以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
[A1.第一実施形態の説明]
[1−1.検体情報検出装置及び検体情報処理装置の構成例]
本発明の第一実施形態にかかる検体情報検出装置1は、一例として、図13、図30に示すように、筐体部11をそなえ、筐体部11に第1センサ12が設けられている。
本発明の第一実施形態にかかる検体情報処理装置2は、一例として、図30に示すように、検体情報検出装置1と、波形等化処理部112と、第1信号処理部113とをそなえて構成されている。
以下、本発明の第一実施形態にかかる検体情報検出装置1及び検体情報処理装置2の構成、並びに各部の構成について詳細に説明する。
<検体情報検出装置の構成>
本発明の第一実施形態にかかる検体情報検出装置1は、一例として、図13、図30に示すように、外耳道91における外部開口部92を塞ぐ筐体部11をそなえ、筐体部11に血管の脈動性信号を検出する第1センサ12が設けられている。
なお、図13は、本発明の第一実施形態に係る検体情報検出装置と外耳との関係の一例を模式的に表す図である。図13では人の耳の構造を示しており、蝸牛と三半規管とを有し前庭神経及び蝸牛神経に接続する内耳、耳小骨と耳菅とを有し鼓膜93から奥の部分である中耳、外耳道91と耳介95を有する外耳94が図示されている。
(筐体部)
筐体部11は、図13に示すように、検体90の外耳道91における外部開口部92を塞いで外耳道91を閉鎖またはほぼ閉鎖された空間構造となる空洞96として形成可能に検体90の外耳94に装着することのできるものである。筐体部11には、図13に示すように、第1センサ12が設けられている。
筐体部11は、外耳道91における外部に開かれた部分の付近である外部開口部92を塞ぐことのできる外形であれば、形状、サイズ、材質ともに限定はされないが、外部開口部92を塞いで外耳道91を閉鎖またはほぼ閉鎖された空間構造となる空洞96として形成可能に検体90の外耳94に装着するために、筐体部11は、図13に示すように、円筒状、ドーム形状、砲弾形状又は釣鐘形状の外形を有することが好ましい。筐体部11はこの外形を有することにより、円筒状、ドーム形状、砲弾形状、又は釣鐘形状の筐体部11の頂部16側を外耳道91の奥方向に向けて挿入することで、筐体部11の頂部16から端部17への外径の広がりに合わせて外部開口部92を好適に塞ぐことができる。
また、筐体部11は、円筒状、ドーム形状、砲弾形状、又は釣鐘形状の頂部16側を外耳道91に挿入した際に外部開口部92を防ぐ大きさを有することが好ましく、筐体部11の周方向の直径が、外耳道91の外部開口部92の内径と略同一か大きいサイズであることが好ましい。この構成により、筐体部11は外部開口部92を好適に塞ぐことができる
また、筐体部11は、弾性素材で構成されていることが好ましく、例えばゴムやシリコンゴムが用いられる。筐体部11が外耳道91の外部開口部92の内部形状に合わせて弾性変形するとともに、外部開口部92を塞ぐように構成されていることが好ましい。この材質により、筐体部11は外耳道91の形状に合わせて外部開口部92を塞ぐことができる。
このような構成を有する筐体部11として、図13に示すように、例えばカナル型インナーイヤホンに用いられるイヤーピース13を用いることができる。
筐体部11は、図13に示すように、イヤーピース13の円筒状、ドーム形状、砲弾形状、又は釣鐘形状の頂部16の中心から筐体部11の内部に向けて凹状に円筒形状の空間を有する凹状部14が形成されていることが好ましく、凹状部には筐体部11の頂部16側と端部17側とを連通する開口部15が設けられていることが好ましい。さらに、イヤーピース13の開口部15に第1センサ12が設けられることで、第1センサ12が開口部15を塞ぐことにより、筐体部が外部開口部92を塞いだ際に、第1センサ12が開口部15を通じて血管の脈動性信号を検出するように構成されていることが好ましい。
(空洞)
図13に示すように、筐体部11により検体90の外耳道91における外部開口部92が塞がれることで、外耳道91と、鼓膜93と、筐体部11とによって、外耳道91が閉鎖またはほぼ閉鎖された空間構造となるよう空洞96が形成される。このように空洞96が形成する閉鎖された空間構造を、「Closed Cavity;クローズドキャビティ」ともいう。なお、筐体部11の開口部15に第1センサ12が設けられた場合、外部開口部92が筐体部11及び第1センサ12によって塞がれることで、外耳道91と、鼓膜93と、筐体部11と、第1センサ12とによって空洞96が形成されるようになっている。
なお、筐体部11により外部開口部92を塞ぐことで外耳道91が閉鎖された空間構造となるようにすることができるが、実際には、例えば外耳道91内に存在する体毛により筐体部11と外耳道91との間に空隙が生じて完全には閉鎖できない場合がある。このため、筐体部11により外部開口部92を塞ぐことで、外耳道91が完全に閉じられた空間構造となる空洞として形成されている場合を、外耳道91が閉鎖された空間構造をとるという。一方、筐体部11により外部開口部92を塞いだ際に、例えば上述したような体毛等の影響により、外部開口部92が塞がれているものの外耳道が完全に閉じられた空間構造とはならない空洞として形成されている場合を、ほぼ閉鎖された空間構造という。
(第1センサ)
第1センサ12は、図13に示すように、筐体部11に設けられ、外耳道91における血管の脈動性信号を、脈動性信号に起因し空洞96内を伝播する圧力情報として検出するものである。
図13に示すように、第1センサ12は、筐体部11の開口部14を塞ぐようにして設けられていることが好ましく、外耳道91と、鼓膜93と、筐体部11と、第1センサ12とによって、外耳道91が閉鎖またはほぼ閉鎖された空間構造となるよう構成されることが好ましい。
外耳道91における血管の振動が、空洞96内を伝播して、開口部14を通じて第1センサ12に伝わることにより、第1センサ12は、外耳道91における血管の脈動性信号を、該脈動性信号に起因し空洞96内を伝播する圧力情報として検出する。なお、第1センサ12により得られる脈動性信号は、血管の脈動に起因する信号、呼吸の振動に起因する信号、上下の歯を当てたときの音、声を発しているときにの音声等が含まれるものである。
第1センサ12としては感圧素子が好ましく用いられ、外耳道91における血管の脈動性信号を検出できるものであれば、特に限定されないが、外耳道91における血管の脈動に起因する外耳道91における皮膚または鼓膜部分の振動によって生じる空気の振動(音圧情報)を電気的に検出するマイクロホン、又は圧電素子のような感圧素子を好適に用いることができる。マイクロホンの中でも、指向性、S/N比、感度の点からコンデンサマイクが好ましく、ECM(electret condenser microphone;エレクトレットコンデンサーマイクロホン、以下、単に「ECM」ともいう)を好適に用いることができる。また、MEMS(microelectromechanical system)技術を用いて作製したECMである、MEMS型ECM(以下、「MEMS−ECM」ともいう)を好適に用いることができる。圧電素子としては、高い圧電性を示すセラミックスとして、チタン酸ジルコン酸鉛(PZTともいう)を使用したPZT圧電素子を好適に用いることができる。また、第1センサ12として、ダイナミックスピーカーを用いるようにしても良い。
なお、外耳道91における血管という場合、外耳道91または鼓膜93に存在する血管をいう。
<検体情報処理装置の構成>
本発明の第一実施形態にかかる検体情報処理装置2は、一例として、図30に示すように、上述の検体情報検出装置1と、第1センサ12からの信号について波形等化処理を施す波形等化処理部112と、波形等化処理部112からの信号から検体の脈波情報または呼吸情報を取り出す第1信号処理部113とをそなえている。また、検体情報処理装置2は、周波数補正処理部111を備えていてもよい。
検体情報処理装置2は検体情報検出装置1と一体として構成されていてもよく、検体情報検出装置1と分離して無線又は有線により電気的に接続されて構成されていてもよい。
(周波数補正処理部)
周波数補正処理部111は、検体情報検出装置1の第1センサ12からの脈動性信号出力について周波数補正処理を施すことで、脈動性信号の有する周波数で少なくとも増幅動作、積分動作および微分動作のうちの1つの動作を行なう電気回路である。周波数補正処理部111は、周波数補正処理を施した信号を波形等化処理部112に出力する。
(波形等化処理部)
波形等化処理部112は、検体情報検出装置1の第1センサ12からの信号について波形等化処理を施すことで、外耳道91が完全に閉じられないことによる脈波検出帯域の周波数特性の劣化を補償する電気回路である。または、波形等化処理部112は、周波数補正処理部111によって周波数補正処理を受けた信号について波形等化処理を施すようにしてもよい。波形等化処理部112は、波形等化処理を施した信号を第一信号処理部113に出力する。
(第1信号処理部)
第1信号処理部113は、波形等化処理部112からの信号に信号処理を施して、波形等化処理部112からの信号から検体の脈波情報または呼吸情報を取り出す電気回路である。検体の脈波情報または呼吸情報を取り出しは、例えば位相同期回路(Phase−locked loop、以下、「PLL」ともいう)を利用する周波数復調処理により脈動性信号に変調成分として含まれる呼吸信号を抽出することにより行われる。第1信号処理部113により検体の脈波情報または呼吸情報を抽出する処理を、抽出処理ともいう。
本発明において、脈波情報とは、検体90の心臓の拍動に伴って生じる血管内の変化を示す信号である。脈波情報は、外耳道91から検出される血管の脈動性信号から、脈波情報以外に起因する信号を除かれたものであることが好ましい。脈波情報としては、例えば、容積脈波信号、速度脈波信号、加速度脈波信号等が挙げられる。
また、呼吸情報とは、検体90の呼吸に伴って生じる呼吸状態を示す信号である。
[1−2.周波数特性と信号処理]
本発明の検体情報検出装置1は、第1センサ12によって外耳道91における血管の脈動性信号を検出し、さらに本発明の検体情報処理装置2は、周波数補正処理部111によって第1センサ12からの信号について周波数補正処理を施し、波形等化処理部112によって第1センサ12からの信号または周波数補正処理部111からの信号について波形等化処理を施すことで、検体90の脈波情報または呼吸情報を取り出す。
ここで、本発明において脈動性信号は、外耳道91が閉鎖またはほぼ閉鎖されたクローズドキャビティを形成するようにした状態で第1センサ12によって検出されるものである。また、脈動性信号は、第1センサの特性によって検出される信号が影響を受け、また外耳道の閉鎖レベルによっても検出される信号が影響を受ける。
このため、第1センサ12によって検出された脈動性信号から脈波情報または呼吸情報を取り出すために、検体情報処理装置2の周波数補正処理部111における信号処理は、クローズドキャビティにおける周波数応答、第1センサの特性、及び外耳道の閉鎖レベルを考慮して、周波数補正処理または波形等化処理等の信号処理を行うことが好ましい。
以下に、クローズドキャビティの形成と周波数応答、第1センサの周波数特性、及び外耳道の閉鎖レベルと周波数特性、並びに周波数特性と信号処理との関係について説明する。
[1−3.クローズドキャビティの形成と周波数応答]
<開放状態における周波数応答とクローズの状態における周波数応答>
本発明の検体情報検出装置1は、血管の拍動に起因する脈動性信号の振動を第1センサ12によって開放状態(開放系)で測定を行うのではなく、第1センサ12と振動源との関係において、外耳道91と、鼓膜93と、筐体部11と、第1センサ12とが閉鎖された空間構造(クロ−ズドキャビティ)を形成するように、すなわち第1センサ12と振動源とをクローズの状態にするようにして測定する。
この測定条件の違いを説明するために、第1センサ12としてマイクロホンを使用した場合における、開放状態とクローズの状態との周波数応答の相違について説明する。
検体90における血管の脈動性信号を検出するにあたって、人体のどこからでも、心臓の動きに端を発する振動を捉えることはできる。しかし、その動きの振幅はきわめて小さく、単にマイクロホン等の圧力を感知できるものを人体の近くに配置しても、心臓の動きに端を発する振動を検出することは困難である。それはセンサを開放状態にした場合では、音の放射の原理でいったん空間に放射された振動は、図26に示すように、その素子の固有周波数f0においてレスポンスがピークとなり、固有周波数f0よりも高周波数領域では定出力となるが、低周波数領域に向けていわゆる−40dB/decのカーブをたどり、心臓の動きの基本周波数のところではきわめて微少な信号になっている周波数応答を示すためである。小型の音響機器では固有周波数は数kHzであるとされており、心臓の動き等の1Hz付近では高い周波数に対する振幅に対して−120dB以下に信号が減衰することになり、レスポンスが低く十分な感度で測定を行うことが困難である。図26で何本ものトレースがあるのはいわゆるダンピングファクターの差であり、横軸のfoの位置が固有周波数を意味する。
一方で、この振動を感知する素子(センサ)の先端に閉じた空間を作り上げてクローズの状態にすることで、周波数特性は一変し図27のようになる。図27における複数のトレースの存在は先に説明したとおり、いわゆるダンピングファクターの差である。図27からは、クロ−ズドキャビティ形成時には、低周波数領域の信号を感度よく測定可能であることが分かる。これは図26の開放状態の周波数応答と比較すると、1Hz付近の心臓の振動であっても、固有周波数f0付近の振動と同ゲインで正しい振幅で検出できることを意味している。このことは振動を音響エネルギーとして空気中に放出するのではなく、閉じた空間の圧力変化に変換しているためであると考えられる。
上述のとおり、第1センサとしてマイクロホンを用いてクロ−ズドキャビティを形成するようにして、第1センサ12と振動源を有する外耳道91とをクローズの状態にして測定することで、脈波が検出される低周波数領域の周波数応答を向上させることができる。
すなわち、本検体情報検出装置1では、クローズドキャビティの形成に伴う周波数応答の変化を利用して、従来測定が困難であった、1Hz付近の検体90における血管の脈動性信号に起因する圧力情報を受けて、検体90における血管の脈動性信号を感度良く検出することができ、また1Hz付近の脈動性信号から検体90の呼吸信号を抽出することができるものである。
<クローズドキャビティの形成と脈動性信号の検出>
第1センサとしてマイクロホンを用いて、心臓に起因する血管の振動(脈動性信号)を捕らえようとするとき、上述したように第1センサ12を図27のような周波数特性で応答させるために、空洞96が形成する閉じた空間(クローズドキャビティ)の圧力変化として検出することが望ましい。そこで、本検体情報検出装置1では、検体90の外耳道91に筐体部11を挿入し、筐体部11で外耳道91における外部開口部92を塞いで、外耳道91と、鼓膜93と、筐体部11と、第1センサ12とによって、外耳道91を閉鎖またはほぼ閉鎖された空間構造となる空洞96として形成するようにして、検体情報検出装置1を検体90に装着するようになっている。これにより、本発明の検体情報検出装置1によれば、図27のような脈波が検出される低周波数領域の周波数応答が向上した周波数特性で信号が検出できると期待される。
[1−4.第1センサの周波数特性と周波数補正処理]
<第1センサの周波数特性について>
第1センサ12としてのマイクロホンに用いられるECMやMEMS−ECM等に共通の特性として、風除けの対策が施されていることが挙げられる。携帯電話等のマイクでは、風が強いときの風音、あるいは、使用者が咳き込んだとき(吹かれ)などの急な圧力変化に反応しないように、ダイヤフラムに小さな穴(数十μm)の穴が開けられている。これにより、周波数特性的には低周波分の減衰を招くことになる。遅い空気の流れはこの小さなダイヤフラムの穴を抜けることを考えれば理解しやすい。
なお、半導体プロセスによりダイヤフラムの穴が形成されるMEMS−ECMでは、穴の形成を安定して同品質で行うことが可能であり、ECMと比較するとMEMS−ECM毎の個体間において周波数応答が安定していることが知られている。
低周波数領域の感度低下は、可聴音域(例えば20Hz以上)を対象とする通常のマイクロホンの使い方においては風音や吹かれを防止する上で効果的である。しかしながら、本検体情報検出装置1において検出したい脈波の中心周波数は約1Hzであり、呼吸信号の周波数も数Hzオーダーの領域において顕著に現れるため、この低周波数領域の感度低下は検出に影響することが考えられる。
MEMS−ECMは前述の風除けのための小さな穴をダイヤフラムに空けており、一例として、Knowles社製のSPM0408(部品型番)の場合には、100Hz付近から低い周波数において20dB/decで周波数の低い方(低域)に向かって減衰しているモデルで周波数特性を推定できる。100Hz付近から高い周波数ではフラットな周波数特性を示す。
一方、ダイナミック型のイヤホンをマイクとして用いた場合は速度応答型の原理により全周波数帯域にわたり20dB/decで低域に向かい減衰しているモデルで周波数特性が示される。
MEMS−ECMとダイナミック型のイヤホンともに、脈波検出帯域である0.1Hzから10Hzの周波数範囲では、20dB/decで低域に向かい減衰している周波数特性であると考えてよい。
ここで、第1センサ12として用いられるダイナミック型のイヤホン、及びMEMS−ECMがクローズドキャビティを形成した場合において、100Hz以下の低周波数領域の周波数特性は、横軸に周波数(Hz)のスケールをLog(対数)としたものとり、縦軸にGain(dB)をとることで、図19(a)のように表わされる。
なお、図19において、図中の横軸の「Log(周波数)」とは、周波数のスケールを対数表記したものを表し、単位はHzである(以降、図中の「Log(周波数)」についても同様)。
図19(a)に示すように、ダイナミック型のイヤホン及びMEMS−ECMの周波数特性は、100Hz以下の低周波数領域に向かって、20dB/decの感度低下が認められる(これを「低周波が落ちる」ともいう)。心臓の動きに関するものであれば脈拍は普通1Hz(脈拍が一分間で60の場合)程度なので、これは本来の検出すべき信号の微分特性を示すものといえる。また、100Hz付近に1つの極を持つ微分回路と等価であるといえる。
この時、血管の脈動の容積変化などの信号を検出すべき信号とすると、第1センサ12としてダイナミック型のイヤホン及びMEMS−ECMを用いてクローズドキャビティを形成して脈波を計測する場合、対象とする周波数帯域(およそ0.5〜10Hz)において、単純な微分回路であって、その計測波形は通常の脈波の微分である速度成分を示すことになり、速度脈波であると考えることができる。
なお、よく血管の状況を判断するのに用いられる加速度脈波はこの速度脈波をさらに時間微分したものである。
<周波数補正処理について>
次に、第1センサ12としてMEMS−ECM、又はダイナミック型のイヤホンを用いた場合の脈動性信号出力の周波数補正処理について説明する。
周波数補正処理とは、検体情報検出装置1の第1センサ12からの脈動性信号出力について、脈動性信号の有する周波数で少なくとも増幅動作、積分動作および微分動作のうちの1つの動作を行なう補正処理をいい、本実施形態では、特に積分動作を行うことが好ましい。この周波数補正処理により、すくなくとも脈動性容積信号、脈動性速度信号、及び脈動性加速度信号のうちの1つの信号を取り出すことが可能であるが、本実施形態では、特に100Hz以下における積分動作により容積脈波を得ることが好ましい。
図19(a)のように、低周波数領域に向かって20dB/decの感度低下する応答を示すダイナミック型のイヤホン及びMEMS−ECMの出力(測定データ)は、速度脈波(脈動性速度信号ともいう)として得られる。このため、クローズドキャビティを形成して、ダイナミック型のイヤホン又はMEMS−ECMを用いて血管の脈動性信号を検出した際に、周波数補正処理を行わない場合には速度脈波を得ることができる。
ダイナミック型のイヤホンまたはMEMS−ECMの出力から脈波(容積脈波)を得るには図19(b)に示すような周波数応答をする電気回路(補償回路)を通過させる周波数補正処理を適用すればよい。
すなわち、ダイナミック型のイヤホン又はMEMS−ECMの出力に対して、図19(b)に示すように超低周波数領域から100Hz付近まで−20dB/decでその後はフラットなカーブを通過させれば脈波(容積脈波)が得られることになる。この様な回路を通過させた後のトータルな周波数特性は図19(c)のようになる。図19(c)に示す容積脈波は、周波数の変化に伴うゲインの変化は0dB/decであり、脈波の周波数付近では容積脈波を発生するフラットな周波数特性となっている。
一方、ダイナミック型のイヤホンまたはMEMS−ECMの出力に対して、超低域から100Hzまで20dB/decで上昇し、その後フラットな電気回路を通せば加速度脈波が得られることになる。また、MEMS−ECMの出力に対して補正処理を行わない場合には、速度脈波が得られる。
上述の周波数補正処理は、ダイナミック型のイヤホン及びMEMS−ECMを用いて血管の脈動性信号を検出した際に得られる速度脈波について、100Hz以下を積分回路で補償する(積分する)ことにより容積脈波を得ることができ、また、速度脈波について、100Hz以下を微分回路で補償する(微分する)ことにより加速度脈波を得ることができる処理と同等の処理を行うものであるということができる。また、周波数補正処理では、必要に応じて増幅動作を行っても良い。
また、周波数補正処理とは、脈波の周波数1Hzに対して、積分動作を行うことで容積脈波を得て、微分動作を行うことで加速度脈波を得て、増幅動作を行うことで速度脈波を得る処理であるということもできる。
本実施形態では、図19(a)に示されるような第1センサ12としてのダイナミック型のイヤホン又はMEMS−ECMによって検出される脈動性信号について、低周波数領域に向かって20dB/decの感度低下がみられる速度脈波の周波数特性から、図19(b)に示されるように超低周波数領域から100Hz付近まで−20dB/decでその後はフラットなカーブを通過させる周波数補正処理を行うことにより、図19(c)に示されるような周波数の変化に伴うゲインの変化は0dB/decであるフラットな周波数特性を有する、容積脈波を得ることで、脈波が検出される1Hz付近の低周波数領域の周波数応答を向上させることが好ましい。
[1−5.外耳道の閉鎖レベルと周波数特性と波形等化処理]
<外耳道の閉鎖レベルと周波数特性と波形等化処理>
上述のクローズドキャビティの形成による周波数応答に鑑みて、検体情報検出装置1によって外耳道91が閉鎖またはほぼ閉鎖されたクローズドキャビティを形成するようにした状態で第1センサ12によって脈動性信号を検出し、この脈動性信号に第1センサ12の周波数特性を考慮して周波数補正処理を行うことにより、低周波数領域が補償された脈波を得ることが出来るとも考えられる。
しかしながら、実際には、例えば外耳道91内には体毛が存在するために、筐体部11と外耳道91との間に空隙が生じて十分に閉鎖できず、完全なクローズドキャビティを形成できない場合がある。このように、外部開口部92が塞がれているものの外耳道91が完全に閉じられた空間構造とはならない空洞として形成されている場合、すなわち完全なクローズドキャビティを形成できない場合を、外耳道の閉鎖レベルが「ほぼ閉鎖」であるという。
このような、外耳道の閉鎖レベルがほぼ閉鎖の場合の脈動性信号の周波数特性は図20(a)のように表される。完全に外耳道91を閉鎖できない場合には、図20(a)に示されるように、高周波数領域から10Hz付近までは図19(c)に示したようにフラットな周波数特性であるものの、脈波検出帯域である0.1〜10Hzの低周波数領域が減衰してGainが落ちることで、検出される脈波の波形が乱れることになる。
このため外耳道の閉鎖レベルがほぼ閉鎖の場合には、図20(b)に示すように、脈波検出帯域である0.1〜10Hzの低周波数領域を上昇させるような周波数補償を行い、脈波の検出に好適なレベルまで持ち上げる必要がある。なお、外耳道91の閉じ方(閉鎖の度合)によって、図20(b)に示すような低周波数領域の減衰は変化するため、変化に応じて補償を行うブースト量を変化させて周波数補償を行うことが好ましい。
このように、完全に外耳道91を閉鎖できず、外耳道91がほぼ閉鎖された空間構造となっている場合に生じる0.1〜10Hzの低周波数領域の減衰を補償するように行う補正を、波形等化処理ともいう。
<波形等化処理と脈波の波形>
クローズドキャビティの形成と外耳道の閉鎖レベルによる周波数特性の変化の一例は、図1、2に示す脈波波形により表すことができる。
指先または腕においてクローズドキャビティを形成、すなわち完全に閉鎖した状態で、MEMS−ECMを第1センサ12として用いて血管の脈動性信号を検出した際に得られる脈波の波形の一例を表すのが図2(b)である。図2(b)に表される波形は、上述したように、クローズドキャビティを形成して脈波を計測する際のMEMS−ECMの周波数特性から、速度脈波であると考えることができる。図2(b)の波形を示す速度脈波の脈動性信号を積分することで、図2(a)の波形を示す容積脈波が得られる。また、図2(b)の波形を示す速度脈波の脈動性信号を微分することで、図2(c)に示す加速度脈波が得られる。
なお、図2(a)〜(c)において、図中横軸の単位[s]は秒を表す(以降、図中の単位[s]についても同様)。
一方、外耳道91に筐体部11を挿入し、筐体部11で外耳道91における外部開口部92を塞いで外耳道91を閉鎖またはほぼ閉鎖された空間構造となる空洞96として形成するようにして、MEMS−ECMを第1センサ12として用いて外耳道91における血管の脈動性信号を検出した際に得られる波形の一例を表すのが図1(b)である。図1(b)の波形を示す脈動性信号を積分することで、図1(a)の波形を示す脈波が得られる。また、図1(b)の波形を示す脈動性信号を微分することで、図1(c)に示す脈波が得られる。
図2において、図2(a)はいわゆる脈波(容積脈波)、図2(b)は速度脈波、図2(c)は加速度脈波を示す。図2(a)〜(c)の各波形と、図1(a)〜(c)の各波形とを比較すると、図1(a)の波形は図2(b)の速度脈波に近く、図1(b)の波形は図2(c)の加速度脈波に近く、図1(c)の波形は図2(b)の加速度脈波の2重微分の波形、又は図2(c)の加速度脈波の微分波形に近いことが分かる。このことは、外耳道91を閉鎖またはほぼ閉鎖された空間構造となる空洞96として形成して脈動性信号を検出した場合の図1(a)〜(c)に表される波形は、クローズドキャビティを形成して脈動性信号を検出した場合の図2(a)〜(c)に表される波形と比較して、これら脈波成分の周波数で新たな微分要素が加わっていることを示す。
ここで、図1(b)に表されるように、外耳道91を閉鎖またはほぼ閉鎖された空間構造となる空洞96として形成するようにして血管の脈動性信号を検出した際に得られる波形を、図2(b)に表されるように、クローズドキャビティを形成した状態で血管の脈動性信号を検出した際に得られる波形のように補正をするには、上述の図20(b)にて説明した波形等化処理における周波数補償と同様に、検出された脈動性信号を、図6に示すように脈波検出帯域である0.1〜10Hzの低周波数領域を上昇させるような周波数補償を行う周波数特性を持つ電気回路に入れればよい。
なお、図6では、一例として、0.1Hzから0.68Hzまで、0.1Hzから7Hzまで、0.1Hzから10.6Hzまで、−20dB/decでその後はフラットなカーブを通過させることで、それぞれ0.1〜10Hzの低周波数領域を上昇させるブースト量が異なる、3通りの周波数特性の補償パターンを示している。
このような周波数特性の補償を実現できる電気回路として、例えば図7のような回路が挙げられる。図7の電気回路は、演算増幅器(以下、オペアンプという)201、容量C1のコンデンサ202、抵抗値R1の抵抗203、抵抗値R2の抵抗204、抵抗値R3の抵抗205からなる。
図7の電気回路の伝達関数は下記式(1)のように表すことができる。
また、図7の電気回路をボード線図で表すと、図8のように表すことができる。
図7、8のR1〜R3及び/またはC1の値を変化させることで、図6に示されるような3種類の周波数特性の補償パターンを実現することが出来る。中でも、R3を変化させることで、図6に示す3パターンのように周波数特性の補償パターンを変化させることが望ましい。アナログ回路ではこのR3を連続的に変化させることが困難である場合があるため、何個かのR3の値を準備してそれらを切り替えて最適なものを選ぶことで、R3の値を変化させることが出来る。
本実施形態では、R1を1kΩ、R2を100kΩ、C1を22μFとし、R3を680Ωの固定抵抗+10kΩの可変抵抗として、R3の10kΩの可変抵抗を動かすことで、図8に示される1/R3C1の値を、図6に示されるように時間周波数で0.68Hz、7Hz、10.6Hzの3通りに変化させることにより、周波数補償を行う電気回路の周波数特性の補償パターンを3つのパターンに変化させた。
図1(a)〜(c)に表される波形を、1/R3C1の値が0.68Hz、すなわち図6に示すように0.1Hzから0.68Hzまでの領域を上昇させるように周波数特性を補償した場合には、図1(a)から図5(a)、図1(b)から図5(b)、図1(c)から図5(c)に表される波形が得られた。図1(a)〜(c)に表される波形を、1/R3C1の値が7Hz、すなわち図6に示すように0.1Hzから7Hzまでの領域を上昇させるように周波数特性を補償した場合には、図1(a)から図3(a)、図1(b)から図3(b)、図1(c)から図3(c)に表される波形が得られた。図1(a)〜(c)に表される波形を、1/R3C1の値が10.6Hz、すなわち図6に示すように0.1Hzから10.6Hzまでの領域を上昇させるように周波数特性を補償した場合には、図1(a)から図4(a)、図1(b)から図4(b)、図1(c)から図4(c)に表される波形が得られた。
これら図3〜図5に表される周波数特性の補償後の波形と、図1に表される周波数特性の補償前の波形と、図2に表されるクローズドキャビティを形成した状態で得られる脈波の波形とを比較すると、図4に表される波形ではブースト量が過多であり周波数特性の補償が過剰であって、図5に表される波形ではブースト量が不足しており周波数特性の補償が不十分であることが分かる。一方で、図3に表される波形は図2に表される波形に近い波形が得られており、ブースト量がほぼ最適であって、周波数特性の補償が適正であることが分かる。すなわち、図6に示した3パータンの周波数特性の補償パターンの中では、外耳道91を閉鎖またはほぼ閉鎖された空間構造となる空洞96として形成するようにして血管の脈動性信号を検出した際に得られる波形を、0.1Hzから7Hzまでの領域を上昇させるように周波数特性を補償したことで、クローズドキャビティを形成した状態で血管の脈動性信号を検出した際に得られる波形と同様の波形を得ることで、波形等化処理を適切な条件で施すことができたことがわかる。
このように、波形等化処理とは、外耳道91を閉鎖またはほぼ閉鎖された空間構造となる空洞96として形成するようにして血管の脈動性信号を検出した際に得られる微分要素が加わっている脈波について、0.1〜10Hzの低周波数領域の減衰を補償するようにして、クローズドキャビティを形成した状態で血管の脈動性信号を検出した際に得られる微分要素が加わっていない脈波を得る補正ともいうことができる。
<最適ブースト量の決定>
波形等化処理においては、図1(b)に表されるように、外耳道91を閉鎖またはほぼ閉鎖された空間構造となる空洞96として形成するようにして血管の脈動性信号を検出した際に得られる波形から、図2(b)に表されるように、クローズドキャビティを形成した状態で血管の脈動性信号を検出した際に得られる波形のように補正をするには、本実施形態における図3の波形が得られるように適正なブースト量を有する周波数特性の補償を行うことが好ましい。このような周波数特性の補償における最適ブースト量の決定について説明する。
周波数特性の補償を行うとともに最適ブースト量を決定する回路の構成は、一例として図9に示すブロック図により表すことができる。
図9に示すように、第1センサ12により検出された耳(外耳道91の血管)からの脈動性信号は、第一周波数特性補償部211、第二周波数特性補償部212、第三周波数特性補償部213にそれぞれ入力されてそれぞれ異なる周波数特性の補償によって、異なるブースト量の周波数補償を受ける。第一周波数特性補償部211、第二周波数特性補償部212、第三周波数特性補償部213において周波数補償を受けた信号は、AD変換・サンプリング215、216、217、及びセレクタ219にそれぞれ出力される。第一周波数特性補償部211、第二周波数特性補償部212、第三周波数特性補償部213は、それぞれ図22(b−1)、図22(b−2)、図22(b−3)に示すように、周波数補償を行う周波数領域が異なり、3通りのブースト量により周波数補償が行われるようになっている。なお、ここでは、一例として、第一周波数特性補償部211では0.1Hzから0.68Hzまで、第二周波数特性補償部212では0.1Hzから7Hzまで、第三周波数特性補償部213では0.1Hzから10.6Hzまで、−20dB/decでその後はフラットなカーブを通過させることで、それぞれ0.1〜10Hzの低周波数領域を上昇させるブースト量が異なる、3通りの周波数特性の補償パターンを示している。
また、図9に示すように、第1センサ12により検出された耳からの脈動性信号は、PLL214に入力される。脈動性信号は脈波の周期成分を持っているため、PLL214によりロックをかけることができる。PLL214は、図21に一例として示すように、脈動性信号の波形の立ち上がりを検出して、脈動性信号の立ち上がりから次の脈動性信号の立ち上がりまでを1周期として検出し、1周期を1024分割して0から1023までの計1024のロック位相をAD変換・サンプリング215、216、217にそれぞれ出力する。
AD変換・サンプリング215、216、217は、アナログ−デジタル変換回路、又はサンプルホールドを行うサンプルホールド回路を含み、PLL214から入力されるロック位相に応じて、第一周波数特性補償部211、第二周波数特性補償部212、第三周波数特性補償部213から入力される信号を、それぞれデジタル変換又はサンプルホールドを行い、論理演算部218に出力するものである。
論理演算部218では、AD変換・サンプリング215、216、217から入力された信号の比較演算を行い、比較結果を2ビットの信号としてセレクタ219に出力する。
セレクタ219では、論理演算部218からの信号を受けて、第一周波数特性補償部211、第二周波数特性補償部212、第三周波数特性補償部213のいずれかからの最適なブースト量の周波数補償を受けた信号を、周波数特性を補償した速度脈波、すなわち波形等化処理を受けた信号として出力する。
以下に、最適なブースト量の周波数補償の決定の処理についてより詳細に説明する。
PLL214により得られるロック位相の処理では、図21に示すように、タイミングa〜eのサンプリング点をとる。PLL214は、脈波波形のがピークをとるPeak値をPLLの同期位相0として、このタイミングをサンプリング点bとする。サンプリング点bの時間軸の前後にサンプリング点aとサンプリング点cを、そして脈波の極性でマイナスに触れる点、すなわち容積脈波の偏曲点にサンプリング点eを、そしてサンプリング点cとサンプリング点eとの間にサンプリング点dを配置する。
図22(a−1)は、第一周波数特性補償部211による周波数補償を受けた脈動性信号の波形を表し、図22(a−2)は第二周波数特性補償部212による周波数補償を受けた脈動性信号の波形を表し、図22(a−3)は第三周波数特性補償部213による周波数補償を受けた脈動性信号の波形を表し、それぞれの波形に対応する前述のタイミングa〜eのサンプリング点を示している。図22(b−1)〜図22(b−3)に示される3通りのブースト量による周波数補償を受けて、各サンプリング点a〜eにおけるサンプル値(信号の強さ)が、図22(a−1)〜図22(a−3)の間で変化していることがわかる。
AD変換・サンプリング215は、第一周波数特性補償部211から入力される周波数補償を受けた信号について、サンプリング点a〜eのサンプル値A1〜A5を取得し、論理演算部218に出力する。AD変換・サンプリング216は、第二周波数特性補償部212から入力される周波数補償を受けた信号について、サンプリング点a〜eのサンプル値B1〜B5を取得し、論理演算部218に出力する。AD変換・サンプリング217は、第三周波数特性補償部213から入力される周波数補償を受けた信号について、サンプリング点a〜eのサンプル値C1〜C5を取得し、論理演算部218に出力する。
論理演算部218では、AD変換・サンプリング215、216、217から出力される、サンプリング点a〜eに対応する各々のサンプル値A1〜A5、B1〜B5、C1〜C5を比較演算する。
ここで、図22(b−1)は、第一周波数特性補償部211による周波数補償の周波数特性を模式的に示したものであって、図22(b−1)に示すように、低周波数領域から0.68Hzまでの領域において周波数補償を行った場合には、補償回路の折れ点が低すぎることになり周波数補償のブースト量が不足する。このような場合には、周波数補償後の波形に微分効果が残ることになる。また、図22(a−1)に示すようにサンプリング点dのサンプル値が負になる傾向が強く、またサンプリング点bでのサンプル値が大きく、サンプリング点aとcでのサンプル値が小さくなり、波形の形状としては本来の波形よりもピークがスリム(急峻)になるというパターンを示す。
図22(b−2)は、第二周波数特性補償部212による周波数補償の周波数特性を模式的に示したものである。図22(b−2)に示すように、低周波数領域から7Hzまでの領域において周波数補償を行った場合には、補償回路の折れ点が最適付近となり周波数補償のブースト量がほぼ最適となる。このような場合には、サンプリング点eの5のサンプル値が負の値となり、サンプリング点dのサンプル値が0に近い値となり、サンプリング点aとサンプリング点cのサンプル値がサンプリング点bのサンプル値の約1/2付近となるというパターンを示す。
図22(b−3)は、第三周波数特性補償部213による周波数補償の周波数特性を模式的に示したものである。図22(b−3)に示すように、低周波数領域から10.6Hzまでの領域において周波数補償を行った場合には、補償回路の折れ点が低すぎることになり周波数補償のブースト量がやや過多となる。このような場合には、サンプリング点bのサンプル値(ピーク値)が、他の周波数補償を行った場合に比べて低くなるというパターンを示す。
このように、周波数補償の周波数特性が異なることでブースト量が変わることにより、周波数補償後に得られる波形が変化し、各サンプリング点におけるサンプル値が変化する。論理演算部218では各サンプリング点のサンプル値を比較することにより、各サンプル値が周波数補償のブースト量が最適となる場合に表れるパターンに最も近くなるような補償を行った周波数特性補償部を決定して、その結果をセレクタ219に出力する。
セレクタ219では、論理演算部218での比較結果を基にして、周波数補償が最適となるような補償を行ったいずれかの周波数特性補償部からの信号を出力することにより、最適ブースト量により波形等化処理が行われた信号を速度脈波として得ることが出来る。
なお、本実施形態では、第一周波数特性補償部211、第二周波数特性補償部212、第三周波数特性補償部213の3つの周波数特性補償部により周波数補償を行いそれらの結果を比較することで最適ブースト量を決定したが、周波数特性補償部は2つでもよく、4つ以上でもよく、複数の周波数特性補償部からの補償結果を比較して行えばよい。
また、本実施形態では、第1センサ12により検出された耳(外耳道91の血管)からの脈動性信号、すなわち、外耳道91を閉鎖またはほぼ閉鎖された空間構造となる空洞96として形成して脈動性信号を検出した場合に検出される速度脈波に微分要素が加わっている信号を入力して、波形等化処理により速度脈波を得る場合について説明したが、周波数補正処理部111により周波数補正処理を行った脈動性信号を入力して波形等化処理を行ってもよい。言い換えれば、外耳道91を閉鎖またはほぼ閉鎖された空間構造となる空洞96として形成して脈動性信号を検出した場合に検出される速度脈波に微分要素が加わっている信号に対して、100Hz以下を積分回路で補償する(積分する)周波数補正処理を行うことで容積脈波に微分要素が加わっている信号となり、この信号を入力して波形等化処理を行ってもよい。この場合、波形等化処理が行われた信号を容積脈波として得ることができる。
<外耳道の閉鎖レベルとイヤホン>
外耳道の閉鎖レベルイヤホンの種類との関係を図18に示す。
外耳道91が開放されている場合、外耳道の閉鎖レベルが「オープン(Open)」という。図18の(a)の実線部に示すように、例えば非カナル型のオープンイヤホンを装着した場合には、外耳道の閉鎖レベルがオープンであるとみなすことができる。この場合、図18(a)に示す破線部の領域の完全に閉鎖から少し閉鎖までのレベルは達成できず、外耳道91においてクローズドキャビティを形成することができないため、クローズドキャビティの形成に伴う周波数応答の変化を利用した脈動性信号の検出は困難である。
外部開口部92が塞がれているものの外耳道91が閉じられた空間構造とはならない空洞として形成されている場合には、外耳道の閉鎖レベルが「少し閉鎖」であるという。図18(b)の実線部に示すように、例えばカナル型のインナー型イヤホンを装着した場合には、外耳道の閉鎖レベルが少し閉鎖であるとみなすことができる。この場合、図18(b)に示す破線部の領域の完全に閉鎖からほぼ閉鎖レベルは達成できず、外耳道91において完全なクローズドキャビティを形成することができないため、クローズドキャビティの形成に伴う周波数応答の変化を利用した脈動性信号の検出は困難である。また、低周波数領域における減衰が高い周波数域から生じることで、波形等化処理の際の補償量を大きくする必要があり、得られる脈動性信号のS/N比が低下すると考えられる。
外部開口部92が塞がれているものの外耳道91が完全に閉じられた空間構造とはならない空洞として形成されている場合、すなわち完全なクローズドキャビティを形成できない場合を、外耳道の閉鎖レベルが「ほぼ閉鎖」という。図18(c)の実線部に示すようにインナー密閉型イヤホンと呼ばれるイヤホンを装着した場合には、外耳道の閉鎖レベルがほぼ閉鎖であるとみなすことが出来る。この場合、図18(c)の破線部に示すように、完全ではないもののクローズドキャビティを形成することができ、上述の波形等化処理により、微分要素が加わっている脈波から、外耳道の閉鎖レベルが完全に閉鎖の状態と同等の脈波を得ることが出来る。また、外耳道の閉鎖レベルが少し閉鎖の場合と比べて、波形等化処理の際の補償量が少なくとも補償が可能となり、得られる脈動性信号の十分なS/N比の確保が可能となる。
外部開口部92が塞がれて外耳道91が完全に閉じられた空間構造となる空洞として形成されている場合を、外耳道の閉鎖レベルが「閉鎖」であるという。この場合、完全に外耳道を閉鎖できず外耳道91がほぼ閉鎖された空間構造となっている場合に生じる低周波数領域の減衰が生じないため、上述の波形等化処理を行うことなく微分要素が加わっていない脈波を得ることができる。
図18に示すように、周波数が20Hz以上である音声、又は歯を打ち合わせた際の音を検出する際には、外耳道の閉鎖レベルがほぼ閉鎖であることが求められる。また、周波数が0.1〜10Hzである脈波を検出する際には、外耳道の閉鎖レベルが完全に閉鎖からほぼ閉鎖であることが求められる。さらには、外耳道の閉鎖レベルがほぼ閉鎖である場合には、波形等化処理により微分要素が加わっていない脈波を得ることが可能である。
[1−6.呼吸信号の抽出処理]
第1信号処理部113によって行われる、検体90の脈波情報または呼吸情報を取り出す(抽出する)処理について説明する。
第1信号処理部113は、例えばPLLを利用する周波数復調処理により脈動性信号に変調成分として含まれる脈波情報または呼吸情報を取り出す、抽出処理を行う。
検体情報処理装置2における検体90の脈波情報または呼吸情報の抽出は、図30に示すように、検体情報検出装置1のセンサ12からの脈動性信号出力を、波形等化処理部112において波形等化処理を行った後に、波形等化処理後の脈動性信号について、第1信号処理部113において周波数復調処理を行う。なお、検体情報検出装置1のセンサ12からの脈動性信号出力について周波数補正処理部111によって周波数補正処理を行い、周波数補正処理後の信号について波形等化処理部112において波形等化処理を行った後に、周波数補正処理及び波形等化処理後の脈動性信号について、第1信号処理部113において周波数復調処理を行ってもよい。
第1信号処理部113を機能的に表わすとき、図28に示すように、第1信号処理部113は、位相比較器231、ローパスフィルタ232、VCO(voltage controlled oscillator;電圧制御発振器)233、分周器234を備えて構成されている。
周波数復調処理とは、PLLによって位相を同期させた二つの信号を比較することで、脈動性信号に含まれる呼吸信号を抽出する処理である。一例として、図28に示すように、第1信号処理部113において、位相比較器231に脈動性信号を入力し、位相比較器231からの出力をローパスフィルタ232に入力してその出力でVCO233の発振周波数を調整し、分周器234によって分周し、位相比較器231に戻してこれらの二つの信号を同期させることで、ローパスフィルタ232の出力波形を呼吸成分として、呼吸情報を得ることができる。
すなわち、検体90の呼吸成分が変調された脈動性信号について、復調処理を施すことにより、脈動性信号に含まれる呼吸成分を、呼吸信号として脈動性信号から抽出できるのである。
また、検体90の呼吸成分が変調された脈動性信号から、脈動性信号に含まれる呼吸成分を除くことで、脈波情報として脈動性信号を抽出できる。
[1−7.第一実施形態にかかる検体情報検出装置及び検体情報処理装置の動作]
本発明の第一実施形態にかかる検体情報検出装置1及び検体情報処理装置2は上述のように構成されており、図13に示すように、検体90の外耳道91に筐体部11を挿入し、筐体部11で外耳道91における外部開口部92を塞いで外耳道91を閉鎖またはほぼ閉鎖された空間構造となる空洞96として形成するようにして、検体情報検出装置1を検体90に装着する。この状態で検体情報検出装置1による血管の脈動性信号の検出と、検体情報処理装置2による信号処理を行う。
以下に、この検体情報検出装置1と検体情報処理装置2との動作の例について説明する。なお、ここでは、周波数補正処理部111によって周波数補正処理を行う場合と行わない場合との2通りの動作について説明する。
(周波数補正処理を行う場合)
周波数補正処理部111は脈動性信号に周波数補正処理を施すことで、脈動性信号の有する周波数で少なくとも増幅動作、積分動作および微分動作のうちの1つの動作を行なう。ここでは、第1センサ12としてMEMS−ECMを用いて、100Hz以下を積分回路で補償する(積分する)ことにより脈動性容積信号(容積脈波)を得て信号処理を行う場合について説明する。
図31に示すように、まず、検体情報検出装置1の第1センサ12によって、外耳道91における血管の脈動性信号を、脈動性信号に起因し空洞96内を伝播する圧力情報として検出する(ステップS11)。
検体情報処理装置2は、周波数補正処理部111によって、周波数補正処理を施すことで、100Hz以下を積分回路で補償する(積分する)して、周波数補正処理を施した信号を波形等化処理部112に出力する(ステップS12)。
次に、検体情報処理装置2は、波形等化処理部112によって、周波数補正処理部111からの信号について波形等化処理を施すことで、0.1〜10Hz付近の脈波検出帯域の周波数特性を補償して、波形等化処理を施した信号を第1信号処理部113に出力する(ステップS13)。
さらに、検体情報処理装置2は、第1信号処理部113によって、波形等化処理部112からの信号に周波数復調処理を施し(ステップS14)、検体90の脈波情報または呼吸情報を取り出す(ステップS15)。
この場合、ステップS11によってMEMS−ECMにより検出される脈動性信号は、100Hz以下の低周波数領域が落ちた脈動性速度信号(速度脈波)の状態であり、さらに外耳道91が完全に封鎖されていないことにより0.1〜10Hz付近の脈波検出帯域が劣化して微分要素が加わった状態である。ステップS12によって周波数補正処理によって積分することにより、脈動性信号から微分要素の加わった脈動性容積信号の信号が得られ、次に、ステップ13によって波形等化処理を行うことで、0.1〜10Hz付近の脈波検出帯域を持ち上げることで、微分要素の加わっていない脈動性容積信号(容積脈波)が得られる。このため、ステップ15により、脈波情報を脈動性容積信号(容積脈波)として得ることができる。
このように、波形等化処理とは、外耳道91を閉鎖またはほぼ閉鎖された空間構造となる空洞96として形成するようにして血管の脈動性信号を検出した際に得られる微分要素が加わっている脈波について、0.1〜10Hzの低周波数領域の減衰を補償するようにして、クローズドキャビティを形成した状態で血管の脈動性信号を検出した際に得られる微分要素が加わっていない脈波を得る補正ともいうことができる。
(周波数補正処理を行わない場合)
ここでは、第1センサ12としてMEMS−ECMを用いて、周波数補正処理部111によって周波数補正処理を施さない場合について説明する。
まず、検体情報検出装置1の第1センサ12によって、外耳道91における血管の脈動性信号を、脈動性信号に起因し空洞96内を伝播する圧力情報として検出する(ステップS21)。
検体情報処理装置2は、波形等化処理部112によって、第1センサ12からの信号について波形等化処理を施すことで、0.1〜10Hz付近の脈波検出帯域の周波数特性を補償して、第1信号処理部113に波形等化処理を施した信号を出力する(ステップS22)。
さらに、検体情報処理装置2は、第1信号処理部113によって、波形等化処理部112からの信号に周波数復調処理を施し(ステップS23)、検体90の脈波情報または呼吸情報を取り出す(ステップS24)。
この場合、ステップS21によってMEMS−ECMにより検出される脈動性信号は、100Hz以下の低周波数領域が落ちた脈動性速度信号(速度脈波)の状態であり、さらに外耳道91が完全に封鎖されていないことにより0.1〜10Hz付近の脈波検出帯域が劣化した状態である。ステップ21によって波形等化処理を行うことで、0.1〜10Hz付近の脈波検出帯域を持ち上げることで、脈動性速度信号(速度脈波)を得られる。このため、ステップ15により、脈波情報を脈動性速度信号(速度脈波)として得ることができる。
[1−8.第一実施形態にかかる検体情報検出装置の効果]
本発明の第一実施形態にかかる検体情報検出装置1によれば、筐体部11により検体90の外耳道91における外部開口部92を塞いで外耳道91を閉鎖またはほぼ閉鎖された空間構造となる空洞96として、第1センサ12が外耳道91における血管の脈動性信号を、脈動性信号に起因し空洞内を伝播する圧力情報として検出することで、外耳道91に存在する血管、特に鼓膜93に存在する血管を利用して、検体90の脈動性信号を検出することが出来る。
また、第一実施形態にかかる検体情報検出装置1によれば、外耳道91と、鼓膜93と、筐体部11と、第1センサ12とが閉鎖された空間構造(クロ−ズドキャビティ)を形成するようにして測定することで、従来よりも低周波数領域における脈動性信号のS/N比及び感度が改善される。また、脈動性信号から抽出される呼吸信号のS/N比及び感度も向上させることができる。
本発明の第一実施形態にかかる検体情報処理装置2によれば、波形等化処理部112によって、外耳道91がほぼ閉鎖されている場合に生じる低周波数領域の減衰を補償することができ、脈波が検出される0.1〜10Hz付近の低周波数領域の脈動性信号の検出感度を上げることができる。また、波形等化処理部112よって、脈動性信号を微分要素の加わっていない速度脈波信号として得ることが出来る。
また、本発明の第一実施形態にかかる検体情報処理装置2によれば、周波数補正処理部111によって、第1センサ12としてダイナミック型のイヤホン、ECM、及びMEMS−ECMを用いた場合に見られる、100Hz付近以下の低周波数領域の周波数特性(低域周波数特性)の感度を向上させて、容積脈波信号を得ることができる。
[A2.第一実施形態の第一変形例の説明]
本発明の第一実施形態の第一変形例にかかる検体情報検出装置及び検体情報処理装置について、上述の第一実施形態に第一の変形例を適用したものを例示して説明する。
第一実施形態の第一変形例にかかる検体情報検出装置及び検体情報処理装置は、一部の構成を除いて上述の第一実施形態と同様に構成されており、上述の検体情報検出装置及び検体情報処理装置と同様のものについては説明を省略し、同符号を用いて説明する。
[2−1.第一実施形態の第一変形例にかかる検体情報検出装置及び検体情報処理装置の構成例]
<検体情報検出装置の構成>
本発明の第一実施形態の第一変形例にかかる検体情報検出装置1は、一例として、図13、図33に示すように、外耳道91における外部開口部92を塞ぐ筐体部11をそなえ、筐体部11に血管の脈動性信号を検出する第1センサ12が設けられている。第一実施形態の第一変形例にかかる検体情報検出装置1では、第1センサ12として、ダイナミックスピーカーが設けられていることが好ましい。
さらに、本発明の第一実施形態の第一変形例にかかる検体情報検出装置1は、図33に示すように、筐体部1に外耳道91における外部開口部92を開放状態にしうる開閉スイッチ機構21が設けられていることが好ましく、開閉スイッチ機構21を開閉制御する開閉スイッチ制御手段22が設けられていることが好ましい。
また、本発明の第一実施形態にかかる検体情報検出装置1は、図33に示すように、開閉スイッチ機構21に開閉意思を伝達する開閉意思伝達手段23をそなえることが好ましい。
また、本発明の第一実施形態にかかる検体情報検出装置1は、筐体部11がイヤホンとして構成され、図33に示すように、イヤホンから供給される音に関し無音状態を検出する無音状態検出手段24をそなえることが好ましい。
また、本発明の第一実施形態にかかる検体情報検出装置1は、第1センサ12がスピーカーとして機能することができ、イヤホンとマイクロフォン(マイク)とを切り替えるイヤホン・マイク切替制御手段25をそなえることが好ましい。
(筐体部)
筐体部11は、図13に示すように、検体90の外耳道91における外部開口部92を塞いで外耳道91を閉鎖またはほぼ閉鎖された空間構造となる空洞96として形成可能に検体90の外耳94に装着することのできるものである。筐体部11には、図13に示すように、第1センサ12が設けられている。また、筐体部11には、図33に示すように、開閉スイッチ機構21、開閉スイッチ制御手段22、開閉意思伝達手段23、無音状態検出手段24を備えていることが好ましい。
筐体部11は、外耳道91における外部に開かれた部分の付近である外部開口部92を塞ぐことのできる外形であれば、形状、サイズ、材質ともに限定はされないが、外部開口部92を塞いで外耳道91を閉鎖またはほぼ閉鎖された空間構造となる空洞96として形成可能に検体90の外耳94に装着するために、筐体部11は、図13に示すように、円筒状、ドーム形状、砲弾形状又は釣鐘形状の外形を有することが好ましい。この外形により、筐体部11は、砲弾形状又は釣鐘形状の突端部側を外耳道91の奥に向け挿入することで、円筒状、ドーム形状、砲弾形状又は釣鐘形状の形状に合わせて外部開口部92を好適に塞ぐことができる。
また、筐体部11は、砲弾形状又は釣鐘形状の突端部側を外耳道91に挿入した際に外部開口部92を防ぐことが好ましく、筐体部11の直径が、外耳道91の外部開口部92の内径と略同一か大きいサイズであることが好ましい。この形状により、筐体部11は、外交部92を好適に塞ぐことができる
より具体的には、筐体部11は、図23(a)に示すように、第1センサ12としてのダイナミックスピーカー31を納めるハウジング38と外耳道91に向けて挿入されるイヤーピース39により構成されていることが好ましい。
ハウジング38は内部に第1センサ12を納める空間40を有し、第1センサ12のセンシング用の第一開口部41、第1センサ12と外部との信号を中継するコード36、37用の第二開口部42が設けられている。
イヤーピース39は、図23(a)に示すように、円筒状、ドーム形状、砲弾形状又は釣鐘形状の形状を有し、円筒状、ドーム形状、砲弾形状又は釣鐘形状の突端部の中心からイヤーピース39の内部に向けて凹状の空間を有する凹状部43が形成されており、凹状部の端部には開口部44が設けられている。イヤーピース39は、ハウジング38の第一開口部41に連結して取り付けられるようになっており、イヤーピース39の凹状部43が筐体部11の凹状部14として機能し、イヤーピース39の開口部44が筐体部11の開口部15として機能する。イヤーピース39は、シリコンゴムのような弾性素材で構成されており、外耳道91の外部開口部92の内部形状に合わせて弾性変形するとともに、外部開口部92を塞ぐように構成されている。この構成により、イヤーピース39は外耳道91の形状に合わせて外部開口部92を塞ぐことができる。このような構成を有するイヤーピース39として、例えばカナル型インナーイヤホンのイヤーピースを用いることができる。
ハウジング38の空間40内には第1センサ12がその圧力情報を検出しうるセンシング部分を第一開口部41に向けて、第1センサ12のコード36、37が第二開口部42からハウジング38の外部に伸ばされるようにして取り付けられている。第1センサ12は、図23(a)に示すように、第1センサ12のコーナー部(周辺部)をハウジング38の空間40の内壁部と密着するように取り付けられていることが好ましい。
第1センサ12は、イヤーピース39の開口部44を通じて、脈動性信号の検出を行う。
筐体部11は、筐体部11が検体90の外耳道91における外部開口部92を塞ぐように検体90の外耳94に装着された状態で、外耳道91を外部空間と連通する連通路が設けられていることが好ましい。
また、筐体部11は、連通路に接続して外部空間側へ延長することで外耳道91を外部空間と連通する、空気の通り道である空気道が設けられていてもよい。
連通路は、一例として、図37(a)に示すように、第1センサ12が、筐体部11のハウジング38の空間40内に、第1センサ12のコーナー部をハウジング38の空間40の内壁部と密着するように取り付けられている場合において、第1センサ12の一部を貫通する空気穴である貫通穴45として形成することができる。
空気道は、一例として、図37(b)に示すように、連通路として形成される貫通穴45に接続し、筐体部11のハウジング38を貫通して外部空間側へ延長する中空状の管である中空菅46として形成することができる。
または、他の例として、筐体部11を外耳道91に挿入して装着する際に、外耳道91における外部開口部92を塞ぐことのできる図示しない弾性部材を有する場合において、外耳道91と外部空間とが連通するようにしてこの弾性部材を貫通する空気穴として連通路を形成することができる。また、筐体部11を外耳道91に挿入して装着する際に、この弾性部材を外耳道91から外部空間側へ延在されるように形成することで、連通路を延長する空気道を形成することができる。
外耳道91と外部空間との間を連通させるか連通させないかは、上述の連通路を塞がないことにより外耳道91における外部開口部92を開放状態にするか、連通路を塞ぐことにより、外耳道91における外部開口部92を閉鎖状態にすることで行うことができる。
または、外耳道91と外部空間との間を連通させるか連通させないかは、上述の空気道を塞がないことにより外耳道91における外部開口部92を開放状態にするか、空気道を塞ぐことにより外耳道91における外部開口部92を閉鎖状態にすることで行うことができる。
このようにして、外耳道91における外部開口部92を開放状態にするか閉鎖状態にするかを切り替えて、外耳道91と外部空間との間を連通させるか連通させないかを制御する処理を、外耳道の開閉処理という。
(空洞)
図13に示すように、空洞96は、筐体部11のイヤーピース39により検体90の外耳道91における外部開口部92が塞がれることで、外耳道91と、鼓膜93と、筐体部11とによって、外耳道91が閉鎖またはほぼ閉鎖された空間構造となるよう形成されるものである。このように空洞96が形成する閉鎖された空間構造を、「Closed Cavity;クローズドキャビティ」ともいう。なお、筐体部11の開口部14は、第1センサ12によって塞がれることで、外部開口部92が塞がれるようになっている。
なお、筐体部11により外部開口部92を塞ぐことで外耳道91が閉鎖された空間構造となるようにすることができるが、実際には、例えば外耳道91内に存在する体毛により筐体部11と外耳道91との間に空隙が生じて完全には閉鎖できない場合がある。このため、筐体部11により外部開口部92を塞ぐことで、外耳道91が完全に閉じられた空間構造となる空洞96として形成されている場合を、外耳道91が閉鎖された空間構造をとるという。一方、筐体部11により外部開口部92を塞いだ際に、例えば上述したような体毛等の影響により、外部開口部92が塞がれているものの外耳道91が完全に閉じられた空間構造とはならない空洞96として形成されている場合を、ほぼ閉鎖された空間構造という。
(第1センサ)
第1センサ12は、図13に示すように、筐体部11に設けられ、外耳道91における血管の脈動性信号を、脈動性信号に起因し空洞96内を伝播する圧力情報として検出するものである。
図23(a)に示すように、第1センサ12は、筐体部11のイヤーピース39の開口部44を塞ぐようにして設けられていることが好ましく、また、図13に示すように、外耳道91と、鼓膜93と、筐体部11のイヤーピース39と、第1センサ12とによって、外耳道91が閉鎖またはほぼ閉鎖された空間構造となるよう形成されることが好ましい。また、第1センサ12には、GND線及び信号線が接続されている。
外耳道91における血管の振動が、空洞96を伝播して、開口部44を通じて第1センサ12に伝わることにより、第1センサ12は、外耳道91における血管の脈動性信号を、該脈動性信号に起因し空洞96内を伝播する圧力情報として検出する。すなわち、筐体部11が外部開口部92を塞いだ際に、外耳道91と、鼓膜93と、筐体部11のイヤーピース39と、第1センサ12とが閉鎖された空間構造(クロ−ズドキャビティ)を形成するように、すなわち第1センサ12と振動源とをクローズの状態にするようにして血管の脈動性信号を検出するように構成されている。
第一実施形態の第一変形例にかかる第1センサ12は、図23(b)に示されるような、コード36、37を有するダイナミックスピーカー31として構成されていることが好ましい。第1センサ12としてダイナミックスピーカー31を用いることにより、第1センサ12は、マイクロフォンとしてもスピーカーとしても機能することができる。
図17(a)、図23(a)に示すように、第1センサ12としてのダイナミックスピーカー31は、振動版32、コイル33、磁石34、ヨーク35を備えている。ダイナミックスピーカー31がスピーカーとして機能する場合には、図17(a)に示すように、入力された電気信号が磁石34及びコイル33の作用により振動版32を振動させて、入力された電気信号に応じて空洞96内を伝播する圧力情報として空気振動を生じさせることで動作する。ダイナミックスピーカー32をマイクロフォンとして機能する場合には、図17(b)に示すように、入力された空気振動が振動版32を振動させて、コイル33及び磁石34の作用で空気振動を気信号に変えることで動作する。
第一実施形態の第一変形例にかかる検体情報検出装置1は、第1センサ12としてダイナミックスピーカー31が設けられていることにより、ダイナミックスピーカーをマイクロフォンとスピーカーとで時分割で切り替えて使用することができる。
。
(開閉スイッチ機構)
第一実施形態の第一変形例にかかる検体情報検出装置1の筐体部11のハウジング38には、開閉スイッチ機構21が設けられている。
開閉スイッチ機構21は、図24(a)に示すような構造を有し、第1センサ12としてのダイナミックスピーカー31に設けられた貫通穴45を塞ぎ又は開放することで、筐体部11を外耳に装着した状態で、外耳道91における外部開口部92を閉鎖状態又は開放状態にするものである。
上述したように、筐体部11が外部開口部92を塞いだ際には、外耳道91と、鼓膜93と、筐体部11のイヤーピース39と、第1センサ12とが閉鎖された空間構造(クロ−ズドキャビティ)を形成するように構成されている。ここで、図24(c)に示すように、第1センサ12としてのダイナミックスピーカー31の一部に、ダイナミックスピーカー31を貫通して、ハウジング38の内部の空間40を連通することができる貫通穴45を設けることにより、外部開口部92を開放状態にすることができる。一方で、図24(b)に示すように、開閉スイッチ機構21により貫通穴45を塞ぐことにより、外部開口部92を閉鎖状態にすることができる。なお、図24(c)に示すように、貫通穴45は、第1センサ12としてのダイナミックスピーカー31の機能を損なわないよう周辺部に設けられることが好ましい。
このように、外耳道91における外部開口部92を開放状態と閉鎖状態を切り替える開閉スイッチ機構21は、図24(a)のように構成されており、電圧の印加により屈曲するバイメタル47と、バイメタル47の先端に設けられた突起部48と、バイメタル47に接続されたバイメタル駆動線49、50からなる。突起部48は、バイメタルの屈曲に合わせて貫通穴45を塞ぐように、ゴム等の弾力性のある素材からなることが好ましい。
バイメタル駆動線49、50を通じて伝達される電圧によりバイメタル47に電圧が引火されると、バイメタル47は加熱を受けて屈曲する。バイメタル47の屈曲により、電圧が印加されている場合と印加されていない場合とでは、突起部48の位置が変化する。図24(b)に示すように、突起部48が貫通穴45を塞ぐ位置となるように、ハウジング38内部に開閉スイッチ機構21を設けることで、開閉スイッチ機構21により外部開口部92を閉鎖状態と開放状態とを切り替えることができる。
なお、図24(a)〜(c)中、図23(a)、(b)と同じ符号は同様の部分を示している。
(開閉スイッチ制御手段)
開閉スイッチ制御手段22は、開閉スイッチ機構21を開閉制御する電気回路である。
開閉スイッチ制御手段22は、バイメタル駆動線49、50を介して、バイメタルへ電圧を印加することで開閉スイッチ機構21を開閉制御を行う。
開閉スイッチ制御手段22は、後述する開閉意思伝達手段23又は無音状態検出手段24からの信号を受信する受信手段を有し、開閉意思伝達手段23又は無音状態検出手段24からの信号に応じて開閉スイッチ機構21を開閉制御することが好ましい。
なお、開閉スイッチ制御手段22は、検体情報処理装置2からの信号を受けて開閉スイッチ機構21の制御を行うようにしてもよい。
(開閉意思伝達手段)
開閉意思伝達手段23は、開閉スイッチ機構21に開閉意思を伝達するものである。
開閉スイッチ制御手段22は、該開閉意思伝達手段23からの信号に応じて該開閉スイッチ機構を開閉制御するように構成されていることが好ましい。
開閉意思伝達手段23としては、開閉スイッチ制御手段22に信号を送信するスイッチを用いて手動でスイッチングを行うことで開閉意思を伝えてもよく、または第1センサ12から検出される信号を利用して開閉意思を伝えてもよい。
第1センサ12から検出される信号を利用する方法としては、歯を噛み合わせる際に生じる振動を開放意思または閉鎖意思として用いることができる。図10は、上下の歯をカチカチと合わせた際に生じる振動を第1センサ12で外耳道91から取り出した信号の波形を表す図である。図10では、周期的な脈波の波形の中に、gの領域において歯を合わせることで生じる特徴的な波形が表れていることが分かる。このような波形は音声帯域ではないため、第1センサからの信号を超低周波から(例えば、0.1Hz付近)拾うことにより検出することができる。
開閉意思伝達手段23の機能構成をブロック図で表すと、一例として、図11のように表すことができる。第1センサ12からの信号を受けて低周波検出部241では、第1センサからの信号に含まれている、低周波である歯を合わせることで生じる振動の信号を検出する。次に、検出された低周波の信号を参照波形(ref)と比較して、レベル検出部242により、歯を合わせることで生じる振動の信号を確認する。レベル検出部242により歯を合わせることで生じる振動の信号が所定のレベルを有すると確認された場合には開閉意思があると判断して、リモコン用エンコーダ(encoder)243により赤外線発射部244作動用の信号をエンコードし、赤外線発射部244から赤外線を発射することで、赤外線受光部を有する開閉スイッチ制御手段22に開閉意思を伝達する。
なお、本変形例では、開閉意思伝達手段23として赤外線発射部244により開閉スイッチ機構21に開閉意思を伝達する構成を示したが、有線や無線信号により開閉スイッチ制御手段22と開閉意思伝達手段23と電気的に接続して開閉意思を伝達してもよい。
開閉意思伝達手段23として歯を合わせることで生じる振動を利用した場合には、ハンズフリーでの操作が可能となる。また、回りに知られるような声を発することなく、周囲の騒音が大きい状況であっても操作が可能となる。
(無音状態検出手段)
無音状態検出手段24は、イヤホンとして機能する第1センサ12から供給される音に関して無音状態を検出するものである。無音状態検出手段24によって無音状態が検出されたときに、開閉スイッチ制御手段22が開閉スイッチ機構21を閉状態に制御するように構成されていることが好ましい。
無音状態の検出は、第1センサ12がスピーカーとして機能する場合に無音状態を検出することで行ってもよく、無音状態の検出は、第1センサ12がマイクロフォンとして機能する場合に無音状態を検出することで行ってもよい。
第1センサ12がスピーカーとして機能する場合に無音状態を検出する際には、スピーカーから出力される外部から第1センサ12への入力信号において、無音部が検出されたタイミングを無音状態として検出することができる。第1センサ12がマイクロフォンとして機能する場合には、第1センサ12によって検出される信号に、脈波に由来する信号以外が見られないタイミングを無音状態として検出することができる。
(イヤホン・マイク切替制御手段)
イヤホン・マイク切替制御手段25は、第1センサ12をスピーカーとして機能するか、マイクロフォンとして機能するかを切り替えることにより、検体情報検出装置1をイヤホンと、マイクロフォン(マイク)とのいずれかに切り替える電気回路である。
イヤホン・マイク切替制御手段25は、開閉意思伝達手段23もしくは無音状態検出手段24からの信号、又は手動による操作を受けて、イヤホンとマイクとの切り替えを行うことが好ましい。
<検体情報処理装置の構成>
本発明の第一実施形態の第一変形例にかかる検体情報処理装置2は、一例として、図33に示すように、上述の検体情報検出装置1と、第1センサ12からの信号について波形等化処理を施す波形等化処理部112と、波形等化処理部112からの信号から検体の脈波情報または呼吸情報を取り出す第1信号処理部113とをそなえている。また、検体情報処理装置2は、第1センサ12からの信号に周波数補正処理を施す周波数補正処理部111を備えていてもよい。
周波数補正処理部111、波形等化処理部112、及び第1信号処理部113は、第一実施形態にかかる検体情報処理装置2と同様に構成されている。
なお、本実施形態では、検体情報検出装置1が、開閉スイッチ制御手段22、及びイヤホン・マイク切替制御手段25をそなえるよう説明したが、検体情報処理装置2が、開閉スイッチ制御手段22、及びイヤホン・マイク切替制御手段25をそなえるよう構成してもよい。
[2−2.開閉スイッチ機構による外耳道の開閉とイヤホン・マイク切替]
本発明の第一実施形態の第一変形例にかかる検体情報検出装置1は、筐体部11を外耳に装着した際に外耳道91が閉鎖またはほぼ閉鎖された空間構造となるよう形成されており、さらに開閉スイッチ機構21によって、筐体部11を外耳に装着した状態で、外耳道91における外部開口部92を閉鎖状態又は開放状態に切り替えることができる。
本発明の第一実施形態の第一変形例にかかる第1センサ12は、ダイナミックスピーカー31として構成され、スピーカーとしてもマイクロフォンとしても機能することで、検体情報検出装置1をイヤホンとマイクロフォン(マイク)とで切り替えることができることが好ましい。
以下に、外耳道91の開閉と外耳道91の開閉処理、イヤホン・マイクの切替とイヤホン・マイクの切替処理について説明する。
<外耳道の開閉とイヤホン・マイクの切替>
本発明の第一実施形態の第一変形例にかかる検体情報検出装置1は、外耳道91と、鼓膜93と、筐体部11のイヤーピース39と、第1センサ12とによって、外耳道91が閉鎖またはほぼ閉鎖された空間構造となるよう形成されており、さらに筐体部11に設けられた開閉スイッチ機構21は、第1センサ12としてのダイナミックスピーカー31に設けられた貫通穴45を塞ぎ又は開放することで、筐体部11を外耳94に装着した状態で、外耳道91における外部開口部92を閉鎖状態又は開放状態にすることができる。
このように外耳道91における外部開口部92の閉鎖状態と開放状態を切り替えることで、例えば第1センサ12としてのダイナミックスピーカー31がマイクロフォンとして機能している場合には、脈動性信号の検出の際に外耳道91における外部開口部92を閉鎖状態とすることにより、外耳道91にクローズドキャビティを形成して、脈動性信号のS/N比及び感度を向上させることができる。一方、第1センサ12としてのダイナミックスピーカー31がスピーカーとして機能している場合には、外耳道91における外部開口部92を閉鎖状態とすることにより、検体情報検出装置1に外部からのオーディオ信号や音声信号等を入力することで密閉型のイヤホンとして使用することができる。また、第1センサ12としてのダイナミックスピーカー31がスピーカーとして機能している場合に、外耳道91における外部開口部92を開放状態とすることにより、密閉型のイヤホンの欠点ともなる外部の音が聞き辛い点や、歩行音やイヤホンのコードの擦れる音等を軽減することができる。
<外耳道の開閉処理とイヤホン・マイクの切替処理>
開閉スイッチ制御手段22、開閉意思伝達手段23、無音状態検出手段24、イヤホン・マイク切替制御手段25による外耳道91の開閉処理及びイヤホン・マイクの切替処理を行うための機能構成は、一例として図25に表すブロック図により表すことができる。
図25に示すように、イヤホン・マイク切替制御手段25により切替されるスイッチ254、255により、第1センサ12としてのダイナミックスピーカーをスピーカーとマイクロフォンとで切り替えることにより、検体情報検出装置1をイヤホンとマイクとで切り替えることができる。
スイッチ254、255は、右耳用と左耳用とのそれぞれの第1センサ12に合わせて一対設けられている。スイッチ254、255は、第1センサの入力ジャック252を介して第1センサ12へと接続されて信号を送受信できるようになっており、一方で、イヤホン切替側とマイク切替側とのどちらかに切り替えて接続できるようになっている。スイッチ254、255がイヤホン側に接続されている場合には、外部入力ジャック251を介して外部からのオーディオ信号や音声信号等が入力されて、第1センサ12のダイヤフラムや振動板を振動させてイヤホンとして動作することができる。一方、スイッチ254、255がマイク側に接続されている場合には、第1センサ12のダイヤフラムや振動板を利用して圧力信号が電気信号として検出されて、マイクとして動作することができる。このとき、第1センサ12で検出された電気信号は脈動性信号として、周波数補正処理部111及び波形等化処理部112に入力されて。補償された脈波波形を得ることができる。この信号は、第1信号処理部113で呼吸信号を抽出したり、周波数補正により容積脈波や加速度脈波にするよう信号処理を行ってもよい。
スイッチ254、255がマイク側に接続されている場合には、第1センサ12からの信号が開閉意思伝達手段23に送信され、例えば歯を合わせる等の開閉意思を示す所定の信号を検出して、イヤホン・マイク切替制御手段25に伝達する。イヤホン・マイク切替制御手段25は、例えば、開閉意思伝達手段23で所定の開閉意思を検出した場合に、イヤホンからマイクへの切り替え、又はマイクからイヤホンに切り替え、さらには開閉スイッチ機構21による外耳道91の開閉を行うように動作することができる。
外部入力ジャック251は、外部からの信号を入力するためのプラグを挿入するジャックを有しており、ジャックにプラグが挿入することを機械的に検出して、イヤホン・マイク切替制御手段25に伝達する。イヤホン・マイク切替制御手段25は、例えば、外部入力ジャックにプラグが挿入された場合に、マイクからイヤホンへ切り替えるよう動作することができる。
外部入力ジャック251から入力された外部からの信号は、無音状態検出手段24に送信される。無音状態検出手段24では無音状態を検出して、イヤホン・マイク切替制御手段25に伝達する。イヤホン・マイク切替制御手段25は、例えば、無音状態検出手段24では無音状態ではない場合にマイクからイヤホンに切り替え、無音状態を検出した場合にイヤホンからマイクに切り替え、さらには開閉スイッチ機構21による外耳道91の閉鎖を行うよう動作することができる。
イヤホン・マイク切替制御手段25は、開閉意思伝達手段23、無音状態検出手段24、外部入力ジャック251からの信号を受けて、スイッチ254、255を切り替えるとともに、開閉スイッチ制御手段22に信号を送り、開閉スイッチ機構21を動作させることで、イヤホンとマイクとの切り替え、及び外耳道91の開閉状態の制御を行うことができる。なお、イヤホン・マイク切替制御手段25は、手動によって、または検体情報検出装置1もしくは検体情報処理装置2に備えられたCPU253によって制御を行ってもよい。
開閉スイッチ制御手段22は、イヤホン・マイク切替制御手段25からの信号を受けて、第1センサの入力ジャック252を介して、開閉スイッチ機構21のバイメタル47を加熱することで、外耳道91の開閉状態を制御することができる。
[2−3.第一実施形態の第一変形例にかかる検体情報検出装置及び検体情報処理装置の動作]
本発明の第一実施形態の第一変形例にかかる検体情報検出装置1及び検体情報処理装置2では、第一実施形態にかかる検体情報処理装置1及び検体情報処理装置2と同様に、検体情報検出装置1の第1センサ12によって脈動性信号を検出し、体情報処理装置2は、第1センサ12からの脈動性信号出力について、周波数補正処理部111によって周波数補正処理を施し、波形等化処理部112によって、周波数補正処理部111からの信号について波形等化処理を施し、第1信号処理部113によって波形等化処理部112からの信号に周波数復調処理を施し、検体90の脈波情報または呼吸情報を取り出す。
このとき、本発明の第一実施形態の第一変形例にかかる検体情報検出装置1では、開閉意思伝達手段23、又は無音状態検出手段24からの信号に応じて、開閉スイッチ制御手段22によって開閉スイッチ機構21を開閉制御することにより、外耳道91における外部開口部92を開放状態と閉鎖状態とで切り替える。また、イヤホン・マイク切替制御手段25により、第1センサ12をスピーカーとして機能するか、マイクロフォンとして機能するかを切り替えることにより、検体情報検出装置1をイヤホンとマイクロフォン(マイク)とのいずれかに切り替えて動作する。
これにより、本発明の第一実施形態の第一変形例にかかる検体情報検出装置1によれば、第1センサ12をマイクロフォンとして機能させて検体情報検出装置1をマイクとして用いる場合において、開閉スイッチ機構21により外耳道91における外部開口部92を閉鎖状態とすることで、外耳道91が閉鎖またはほぼ閉鎖された状態として第1センサ12による脈動性信号の検出を行うことができる。
一方、本発明の第一実施形態の第一変形例にかかる検体情報検出装置1によれば、第1センサ12をスピーカーとして機能させて検体情報検出装置1をイヤホンとして用いる場合において、開閉スイッチ機構21により外耳道91における外部開口部92を閉鎖状態とすることで、検体情報検出装置1を密閉型のイヤホンとして利用することができる。また、開閉スイッチ機構21により外耳道91における外部開口部92を開放状態とすることで、検体情報検出装置1を開放型のイヤホンとして利用することができる。
さらには、無音状態検出手段24又は開閉意思伝達手段23を利用することで、検体情報検出装置1を耳に装着した状態において、検体情報検出装置1を開放型のイヤホンとして利用している状態から、スピーカーの無音状態の際又は任意のタイミングで、外耳道91が閉鎖またはほぼ閉鎖された状態として第1センサ12による脈動性信号の検出を行うことができる。
なお、上述の検体情報検出装置及び検体情報処理装置の動作では、開閉スイッチ機構21により外耳道の開閉処理を行う動作について説明したが、外耳道の開閉処理は、筐体部11に形成された、外耳道91を外部空間と連通する連通路又は空気道を手動で開放状態又は閉鎖状態にすることで行ってもよい。例えば、連通路(貫通穴45)又は空気道(中空菅46)の外部空間側を、検体90の手の指で塞いだり、栓をすることにより塞ぐことで、外部開口部92を閉鎖状態にすることができる。または、空気道(中空菅46)をクリップ等の留め具を用いることで挟み込んで塞ぐことで、外部開口部92を閉鎖状態にすることができる。
なお、上述したような、検体の外耳道における外部開口部を塞ぐように該検体の外耳に装着することのできる筐体部と、該筐体部に形成されて、該筐体部が該外耳に装着された状態で該外耳道を外部空間と連通する連通路と、該筐体部に形成されて、該連通路を外部空間側へ延長することで該外耳道を外部空間と連通する空気道と、該筐体部に設けられ、該外耳道における血管の脈動性信号を、該脈動性信号に起因し該空洞内を伝播する圧力情報として検出しうる第1センサとが設けられたものを、本発明の検体情報を検出するための装置という。
検体90の外耳道91における外部開口部92を塞ぐように検体90の外耳94に装着することのできる筐体部11と、筐体部11に形成されて、筐体部11が外耳94に装着された状態で、外耳道91を外部空間と連通する連通路又は空気道と、筐体部11に設けられ、外耳道91における血管の脈動性信号を、脈動性信号に起因し空洞内を伝播する圧力情報として検出しうる第1センサ11とが設けられた検体情報を検出するための装置を用いて、該連通路を閉鎖することで外耳道91を閉鎖またはほぼ閉鎖された空間構造となる空洞96として形成して、脈動性信号を第1センサ12で検出する方法を、本発明の検体情報検出方法という。
本発明の検体情報検出方法により検出される脈動性信号、又は本発明の検体情報を検出するための装置により検出される脈動性信号は、上述の第一実施形態にかかる検体情報検出装置や、第一実施形態の第一変形例にかかる検体情報検出装置によって、外耳道91を閉鎖またはほぼ閉鎖された状態として第1センサ12により検出される脈動性信号と同様の特性を示し、また同様に信号処理を行うことができる。
[2−4.第一実施形態の第一変形例にかかる検体情報検出装置の効果]
本発明の第一実施形態の第一変形例にかかる検体情報検出装置1によれば、前記第一実施形態で得られる効果に加えて、開閉スイッチ機構21により外耳道91における外部開口部92を開放状態と閉鎖状態とで切り替えることで、検体情報検出装置1を外耳94に装着したまま取り替えることなしに、外耳道91の開放状態から、外耳道91を閉鎖またはほぼ閉鎖された状態に切り替えて第1センサ12による外耳道91における血管の脈動性信号の検出を行うことができる。
また、イヤホン・マイク切替制御手段25により、第1センサ12としてのダイナミックスピーカー31をスピーカーまたはマイクロフォンとで切り替えて機能させることで、検体情報検出装置1をマイクとして用いる場合の脈動性信号の検出と、検体情報検出装置1をイヤホンとして用いる場合の動作とを併用することができる。
また、開閉意思伝達手段23により開閉スイッチ機構21に開閉意思を伝達することで、任意のタイミングで外耳道91における外部開口部92を開放状態と閉鎖状態とを切り替えて、脈動性信号の検出を行うことができる。
また、無音状態検出手段によって無音状態が検出されたときに、開閉スイッチ機構21を閉状態に制御することで、自動的に外耳道91における外部開口部92を閉鎖状態に切り替えて、脈動性信号の検出を行うことができる。
[B1.第二実施形態の説明]
本発明の第二実施形態にかかる検体情報検出装置及び検体情報処理装置は、一部の構成を除いて上述の第一実施形態と同様に構成されており、上述の検体情報検出装置及び検体情報処理装置と同様のものについては説明を省略し、同符号を用いて説明する。
なお、第二実施形態における検体情報検出装置1と検体情報処理装置2との動作において、周波数補正処理部111によって周波数補正処理を行う場合と行わない場合と動作は、第一実施形態に準ずる。
[3−1.第二実施形態にかかる検体情報検出装置及び検体情報処理装置の構成例]
<検体情報検出装置の構成>
本発明の第二実施形態にかかる検体情報検出装置1は、一例として、図13、図34に示すように、外耳道91における外部開口部92を塞ぐ筐体部11をそなえ、筐体部11に血管の脈動性信号を検出する第1センサ12が設けられている。
さらに、本発明の第二実施形態にかかる検体情報検出装置1は、図14、図34に示すように、筐体部11に設けられ、外耳94の耳介95を透過するように光信号を発生する第2光源61、62と、筐体部11に設けられ、耳介95を透過した光源61、62からの光信号を受信して、耳介95の血管中の酸素飽和度に関する情報を検出する第2センサ63とが設けられて酸素飽和度測定手段が形成されているか、または、図15、図34に示すように、検体90の耳介95に対向する筐体部11の部位に第2開口部66を有し、第2開口部66に連通するとともに、第2開口部66を耳介95に対向させて検体90に装着された状態で閉鎖された空間構造となる第2空洞67が筐体部11に形成され、筐体部11に設けられ、上記の筐体部11の第2空洞67内を通って筐体部11の第2開口部66を通じ、耳介95の血管へ向けて光信号を供給する複数の光源を備えた合成光学系64と、光信号の影響を受けた上記の検体90における血管からの信号を、第2空洞67内を伝播する圧力情報として受信して、血管中の血糖値に関する情報を検出する第3センサ65とが設けられて血糖値測定手段が形成されている。もしくは、上記の酸素飽和度測定手段と血糖値測定手段がともに形成されていてもよい。
(筐体部)
本発明の第二実施形態にかかる筐体部11は、第一実施形態と同様に、図13に示すように、検体90の外耳道91における外部開口部92を塞いで外耳道91を閉鎖またはほぼ閉鎖された空間構造となる空洞96として形成可能に検体90の外耳94に装着することのできるものである。筐体部11には、図13に示すように、第1センサ12が設けられている。
さらに、本発明の第二実施形態にかかる筐体部11は、図14に示すように、第2光源61、62と、第2センサ63とが設けられて酸素飽和度測定手段が形成されている。または、本発明の第二実施形態にかかる筐体部11は、図15、図34に示すように、第2開口部66を有し、第2空洞67が形成され、合成光学系64と、第3センサ65とが設けられてて血糖値測定手段が形成されている。
ここで、上述の酸素飽和度測定手段及び/又は血糖値測定手段は、外耳94の耳介95の血管中の成分の測定を行う観点から、図14、15に示すように、筐体部11が互いに向き合うように配置される平板状の部材であって耳介95の両側にそれぞれ面して挟むようにして装着される平板部材71、72と、平板部材71、72を連結するバネ状またはスプリング状の弾性部材73とからなるクリップ状の構造体70に設けられることが好ましい。このクリップ状の構造体70が、外耳道91における外部開口部92を塞いで装着されている筐体部11と連結していることが好ましい。
平板部材71、72の弾性部材73がそなえられている部分の長辺方向他端側を開口して検体90の耳介95を挿入し、弾性部材73の弾性力を利用して、平板部材71、72により耳介95を挟みこむことで、クリップ状の構造体70を耳介95に装着するようになっている。
一方の平板部材72には、平板部材から耳介95の反対側に張り出した拡張部74を備え、拡張部74内に酸素飽和度測定手段と血糖値測定手段を構成する、第2光源61、62、第2開口部66、第2空洞67、合成光学系64と、第3センサ65等が収納されていてもよい。
外耳94に装着されている筐体部11とクリップ状の構造体70との連結は、図14〜16に示すように、クリップ状の構造体70の拡張部74に酸素飽和度測定手段又は血糖値測定手段と接続されるコネクタ75が設けられ、コネクタ75に接続されるフレキシブル基盤76を介して、外耳94に装着されている筐体部11と接続することができる。また、筐体部11とクリップ状の構造体70とは、図16に示すように、耳介95に引っ掛けて装着する耳架け部材77と一体に設けられて、耳架け部材77を耳介95に引っ掛けるとともに、筐体部11を外耳道91に挿入し、クリップ状の構造体70を耳介95の耳垂に挟み込むことで装着してもよい。なお、筐体部11とクリップ状の構造体70との間は無線により通信を行うようにしてもよい。
<酸素飽和度測定手段>
酸素飽和度検出手段は、図14に示すように、筐体部11のクリップ状構造体70に、第2光源61、62、第2センサ63が設けられて形成されている。
図14に示すように、第2センサ63は、第2光源61、62と対向して、耳介95を挟み込むようにして筐体部11のクリップ状構造体70に設けられていることが好ましい。本実施形態では、図14に示すように、筐体部11のクリップ状構造体70には、一方の板状部材71に第2光源61、62が設けられ、他方の板状部材72に第2センサ63が設けられており、板状部材71、72を連結する弾性部材73の弾性力により耳介95をはさむ込むようにして保持することができる。
このようにして、酸素飽和度検出手段は、第2センサ63と第2光源61、62とを対向させた状態で、第2光源61、62から発せられる光信号が耳介95を透過した透過光を第2センサ63で検出することにより、耳介95の血管中の酸素飽和度に関する情報(酸素飽和度情報)を検出することができる。
(第2光源)
第2光源61、62は、筐体部11のクリップ状構造体70に設けられ、耳介95を透過するように光信号を発生するものである。第2光源61、62は、断続的な光信号を供給する光の供給源であることが好ましく、例えばレーザーダイオード(LD)やLED(Light Emitting Diode;発光ダイオード)を用いることが出来る。
第2光源は、血管中の酸素飽和度に関する情報の検出を行うために、血液中のヘモグロビンの酸素の結合と解離による吸収波長の変化に対応して、酸素と解離しているヘモグロビン(還元ヘモグロビン)において吸収が増加する第1波長の光と、酸素と結合しているヘモグロビン(酸化ヘモグロビン)において吸収が増加する第2波長の光とを発することが好ましく、第1波長の光と第2波長の光とがそれぞれ発せられる2種類の光源(第1の第2光源61、第2の第2光源62)からなってもよい。また、第1波長の光と第2波長の光とがそれぞれ発せられる2種類の光源が複合したチップとして形成されているものでもよい。第1の第2光源61から発生される光の波長(第1波長)としては、例えば650nmとすることができ、第2の第2光源62から発生される光の波長(第2波長の光)としては、例えば940nmとすることができる。
(第2センサ)
第2センサ63は、筐体部11のクリップ状構造体70に設けられ、耳介95を透過した第2光源61、62からの光信号(透過光)を受信して、血管中の酸素飽和度に関する情報を検出するものである。第2センサ63としては、特定の光を検出できる光センサ(受光素子、光ディテクタ)であることが好ましく、PINフォトダイオード、PN接合・フォトダイオード等のフォトダイオードを用いることができる。
第2センサ63は、血管中の酸素飽和度に関する情報の検出を行うために、血液中のヘモグロビンの酸素の結合と解離による吸収波長の変化に対応して、第2光源と同様に、上記の第1波長の光と、上記の第2波長の光を検出することが好ましく、第1波長の光と第2波長の光とをそれぞれ検出する2種類のセンサからなってもよい。第1波長の光として650nm、第2波長の光として940nmを用いる場合には、波長が近いために一つのセンサにより検出を行うことが出来る。
還元ヘモグロビン(Hb)は赤色光付近の光の吸収が大きく、酸化ヘモグロビン(HbO2)は赤外線付近の光の吸収が大きい。第2センサ63によって検出される第1波長(λ1)の透過光の出力をA(λ1)、第2波長(λ2)の透過光の出力をA(λ2)とすると、例えば第1波長を650nm、第2波長を940nmとした場合に、A(λ1)とA(λ2)の透過光比率から、血液中の還元ヘモグロビンと酸化ヘモグロビンとの比率を求めることができる。さらにこの比率をもとにして、血液中のヘモグロビンの酸素を持っている割合(酸素飽和度)を算出することができる。このとき、第1波長(λ1)の透過光の出力をA(λ1)、第2波長(λ2)の透過光の出力をA(λ2)を血管中の酸素飽和度に関する情報として利用することができる。
<血糖値測定手段>
血糖値測定手段は、図15に示すように、筐体部11のクリップ状構造体70に第2開口部66が形成されるとともに、第2空洞67が形成され、合成光学系64、及び第3センサ65が設けられて形成されている。
本実施形態では、図15に示すように、検体90の耳介95に対向する筐体部11のクリップ状構造体70の拡張部74の部位に第2開口部66を有し、第2開口部66に連通する第2空洞67が形成され、合成光学系64と第3センサ65とが設けられており、板状部材71、72を連結する弾性部材73の弾性力により耳介95をはさむ込むようにして保持するとともに、第2開口部66を耳介95に対向させて検体90に装着された状態で第2空洞を閉鎖された空間構造とすることができる。
このようにして、血糖値測定手段は、第2開口部66を耳介95に対向させて第2空洞を閉鎖された空間構造とした状態で、合成光学系64から光信号が発せられることで、耳介95から発せられる光に起因する信号(合成光学系61から発せられる光信号に応答して発せられる信号)を第3センサ65検出することにより、耳介95の血管中の血糖値に関する情報(血糖値情報)を検出することができる。
(第2開口部)
第2開口部66は、検体情報検出装置1の筐体部11のクリップ状構造体70を検体90に装着する際に、検体90と対向する筐体部11のクリップ状構造体70の表壁部に開口を設けることにより形成されており、検体情報検出装置1の筐体部11のクリップ状構造体70が検体90と当接する部位である。筐体部11のクリップ状構造体70が検体90と当接することで、第2開口部66を検体90で覆うようにしている。第2開口部66は、第2空洞67と連通している。なお、第2開口部66の周辺にゴムまたはシリコン等の弾性体からなるO−リング68が設けられ、このO−リング68によって耳介95と検体情報検出装置1とが当接するようにしてもよい。
(第2空洞)
第2空洞67は、第2開口部66に連通するとともに、第2開口部66を検体90に対向させた状態で閉鎖された空間構造となるものであり、筐体部11のクリップ状構造体70に形成されている。このように第2空洞67が形成する閉鎖された空間構造を、「Closed Cavity;クローズドキャビティ」ともいう。第2空洞67には第3センサ65が設けられている。
(合成光学系)
合成光学系64は、筐体部11のクリップ状構造体70に設けられ、筐体部11のクリップ状構造体70の第2空洞67内を通って筐体部11、21の第2開口部66を通じ、検体90へ向けて光信号を供給するものである。合成光学系64は、発光制御部114からの信号を受けて、光信号を発するよう構成されている。
合成光学系64は、各々個別の波長の光を発する光源を複数備えており、合成光学系64内で、それら複数の光源から発せられる光が合成を受けた合成光として、合成光学系64から発せられる。合成光学系64から発せられた合成光は、図15に示すように、対物レンズ69を通過することで集光を受けた後、第2空洞67及び第2開口部66を通じて、検体90に照射されることが好ましい。複数の光源からの光の合成は、例えばダイクロイックミラーを用いて行うことができる。
合成光学系64を構成する光源は、断続的な光信号を供給する光源であることが好ましく、例えばレーザーダイオード(LD)やLED(Light Emitting Diode;発光ダイオード)を用いることが出来る。合成光学系64がレーザーダイオードである場合、パルス発振源としてパルス光を発振するよう構成されていることが好ましい。
合成光学系64は、主として赤外領域の光を照射する光源が用いられるが、検体90に含まれる分析の対象となる物質が吸収する光の波長を発する光源を選択することが好ましく、例えば検体90の血管中のグルコース濃度の測定を行う場合であれば、グルコース分子のC−H基やO−H基の吸収波長に極大を有する光信号を供給する光源を用いることが好ましい。赤外領域の光の中には、近赤外の領域の波長も含まれることがある。
本実施形態の合成光学系64では、血中のグルコース濃度(血糖値)を計測するため、一部近赤外の赤外光である、λ3〜λ8の6つの波長の光を発する光源を用いている。また、本実施形態では、対物レンズの集光性能があまり必要ではないため、λ3〜λ8の6つの波長を一つで兼用して集光している。もちろん、対物レンズの各波長に対する透過率が異なるため、透過率に応じて光源の出力信号で換算する必要がある。
合成光学系64は、検体90の皮膚の直下にある血管に光信号を効果的に作用させるために、筐体部11のクリップ状構造体70における第2開口部66に対向して設けられていることが好ましく、合成光学系64からの光信号の供給方向が、第2開口部66及び検体90に対して垂直方向から入射するように合成光学系64が設けられることが好ましい。
(第3センサ)
第3センサ65としては、合成光学系64から発せられる光に起因する信号(合成光学系64から発せられる光信号に応答して発せられる信号)を検出して光音響分光分析を行うことができるセンサであれば特に限定されないが、合成光学系64からの光信号に起因する検体90の皮膚の振動によって生じる空気の振動を、合成光学系64から発せられる光に起因する信号として、この情報(音圧情報)を電気的に検出するマイクロホンを好適に用いることができる。マイクロホンの中でも、指向性、S/N比、感度の点からコンデンサマイクが好ましく、ECM(electret condenser microphone;エレクトレットコンデンサーマイクロホン、以下、単に「ECM」ともいう)を好適に用いることができる。また、MEMS(microelectromechanical system)技術を用いて作製したECMである、MEMS型ECM(以下、「MEMS−ECM」ともいう)を好適に用いることができる。
本実施形態では、検体情報検出装置1の筐体部11、21に、第3センサ65a、65bを2つ設けた構成を記載している。筐体部11、21に設けられる第3センサの数は1つ以上設けられていればよいが、検出される信号の強さを向上させ、S/N比を上げる観点からは、第3センサを2つ以上設けることが好ましく、各々の第3センサの信号を加算したものを合成光学系64からの光信号に起因する信号出力とすることが好ましい。
第3センサ65を検体情報検出装置1に設ける場合には、筐体部11のクリップ状構造体70における合成光学系64からの光信号による影響を回避しうる部位に設けられることが好ましい。これにより、合成光学系64からの光信号による影響を回避しつつ、検出される脈動性信号の強さを向上させ、S/N比を上げることが可能となる。
検体情報検出装置1に第3センサ65を設ける場合、MEMS−ECMはサイズが小さいために実装が容易であり、第2開口部66の口径が大きくなりすぎるのを防ぐことができるために好ましい。また、MEMS−ECMは品質が安定しているため、複数の第3センサ41を並列に多数接続して、第3センサ41の信号を加算した際であっても安定した信号を得ることができるために好ましい。
分析の対象となる物質の吸収波長に極大を有する光信号を供給する光源を合成光学系64に用いた場合、光音響法の手法を利用して、第3センサ65により検出される合成光学系64から発せられる光に起因する信号を解析することにより、血管中の分析の対象となる物質の濃度の測定が可能となる。一例として、グルコース分子のC−H基やO−H基の吸収波長に極大を有する光信号を供給する光源を用いた場合、予め当該波長に極大を有する光信号を供給した場合の外部圧力信号と分析の対象となる物質の濃度との関係を明らかにしておくことで、分離された外部圧力信号からグルコース濃度(血糖値)を算出することができる。このとき、第3センサ65により検出される、分析の対象となる物質の吸収波長に極大を有する光信号に起因する信号を血糖値に関する情報として利用することができる。
<検体情報処理装置の構成>
本発明の第二実施形態にかかる検体情報処理装置2は、一例として、図34に示すように、上述の検体情報検出装置1と、第1センサ12からの信号について波形等化処理を施す波形等化処理部112と、波形等化処理部112からの信号から検体90の脈波情報または呼吸情報を取り出す第1信号処理部113とをそなえている。また、検体情報処理装置2は、周波数補正処理部111を備えていてもよい。
周波数補正処理部111、波形等化処理部112、及び第1信号処理部113は、第一実施形態にかかる検体情報処理装置2と同様に構成されている。
さらに、検体情報処理装置2は、検体情報検出装置1における第2センサ63からの信号に信号処理を施して第2センサ63からの信号から検体90の血管における酸素飽和度に関する情報を取り出す電気回路である第2信号処理部115、及び/又は、検体情報検出装置2における第3センサ65からの信号に信号処理を施して第3センサ65からの信号から検体90の血管における血糖値に関する情報を取り出す電気回路である第3信号処理部116を備えることが好ましい。
[3−3.第二実施形態にかかる検体情報検出装置及び検体情報処理装置の動作]
以下に、本発明の第二実施形態にかかる検体情報検出装置1及び検体情報処理装置2の動作の一例について説明する。
本発明の第二実施形態にかかる検体情報検出装置1及び検体情報処理装置2では、第一実施形態にかかる検体情報検出装置1及び検体情報処理装置2と同様に、検体情報検出装置1の第1センサ12によって脈動性信号を検出し、体情報処理装置2は、第1センサ12からの脈動性信号出力について、周波数補正処理部111によって周波数補正処理を施し、波形等化処理部112によって、周波数補正処理部111からの信号について波形等化処理を施し、第1信号処理部113によって、波形等化処理部112からの信号に周波数復調処理を施し、検体90の脈波情報または呼吸情報を取り出す。
さらに、本発明の第二実施形態にかかる検体情報検出装置1及び検体情報処理装置2では、図34に示すように、発光制御部114の制御により第2光源61、62、及び合成光学系64から光信号が発せられ、第2センサ63が第2光源61、62からの光信号の透過光を検出し、第3センサ65が合成光学系64からの光信号に起因して発せられる信号を検出する。第2センサ63で検出された信号は、発光制御部114を介し第2信号処理部115に送られて、検体の血管における酸素飽和度に関する情報を取り出す信号処理が行われる。第3センサ65で検出された信号は、発光制御部114を介して第3信号処理部116に送られて、検体90の血管における血糖値に関する情報を取り出す信号処理が行われる。
<酸素飽和度に関する情報の検出と酸素飽和度の算出>
図14に示すように、第1の第2光源61及び第2の第2光源62と第2センサ63とが耳介95を挟んで対向するよう配置して、検体情報検出装置1を検体の外耳90に装着する。この状態で検体情報検出装置1の第1の第2光源61及び第2の第2光源62から耳介95を透過するように光信号を発生して、第2センサ63によって第1の第2光源61及び第2の第2光源62からの光信号を受信する。第2センサ63によって検出された光信号から、血管中の酸素飽和度に関する情報を検出して、酸素飽和度を算出することができる。すなわち、第1の第2光源61及び第2の第2光源62並びに第2センサ63がパルスオキシメータとして機能する。
なお、酸素飽和度の算出は、検体情報処理装置2に設けられた第2信号処理部115にて行うことができる。または、第2センサ63から得られた信号を外部のコンピュータに伝送して、外部のコンピュータにより酸素飽和度の算出を行ってもよい。
<血糖値に関する情報の検出と血糖値の算出>
図15に示すように、第2開口部66を耳介95に対向させて第2空洞を閉鎖された空間構造とした状態で、合成光学系64からの光信号が耳介95に照射しうるように検体情報検出装置1を装着する。この状態で検体情報検出装置1の合成光学系64から光信号を発生すると、耳介95における血管中の物質が合成光学系64から光信号の影響を受けて、この光信号による応答に起因する振動が圧力情報として、第2開口部66を通じて第2空洞67内を伝播する。この圧力情報を第3センサ65により検出して、第3センサ65によって検出された信号から、血糖値に関する情報を検出して、血糖値を算出することができる。このように、非浸襲な光音響分光を用いることにより血糖値を算出することができる。
なお、血糖値の算出は、検体情報処理装置2に設けられた第3信号処理部116にて行うことができる。または、第3センサ65から得られた信号を外部のコンピュータに伝送して、外部のコンピュータにより血糖値の算出を行ってもよい。
<発光制御部による信号の制御>
λ1の波長の光を発する第1の第2光源61からの光の出力、λ2の波長の光を発する第2の第2光源62からの光の出力、及びλ3〜λ8の波長の光を発する合成光学系64からの光の出力、並びに第2センサ63及び第3センサ65による信号の検出は、図29に示すタイミングチャートのように発光制御部114により制御を行うことが好ましい。
本発明の第二実施形態にかかる検体情報検出装置1は、第1センサ12により脈波が検出されていることを利用して、図29に示すようなタイミングで信号を処理して、酸素飽和度及び血糖値を測定する。ここでは、酸素飽和度測定手段と血糖値測定手段がともに形成されてる場合において、酸素飽和度及び血糖値を測定する際のタイミングの制御について説明する。
図29(a)に示すように、第1センサ12により検出された信号に含まれる脈波の信号(脈波信号)は、脈波信号の立ち上がりから次の脈波信号の立ち上がりまでを1周期として、脈波信号において検出された1周期を1024分割して、1周期中に0〜1023の計1024のタイミングに分割される。この脈波の1周期を元にするタイミングに応じて制御が行われる。
まず、図29(b1)〜(b8)を利用して、酸素飽和度の測定の際の第1の第2光源61、第2の第2光源62からの光信号の出力と、第2センサ63による信号の検出の制御について説明する。
図29(b1)に示すように882のタイミングで、第1の第2光源61(ここではLED)から波長λ1の光λ1Onが発光される。第1の第2光源61からの発光を受けて、図29(b3)に示すように882のタイミングで、第2センサ63が第1の第2光源からの波長λ1の光の透過光量をλ1の光透過信号の波形の信号A1として検出して、この検出された信号A1は発光制御部114に送られる。次に、図29(b5)に示すように、発光制御部114では883のタイミングでλ1の光透過信号のサンプリングパルスλ1Sが出力される。このサンプリングパルスλ1Sに応じて、図29(b7)に示すように883のタイミングで、λ1の光透過信号の波形の信号A1がサンプルホールドされることで、λ1の光透過信号のサンプリング結果λ1Aが第1の第2光源からの波長λ1の光の透過光量を表す信号として、発光制御部114から第2信号処理部115に、酸素飽和度の算出のために出力される。
一方、図29(b2)に示すように883のタイミングで、第2の第2光源62(ここではLED)から波長λ2の光λ2Onが発光される。第2の第2光源62からの発光を受けて、図29(b4)に示すように883のタイミングで、第2センサ63が第2の第2光源からの波長λ2の光の透過光量をλ2の光透過信号の波形の信号A2として検出して、この検出された信号A2は発光制御部114に送られる。次に、図29(b6)に示すように、発光制御部114では884のタイミングでλ2の光透過信号のサンプリングパルスλ2Sが出力される。このサンプリングパルスλ2Sに応じて、図29(b8)に示すように884のタイミングで、λ2の光透過信号の波形の信号A2がサンプルホールドされることで、λ2の光透過信号のサンプリング結果λ2Aが第2の第2光源からの波長λ2の光の透過光量を表す信号として、発光制御部114から第2信号処理部115に、酸素飽和度の算出のために出力される。
上述のように第1の第2光源61、第2の第2光源62からの光信号の出力と、第2センサ63による信号の検出を制御して、一脈波にそれぞれ一つの値としてホールドすることで、第1の第2光源からの波長λ1の光の透過光量と第2の第2光源からの波長λ2の光の透過光量を測定して酸素飽和度の測定を行うことができる。
次に、図29(c1)〜(c24)を利用して、血糖値の測定の際の合成光学系64からの光信号の出力と、第3センサ65による信号の検出の制御について説明する。
図29(c1)に示すように884のタイミングで、合成光学系64(ここではLD)の波長λ3の光を発する光源から波長λ3の光λ3Onが発光される。合成光学系64からの発光を受けて、図29(c7)に示すように884のタイミングで、第3センサ65が合成光学系64からの波長λ3の光信号に起因する信号をλ3の光信号の波形の信号A3として検出して、この検出された信号A3は発光制御部114に送られる。次に、図29(c13)に示すように、発光制御部114では885のタイミングでλ3の光信号に起因する信号のサンプリングパルスλ3Sが出力される。このサンプリングパルスλ3Sに応じて、図29(b19)に示すように885のタイミングで、λ3の光信号の波形の信号A3がサンプルホールドされることで、λ3の光信号に起因する信号のサンプリング結果λ3Aが合成光学系64からの波長λ3の光信号に起因する信号として、発光制御部114から第3信号処理部116に、血糖値の算出のために出力される。
合成光学系64の波長λ4〜λ8の光を発する光源と第3センサ65についても、上述の合成光学系64の波長λ3の光を発する光源と第3センサ65の場合と同様にして、図29(c2)〜(c6)、(c8)〜(c12)に示すように、波長λ3の光を発する光源の発光タイミングから、各々の光源からの発光を885、886、887、888、889と1ずつずらすことにより行い、また、図29(c14)〜(c18)、(c20)〜(c24)に示すように、波長λ3の光信号に起因する信号のサンプルホールドのタイミングから、各々の波長の光信号に起因する信号の第3センサ65によるサンプリングホールドをタイミングを886、887、888、889、890と1ずつずらすことにより行うよう制御して、一脈波にそれぞれ一つの値としてホールドすることで、合成光学系64の波長λ4〜λ8の光信号に起因する信号をそれぞれ測定して血糖値の測定を行うことができる。
上記の説明では、カウンタの出力が802〜809のタイミングで、光信号の発生をさせて、順次制御を行う例を挙げたが、脈波の脈動の影響を避けることができるタイミングであれば、任意のタイミングで行うことが出来る。速度脈波のピークが立ち上がった直後では、酸素飽和度の算出にあたって脈動が与える影響が大きいため、ピークの立ち上がりから次のピークの立ち上がりまでの1周期の間で、速度脈波の変動が少ないタイミングで、同じ位相で信号処理を行うことが好ましい。また、サンプリングパルスを出力するタイミングを基準として、ピークの立ち上がりから次のピークの立ち上がりまでの1周期の間で、速度脈波の変動が少ないタイミングで信号処理を行うようにしてもよい。
上記の説明では、ピークの立ち上がりから次のピークの立ち上がりまでを1周期として、1周期を1024分割する例を挙げたが、これに限定されず、任意の数に分割して信号処理を行ってよい。
上記の信号の処理を行うことで、血液の流れ(脈波)に対して同じ位相でサンプリングすることにより脈波の影響を軽減でき、酸素飽和度及び血糖値の算出において脈波の影響を軽減することができる。すなわち、第1センサ12で検出した脈動性信号に基づいてタイミングを作り出して、光源からの光信号の発生のタイミング、センサによるサンプリングのタイミングを制御することで、酸素飽和度及び血糖値の算出において脈波の影響を軽減することができる。また、光源からの光信号の出力と、センサによる検出のタイミングの制御を行うことで、複数の光源に対して一つのセンサにより信号の検出を行うことができる。
発光制御部114による制御によって測定された、第1の第2光源61からの波長λ1の光の透過光量と第2の第2光源62からの波長λ2の光の透過光量の信号は、第2信号処理部115によって処理を行うことで酸素飽和度を算出することができる。発光制御部114による制御によって測定された、合成光学系64からの波長λ3〜λ8の光信号に起因する信号は、第3信号処理部116によって処理を行うことで血糖値の算出を行うことができる。または、これらの信号を外部のコンピュータに送出して、外部のコンピューターで酸素飽和度及び血糖値の算出を行うようにしてもよい。
<第1センサと第2センサとを用いた脈動性信号の検出>
本発明の第二実施形態にかかる検体情報検出装置1の筐体部11に、第1センサ12が設けられ、さらに、外耳94の耳介95を透過するように光信号を発生する第2光源61、62と、耳介95を透過した光源61、62からの光信号を受信する第2センサ63が設けられている場合には、第1センサと第2センサとを用いた脈動性信号の検出を行うことができる。
第2センサ63は、耳介95を透過した光源61、62からの光信号を受信することで、耳介95を透過した光源61、62からの光信号に含まれる耳介95の血管の拍動に起因する脈動性信号を検出することができる。このとき、第1センサ12による脈動性信号の検出と第2センサ63による脈動性信号の検出とを行い、第1センサ12及び第2センサ63から得られる脈波を併用して脈動性信号の検出タイミングをとることにより、検出される脈動性信号のS/N比を向上させることができる。
このように、第1センサと第2センサとを用いた脈動性信号の検出は、例えば検体情報検出装置1が、検体情報検出装置1により得られた信号を外部に送信するコードを有し、このコードが衣服や身体等に接触することによりノイズが生じるおそれがある場合において、S/N比を安定させることができるために有用である。
[3−5.第二実施形態にかかる検体情報検出ユニットの効果]
本発明の第二実施形態にかかる検体情報検出ユニット7によれば、前記第一実施形態で得られる効果に加えて、第1センサ12と、第2光源61、62と、第2センサ63とを備えることにより、脈波を得るとともに、酸素飽和度の測定が可能となる。また、第1センサ12と、合成光学系64と、第2開口部66と、第2空洞67と、第3センサ65とを備えることにより、脈波を得るとともに、血糖値の測定が可能となる。さらに、第1センサ12によって検出される脈動性信号からタイミングを作り出して信号の制御を行うことにより、酸素飽和度及び血糖値の測定における脈波の影響を軽減することができる。
[4.その他]
<外耳道の閉鎖に係る第二変形例>
(第一実施形態の第二変形例)
外部開口部92が塞がれて外耳道91が完全に閉じられた空間構造となる空洞として形成されている場合を、外耳道の閉鎖レベルが「閉鎖」であるという。この場合、完全に外耳道91を閉鎖できず外耳道91がほぼ閉鎖された空間構造となっている場合に生じる低周波数領域の減衰が生じないため、上述の波形等化処理部112による波形等化処理を行うことなく微分要素の加わっていない脈波を得ることができる。
このため、外耳道91が閉鎖された空間構造となる空洞として形成される場合には、本発明の第一実施形態の第二変形例に係る検体情報処理装置2は、図35に示すように、検体情報検出装置1と、検体情報検出装置1における第1センサ12からの信号に信号処理を施して第1センサ12からの信号から検体90の脈波情報または呼吸情報を取り出す第1信号処理部113とをそなえて構成してもよい。このとき、検体情報処理装置2は、周波数補正処理部111を備えていてもよい。
(第二実施形態の第二変形例)
同様に、外耳道91が閉鎖された空間構造となる空洞として形成される場合には、本発明の第二実施形態の第二変形例に係る検体情報処理装置2は、図36に示すように、検体情報検出装置1と、検体情報検出装置1における第1センサ12からの信号に信号処理を施して第1センサ12からの信号から検体90の脈波情報または呼吸情報を取り出す第1信号処理部113と、検体情報検出装置1における第2センサ63からの信号に信号処理を施して第2センサからの信号から検体90の血管における酸素飽和度に関する情報を取り出す第2信号処理部115、及び/又は、検体情報検出装置1における第3センサ65からの信号に信号処理を施して第3センサ65からの信号から検体90の血管における血糖値に関する情報を取り出す第3信号処理部116とをそなえて構成してもよい。このとき、検体情報処理装置2は、周波数補正処理部111を備えていてもよい。
<変形例の適用について>
上記第一変形例の説明においては第一実施形態の変形例を例示して説明したが、第二実施形態について、第一実施形態の第一変形例を適用してもよい。また、第一実施形態の第一変形例及び第二変形例をともに組み合わせることも可能であり、第二実施形態の第一変形例及び第二変形例をともに組み合わせることも可能である。
即ち、検体情報検出装置1が筐体部11をそなえて第1センサ12が設けられ、第2光源61、62と第2センサ63とが設けられて酸素飽和度測定手段が形成されているか、または、第2開口部66を有し、第2空洞67が形成され、合成光学系64と第3センサ65とが設けられて血糖値測定手段が形成されている場合において、検体情報検出装置1に、さらに、開閉スイッチ機構21、開閉スイッチ制御手段22、開閉意思伝達手段23、無音状態検出手段24、イヤホン・マイク切替制御手段25が備えられていてもよい。
<歩行情報の取り出し>
本発明の検体情報検出装置1及び検体情報処理装置2は、第1センサ12からの信号から検体90の歩行情報を取り出すように構成されていてもよい、
この場合、検体の右耳及び左耳に装着されるべきそれぞれ第1センサ12を備える検体情報検出装置と、前記の右耳および左耳に装着された各検体情報検出装置における各第1センサ12からの信号についてそれぞれ波形等化処理を施す波形等化処理部112と、波形等化処理部112からの信号に信号処理を施して波形等化処理部112からの信号位相差情報から該検体90の歩行情報を取り出す第4信号処理部261とをそなえており、第1センサ12からの信号から検体90の歩行情報を取り出すように構成されていてもよい。
第4信号処理部261による処理は、図12に示すように模式的に表すことができる。歩行状態において、左右それぞれの第1センサ12により得られた信号から、低周波数検出部262、263によりの歩行信号の周波数まで検出することで、左右の足が地面に着いたときの衝撃を歩行信号として耳から拾うことができる。さらに、時間差検出・周波数検出部264により、左右の耳から検出される歩行信号の時間差又は周波数を検出することで、歩行リズムの乱れ等の信号を検出することができる。
<信号処理について>
上記の説明においては、脈動性信号の処理を検体情報検出装置及び検体情報処理装置が備えるアナログ回路による処理について説明したが、検体情報検出装置及び検体情報処理装置がデジタル回路、例えばデジタルシグナルプロセッサ(以下、「DSP」ともいう)を含む回路とアナログ回路とを組み合わせたり、演算処理装置(CPU)やDSPを組み合わせたりして、このデジタル回路を含む回路により信号を処理する構成としてもよい。