以下に、本発明にかかるエレベーターかご給電装置の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1によるエレベーターかご給電装置を示す図である。エレベーターかご給電装置100は、系統電源1からエレベーターのかご内負荷4へ給電するものである。系統電源1は、機械室内の制御盤20に配置されているかご給電の送電部であって、単相200V級で送電する。エレベーターかご給電装置100は、直列補償装置3と、系統電源1からの電力を送電する電力用ケーブル2a、2bとを備える。電力用ケーブルの符号は、総括的に2を用い、区別して説明する場合に2a、2bを用いる。制御ケーブルは、前述したように、複数の芯線を有する電力用ケーブル2と図示しない一般信号用ケーブルからなる。機械室からエレベーターかご(適宜、単にかごと称する)への給電は制御ケーブルの中の電力用ケーブル2により行われる。電力用ケーブル2の芯線1本あたりの断面積は例えば0.75mm2といった極めて小さいものであって、給電する電力に応じて多数の芯線が並列されている。電力用ケーブル2は、昇降路程度の長さを持つため、高揚程のエレベーターでは300m以上になる。なお、エレベーターの仕様によっては昇降路の中間部までは固定ケーブルを用いて配線し、そこから制御ケーブルを用いて、かごまで配線することがあるが、この場合も一般には固定ケーブルの断面積は制御ケーブル内の電力用ケーブル2と同等であるので図1のように考えて差し支えない。
電力用ケーブル2の芯線1本あたりの断面積が小さいために、電力用ケーブル2の商用周波数におけるインピーダンスはほとんどが抵抗成分であって、リアクタンス成分は無視できる範囲である。したがって、かごへの給電に伴い電力用ケーブル2に電流が流れると、その抵抗成分によりかご側では電流値に比例して電圧が低下し、また、損失が電流値の二乗で増加する。
直列補償装置3は、図示しないかごに設置されており、電力用ケーブル2で発生する損失による電圧低下や系統電圧変動を補償する。電圧低下の補償は、電力用ケーブル2から送電された入力電力の電圧に、電力用ケーブル2による電圧降下を補償した補償電圧を重畳するようにする。電力用ケーブル2は、直列補償装置3のかご給電線9a、9bの入力側に接続される。かご給電線9a、9bの出力側は、かご内負荷4に接続される。図1では、電力用ケーブル2aが直列補償装置3の入力端子38aに接続され、電力用ケーブル2bが直列補償装置3の入力端子38bに接続されている。かご給電線9aは入力端子38aとかご内負荷4を接続し、かご給電線9bは入力端子38bとかご内負荷4を接続する。かご給電線の符号は、総括的に9を用い、区別して説明する場合に9a、9bを用いる。かご内負荷4は、例えばエアコン、照明器具、ドア開閉用モータなどで、一般に入力電圧は単相200V級または100V級である。なお、かご内負荷4における100V級の負荷には200V級から分圧または降圧し、供給される。
直列補償装置3は、電力変換器5、かご給電線9、直列トランス6、電力変換器5に電力を供給する入力線7a、7b、直列トランス6の二次巻線を短絡するバイパス回路8、直列補償装置制御部31、図示しない電圧検出器34、35(図2参照)を備える。直列トランス6は、電力変換器5の出力に一次巻線、かご給電線9の1本であるかご給電線9aに二次巻線が接続され、電力変換器5とかご給電線9aとを電磁誘導により間接的に接続する。入力線の符号は、総括的に7を用い、区別して説明する場合に7a、7bを用いる。ここで、入力線7は、かご給電線9の入力側ではなく出力側に接続されている。また、バイパス回路8は、直列補償動作の際は開放しているが、直列補償動作を行わないバイパス運転の際には閉路して直列トランス6の二次巻線を短絡する。バイパス回路8は、例えば電磁接触器と半導体スイッチの並列接続により構成する。この実施の形態では、電力変換器5の異常などが発生した場合に直列トランス6をかご給電線9から高速に切り離す際に半導体スイッチを閉路し、バイパス運転定常動作の際には電磁接触器を閉路する。
図2は、図1の直列補償装置の詳細を示す構成図である。電力変換器5は、入力線7a、7bから単相交流を入力し、直流電圧を出力するダイオード整流器16と、入力直流電圧を平滑する平滑コンデンサ12と、単相フルブリッジインバータ17と、出力フィルタ15とを備える。ダイオード整流器16は、ダイオード11a、11b、11c、11dにより構成される。単相フルブリッジインバータ17は、4つのIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)13a、13b、13c、13dと、各々のIGBT13a、13b、13c、13dと逆並列に接続されたダイオード14a、14b、14c、14dからなる。単相フルブリッジインバータ17は、適宜、インバータ17と称する。出力フィルタ15は、インバータ出力電圧の高調波成分を除去するものであり、インバータ17の出力が入力され、直列トランス6の一次巻線に出力する。
ダイオード整流器16の正極配線26aと負極配線26bとの間に、IGBT13a、13bは直列に接続され、同じくIGBT13c、13dも直列接続されており、IGBT13aとIGBT13bの接続点とIGBT13cとIGBT13dの接続点がインバータ17の出力端子である。IGBT13a、13bの接続点と出力フィルタ15は出力線18aで接続され、GBT13c、13dの接続点と出力フィルタ15は出力線18bで接続される。IGBT13a〜13dは、IGBTに限定することはなく、自己消弧型半導体スイッチング素子(スイッチング素子)であればよい。さらに、自己消弧型半導体スイッチング素子が逆導通機能を備える場合には、ダイオード14a〜14dを省略することができるのも自明である。
図3は図2の出力フィルタの構成例であり、図4は図2の他の出力フィルタの構成例である。図3に示した出力フィルタ15は、リアクトル21、コンデンサ22と抵抗23とを直列接続したものである。直列トランス6へは、コンデンサ22と抵抗23とを直列接続したCR直列体の両端が接続される。CR直列体は直列トランス6に対して並列に接続され、リアクトル21は直列トランス6に対して直列に接続される。図4に示した出力フィルタ15は、分割して配置されたリアクトル24を有する例である。図3、図4の出力フィルタ15において、場合によっては、抵抗23は省略できる。出力フィルタ15の構成は、ローパスフィルタの機能を満たすものならば他の構成をとってもよい。
なお、電力変換器5は、さらに入力線7とダイオード整流器16の間にACリアクトルを含む場合やダイオード整流器16と平滑コンデンサ12の間にDCリアクトルを含む場合もある。また、他の形式の整流器を使用することもできる。
直列補償装置3は、直列補償装置制御部31を備えており、直列補償装置制御部31はインバータ電圧指令作成部32とゲート信号作成部33を有している。さらに、入力電圧
検出器である電圧検出器34を用いてかご給電線9の給電線入力電圧Vinを検出し、母線電圧検出器である電圧検出器35を用いてインバータ直流母線電圧Vdc(平滑コンデンサ12の電圧)を検出する。
次に、実施の形態1における直列補償装置3の動作を説明する。かご給電線9の入力電圧をVin、入力電流をIin、かご給電線9の出力電圧をVout、出力電流をIoutとする。給電線入力電圧Vinは、かご給電線9aの入力側とかご給電線9bの入力側との間の電圧である。給電線出力電圧Voutは、かご給電線9aの出力側とかご給電線9bの出力側との間の電圧である。かご給電線9の入力側は直列補償装置3の入力側なので、かご給電線9の給電線入力電圧Vin、給電線入力電流Iinを、適宜、補償装置入力電圧Vin、補償装置入力電流Iinと呼ぶことにする。かご給電線9の出力側は直列補償装置3の出力側なので、かご給電線9の給電線出力電圧Vout、給電線出力電流Ioutを、適宜、補償装置出力電圧Vout、補償装置出力電流Ioutと呼ぶことにする。
直列トランス6の二次巻線電圧であるV2は、直列補償装置3の補償電圧である。直列補償のため、直列トランス6の二次巻線電流はIinである。かご給電線9の入出力電圧の関係は、式(1)のように表すことができる。
Vout=Vin+V2 ・・・(1)
直列トランス6の一次巻線電圧であるV1は、電力変換器5の出力電圧である。また、直列トランス6の一次巻線の電流をI1としたとき、直列トランス6を理想トランスと捉えると、巻数比Nすなわち一次と二次の巻数がN:1のとき、式(2)、式(3)の関係が成り立つ。
V1=V2×N ・・・(2)
I1=Iin/N ・・・(3)
インバータ17の出力電圧をVinv、インバータ17の出力電流をIinvとする。出力フィルタ15の入力であるインバータ17のインバータ出力電圧Vinv、インバータ出力電流Iinvと、出力フィルタ15の出力である直列トランス6の一次巻線電圧V1、一次巻線電流I1の関係を考える。商用周波数領域では、インバータ出力電圧Vinvと一次巻線電圧V1はほぼ同じ値とみなすことができ、インバータ出力電流Iinvと一次巻線電流I1はほぼ同じ値とみなすことができる。直列補償装置3は、直列補償装置制御部31による制御により、補償装置出力電圧Voutが所望の値になるよう、すなわち二次巻線電圧V2の電圧を発生させるべく電力変換器5を運転する。二次巻線電圧V2は直列補償装置3の補償電圧なので、適宜、補償電圧V2と称する。
図5は、図2のインバータ電圧指令作成部の詳細を示す構成図である。インバータ電圧指令作成部32は、位相同期器41、サイン演算器42、乗算器43、指令電圧補正部44a、減算器45、増幅器46を備える。位相同期器41、サイン演算器42、乗算器43を含む構成部は給電線出力電圧目標値生成部であり、減算器45、増幅器46を含む構成部はインバータ電圧指令値生成部である。まず、電圧検出器34によって検出された補償装置入力電圧Vinと、補償装置出力電圧Voutの振幅を制御する指令である電圧振幅指令値Voprefがインバータ電圧指令作成部32に入力される。電圧振幅指令値Voprefは通常固定値で、系統電源1の定格系統電圧の振幅値である。補償装置入力電圧Vinは位相同期器41に入力され、補償装置入力電圧Vinの位相θが出力される。位相θはサイン演算器42に入力され、基準波形sinθが出力される。乗算器43によって電圧振幅指令値Voprefと基準波形sinθの積が出力される。乗算器43の出力Vorefoは、補償装置出力電圧Voutの目標値であるが、さらにこの値を指令電圧補正部44aで補正したものを出力電圧指令値Voref(補正電圧指令値)とする。
減算器45は、式(4)のように減算を行い、直列トランス6の二次巻線電圧指令値V2refを得る。
V2ref=Voref−Vin ・・・(4)
さらに、二次巻線電圧指令値V2refを増幅器46でN倍に増幅すると、インバータ電圧指令値Vinvrefが得られる。インバータ電圧指令値Vinvrefがインバータ電圧指令作成部32の出力となり、ゲート信号作成部33に入力される。
図6は図5の指令電圧補正部の構成例である。図6は、固定ゲインK1を有する増幅器71で構成された例である。このとき出力電圧指令値Vorefは、式(5)となり、常に目標値のK1倍の値を指令値とすることになる。
Voref=Vorefo×K1 ・・・(5)
一般に、直列トランス6の漏れインダクタンスや巻線抵抗、あるいは出力フィルタ15などの損失、さらには入力線7で電力変換器5に供給される電力などの電圧低下要因のために、単純にV2refを目標として補償電圧V2を生成する場合には、補償電圧V2や給電線出力電圧Voutは目標としたV2refやVorefよりも小さい値となってしまう。すなわち、指令電圧補正部44aで指令電圧を補正せずに求めたインバータ電圧指令作成部32の出力Vinvrefz(比較例のVinvref)を指令値として単相フルブリッジインバータ17を動作させた場合には、上述したように、補償電圧V2は目標であるV2refz(比較例のV2ref)よりも小さい値となってしまう。このため、実施の形態1では、指令電圧補正部44aで指令値をK1倍して、二次巻線電圧指令値V2refを生成することで、補償電圧V2や給電線出力電圧Voutが電圧低下要因によって低下することを抑制する。K1は1よりも大きい値である。
かご内負荷4で消費する電力と系統電源1の電圧値が変化した場合にも、かご内負荷4に印加される電圧が過電圧とならない範囲で、なるべく給電線出力電圧Voutが高くなるようK1の値を選択する。
インバータ電圧指令作成部32は、他の構成も考えられる。図7は図2のインバータ電圧指令作成部の他の例の詳細を示す構成図であり、図8は図7の指令電圧補正部の構成例である。インバータ電圧指令作成部の符号は、総括的に32を用い、区別して説明する場合に、32a、32bのように32の後にアルファベットを追加して用いる。図8の指令電圧補正部44bは、可変ゲインK2を有する増幅器72で構成している。指令電圧補正部の符号は、総括的に44を用い、区別して説明する場合に、44a、44bのように44の後にアルファベットを追加して用いる。指令電圧補正部44bは、基本波振幅演算部73と、テーブル74と、乗算器75を有する。指令電圧補正部44bは、指令電圧補正部44aと異なり、さらに給電線入力電圧Vinを入力し、基本波振幅演算部73で給電線入力電圧Vinの基本波振幅であるVin1pを求める。可変ゲインK2は、テーブル74を用いてVin1pの値に応じて決定する。なお、基本波振幅演算部73は、例えばバンドパスフィルタで基本波成分を抽出し、その基本波成分の振幅を求めるものであるが、手段を限定しないのは無論である。
指令電圧補正部44bの出力電圧指令値Vorefは、給電線出力電圧Voutの目標値Vorefo(給電線出力電圧目標値)と可変ゲインK2とに基づいて乗算器75により演算され、式(6)のようになり、目標値のK2倍の値を指令値とすることになる。
Voref=Vorefo×K2 ・・・(6)
テーブル74は、基本波振幅Vin1pが小さい場合にK2が大きくなるように決定している。以下にその理由を説明する。補償装置入力電流Iinが大きいとき、直列トランス6の漏れインダクタンスや巻線抵抗、あるいは出力フィルタ15などの損失が大きくなる傾向にある。加えて、補償装置入力電流Iinが大きくなると補償装置入力電圧Vinが小さくなるため、入力線7で電力変換器5に供給される電力も大きくなる(特に電流が大きくなる)。したがって、補償装置入力電流Iinが大きい場合に、すなわち基本波振幅Vin1pが小さい場合に、K2が大きくなるように設定することが望ましいが、簡単のため前述した補償装置入力電流Iinと補償装置入力電圧Vinの大小関係を用いて、基本波振幅Vin1pが小さい場合にK2を大きくする。このように、可変ゲインK2を有する指令電圧補正部44bにより、指令電圧補正量を補償装置入力電圧Vinに依存して変化させることができ、かご負荷電力が変化しても出力側電圧の変化を抑制することができる。
なお、かご内負荷4で消費する電力が増加すると補償装置入力電流Iinも増加するため、実施の形態1の直列補償装置3は、補償装置入力電圧Vinが低下することを検出して補償電圧V2を高くすることができるので、かご内負荷4で消費する電力が変化した場合に補償装置出力電圧Voutの変化を抑制することができる。次に、系統電源1の電圧値が低下すると補償装置入力電圧Vinも低下する。しかしながら、かご内負荷4で消費する電力が小さい場合には補償装置入力電流Iinは小さい。このため、系統電源1の電圧値が変化した場合にはかご内負荷4に印加される電圧が変動すると考えられるので、この電圧が過電圧とならない範囲で、なるべく補償装置出力電圧Voutが高くなるようテーブル74を設定する。
なお、図5、図7では指令電圧補正部44a、44bを乗算器43の後段に配置したが、乗算器43の前段に配置して電圧振幅指令値Voprefの状態で補正しても同様の効果が得られるのは自明である。
図9は、図2のゲート信号作成部の詳細を示す構成図である。ゲート信号作成部33は、除算器51、増幅器52、比較器53a、53b、反転演算器54a、54bを備える。ゲート信号作成部33には、インバータ電圧指令値Vinvrefと、電圧検出器35によって検出されたインバータ直流母線電圧Vdcと、三角波キャリアVtriとが入力され、IGBT13a、13b、13c、13dの制御信号であるゲート信号Ga、Gb、Gc、Gdが出力される。ゲート信号Ga〜Gdは、図示しないIGBT13a〜13dのゲートドライバへ入力される。IGBT13a〜13dは、対応するゲートドライバを介して制御される。ゲート信号GaはIGBT13aのゲートを制御し、ゲート信号GbはIGBT13bのゲートを制御し、ゲート信号GcはIGBT13cのゲートを制御し、ゲート信号GdはIGBT13dのゲートを制御する。
最初に、除算器51によりインバータ電圧指令値Vinvrefがインバータ直流母線電圧Vdcによって規格化される。除算器51の除算器出力Caは比較器53aで振幅1の三角波キャリアVtriと比較され、IGBT13aのゲート信号Gaが出力される。除算器出力Caが三角波キャリアVtri以上のときゲート信号Ga=1となりIGBT13aにオン信号が与えられる。それ以外のときゲート信号Ga=0となりIGBT13aにオフ信号が与えられる。その反転パターンである反転演算器54aの出力が、IGBT13bのゲート信号Gbとなる。除算器51の除算器出力Caを増幅器52で−1倍すると極性が反転した指令値(除算器反転出力Cb)が出力される。増幅器52の出力である除算器反転出力Cbは三角波キャリアVtriと比較され、IGBT13cのゲート信号Gcが出力される。その反転パターンである反転演算器54bの出力が、IGBT13dのゲート信号Gdとなる。ゲート信号Ga〜Gdは、図示しないIGBT13a〜13dのゲートドライバへ入力される。
このようなゲート信号作成部33を使用すると、単相フルブリッジインバータ17は位相シフトタイプのキャリア比較PWM(Pulse Width Modulation)パルスのゲート信号Ga〜Gdで動作する。このとき、インバータ出力電圧Vinvの波形は三角波キャリアVtriのキャリア周波数の2倍で変調されている、すなわち等価的にキャリア周波数が2倍となっているという利点がある。さらに、インバータ電圧指令値Vinvrefが0近傍にあっても、ゲート信号Ga〜Gdは規格外の細いパルスを出力することがない。
なお、一般にインバータ17の動作の際は、IGBT13aと13bとの切替の間、IGBT13cとIGBT13dとの切替の間に短絡防止期間を設ける。この短絡防止期間に起因する出力電圧誤差を補償する制御をゲート信号作成部33に含めることができるのは、自明である。
次に、出力フィルタ15の特性について説明する。図10は、図2の出力フィルタのゲイン特性例を示す図である。周波数が低い領域ではゲインは0dB、周波数が高い領域ではゲインは負である。ローパスフィルタはゲインが正になる領域を有しないことが望ましいが、実際のフィルタではカットオフ周波数近傍でゲインが正になる領域を有する。インバータ17の出力電圧については、系統電源1の基本波周波数成分に加えキャリア周波数の整数倍近傍の成分を含む。さらには電源高調波等に起因する低次高調波成分を有することもある。出力フィルタ15はPWMパルスに伴うキャリア周波数に起因する成分を除去することが主目的であるから、カットオフ周波数の設定についてはキャリア周波数以上の領域においては十分ゲインが低下している必要がある。しかしながら、入力に低次高調波が含まれる可能性があるため、主要な周波数である5次や7次といった周波数において、ゲインが正の大きな値をとらないようにするために、必要以上にカットオフ周波数を下げるべきではない。
次に、直列トランス6の巻数比Nの決定方法を説明する。まず、各種損失を考慮せずに見積る。最初に、必要な補償電圧V2の最大値を決定する。このとき、インバータ出力電圧Vinvの最大値の目安は、補償電圧V2の最大値のN倍である。インバータ出力電圧Vinvの振幅は、インバータ直流母線電圧Vdc以下でなくてはならない。インバータ直流母線電圧Vdcは、入力線7のかご給電線9側の電圧、すなわち補償装置出力電圧Voutと入力線7に流れる電流により変化する。例えば電力変換器5の定格運転時に、インバータ直流母線電圧Vdcは1.35×Vout(rms)程度となる。電力変換器5で発生する損失や直列トランス6で発生する損失と、無効電力とを考慮して、補償装置出力電圧Voutに余裕をみたうえで巻数比Nを大きくとることが望ましい。
エレベーターかご給電装置100の特徴として、かご内負荷4は回生しないことと、電力用ケーブル2は商用周波数領域において抵抗器とみなせることがある。このため、補償電圧V2は負となることはなく、さらに補償電力は正の有効電力とみなしてよい。したがって、入力線7からは、補償する有効電力と直列補償装置3で発生する損失を供給しなければならない。直列補償装置3で発生する損失は、直列トランス6の一次電圧が大きいときに一次電流が低減されるため減少すると考えられる。これが巻数比Nを大きく設計する理由である。
次に、巻数比Nを大きくするためには、インバータ直流母線電圧Vdcが大きいことが望ましい。このため本実施の形態では、入力線7はかご給電線9の出力側に接続している。このとき、直列補償装置3が動作することによって、補償装置出力電圧Voutは200V級の定格電圧程度に制御され、インバータ直流母線電圧Vdcが高く維持できる。
本実施の形態1のエレベーターかご給電装置100は、直列補償装置3により制御ケーブルの中の電力用ケーブル2の抵抗成分によって低下する電圧を補償して、常に定格電圧近傍の電圧をかご内負荷4に給電することができる。そして、かご給電線9の出力側の補
償装置出力電圧Voutが定格電圧近傍の値をとるため、かご内負荷4に所定の電力を入力する際に電力用ケーブル2に流れる電流を低減できる。このことから電力用ケーブル2の芯線の並列数を低減できる。その結果、電力用ケーブル2の芯線の数が減る分だけ、制御ケーブルを構成する芯線の本数を減じたり、軽量化したりする効果も得られる。また、系統電源1の電圧が低下した際にも直列補償装置3により補償装置出力電圧Voutが定格電圧近傍の値をとるため、電力用ケーブル2に流れる電流を低減できる。したがって上記と同様に、電力用ケーブル2の芯線の並列数を低減できる。その結果、電力用ケーブル2の芯線の本数が減る分だけ、制御ケーブルを構成する芯線の本数を減じたり、軽量化したりする効果も得られる。
また、補償装置出力電圧Voutが定格電圧近傍の値をとるため、電力用ケーブル2に流れる電流が概ねかご内負荷4の入力電力と直列補償装置3で発生する損失から決定されるようになる。このため、電力用ケーブル2の芯線の必要並列数の見積りが簡単になる。
以上に説明したように、実施の形態1の直列補償装置3は、インバータ電圧指令作成部32に指令電圧補正部44aや指令電圧補正部44bを備えるようにしたので、かご給電線9の給電線出力電圧Voutや給電線入力電流Iinを検出することなく、給電線入力電圧Vinの検出値を用いてフィードフォワード制御により、補償電圧V2の目標電圧と補償電圧V2との誤差電圧の低減を図るという顕著な効果が得られる。その結果、給電線出力電圧Voutは過電圧未満でより高い電圧を維持することができ、制御ケーブルを構成する芯線の本数を減じたり、軽量化したりする効果が得られる。また、指令電圧補正部44により補償電圧V2の目標電圧と補償電圧V2との誤差電圧が低減できるので、指令電圧補正部44を有しないものに比べてさらに補償装置出力電圧Voutを定格電圧に近づけることができ、制御ケーブルを構成する芯線の並列本数を低減できる。
また、実施の形態1の直列補償装置3の指令電圧補正部44が、可変ゲインK2を有する増幅器72を備える指令電圧補正部44bの場合には、かご内負荷4の消費電力が変化した場合にも適切なゲインで給電線出力電圧Voutの変化を抑制し、過電圧未満でより高い電圧を維持することができる。これにより給電線出力電圧Voutの変化を抑制できるので、一層、制御ケーブルを構成する芯線の本数を減じたり、軽量化したりする効果が得られる。
さらに、本実施の形態1の直列補償装置3は、電力変換器5への電力を供給する入力線7をかご給電線9の出力側に接続するようにしたため、接続端の電圧は補償装置入力電圧Vinよりも高い電圧である補償装置出力電圧Voutとなり、常に補償後の定格電圧近傍の値をとる。これにより、平滑コンデンサ12の電圧すなわちインバータ直流母線電圧Vdcの低下を抑制でき、直列トランス6の巻数比Nを大きく設計することができる。その結果、直列補償装置3の損失が低減され、一層の電力用ケーブル2の芯線の並列数低減が期待できる。
また、実施の形態1の直列補償装置3は、入力線7をかご給電線9の出力側に接続するようにしたため、入力線7を系統電源1に接続する必要がなく、入力線7を短くすることができる。入力線7を系統電源1に接続しないので、入力線7は電力用ケーブル2と同じものにする必要がない。
また、直列補償装置3の損失低減により、電力変換器5や直列トランス6の小型化、軽量化、低価格化が期待できる。
本実施の形態1のエレベーターかご給電装置100では、かご内負荷4への入力電力が変動した場合にもかご内負荷4と電力変換器5との両方の入力電圧の変動が小さいため、電力用ケーブル2の芯線の並列数が最小限に低減できるというこれまでにない効果を奏する。
以上のように実施の形態1のエレベーターかご給電装置100は、電力用ケーブル2から送電された入力電力を受電し、入力電力の電圧に電力用ケーブル2による電圧降下を補償した補償電圧V2を重畳して、かごのかご内負荷4に供給電力を供給する直列補償装置3を備え、直列補償装置3は、電力用ケーブル2から送電された入力電力をかご内負荷4に供給するかご給電線9と、交流電力を直流電力に変換する整流器(ダイオード整流器16)と、かご給電線9の交流電力を整流器(ダイオード整流器16)に供給する入力線7と、整流器(ダイオード整流器16)が出力した直流電力を交流電力に逆変換するインバータ17と、インバータ17の出力に基づいて補償電圧V2をかご給電線9に重畳する直列トランス6と、インバータ17を制御する直列補償装置制御部31を備え、直列補償装置制御部31は、電力用ケーブル2とかご給電線9の接続部の電圧である補償装置入力電圧Vinに基づいて生成された、かご給電線9への給電線出力電圧Voutの目標値(目標値Vorefo)を、指令電圧補正部44により補正して生成した補正電圧指令値(出力電圧指令値Voref)に基づいて、インバータ17の電圧指令値(インバータ電圧指令値Vinvref)を作成するインバータ電圧指令作成部32を有することを特徴とするので、かご給電線への給電線出力電圧または補償電圧の目標値を指令電圧補正部により補正することにより、インバータの電圧指令値を高精度に生成でき、エレベーターかごへ電力を供給する電力用ケーブル2における芯線の数を従来に比べて低減することができる。
実施の形態2.
図11は、本発明の実施の形態2によるインバータ電圧指令作成部の詳細を示す構成図である。図12は、本発明の実施の形態2によるインバータ電圧指令作成部の他の例の詳細を示す構成図である。以下、実施の形態1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。実施の形態2のエレベーターかご給電装置100は、実施の形態1のエレベーターかご給電装置100とは、直列補償装置3の直列補償装置制御部31の構成要素であるインバータ電圧指令作成部32の内容のみが異なる。図11のインバータ電圧指令作成部32cは、図5のインバータ電圧指令作成部32aと異なりローパスフィルタ47を含んでいる。また、図12のインバータ電圧指令作成部32dは、図7のインバータ電圧指令作成部32bと異なりローパスフィルタ47を含んでいる。ローパスフィルタ47は、電圧検出器34によって検出された補償装置入力電圧Vinが入力され、高周波を除去したフィルタ出力電圧Vinfを出力する。位相同期器41、サイン演算器42、乗算器43を含む構成部は給電線出力電圧目標値生成部であり、ローパスフィルタ47、減算器45、増幅器46を含む構成部はインバータ電圧指令値生成部である。
実施の形態2のインバータ電圧指令作成部32(インバータ電圧指令作成部32c、インバータ電圧指令作成部32d)は、減算器45によって式(7)のように減算を行い、直列トランス6の二次巻線電圧指令値V2refを得る。
V2ref=Voref−Vinf ・・・(7)
これにより、補償装置入力電圧Vinに高調波が含まれていた場合にも、補償不要な高調波成分を無視してインバータ17に直列補償装置制御部31からゲート信号Ga、Gb、Gc、Gdを出力できる。したがって、インバータ17は、補償不要な高調波成分を除去して、インバータ出力電圧Vinvを出力できる。
例えばローパスフィルタ47のカットオフ周波数を出力フィルタ15でゲインが正になる領域をカットするように設定すると、直列補償装置3からの無用な低次高調波発生を回避できる。または、ローパスフィルタ47のカットオフ周波数を基本波成分だけを抽出するように設定すると、補償装置出力電圧Voutの基本波成分が所望の値となるよう制御できる。
なお、ここではローパスフィルタ47を用いて補償装置入力電圧Vinの低次成分を抽出することにしているが、基本波成分を検出するようなバンドパスフィルタを用いても構わない。また、図示しないが、指令電圧補正部44bで基本波振幅Vin1pを求める際に、補償装置入力電圧Vinの代わりにフィルタ出力電圧Vinfを用いても良いのはいうまでもない。
また、図11、図12では指令電圧補正部44a、または指令電圧補正部44bを乗算器43の後段に配置したが、乗算器43の前段に配置して電圧振幅指令値Voprefの状態で補正しても同様の効果が得られるのは自明である。
以上に説明したように、本実施の形態2のエレベーターかご給電装置100は、インバータ電圧指令作成部32(インバータ電圧指令作成部32c、インバータ電圧指令作成部32d)で補償装置入力電圧Vinの高調波成分を除去するので、実施の形態1のエレベーターかご給電装置100の効果に加えて、インバータ出力電圧Vinvから補償不要な低次高調波成分を除去し、無用な低次高調波発生を回避できる。さらには必要な基本波成分の補償量を確保することができる。
実施の形態3.
図13は、本発明の実施の形態3にかかるインバータ電圧指令作成部32の詳細を示す構成図である。以下、実施の形態1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。実施の形態3のエレベーターかご給電装置100は、実施の形態1のエレベーターかご給電装置100とは、直列補償装置3の直列補償装置制御部31の構成要素であるインバータ電圧指令作成部32の内容のみが異なる。図13のインバータ電圧指令作成部32eは、図5のインバータ電圧指令作成部32aと異なり、指令電圧補正部44の前後の減算器45、乗算器43の位置が異なる。さらに言えば、実施の形態3のインバータ電圧指令作成部32eは、実施の形態1のインバータ電圧指令作成部32aと異なり、先に直列トランス6の二次巻線電圧V2の電圧振幅指令値である二次巻線電圧振幅指令値V2pref(補正電圧指令値)を求め、この二次巻線電圧振幅指令値V2prefと基準波形sinθを乗算器43に入力し、二次巻線電圧指令値V2refを生成する。
給電線入力電圧Vinは、バンドパスフィルタ48に入力されその基本波成分Vin1が抽出される。基本波成分Vin1は振幅演算部49に入力され、その基本波振幅Vin1pが出力される。減算器45により、二次巻線電圧V2の目標電圧振幅指令値であるV2prefoが、式(8)のように生成される。
V2prefo=Vopref−Vin1p ・・・(8)
目標電圧振幅指令値V2prefo(補償電圧目標値)を指令電圧補正部44cで補正したものを、二次巻線電圧振幅指令値V2pref(補正電圧指令値)とする。給電線入力電圧Vinは位相同期器41に入力され、給電線入力電圧Vinの位相θが出力される。位相θはサイン演算器42に入力され、基準波形sinθが出力される。二次巻線電圧振幅指令値V2prefと基準波形sinθを乗算器43に入力すると、二次巻線電圧V2の瞬時値の指令値である二次巻線電圧指令値V2refが出力される。さらに、二次巻線電圧指令値V2refを増幅器46でN倍に増幅するとインバータ電圧指令値Vinvrefが得られる。バンドパスフィルタ48、振幅演算部49、減算器45を含む構成部は給電線出力電圧目標値生成部であり、位相同期器41、サイン演算器42、乗算器43、増幅器46を含む構成部はインバータ電圧指令値生成部である。
指令電圧補正部44は可変ゲインK3の増幅器76で構成されており、二次巻線電圧振幅指令値V2prefは式(9)のようになる。
V2pref=V2prefo×K3 ・・・(9)
図14は、図13の増幅器76のゲイン特性例を示す図である。図14の増幅器76のゲイン特性例は、目標電圧振幅指令値V2prefoが大きくなるにつれて、可変ゲインK3が増大するようになっている。Voprefは一定であるから、式(8)により給電線入力電圧Vinの減少に伴い、その基本波振幅Vin1pが減少すると目標電圧振幅指令値V2prefoは増加する。また、可変ゲインK3は目標電圧振幅指令値V2prefoが大きくなるにつれて増大するから、式(9)により二次巻線電圧振幅指令値V2prefと目標電圧振幅指令値V2prefoの差は目標電圧振幅指令値V2prefoが大きくなるにつれて増大する。すなわち、二次巻線電圧振幅指令値V2prefの指令電圧補正量を二次巻線電圧V2および給電線入力電圧Vinに依存して変化させることができる。したがって、可変ゲインK3は、図8の可変ゲインK2と同様に、二次巻線電圧V2の増加(Vinの減少)に伴い、補正量を増加させ給電線出力電圧Voutの変化を抑制する効果を持つ。二次巻線電圧V2の増加は給電線入力電圧Vinの減少なので、可変ゲインK3は、給電線入力電圧Vinの減少に伴い、補正量を増加させ給電線出力電圧Voutの変化を抑制する効果を持つ。可変ゲインK3を有する増幅器76はテーブルで実現してもよいし、演算式で実現してもよい。
なお、かご内負荷4で消費する電力が増加すると給電線入力電流Iinが増加し、給電線入力電圧Vinが減少し、二次巻線電圧V2が増加するため、実施の形態3の直列補償装置3は、補償装置入力電圧Vinが低下することを検出して補償電圧V2を高くすることができるので、かご内負荷4で消費する電力が増加した場合に給電線出力電圧Voutの変化を抑制することができる。また、かご内負荷4で消費する電力が減少すると給電線入力電流Iinが減少し、給電線入力電圧Vinが増大し、二次巻線電圧V2が減少するため、補償装置入力電圧Vinが増大することを検出して補償電圧V2を低くすることができるので、かご内負荷4で消費する電力が減少した場合にも給電線出力電圧Voutの変化を抑制することができる。したがって、実施の形態3の直列補償装置3は、かご内負荷4で消費する電力が変化した場合に給電線出力電圧Voutの変化を抑制することができる。
系統電源1の電圧値が低下すると給電線入力電圧Vinが低下し、二次巻線電圧V2が増大する。しかしながら、かご内負荷4で消費する電力が小さい場合には、給電線入力電流Iinは小さい。このため、系統電源1の電圧値が変化した場合にはかご内負荷4に印加される電圧が変動すると考えられるので、この電圧が過電圧とならない範囲でなるべく給電線出力電圧Voutが高くなるよう可変ゲインK3を設定する。
ここでは、基本波成分Vin1を求めるためにバンドパスフィルタ48を用いたが、実質的に基本波成分が抽出できる程度のローパスフィルタを用いるなど他の手段を用いても良い。また、ここでは、位相θを求めるために給電線入力電圧Vinを用いたが、基本波成分Vin1を用いてもよい。
また、可変ゲインK3は図14のグラフのように単調増加することに限定されず、一定値や給電線出力電圧Voutの誤差を小さくするようなその他の特性を持たせることができるのはいうまでもない。なお、可変ゲインK3の特性が一定値の場合は、固定ゲインということもできる。
以上に説明したように、本実施の形態3のエレベーターかご給電装置100は、実施の形態1のエレベーターかご給電装置100の効果に加えて、電圧振幅指令値Voprefと基本波振幅Vin1pからV2の目標電圧振幅指令値V2prefoを求めるようにしたので、実施の形態2と同様に、インバータ電圧指令値Vinvrefから高調波成分を除去することができる。これによりインバータ出力電圧Vinvから補償不要な低次高調波成分を除去し、無用な低次高調波発生を回避できる。さらには必要な基本波成分の補償量を確保することができる。
また、実施の形態3のインバータ電圧指令作成部32eは指令電圧補正部44cを備えるようにしたので、実施の形態3のエレベーターかご給電装置100は、かご給電線9の給電線出力電圧Voutや給電線入力電流Iinを検出することなく、給電線入力電圧Vinの検出値を用いてフィードフォワード制御により、補償電圧V2の目標電圧と補償電圧V2との誤差電圧の低減を図るという顕著な効果が得られる。その結果、給電線出力電圧Voutは過電圧未満でより高い電圧を維持することができ、制御ケーブルを構成する芯線の本数を減じたり、軽量化したりする効果が得られる。
また、インバータ電圧指令作成部32eは、指令電圧補正部44cが可変ゲインK3を有する増幅器76を備え、可変ゲインK3が増幅器76の単一の入力値であるV2prefoによって決定されるので、給電線出力電圧目標値Vorefoに加え給電線入力電圧Vinの入力を必要とする指令電圧補正部44bを備えるインバータ電圧指令作成部32b、32dと比較して、インバータ電圧指令作成部32eの構成が簡単である。
さらに、実施の形態3のエレベーターかご給電装置100は、可変ゲインK3を有する指令電圧補正部44cを備えたで、かご内負荷4の消費電力が変化した場合にも給電線出力電圧Voutの変化を抑制し、過電圧未満でより高い電圧を維持することができる。これにより給電線出力電圧Voutの変化を抑制できるので、一層、制御ケーブルを構成する芯線の本数を減じたり、軽量化したりする効果が得られる。
以上のように実施の形態3のエレベーターかご給電装置100は、電力用ケーブル2から送電された入力電力を受電し、入力電力の電圧に電力用ケーブル2による電圧降下を補償した補償電圧V2を重畳して、かごのかご内負荷4に供給電力を供給する直列補償装置3を備え、直列補償装置3は、電力用ケーブル2から送電された入力電力をかご内負荷4に供給するかご給電線9と、交流電力を直流電力に変換する整流器(ダイオード整流器16)と、かご給電線9の交流電力を整流器(ダイオード整流器16)に供給する入力線7と、整流器(ダイオード整流器16)が出力した直流電力を交流電力に逆変換するインバータ17と、インバータ17の出力に基づいて補償電圧V2をかご給電線9に重畳する直列トランス6と、インバータ17を制御する直列補償装置制御部31を備え、直列補償装置制御部31は、電力用ケーブル2とかご給電線9の接続部の電圧である補償装置入力電圧Vinに基づいて生成された、かご給電線9への補償電圧V2の目標値(目標電圧振幅指令値V2prefo)を、指令電圧補正部44により補正して生成した補正電圧指令値(二次巻線電圧振幅指令値V2pref)に基づいて、インバータ17の電圧指令値(インバータ電圧指令値Vinvref)を作成するインバータ電圧指令作成部32を有することを特徴とするので、かご給電線への給電線出力電圧または補償電圧の目標値を指令電圧補正部により補正することにより、インバータの電圧指令値を高精度に生成でき、エレベーターかごへ電力を供給する電力用ケーブル2における芯線の数を従来に比べて低減することができる。
実施の形態4.
図15は本発明の実施の形態4によるインバータ電圧指令作成部の第1の例の詳細を示す構成図であり、図16は本発明の実施の形態4によるインバータ電圧指令作成部の第2の例の詳細を示す構成図である。図17は本発明の実施の形態4によるインバータ電圧指令作成部の第3の例の詳細を示す構成図であり、図18は本発明の実施の形態4によるインバータ電圧指令作成部の第4の例の詳細を示す構成図である。以下、実施の形態1または実施の形態2と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。実施の形態4のエレベーターかご給電装置100は、実施の形態1または実施の形態2のエレベーターかご給電装置100とは、直列補償装置3の直列補償装置制御部31の構成要素であるインバータ電圧指令作成部32の内容のみ異なる。
図15のインバータ電圧指令作成部32fは、図5のインバータ電圧指令作成部32aと異なり、位相同期器41とサイン演算器42の間に位相補正部81を備える。図16のインバータ電圧指令作成部32gは、図7のインバータ電圧指令作成部32bと異なり、位相同期器41とサイン演算器42の間に位相補正部81を備える。位相同期器41によって得られた給電線入力電圧Vinの位相θを位相補正部81に入力して、指令値の補正位相θrefを得る。位相補正部81の補正量は、固定値であってもよいし、給電線入力電圧Vinに応じて変化させてもよい。位相同期器41、位相補正部81、サイン演算器42、乗算器43を含む構成部は給電線出力電圧目標値生成部であり、減算器45、増幅器46を含む構成部はインバータ電圧指令値生成部である。
ここで、位相補正部81の位相補正の考え方を説明する。位相補正部81に入力される元の位相θは、給電線入力電圧Vinの検出などにより実電圧より遅れていることがある。そこで、補償電圧V2を実電圧相当の補正位相θrefで発生させることにより、遅れの影響を解消できる。さらに、直列トランス6の漏れインダクタンスにより無効電流が流れるため、その無効分を打ち消すように補正位相θrefの位相を進ませることもできる。
図17、図18に示した他のインバータ電圧指令作成部32について説明する。図17のインバータ電圧指令作成部32hは、図11のインバータ電圧指令作成部32cと異なり、位相同期器41とサイン演算器42の間に位相補正部81を備える。図18のインバータ電圧指令作成部32iは、図12のインバータ電圧指令作成部32dと異なり、位相同期器41とサイン演算器42の間に位相補正部81を備える。位相同期器41によって得られた給電線入力電圧Vinの位相θを位相補正部81に入力して、指令値の補正位相θrefを得る。位相同期器41、位相補正部81、サイン演算器42、乗算器43を含む構成部は給電線出力電圧目標値生成部であり、ローパスフィルタ47、減算器45、増幅器46を含む構成部はインバータ電圧指令値生成部である。インバータ電圧指令作成部32h、32iは、インバータ電圧指令作成部32f、32gと同様の位相補正を行うことができるのはいうまでもない。
以上に説明したように、実施の形態4のエレベーターかご給電装置100は、インバータ電圧指令作成部32(インバータ電圧指令作成部32f、32g、32h、32i)に位相補正部81を備えて指令値の位相を補正位相θrefにより補正できるようにしたため、実施の形態1または実施の形態2のエレベーターかご給電装置100の効果に加えて、補償電圧V2の位相を調整する機能を備える。これにより、補償精度の向上や力率改善が可能となって電流低減を図れるという特有の効果を示す。このように電流低減が図れるので、一層、制御ケーブルを構成する芯線の本数を減じたり、軽量化したりする効果が得られる。
実施の形態5.
図19は本発明の実施の形態5によるインバータ電圧指令作成部の詳細を示す構成図である。以下、実施の形態3と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。実施の形態5のエレベーターかご給電装置100は、実施の形態3のエレベーターかご給電装置100とは、直列補償装置3の直列補償装置制御部31の構成要素であるインバータ電圧指令作成部32の内容のみ異なる。
図19のインバータ電圧指令作成部32kは、図13のインバータ電圧指令作成部32eと異なり、位相同期器41とサイン演算器42の間に位相補正部81を備える。位相同期器41によって得られた給電線入力電圧Vinの位相θを位相補正部81に入力して、指令値の補正位相θrefを得る。位相補正部81の補正量は、固定値であってもよいし、給電線入力電圧Vinに応じて変化させてもよい。位相補正部81を設けることにより、補償電圧V2を実電圧相当の補正位相θrefで発生させることになるため、遅れの影響を解消できる。さらに、直列トランス6の漏れインダクタンスにより無効電流が流れるため、その無効分を打ち消すように補正位相θrefの位相を進ませることもできる。
特に、図19のようなインバータ電圧指令作成部32kにおいてはインバータ電圧指令値Vinvref自体の位相を、位相補正後の位相である補正位相θrefに設定することになる。バンドパスフィルタ48、振幅演算部49、減算器45を含む構成部は給電線出力電圧目標値生成部であり、位相同期器41、位相補正部81、サイン演算器42、乗算器43、増幅器46を含む構成部はインバータ電圧指令値生成部である。
以上に説明したように、実施の形態5のエレベーターかご給電装置100は、インバータ電圧指令作成部32(インバータ電圧指令作成部32k)に位相補正部81を備えて指令値の位相を補正位相θrefにより補正し、インバータ電圧指令値Vinvref自体の位相を調節できるようにしたため、実施の形態3のエレベーターかご給電装置100の効果に加えて、補償電圧V2の位相を直接調整する機能を備える。これにより、補償精度の向上や力率改善が可能となって電流低減を図れるという特有の効果を示す。このように電流低減が図れるので、一層、制御ケーブルを構成する芯線の本数を減じたり、軽量化したりする効果が得られる。
実施の形態6.
図20は、本発明の実施の形態6によるエレベーターかご給電装置を示す図である。以下、実施の形態1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。実施の形態6のエレベーターかご給電装置100は、実施の形態1のエレベーターかご給電装置100とは、かご内負荷4の間にトランス10を有する点で異なる。実施の形態6のエレベーターかご給電装置100では、直列補償装置制御部31のインバータ電圧指令作成部32は、インバータ電圧指令作成部32a、32b、32c、32d、32e、32f、32g、32h、32i、32kのいずれでも構わない。
実施の形態6では系統電源1は400V級であり、電力用ケーブル2を用いて単相400V級で直列補償装置3に送電する。かご内負荷4は、単相200V級または単相100V級であるから、かごに搭載されるトランス10により一括して200V級に降圧して、かご内負荷4に電力を供給する。このように、実施の形態6ではトランス10の追加が必要となるものの、かご内負荷4の消費電力が等しい場合に電圧を2倍にすると電流は約1/2に減少するため、電力用ケーブル2で電流の2乗に依存して発生する損失が低減できる利点がある。また、図20のかご給電装置100では直列補償装置3を備え、さらにインバータ電圧指令作成部32が指令電圧補正部44を備えるので、直列補償動作中の補償装置出力電圧Voutは定格電圧近傍の値をとり、トランス10の入力電圧が安定する。
本実施の形態6のエレベーターかご給電装置100は、直列補償装置3のインバータ電圧指令作成部32に指令電圧補正部44を備えたので、実施の形態1〜実施の形態5のエレベーターかご給電装置100の効果に加えて、系統電源1が400V級であるから、制御ケーブルの中の電力用ケーブル2の抵抗成分によって発生する損失を低減できる。これにより、電力用ケーブル2の抵抗成分によって発生する損失を低減できるので、電力用ケーブル2の芯線の並列数を低減できる。
また、補償装置出力電圧Voutが定格電圧近傍の値をとるため、トランス10は電圧調整用のタップを設ける必要がない。このことにより、トランス10の小型化、軽量化、低価格化が図れる上に、現地でのタップ調整作業が不要になるという効果がある。
さらに、インバータ電圧指令作成部32が指令電圧補正部44を備えるので、かご内負荷4の印加される電圧へのトランス10の影響も考慮して指令電圧や位相を補正することもできるという特有の効果がある。
実施の形態7.
図21は、本発明の実施の形態7によるエレベーターかご給電装置を示す図である。以下、実施の形態1、実施の形態6と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。図21では、エレベーターかごへの給電を三相で行っているところが図20と異なる。実施の形態6におけるかご内負荷4の必要とする電力が大きい場合は、単相で送電するよりも三相で送電すると帰線が省略できるため有利である。図20における帰線は、電力用ケーブル2の一つである電力用ケーブル2bである。
三相交流の場合、直列補償装置3は相毎に補償を行うことになる。実施の形態7によるエレベーターかご給電装置100における電力用ケーブル2は、直列補償装置3のかご給電線9の入力側に接続される。かご給電線9の出力側はトランス10の一次巻線に接続され、トランス10の二次巻線はかご内負荷4に接続される。図21では、電力用ケーブル2aが直列補償装置3の入力端子38aに接続され、電力用ケーブル2bが直列補償装置3の入力端子38bに接続され、電力用ケーブル2cが直列補償装置3の入力端子38cに接続されている。かご給電線9aは入力端子38aとトランス10の一次巻線を接続し、かご給電線9bは入力端子38bとトランス10の一次巻線を接続し、かご給電線9cは入力端子38cとトランス10の一次巻線を接続する。電力用ケーブルの符号は、総括的に2を用い、区別して説明する場合に2a、2b、2cを用いる。かご給電線の符号は、総括的に9を用い、区別して説明する場合に9a、9b、9cを用いる。
かご内負荷4は、単相200V級や単相100V級、ときには三相200V級の複数の負荷で構成されるので、運転中は不平衡であることが予想される。図21において、電力用ケーブル2aはr相であり、電力用ケーブル2bはs相であり、電力用ケーブル2cはt相である。
直列補償装置3は、電力変換器105、かご給電線9、直列トランス6a、6b、6c、電力変換器105に電力を供給する入力線7a、7b、7c、直列トランス6a、6b、6cの二次巻線をそれぞれ短絡するバイパス回路8a、8b、8c、直列補償装置制御部131、図示しない電圧検出器134a、134b、35(図22参照)を備える。直列トランス6a、6b、6cは、電力変換器105の一相分の出力に一次巻線、かご給電線9の1本に二次巻線が接続される。直列トランス6aの二次巻線はかご給電線9aに接続され、直列トランス6bの二次巻線はかご給電線9bに接続され、直列トランス6cの二次巻線はかご給電線9cに接続される。入力線の符号は、総括的に7を用い、区別して説明する場合に7a、7b、7cを用いる。ここで、入力線7は、三相であり、かご給電線9の入力側ではなく出力側に接続されている。また、バイパス回路8a、8b、8cは、直列補償動作の際は開放しているが、直列補償動作を行わないバイパス運転の際には閉路して直列トランス6a、6b、6cのそれぞれの二次巻線を短絡する。バイパス回路8a、8b、8cは、実施の形態1で説明したものである。
図22は、図21の直列補償装置の詳細を示す構成図である。電力変換器105は、入力線7a、7b、7cから三相交流を入力とし、直流電圧を出力するダイオード整流器116と、入力直流電圧を平滑する平滑コンデンサ12と、単相フルブリッジインバータ群117と、出力フィルタ15a、15b、15cとを備える。ダイオード整流器116は、6つのダイオードにより構成される。ダイオード整流器116の正極配線26a及び負極配線26bにより、IGBTモジュール118a、118bに直流電力が供給される。単相フルブリッジインバータ群117は、2つのIGBTモジュール118a、118bから構成される。IGBTモジュール118aは、6つのIGBTと、各々に逆並列されたダイオードからなる。IGBTモジュール118bも、IGBTモジュール118aと同様に、6つのIGBTと、各々に逆並列されたダイオードからなる。
単相フルブリッジインバータ群117は、実施の形態1に示した単相フルブリッジインバータ(インバータ)17が3組で構成されていて、各単相フルブリッジインバータ17の出力は出力フィルタ15a、15b、15cの入力に接続される。単相フルブリッジインバータ群117は、適宜、インバータ群117と称する。図22では、IGBTモジュール118aが出力線18a、18b、18cからインバータ出力電圧Vinvを出力し、IGBTモジュール118bが出力線18d、18e、18fからインバータ出力電圧Vinvを出力している。また、出力フィルタ15aには出力線18a、18dが接続され、出力フィルタ15bには出力線18b、18eが接続され、出力フィルタ15cには出力線18c、18fが接続されている。
図22では、単相フルブリッジインバータ17は相毎のバランスを保つため各々IGBTモジュール118aとIGBTモジュール118bのスイッチ2個ずつで構成しているが、2素子入りモジュールを使用したり、6素子入りモジュールの使用箇所を変更したりしてもかまわないのは無論である。
また、ダイオード整流器116と平滑コンデンサ12は3つのインバータ17a、17b、17cに対して共通としているが、これらを個別に配置することもできる。また、入力線7を単相として、ダイオード整流器116を単相の整流器とすることもできる。
次に、実施の形態7における直列補償装置3の動作を説明する。かご給電線9の入力電圧をVin、出力電圧をVoutとする。かご給電線9は三相であって、かご給電線9aはr相、かご給電線9bはs相、かご給電線9cはt相である。入力線間電圧をVinrs、Vinst、Vintr、入力相電圧をVinr、Vins、Vint、出力線間電圧をVoutrs、Voutst、Vouttr、出力相電圧をVoutr、Vouts、Vouttとする。
直列トランス6a、6b、6cの二次巻線電圧であるV2r、V2s、V2tは、直列補償装置3が出力する補償電圧である。直列補償のため、相電圧で扱うことが好ましく、かご給電線9の入出力電圧の関係は、式(10)、式(11)、式(12)のように表すことができる。
Voutr=Vinr+V2r ・・・(10)
Vouts=Vins+V2s ・・・(11)
Voutt=Vint+V2t ・・・(12)
このように考えたときは、実施の形態6における単相での給電と同様に、相毎に補償が可能である。電力変換器105のインバータ群117の出力電圧を、Vinvr、Vinvs、Vinvtとする。
直列補償装置3は、直列補償装置制御部131を備えており、直列補償装置制御部131は、インバータ電圧指令作成部132とゲート信号作成部133を有している。さらに、電圧検出器134a、134bを用いて、入力線間電圧Vinrsと入力線間電圧Vinstを検出し、電圧検出器35を用いてインバータ直流母線電圧Vdc(平滑コンデンサ12の電圧)を検出する。
インバータ電圧指令作成部132は、実施の形態1〜実施の形態5のいずれかのインバータ電圧指令作成部32(インバータ電圧指令作成部32a、32b、32c、32d、32e、32f、32g、32h、32i、32k)を3セット有するものである。さらには、直列補償は相電圧に対して行うが、三相三線式のため、入力電圧は線間電圧としてしか検出することができない。このため、検出した入力線間電圧Vinrs、Vinstを、入力相電圧Vinr、Vins、Vintに変換する機能を有する。測定する入力線間電圧は、入力線間電圧Vinrs、Vinstの他の入力線間電圧を検出することもでき、また、三相共検出してもよいのは無論である。インバータ電圧指令作成部132は、入力線間電圧Vinrs、Vinstと電圧振幅指令値Voprefが入力され、r相、s相、t相に対応したインバータ電圧指令値Vinvrref、Vinvsref、Vinvtrefを出力する。
指令電圧補正部44のゲイン(固定ゲインK1、可変ゲインK2、K3)は全て同じに設定してもよいが、かご内負荷4の接続状況に応じて個別に調整することもできる。さらには、インバータ電圧指令作成部32f、32g、32h、32i、32kのように、位相補正部81を有する場合にも、補正量は全て同じに設定しても、かご内負荷4の接続状況に応じて個別に設定することもできる。
ゲート信号作成部133には、3つのインバータ電圧指令値Vinvrref、Vinvsref、Vinvtrefと、電圧検出器35によって検出されたインバータ直流母線電圧Vdcが入力される。ゲート信号作成部133は、図9のゲート信号作成部33を3セット有しており、r相のインバータ17のゲート信号Gaa、Gab、Gac、Gad、s相のインバータ17のゲート信号Gba、Gbb、Gbc、Gbd、t相のインバータのゲート信号Gca、Gcb、Gcc、Gcdを作成する。
なお、機器の構成により三角波キャリアVtriは全相共通でもよいし、複数のキャリアを用いてもよい。また、インバータ直流母線電圧Vdcを検出する電圧検出器35を複数使用してもよい。
以上に説明したように、実施の形態7のエレベーターかご給電装置100は、三相3線でエレベーターかごに給電を行うので、実施の形態1〜実施の形態6にかかるエレベーターかご給電装置100の効果に加えて、かご内負荷4の必要とする電力が大きい場合に、すなわちかご内負荷4の負荷容量が大きい場合に、単相での給電よりも電力用ケーブル2の芯線の並列数を低減できる。
また、かご内負荷4や系統電源1が不平衡である場合にも、実施の形態7の直列補償装置3は、相毎に補償を行うため、出力線間電圧Voutrs、Voutst、Vouttrは定格電圧近傍の値となり、電圧のアンバランスが小さい。さらには指令電圧補正部44のゲイン(固定ゲインK1、可変ゲインK2、K3)や位相補正部81の補正位相θrefを個別に設定することにより、電力用ケーブル2に流れる電流を必要最小限に維持することができるという効果を奏する。
さらに、インバータ電圧指令作成部132が指令電圧補正部44を備えるので、かご内負荷4の印加される電圧へのトランス10の影響も考慮して指令電圧や位相を補正することもできるという特有の効果がある。
実施の形態8.
図23は本発明の実施の形態8によるエレベーターかご給電装置を示す図である。以下、実施の形態1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。実施の形態8のエレベーターかご給電装置100は、実施の形態1のエレベーターかご給電装置100とは、直列補償装置3の構成要素である電力変換器5への入力線7がかご給電線9の出力側ではなく入力側に接続されている点で異なる。実施の形態8のエレベーターかご給電装置100では、直列補償装置3のインバータ電圧指令作成部32は、インバータ電圧指令作成部32a、32b、32c、32d、32e、32f、32g、32h、32i、32kのいずれでも構わない。
さらには、実施の形態6または実施の形態7のように、系統電源1が単相400V級であっても三相400V級であってもよい。
実施の形態8の直列補償装置3は、インバータ電圧指令作成部32に指令電圧補正部44を備えるようにしたので、電力変換器5への入力線7がかご給電線9の入力側に接続されていても、かご給電線9の給電線出力電圧Voutや給電線入力電流Iinを検出することなく、給電線入力電圧Vinの検出値を用いてフィードフォワード制御により、補償電圧V2の目標電圧と補償電圧V2との誤差電圧の低減を図るという顕著な効果が得られる。その結果、給電線出力電圧Voutは過電圧未満でより高い電圧を維持することができ、制御ケーブルを構成する芯線の本数を減じたり、軽量化したりする効果が得られる。また、指令電圧補正部44により補償電圧V2の目標電圧と補償電圧V2との誤差電圧が低減できるので、補償装置出力電圧Voutを定格電圧に近づけることができ、制御ケーブルを構成する芯線の並列本数を低減できる。
以上に説明したように、本実施の形態8のエレベーターかご給電装置100は、入力線7がかご給電線9の入力側に接続されているので、実施の形態1〜実施の形態7のエレベーターかご給電装置100の効果のうち、入力線7がかご給電線9の出力側に接続されていることに起因する効果を除く他の効果を有することが自明である。
実施の形態9.
図24は本発明の実施の形態9によるエレベーターかご給電装置を示す図である。以下、実施の形態1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。実施の形態9のエレベーターかご給電装置100は、実施の形態1のエレベーターかご給電装置100とは、直列補償装置3の構成要素である電力変換器5への入力線7がかご給電線9の出力側ではなく系統電源1に接続される点で、すなわちかご内負荷4への給電用とは別の電力用ケーブル2d、2eに接続されている点で異なる。
実施の形態9の直列補償装置3は、入力端子38a、38b、38d、38eを有する。図24では、電力用ケーブル2dが直列補償装置3の入力端子38dに接続され、電力用ケーブル2eが直列補償装置3の入力端子38eに接続されている。入力線7aは入力端子38dに接続され、入力線7bは入力端子38eに接続されている。インバータ電圧指令作成部32は、インバータ電圧指令作成部32a、32b、32c、32d、32e、32f、32g、32h、32i、32kのいずれでも構わない。
さらには、実施の形態6または実施の形態7のように、系統電源1が単相400V級であっても三相400V級であってもよい。
実施の形態9の直列補償装置3は、インバータ電圧指令作成部32に指令電圧補正部44を備えるようにしたので、電力変換器5への入力線7が系統電源1に接続されていても、かご給電線9の給電線出力電圧Voutや給電線入力電流Iinを検出することなく、給電線入力電圧Vinの検出値を用いてフィードフォワード制御により、補償電圧V2の目標電圧と補償電圧V2との誤差電圧の低減を図るという顕著な効果が得られる。その結果、給電線出力電圧Voutは過電圧未満でより高い電圧を維持することができ、特許文献1の電力伝送装置よりも制御ケーブルを構成する芯線の本数を減じたり、軽量化したりする効果が得られる。また、実施の形態9の直列補償装置3は、指令電圧補正部44により補償電圧V2の目標電圧と補償電圧V2との誤差電圧が低減できるので、補償装置出力電圧Voutを定格電圧に近づけることができ、電力変換器5へ電力供給用の他の電力ケーブルを用いる特許文献1の電力伝送装置よりも制御ケーブルを構成する芯線の並列本数を低減できる。
以上に説明したように、本実施の形態9のエレベーターかご給電装置100は、入力線7がかご内負荷4への給電用とは別の電力用ケーブル2d、2eに接続されているので、実施の形態1〜実施の形態7のエレベーターかご給電装置100の効果のうち、入力線7がかご給電線9の出力側に接続されていることに起因する効果を除く他の効果を有することが自明である。
なお、実施の形態1〜実施の形態9に示したエレベーターかご給電装置は、本発明の内容の一例も示すものであり、更なる別の公知の技術と組み合わせることも可能である。また、本発明は、その発明の範囲内において、実施の形態における各構成を組み合わせたり、実施の形態における各構成を適宜、変形、省略することが可能である。