以下に、本発明にかかるエレベーターかご給電装置の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1によるエレベーターかご給電装置を示す図である。エレベーターかご給電装置100は、系統電源1からエレベーターのかご内負荷5へ給電するものである。系統電源1は、機械室内の制御盤20に配置されているかご給電の送電部であって、単相400V級で送電する。エレベーターかご給電装置100は、直列補償装置3と、トランス4と、系統電源1からの電力を送電する電力用ケーブル2a、2bとを備える。電力用ケーブルの符号は、総括的に2を用い、区別して説明する場合に2a、2bを用いる。制御ケーブルは、前述したように、複数の芯線を有する電力用ケーブル2と図示しない一般信号用ケーブルからなる。機械室からエレベーターかご(適宜、単にかごと称する)への給電は制御ケーブルの中の電力用ケーブル2により行われる。電力用ケーブル2の芯線1本あたりの断面積は例えば0.75mm2といった極めて小さいものであって、給電する電力に応じて多数の芯線が並列されている。電力用ケーブル2は、昇降路程度の長さを持つため、高揚程のエレベーターでは300m以上になる。なお、エレベーターの仕様によっては昇降路の中間部までは固定ケーブルを用いて配線し、そこから制御ケーブルを用いて、かごまで配線することがあるが、この場合も一般には固定ケーブルの断面積は制御ケーブル内の電力用ケーブル2と同等であるので図1のように考えて差し支えない。
電力用ケーブル2の芯線1本あたりの断面積が小さいために、電力用ケーブル2の商用周波数におけるインピーダンスはほとんどが抵抗成分であって、リアクタンス成分は無視できる範囲である。したがって、かごへの給電に伴い電力用ケーブル2に電流が流れると、その抵抗成分によりかご側では電流値に比例して電圧が低下し、また、損失が電流値の二乗で増加する。
直列補償装置3は、図示しないかごに設置されており、電力用ケーブル2で発生する損失による電圧低下や系統電圧変動を補償する。電圧低下の補償は、電力用ケーブル2から送電された入力電力の電圧に、電力用ケーブル2による電圧降下を補償した補償電圧を重畳するようにする。電力用ケーブル2は、直列補償装置3のかご給電線10a、10bの入力側に接続される。かご給電線10a、10bの出力側はトランス4の一次巻線に接続され、トランス4の二次巻線はかご内負荷5に接続される。図1では、電力用ケーブル2aが直列補償装置3の入力端子38aに接続され、電力用ケーブル2bが直列補償装置3の入力端子38bに接続されている。かご給電線10aは入力端子38aとトランス4の一次巻線を接続し、かご給電線10bは入力端子38bとトランス4の一次巻線を接続する。かご給電線の符号は、総括的に10を用い、区別して説明する場合に10a、10bを用いる。かご内負荷5は、例えばエアコン、照明器具、ドア開閉用モータなどで、一般に入力電圧は単相200V級または100V級である。直列補償装置3の出力電圧は400V級となるので、トランス4により200V級に降圧した後に、かご内負荷5に供給される。なお、かご内負荷5における100V級の負荷には200V級からさらに降圧し、供給される。
直列補償装置3は、電力変換器6、かご給電線10、直列トランス7、電力変換器6に電力を供給する入力線8a、8b、直列トランス7の二次巻線を短絡するバイパス回路9、直列補償装置制御部31、図示しない電圧検出器34、35(図5参照)を備える。直列トランス7は、電力変換器6の出力に一次巻線、かご給電線10の1本であるかご給電線10aに二次巻線が接続され、電力変換器6とかご給電線10aとを電磁誘導により間接的に接続する。入力線の符号は、総括的に8を用い、区別して説明する場合に8a、8bを用いる。ここで、入力線8は、かご給電線10の入力側ではなく出力側に接続されている。また、バイパス回路9は、直列補償動作の際は開放しているが、直列補償動作を行わないバイパス運転の際には閉路して直列トランス7の二次巻線を短絡する。バイパス回路9は、例えば電磁接触器と半導体スイッチの並列接続により構成する。この実施の形態では、電力変換器6の異常などが発生した場合に直列トランス7をかご給電線10から高速に切り離す際に半導体スイッチを閉路し、バイパス運転定常動作の際には電磁接触器を閉路する。
図2は、図1の電力変換器の回路図である。電力変換器6は、入力線8a、8bから単相交流を入力し、直流電圧を出力するダイオード整流器16と、入力直流電圧を平滑する平滑コンデンサ12と、単相フルブリッジインバータ17と、出力フィルタ15とを備える。ダイオード整流器16は、ダイオード11a、11b、11c、11dにより構成される。単相フルブリッジインバータ17は、4つのIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)13a、13b、13c、13dと、各々のIGBT13a、13b、13c、13dと逆並列に接続されたダイオード14a、14b、14c、14dからなる。単相フルブリッジインバータ17は、適宜、インバータ17と称する。出力フィルタ15は、インバータ出力電圧の高調波成分を除去するものであり、インバータ17の出力が入力され、直列トランス7の一次巻線に出力する。
ダイオード整流器16の正極配線26aと負極配線26bとの間に、IGBT13a、13bは直列に接続され、同じくIGBT13c、13dも直列接続されており、IGBT13aとIGBT13bの接続点とIGBT13cとIGBT13dの接続点がインバータ17の出力端子である。IGBT13a、13bの接続点と出力フィルタ15は出力線18aで接続され、GBT13c、13dの接続点と出力フィルタ15は出力線18bで接続される。IGBT13a〜13dは、IGBTに限定することはなく、自己消弧型半導体スイッチング素子(スイッチング素子)であればよい。さらに、自己消弧型半導体スイッチング素子が逆導通機能を備える場合には、ダイオード14a〜14dを省略することができるのも自明である。
図3は図2の出力フィルタの構成例であり、図4は図2の他の出力フィルタの構成例である。図3に示した出力フィルタ15は、リアクトル21、コンデンサ22と抵抗23とを直列接続したものである。直列トランス7へは、コンデンサ22と抵抗23とを直列接続したCR直列体の両端が接続される。CR直列体は直列トランス7に対して並列に接続され、リアクトル21は直列トランス7に対して直列に接続される。図4に示した出力フィルタ15は、分割して配置されたリアクトル24を有する例である。図3、図4の出力フィルタ15において、場合によっては、抵抗23は省略できる。出力フィルタ15の構成は、ローパスフィルタの機能を満たすものならば他の構成をとってもよい。
なお、電力変換器6は、さらに入力線8とダイオード整流器16の間にACリアクトルを含む場合やダイオード整流器16と平滑コンデンサ12の間にDCリアクトルを含む場合もある。また、他の形式の整流器を使用することもできる。
次に、実施の形態1における直列補償装置3の動作を説明する。図5は、図1の直列補償装置3の詳細を示す図である。かご給電線10の入力電圧をVin、入力電流をIin、かご給電線10の出力電圧をVout、出力電流をIoutとする。給電線入力電圧Vinは、かご給電線10aの入力側とかご給電線10bの入力側との間の電圧である。給電線出力電圧Voutは、かご給電線10aの出力側とかご給電線10bの出力側との間の電圧である。かご給電線10の入力側は直列補償装置3の入力側なので、かご給電線10の給電線入力電圧Vin、給電線入力電流Iinを、適宜、補償装置入力電圧Vin、補償装置入力電流Iinと呼ぶことにする。かご給電線10の出力側は直列補償装置3の出力側なので、かご給電線10の給電線出力電圧Vout、給電線出力電流Ioutを、適宜、補償装置出力電圧Vout、補償装置出力電流Ioutと呼ぶことにする。
直列トランス7の二次巻線電圧であるV2は、直列補償装置3の補償電圧である。直列補償のため、直列トランス7の二次巻線電流はIinである。かご給電線10の入出力電圧の関係は、式(1)のように表すことができる。
Vout=Vin+V2 ・・・(1)
直列トランス7の一次巻線電圧であるV1は、電力変換器6の出力電圧である。また、
直列トランス7の一次巻線の電流をI1としたとき、直列トランス7を理想トランスと捉えると、巻数比Nすなわち一次と二次の巻数がN:1のとき、式(2)、式(3)の関係が成り立つ。
V1=V2×N ・・・(2)
I1=Iin/N ・・・(3)
インバータ17の出力電圧をVinv、インバータ17の出力電流をIinvとする。出力フィルタ15の入力であるインバータ17のインバータ出力電圧Vinv、インバータ出力電流Iinvと、出力フィルタ15の出力である直列トランス7の一次巻線電圧V1、一次巻線電流I1の関係を考える。商用周波数領域では、インバータ出力電圧Vinvと一次巻線電圧V1はほぼ同じ値とみなすことができ、インバータ出力電流Iinvと一次巻線電流I1はほぼ同じ値とみなすことができる。直列補償装置3は、直列補償装置制御部31による制御により、補償装置出力電圧Voutが所望の値になるよう電力変換器6を運転する。
直列補償装置3は、直列補償装置制御部31を備えており、直列補償装置制御部31はインバータ電圧指令作成部32とゲート信号作成部33を有している。さらに、入力電圧検出器である電圧検出器34を用いて給電線入力電圧Vinを検出し、母線電圧検出器である電圧検出器35を用いてインバータ直流母線電圧Vdc(平滑コンデンサ12の電圧)を検出する。
図6は、図5のインバータ電圧指令作成部の詳細を示す構成図である。インバータ電圧指令作成部32は、位相同期器41、サイン演算器42、乗算器43、減算器44、増幅器45を備える。まず、電圧検出器34によって検出された補償装置入力電圧Vinと、補償装置出力電圧Voutの振幅を制御する指令である電圧振幅指令値Voprefがインバータ電圧指令作成部32に入力される。電圧振幅指令値Voprefは例えば定格系統電圧の振幅値に予め設定しておく。償装置入力電圧Vinは位相同期器41に入力され、補償装置入力電圧Vinの位相θが出力される。位相θはサイン演算器42に入力され、基準波形sinθが出力される。乗算器43によって電圧振幅指令値Voprefと基準波形sinθの積が出力され、これがかご給電線10の出力電圧指令値Vorefとなる。減算器44は、式(4)のように減算を行い、直列トランス7の一次巻線電圧指令値V1refを得る。
V1ref=Voref−Vin ・・・(4)
さらに、一次巻線電圧指令値V1refを増幅器45でN倍すると、インバータ電圧指令値Vinvrefが得られる。インバータ電圧指令値Vinvrefがインバータ電圧指令作成部32の出力となり、ゲート信号作成部33に入力される。
図7は、図5のゲート信号作成部の詳細を示す構成図である。ゲート信号作成部33は、除算器51、増幅器52、比較器53a、53b、反転演算器54a、54bを備える。ゲート信号作成部33には、インバータ電圧指令値Vinvrefと、電圧検出器35によって検出されたインバータ直流母線電圧Vdcと、三角波キャリアVtriとが入力され、IGBT13a、13b、13c、13dの制御信号であるゲート信号Ga、Gb、Gc、Gdが出力される。ゲート信号Ga〜Gdは、図示しないIGBT13a〜13dのゲートドライバへ入力される。IGBT13a〜13dは、対応するゲートドライバを介して制御される。ゲート信号GaはIGBT13aのゲートを制御し、ゲート信号GbはIGBT13bのゲートを制御し、ゲート信号GcはIGBT13cのゲートを制御し、ゲート信号GdはIGBT13dのゲートを制御する。
最初に、除算器51によりインバータ電圧指令値Vinvrefがインバータ直流母線電圧Vdcによって規格化される。除算器51の除算器出力Caは比較器53aで振幅1の三角波キャリアVtriと比較され、IGBT13aのゲート信号Gaが出力される。除算器出力Caが三角波キャリアVtri以上のときゲート信号Ga=1となりIGBT13aにオン信号が与えられる。それ以外のときゲート信号Ga=0となりIGBT13aにオフ信号が与えられる。その反転パターンである反転演算器54aの出力が、IGBT13bのゲート信号Gbとなる。除算器51の除算器出力Caを増幅器52で−1倍すると極性が反転した指令値(除算器反転出力Cb)が出力される。増幅器52の出力である除算器反転出力Cbは三角波キャリアVtriと比較され、IGBT13cのゲート信号Gcが出力される。その反転パターンである反転演算器54bの出力が、IGBT13dのゲート信号Gdとなる。
除算器51の出力である除算器出力Caが1ならば、ゲート信号Ga、Gdが1となりゲート信号Gb、Gcが0となる。このときインバータ17からは式(5)のように、インバータ直流母線電圧Vdcと同一の電圧が出力される。また、除算器51の除算器出力Caが−1ならば、ゲート信号Ga、Gdが0となりゲート信号Gb、Gcが1となる。このときインバータ17からは式(6)のように、−Vdcの電圧が出力される。
Vinv=Vdc ・・・(5)
Vinv=−Vdc ・・・(6)
図8は、図5の直列補償装置制御部の信号と単相フルブリッジインバータの出力の一例を示す図である。上から一番目はインバータ電圧指令値Vinvrefであり、二番目は比較器53a、53bの入力波形(除算器出力Ca、除算器反転出力Cb)と三角波キャリアVtriである。図8の三番目はゲート信号Ga、Gcであり、四番目はインバータ出力電圧Vinvである。図8の横軸は時間であり、縦軸は各信号の信号値である。三角波キャリアVtriは、規格化されており、信号値が−1から1まで変化する。除算器出力Ca、除算器反転出力Cbは、インバータ電圧指令値Vinvrefの信号値に応じて信号値が−1より少し大きい値から1より少し小さい値まで変化する。正極配線26aと出力線18aとに接続されたIGBT13aのゲート信号Ga、正極配線26aと出力線18bとに接続されたIGBT13cのゲート信号Gcは、その信号値が0または1の値をとる。インバータ出力電圧Vinvは、時間0ms〜10msまでは電圧値が0Vか、インバータ直流母線電圧Vdcかの値をとる。また、インバータ出力電圧Vinvは、時間10ms〜20msまでは電圧値が0Vか、−Vdc(インバータ直流母線電圧Vdcを−1倍した電圧)かの値をとる。
ゲート信号Ga、Gcは、PWM(Pulse Width Modulation)されたPWMパルスである。インバータ電圧指令値Vinvrefが正弦波であるとき、歪なく出力できるインバータ出力電圧Vinvの振幅は概ねVdcである。このように、ゲート信号作成部33を使用すると、インバータ出力電圧Vinvの波形は三角波キャリアVtriのキャリア周波数の2倍で変調されている、すなわち等価的にキャリア周波数が2倍となっているという利点がある。さらに、インバータ電圧指令値Vinvrefが0近傍にあっても、ゲート信号Ga〜Gdは規格外の細いパルスを出力することがない。
なお、一般にインバータ17の動作の際は、IGBT13aと13bとの切替の間、IGBT13cとIGBT13dとの切替の間に短絡防止期間を設ける。この短絡防止期間に起因する出力電圧誤差を補償する制御をゲート信号作成部33に含めることができるのは、自明である。
次に、出力フィルタ15の特性について説明する。図9は、図5の出力フィルタのゲイン特性例を示す図である。周波数が低い領域ではゲインは0dB、周波数が高い領域ではゲインは負である。ローパスフィルタはゲインが正になる領域を有しないことが望ましいが、実際のフィルタではカットオフ周波数近傍でゲインが正になる領域を有する。インバータ17の出力電圧については、系統電源1の基本波周波数成分に加えキャリア周波数の整数倍近傍の成分を含む。さらには電源高調波等に起因する低次高調波成分を有することもある。出力フィルタ15はPWMパルスに伴うキャリア周波数に起因する成分を除去することが主目的であるから、カットオフ周波数の設定についてはキャリア周波数以上の領域においては十分ゲインが低下している必要がある。しかしながら、入力に低次高調波が含まれる可能性があるため、主要な周波数である5次や7次といった周波数において、ゲインが正の大きな値をとらないようにするために、必要以上にカットオフ周波数を下げるべきではない。
次に、直列トランス7の巻数比Nの決定方法を説明する。まず、各種損失を考慮せずに見積る。最初に、必要な補償電圧V2の最大値を決定する。このとき、インバータ出力電圧Vinvの最大値の目安は、補償電圧V2の最大値のN倍である。インバータ出力電圧Vinvの振幅は、インバータ直流母線電圧Vdc以下でなくてはならない。インバータ直流母線電圧Vdcは、入力線8のかご給電線10側の電圧、すなわち補償装置出力電圧Voutと入力線8に流れる電流により変化する。例えば電力変換器6の定格運転時に、インバータ直流母線電圧Vdcは1.35×Vout(rms)程度となる。電力変換器6で発生する損失や直列トランス7で発生する損失と、無効電力とを考慮して、補償装置出力電圧Voutに余裕をみたうえで巻数比Nを大きくとることが望ましい。
エレベーターかご給電装置100の特徴として、かご内負荷5は回生しないことと、電力用ケーブル2は商用周波数領域において抵抗器とみなせることがある。このため、補償電圧V2は負となることはなく、さらに補償電力は正の有効電力とみなしてよい。したがって、入力線8からは、補償する有効電力と直列補償装置3で発生する損失を供給しなければならない。直列補償装置3で発生する損失は、直列トランス7の一次電圧が大きいときに一次電流が低減されるため減少すると考えられる。これが巻数比Nを大きく設計する理由である。
次に、巻数比Nを大きくするためには、インバータ直流母線電圧Vdcが大きいことが望ましい。このため本実施の形態では、入力線8はかご給電線10の出力側に接続している。このとき、直列補償装置3が動作することによって、補償装置出力電圧Voutは400V級の定格電圧程度に制御され、インバータ直流母線電圧Vdcが高く維持できる。これに対し、もし、かご給電線10の入力側に入力線8を接続したならば(比較例1)、かご給電線10との接続点の電圧は補償前の低い電圧である補償装置入力電圧Vinとなり、インバータ直流母線電圧Vdcは低下してしまう。あるいは、制御ケーブル内の別の電力用ケーブルを用いて系統電源1から供給したならば(比較例2)、電流が流れることにより電圧降下が発生するためやはりインバータ直流母線電圧Vdcは低下してしまう。さらに、インバータ直流母線電圧Vdcの低下を抑制しようとすると、別の電力用ケーブルの芯線の数が多くなってしまう。
エレベーターかご給電装置100は、直列補償装置3の入力線8をかご給電線10のかご内負荷5の側に接続することにより、直列補償装置3が動作することによって、インバータ17のインバータ直流母線電圧Vdcを高く保つことができる。エレベーターかご給電装置100は、インバータ17のインバータ直流母線電圧Vdcを高く保つことができるので、入力線8に流れる電流を低減できる。したがって、入力線8に入力する電力を供給する電力用ケーブル2の芯線の並列本数を低減できる。
本実施の形態1のエレベーターかご給電装置100は、直列補償装置3により制御ケーブルの中の電力用ケーブル2の抵抗成分によって低下する電圧を補償して、常に定格電圧近傍の電圧をかご内負荷5に給電することができる。そして、かご給電線10の出力側の
補償装置出力電圧Voutが定格電圧近傍の値をとるため、かご内負荷5に所定の電力を入力する際に電力用ケーブル2に流れる電流を低減できる。このことから電力用ケーブル2の芯線の並列数を低減できる。その結果、電力用ケーブル2の芯線の数が減る分だけ、制御ケーブルを構成する芯線の本数を減じたり、軽量化したりする効果も得られる。また、系統電源1の電圧が低下した際にも直列補償装置3により補償装置出力電圧Voutが定格電圧近傍の値をとるため、電力用ケーブル2に流れる電流を低減できる。したがって上記と同様に、電力用ケーブル2の芯線の並列数を低減できる。その結果、電力用ケーブル2の芯線の本数が減る分だけ、制御ケーブルを構成する芯線の本数を減じたり、軽量化したりする効果も得られる。
また、補償装置出力電圧Voutが定格電圧近傍の値をとるため、電力用ケーブル2に流れる電流が概ねかご内負荷5の入力電力と直列補償装置3で発生する損失から決定されるようになる。このため、電力用ケーブル2の芯線の必要並列数の見積りが簡単になる。
さらに、補償装置出力電圧Voutが定格電圧近傍の値をとるため、トランス4は電圧調整用のタップを設ける必要がない。このことにより、トランス4の小型化、軽量化、低価格化が図れる上に、現地でのタップ調整作業が不要になるという効果がある。
実施の形態1のエレベーターかご給電装置100は、かご給電線10と入力線8との接続部よりもかご内負荷5の側にトランス4を備え、かご内負荷5の入力電力に応じた電圧に変換するので、電力用ケーブル2による送電電圧を高く設定することができ、この場合には電力用ケーブル2の芯線の並列本数をさらに低減できる。
以上に説明したように、本実施の形態1の直列補償装置3は、電力変換器6への電力を供給する入力線8をかご給電線10の出力側に接続するようにしたため、接続端の電圧は補償装置入力電圧Vinよりも高い電圧である補償装置出力電圧Voutとなり、常に補償後の定格電圧近傍の値をとる。これにより、平滑コンデンサ12の電圧すなわちインバータ直流母線電圧Vdcの低下を抑制でき、直列トランス7の巻数比Nを大きく設計することができる。その結果、直列補償装置3の損失が低減され、一層の電力用ケーブル2の芯線の並列数低減が期待できる。
また、実施の形態1の直列補償装置3は、入力線8をかご給電線10の出力側に接続するようにしたため、入力線8を系統電源1に接続する必要がなく、入力線8を短くすることができる。入力線8を系統電源1に接続しないので、入力線8は電力用ケーブル2と同じものにする必要がない。
また、直列補償装置3の損失低減により、電力変換器6や直列トランス7の小型化、軽量化、低価格化が期待できる。
本実施の形態1のエレベーターかご給電装置100では、かご内負荷5への入力電力が変動した場合にもかご内負荷5と電力変換器6との両方の入力電圧の変動が小さいため、電力用ケーブル2の芯線の並列数が最小限に低減できるというこれまでにない効果を奏する。
以上のように実施の形態1のエレベーターかご給電装置100は、電力用ケーブル2から送電された入力電力を受電し、入力電力の電圧に電力用ケーブル2による電圧降下を補償した補償電圧V2を重畳して、かごのかご内負荷5に供給電力を供給する直列補償装置3を備え、直列補償装置3は、電力用ケーブル2から送電された入力電力をかご内負荷5に供給するかご給電線10と、交流電力を直流電力に変換する整流器(ダイオード整流器16)と、かご給電線10の交流電力を整流器(ダイオード整流器16)に供給する入力線8と、整流器(ダイオード整流器16)が出力した直流電力を交流電力に逆変換するインバータ17と、インバータ17の出力に接続された出力フィルタ15と、出力フィルタ15の出力に一次巻線が接続され、かご給電線10に二次巻線が直列に接続された直列トランス7とを有し、直列補償装置3の入力線8は、かご給電線10における直列トランス7の二次巻線の接続部よりもかご内負荷5の側に接続されることを特徴とする。したがって、実施の形態1のエレベーターかご給電装置100によれば、電力用ケーブル2による電圧降下を補償する電力を供給する直列補償装置3の入力線8が、かご給電線10における直列トランス7の二次巻線の接続部よりもかご内負荷5の側に接続されたので、エレベーターかごへ電力を供給する電力用ケーブル2における芯線の数を従来に比べて低減することができる。
実施の形態2.
図10は、本発明の実施の形態2によるインバータ電圧指令作成部の詳細を示す構成図である。以下、実施の形態1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。実施の形態2のエレベーターかご給電装置100は、実施の形態1のエレベーターかご給電装置100とは、直列補償装置3の直列補償装置制御部31の構成要素であるインバータ電圧指令作成部32の内容のみが異なる。図10のインバータ電圧指令作成部32は、図6と異なりローパスフィルタ46を含んでいる。ローパスフィルタ46は、電圧検出器34によって検出された補償装置入力電圧Vinが入力され、高周波を除去したフィルタ出力電圧Vinfを出力する。
実施の形態2のインバータ電圧指令作成部32は、減算器44によって式(7)のように減算を行い、直列トランス7の一次巻線電圧指令値V1refを得る。
V1ref=Voref−Vinf ・・・(7)
これにより、補償装置入力電圧Vinに高調波が含まれていた場合にも、補償不要な高調波成分を無視してインバータ17に直列補償装置制御部31からゲート信号Ga、Gb、Gc、Gdを出力できる。したがって、インバータ17は、補償不要な高調波成分を除去して、インバータ出力電圧Vinvを出力できる。
例えばローパスフィルタ46のカットオフ周波数を出力フィルタ15でゲインが正になる領域をカットするように設定すると、直列補償装置3からの無用な低次高調波発生を回避できる。または、ローパスフィルタ46のカットオフ周波数を基本波成分だけを抽出するように設定すると、補償装置出力電圧Voutの基本波成分が所望の値となるよう制御できる。
なお、ここではローパスフィルタ46を用いて補償装置入力電圧Vinの低次成分を抽出することにしているが、基本波成分を検出するようなバンドパスフィルタを用いても構わない。
以上に説明したように、本実施の形態2のエレベーターかご給電装置100は、インバータ電圧指令作成部32で補償装置入力電圧Vinの高調波成分を除去するので、実施の形態1のエレベーターかご給電装置100の効果に加えて、インバータ出力電圧Vinvから補償不要な低次高調波成分を除去し、無用な低次高調波発生を回避できる。さらには必要な基本波成分の補償量を確保することができる。
実施の形態3.
図11は、本発明の実施の形態3によるエレベーターかご給電装置を示す図である。以下、実施の形態1、実施の形態2と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。実施の形態3のエレベーターかご給電装置100は、実施の形態1のエレベーターかご給電装置100とは、トランス4を有さない点で異なる。実施の形態3のエレベーターかご給電装置100では、直列補償装置制御部31のインバータ電圧指令作成部32は図6でも図10でも構わない。
実施の形態3では系統電源1は200V級であり、電力用ケーブル2を用いて単相200V級で直列補償装置3に送電する。かご内負荷5は、単相200V級または単相100V級であり、一括して単相200V級に降圧するトランス4は不要である。このため、直列補償装置3の直列補償動作中は定格電圧近傍の大きさである補償装置出力電圧Vout自体が、かご内負荷5に印加される。
本実施の形態3のエレベーターかご給電装置100は、直列補償装置3により制御ケーブルの中の電力用ケーブル2の抵抗成分によって低下する電圧を補償して常に定格電圧近傍の電圧である補償装置出力電圧Voutをかご内負荷5に給電することができる。そして、かご内負荷5に所定の電力を入力する際に電力用ケーブル2に流れる電流を低減できることから電力用ケーブル2の芯線の並列数を低減できる。その結果、電力用ケーブル2の芯線の数が減る分だけ、制御ケーブルを構成する芯線の本数を減じたり、軽量化したりする効果も得られる。また、系統電源1の電圧が低下した際にも直列補償装置3により補償装置出力電圧Voutが定格電圧近傍の値をとるため、電力用ケーブル2に流れる電流を低減できる。したがって上記と同様に、電力用ケーブル2の芯線の並列数を低減できる。その結果制御ケーブルを構成する芯線の本数を減じたり、軽量化したりする効果も得られる。
また、補償装置出力電圧Voutが定格電圧近傍の値をとるため、電力用ケーブル2に流れる電流が概ねかご内負荷5の入力電力と直列補償装置3で発生する損失から決定されるようになる。このため、電力用ケーブル2の芯線の必要並列数の見積りが簡単になる。
さらに、補償装置出力電圧Voutは200V級であるため、400V級と比較すると同じ電力を得る場合に電力用ケーブル2に流れる電流が大きくなる。このことから、設計上、電力用ケーブル2の電圧定格が上げられない場合に、直列補償装置3により電力用ケーブル2の電圧低下を補償できるので、電力用ケーブル2に流れる電流を低減することができ、電力用ケーブル2の芯線の並列数の低減効果が特に大きくなる。
また、かごに一括で降圧するためのトランス4を搭載する必要がないため、エレベーターかごの軽量化が図れる。
以上に説明したように、本実施の形態3の直列補償装置3は、実施の形態1と同様に電力変換器6への電力を供給する入力線8をかご給電線10の出力側に接続するようにしたため、接続端の電圧は補償装置出力電圧Voutとなり、常に補償後の定格電圧近傍の値をとる。これにより、平滑コンデンサ12の電圧すなわちインバータ直流母線電圧Vdcの低下を抑制でき、直列トランス7の巻数比Nを大きく設計することができる。その結果、直列補償装置3の損失が低減され、200V級で送電する場合に、一層の電力用ケーブル2の芯線の並列数低減が期待できる。
また、実施の形態3の直列補償装置3は、実施の形態1と同様に、直列補償装置3の損失低減により、電力変換器6や直列トランス7の小型化、軽量化、低価格化が期待できる。
実施の形態3の直列補償装置3は、実施の形態2のインバータ電圧指令作成部32を適用した場合には、実施の形態2にかかるエレベーターかご給電装置の効果が得られることは無論である。
本実施の形態3のエレベーターかご給電装置100は、実施の形態1と同様に、かご内負荷5への入力電力が変動した場合にもかご内負荷5と電力変換器6との両方の入力電圧の変動が小さいため、電力用ケーブル2の芯線の並列数が最小限に低減できるというこれまでにない効果を奏する。
実施の形態4.
図12は、本発明の実施の形態4によるエレベーターかご給電装置を示す図である。以下、実施の形態1、実施の形態2と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。図12では、エレベーターかごへの給電を三相で行っているところが図1と異なる。実施の形態1におけるかご内負荷5の必要とする電力が大きい場合は、単相で送電するよりも三相で送電すると帰線が省略できるため有利である。図1における帰線は、電力用ケーブル2の一つである電力用ケーブル2bである。
三相交流の場合、直列補償装置3は相毎に補償を行うことになる。実施の形態4によるエレベーターかご給電装置100における電力用ケーブル2は、直列補償装置3のかご給電線10の入力側に接続される。かご給電線10の出力側は、トランス4の一次巻線に接続されトランス4の二次巻線はかご内負荷105に接続される。図12では、電力用ケーブル2aが直列補償装置3の入力端子38aに接続され、電力用ケーブル2bが直列補償装置3の入力端子38bに接続され、電力用ケーブル2cが直列補償装置3の入力端子38cに接続されている。かご給電線10aは入力端子38aとトランス4の一次巻線を接続し、かご給電線10bは入力端子38bとトランス4の一次巻線を接続し、かご給電線10cは入力端子38cとトランス4の一次巻線を接続する。電力用ケーブルの符号は、総括的に2を用い、区別して説明する場合に2a、2b、2cを用いる。かご給電線の符号は、総括的に10を用い、区別して説明する場合に10a、10b、10cを用いる。
かごで大電力を必要とするエレベーターにおいては、図13のように三相のかご内負荷162を搭載している場合もある。図13は、図12のかご内負荷の一例を示す図である。かご内負荷105は、単相200V級のかご内負荷161a、161b、161c、161d、三相200V級のかご内負荷162、単相100V級のかご内負荷163a、163b、163cで構成されている。図13における記号r、s、tは、それぞれ三相におけるr相、s相、t相を示している。負荷の構成は、図13に限定されるものではない。図13のようなかご内負荷105は三相負荷だけで構成されているのではないため、運転中は不平衡であることが予想される。図12において、電力用ケーブル2aはr相であり、電力用ケーブル2bはs相であり、電力用ケーブル2cはt相である。
直列補償装置3は、電力変換器106、かご給電線10、直列トランス7a、7b、7c、電力変換器106に電力を供給する入力線8a、8b、8c、直列トランス7a、7b、7cの二次巻線をそれぞれ短絡するバイパス回路9a、9b、9c、直列補償装置制御部131、図示しない電圧検出器134a、134b、35(図18参照)を備える。直列トランス7a、7b、7cは、電力変換器106の一相分の出力に一次巻線、かご給電線10の1本に二次巻線が接続される。直列トランス7aの二次巻線はかご給電線10aに接続され、直列トランス7bの二次巻線はかご給電線10bに接続され、直列トランス7cの二次巻線はかご給電線10cに接続される。入力線の符号は、総括的に8を用い、区別して説明する場合に8a、8b、8cを用いる。ここで、入力線8は、三相であり、かご給電線10の入力側ではなく出力側に接続されている。また、バイパス回路9a、9b、9cは、直列補償動作の際は開放しているが、直列補償動作を行わないバイパス運転の際には閉路して直列トランス7a、7b、7cのそれぞれの二次巻線を短絡する。バイパス回路9a、9b、9cは、実施の形態1で説明したものである。
図14は、図12の電力変換器の回路図である。図15は図14のIGBTモジュール118aの回路図であり、図16は図14のIGBTモジュール118bの回路図である。電力変換器106は、入力線8a、8b、8cから三相交流を入力とし、直流電圧を出力するダイオード整流器116と、入力直流電圧を平滑する平滑コンデンサ12と、単相フルブリッジインバータ群117と、出力フィルタ15a、15b、15cとを備える。ダイオード整流器116は、6つのダイオード111a、111b、111c、111d、111e、111fにより構成される。ダイオード整流器116の正極配線26a及び負極配線26bにより、IGBTモジュール118a、118bに直流電力が供給される。単相フルブリッジインバータ群117は、2つのIGBTモジュール118a、118bから構成される。IGBTモジュール118aは、6つのIGBT113aa、113ab、113ba、113bb、113ca、113cbと、各々に逆並列されたダイオード114aa、114ab、114ba、114bb、114ca、114cbからなる。IGBTモジュール118bは、IGBT113ac、113ad、113bc、113bd、113cc、113cdと、各々に逆並列されたダイオード114ac、114ad、114bc、114bd、114cc、114cdからなる。
後述する単相フルブリッジインバータ群117と実施の形態1に示した単相フルブリッジインバータ(インバータ)17の関係を、簡単な図を用いて説明するために、IGBTモジュール118a、118bの構成を、それぞれ3つのレグ17aU1、17bU1、17cU1と3つのレグ17aU2、17bU2、17cU2に分ける。レグ17aU1は、IGBT113aa、113ab、ダイオード114aa、114abを有する。同様に、レグ17bU1はIGBT113ba、113bb、ダイオード114ba、114bbを有し、レグ17cU1はIGBT113ca、113cb、ダイオード114ca、114cbを有する。レグ17aU2は、IGBT113ac、113ad、ダイオード114ac、114adを有する。同様に、レグ17bU2はIGBT113bc、113bd、ダイオード114bc、114bdを有し、レグ17cU2はIGBT113cc、113cd、ダイオード114cc、114cdを有する。
単相フルブリッジインバータ群117は、実施の形態1に示した単相フルブリッジインバータ(インバータ)17が3組で構成されていて、各単相フルブリッジインバータ17の出力は出力フィルタ15a、15b、15cの入力に接続される。単相フルブリッジインバータ群117は、適宜、インバータ群117と称する。インバータ群117とインバータ17との関係を、図17を用いて説明する。図17は、図14のインバータ群とインバータとの関係を説明する図である。出力フィルタ15aに出力するインバータ17aは、レグ17aU1とレグ17aU2からなり、すなわち113aa、113ab、113ac、113adとダイオード114aa、114ab、114ac、114adを有する。同様に、出力フィルタ15bに出力するインバータ17bは、レグ17bU1とレグ17bU2からなり、すなわち113ba、113bb、113bc、113bdとダイオード114ba、114bb、114bc、114bdを有する。出力フィルタ15cに出力するインバータ17cは、レグ17cU1とレグ17cU2からなり、すなわち113ca、113cb、113cc、113cdとダイオード114ca、114cb、114cc、114cdを有する。インバータの符号は、総括的に17を用い、区別して説明する場合に17a、17b、17cを用いる。
図14では、単相フルブリッジインバータ17は相毎のバランスを保つため各々IGBTモジュール118aとIGBTモジュール118bのスイッチ2個ずつで構成しているが、2素子入りモジュールを使用したり、6素子入りモジュールの使用箇所を変更したりしてもかまわないのは無論である。
また、ダイオード整流器116と平滑コンデンサ12は3つのインバータ17a、17b、17cに対して共通としているが、これらを個別に配置することもできる。また、入力線8を単相として、ダイオード整流器116を単相の整流器とすることもできる。
次に、実施の形態4における直列補償装置3の動作を説明する。図18は、図12の直列補償装置の詳細を示す構成図である。かご給電線10の入力電圧をVin、出力電圧をVoutとする。かご給電線10は三相であって、かご給電線10aはr相、かご給電線10bはs相、かご給電線10cはt相である。入力線間電圧をVinrs、Vinst、Vintr、入力相電圧をVinr、Vins、Vint、出力線間電圧をVoutrs、Voutst、Voutts、出力相電圧をVoutr、Vouts、Vouttとする。
直列トランス7a、7b、7cの二次巻線電圧であるV2r、V2s、V2tは、直列補償装置3が出力する補償電圧である。直列補償のため、相電圧で扱うことが好ましく、かご給電線10の入出力電圧の関係は、式(8)、式(9)、式(10)のように表すことができる。
Voutr=Vinr+V2r ・・・(8)
Vouts=Vins+V2s ・・・(9)
Voutt=Vint+V2t ・・・(10)
このように考えたときは、実施の形態1における単相での給電と同様に、相毎に補償が可能である。電力変換器106のインバータ群117の出力電圧を、Vinvr、Vinvs、Vinvtとする。
直列補償装置3は、直列補償装置制御部131を備えており、直列補償装置制御部131は、インバータ電圧指令作成部132とゲート信号作成部133を有している。さらに、電圧検出器134a、134bを用いて、入力線間電圧Vinrsと入力線間電圧Vinstを検出し、電圧検出器35を用いてインバータ直流母線電圧Vdc(平滑コンデンサ12の電圧)を検出する。
図19は、図18のインバータ電圧指令作成部の詳細を示す構成図である。実施の形態4のエレベーターかご給電装置100では、直列補償を相電圧に対して行うが、三相三線式のため、入力電圧は線間電圧としてしか検出することができない。このため、電圧検出器134a、134bを用いて検出した入力線間電圧Vinrs、Vinstを、相電圧変換部147で入力相電圧Vinr、Vins、Vintに変換する。ここでは入力線間電圧として、2つの入力線間電圧Vinrs、Vinstを検出したが、入力線間電圧は他の相を検出することもでき、また、全ての入力線間電圧Vinrs、Vinst、Vintrを検出してもよいのは無論である。
個別電圧指令作成部148a、148b、148cは、図6のインバータ電圧指令作成部32と同様である。補償装置出力電圧Voutr、Vouts、Vouttの振幅を各相共通に制御する指令である電圧振幅指令値Voprefと、r相の補償装置入力電圧である入力相電圧Vinrを個別電圧指令作成部148aに入力すると、r相のインバータ電圧指令値Vinvrrefが出力される。同様に、電圧振幅指令値Voprefと、s相の補償装置入力電圧である入力相電圧Vinsを個別電圧指令作成部148bに入力すると、s相のインバータ電圧指令値Vinvsrefが出力される。電圧振幅指令値Voprefと、t相の補償装置入力電圧である入力相電圧Vintを個別電圧指令作成部148cに入力すると、t相のインバータ電圧指令値Vinvtrefが出力される。図19では、個別電圧指令作成部148aの内部信号にr相を示すようにしており、その内部信号は、位相θr、基準波形sinθr、出力電圧指令値Vorref、一次巻線電圧指令値V1rrefである。個別電圧指令作成部148b、148cの内部信号についても、同様にs相、t相示す信号となっている。
なお、個別電圧指令作成部148a、148b、148cは、実施の形態2の図10で示したインバータ電圧指令作成部32と同等の構成でもよい。図20は、図19の他の個別電圧指令作成部の構成図であり、実施の形態2のインバータ電圧指令作成部32相当の構成例を示した。ここで、図19、図20では各相の位相θr、θs、θtを個別に求めているが、位相θrを用いて位相θs、θtを求めることもできる。
図21は、図18のゲート信号作成部の詳細を示す構成図である。ゲート信号作成部133には、3つのインバータ電圧指令値Vinvrref、Vinvsref、Vinvtrefと、電圧検出器35によって検出されたインバータ直流母線電圧Vdcと、三角波キャリアVtriとが入力される。個別ゲート信号作成部155a、155b、155cは、図7のゲート信号作成部33と同様である。個別ゲート信号作成部155aから、r相のインバータ群117のゲート信号Gaa、Gab、Gac、Gadが作成される。ゲート信号Gaa、Gab、Gac、Gadは、IGBT113aa、113ab、113ac、113adの制御信号である。
同様に、個別ゲート信号作成部155bから、s相のインバータのゲート信号Gba、Gbb、Gbc、Gbdが作成される。ゲート信号Gba、Gbb、Gbc、Gbdは、IGBT113ba、113bb、113bc、113bdの制御信号である。個別ゲート信号作成部155cから、t相のインバータのゲート信号Gca、Gcb、Gcc、Gcdが作成される。ゲート信号Gca、Gcb、Gcc、Gcdは、IGBT113ca、113cb、113cc、113cdの制御信号である。
これらの12個のゲート信号は、IGBTモジュール118a、118bのIGBTを駆動する図示しないゲートドライバに分配される。図21では、個別ゲート信号作成部155a、155b、155cに対して共通のインバータ直流母線電圧Vdcと三角波キャリアVtriを使用している。12個のゲート信号は、実施の形態1で説明した図8と同様の方式を使用する。
なお、機器の構成によりインバータ直流母線電圧Vdcを検出する検出器を複数有することや、複数の三角波キャリアVtriを使用する場合もある。実施の形態4では、IGBTモジュール118a、118bを用いて、単相のインバータ17を3セット構成にしているため、IGBTモジュール118a、118b毎に別の検出器と三角波キャリアを有する可能性がある。このとき、IGBTモジュール118a、118b毎に規格化された指令値やキャリア位相にずれが発生することがあるが、インバータ17a、17b、17cの出力端子は各々出力電圧指令値Vorref、Vosref、Votref自体で変調されているため、ずれの影響は小さい。
以上に説明したように、実施の形態4のエレベーターかご給電装置100は、三相3線でエレベーターかごに給電を行うので、実施の形態1または実施の形態2にかかるエレベーターかご給電装置100の効果に加えて、かご内負荷105の必要とする電力が大きい場合に、すなわちかご内負荷105の負荷容量が大きい場合に、単相での給電よりも電力用ケーブル2の芯線の並列数を低減できる。
また、かご内負荷105や系統電源1が不平衡である場合にも、実施の形態4の直列補償装置3は、相毎に補償を行うため、出力線間電圧Voutrs、Voutst、Vouttrは定格電圧近傍の値となり、電圧のアンバランスが小さい。このことにより、電力用ケーブル2に流れる電流を必要最小限に維持することができるという効果を奏する。
なお、本発明は、その発明の範囲内において、実施の形態における各構成を組み合わせたり、実施の形態における各構成を適宜、変形、省略することが可能である。