この発明の一実施の形態を以下図面に基づいて詳述する。
図1はチャック装置1を備えた電動工具Kの正面図を示し、図2はチャック装置1の各構成要素の正面や背面、及び側面や断面を併記した分解説明図を示している。
なお、本明細書において、正面側や前方はチャック装置の先端側と一致するとともに、背面側や後方あるいは後端側はチャック装置の基端側と一致し、文中の説明において、理解しやすいように、各用語を適宜使用するが大きな意味合いの違いはない。
図2について詳述すると、後方アウタースリーブ10、ロックワッシャ40、アウターナットリング80、ディッシュスプリング90、スライドリング121及びOリング122は正面図と断面図を示し、チャックボディ30、Wベアリングボール52、及びWベアリングインナー53は正面図と側面図を示している。
インナーナット70は正面図、側面図及び断面図を示し、ナットスプリング100は背面図と側面図を示し、Wベアリングアウター51、前方アウタースリーブ110及び先端キャップ130は背面図及び断面図を示している。なお、ジョー20は三方向に配置した状態の側面図を示している。
また、図3はチャック装置1の各構成要素の正面側からの分解斜視図を示し、図4はチャック装置1の各構成要素の背面側からの分解斜視図を示し、図5はチャック装置1における回転規制変換ユニットUの分解斜視図を示し、図6はチャック装置1の縦断面図を示している。
さらに、図7はチャック装置1における回転規制変換ユニットUの縦断面図による説明図を示し、図8はチャック装置1における回転規制変換ユニットUの説明図を示し、図9はチャック装置1における回転規制変換ユニットUの断面図を示し、図10はチャック装置1における回転規制変換ユニットUの組み付けについての斜視図を示し、図11はチャック装置1におけるアウターナットリング80と回転規制変換ユニットUとについての説明図を示し、図12はジョー20による基軸Jの把持についての説明図を示している。
図1に示すように、例えば、電動工具Kにおける先端部分に配置されたスピンドルSに装着されるチャック装置1は、図2乃至図4に示すように、基端側(後方:図3において左上、図4において右下)から先端側(前方:図3において右下、図4において左上)に向かって順に、後方アウタースリーブ10、ジョー20、チャックボディ30、ロックワッシャ40、Wベアリング50、回転変換機構60、ディッシュスプリング90、ナットスプリング100、前方アウタースリーブ110、スリーブ回転規制機構120及びキャップ130を配置し、組付けて構成し、ジョー20で基軸Jを把持する構成である。
後方アウタースリーブ10、ロックワッシャ40、Wベアリング50、回転変換機構60、ディッシュスプリング90、ナットスプリング100、前方アウタースリーブ110、スリーブ回転規制機構120及びキャップ130はリング状に形成され、チャックボディ30の長手方向に平行な軸心方向AL上に配置されている。
後方アウタースリーブ10は、後述するチャックボディ30の後胴部31の圧入を許容するセンター孔11を正面視中心に備えたリング部12と、リング部12の内周縁部及び外周縁部においてチャックボディ30側向きに突出するフランジ部13,14とで構成している。
なお、外周側のフランジ部14の外周面には、軸心方向ALに平行なリブを複数備えている。
チャックボディ30は、上述した後方アウタースリーブ10のセンター孔11に圧入される後胴部31、第1フランジ部32、後中胴部33、第2フランジ部34、Wベアリング50の装着を許容する前中胴部35、並びに、キャップ130の圧入を許容する前胴部36とで後方からこの順で構成し、装着治具の基軸Jの挿入を許容するセンター孔30aが、正面視中央に形成され、長手方向に貫通している。
さらに、第1フランジ部32、後中胴部33、第2フランジ部34、前中胴部35及び前胴部36にかけて、チャックボディ30の外側からセンター孔30aに向かって、つまり軸心方向ALに交差する方向のジョー装着孔37を周方向において等間隔に三箇所配置し、各ジョー装着孔37においてスライド可能にジョー20を挿着している。
なお、ジョー20は、後述するWベアリング50におけるインナーナット70の内面に形成した螺旋状の螺合溝73と螺合するネジ溝21を後方側の外側面に有する略円柱状に形成している。さらに、ジョー20の前方内側面は、略円柱状の軸心方向に対して交叉する方向で、軸心方向ALに対して略平行な押圧面22を形成し、該押圧面22の幅方向中央には、カーバイド製のチップ23を装備している。
なお、上述したように略円柱状に形成したジョー20の後方内側周面24及び前方外側周面25を、ジョー装着孔37の内周面37a(図7参照)に摺動させる状態で、軸心方向ALに対する周方向における三方向において、押圧面22が軸心方向ALに平行となる姿勢でジョー20をジョー装着孔37に挿着している。
組み付け状態において、チャックボディ30の第2フランジ部34に当接するロックワッシャ40は、放射方向の噛合ギア41aを周方向に配置したリング状のギアリング部41と、ギアリング部41の外周において、前方に向かって突出する突出ばね部42と、ギアリング部41の内周縁から径内側に正面視半円状に突出する径止半円凸部43とで構成している。
なお、突出ばね部42は、ギアリング部41に対して、周方向において等間隔に三箇所備えている。また、径止半円凸部43は、チャックボディ30の第2フランジ部34の内側に形成された半円状径止凹部34aに嵌合する形状であり、周方向において三箇所備えている。
組み付け状態において、チャックボディ30の第2フランジ部34と回転変換機構60との間に、ロックワッシャ40とともに挟み込まれるWベアリング50は、チャックボディ30における前中胴部35の挿通を許容するとともに、第2フランジ部34よりひとまわり径大に形成したリング体であり、Wベアリングアウター51、Wベアリングボール52及びWベアリングインナー53で構成している。
Wベアリングアウター51は、正面視中央に、前中胴部35の挿通を許容する中央開口51aを有し、Wベアリング50における基端側の後方面を構成する後方リング面51bと、後方リング面51bの外周縁から前方に突出する外周面51cとで構成している。なお、後方リング面51bと外周面51cとで構成する角部は、Wベアリングボール52に対応する曲面で構成している。
また、後方リング面51bの背面には、図4に示すように、ロックワッシャ40のギアリング部41の正面に形成した噛合ギア41aと噛合する噛合ギア51dを周方向に配置している。また、後方リング面51bにおいて中央開口51aを形成する内周縁には、後述するインナーナット70の後端側軸心方向ギア部76と軸心方向にスライド可能に噛合する軸心方向ギア51eを周方向に配置している。
さらにまた、外周面51cの内周面には、後述するアウターナットリング80の基端側である後端に備えた後端側連結凸部86の嵌め合いを許容する連結溝51fを形成するとともに、連結溝51fへの後端側連結凸部86の嵌め合いを容易にするためのスリット51gを周方向に等間隔で複数形成している。
Wベアリングインナー53は、正面視中央に、前中胴部35の挿通を許容する中央開口53aを有し、Wベアリング50の前方面を構成する前方リング面53bと、前方リング面53bの内周縁から後方に突出する内周面53cとで構成している。なお、前方リング面53bと内周面53cとで構成する角部は、後述するWベアリングボール52に対応する曲面で構成している。
Wベアリングアウター51とWベアリングインナー53とを組み付けた状態において、Wベアリングアウター51における後方リング面51bと外周面51cとで構成する角部と、Wベアリングインナー53における前方リング面53bと内周面53cとで構成する角部との間に挟み込まれるWベアリングボール52は、リング状となるように、複数配置して構成している。
このように構成したWベアリングアウター51、Wベアリングボール52、及びWベアリングインナー53を組み付けて、Wベアリング50を構成している。
チャックボディ30における前中胴部35に装着される回転変換機構60は、アウターナットリング80と、インナーナット70と、インナーナット70及びアウターナットリング80における対向面に挟み込まれる係止ボール79とで構成したリング状体である。
インナーナット70は、係止ボール79の係止を許容する螺旋状の螺旋状係止溝71を外周面に有するとともに、ジョー20のネジ溝21に螺合する螺合溝73を内周面に有するリング本体72と、リング本体72の先端側である前面より前方に突出する先端側突出ギア部75と、リング本体72の基端側である背面より後方に突出する後端側軸心方向ギア部76とで構成している。
なお、先端側突出ギア部75は、後述するナットスプリング100の噛合爪部105の噛合を許容する軸心方向のラチェットギア74を外周面に備え、後端側軸心方向ギア部76は、Wベアリングアウター51の軸心方向ギア51eと、軸心方向にスライド可能な状態で噛合する構成である。
また、ラチェットギア74は、締付け回転方向R側が径方向面となり、緩み回転方向L側が径方向に対して傾斜する傾斜面となる片傾斜ギアで構成している。
螺旋状係止溝71は、回転変換機構60の組み付け状態において、後述するリング本体82の螺旋状係止溝81と対向し、螺旋状係止溝81と同じ螺旋角度で、螺旋方向において1周未満の長さで形成している。また、螺旋方向において1周未満の螺旋状係止溝71の端部同士を、螺旋状係止溝71の螺旋方向と交差する方向の連結係止溝71aで連結し、螺旋状係止溝71は閉ループ状を構成している。
なお、螺旋状係止溝71は、図7(a)に示すように、係止ボール79の半径に対して、1/3程度の深さの円弧状溝で形成している。
また、図5に示すように、連結係止溝71aは、リング本体72の外周面の一部をへこませた外周凹部72aに対して取り付け可能に構成した取付溝部材72bに形成している。また、連結係止溝71aは、螺旋状係止溝71に係止する係止ボール79の頂部以外を覆う断面4/5円形状に形成している。また、連結係止溝71aの溝底部が螺旋状係止溝71より径内側に深く形成されているため、図9に示すように、連結係止溝71aに係止する係止ボール79は、連結係止溝71aに係止する係止ボール79より、径内側に位置することとなる。なお、図9に示す破線は、螺旋状係止溝71,81の縁部を示している。
また、連結係止溝71aが形成された取付溝部材72bは、変形可能なゴムで形成しているため、断面4/5円形状である連結係止溝71aを、型を用いたプレスにより、精度よく形成することができる。
螺合溝73は、螺合するジョー20のネジ溝21の角度に応じて前方に向かって縮径方向に傾斜している。さらに詳しくは、締付け速度と締付け力に基づき、一般的に16〜24山/インチで設定されるねじ山の範囲において、螺合溝73とネジ溝21とを下限である16山/インチに設定しているが、これ以下の山数であってもよく、もちろんこれ以上の山数であってもよい。
アウターナットリング80は、内周面に係止ボール79の係止を許容する螺旋状の螺旋状係止溝81を有するリング本体82と、リング本体82の前面において、周方向に遊嵌凹部83を介して等間隔に配置し、前方に突出する突出壁部84とで構成している。なお、突出壁部84における内周面84aに、後述するナットスプリング100の係止凸部106が係止する係止凹部85を備えている。また、リング本体82の後端側を径細に形成するとともに、後端縁を少し径大に形成して、Wベアリングアウター51の連結溝51fに嵌め込む後端側連結凸部86を形成している。
なお、螺旋状係止溝81は、図7(a)に示すように、係止ボール79の半径に対して、1/3程度の深さの円弧状溝で形成している。
このように構成したインナーナット70及びアウターナットリング80を、螺旋状係止溝71,81が対向するとともに、対向した螺旋状係止溝71,81との間に係止ボール79を係止させて組み付け、回転変換機構60(図10参照)を構成している。
このとき、インナーナット70とアウターナットリング80との間で、わずかなクリアランスを隔てて螺旋状係止溝71,81が対向する。このように、わずかなクリアランスを隔てて対向する螺旋状係止溝71,81を、図7(a)に示すように、係止ボール79の半径に対して、1/3程度の深さの円弧状溝で形成しているため、図9に示すように、係止ボール79は螺旋状係止溝71,81の両方に係止している。
これに対し、上述したように、係止ボール79の頂部以外を覆う断面4/5円形状に形成するとともに、螺旋状係止溝71より径内側に深く形成した連結係止溝71aでは、係止する係止ボール79が径内側に位置するため、対向する螺旋状係止溝81に係止しない。そのため、螺旋状係止溝71,81の螺旋方向に交差する方向の連結係止溝71aを通過して、係止ボール79は螺旋状係止溝71を循環することができる。
したがって、図8に示すように、アウターナットリング80とインナーナット70とは、螺旋状係止溝71,81に係止する係止ボール79を介して相対回転可能となり、アウターナットリング80に対するインナーナット70の相対回転をアウターナットリング80に対するインナーナット70の前後方向の差動に変換することができる。
また、閉ループ状の螺旋状係止溝71を係止ボール79が循環するため、係止ボール79の配置数に依存することなく、アウターナットリング80に対してインナーナット70を、前後方向の差動変換することができる。
ディッシュスプリング90は、径方向内側に向かって傾斜する矩形断面を有するリング状であり、先端側突出ギア部75の内径より小さな内径と、先端側突出ギア部75の外径より大きく、ナットスプリング100の内側径より径の小さな外径を有している。また、ディッシュスプリング90の外周には、周方向に所定間隔を隔て、径内側向きの凹部91を複数形成している。なお、ディッシュスプリング90は、弾性を有する金属板で構成しているため、断面がフラットとなるような捩れに対して軸心方向に付勢することができる。また、外周側に凹部91を形成しているため、捩れ性が向上している。
ナットスプリング100は、先端側のリング部101と、リング部101の径外側を基端側に折り曲げて、側面視において後ろ向きに寝かせた寝位姿勢の略T型に形成したT型アーム部102とで構成している。
なお、T型アーム部102は、周方向において三箇所備えるとともに、図2b部拡大図に示すように、T型アーム部102における締付け回転方向Rの先端には、後述する前方アウタースリーブ110の先端側内周縁に配置した押圧ブロック113に形成する係止凹部112のうちロック解除回転位置規制係止凹部112aに係止する径外側に突出する回転位置規制係止凸部103を有している。
T型アーム部102における緩み回転方向Lの先端には、図2b部拡大図に示すように、インナーナット70の先端側突出ギア部75のラチェットギア74に噛合する噛合爪部105を有している。また、T型アーム部102における緩み回転方向Lの途中部分には、後述する前方アウタースリーブ110の先端側内周縁に配置した押圧ブロック113に形成した係止凹部112のうちラチェット解除係止凹部112b及びラチェット噛合径止凹部112cに係止する径外側に突出するラチェット解除係止凸部104を有している。
また、T型アーム部102における中央には、アウターナットリング80における突出壁部84の内面に形成した係止凹部85に径止する係止凸部106を備えている。
なお、本実施形態では、一体的なナットスプリング100であったが、第1ナットスプリングと第2ナットスプリングとを組み付けて構成してもよい。
前方アウタースリーブ110は、後端側が後方アウタースリーブ10の外周側のフランジ部14と同径であり、先端側に後述するキャップ130の挿着を許容する先端側が絞られた側面視略釣鐘型の筒状に形成している。
前方アウタースリーブ110の内周側には、図2a部拡大図に示すように、上述したナットスプリング100の回転位置規制係止凸部103やラチェット解除係止凸部104が係止する係止凹部112(112a,112b,112c)が形成された押圧ブロック113を備えている。
詳しくは、T型アーム部102における締付け回転方向Rの先端に形成した回転位置規制係止凸部103が係止するロック解除回転位置規制係止凹部112aが形成された押圧ブロック113と、T型アーム部102における緩み回転方向Lの中間位置に形成したラチェット解除係止凸部104が係止するラチェット解除係止凹部112b及びラチェット噛合径止凹部112cが形成された押圧ブロック113とは、周方向において交互に3か所ずつ配置されている。
押圧ブロック113において、凹状深さが浅く、ラチェット解除係止凸部104が径止することで噛合爪部105が径内側に押圧され、先端側突出ギア部75のラチェットギア74と噛合するラチェット噛合径止凹部112cを、ラチェット解除係止凸部104が径止することで先端側突出ギア部75のラチェットギア74と噛合爪部105との噛合が解除されるラチェット解除係止凹部112bより、締付け回転方向Rの後方に配置している。
なお、ラチェット解除係止凹部112b及びラチェット噛合径止凹部112cの間隔は、チャック装置1の組み付け状態において、押圧ブロック113がアウターナットリング80の遊嵌凹部83に遊嵌した際における周方向のクリアランスに対応し、回転位置規制係止凸部103がロック解除回転位置規制係止凹部112aに径止した状態で、ラチェット解除係止凸部104はラチェット噛合径止凹部112cに径止し、噛合爪部105がラチェットギア74と噛合する。
スリーブ回転規制機構120は、前方アウタースリーブ110に対して回転固定且つ軸心方向ALにスライド可能なスライドリング121と、スライドリング121の前方に配置したOリング122とで構成している。
スライドリング121は、片断面がL字型で構成する側面視倒位の凸状のリング体であり、前方アウタースリーブ110の前方から挿入し、後端部がディッシュスプリング90を介して。インナーナット70の前端に当接している。
Oリング122は、円形断面のゴム製リング体であり、後述するキャップ130の挿着部132に嵌めつけられ、略円錐台状のキャップ本体130aの背面に当接している。
スリーブ回転規制機構120は、前方アウタースリーブ110に対して回転固定且つ軸心方向ALにスライド可能なスライドリング121がスライドして、Oリング122を押し付けることで、チャックボディ30に対して回転固定されたキャップ130に対して周方向の摩擦力を付与する機構である。
キャップ130は、正面視中央にジョー20の挿通を許容する挿通孔131を有するとともに、前方に向けて寝かせた略円錐台状のキャップ本体130aと、キャップ本体130aの背面側において、上述の前方アウタースリーブ110の先端に挿着する挿着部132とで構成している。
続いて、各構成要素を上述のように構成したチャック装置1の組み付けについて以下で説明する。
まず、図7(a)に示すように、ロックワッシャ40と、Wベアリングアウター51、Wベアリングボール52及びWベアリングインナー53を組み付けたWベアリング50と、アウターナットリング80、係止ボール79及びインナーナット70を組み付けた回転変換機構60と、ディッシュスプリング90と、ナットスプリング100とを組み付けて回転規制変換ユニットUを構成する。
このとき、ナットスプリング100の係止凸部106は、アウターナットリング80の係止凹部85に径止しているため、ナットスプリング100とアウターナットリング80とは回転固定されるとともに、軸心方向においても固定され、一体化している。そして、図11(a)に示すように、突出壁部84同士の間の遊嵌凹部83から、T型アーム部102に形成した回転位置規制係止凸部103及びラチェット解除係止凸部104が露出する。
また、図10に示すように、Wベアリング50を構成するWベアリングアウター51の連結溝51fと、アウターナットリング80の後端側連結凸部86とが嵌め合っているため、Wベアリングアウター51はアウターナットリング80に対して、回転自在な状態で、軸心方向を拘束して連結している。
これに対し、Wベアリングアウター51の軸心方向ギア51eと、インナーナット70の後端側軸心方向ギア部76とが噛合しているため、Wベアリングアウター51は、インナーナット70を軸心方向に移動自在な状態で、回転方向に拘束している。
また、対向する螺旋状係止溝71,81に係止ボール79が係止することで、係止ボール79を介してアウターナットリング80に回転自在に組み付けられたインナーナット70は、図7に示すように、アウターナットリング80と一体化したナットスプリング100のリング部101を反力とするディッシュスプリング90によって、軸心方向基端側に付勢されている。
さらにまた、ロックワッシャ40の側面視L型の突出ばね部42の先端がWベアリングアウター51の背面側角部に付勢力をもって当接しているため、ギアリング部41の噛合ギア41aと、Wベアリングアウター51の後方リング面51bに形成した噛合ギア51dとは離間している。
このように構成した回転規制変換ユニットUをチャックボディ30に組み付けるには、ロックワッシャ40の径止半円凸部43を第2フランジ部34の半円状径止凹部34aに嵌合させ、ギアリング部41の背面が第2フランジ部34の正面に当接するように装着する。これにより、ロックワッシャ40は、チャックボディ30に対して回転固定された状態で、第2フランジ部34とWベアリングアウター51の後方リング面51bとで挟まれることとなる。
そして、チャックボディ30に装着された回転規制変換ユニットUのアウターナットリング80に対して、前方アウタースリーブ110及びキャップ130を装着してチャック装置1を組み付ける。このとき、キャップ130は、チャックボディ30の前胴部36に圧入し、キャップ130はチャックボディ30に対して回転固定された状態で装着される。また、押圧ブロック113は突出壁部84同士の間の遊嵌凹部83に遊嵌し、図11(b)に示すように、ラチェット解除係止凸部104がラチェット解除係止凹部112bに径止する。
したがって、回転位置規制係止凸部103はロック解除回転位置規制係止凹部112aに径止せず、また噛合爪部105は先端側突出ギア部75のラチェットギア74に噛合しない。よって、一体化されたナットスプリング100を介してアウターナットリング80は、インナーナット70に対して回転が規制されていない無規制状態となる。
このようにして組み付けられたチャック装置1において、前方アウタースリーブ110を締付け回転方向Rに回転させて締付け回転方向Rの回転力を入力すると、インナーナット70は、上述したように、一体化されたナットスプリング100を介してアウターナットリング80に対して無規制状態であるものの、ディッシュスプリング90によって基端側に付勢されているため、アウターナットリング80と一体回転する。
このように、アウターナットリング80からの回転力により、ディッシュスプリング90によってインナーナット70を一体回転してジョー20をジョー装着孔37において傾斜方向前方に移動して基軸Jを把持して固定する。次に、基軸Jを把持したジョー20を反力として仮固定されたインナーナット70に対して更なる締付け回転方向Rの回転によりアウターナットリング80を基端側に移動し、突出ばね部42の付勢力に抗して噛合ギア41a,51dとが噛合するロックワッシャ40及びWベアリングアウター51により、インナーナット70をチャックボディ30に対して回転固定する。
そして、基端側に移動したアウターナットリング80の更なる締付け回転方向Rの回転によって、チャックボディ30に対して回転固定されたインナーナット70をジョー20とともに先端側に移動させて、ジョー20による基軸Jの把持力を向上させることができる。したがって、ジョー20で基軸Jを締付ける力を増大し、安定した締付け状態を実現することができる。
詳しくは、アウターナットリング80と、ジョー装着孔37に挿着された複数のジョー20と、複数のジョー20を同期してジョー装着孔37内を傾斜方向に移動させるインナーナット70と、インナーナット70をチャックボディ30の基端側に付勢して制御するディッシュスプリング90とを備えるとともに、螺旋状係止溝71,81を、インナーナット70に対するアウターナットリング80の締付け回転方向Rへの差動回転により、インナーナット70を軸心方向の先端側に差動させる螺旋方向で形成したことにより、インナーナット70に対するアウターナットリング80のナットスプリング100による回転無規制状態において、アウターナットリング80から入力された回転力によって、ディッシュスプリング90により軸心方向ALの差動が規制制御されたインナーナット70がアウターナットリング80と一体回転して、ジョー20を同期してジョー装着孔37内を傾斜方向先端側に移動させて基軸Jを把持する(図12参照)。そして、センター孔30aに挿入された基軸Jを把持することでジョー装着孔37内での傾斜方向への移動が規制されたジョー20を反力としてインナーナット70の回転を仮固定することができる。
また、所定の締付け回転方向Rの回転負荷により、インナーナット70に対してアウターナットリング80が回転自在な回転無規制状態と、インナーナット70に対するアウターナットリング80の緩み回転方向Lの回転を規制する回転規制状態とを切替えるナットスプリング100を備えたことにより、さらなるアウターナットリング80から入力された回転力が所定の回転負荷を超えた状態において、ナットスプリング100により、アウターナットリング80のインナーナット70に対する緩み回転方向Lの回転を規制することができる。したがって、振動や衝撃が生じる稼働状態においても、締付け状態が緩むことなく、堅固な締付け状態を確実に維持することができる。
また、アウターナットリング80に対して回転自在かつ軸心方向ALを拘束して連結するとともに、インナーナット70に対して、軸心方向ALを差動自在かつ回転拘束し、チャックボディ30に対する回転方向の噛合を許容する噛合ギア51dを有するWベアリングアウター51、及びチャックボディ30に対して回転固定され、Wベアリングアウター51の噛合ギア51dと噛合する噛合ギア41aを有するとともに、第2フランジ部34を反力としてWベアリングアウター51を先端側に付勢して、噛合ギア51dと噛合ギア41aとを離間させる突出ばね部42を有するロックワッシャ40と、チャックボディ30に対するアウターナットリング80の基端側への移動を規制する第2フランジ部34とを備えたことにより、アウターナットリング80の締付け回転方向Rの回転により、傾斜方向への移動が規制されたジョー20により回転が仮固定されたインナーナット70を反力として、アウターナットリング80が、図7に示すように、ロックワッシャ40の突出ばね部42の付勢力に抗して、Wベアリングアウター51とともに基端側に移動して、噛合ギア51dと噛合ギア41aとを噛合させて、インナーナット70をチャックボディ30に対して回転固定する。
さらに、つづくアウターナットリング80の締付け回転方向Rの回転により、ディッシュスプリング90による基端側への付勢に抗して、インナーナット70がアウターナットリング80に対して軸心方向AL先端側に差動する。このアウターナットリング80に対して差動するインナーナット70によって同期した複数のジョー20を一体的にジョー装着孔37の内壁面に押し付けて、ジョー20による基軸Jに対する把持力を向上することができる。
また、チャック装置1としてスムーズに作動するように、各構成の組み合わせにおいてアソビを設けているが、インナーナット70との螺合により一体化した複数のジョー20をジョー装着孔37の内壁面に押し付けているため、アソビが吸収され、堅固な締付け状態を実現することができる。
さらには、螺合により一体化したインナーナット70とともに複数のジョー20をジョー装着孔37の内壁面に押し付けているため、インナーナット70とジョー20の螺合するねじ山のピッチ、つまりねじ山の間隔によらず、堅固な締付け状態を維持することができる。
詳しくは、チャック装置における螺合溝とジョーのネジ溝の角度は、締付け速度と締付け力に基づき、一般的に16〜24山/インチで設定される。単位長さあたりのねじ山の数を増やす、つまりねじ山のピッチを小さくし、ネジ溝の螺旋角度を緩くすると、回転に対するジョーの傾斜方向の移動は遅くなるが、その分締付け力は向上する。
逆に、単位長さあたりのねじ山の数を減少する、つまりねじ山のピッチを大きくし、ネジ溝の螺旋角度をきつくすると、回転に対するジョーの傾斜方向の移動は早くなり操作性は向上するが、その分締付け力は低下する。
したがって、回転に対するジョーの傾斜方向の移動と、締付け力とのバランスにより、単位長さあたりのねじ山の数、つまりねじ山のピッチを設定するが、チャック装置1では、螺合により一体化したインナーナット70とともに複数のジョー20をジョー装着孔37の内壁面に押し付けているため、インナーナット70とジョー20の螺合するねじ山の単位長さあたりの数、つまりねじ山のピッチによらず、堅固な締付け状態を実現することができる。
また、螺旋状係止溝71,81の間において係止する係止ボール79を備えたことにより、螺旋状係止溝71,81が螺旋方向において、より確実に係止することができる。
また、複数の係止ボール79を、螺旋状係止溝71,81に沿って配置しているため、螺旋状係止溝71,81との螺旋方向の係止において、抵抗となることなく、ナットスプリング100によって生じた差動回転を、アウターナットリング80に対するインナーナット70の軸心方向AL前方への差動に効率よく、かつスムーズに変化することができる。
さらに、螺旋状係止溝71を1周分未満の螺旋状に形成するとともに、螺旋状係止溝71の端部同士を、螺旋状係止溝71,81の螺旋方向に交差する方向の連結係止溝71aで連結して閉ループ状を構成するとともに、連結係止溝71aを、連結係止溝71aに係止した係止ボール79が、対向する螺旋状係止溝81に係止しない深さに形成しているため、係止ボール79は螺旋状係止溝71及び螺旋状係止溝71を循環することができる。したがって、少ない数の係止ボール79が、螺旋状係止溝71と螺旋状係止溝81との間を循環して、アウターナットリング80で入力された回転をインナーナット70の軸心方向AL方向の移動に変換することができる。
また、連結係止溝71aが、係止する係止ボール79の上部が露出する程度の断面4/5円形溝で形成しているため、螺旋方向に交差する方向の連結係止溝71aから係止ボール79が不用意に外れて、回転変換機構60におけるアウターナットリング80に対するインナーナット70の相対回転からアウターナットリング80に対するインナーナット70の前後方向の差動への変換が妨げられることはない。
なお、取付溝部材72bは変形性の高いゴムで形成することにより、断面4/5円形溝で形成した連結係止溝71aを、型を用いて容易にプレス成型できるが、どのような成型加工方法であってもよく、樹脂や金属で構成してもよい、
また、Wベアリングアウター51を、基端側に噛合ギア51dを周方向に配置する後方リング面51bを有するリング状に形成し、ロックワッシャ40を、先端側に噛合ギア41aを周方向に配置するリング状のギアリング部41と、ギアリング部41の外周から先端側に突出し、Wベアリングアウター51を先端側に付勢する突出ばね部42を周方向に等間隔で複数配置することにより、チャックボディ30に対するインナーナット70の回転自在/回転固定を簡易な構造で確実に切り替えることができる。
詳しくは、Wベアリングアウター51を、基端側に噛合ギア51dを周方向に配置する後方リング面51bを有するリング状に形成し、ロックワッシャ40を、先端側に噛合ギア41aを周方向に配置するギアリング部41を有するリング状に形成するとともに、ギアリング部41の外周から先端側に突出し、Wベアリングアウター51を先端側に付勢する突出ばね部42を周方向に等間隔で複数配置することにより、突出ばね部42でWベアリングアウター51を先端側に付勢して、Wベアリングアウター51とロックワッシャ40の噛合ギア51d,41aとを離間させ、突出ばね部42のたわみによりWベアリングアウター51とロックワッシャ40の噛合ギア51d,41aとを噛合することができる。したがって、突出ばね部42の個数や形状あるいは弾性により、Wベアリングアウター51とロックワッシャ40の噛合ギア51d,41aの離間と噛合とをコントロールして切り替えることができる。
また、このように、ナットスプリング100によって、チャックボディ30に対して回転固定されたロック状態となり、さらに、ジョー20によって基軸Jを把持した状態において、スリーブ回転規制機構120により、前方アウタースリーブ110はチャックボディ30に対して回転が制限され、例えば、回転治具の使用による振動や衝撃によって、前方アウタースリーブ110が不用意に緩み方向に回転することを防止している。
詳しくは、上述したように、つづくアウターナットリング80の締付け回転方向Rの回転により、ディッシュスプリング90による基端側への付勢に抗して、アウターナットリング80に対して軸心方向AL先端側に差動するインナーナット70が、スリーブ回転規制機構120のスライドリング121を前方に押し付ける(図6a部拡大図における矢印A参照)。このインナーナット70の押し付けによって前方にスライドするスライドリング121は、Oリング122をキャップ130のキャップ本体130aの背面に押し付ける。キャップ本体130aの背面に押し付けられたOリング122とキャップ本体130aとの周方向の摩擦、及び前方アウタースリーブ110に対してスライド自在かつ回転が拘束されたスライドリング121と、Oリング122との周方向の摩擦は増大し、前方アウタースリーブ110は、チャックボディ30の前胴部36に圧入し、チャックボディ30に対して回転固定された状態で装着されるキャップ130を介して、チャックボディ30に対して回転が規制される。
したがって、ナットスプリング100の回転位置規制係止凸部103が、前方アウタースリーブ110の押圧ブロック113のロック解除回転位置規制係止凹部112aに対して、自身の付勢力によって係止することによって保持された回転規制変換ユニットUのロック状態において、スリーブ回転規制機構120の回転方向の摩擦によって、チャックボディ30に対して回転方向の差動が規制された前方アウタースリーブ110が不用意に緩み方向に回転して、回転規制変換ユニットUのロックが不用意に解除されることを防止できる。つまり、回転規制変換ユニットUとスリーブ回転規制機構120とが協働してロック状態を保持しているため、不用意に解除されない安定したロック状態を確立することができる。
このように、スリーブ回転規制機構120を備えたチャック装置1は、回転規制変換ユニットUによって、ジョー20による基軸Jの把持状態を、安定して維持することができる。
なお、このチャック装置1による締付け状態を開放して、基軸Jを取り外す際には、前方アウタースリーブ110を介して前方アウタースリーブ110を緩み回転方向Lに回転する。このとき、押圧ブロック113が遊嵌凹部83で遊嵌しているため、アウターナットリング80に対して前方アウタースリーブ110は緩み回転方向Lに差動回転する。
このアウターナットリング80に対する緩み回転方向Lの前方アウタースリーブ110の差動回転により、ラチェット噛合径止凹部112cに径止していたラチェット解除係止凸部104は、ラチェット解除係止凹部112bに径止し、T型アーム部102の弾性力で径外側に戻り、噛合爪部105のラチェットギア74への噛合は解消される。また、アウターナットリング80の緩み回転方向Lの回転により、チャックボディ30に対して回転固定され、一体化されたジョー20とともに先端側に押し付けられていたインナーナット70の押し付け状態は解消される。したがって、インナーナット70は、ディッシュスプリング90の基端側への付勢力によって、再びアウターナットリング80と緩み回転方向Lに一体回転し、インナーナット70と螺合するジョー20は、ジョー装着孔37内を基端側に移動して、基軸Jのジョー20による把持は解消され、基軸Jをセンター孔30aから取り出すことができる。
また、アウターナットリング80の緩み回転方向Lの回転の際には、インナーナット70の押し付け状態も解消されるため、スリーブ回転規制機構120の回転規制も解消され、スムーズに前方アウタースリーブ110を緩み方向に回転させて、基軸Jのジョー20による把持を解消して、基軸Jをセンター孔30aから取り出すことができる。
続いて、図13乃至図17とともに、別の実施形態のチャック装置200について、以下で説明する。
なお、図13はチャック装置200の各構成要素の正面側からの分解斜視図を示し、図14はチャック装置200の縦断面図を示し、図15はチャック装置200におけるロックユニットLKの分解斜視図を示し、図16はチャック装置200におけるロックユニットLKの説明図を示し、図17はチャック装置200における回転規制についての説明図を示している。
詳しくは、図16はロックユニットLKの背面側から見た図を示しており、図16(a)はロック解除状態について示し、図16(b)はロック状態を示している。また、図17は前方アウタースリーブ210を透過した状態のロックユニットLKの正面図であり、図17(a)は通常状態について示し、図17(b)は締付け状態について示し、図17(c)は解除状態について示している。
上述のチャック装置1と同様に、図1に示すように、例えば、電動工具Kにおける先端部分に配置されたスピンドルSに装着されるチャック装置200は、図13及び14に示すように、基端側(後方:図13において左上、図14において左)から先端側(前方:図13において右下、図14において右)に向かって順に、後方アウタースリーブ10、ジョー20、チャックボディ30、ロックユニットLK、前方アウタースリーブ210、スリーブ回転規制機構220及びキャップ230を配置し、組付けて構成している。
なお、チャック装置200では、上述のチャック装置1における後方アウタースリーブ10、ジョー20、チャックボディ30を用いているため、これらの構成の詳細な説明は省略する。また、図13では、チャックボディ30のジョー装着孔37にジョー20を挿着した状態を図示している。
後方アウタースリーブ10、ロックユニットLK、前方アウタースリーブ210、スリーブ回転規制機構220及びキャップ230はリング状に形成され、チャックボディ30の長手方向に平行な軸心方向AL上に配置されている。
ロックユニットLKは、図15に示すように、基端側(後方:図15において右上)から先端側(前方:図15において左下)に向かって順に、ラチェットリング260、ナットスプリング270及びナット280を配置し、組付けて構成している。
ラチェットリング260は、正面視中央に、チャックボディ30の前中胴部35の挿通を許容する中央開口260aを有し、ロックユニットLKにおける基端側の後方面を構成する後方リング面260bと、後方リング面260bの外周縁から前方に突出する外周面260cとで構成している。
外周面260cの内周面には、後述するナットスプリング270の噛合爪部275の噛合を許容する軸心方向のラチェットギア260dを備えている。なお、ラチェットギア260dは、締付け回転方向R側が径方向面となり、緩み回転方向L側が径方向に対して傾斜する傾斜面となる片傾斜ギアで構成している。そして、後方リング面260bと外周面260cの角部にリング状に配置したベアリングボール61を介在させている。
ナットスプリング270は、先端側のリング部271と、リング部271の径外側を先端側に折り曲げて、側面視において前向きに寝かせた寝位姿勢の略十字型に形成した十字アーム部272とで構成している。
なお、十字アーム部272は、周方向において三箇所備えるとともに、十字アーム部272における締付け回転方向Rの先端には、後述する前方アウタースリーブ210の先端側内周縁に配置した係止凹部212に係止する径外側に突出する回転位置規制係止凸部273を有している。
十字アーム部272における緩み回転方向Lの先端には、ラチェットリング260のラチェットギア260dに噛合する噛合爪部275と、後述する前方アウタースリーブ210の先端側内周縁に形成したラチェット制御凹部213に係止する径外側に突出するラチェット解除係止凸部274とが、前後方向に併設している。
また、十字アーム部272の中央先端側には、ナット280における遊嵌凹部283の外周面部分に形成した係止凹部285に径止する係止凸部276を備えている。
ナット280は、ジョー20のネジ溝21に螺合する螺合溝281を内周面に有するリング本体282と、リング本体282の前面において、周方向に遊嵌凹部283を介して等間隔に配置し、前方に突出する突出壁部284とで構成している。なお、遊嵌凹部283の外周面部分には、上述のナットスプリング270の係止凸部276が係止する係止凹部285を備えている。また、遊嵌凹部283の前面には、後述するスリーブ回転規制機構220のボール242の嵌り込みを許容する嵌り込み凹部286を形成している。
このような構成のラチェットリング260、ナットスプリング270及びナット280を、ナットスプリング270の係止凸部276を係止凹部285に係止し、噛合爪部275がラチェットギア260dに噛合するようにして組み付けてロックユニットLKを構成する。
前方アウタースリーブ210は、後端側が後方アウタースリーブ10の外周側のフランジ部14と同径であり、先端側に後述するキャップ230の挿着を許容する先端側が絞られた側面視略釣鐘型の筒状に形成している。
前方アウタースリーブ210の内周側には、図16に示すように、上述したナットスプリング270の回転位置規制係止凸部273が係止する係止凹部212、ラチェット解除係止凸部274が係止するラチェット制御凹部213、及びボール242を保持するホルダ孔214aを有するとともに、組み付け状態において、遊嵌凹部283に遊嵌するホルダブロック214を備えている。
また、ホルダ孔214aの前方には、図13に示すように、後述するスライドリング240の径外凸部241の係止を許容する径止溝215を備えている。なお、ホルダブロック214及び径止溝215は、ナット280の嵌り込み凹部286に対応する間隔及び位置で3か所形成している。
詳しくは、十字アーム部272における締付け回転方向Rの先端に形成した回転位置規制係止凸部273が係止する係止凹部212は、ロックユニットLKのロックが解除され、緩み回転方向Lに配置されたロック解除回転位置規制係止凹部212aと、ロック状態となり、締付け回転方向Rに配置されたロック回転位置規制係止凹部212bが併設している。
十字アーム部272のラチェット解除係止凸部274が係止するラチェット制御凹部213は、凹状深さが浅く、ラチェット解除係止凸部274が径止することで噛合爪部275が径内側に押圧され、ラチェットリング260のラチェットギア260dと離間するラチェット解除凹部213aと、凹状深さが深く、ラチェット解除係止凸部274が径止することで、噛合爪部275が径側に移動して、ラチェットリング260のラチェットギア260dと噛合するラチェット噛合凹部213bとが、緩み回転方向Lから締付け回転方向Rに向かってこの順で配置され、一体形成している。
ホルダブロック214のホルダ孔214aは、後述するスリーブ回転規制機構220のボール242が軸心方向AL方向にスライド可能に、かつ軸心方向ALに対する回転方向を拘束する大きさで形成している。
スリーブ回転規制機構220は、前方アウタースリーブ210のホルダ孔214aに嵌め込むボール242、前方アウタースリーブ210に対して回転固定且つ軸心方向ALにスライド可能なスライドリング240と、スライドリング240の前方に配置したOリング250とで構成している。
スライドリング240は、前方アウタースリーブ210の径止溝215に対応して、外周縁から径外側に突出する径外凸部241を有するリング体であり、前方アウタースリーブ210の前方から挿入し、後端部がホルダブロック214の前端に当接している。
Oリング250は、前後方向に長い楕円断面のゴム製リング体であり、後述するキャップ230の挿着部232に嵌めつけられ、略円錐台状のキャップ本体230aの背面に当接している。
スリーブ回転規制機構220は、前方アウタースリーブ210に対して回転固定且つ軸心方向ALにスライド可能なスライドリング240がスライドして、Oリング250を押し付けることで、チャックボディ30に対して回転固定されたキャップ230に対して周方向摩擦力を付与する機構である。
キャップ230は、正面視中央にジョー20の挿通を許容する挿通孔231を有するとともに、前方に向けて寝かせた略円錐台状のキャップ本体230aと、キャップ本体230aの背面側において、上述の前方アウタースリーブ210の先端に挿着する挿着部232とで構成している。
続いて、各構成要素を上述のように構成したチャック装置200の組み付けについて以下で説明する。
まず、上述したように、ラチェットリング260、ナットスプリング270及びナット280を組み付けてロックユニットLKを構成する。
このように構成したロックユニットLKを前方からチャックボディ30に組み付け、さらにその前方より前方アウタースリーブ210を組み付ける。
このとき、十字アーム部272の回転位置規制係止凸部273が係止凹部212に、ラチェット解除係止凸部274がラチェット制御凹部213に係止し、ホルダブロック214がナット280の遊嵌凹部283に遊嵌する。
さらに、前方アウタースリーブ210の前方より、スリーブ回転規制機構220のボール242をホルダブロック214のホルダ孔214aに挿入し、径外凸部241が径止溝215に係止するようにスライドリング240を装着し、挿着部232にOリング250をはめ込んだキャップ230をチャックボディ30の前胴部36に圧入して組み付けを完了する。このとき、ホルダブロック214のホルダ孔214aに挿入したボール242は、遊嵌凹部283における嵌り込み凹部286に嵌まり込む(図17(a)参照)。
このように組み付けたチャック装置200では、前方アウタースリーブ210を締付け回転方向Rに回転すると、回転位置規制係止凸部273が回転位置規制係止凹部212bに径止してロック位置となり、ラチェット解除係止凸部274がラチェット噛合凹部213bに径止して、噛合爪部275がラチェットリング260のラチェットギア260dと噛合して、締付け回転方向Rへの回転は許容するが、緩み回転方向Lの回転が規制されたロック状態となる(図16(b)参照)。
このとき、遊嵌凹部283で遊嵌していたホルダブロック214は、図17(b)に示すように、遊嵌凹部283における締付け回転方向R前方の突出壁部284に当接する。なお、この状態では、ホルダブロック214のホルダ孔214aに挿入されたボール242は、前方アウタースリーブ210のナット280に対する締付け回転方向Rへの作動回転に伴って遊嵌凹部283の嵌り込み凹部286から抜け出て、前方移動する。ボール242の前方移動により、スライドリング240は前方にスライドして、Oリング250をキャップ230のキャップ本体230aの背面に押し付ける。
キャップ本体230aの背面に押し付けられたOリング250とキャップ本体230aとの周方向の摩擦、及び前方アウタースリーブ210に対してスライド自在かつ回転が拘束されたスライドリング240と、Oリング250との周方向の摩擦は増大し、前方アウタースリーブ210は、チャックボディ30の前胴部36に圧入し、チャックボディ30に対して回転固定された状態で装着されるキャップ230を介して、チャックボディ30に対して回転が規制される。
この状態で、前方アウタースリーブ210を締付け回転方向Rに回転することで、ロックユニットLKが締付け回転方向Rに回転し、螺合溝281と噛合するネジ溝21を有するジョー20はジョー装着孔37において傾斜方向前方に移動して基軸Jを把持して固定する。
なお、この基軸Jを把持して固定した状態では、ロックユニットLKにおいて、噛合爪部275がラチェットリング260のラチェットギア260dに噛合しているため、緩み回転方向Lの回転が規制されるとともに、前方アウタースリーブ210がスリーブ回転規制機構220の周方向の摩擦力によって、チャックボディ30に対して不用意に緩み回転方向Lに回転することを制限している。つまり、ロックユニットLKとスリーブ回転規制機構220とが協働してロック状態を保持しているため、不用意に解除されない安定したロック状態を確立することができる。
したがって、ジョー20で基軸Jを締付ける力を増大し、安定した締付け状態を実現することができる。
また、前方アウタースリーブ210がスリーブ回転規制機構220の周方向の摩擦力によって、チャックボディ30に対して不用意に緩み回転方向Lに回転することを制限しているため、振動や衝撃が生じる稼働状態においても、締付け状態が緩むことなく、堅固な締付け状態を確実に維持することができる。
なお、このチャック装置200による締付け状態を開放して、基軸Jを取り外す際には、前方アウタースリーブ210を緩み回転方向Lに回転する。このとき、ホルダブロック214が遊嵌凹部283で遊嵌しているため、ナット280に対して前方アウタースリーブ210は緩み回転方向Lに差動回転する。
このナット280に対する緩み回転方向Lの前方アウタースリーブ210の差動回転により、図16(a)に示すように、回転位置規制係止凹部212bに回転位置規制係止凸部273は、ロック解除回転位置規制係止凹部212aに径止し、解除回転位置となり、さらには、回転位置規制係止凹部212bに径止していたラチェット解除係止凸部274がラチェット解除凹部213aに径止することで噛合爪部275は径内側に移動し、噛合爪部275とラチェットリング260のラチェットギア260dへの噛合は解消される。
なお、緩み回転方向Lへの前方アウタースリーブ210の回転により、嵌り込み凹部286から抜け出て、スライドリング240を前方に押し付けていたボール242は、前方アウタースリーブ210のナット280に対する緩み回転方向Lへの差動回転により嵌り込み凹部286に嵌まり込み、スライドリング240の前方移動を解消することができる。
なお、上述のように、チャック装置1において、ジョー20を傾斜方向前方移動させるとともに、軸心方向AL前方に移動させるために回転変換機構60を用いたが、チャック装置1とは別に、回転変換機構Kとして、単独で用いてもよい。回転変換機構Kは、上述のチャック装置1における回転変換機構60の作用効果と同様の効果を奏することができる。
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、この発明のチャック本体は、チャックボディ30に対応し、
以下同様に、
傾斜孔は、ジョー装着孔37に対応し、
チャック爪は、ジョー20に対応し、
ナットは、インナーナット70及びナット280に対応し、
回転入力操作体は、前方アウタースリーブ110,210に対応し、
回転制限手段は、スリーブ回転規制機構120,220に対応し、
スライド部材は、スライドリング121,240に対応し、
回転摩擦部材は、Oリング122,250に対応し、
回転入力体は、アウターナットリング80に対応し、
回転規制手段は、ナットスプリング100,270に対応し、
回転変換手段は、回転変換機構60に対応し、
外側螺旋手段は、螺旋状係止溝81に対応し、
内側螺旋手段は、螺旋状係止溝71に対応し、
相対位置変換手段は、嵌り込み凹部286及びボール242に対応し、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
例えば、回転変換機構60では、アウターナットリング80の内周面に複数周分の螺旋状螺旋状係止溝81を形成し、インナーナット70における連結係止溝71aで閉ループ状を構成したが、インナーナット70の連結係止溝71aを複数周分の螺旋形に形成し、ナット280で一周未満の螺旋状係止溝81を形成し、螺旋状係止溝81の端部同士を連結係止溝71aで連結するとともに、螺旋状係止溝81aを形成する部分を、アウターナットリング80の本体内周面側に取り付ける別部材で構成してもよい。さらには、回転変換機構60において、前方移動させたが、後方移動して、スリーブ回転規制機構120及びスリーブ回転規制機構220を作用させる構成でもよい。
また、上述の説明では、正面視円状の溝形状である嵌り込み凹部286について説明したが、この形状に限定されず、例えば緩み方向に長い長楕円状の溝などさまざまな形状で形成することができる。