設けられている。
第1センサ41は、筐体部21における外部刺激供給源31からの外部刺激信号による影響を回避しうる部位に設けられている。
第1センサ41は、筐体部21における外部刺激供給源31からの外部刺激信号による影響を回避しうる部位であれば自由に設けることができる。例えば、図1に示すように、筐体部21の筐体25に第1センサ41を貫通させるようにして設け、第1センサ41の一部と第1センサ41の圧力情報の取込部42とを筐体部21の内部に露出させ、第1センサ41の他方を筐体部21の外部に露出させるようにしてもよい。また、筐体部21の筐体25の内部に第1センサ41を貼り付けるようにして密着させて設けても良い。また、筐体部21の筐体25の壁面外部に第1センサ41を密着させて設け、筐体部21の筐体25の壁面に空けられた穴を通じて、筐体部21の空洞23と第1センサ41の圧力情報の取込部42とを連通するようにしてもよい。
信号処理部61は、検体情報検出ユニット11の第1センサ41によって検出された脈動性信号出力について、信号処理を施すものであって、信号分離部71と、信号補正部72とを有している。
信号分離部71は、検体情報検出ユニット11の第1センサ41によって検出された脈動性信号出力について外部圧力信号分離処理を施すことにより、外部刺激信号に応じて発声する外部信号に起因する圧力信号(以下、「外部圧力信号」ともいう)を、分離するものである。すなわち、信号分離部71は、脈動性信号に含まれる外部圧力信号を分離することで取得するものである。
信号補正部72は、検体情報検出ユニット11の第1センサ41によって検出された脈動性信号出力に周波数補正処理を施すことにより、少なくとも脈動性容積信号、脈動性速度信号および脈動性加速度信号のうちの1つの信号を取り出すものである。
検体情報処理装置1は、外部のコンピュータ81、及び波形表示器82に有線又は無線の回線を介して接続されている。
コンピュータ81は、信号処理部61によって処理された信号が入力されて、信号の処理又は保存を行うものである。コンピュータ81は、信号分離部71によって分離された外部圧力信号を利用して、血管93の血液成分を解析することができる。また、コンピュータ81は、信号補正部72によって取り出された脈動性容積信号、脈動性速度信号又は脈動性加速度信号を利用して、各信号の波形から検体91の健康状態の診断を行うことが出来る。
波形表示器82は、信号処理部61から出力された信号が入力されて、信号波形の表示を行うものである。信号処理部61の信号分離部71から外部圧力信号が波形表示器82に出力されることで、波形表示器82は外部圧力信号の波形を表示する。信号処理部61の信号補正部72から脈動性容積信号、脈動性速度信号、又は脈動性加速度信号が波形表示器82に出力されることで、波形表示器82は脈動性容積信号、脈動性速度信号、又は脈動性加速度信号の波形を表示する。波形表示器82としては、例えば、液晶ディスプレイ、CRT、プリンタ、又はペンレコーダを用いることができる。
本発明の第一実施形態にかかる本検体情報処理装置1は、上述のように構成されており、検体91に筐体部21の開口部22を密着させることで空洞23が閉鎖された空間構造(クローズドキャビティ)を形成する。この状態で、外部刺激供給源31により検体91の血管93へ向けて外部刺激信号を供給することにより、検体情報検出ユニット11の第1センサ41が外部刺激信号の影響を受けた検体91における検体情報処理装置1の装着部位付近に存在する血管93の脈動性信号に起因する圧力情報を受けて、検体91における血管93の脈動性信号を検出する。さらに、信号処理部61において、第1センサ41によって検出された脈動性信号出力から外部圧力信号を分離するとともに、脈動性信号出力から少なくとも脈動性容積信号、脈動性速度信号および脈動性加速度信号のうちの1つの信号を取り出すものである。
外部刺激供給源によって供給される外部刺激信号の影響を受けた対象の変化に起因する圧力情報を受けて対象を検出する方法は、外部刺激供給源として光源を用いる場合には光音響分光と呼ばれる方法である。外部刺激供給源からの入力パルスと検出された熱応答波形との位相変化や熱応答波形のレベル差を見ることで、対象の分析を行うことができる。
<検体>
本検体情報処理装置1を適用する検体91としては、検体91における血管93の脈動を測ることができるものであれば特に制限されず、人または人以外の動物に用いることができる。筐体部21の開口部22を検体91に対向させて密着させることにより、空洞23がクローズドキャビティを形成するためには、検体情報処理装置1を検体91の皮膚92に装着することが好ましい。
上記の構成では、検体91における血管93の脈動性信号に起因する圧力情報を受ける構成を挙げたが、測定の対象となる血管93は脈動を測ることが出来る血管であれば特に制限されず、動脈血管、静脈血管、又は毛細血管の測定に用いることが出来る。
本検体情報処理装置1の装着箇所としては、人の場合は、装着のし易さ、測定のし易さ、体表近くに動脈血管が存在して感度良く測定できる点から、前腕部が好ましい。または、装着のし易さ、測定のし易さ、体表近くに毛細血管が存在して感度良く測定できる点から、指先が好ましい。人以外の動物についても、その装着箇所は、装着のしやすさ、測定のし易さを考慮した部位が好ましい。
本検体情報処理装置1を用いて人の脈動性信号を検出する場合において、測定の対象となる血管93の例としては、前腕に存在する橈骨動脈または尺骨動脈が挙げられる。
<開口部の口径>
図17は、筐体部21において開口部22の口径を変えながら、指先の毛細血管の脈動性信号を測定した場合の信号の強さを表わす図である。
図17から明らかなように、開口部22の口径が1〜3mmでは信号が測定できてはいるものの、十分なゲインが得られていない。開口部22の口径が3mm以上ではゲインが上昇し、開口部22の口径が5mm〜6mmにおいて、高いゲインで脈動性信号の測定を行うことができることが分かる。これは、開口部22の口径が2mmよりも小さい場合には、血管93からの信号を捉えるための面積が狭くなるため、検出される信号が弱くなることが影響しているのだと考えられる。
開口部22の口径が大きすぎる(例えば口径が10mmよりも大きい)と、検体情報処理装置1を検体91に装着した場合に、検体91の表面の組織(皮膚、体毛等)が盛り上がって空洞23に入り込むことで、組織によって圧力情報の取込部42が塞がれたり、組織がセンサ素子43と干渉したりするおそれがある。また、開口部22の口径が大きすぎると、検体情報処理装置1を検体91の立体的な形状に沿って密着するように装着する場合に、空洞23がクローズドキャビティを形成することが困難になる場合がある。また人の指先等の、検体91の面積が狭い箇所に検体情報処理装置1を装着する場合にも、検体情報処理装置1を装着する際に空洞23のクローズドキャビティの形成が困難になる場合がある。また、空洞23の高さを一定にした場合、空洞23の開口部22の口径が大きくなるにつれて空洞23の体積が大きくなり、脈動性信号の強さが一定の場合には、空洞23の体積が大きくなることで血管93の脈動性信号に起因する振動が減衰するため、第1センサ41により検出される信号の強度が低下するおそれがある。また、開口部22の口径が広すぎると、血管93の真上に検体情報処理装置1が存在しない場合であっても血管93の脈動性信号が検出可能となるため、第1センサ41の指向性が低下するおそれがある。
このため、開口部22の口径は、通常3mm以上、好ましくは6mm以上であり、通常10mm以下、好ましくは8mm以下である。開口部22の口径の下限が上記の範囲の値より大きいことで、検出される脈動性信号が強くなり、検体91に装着した際に血管93からの振動を検出できる位置に開口部22を密着させることが容易になるため好ましい。開口部22の口径の上限が上記範囲の値より小さいことで、開口部22に入り込む検体の影響を抑え、感度を保ち、第1センサ41の指向性を持たせることができるため好ましい。
また、人の成人の手首における動脈血管(橈骨動脈及び尺骨動脈)の直径がおよそ2mm程度であることから、検体情報処理装置1の開口部22を人の手首にに装着した場合には、動脈血管からの脈動性信号を第1センサ41により感度良く検出する観点から、開口部22の口径は動脈血管の直径の2倍以上、4〜5倍以下であることが好ましい。開口部22の口径の下限が上記範囲の値より大きいことで、検出される脈動性信号が強くなり、検体91に装着した際に血管93からの振動を検出できる位置に開口部22を密着させることが容易になるため好ましい。開口部22の口径の上限が上記範囲の値より小さいことで、開口部22に入り込む検体の影響を抑え、空洞23の体積の増大に伴う感度の低下を防ぎ、第1センサ41の指向性を持たせることができるため好ましい。
人の指に検体情報処理装置1の開口部22を装着する場合には、指に存在する毛細血管の脈動信号を検出するために、上記の人の手首に装着した場合のように血管の直径との関係から規定することはできないが、空洞23がクローズドキャビティを形成して脈動性信号を感度良く検出する観点から、開口部22の口径は少なくとも指のスパンの半分以上、指のスパンの4分の3以下の大きさであることが好ましい。
<クロ−ズドキャビティを形成する材料>
空洞23がクロ−ズドキャビティを形成するために寄与する材料の一つとして本実施形態ではゴム製のO−リング24を挙げたが、検体91における脈動性信号を閉じ込める空洞23を形成できる物体であれば、樹脂製や金属製の素材からなるものであっても用いることができる。空洞23のクローズドキャビティの形成のためには剛性の高いものが望ましいが、皮膚92に当たる側には、人体の皮膚の特性(柔軟性)を考慮するとゴムやシリコン製などの皮膚92との親和性が高い素材を用いることが好ましい。
<第1センサ>
第1センサ41としては、血管93の脈動性信号を検出できるものであれば、特に限定されないが、血管93の脈動及び外部刺激供給源31からの外部刺激信号に起因する検体91の皮膚92の振動によって生じる空気の振動(音圧情報)を電気的に検出するマイクロホンを好適に用いることができる。マイクロホンの中でも、指向性、S/N比、感度の点からコンデンサマイクが好ましく、ECM(electret condenser microphone;エレクトレットコンデンサーマイクロホン、以下、単に「ECM」ともいう)を好適に用いることができる。また、MEMS(microelectromechanical system)技術を用いて作製したECMである、MEMS型ECM(以下、「MEMS−ECM」ともいう)を好適に用いることができる。
ここでは、検体情報検出ユニット11に、第1センサ41を1つ設けた構成を記載しているが、検出される脈動性信号の強さを向上させ、S/N比を上げる観点からは、第1センサ41を2つ以上設けることが好ましく、検体情報検出ユニット11または信号処理部61に設けられる信号加算部611(図37参照)によって各第1センサ41の信号を加算したものを脈動性信号出力とすることが好ましい。
第1センサ41を検体情報検出ユニット11に複数個設ける場合には、複数個それぞれ、筐体部21における外部刺激供給源31からの外部刺激信号による影響を回避しうる異なった複数の部位に設けられることが好ましい。これにより、外部刺激供給源31からの外部刺激信号による影響を回避しつつ、検出される脈動性信号の強さを向上させ、S/N比を上げることが可能となる。
検体情報検出ユニット11に複数の第1センサ41を設ける場合、MEMS−ECMはサイズが小さいために実装が容易であり、開口部22の口径が大きくなりすぎるのを防ぐことができるために好ましい。また、MEMS−ECMは品質が安定しているため、並列に多数接続して、各第1センサ41の信号を加算した際であっても安定した信号を得ることができるために好ましい。
<第1センサの設置位置>
第1センサ41の設置位置である、外部刺激供給源31からの外部刺激信号による影響を回避しうる部位について、図面を用いて説明する。
第1センサ41は、筺体部21における外部刺激供給源31の配設位置から偏移した部位に設けられることが好ましい。即ち、第1センサ41は、外部刺激供給源31からの外部刺激信号の供給方向に対して角度を持たせて設けられることが好ましく、例えば、外部刺激信号の供給方向と直交する向き(略90度の角度)を向けて設けることが特に好ましい。
例えば筺体部21の筺体25が円柱あるいは直角柱の形状の場合であって、外部刺激供給源31が筺体部21の筺体25の底面に設けられる場合、第1センサ41は筺体25の側面に設けられることが好ましい。
例えば、外部刺激供給源31が光源であって、外部刺激信号として光線711を用いる場合、図35示すように、外部刺激供給源(光源)31から出射される光線711の供給方向を示す光軸712に対する最大の出射角度をθ1とすると、光軸を中心として2θ1の範囲より外側に第1センサ41を配置することが好ましい。図35では、筺体部21において、外部刺激供給源31の光軸712と平行な位置関係にある筺体部21の側面壁部に第1センサ41を設けることで、上記の光軸712を中心とした2θ1の範囲より外側に配置されている。
上記の範囲外に第1センサ41を設けることにより、外部刺激供給源31から検体91に供給される外部刺激信号が、反射、回折、または放散等の過程で第1センサ41に入射しうる部位の範囲外に第1センサ41を設けることができ、外部刺激信号により第1センサ41が影響を受けることを避けることができる。これにより、第1センサ41が外部刺激供給源31からの外部刺激信号の作用を受けることなく、外部刺激信号の影響を受けた検体91における血管93の脈動性信号を検出することが出来る。また、第1センサ41が外部刺激供給源31からの外部刺激信号の作用を避けることができるため、脈動性信号から分離される外部圧力信号の精度を高めることができ、また、脈動性信号出力取り出される脈動性容積信号、脈動性速度信号および脈動性加速度信号の精度を高めることができる。
第1センサ41がMEMS−ECMであり、外部刺激供給源31が光源であり、外部刺激信号として光線711を用いる場合には、上述のように、第1センサ41が、筺体部21における光源の配設位置から偏移した部位に設けられることで、MEMS−ECMのシリコンダイヤフラムや内部に実装されているCMOS等の半導体が光によって反応するのを避けることができるために有用である。
[1−2.検体情報処理装置の機能構成]
<検体情報処理装置の機能構成>
図1に示した本発明の第一実施形態にかかる検体情報処理装置1を機能的に表わすとき、検体情報処理装置1は、図4、図5に示すように、検体情報検出ユニット11及び信号処理部61を備え、信号処理部61は、信号分離部71、及び信号補正部72を有している。検体情報処理装置1において、検体情報検出ユニット11の第1センサ41において検出された脈動性信号出力を、信号分離部71、及び信号補正部72によって処理するように構成されている。
検体情報検出ユニット11は、前述のごとく、第1センサ41により検体91における血管93の脈動性信号に起因する圧力情報を受けて、検体91における血管93の脈動性信号を検出し、この脈動性信号を出力するものである。
信号分離部71は、前述のごとく、検体情報検出ユニット11の第1センサ41において検出された脈動性信号出力について外部圧力信号分離処理を施すことにより、脈動性信号に含まれる外部圧力信号を分離するものである。信号分離部71により外部圧力信号を分離する処理を、分離処理ともいう。
信号補正部72は、前述のごとく、検体情報検出ユニット11の第1センサ41からの脈動性信号出力について周波数補正処理を行うことで、脈動性容積信号、脈動性速度信号、及び脈動性加速度信号のうちの一つの信号を取り出すものである。信号補正部72により脈動性容積信号、脈動性速度信号、及び脈動性加速度信号のうちの一つの信号を取り出す処理を、補正処理ともいう。
また、信号補正部72は、脈動性信号の有する周波数で少なくとも増幅動作、積分動作および微分動作のうちの1つの動作を行なうことにより、少なくとも上記の脈動性容積信号、脈動性速度信号および脈動性加速度信号のうちの1つの信号を取り出すことが好ましい。
検体情報処理装置1における外部圧力信号の分離は、図4に示すように、検体情報検出ユニット11の第1センサ41からの脈動性信号出力を、信号補正部72を介さずに、そのまま信号分離部71において外部圧力信号分離処理を行っても良い。
または、検体情報処理装置1における外部圧力信号の分離は、図5に示すように、検体情報検出ユニット11の第1センサ41からの脈動性信号出力を、信号補正部72において周波数補正処理を行った後に、補正処理後の脈動性容積信号、脈動性速度信号、及び脈動性加速度信号のうちのいずれかの信号について、信号分離部71において外部圧力信号の分離処理を行うように構成してもよい。
<外部圧力信号の分離処理>
本発明の第一実施形態にかかる検体情報処理装置1の機能構成をさらに詳細に表わすとき、検体情報処理装置1は、一例として図37のように表すことができる。検体情報処理装置1は、検体情報検出ユニット11、及び信号処理部61を備えている。
検体情報検出ユニット11は、外部刺激供給源31、及び第1センサ41を備えている。 信号処理部61は、信号分離部71、及び信号補正部72を備えている。
信号分離部71は、PLL(Phase−locked loop)621、タイミング発生部622、及びサンプルホールド623を備えている。
ここでは、第1センサ41としてのECM(エレクトレットコンデンサーマイクロホン)が4つ備えられており、各ECMで検出された外部刺激信号の影響を受けた検体91における血管93の脈動性信号を、検体情報検出ユニット11に備えられた信号加算部611で加算したものを、脈動性信号として信号処理部61に出力するように構成している。
この検体情報検出ユニット11の第1センサ41からの脈動性信号出力が、信号処理部61に入力されて、信号処理部61の信号分離部71、及び信号補正部72によって脈動性信号出力が処理される。
検体情報検出ユニット11の外部刺激供給源31は、検体91へ向けてパルス状の外部刺激信号を供給するものであって、外部刺激供給源31は、信号処理部61のタイミング発生部622からの信号を受けて、パルス状に外部刺激信号を発するよう構成されている。
信号補正部72は、信号処理部61から入力された脈動性信号について周波数補正処理を施すことにより、少なくとも脈動性容積信号、脈動性速度信号、及び脈動性加速度信号のうちの1つの信号が取り出す。取り出された脈動性容積信号、脈動性速度信号、及び脈動性加速度信号のうちの1つの信号は、そのまま外部に出力してもよく、信号分離部71での処理に用いても良い。
信号分離部71は、タイミング発生部622を有しており、タイミング発生部622からの信号により外部刺激供給源31から外部刺激信号がパルス状に供給されるように構成されている。このため、外部刺激信号を発生させたタイミングを考慮して、脈動性信号に含まれる外部圧力信号を取り出すことが出来る。
本発明の第一実施形態にかかる検体情報処理装置1は、外部刺激信号の影響を受けた検体91における血管93の脈動性信号を検出し、信号分離部71において、脈動性信号出力から外部刺激信号に応じて発生する外部圧力信号を分離する。ここで、外部圧力信号を感度を良好に検出するためには、脈動性信号出力の脈波波形において、脈動の影響の少ない位置、すなわち脈動に起因する脈波のピーク位置を避けた位置の脈動性信号から外部圧力信号を分離することが好ましい。
そこで、信号分離部71では、第1センサ41からの脈動性信号をサンプルホールド623においてホールドし、PLL621に入力される信号補正部72によって取り出された脈動性容積信号、脈動性速度信号、及び脈動性加速度信号のうちの1つの信号を元にして、脈波信号のピークを避けた位置にて信号を入力し、さらにタイミング発生部622を利用して外部刺激供給源31から外部刺激信号が発せられたタイミングの脈動性信号を取得する。これにより、外部刺激信号の影響を受けた検体91における血管93の脈動性信号から、外部刺激信号に応じて発生する外部圧力信号を分離することができる。
[1−3.検体情報処理装置の動作]
図10〜12に示すフローチャートに従って、本発明の第一実施形態にかかる検体情報処理装置1の動作を説明する。
図4に示す機能構成を有する本発明の第一実施形態にかかる検体情報処理装置1の動作は、図10、11のフローチャートに示すように表わされる。
図10に示すように、検体情報検出ユニット11の第1センサ41によって脈動性信号を検出する(ステップS11)。次に、信号処理部61の信号分離部71は、検体情報検出ユニット11の第1センサ41によって検出された脈動性信号出力について、外部圧力信号の分離処理を施し(ステップS12)、脈動性信号に含まれる外部圧力信号を分離する(ステップS13)。
また、図11に示すように、検体情報検出ユニット11の第1センサ41によって脈動性信号を検出(ステップS21)する。次に、信号処理部61の信号補正部72は、検体情報検出ユニット11の第1センサ41によって検出された脈動性信号出力について、周波数補正処理を施し(ステップS22)、脈動性容積信号、脈動性速度信号、及び脈動性加速度信号のうちの一つの信号を取り出す(ステップS23)
図5に示す機能構成を有する本発明の第一実施形態にかかる検体情報処理装置1の動作は、図12のフローチャートに示すように表わされる。
図12に示すように、検体情報検出ユニット11の第1センサ41によって脈動性信号を検出する(ステップS31)。次に、信号処理部61の信号補正部72は、検体情報検出ユニット11の第1センサ41によって検出された脈動性信号出力について、周波数補正処理を施し(ステップS32)、脈動性容積信号、脈動性速度信号、及び脈動性加速度信号のうちの一つの信号を取り出す(ステップS33)。これら脈動性容積信号、脈動性速度信号、及び脈動性加速度信号のうちの一つの信号について外部圧力信号の分離処理を施し(ステップS34)、脈動性信号に含まれる外部圧力信号を分離する(ステップS35)。
[1−4.第一実施形態にかかる検体情報処理装置の効果]
本発明の第一実施形態にかかる検体情報処理装置1によれば、筐体部21における外部刺激供給源31からの外部刺激信号による影響を回避しうる部位に、第1センサ41が設けられていることにより、外部刺激信号による第1センサ41への影響を避けて、外部刺激信号の影響を受けた検体91における血管93の脈動性信号を検出することができる。
また、第一実施形態にかかる検体情報処理装置1によれば、検体情報処理装置1の開口部22が血管93の上に位置して装着されることで、第1センサ41の圧力情報の取込部42が血管93の直上になくとも、血管の脈動性信号の検出を行い、また、外部圧力信号を分離することができる。すなわち第1センサ41と血管93の位置関係の正確さを要求しない仕組みを持つ検体情報処理装置1を提供することができる。
また、第一実施形態にかかる本検体情報処理装置1は脈動性信号の検出に際して、開口部22を検体91に対向させることで、第1センサ41と検体91の皮膚92との間に空洞23がクローズドキャビティを形成する。本検体情報処理装置1は開口部22の口径を所定の大きさにを限定しているため、開口部22が受けとる圧力情報の範囲が限定され、本検体情報処理装置1の圧力センサとしてのセンシング範囲が狭く限定される。これにより、圧電素子やマイクロホン等の他のセンサを用いて開放系でセンシングする場合に比して高い指向性(あるいは空間分解能)を持つ検体情報処理装置1を提供することができる。
また、第一実施形態にかかる本検体情報処理装置1の指向性を利用して、血管93から近い位置で脈動性信号を検出することにより、脈動性信号のS/N比及び感度を向上させることができる。
さらに、第一実施形態にかかる本検体情報処理装置1によれば、外部刺激信号の影響を受けた検体91における血管93の脈動性信号から、信号分離部71によって外部刺激信号に応じて発生する外部圧力信号を分離することができ、信号補正部72によって少なくとも脈動性容積信号、脈動性速度信号および脈動性加速度信号のうちの1つの信号を取り出すことができる。
通常、血管93の脈動性信号の大きさは、外部圧力信号よりも大きいことが知られており、第1センサ41により検出した脈動性信号そのままでは、外部圧力信号が脈動性信号に隠れてしまうため、十分な精度での解析を行うことが困難である。本装置は、上記の構成により、信号分離部71によって外部刺激信号に応じて発生する外部圧力信号を分離することで、強度の微弱な血管93からの外部圧力信号であっても、脈波の影響を受けずに高精度に脈動性信号から分離することが可能となる。
また、第一実施形態にかかる検体情報処理装置1によれば、外部圧力信号を分離し、少なくとも脈動性容積信号、脈動性速度信号および脈動性加速度信号のうちの1つの信号とを取り出すことによって、外部圧力信号と、脈波波形とを同時に且つ簡便に得ることが可能となり、検体91の状態の診断に役立てることができる。
[2.ECM及びMEMS−ECMについて]
本検体情報処理装置1の第1センサ41に用いられるセンサに関して、まずはマイクロホンのクローズドキャビティと周波数応答との関係についてについて説明し、次に、ECM及びMEMS−ECM、並びにこれらを用いた脈動性信号の検出、周波数特性、及び周波数補正処理について説明する。
[2−1.クローズドキャビティと周波数応答]
本検体情報処理装置1は、血管93の脈動性信号の振動を第1センサ41によって開放状態(開放系)で測定を行うのではなく、第1センサ41と振動源との関係において、第1センサ41の空気室44と連通する空洞23が閉鎖された空間構造(クロ−ズドキャビティ)を形成するようにして測定した状態、すなわち第1センサ41と振動源とをクローズの状態にして測定する。
このことを説明するために、センサ(マイクロホン)の開放状態とクローズの状態での周波数応答の相違について説明する。
検体91における血管93の脈動性信号を検出するにあたって、検体91のどこからでも、心臓の動きに端を発する振動を捉えることはできる。しかし、その動きの振幅はきわめて小さく、単にマイクロホン等の圧力を感知できるものを人体の近くに配置しても、心臓の動きに端を発する振動を検出することは困難である。それはセンサを開放状態にした場合では、音の放射の原理でいったん空間に放射された振動は、図19に示すように、その素子の固有周波数f0においてレスポンスがピークとなり、固有周波数f0よりも高周波数領域では定出力となるが、低周波数領域に向けていわゆる−40dB/decのカーブをたどり、心臓の動きの基本周波数のところではきわめて微少な信号になっている周波数応答を示すためである。小型の音響機器では固有周波数は数kHzであるとされており、心臓の動き等の1Hz付近では高い周波数に対する振幅に対して−120dB以下に信号が減衰することになり、レスポンスが低く十分な感度で測定を行うことが困難である。図19で何本ものトレースがあるのはいわゆるダンピングファクターの差であり、横軸のfoの位置が固有周波数を意味する。
一方で、この振動を感知する素子(センサ)の先端に閉じた空間を作り上げてクローズの状態にすることで、周波数特性は一変し図20のようになる。図20における複数のトレースの存在は先に説明したとおり、いわゆるダンピングファクターの差である。図20からは、クロ−ズドキャビティ形成時には、低周波領域の信号を感度よく測定可能であることが分かる。これは図19の開放状態の周波数応答と比較すると、1Hz付近の心臓の振動であっても、固有周波数f0付近の振動と同ゲインで正しい振幅で検出できることを意味している。このことは振動を音響エネルギーとして空気中に放出するのではなく、閉じた空間の圧力変化に変換しているためであると考えられる。
上述のとおり、センサ(ECM)をクロ−ズドキャビティを形成するようにして、クローズの状態にして測定することで、低周波数領域の周波数応答を向上させることができる。
すなわち、本装置では、従来測定が困難であった、1Hz付近の検体91における血管93の脈動性信号に起因する圧力情報を受けて、検体91における血管93の脈動性信号を感度良く検出することができ、さらには1Hz付近の脈動性信号から検体91の呼吸信号を抽出することができるものである。
[2−2.ECMについて]
上述したような閉じた空間(空洞)の圧力変化として、微少振動を検出するときに最も身近なものはマイクロホンである。その中でも、ECM(electret condenser microphone、エレクトレットコンデンサーマイクロホン)は、この用途には特に適したものである。ECMは携帯電話等への応用が進み、小型化、安定化は言うまでも無く、大量生産による入手しやすさが魅力である。
ECMはエレクトレット膜をコンデンサーマイクロホンの振動膜あるいは固定電極に融着させ、高感度・低電圧駆動を実現させた小型マイクロホンである。
図21に示すように、ECM201の筐体208は、外部と連通し窓のような形状からなる空気穴202を有しており、筐体208の内部の内部の空間である空気室205に、空気穴202に面したダイヤフラム203とバックプレート204とが対向して設けられている。ここでは、ダイヤフラム203としてエレクトレット膜を用いている。ダイヤフラム203及びバックプレート204には図示するように電極206が取り付けてあり、バックプレート204が固定電極となり、ここから信号を電圧の変化として検出することができ、ダイヤフラム203とバックプレート204との間のキャパシタンス(静電容量)を測定することができるようになっている。また、低インピーダンスで信号を取り出すために、電界効果トランジスタやCMOS系のICがインピーダンス変換素子として用いられる。空気穴202の口径は空気的な周波数特性の調整に用いられるが、おおむね筐体208における空気穴を有する側の径の1/3程度である。例えば、一般的な6mm径のECMの場合、空気穴の口径は2mmほどである。また、この空気穴はひとつの穴でなく、さらに小さな空気穴を複数持つものも市販されている。
振動源から振動が発生した場合、空気穴202を通じて伝わる空気室205の空気の振動がダイヤフラム203を押す力となって働き、ダイヤフラム203とバックプレート204との距離が変化することによりキャパシタンス(静電容量)の変化が生じる。
ECM201ではダイヤフラム203とバックプレート204との間に一定の電荷(Q)を、動作時は常に付加し動作させる。さらにダイヤフラム203とバックプレート204との間の距離を(d)、これらの面積を同じとして(S)とすると、このECM201の静電容量(C)は次の式(1)で定義できる。
C∝S/d (1)
(上記(1)式において、∝は比例を意味する。)
一方、電磁気学から
Q=C×V (2)
上記式(2)の関係が成り立つので、これらの式から、ECM201から検出される電圧(V)は、下記式(3)で表わされる。
V∝Q×d/S (3)
式(3)から明らかなように、電荷(Q)と面積(S)は空気圧で変化することは無い定数のため、電圧(V)はダイヤフラム203とバックプレート204の距離(d)に比例することになり、図21の空気穴202から入ってくる空気振動は電圧Vの形で検出できることになる。
このようにして静電容量変化を電圧に変換することで、振動を測定することができる。検体91における血管93の脈動性信号に起因する圧力情報も、血管93の脈動性信号が検体91の皮膚92に伝わり、皮膚92の振動が空洞23内の空気を振動させることで、脈動性信号として検出することができる。
図21では、空気穴202にダイアフラム203が対向している構成を挙げたが、ダイヤフラム203とバックプレート204は空気穴202に対して逆向きに設けても良い。即ち、空気穴202に面したバックプレート204とダイヤフラム203とを対向して設けても良い。
ここではダイヤフラムとしてエレクレット膜を用いている構成を説明したが、ダイヤフラムに外部から直流電圧をかける方式のECMも本発明に用いることができる。
[2−3.MEMS−ECMについて]
近年、ECMは小型化の要求からダイヤフラムに半導体プロセスによるシリコン性のダイヤフラムを用いることが多くなっている。このようなECMをMEMS(microelectromechanical system)−ECMという。
MEMS−ECMは半導体プロセスによりサブμmオーダーの加工・成膜技術により立体的に微細加工を施した超小型のECMであり、一般に“シリコンマイクロホン”とも呼ばれる。MEMS−ECMは、原理的にはECMと同一であるが、ECMよりもサイズが小さく、空間を用いて周波数特性を調整するため、空気穴(音孔ともいう)のサイズは直径1mmに満たないのが普通である。MEMS−ECMは感度・S/N・周波数特性ともに、通常のECMと比して遜色はなく、品質のばらつきも小さいことが知られている。
図22に示すように、MEMS−ECM211は、ダイヤフラムとバックプレートを備えるMEMSチップ212とCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor;相補型金属酸化膜半導体)チップ213が設けられ、ワイヤボンディング214で接続された構成となっている。
図23に示すように、MEMS−ECM211はMEMS−ECM内部の空間である空気室223に面したダイヤフラム221とバックプレート222が対向して設けられ、ダイヤフラム221とバックプレート222との間のキャパシタンス(静電容量)を測定することができるようになっている。ECMと同様に、振動源から振動が発生した場合、外部と連通する図示しない空気穴(音孔)を通じて伝わる空気室223の空気の振動がダイヤフラム221を振動させ、ダイヤフラム221とバックプレート222との距離が変化することによりキャパシタンス(容量)の変化が生じる。この容量変化を電圧に変換することで、振動を測定することができる。なお、ダイヤフラム221とバックプレート222は空気穴(音孔)に対してどちらが対向するように設けても構わない。即ち、空気穴(音孔)に面したダイヤフラム221にバックプレート222を対向して設けても良く、空気穴(音孔)に面したバックプレート222にダイヤフラム221を対向して設けても良い。
図24に示すように、MEMS−ECMは、MEMSチップ部231と、CMOSチップ部234とからなる。図24の等価回路にあるようにインピーダンス変換と増幅のためにCMOS構造のアンプを包含しているため、MEMSチップ部231のダイアフラム232とバックプレート233において生じた電圧の変化は、CMOSチップ部234のバッファ236を介し、更には増幅器235で増幅されて出力されるようになっている。
[2−4.クローズドキャビティの形成と脈動性信号の検出]
これらのECMあるいはMEMS−ECM(シリコンマイクということもある)を用いて、心臓に起因する血管の振動(脈動性信号)を捕らえようとするとき、これらのマイクを図20のような周波数特性で、空洞が形成する閉じた空間(クローズドキャビティ)の圧力変化として検出することが望ましい。そのためには、例えばこれらを直接人体の皮膚に押し付けてしまえばよい。この場合、空気穴とダイヤフラムの間で空間が閉じられるために図20のような周波数特性で信号が検出できるとも考えられる。
しかしながら、実際には、ECMあるいはMEMS−ECMを直接検体91に押し付けても、所望の信号をなかなか得ることができない。最大の原因は、空気穴の径が小さすぎることにあると考えられる。例えば、空気穴の径が2mmのECMでは血管の真上に空気穴が来たときにだけ信号が検出できた。一方で、MEMS−ECMでは空気穴(音孔)の径が血管より細いためか、ほとんど信号の検出が出来なかった。これは、検体91とセンサとの間に開口部22と空洞23を有するセンサ取付部を設けない場合には、ECM又はMEMS−ECMの圧力情報の取込部(空気穴、音孔)42の直下にある血管の脈動性信号を検出できるという特性が影響しているものと考えられる。また、検体91の皮膚組織の柔らかさなどにより圧力情報の取込部42から皮膚組織等が進入し、圧力情報の取込部42が塞がれることも影響しているものと考えられる。
そこで、本検体情報処理装置1では、O−リング24を用いて開口部22と空洞23を有する筐体部21を設け、クローズドキャビティの形成を行ない、空洞23と第1センサ41の圧力情報の取込部42と空気室44を連通させることで、開口部22の範囲内にある低周波の血管93の脈動性信号の検出を可能にしている。
[2−5.ECM及びMEMS−ECMの周波数特性について]
現在の普通のECMやMEMS−ECM等に共通の特性として、風除けの対策が施されていることが挙げられる。携帯電話等のマイクでは、風が強いときの風音、あるいは、使用者が咳き込んだとき(吹かれ)などの急な圧力変化に反応しないように、ダイヤフラムに小さな穴(数十μm)の穴が開けられている。これにより、周波数特性的には低周波分の減衰を招くことになる。遅い空気の流れはこの小さなダイヤフラムの穴を抜けることを考えれば理解しやすい。
なお、半導体プロセスによりダイヤフラムの穴が形成されるMEMS−ECMでは、穴の形成を安定して同品質で行うことが可能であり、ECMと比較するとMEMS−ECM毎の個体間において周波数応答が安定していることが知られている。
低周波領域の感度低下は、可聴音域(20Hz〜)を対象とする通常のマイクロホンの使い方においては風音や吹かれを防止する上で効果的である。しかしながら、本検体情報処理装置1において検出したい脈波の中心周波数は約1Hzであり、呼吸信号の周波数も数Hzオーダーの領域において顕著に現れるため、この低周波領域の感度低下は検出に影響することが考えられる。
そこで、MEMS−ECMを用いた周波数特性の検証について説明する。
上述の通り、本検体情報処理装置1では、脈動性信号の検出及び呼吸信号の抽出を目的とするため1Hzを含む低周波領域における周波数特性を検証する必要がある。周波数特性の検証は、図25に示す構成の機器を用いて行った。
スピーカー403はダイナミック型スピーカーを用い、振動板を取り去り、スピーカーのボイスコイルを残して動く状態にしたままコーン紙を取り除き(Exciterともいう)、その部分にゴムシートを貼り付けてある。このスピーカー403のゴムシートに、Cavityの口径を拡大した周波数特性を検査される(被検)MEMS−ECM405とを向かい合うように圧着して、空気室結合404を形成した。
この状態で、FFTアナライザ401(CF−7200、株式会社小野測器)を低周波信号発生器に用いて0.125〜100Hzの範囲の正弦波掃引によりにより各周波数の信号を出力し、信号をDCパワーアンプ402に入力して増幅を行った。この増幅後の信号を入力1としてFFTアナライザに入力している。
さらに、低周波信号発生器401から発生させた低周波信号でスピーカー403のボイスコイルを駆動することで、スピーカ403からの信号はゴムシートを信号どおりに上下することとなり、振動を感知した被検MEMS−ECM405により生じた信号を、必要に応じて周波数補償回路406に周波数補正を行った信号407(容積脈波信号、速度脈波信号、加速度脈波信号)を入力2としてFFTアナライザに入力した。なお、周波数補償回路406では、後述する周波数補正と同様の処理を行っている。すなわち、被検MEMS−ECM405により生じた信号を積分したものが容積脈波信号、被検MEMS−ECM405により生じた信号を増幅したものが速度脈波信号、被検MEMS−ECM405により生じた信号を微分したものが加速度脈波信号として得られる。
駆動している低周波信号発生器の信号(入力1)と、入力2との振幅と位相特性について、0.125〜100Hzの範囲において掃引した各周波数において(入力2/入力1)の値を128回加算し、これを平均化することで、各周波数におけるMEMS−ECMの低周波特性をの測定と検証を行った。
上述の周波数特性の測定法により、横軸に周波数(Hz)、縦軸に振幅(dB)をとることで、低周波の周波数特性の検証結果は図26のように表わされる。
図26に示すように、検証に用いられたMEMS−ECMの周波数特性は、低周波に向かって、20dB/decの感度低下が認められた。心臓の動きに関するものであれば脈拍は普通1Hz(脈拍が一分間で60の場合)程度なので、これは本来の検出すべき信号の微分特性を示すものといえる。また、100Hz付近に1つの極を持つ微分回路と等価であるといえる。
この時、容積変化などの信号を検出すべき信号とすると、MEMS−ECMで脈波を計測する場合、対象とする周波数帯域(およそ0.5〜10Hz)において、単純な微分回路であって、その計測波形は通常の脈波の微分である速度成分を示すことになり、“速度脈波”であると考えることができる。
また、よく血管の状況を判断するのに用いられる加速度脈波はこの速度脈波をさらに時間微分したものである。
[2−6.周波数補正処理について]
<周波数補正処理>
次に、脈動性信号出力についての周波数補正処理について説明する。
周波数補正処理とは、検体情報検出装置の第1センサ41からの脈動性信号出力について、少なくとも脈動性容積信号、脈動性速度信号、及び脈動性加速度信号のうちの1つの信号を取り出す補正処理をいう。
図26のような応答を示すMEMS−ECMの出力(測定データ)は、速度脈波として得られるため、周波数補正を行わない場合には、速度脈波を得ることができる。
MEMS−ECMの出力から脈波、そして加速度脈波を得るには図27に示すような周波数応答をする電気回路を通過させる周波数補正処理を適用すればよい。
すなわち、MEMS−ECMの出力に対して超低周波域から100Hzまで−20dB/decでその後はフラットなカーブを通過させれば(容積)脈波が得られ、MEMS−ECMの出力に対して超低域から100Hzまで20dB/decで上昇し、その後フラットな電気回路を通せば加速度脈波が得られることになる。また、MEMS−ECMの出力に対して補正処理を行わない場合には、速度脈波が得られる。この様な回路を通過させた後のトータルな周波数特性は図29のようになった。
図29において、Aは速度脈波の周波数特性を示し、Bは容積脈波の周波数特性を示し、Cは加速度脈波の周波数特性を示す。
図29に示すこれらの加速度脈波、速度脈波、容積脈波は、周波数が高くなるにつれて40dB/dec、20dB/dec、0dB/decでゲインが上昇している。脈波の周波数付近ではそれぞれ、加速度脈波、速度脈波、そして脈波を発生する周波数特性となっている。
この周波数補正処理は、速度脈波について、100Hz以下を微分回路で補償する(微分する)ことにより加速度脈波を得ることができ、また、速度脈波について、100Hz以下を積分回路で補償する(積分する)ことにより容積脈波を得ることができる処理と同等の処理を行うものである。また、周波数補正処理では、必要に応じて増幅動作を行っても良い。
また、周波数補正処理とは、脈波の周波数1Hzに対して、微分動作を行うことで加速度脈波を得て、積分動作を行うことで容積脈波を得て、増幅動作を行うことで速度脈波を得る処理であるということもできる。
このような周波数補正を施す回路をアナログ回路で表すと、図28のように構成することができる。
図28において、符号Aで示す部分は増幅動作回路部分であり、符号Bで示す部分は積分動作回路部分であり、符号Cで示す部分は微分動作回路部分である。
<周波数補正処理と脈波波形>
手首橈骨に、開口部22の口径を拡げて空洞23がクロ−ズドキャビティを形成するようにMEMS−ECMを当てて観測したの脈波の波形が図30である。測定により得られた速度脈波(測定データ)の波形は図30(b)のように表わされる。この速度脈波を上述した積分回路での補償により得られる容積脈波は、図30(a)のように表わされる。速度脈波を上述した微分回路での補償により得られる加速度脈波は、図30(c)のように表わされる。
容積脈波、速度脈波、及び加速度脈波の波形は東洋医学を含むいろいろな分野でヘルスケアや疾病の診断に用いられている。一例として、圧電素子を用いて頚動脈の脈波を測定した容積脈波の波形は図31(a)のように表わされる。また速度脈波は図31(b)のように表わされる。また、加速度脈波は図31(c)のように表わされる。
図30(c)及び図31(c)のピークにa〜eの符号を付して示したように、加速度脈波を特徴付けるa〜eのピーク(a波〜e波)が得られる。これらのうちb波とd波の相対的な振幅は心臓血管系の疾患との関連性や年齢・血圧の推定などに用いられ、臨床的に重要視されるファクターである。このb−d波は心臓からの駆出波(Percussion Wave、以下、「PW」ともいう)および血管障壁等からの反射波(Tidal Wave、以下、「TW」ともいう)の合成の様態に由来し、ちょうど容積脈波においては図30(a)におけるPWとTWで示した箇所のくびれの形状により大きく異なる。
図30と図31の波形の比較から、MEMS−ECMを用いて脈波の測定を行うことにより、観察された容積脈波(図30(a))は、S/N比が改善されることでPWとTWにより形成されるギャップが強調されており、また、加速度脈波(図30(c))においても顕著なピークを形成していることがわかる。
本発明の検体情報処理装置1によれば、空洞23がクロ−ズドキャビティを形成することと、第1センサ41としてECM又はMEMS−ECMを用いることにより、従来よりも低周波領域における脈動性信号のS/N比が大きく改善され、より明瞭な脈波を得ることができる。
[3.血管位置の検出と通知について]
<血管位置の検出>
検体情報検出ユニット11を検体91に対向させて設置して、検体情報処理装置1の検体91上の位置を変えながら皮膚92の表面で脈動性信号の検出を行なう。このとき、波形表示器82により表示される脈動性信号の波形を確認することで、検体情報検出ユニット11の位置の変化に伴う検体情報検出ユニット11の第1センサ41からの出力レベルを検出することができる。さらに、検体情報検出ユニット11の第1センサ41からの心拍(脈動性信号)が強く検出された位置(出力レベルとしての脈波波形の振幅が大きく検出された位置)をプロットすることを繰り返すことで、血管93の位置を追跡することができる。図34は、左手の手のひらに検体情報処理装置1の検体情報検出ユニット11を当てて、脈波の速度成分が少しでも検出できる位置を探し、その近辺で検体情報検出ユニット11を少しずつずらしていき、速度脈波の振幅(脈動性信号の出力レベル)が一番大きくなるところをプロットしたものである。
左手の手のひらにおいて動脈が存在することが知られており、動脈の分布についての知見が得られている。この動脈の分布と図34のプロットの分布とを比較すると、図34のプロットは動脈の分布と一致しており、図34のプロットにより動脈が追跡できていることが分かる。図34に示すプロットでは、断続的にプロットが得られており動脈を完全にはトレースしきれていないものの、ECMを第1センサ41に用いた本検体情報処理装置1により、血管分布のような2次元マップを作成することができる。
なお、第1センサ41からの出力レベルとしては、上述のように、波形表示器82により表示される脈動性信号の脈波波形の振幅を用いることができる。脈動性信号としては、容積脈波、速度脈波、または加速度脈波のいずれを用いてもよい。または、コンピュータ81において、信号処理部61から入力された脈動性信号を処理して、脈動性信号の強さを検体情報処理装置1の位置の変化に伴う経時的な値として数値化することで脈動性信号の出力レベルとして比較するようにしてもよい。
<血管位置の通知>
上述したように、本検体情報処理装置1を用いることで、検体情報処理装置1の指向性を利用して、検体情報検出ユニット11の移動に伴って変化する、第1センサ41の出力レベルを検出し、その出力レベルの変化に基づいて検体91の皮膚92の表面において動脈血管の位置を追跡することができる。
次に、本検体情報処理装置1の、この特性を利用して、本検体情報処理装置1による脈動性信号の検出の際に血管位置を通知し、適正な検出位置で本装置の装着と測定を行うことを可能にする装置について説明する
このような血管位置の通知を行う検体情報処理装置1は、レベル検出部と、レベル表示部とをそなえ、レベル表示部が検体情報検出ユニット11に設けられていることにより構成することができる。
レベル検出部は、検体情報検出ユニット11の移動に伴って変化する第1センサ41からの出力レベルを検出するものである。
レベル表示部は、レベル検出部での検出結果に基づいて出力レベル変化情報を表示するものである。レベル表示部は本検体情報処理装置1における視認しやすい箇所、例えば本装置を検体91に装着したときに、本装置の上面となる部位に設けることが好ましい。
血管位置の通知を行う検体情報処理装置1(441)を機能的に表わすとき、例えば、図33に示すように構成することができ、レベル検出部442は、PLL(Phase−locked loop)443、タイミング発生部444、サンプルホールド445、446を備えており、レベル表示部447はコンパレータ448、450、及びLED(Light Emitting Diode;発光ダイオード)449、451を備えている。
検体情報処理装置1により脈波を測定する際に、検体情報検出ユニット11を検体91に対向させて位置を変えながら脈動性信号の検出をすることで、図32に示すように、検体情報検出ユニット11と検体91の動脈血管93との位置関係に応じて、第1センサ41からの出力レベル(脈波の強さ(振幅))がピークt1〜t8のように順に変化する。ここではt1〜t4において、検体情報処理装置1が検体91の動脈血管93に近づくにつれて脈波の振幅が増大し、t4においてピークとなる様子を表わしている。また、t5〜t8において、検体情報処理装置1が検体91の動脈血管93から離れるにつれて振幅が減少している様子を表わしている。
測定により得られた脈波は、まずレベル検出部442において、検体情報検出ユニットの移動に伴って変化する第1センサ41からの出力レベルを検出する。一例として、図33に示すように、PLL443、タイミング発生部444、サンプルホールド445、446を利用して、サンプルホールド445から出力されるピーク値と、サンプルホールド446から出力される1ピーク位置分遅延したピークとを、コンパレータ448、450に入力する。
次に、図33に示すように、レベル表示部において、レベル検出部442からの出力に応じて、出力レベル評価情報を表示する。ここでは、コンパレータ448、450の出力がLowのときに、LED449、451が点灯するように構成されている。このため、コンパレータ450は、サンプルホールド445及びサンプルホールド446からの出力を受けて、サンプルホールド445からの入力がサンプルホールド446からの入力よりも高ければ(図32のt1〜t4の場合)、LED451を点灯させる。コンパレータ448は、サンプルホールド445及びサンプルホールド446からの出力を受けて、サンプルホールド445からの入力がサンプルホールド446からの入力よりも低ければLED449を点灯させる。
LED449、451は、本装置における視認しやすい箇所に設けられているので、動脈血管93の位置に近い、適正な検出位置に対応する部位に本装置が装着されたことを容易に知ることができる。
本検体情報処理装置1は上述のように構成されているため、例えば検体91として人の手首を周方向に一方向に移動させながら脈動性信号の検出をした場合、動脈血管93から離れた状態のt1のピークから、検体情報処理装置1が動脈血管93に近づくにつれて図32のt2〜t3のようにピークが増大し、動脈血管93に最も近づいたt4においてピークが最大となる。この間、レベル検出部442が第1センサ41からの出力レベルを検出して、レベル表示部447はLED449を消灯させ、LED451を点灯させる。さらに、検体情報処理装置1を移動させながら脈動性信号の検出を行うと、検体情報処理装置1が動脈血管93から離れることで、t5〜t8において振幅が減少する。この間、レベル表示部447はLED449を点灯させ、LED451を消灯させる。
LED449及び451を、検体情報検出ユニットに設けておき、例えばLED449を赤色、LED451を青色を発するようにすることで、検体情報処理装置1を移動させながら脈動性信号の検出をする場合に、動脈血管93との位置関係をLEDの点灯状態(点灯色)の変化で使用者に通知することができる。これにより、使用者は検体情報処理装置1を操作しながら、検体情報処理装置1に設けられた手元のLEDを確認することで、簡便に動脈血管93に近い適正な位置に本装置を装着して測定を行なうことができる。また、動脈血管93に近い位置での測定が可能となり、強い脈動性信号を検出することができる。
もちろん、LED449が点灯すると、出力レベルの判定結果を示す表示板(例えば、LED449の点灯により「後」と表示される表示板)を照らし、LED451が点灯すると、LED449が照らす表示板とは別の表示板(例えば、LED451の点灯により「前」と表示される表示板)を照らすように構成することも可能である。このように構成することにより、本装置を使用する者は、表示板の表示に従って操作を行うことで容易に動脈血管93の位置を確認することができ、本装置の適正な装着位置を確認することが出来る。
上述したように、検体情報処理装置1に、レベル検出部とレベル表示部とがそなえられ、レベル表示部が検体情報検出ユニット11に設けられていることにより、簡便に血管93の位置を検出することが可能となる。また、血管93に近い適正な位置に本装置1を装着して測定を行なうことができるため、信号が強くS/N比が高い脈動性信号を検出することができる。また、後述する周波数復調部73により脈動性信号から抽出される呼吸信号のS/N比及び感度も向上させることができる。さらには、血管93に近い適正な位置に本装置を装着することができるため、外部刺激供給源31による外部刺激信号の供給も検体91の血管93に対して効果的に行うことができるため、脈動性信号から分離される外部圧力信号の強度を高めることが可能となる。
〔A2.本発明の第二実施形態〕
[4−1.第二実施形態にかかる検体情報処理装置の構成例]
本発明の第二実施形態にかかる検体情報処理装置1は、一例として図2に示すように構成されている。
第二実施形態にかかる検体情報処理装置1は、一部の構成を除いて上述の第一実施形態にかかる検体情報処理装置1と同様に構成されており、上述の検体情報処理装置1と同様のものについては説明を省略し、同符号を用いて説明する
図2に示すように、本発明の第二実施形態にかかる検体情報処理装置1は、検体情報検出ユニット11と信号処理部61とをそなえて構成されており、信号処理部61は、信号分離部71と、周波数復調部73とを有している。
検体情報検出ユニット11の第1センサ41は、第一実施形態と同様に、筐体部21における外部刺激供給源31からの外部刺激信号による影響を回避しうる部位に設けられている。
周波数復調部73は、検体情報検出ユニット11の第1センサ41によって検出された脈動性信号出力について周波数復調処理を施すことにより、脈動性信号出力に含まれる呼吸信号を抽出するものである。
コンピュータ81は、信号分離部71によって分離された外部圧力信号を利用して、血管93の血液成分を解析することができる。また、コンピュータ81は、周波数復調部73によって抽出された呼吸信号を利用して、検体91の呼吸状態の検査や、検体91の睡眠又は覚醒状態の判断を行うことも出来る。
信号処理部61の信号分離部71から外部圧力信号が波形表示器82に出力されることで、波形表示器82は外部圧力信号の波形を表示する。信号処理部61の周波数復調部73から呼吸信号が波形表示器82に出力されることで、波形表示器82は呼吸信号の波形を表示する。
本発明の第二実施形態にかかる本検体情報処理装置1は、検体91に筐体21の開口部22を密着させることで空洞23が閉鎖された空間構造(クローズドキャビティ)を形成する。この状態で、外部刺激供給源31により検体91の血管93へ向けて外部刺激信号を供給することにより、検体情報検出ユニット11の第1センサ41が外部刺激信号の影響を受けた検体91における検体情報処理装置1の装着部位付近に存在する血管93の脈動性信号に起因する圧力情報を受けて、検体91における血管93の脈動性信号を検出する。さらに、信号処理部61において、第1センサ41によって検出された脈動性信号出力から外部圧力信号を分離するとともに、脈動性信号出力に含まれる呼吸信号を抽出するものである。
[4−2.第二実施形態にかかる検体情報処理装置の機能構成]
図2に示した本発明の第二実施形態にかかる検体情報処理装置1を機能的に表わすとき、検体情報処理装置1は、図6に示すように、検体情報検出ユニット11及び信号処理部61を備えており、信号処理部61は、信号分離部71、及び信号復調部73を有している。検体情報処理装置1において、検体情報検出ユニット11の第1センサ41からの脈動性信号出力を、信号分離部71、及び信号復調部73によって処理するように構成されている。
周波数復調部73は、例えば位相同期回路(Phase−locked loop、以下、「PLL」ともいう)を利用する周波数復調処理により、脈動性信号に変調成分として含まれる呼吸信号を抽出するものである。周波数復調部73により呼吸信号を抽出する処理を、抽出処理ともいう。
[4−3.第二実施形態にかかる検体情報処理装置の動作]
図6に示す本発明の第二実施形態にかかる機能構成を有する検体情報処理装置1の動作は、図10、13のフローチャートに示すように表わされる。
図10のフローチャートに示す動作は上述した通りである。
図13に示すように、検体情報検出ユニット11の第1センサによって脈動性信号を検出する(ステップS41)。次に、信号処理部61の信号分離部71は、検体情報検出ユニット11の第1センサ41によって検出された脈動性信号出力について、周波数復調処理を施し(ステップS42)、脈動性信号出力に含まれる呼吸信号を抽出する(ステップS43)。
<外部圧力信号の分離処理>
本発明の第二実施形態にかかる検体情報処理装置1の機能構成をさらに詳細に表わすとき、検体情報処理装置1は、一例として図38のように表すことができる。検体情報処理装置1は、検体情報検出ユニット11、及び信号処理部61を備えており、信号処理部61は、信号分離部71、及び周波数復調部73を備えている。
検体情報検出ユニット11の第1センサ41からの脈動性信号出力が、信号処理部61に入力されて、信号処理部61の信号分離部71、及び周波数復調部73によって脈動性信号出力が処理される。
周波数復調部73は、検体情報検出ユニット11から入力された脈動性信号について、周波数復調処理を施すことにより、呼吸信号を抽出する。
本発明の第二実施形態にかかる検体情報処理装置1は、信号分離部71において、第1センサ41からの脈動性信号をサンプルホールド623においてホールドし、PLL621に入力される第1センサ41からの脈動性信号を元にして、脈波信号のピークを避けた位置にて信号を入力し、さらにタイミング発生部622により外部刺激供給源31から外部刺激信号が発せられたタイミングの信号を取得する。これにより、外部刺激信号の影響を受けた検体91における血管93の脈動性信号から、外部刺激信号に応じて発生する外部圧力信号を分離することができる。
<呼吸信号の抽出処理>
周波数復調部73を機能的に表わすとき、周波数復調部73は、図18に示すように、位相比較器151、ローパスフィルタ152、VCO(voltage controlled oscillator;電圧制御発振器)153、分周器154を備えている。
周波数復調処理とは、PLLによって位相を同期させた二つの信号を比較することで、脈動性信号に含まれる呼吸信号を抽出する処理である。一例として、図18に示すように、周波数復調部73において、位相比較器151に脈動性信号を入力し、位相比較器151からの出力をローパスフィルタ152に入力してその出力でVCO153の発振周波数を調整し、分周器154によって分周し、位相比較器151に戻してこれらの二つの信号を同期させることで、ローパスフィルタ152の出力波形を呼吸成分として得ることができる。
すなわち、検体の呼吸成分が変調された脈動性信号について、復調処理を施すことにより、呼吸成分を脈動性信号から抽出できるのである。
ここで、上述したとおり、本発明のクロ−ズドキャビティの形成とECM又はMEMS−ECMを組み合わせた検体情報処理装置1とを用いることで、従来よりも低周波領域における脈動性信号のS/N比が大きく改善される。このため、従来の検出装置では見られなかった、脈波の呼吸による周波数変調を確認することができる。
また、従来の検出装置による観察によってベースバンドに現れる、伝送歪みにより復調された脈波を単に0.3Hz以下位の低域通過フィルタによって抜き出すことによる検出とは異なり、本発明のクロ−ズドキャビティの形成とECM又はMEMS−ECMを組み合わせた検体情報処理装置1を用いることで、脈波波形から呼吸信号を復調でき、また検体91の動作状況に応じて呼吸波形が変化する様子を捉えることができる。
[4−4.第二実施形態にかかる検体情報処理装置の効果]
本発明の第二実施形態にかかる検体情報処理装置1によれば、第一実施形態と同様に、外部刺激信号による第1センサ41への影響を避けて、脈動性信号を検出することができる。また、第1センサ41と血管93の位置関係の正確さを要求しない仕組みを持つ検体情報処理装置1を提供することができる。また、高い指向性(あるいは空間分解能)を持つ検体情報処理装置1を提供することができる。また、指向性を利用して、血管93から近い位置で脈動性信号を検出することにより、脈動性信号のS/N比及び感度を向上させることができる。
さらには、本発明の第二実施形態にかかる検体情報処理装置1によれば、外部刺激信号の影響を受けた検体91における血管93の脈動性信号から、信号分離部71によって外部刺激信号に応じて発生する外部圧力信号を分離することができ、周波数復調部73によって脈動性信号から呼吸信号を抽出することができる。これにより、強度の微弱な血管93からの外部圧力信号であっても、脈波の影響を受けずに高精度に脈動性信号から分離することが可能となる。
また、第二実施形態にかかる検体情報処理装置1によれば、外部圧力信号を分離し、呼吸信号を抽出することによって、外部圧力信号と、呼吸信号とを同時に且つ簡便に得ることが可能となり、検体91の状態の診断に役立てることができる。
[4−5.その他]
本発明の第二実施形態にかかる検体情報処理装置1において、筺体部21、外部刺激供給源31、第1センサ41、信号分離部71、及びコンピュータ81は、上述の第一実施形態にかかる検体情報処理装置1と同様に構成することができる。また、本発明の第二実施形態にかかる検体情報処理装置1は、上述の第一実施形態と同様の検体91に適用することができる。また、第二実施形態にかかる検体情報処理装置1の開口部22の口径、クローズドキャビティを形成する材料、第1センサ41の設置位置は、上述の第一実施形態にかかる検体情報処理装置1と同様に構成することができる。
また、本発明の第二実施形態にかかる検体情報処理装置1において、第1センサ41として用いられるECM及びMEMS−ECMは、上述の第一実施形態にかかる検体情報処理装置1のECM及びMEMS−ECMと同様の特性を示し、第一実施形態にかかるECM及びMEMS−ECMと同様に周波数補正処理を行い、第一実施形態にかかる検体情報処理装置1と同様に脈波波形を得ることができる。
また、本発明の第二実施形態にかかる検体情報処理装置1において、第一実施形態にかかる検体情報処理装置1と同様に血管位置を検出することが可能であり、血管位置を通知させるよう構成することができる。
〔A3.本発明の第三実施形態の説明〕
[5−1.第三実施形態にかかる検体情報処理装置の構成例]
本発明の第三実施形態にかかる検体情報処理装置1は、例として図3に示すように構成されている。
第三実施形態にかかる検体情報処理装置1は、一部の構成を除いて第一実施形態及び第二実施形態にかかる検体情報処理装置1と同様に構成されており、上述の検体情報処理装置1と同様のものについては説明を省略し、同符号を用いて説明する
図3に示すように、本発明の第三実施形態にかかる検体情報処理装置1は、検体情報検出ユニット11と信号処理部61とをそなえて構成されており、信号処理部61は、信号分離部71と、信号補正部72と、周波数復調部73とを有している。
検体情報検出ユニット11の第1センサ41は、第一実施形態と同様に、筐体部21における外部刺激供給源31からの外部刺激信号による影響を回避しうる部位に設けられている。
コンピュータ81は、信号分離部71によって分離された外部圧力信号を利用して、血管93の血液成分を解析することができる。また、コンピュータ81は、信号補正部72によって取り出された脈動性容積信号、脈動性速度信号又は脈動性加速度信号を利用して、各信号の波形から検体91の健康状態の診断を行うことが出来る。また、コンピュータ81は、周波数復調部73によって抽出された呼吸信号を利用して、検体91の呼吸状態の検査や、検体91の睡眠又は覚醒状態の判断を行うことも出来る。
信号処理部61の信号分離部71から外部圧力信号が波形表示器82に出力されることで、波形表示器82は外部圧力信号の波形を表示する。信号処理部61の信号補正部72から脈動性容積信号、脈動性速度信号、又は脈動性加速度信号が波形表示器82に出力されることで、波形表示器82は脈動性容積信号、脈動性速度信号、又は脈動性加速度信号の波形を表示する。信号処理部61の周波数復調部73から呼吸信号が波形表示器82に出力されることで、波形表示器82は呼吸信号の波形を表示する。
本発明の第三実施形態にかかる検体情報処理装置1は、検体91に筐体21の開口部22を密着させることで空洞23が閉鎖された空間構造(クローズドキャビティ)を形成する。この状態で、外部刺激供給源31により検体91の血管93へ向けて外部刺激信号を供給することにより、検体情報検出ユニット11の第1センサ41が外部刺激信号の影響を受けた検体91における検体情報処理装置1の装着部位付近に存在する血管93の脈動性信号に起因する圧力情報を受けて、検体91における血管93の脈動性信号を検出する。さらに、信号処理部61において、第1センサ41によって検出された脈動性信号出力から外部圧力信号を分離するとともに、脈動性信号出力から少なくとも脈動性容積信号、脈動性速度信号および脈動性加速度信号のうちの1つの信号を取り出し、脈動性信号出力含まれる呼吸信号を抽出するものである。
[5−2.第三実施形態にかかる検体情報処理装置の機能構成]
図3に示した本発明の第三実施形態にかかる検体情報処理装置1を機能的に表わすとき、検体情報処理装置1は、図7〜9に示すように、検体情報検出ユニット11及び信号処理部61を備えており、信号処理部61は、信号分離部71、信号補正部72、及び周波数復調部73を有している。検体情報処理装置1において、検体情報検出ユニット11の第1センサ41からの脈動性信号出力を、信号分離部71、信号補正部72、及び周波数復調部73によって処理するように構成されている。
検体情報処理装置1における外部圧力信号の分離は、図7に示すように、検体情報検出ユニット11の第1センサ41からの脈動性信号出力を、信号補正部72を介さずに、そのまま信号分離部71において外部圧力信号分離処理を行っても良い。
または、検体情報処理装置1における外部圧力信号の分離は、図8に示すように、検体情報検出ユニット11の第1センサ41からの脈動性信号出力を、信号補正部72において周波数補正処理を行った後に、補正処理後の脈動性容積信号、脈動性速度信号、及び脈動性加速度信号のうちのいずれかの信号について、信号分離部71において外部圧力信号分離処理を行うように構成してもよい。
検体情報処理装置1における呼吸信号の抽出は、図7に示すように、検体情報検出ユニット11の第1センサ41からの脈動性信号出力を、信号補正部72を介さずに、そのまま周波数復調部73において周波数復調処理を行っても良い。
または、検体情報処理装置1における呼吸信号の抽出は、図9に示すように、検体情報検出ユニット11の第1センサ41からの脈動性信号出力を、信号補正部72において周波数補正処理を行った後に、補正処理後の脈動性容積信号、脈動性速度信号、及び脈動性加速度信号のうちのいずれかの信号について、周波数復調部73において周波数復調処理を行うように構成してもよい。
もちろん、検体情報検出ユニット11の第1センサ41からの脈動性信号出力を、信号補正部72において周波数補正処理を行った後に、補正処理後の脈動性容積信号、脈動性速度信号、及び脈動性加速度信号のうちのいずれかの信号について、信号分離部71において外部圧力信号分離処理を行い、周波数復調部73において周波数復調処理を行うように構成してもよい。
[5−3.第三実施形態にかかる検体情報処理装置の動作]
図7に示す機能構成を有する本発明の第三実施形態にかかる検体情報処理装置1の動作は、図10、11、13のフローチャートに示すように表わされる。
図10、11、13のフローチャートに示す動作はそれぞれ上述した通りである。
図8に示す機能構成を有する本発明の第三実施形態にかかる検体情報処理装置1の動作は、図12、13のフローチャートに示すように表わされる。
図12、13のフローチャートに示す動作はそれぞれ上述した通りである。
図9に示す機能構成を有する本発明の第三実施形態にかかる検体情報処理装置1の動作は、図10、14のフローチャートに示すように表わされる。
図10のフローチャートに示す動作はそれぞれ上述した通りである。
図14に示すように、検体情報検出ユニット11の第1センサ41によって脈動性信号を検出する(ステップS51)。次に、信号処理部61の信号補正部72は、検体情報検出ユニット11の第1センサ41によって検出された脈動性信号出力について、周波数補正処理を施し(ステップS52)、脈動性容積信号、脈動性速度信号、及び脈動性加速度信号のうちの一つの信号を取り出す(ステップS53)。これら脈動性容積信号、脈動性速度信号、及び脈動性加速度信号のうちの一つの信号について、信号処理部61の周波数復調部73は、周波数復調処理を施し(ステップS54)、脈動性信号に含まれる呼吸信号を抽出する(ステップS55)。
<外部圧力信号の分離処理>
本発明の第三実施形態にかかる検体情報処理装置1の機能構成をさらに詳細に表わすとき、検体情報処理装置1は、一例として図39のように表すことができる。検体情報処理装置1は、検体情報検出ユニット11、及び信号処理部61を備えており、信号処理部61は、信号分離部71、信号補正部72、及び周波数復調部73を備えている。
検体情報検出ユニット11の第1センサ41からの脈動性信号出力が、信号処理部61に入力されて、信号処理部61の信号分離部71、信号補正部72、及び周波数復調部73によって脈動性信号出力が処理される。
本発明の第三実施形態にかかる検体情報処理装置1は、信号分離部71において、第1センサ41からの脈動性信号をサンプルホールド623においてホールドし、PLL621に入力される信号補正部72によって取り出された脈動性容積信号、脈動性速度信号、及び脈動性加速度信号のうちの1つの信号を元にして、脈波信号のピークを避けた位置にて信号を入力し、さらにタイミング発生部622により外部刺激供給源31から外部刺激信号が発せられたタイミングの信号を取得する。これにより、外部刺激信号の影響を受けた検体91における血管93の脈動性信号から、外部刺激信号に応じて発生する外部圧力信号を分離することができる。
[5−4.第三実施形態にかかる検体情報処理装置の効果]
本発明の第三実施形態にかかる検体情報処理装置1によれば、第一実施形態及び第二実施形態と同様に、外部刺激信号による第1センサ41への影響を避けて、脈動性信号を検出することができる。また、第1センサ41と血管93の位置関係の正確さを要求しない仕組みを持つ検体情報処理装置1を提供することができる。また、高い指向性(あるいは空間分解能)を持つ検体情報処理装置1を提供することができる。また、指向性を利用して、血管93から近い位置で脈動性信号を検出することにより、脈動性信号のS/N比及び感度を向上させることができる。
さらには、本発明の第三実施形態にかかる検体情報処理装置1によれば、外部刺激信号の影響を受けた検体91における血管93の脈動性信号から、信号分離部71によって外部刺激信号に応じて発生する外部圧力信号を分離することができ、信号補正部72によって少なくとも脈動性容積信号、脈動性速度信号および脈動性加速度信号のうちの1つの信号を取り出すことができ、周波数復調部73によって脈動性信号から呼吸信号を抽出することができるこれにより、強度の微弱な血管93からの外部圧力信号であっても、脈波の影響を受けずに高精度に脈動性信号から分離することが可能となる。
また、第三実施形態にかかる検体情報処理装置1によれば、外部圧力信号を分離し、少なくとも脈動性容積信号、脈動性速度信号および脈動性加速度信号のうちの1つの信号を取り出し、呼吸信号を抽出することによって、外部圧力信号と、脈波波形と、呼吸信号とを同時に且つ簡便に得ることが可能となり、検体91の状態の診断に役立てることができる。
[5−5.その他]
本発明の第三実施形態にかかる検体情報処理装置1において、筺体部21、外部刺激供給源31、第1センサ41、信号分離部71、信号補正部72、及びコンピュータ81は、上述の第一実施形態にかかる検体情報処理装置1と同様に構成することができる。また、本発明の第三実施形態にかかる検体情報処理装置1において、周波数復調部73は、上述の第二実施形態にかかる検体情報処理装置1と同様に構成することができる。また、本発明の第三実施形態にかかる検体情報処理装置1は、上述の第一実施形態と同様の検体91に適用することができる。また、第二実施形態にかかる検体情報処理装置1の開口部22の口径、クローズドキャビティを形成する材料、第1センサ41の設置位置は、上述の第一実施形態にかかる検体情報処理装置1と同様に構成することができる。
また、本発明の第三実施形態にかかる検体情報処理装置1において、第1センサ41として用いられるECM及びMEMS−ECMは、上述の第一実施形態にかかる検体情報処理装置1のECM及びMEMS−ECMと同様の特性を示し、第一実施形態ECM及びMEMS−ECMと同様に周波数補正処理を行い、第一実施形態にかかる検体情報処理装置1と同様に脈波波形を得ることができる。
また、本発明の第三実施形態にかかる検体情報処理装置1において、第一実施形態にかかる検体情報処理装置1と同様に血管位置を検出することが可能であり、血管位置を通知させるよう構成することができる。
また、本発明の第三実施形態にかかる検体情報処理装置1において、第二実施形態にかかる検体情報処理装置1と同様に周波数復調処理を行い、第二実施形態にかかる検体情報処理装置1と同様に呼吸信号を抽出することができる。
〔B1.第一変形例の説明〕
[6−1.第三実施形態の第一変形例にかかる検体情報処理装置の構成例]
本発明の第一の変形例にかかる検体情報処理装置1は、例として図15に示すように構成されている。ここでは、上述の第三実施形態に第一の変形例を適用したものを例示して説明する。
第三実施形態の第一変形例にかかる検体情報処理装置1は、一部の構成を除いて上述の第一実施形態、第二実施形態、及び第三実施形態にかかる検体情報処理装置1と同様に構成されており、上述の検体情報処理装置1と同様のものについては説明を省略し、同符号を用いて説明する。
図15に示すように、本発明の第三実施形態の第一の変形例にかかる検体情報処理装置1は、検体情報検出ユニット11と信号処理部61とをそなえて構成されている。
検体情報検出ユニット11は、筐体部21と、外部刺激供給源31と、第1センサ41とを有し、さらに筺体部21に第2センサ51を有している。
信号処理部61は、信号分離部71と、信号補正部72と、周波数復調部73と、信号変換部631とを有している。
第1センサ41は、第一実施形態、第二実施形態、及び第三実施形態と同様に、筐体部21における外部刺激供給源31からの外部刺激信号による影響を回避しうる部位に設けられている。
第2センサ51は、第1センサ41が検出する脈動性信号以外の信号を検出し、信号処理部61に出力するセンサである。
脈動性信号以外の情報として、例えば温度情報や湿度情報を挙げることができ、これらの脈動性信号以外の情報に起因する信号を、第2センサ51で検出する。第2センサ51で検出された信号について変換処理を行うことで、第2センサ51で検出された脈動性信号以外の情報(以下、「第2センサ検出情報」ともいう)を得ることができる。
第2センサ51で検出された信号は、信号処理部61の信号変換部631において、第2センサ51で検出された信号から、第2センサ検出情報を得る変換処理を行うことができる。なお、本変形例では、信号処理部61が信号変換部631を有しているが、信号処理部61が信号変換部631を有さずに、コンピュータ81にて第2センサ51で検出された信号から第2センサ検出情報を得る変換処理を行うようにしてもよい。
第2センサ51の例としては、筐体部21内の温度情報を検出する温度センサや、筐体部21内の湿度情報を検出する湿度センサが挙げられる。
検体情報処理装置1は、信号処理部61において第1センサ41から得られた信号を、分離処理、補正処理、または抽出処理をする際に、第2センサ51からの出力を、処理を行なう際の補正情報として使用することができる。例えば、第2センサ51で温度情報の信号または湿度情報の信号を検出しておくことで、筺体部21内部の空洞23の温度又は湿度の変化が生じた際に、信号処理部61において第1センサ41で検出された脈動性信号の処理を行う際に、検体91から発せられる圧力情報の伝播が温度や湿度に応じて変化することを加味して信号処理に修正を行うことが挙げられる。第2センサ51からの出力としては、第2センサ51で検出された信号を用いてもよく、信号変換部631において変換処理された第2センサ検出情報を用いてもよい。
検出される信号の強さを向上させ、S/N比を上げる観点からは、第2センサ51を2つ以上設けて各センサの信号を加算したものを第2センサ51からの出力信号とすることが好ましい。
第2センサ51の設置位置は、特に限定されない。例えば第2センサ51として温度センサや湿度センサを用いて、外部刺激供給源31として光源を用いて外部刺激として光信号を供給する場合、通常、温度センサや湿度センサは光信号による影響が軽微であるため、筐体部21内をセンシングしうる位置であれば、自由に設置することが出来る。例えば、図36に示すように、第2センサ51を筐体部21の内部の、検体91に対向する部位であって外部刺激供給源31の近傍位置に設置してもよい。
本発明の第三実施形態の第一変形例の検体情報処理装置1は、検体91に筐体21の開口部22を密着させることで空洞23が閉鎖された空間構造(クローズドキャビティ)を形成する。この状態で、外部刺激供給源31により検体91の血管93へ向けて外部刺激信号を供給することにより、検体情報検出ユニット11の第1センサ41が外部刺激信号の影響を受けた検体91における検体情報処理装置1の装着部位付近に存在する血管93の脈動性信号に起因する圧力情報を受けて、検体91における血管93の脈動性信号を検出する。さらに、信号処理部61において、第1センサ41によって検出された脈動性信号出力から外部圧力信号を分離するとともに、脈動性信号出力から少なくとも脈動性容積信号、脈動性速度信号および脈動性加速度信号のうちの1つの信号を取り出し、脈動性信号出力含まれる呼吸信号を抽出するものである。さらに、第2センサ51によって筐体部21内の脈動性信号以外の信号を検出することが出来る。
[6−2.第三実施形態の第一変形例にかかる検体情報処理装置の機能構成]
図15に示した本発明の第三実施形態の第一変形例にかかる検体情報処理装置1を機能的に表わすとき、検体情報処理装置1は、図40に示すように、第三実施形態の情報処理装置1において、検体情報検出ユニット11に第2センサ51が設けられており、第2センサ51によって検出された信号を信号変換部631を介して出力するように構成されている。
<第2センサによって検出された信号の変換処理>
第2センサ51によって検出された脈動性信号以外の信号を変換処理する方法を、図41を用いて説明する。
図41に示すように、第2センサ51によって得られた信号は、センサアンプ811、線形補正部812、電圧変換部813からなる信号変換部631によって変換処理することで、脈動性信号以外の情報(第2センサ検出情報)を得ることができる。
まず、第2センサ51によって、脈動性信号以外の信号は電圧信号として検出される。この電圧信号を、センサアンプ811によって増幅を行う。センサアンプとしては、例えばホイーストンブリッジ構成のセンサアンプを用いることができる。次に、線形補正部812によって、増幅後の電圧信号について、第2センサ51の出力特性に応じて線形に補正する。さらに、電圧変換部813によって、線形補正後の電圧信号と、予め測定しておいた電圧値と脈動性信号以外の情報との関係を示すデータとの比較を行うことで、脈動性信号以外の信号から、脈動性信号以外の情報に変換される。
[6−2.第三実施形態の第一変形例にかかる検体情報処理装置の効果]
本発明の第三実施形態の第一変形例にかかる検体情報処理装置1によれば、第一実施形態、第二実施形態、及び第三実施形態と同様に、外部刺激信号による第1センサ41への影響を避けて、脈動性信号を検出することができる。また、第1センサ41と血管93の位置関係の正確さを要求しない仕組みを持つ検体情報処理装置1を提供することができる。また、高い指向性(あるいは空間分解能)を持つ検体情報処理装置1を提供することができる。また、指向性を利用して、血管93から近い位置で脈動性信号を検出することにより、脈動性信号のS/N比及び感度を向上させることができる。
さらには、本発明の第三実施形態の第一変形例にかかる検体情報処理装置1によれば、第2センサ51によって筺体部21内部の脈動性信号以外の信号(第2センサ検出情報)を検出することができる。
また、信号処理部61において、外部圧力信号を分離し、少なくとも脈動性容積信号、脈動性速度信号および脈動性加速度信号のうちの1つの信号を取り出し、呼吸信号を抽出する際に、第2センサ51によって検出される脈動性信号以外の信号(第2センサ検出情報)を補正情報として利用することで、検体91に対して検出を行う筺体部21の空洞23内の状況に即して、外部圧力信号と、脈波波形と、呼吸信号との取得の精度を向上させることができる。
〔B2.第二変形例の説明〕
[7−1.第三実施形態の第二変形例にかかる検体情報処理装置の構成例]
本発明の第二の変形例にかかる検体情報処理装置1は、例として図16に示すように構成されている。ここでは、上述の第三実施形態に第二の変形例を適用したものを例示して説明する。
第三実施形態の第二変形例にかかる検体情報処理装置1は、一部の構成を除いて上述の第一実施形態、第二実施形態、及び第三実施形態検体情報処理装置1と同様に構成されており、上述の検体情報処理装置1と同様のものについては説明を省略し、同符号を用いて説明する
図16に示すように、本発明の第三実施形態の第二の変形例にかかる検体情報処理装置1は、検体情報検出ユニット11と信号処理部61とをそなえて構成されており、信号処理部61は、信号分離部71と、信号補正部72と、周波数復調部73と、さらに信号解析部74とを有している。
検体情報検出ユニット11の第1センサ41は、第一実施形態、第二実施形態、及び第三実施形態と同様に、筐体部21における外部刺激供給源31からの外部刺激信号による影響を回避しうる部位に設けられている。
信号解析部74は、信号分離部71によって分離された、脈動性信号に含まれる、外部刺激信号に応じて発生する外部信号に起因する圧力信号(外部圧力信号)から、血管93の血液成分を分析して、分析結果を出力するものである。
例えば、外部刺激供給源31として分析の対象となる物質の吸収波長に極大を有する光信号を供給するものを用いた場合、光音響法の手法を利用して、外部圧力信号を解析することにより、血管93中の分析の対象となる物質の濃度の測定が可能となる。一例として、グルコース分子のC−H基やO−H基の吸収波長に極大を有する光信号を供給する光源を用いた場合、予め当該波長に極大を有する光信号を供給した場合の外部圧力信号と分析の対象となる物質の濃度との関係を明らかにしておくことで、分離された外部圧力信号からグルコース濃度を算出することができる。
本発明の第三実施形態の第二変形例にかかる例検体情報処理装置1は、検体91に筐体21の開口部22を密着させることで空洞23が閉鎖された空間構造(クローズドキャビティ)を形成する。この状態で、外部刺激供給源31により検体91の血管93へ向けて外部刺激信号を供給することにより、検体情報検出ユニット11の第1センサ41が外部刺激信号の影響を受けた検体91における検体情報処理装置1の装着部位付近に存在する血管93の脈動性信号に起因する圧力情報を受けて、検体91における血管93の脈動性信号を検出する。さらに、信号処理部61において、第1センサ41によって検出された脈動性信号出力から外部圧力信号するとともに、脈動性信号出力から少なくとも脈動性容積信号、脈動性速度信号および脈動性加速度信号のうちの1つの信号を取り出し、脈動性信号出力含まれる呼吸信号を抽出するものである。さらに、信号解析部74によって血管93の血液成分を分析することができる。
[7−2.第三実施形態の第二変形例にかかる検体情報処理装置の効果]
本発明の第三実施形態の第二変形例にかかる検体情報処理装置1によれば、第一実施形態、第二実施形態、及び第三実施形態と同様に、外部刺激信号による第1センサ41への影響を避けて、脈動性信号を検出することができる。また、第1センサ41と血管93の位置関係の正確さを要求しない仕組みを持つ検体情報処理装置1を提供することができる。また、高い指向性(あるいは空間分解能)を持つ検体情報処理装置1を提供することができる。また、指向性を利用して、血管93から近い位置で脈動性信号を検出することにより、脈動性信号のS/N比及び感度を向上させることができる。
さらには、本発明の第三実施形態の第二変形例にかかる検体情報処理装置1によれば、外部圧力信号を分離し、少なくとも脈動性容積信号、脈動性速度信号および脈動性加速度信号のうちの1つの信号を取り出し、呼吸信号を抽出するとともに、外部圧力信号から血管93の血液成分を得ることが可能となり、検体91の状態の診断にさらに役立てることができる。
(その他)
上記の第一変形例及び第二変形例の説明においては、第三実施形態の変形例を例示して説明したが、第一実施形態又は第二実施形態について、第一変形例又は第二変形例を適用してもよい。また、第一変形例及び第二変形例をともに組み合わせることも可能である。
即ち、検体情報処理装置1が検体情報検出ユニット11と信号処理部61とをそなえて構成されており、検体情報検出ユニット11が、筐体部21と、外部刺激供給源31と、第1センサ41とを有し、信号処理部61が、信号分離部71と、周波数復調部73とを有している場合において、検体情報検出ユニット11が、さらに第2センサ51を有するように構成してもよく、また、信号処理部61が、さらに信号解析部74を有するように構成してもよい。
また、検体情報処理装置1が検体情報検出ユニット11と信号処理部61とをそなえて構成されており、検体情報検出ユニット11が、筐体部21と、外部刺激供給源31と、第1センサ41とを有し、信号処理部61が、信号分離部71と、周波数復調部73とを有している場合において、検体情報検出ユニット11が、さらに第2センサ51を有するように構成してもよく、また、信号処理部61が、さらに信号解析部74を有するように構成してもよい。
上記の説明においては、脈動性信号の処理を検体情報処理装置1が備えるアナログ回路による処理について説明したが、検体情報処理装置1がデジタル回路、例えばデジタルシグナルプロセッサ(以下、「DSP」ともいう)を含む回路を備え、このデジタル回路により信号をデジタル処理する構成としても良い。また、検体情報検出ユニットにより検出された脈動性信号を、検体情報処理装置1の外部のA/Dコンバータを介してコンピュータ81に出力し、CPUで信号を処理する構成としても良い。