以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「側」、「端」を含む用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が限定されない。また、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図しない。
(1.全体構成)
図1は、本実施形態に係る分注装置の概略斜視図、図2は、図1から外装パネル等を除去した概略斜視図である。これらの図に示すように、分注装置は、略直方体形状の装置本体1に、液体ボトルの一例である複数本の薬液ボトル2を回動可能に支持するボトル支持部3と、このボトル支持部3に支持した各薬液ボトル2を回動させる回動駆動部4と、各薬液ボトル2に収容される薬液を注出するための薬液注出部5と、薬液ボトル2の他の患者用ボトル6に希釈水を注入するための希釈水注入部7(図2では省略、詳細は図15参照)と、薬液注出部5でノズル(排出チューブ221)の洗浄を行うためのノズル洗浄部8(図2では省略、詳細は図16参照)とを備える。そして、本発明では、ボトル支持部3で支持した複数の薬液ボトル2のうち、冷却を必要とする薬液を収容する薬液ボトル2を冷却部9の冷却空間352(図2では省略、詳細は図5参照)で冷却可能とし、各構成部品を制御装置10(図2では省略、詳細は図19参照)によって駆動制御する構成としている。
(1−1.装置本体1)
装置本体1は、各構成部品を覆う矩形状の筐体である。この装置本体1には、対向する左右の側壁160に、それぞれ内部の熱を排気するための本体排気口161が設けられている。この本体排気口161は、内外を連通する多数の貫通孔により構成している。本体排気口161を装置本体1の両側壁160に設けることで、設置する薬局等において、分注装置の背面側が建物の壁に向けて設置されても、熱を装置本体1内から外に排出できる。また、建物の隅に設置され、背面側と一方の側壁160が壁に向けて設置されても、他方の側壁160の本体排気口161から熱を外へ確実に排出できる。しかも、本実施形態では、後述するように、環状支持体167の180度異なる位置に冷却部9が設けられているので、それぞれの冷却部9からの熱を確実に本体排気口161から排出できる。
また、装置本体1は、正面のディスプレイ162の下方側に、薬液ボトル2をボトル支持部3に着脱可能に装着するための着脱空間163と、患者用ボトル6を配置して薬液ボトル2内の薬液を分注するための分注空間164とを備えている。着脱空間163は、装置本体1の正面および右側面に沿って水平方向にスライド可能に設けたシャッター165によって開閉可能となっている。このシャッター165により正面側のみならず側面側に至る領域をも開放することができる。
(1−2.ボトル支持部3)
装置本体1内には、ボトル支持部3が設けられている。このボトル支持部3は、装置本体1内に設けた環状支持体167に、複数の回動支持部168を設けた構成である。なお、所定の回動支持部168で支持した薬液ボトル2を冷却する機構(後述する冷却部9)は、環状支持体167に配置される。また、回動支持部168に支持した薬液ボトル2を回動させるための機構(後述する回動駆動部4)、薬液ボトル2から患者用ボトル6に薬液を注出するための機構(後述する移動部材253、第2押圧部材254等)等は、環状支持体167の近傍に配置されており、下方側には広い空間を確保することができる。このため、前述の着脱空間163と分注空間164とを十分広くすることが可能となっている。
図3に詳細に示すように、環状支持体167は、装置本体1の高さ方向の中間位置に配設した仕切板166の上側に配設されている。この環状支持体167の外周部には、断面略三角形状に突出する環状ガイド部が形成されている。この環状支持体167は、略V字状の溝部が形成された支持ローラ167aによって、外周面の4箇所が水平に支持されている。回転モータ167b(図19参照)によって所定の支持ローラ167aが回転駆動されることにより、環状支持体167が軸線を中心として回転可能となっている。
回動支持部168は、薬液ボトル2を傾倒可能に支持する部材であり、環状支持体167に対して周方向に等間隔で複数箇所(本実施形態では10箇所)に設けられている。これにより複数の液体ボトル2が、略同一円周上の環状領域である環状支持体167の周方向に沿って移動可能に支持される。この回動支持部168は、支持台169と、この支持台169に支軸170を中心として回動可能に連結された回動部171とを備える。
支持台169は、環状支持体167の内周部に装着される部材であり、上端に環状支持体167に取り付けるための取付部175を備えている。図4に示すように、支持台169において、取付状態で環状支持体167の軸線側に位置する面には、上下方向に延びる溝部173が設けられている。また、支持台169には、溝部173に対して直交するように貫通孔が形成され、この貫通孔に支軸170が挿通されている。
図5に示すように、支軸170の一端部には、外周面の一部だけがカットされることにより、ギアが形成される領域が制限された従動ギア176が固定されている。また、支持台169において、従動ギア176の反対側の側面には、円形状の開口部(図示せず)が形成され、この開口部を介して後述するロック機構186のロッド208が溝部173内に出没可能となっている。
図4および図5に示すように、回動部171は、支持台169に支軸170を中心として回動可能に設けられる回動プレート177に、スペーサ178を介して一対の腕部179a,179bを固定した構成である。
回動プレート177は、中間壁180の両側部に側壁181a,181bを対向して配置し、これらの一端部を天井壁182で覆った構成である。両側壁181a,181bの他端部は中間壁180よりも更に延び、その延設部分は支持台169に設けた支軸170によって回動可能に支持されている。一方の側壁181aは、回動プレート177が上方回動位置に回動しているとき、支持台169の溝部173内に位置し、他方の側壁181bは、支持台169の一方の側壁外面側に位置する。そして、溝部173内に位置する側壁181aには、後述するロック機構186のロッド208が挿通する開口部(図示せず)が形成されている。
スペーサ178と両腕部179a,179bで略コ字形のガイド部183が形成され、このガイド部183に薬液ボトル2に装着した栓体部材218が着脱可能となっている。一方の腕部179aには、矩形状の係止孔184が形成され、栓体部材218に設けた係止爪233が係脱可能となっている。これにより、両腕部179a,179bによって栓体部材218を介して薬液ボトル2を保持することが可能となる。
このように、回動支持部168の回動プレート177から環状支持体167の内側に突出した腕部179a,179bによって薬液ボトル2を保持することができる(図3参照)。そして、各回動支持部168に支持された薬液ボトル2は、環状支持体167の回転によって周方向に所定ピッチずつ搬送される。本実施形態では、図3において正面中央部に位置する部分を分注空間164の上方に位置する注出位置とし、図3において正面右角部に位置する部分を着脱空間163の上方に位置する着脱準備位置としている。着脱準備位置にて回動支持部168を回動させると、薬液ボトル2は、環状支持体167の内側を通過して下方の着脱空間163内の着脱位置へと移動する。
(1−3.回動駆動部4)
着脱準備位置の近傍には、回転支持部168よりも下方側に位置するように回動駆動部4が配置されている。この回動駆動部4は、図6および図7に示すように、回動駆動本体187と、この回動駆動本体187に昇降可能に設けた第1モータ部188と、この第1モータ部188を昇降させる第2モータ部189とを備えている。
回動駆動本体187は、平面視矩形状の底板190と、その両端部にそれぞれ設けたガイド枠191とを備える。ガイド枠191と底板190とで囲まれた領域には、幅方向に所定間隔で一対のガイド軸192(一方は図示せず)が設けられている。そして、ガイド軸192に沿って昇降可能に昇降ブロック193がそれぞれ設けられている。
第1モータ部188は、前面板194、両側板195および天板196で構成されるカバー体197を備え、前面板194の背面に第1モータ198を固定し、前面板194の前面に第1駆動ギア199および中間ギア200を設けた構成である。第1駆動ギア199は、前面板194を貫通して前面側に突出する第1モータ198の回転軸に取り付けられている。また、中間ギア200は、軸部を中心として回転可能で、第1駆動ギア199に噛合している。これにより、第1モータ198を正逆回転駆動すると、第1駆動ギア199を介して中間ギア200が正逆回転する。
第2モータ部189は、回動駆動本体187の底板190に固定した第2モータ201と、この第2モータ201の回転軸に設けた第2駆動ギア202と、この第2駆動ギア202に噛合するとともに一方の昇降ブロック193に固定されるラック部203とを備える。
この回転駆動部4は、第2モータ201を正逆回転駆動すると、第2駆動ギア202からラック部203を介して昇降ブロック193がガイド軸192に沿って昇降する。昇降ブロック193を上昇移動させると中間ギア200が上昇し、この中間ギア200が図5に示す支持台169の従動ギア176に噛合する。そして、この状態で第1モータ198を回転駆動することにより、第1駆動ギア199および中間ギア200を介して従動ギア176を回転させ、回動支持部168を回動させることができる。
着脱準備位置の近傍には、図4および図8に示すように、支持台169に対して回動部171を位置規制するためのロック機構186が更に配置されている。このロック機構186は、図8に示すように、薬液ボトル2を上下逆向きの倒立状態に維持するためのロック部材204と、このロック部材204を作動させるための作動部材205とで構成されている。
ロック部材204は、各回動支持部168の支持台169に対して回動部171を位置決めする部材であり、支持台169にネジ止め固定されるロック本体206と、このロック本体206にスライド可能に保持されるロッド部207とを備えている。ロック本体206は矩形枠体形状に形成されている。ロッド部207は、上下一対のロッド208を左右2箇所の連結棒209a,209bで連結した構成である。各ロッド208は、ロック本体206の上方部および下方部に摺動可能に配置される。連結棒209a,209bは、ロック本体206に形成した開口部206aの内側に位置するように配置されている。
作動部材205は、図8に示すように、作動本体210と、この作動本体210から出没可能な作動バー211と、この作動バー211を往復移動させるための作動モータ212とを備え、着脱準備位置の近傍に配置されている。
作動本体210は、薄型の略直方体形状をなし、作動バー211の上部に位置するように3つの磁気センサ213(図8では1つは省略)がそれぞれ取り付けられている。
作動バー211は棒状であり、一端側の左右両面には長手方向の2箇所で位置をずらせて平面視略三角形状の第1および第2突部214,215がそれぞれ形成されている。また、作動バー211の一方の側面には、作動モータ212のピニオンに噛合するラックギア(図示せず)が設けられている。さらに、作動バー211の他端側上面には永久磁石(図示せず)が設けられている。この永久磁石を各磁気センサ213で検出することにより、作動バー211が基準位置、第1突出位置、および、第2突出位置のいずれに位置するのかを検出可能としている。作動バー211は、第1突出位置で、第1突部214が第1連結棒209aを押圧し、ロッド208を支持台169側に突出させて回動プレート177の側壁181aに形成した開口部に進入係止させることにより、支持台169に対して回動部171を位置規制する(ロック状態)。また、作動バー211は、第2突出位置で、第2突部215が第2連結棒209bを押圧し、ロッド208を支持台169側から後退させて回動プレート177を回動自在とする(アンロック状態)。
作動モータ212は、回転軸に駆動ギア216が連結され、取付プレート217を介して作動本体210に固定される。駆動ギア216は、作動バー211のラックギアに噛合するピニオンとして機能する。作動モータ212は、各磁気センサ213からの検出信号に基づく制御装置10からの制御信号に従って正逆回転駆動する。
(1−4.栓体部材218)
回動支持部168および回動駆動部4によって傾倒可能に支持される薬液ボトル2の口部には、図5および図9に示すように、栓体部材218が取り付けられる。この栓体部材218は、栓体219と、この栓体219に装着されるエアチューブ220および排出チューブ221と、排出チューブ221をガイドするガイド部材222と、このガイド部材222にガイドされた排出チューブ221に接離して流路を開閉する第1押圧部材223とを備える。回動支持部168、回動駆動部4、および、栓体部材218の各チューブ220,221が、薬液ボトル2を支持し、液体ボトル2に収容された液体を排出するための液体排出機構を構成する。
栓体219は、略直方体形状で、その取付面には、薬液ボトル2の口部を配置可能な平面視円形状の凹部224が形成されている。凹部224の内周面には雌ネジが形成され、薬液ボトル2の口部に形成された雄ネジが螺合可能となっている。また、凹部224の底面には一対の貫通孔(図8参照)237a,237bが形成されている。一方の貫通孔237aは、栓体219の底近傍まで垂直方向に延びる第1貫通部と、この第1貫通部に連通するように栓体219の一端面から水平方向に延びる第2貫通部とを有するL字形状をなす。そして、第1貫通部には、上向きに延びるようにエアチューブ220が接続され、第2貫通部の開口位置には円錐状のガイド凹部238が形成されている。この貫通孔237aおよびエアチューブ220を介して薬液ボトル2内に空気が供給される。また、他方の貫通孔237bは、栓体219を垂直方向に貫通するように延び、その下端に下向きに延びるように排出チューブ221が接続される。この貫通孔237bおよび排出チューブ221を介して薬液ボトル2から薬液が排出される。
また、栓体219には、凹部224の近傍に、RFID225(Radio Frequency IDentification)が内蔵されている。RFID225には、いずれの回転支持部168であるのかを識別するための特定のID(IDentification:以下、取付位置IDと記載する。)が記憶されている。RFID225に記憶される取付位置IDは、RFIDリーダライタ(図示せず)によって書き込まれる。
栓体219の側面上下端部には突条226が形成され、上側の突条226にはスライド可能にボトル留め具227が取り付けられている。ボトル留め具227は合成樹脂材料を略U字形に成形加工され、周囲の3辺を囲む側壁部228と、その内縁部から内側に膨出したU字形の押え部229とを備える。側壁部228のうち、対向面下端部には溝部が形成され、栓体219の突条226に嵌合されている。
栓体219にはラッチ部材231が設けられている。このラッチ部材231は、図9に示すように、栓体219の一端側から突出する押込部232と、栓体219の一側面から没入可能に突出させた係止爪233とを有する。係止爪233は栓体219の一側面から突出することにより、回動支持部168の腕部179aに形成した係止孔184に係止される。そして、押込部232を操作して栓体219内に押し込むと、係止爪233を栓体219内に没入させ、回動部171の係止孔184との係止が解除される。
エアチューブ220は、栓体219の凹部224に形成した一方の貫通孔237aに接続され、その先端は薬液ボトル2の閉塞した底面近傍に位置している。エアチューブ220の先端には、逆止弁239が装着されている。薬液ボトル2の口部を下方に位置させた倒立状態では、内部の薬液が口部側に位置し、逆の底面側に空気による空間が形成される。このため、倒立状態では、エアチューブ220の先端位置、すなわち逆止弁239は、液面より上方に位置する。逆止弁239が薬液中にあれば、気体を供給したとしても、エアチューブ220内に薬液が流入することがあるが、液面から上方に位置するため、そのような心配もない。なお、本実施形態では、エアチューブ220の先端に、逆止弁239の保持部材として開口を有するキャップ部材240を螺合により装着し、このキャップ部材240を取り外さなければ逆止弁239を取り外すことができないようにしている。
排出チューブ221は、可撓性を有する材料からなり、栓体219の他方の貫通孔237bの下部に装着され、この貫通孔237bを介して薬液ボトル2内に連通している。そして、回動支持部168によって薬液ボトル2が倒立状態になると、エアチューブ220から薬液ボトル2内に気体が供給され、排出チューブ221から薬液ボトル2内の液体が排出される。
ガイド部材222は、図5に示すように、栓体219に固定した平面視L字形状をなす支持プレート222aに、第1ガイド部241と第2ガイド部242とを設けた構成である。
第1ガイド部241は、支持プレート222aの一方の側面に固定され、突出側の端面が下方側に向かうに従って徐々に前方へと突出する湾曲面243を有する。湾曲面243の先端部分は平坦な押圧受面244で構成されている。
第2ガイド部242は、第1ガイド部241の下部に位置するように支持プレート222aに固定され、自由端側には貫通孔が形成されている。この貫通孔には、チューブコネクタ245が接続され、このチューブコネクタ245に排出チューブ221が接続されている。また、第2ガイド部242には、患者用ボトル6を検出するための検出センサ(図示せず)が設けられている。これにより、後述する昇降機構312を駆動し、載置プレート311に載置した患者用ボトル6を上昇させると、その位置を検出できるようになっている。
また、ガイド部材222は、第2ガイド部242に対して回動可能に取り付けられるリンクプレート246と、このリンクプレート246に固定された第1押圧部材223とを備える。
リンクプレート246には、第2ガイド部242に対する軸着部(図示せず)と反対側に押圧受部248が形成されている。また、リンクプレート246には、押圧受用ローラ249が回転可能に設けられている。そして、このリンクプレート246は、スプリング250によって図5中反時計回りに付勢されている。
第1押圧部材223は、リンクプレート246の押圧受用ローラ249の下部に固定されている。第1押圧部材223は、一端側が断面半円状に膨出する押圧突条251で構成されている。第1押圧部材223は、リンクプレート246がスプリング250の付勢力によって回動することにより、その押圧突条251が第1ガイド部241の押圧受面244に圧接される。この結果、その間に配置された排出チューブ221が押し潰されて弾性変形し、その流路が閉鎖される。
環状支持体167の注出位置には、移動部材253によって移動し、薬液ボトル2から注出する薬液の流出量を調整するための第2押圧部材254を配置可能となっている。
移動部材253は、図10に示すように、スライド用モータ255の駆動により前進および後退可能なスライド台256を備える。スライド台256の側方にはラック257が形成され、このラック257にはスライド用モータ255の回転軸に設けたピニオン(図示せず)が噛合している。スライド台256の移動はスライド位置検出センサ258によって検出され、第2押圧部材254を前進位置と後退位置にそれぞれ位置決め可能となっている。
また、スライド台256の上方には、図11に示すように、後述する回転用モータ270を保持する保持ブロック259が設けられている。保持ブロック259の上方側には、エア供給管260と、そこに接続されたノズル部261とが設けられている。エア供給管260は、図12に示すように、エア供給源262に接続され、そこから供給された空気をノズル部261から噴出させる。ノズル部261は、栓体219の端面に形成したガイド凹部238に挿入されて貫通孔237aに接続される。したがって、噴出された空気は、貫通孔237aを介してエアチューブ220から薬液ボトル2内に供給される。
エア供給源262にはコンプレッサが使用され、ノズル部261に至る経路の途中には、エア供給源262側から直列接続されるスイッチバルブ263とニードルバルブ264の4組が並列に接続され、その先には開閉バルブ265と圧力センサ266とが接続されている。4つのスイッチバルブ263のうちのいずれかが開放し、1つの流路でのみ空気が流動可能となる。ニードルバルブ264は、通過可能な単位時間当たりの流量がそれぞれ相違している。そして、いずれか1つのスイッチバルブ263を開放することにより、薬液ボトル2内に供給する空気量を調整することができるようになっている。なお、開閉バルブ265と圧力センサ266とは設けない構成としてもよい。
第2押圧部材254は、図10および図11に示すように、スライド台256の上方に取り付けられている。第2押圧部材254は、回転用モータ270の回転軸に設けたカム271を備える。カム271の外周部には部分的に突出する押圧部272が形成されている。そして、回転用モータ270を正転駆動してカム271を正転させると、押圧部272がリンクプレート246の押圧受用ローラ249に圧接し、リンクプレート246を図5中時計回り方向(非付勢方向)に回動させる。これにより、リンクプレート246に一体化した第1押圧部材223を回動させ、その押圧突条251による排出チューブ221の押圧を一時的に解除する。また、カム271には、回転可能な押圧用ローラ273が設けられている。そして、回転用モータ270を逆転駆動してカム271を逆回転させると、押圧用ローラ273が排出チューブ221に圧接する。そして、その圧接位置を変化させながら転動することにより、排出チューブ221内の薬液を所定量ずつ送り出す。
(1−5.薬液注出部5)
薬液注出部5は、注出された薬液が充填される患者用ボトル6を載置するためのボトル載置部300を備える。このボトル載置部300は、図13および図14に示すように、昇降台310に載置される載置プレート311を備える。昇降台310は、昇降機構312によって昇降する昇降アーム313の先端に、ロードセル314を介して支持されている。昇降機構312は、昇降モータ315の駆動によりプーリ316およびベルト317を介して昇降用ボールネジ318を回転させることにより、昇降用ボールネジ318の両側に設けたガイド軸319に沿って昇降アーム313を昇降させるように構成されている。昇降アーム313の昇降位置は、エンコーダ(図示せず)を利用して特定できるようになっている。ロードセル314は、昇降台310と、そこに載置される載置プレート311および患者用ボトル6の重量を検出する。
昇降台310は、台座部320の上方に開閉可能な一対の挟持片321を備える。台座部320は、一端側上面に平面視矩形状の係止凹部(図示せず)を形成されている。係止凹部には、載置プレート311が載置された際、その下面に設けた係止突部(図示せず)が係止する。これにより、載置プレート311の位置ずれが防止される。
各挟持片321は、接離可能に対向し、対向部分が基部から先端に向かって徐々に離れた後、再度接近するような形状をしており、その中間の患者用ボトル6を挟持する部分は所定角度をなす一対のテーパ面で構成されている。また、各挟持片321は、台座部320内に設けた2本のガイド棒322によって台座部320にスライド可能に支持されている。各挟持片321からは台座部320内にガイドプレート323がそれぞれ延び、その対向縁に形成した各ラックには連動ギア324が噛合している。各挟持片321はスプリング(図示せず)の付勢力により接近する方向に付勢されている。連動ギア324は、挟持モータ325(図19参照)の駆動により回転し、ガイドプレート323を介して挟持片321を同期して接離させる。但し、挟持片321の接近は、所定位置までであり、その後は、モータ325側との連結が遮断され、スプリングの付勢力のみで患者用ボトル6を挟持する。
載置プレート311は、平面視矩形状の板材からなり、一端側上面には患者用ボトル6を載置するための凹部311aが形成されている。載置プレート311は、昇降台310が最下位置に位置するとき、分注空間164を構成する底面部分に設けた支持台(図示せず)に当接し、昇降台310から浮き上がる。この状態であれば、載置プレート311に患者用ボトル6等を載置しても、ロードセル314に力が作用することはない。この場合、挟持片321も、支持台で支持するようにすれば、挟持片321に患者用ボトル6等を載置しても、ロードセル314に力が作用することがない。つまり、不必要に重量が検出されることがなくなり、また、ロードセル314の故障の原因を排除することができる。
(1−6.希釈水注入部7)
希釈水注入部7は、図15に示すように、装置本体1の仕切板166の下方側に設けた希釈水タンク(図示せず)に収容された希釈水を、患者用ボトル6に注入する。希釈水注入部7は、注入チューブ74と、揺動支持部75と、揺動支持部75に支軸76aを中心として回動可能に設けた回動アーム76とを備える。注入チューブ74は、一端部が希釈水タンクに挿入され、揺動支持部75から回動アーム76を通過して他端部が回動アーム76の先端下面の注入口76bに位置されている。揺動支持部75には、排出チューブポンプ77と回動モータ78とが設けられている。排出チューブポンプ77は、注入チューブ74に作用し、希釈水タンク内に収容した希釈水を、回動アーム76の先端側の注入口76bから吐出させる。回動モータ78は、駆動によりギア78a,78bを介して回動アーム76を回動させる。回動アーム76の回動範囲は回動センサ76cによって検出され、注水位置と退避位置とに位置決めされるようになっている。回動アーム76の先端側には、注入チューブ74に圧接して通過する希釈水の流れを遮断可能なピンチバルブ79が設けられている。なお、ピンチバルブ79は、駆動モータとカム(ともに図示せず)によって開閉が制御されるようになっている。
(1−7.ノズル洗浄部8)
ノズル洗浄部8は、第1押圧部材223によって閉鎖した排出チューブ221の先端部分を洗浄する。ノズル洗浄部8は、図16に示すように、装置本体1内に設けた支持プレート150に昇降可能に取り付けられる洗浄皿80を備える。洗浄皿80は、略逆円錐形状で、底面中央部には廃水口81が形成され、そこには廃液回収タンク(図示せず)に延びる廃水チューブ82が接続されている。また、洗浄皿80には、廃水口81の周囲2箇所に形成した貫通孔80a,80bを介して洗浄ノズル83およびエア供給ノズル84がそれぞれ接続されている。支持プレート150には、上下動用モータ85、洗浄チューブポンプ86、および、コンプレッサ87が取り付けられている。上下動用モータ85の回転軸にはカム85aが一体化され、このカム85aを介して洗浄皿80が昇降可能となっている。洗浄チューブポンプ86は、一端部を洗浄水タンク(図示せず)に挿入されたチューブ86aに作用して、洗浄水タンク内に収容した洗浄水を、チューブ86aを介して洗浄ノズル83から噴出させる。コンプレッサ87は、チューブ87aを介してエア供給ノズル84から空気を噴出させる。
(1−8.冷却部9)
このように構成した分注装置には、図3に示すように、ボトル支持部3を構成する複数の回動支持部168のうち対向する2箇所の回動支持部168を覆うように、薬液ボトル2に収容した薬液を冷却するための冷却部9が設けられている。この冷却部9は、図4および図5に示すように、回動支持部168による傾倒方向の側部を開口した外装体350と、この外装体350の開口を開放可能に閉塞する蓋体351と、これら外装体350と蓋体351で囲まれた内部の冷却空間352を冷却する冷却装置353とを備えている。
外装体350は、環状支持体167に固定するための脚部354と、脚部354の上部に固定された底壁355と、この底壁355の上部に固定された外周壁356と、この外周壁356の上部に固定された天壁357とを備える。また、外装体350は、カバー358を備えている。カバー35は、天壁357から外周壁356の背面側(環状支持体167の径方向外側)にかけた領域を覆い、外周壁356にネジで固定されている。
脚部354は、回動支持部168の上方を跨ぐように環状支持体167に固定される。この脚部354は、回動支持部168の上方に所定間隔をもって位置する連結板部359a(図18参照)の両側に、一対の側板部359bを備える。側板部359の下端には、環状支持体167に固定するための固定部359cが設けられている。
底壁355は、連結板部359aにネジ止め固定されることにより、回動支持部168の上方に所定間隔をもって位置する板状部材である。この底壁355には、回動支持部168の回動方向の端縁に矩形状をなす切欠部360が設けられている。この切欠部360の内部には、回動支持部168に装着した栓体部材218のボトル留め具227が位置する。
外周壁356は、内壁361と外壁362とを有する二重壁の間に断熱材363を配設した断熱壁構造である。内壁361には、屈曲により一対の側方内壁部361aおよび後方内壁部361bが形成されている。外壁362は、別部材からなる一対の側方外壁板364および後方外壁板365からなる。後方外壁板365の両側には、側方外壁板364およびカバー358を固定するためのブラケット部366が設けられている。このブラケット366により、その間に冷却装置353を配設するための冷却機構排気部367が形成される。また、後方外壁板365の中央上部および断熱材363には、冷却素子配設穴368が形成されている。なお、内壁361および外壁362はバイメタルにより構成し、冷却空間352が過剰冷却されると変形により隙間を生じさせて、冷気を外部に自然放出できるように構成してもよい。
天壁357は、外周壁356の上端に配設した板状部材である。この天壁357の上部には、蓋体351を開閉するための作動部369が設けられている。この作動部369は、天壁357に設けた軸穴(図示せず)と、この軸穴を通して突出させた蓋体351の回転軸390に装着したピニオン370と、このピニオン370に噛合する受動ラックギア371とを備える。受動ラックギア371は、一端側のギア部がピニオン370に噛合され、他端側が外装体350より外側に突出した状態をなす。また、受動ラックギア371は、ガイド部材372によって移動方向が規制され、スプリング373によって他端側(後述する蓋体351の閉塞側)へ付勢されている。このスプリング373による他端側への移動は、ストッパ374により停止される。また、天壁357には、電力供給用の配線(図示せず)を導入するための引込部材375が配設されるとともに、引き込んだ配線が作動部369と干渉することを防止するための区画部材376が配設されている。この区画部材376により作動部369と区画した領域に、冷却部9の冷却装置353に電力を供給する配線やコネクタが配設される。
カバー358は、天壁357を所定間隔をもって覆う上カバー部377と、後方外壁板365を所定間隔をもって覆う後カバー部378とを備える。上カバー部377には、ピニオン370を露出させるための開口部379と、受動ラックギア371の他端側を外部に突出させるための貫通部380とが設けられている。また、引込部材375を露出させるための切欠部381が設けられている。上カバー部377の前端は、冷却風導入口382を構成する。後カバー部378には、冷却装置353のヒートシンク393からの熱を外装体350の外部へ排気するために、下部に多数の貫通孔からなる吸気部383が形成され、上部に多数の貫通孔からなる排気口384が配設されている。排気口384は、装置本体1の本体排気口161と同一高さに位置する。
蓋体351は、薬液ボトル2の直径より大きい直径の半円筒形状であり、外装体350の前端の開口部に軸線を中心として開閉可能に配設されている。この蓋体351は、半円環形状をなす内壁385と、この内壁385より大径の半円環形状をなす外壁386とを有する二重壁の間に、断熱材(図示せず)を配設した断熱壁構造である。これら内壁385および外壁386の下端は、半円環状をなす底板387によって閉塞されている。この底板387の上面には断熱材388は敷設されている。また、内壁385および外壁386の上端は、円板状をなす天板389によって閉塞されている。この天板389には、中心である蓋体351の軸線に沿って突出する回転軸390が設けられている。この回転軸390は、外装体350の天壁357に回転可能に支持される。また、回転軸390の上部は、平面視D字形状をなすように外周部を軸線に沿って切り欠いた構成である。これにより、回転軸390に対してピニオン370を相対的に回転できないように装着できる。
冷却装置353は、スペーサ391と、冷却素子であるペルチェ素子392と、ヒートシンク(放熱部)393とから構成されている。図4に示すように、スペーサ391と、ペルチェ素子392と、ヒートシンク393とは、これらの順で積層され、スペーサ391が後方内壁部361bの側に配置されている。スペーサ391とペルチェ素子392は、冷却素子配設穴368内に配設されている。スペーサ391は、後方内壁部361bとペルチェ素子392との間の伝熱効率を向上させる。スペーサ391の材料としては、例えばアルミニウムなどを用いることができる。ヒートシンク393は、ペルチェ素子392の熱を放熱する。また、冷却部9には、ペルチェ素子392またはヒートシンク393に風を送り、これらの放熱を促進するための放熱用ファン394が配設されている。さらに、冷却部9には、ペルチェ素子392またはヒートシンク393の熱を吸熱したことにより昇温した排気を排気口384に導くガイド板395が配設されている。なお、冷却素子としてペルチェ素子392を用いた場合について説明したが、冷却素子は、ペルチェ素子に限定されない。
本実施形態の冷却部9には、冷却空間352で発生した結露水を冷却空間352外に導く導水部材396が設けられている。この導水部材396は、冷却空間352と、外装体350の外部(冷却空間352外)とを連通させるための貫通孔に挿入されており、冷却空間352内に位置する部分と、冷却空間352外に位置する部分とが存在する。導水部材396は、冷却空間352内に位置する部分にて結露水を吸収し、吸収した結露水を冷却空間352外に位置する部分に導く。導水部材396としては、毛細管現象を利用可能な糸または紐などを用いることができる。また、導水部材396は、PVA(ポリビニルアルコール)等の吸水性が高い材料を用いることができる。本実施形態では、導水部材396として、吸水性の高い材料の紐(排水紐)を採用する。
導水部材396の冷却空間352内に位置する部分は、冷却空間352の底部に位置される。冷却空間352で発生した結露水は、冷却空間352の底部に移動するので、冷却空間352の底部に配置することにより結露水を吸収し易い。導水部材396が挿入される貫通孔の位置としては、外周壁356の下部が好ましい。これは、導水部材396の冷却空間352内に位置する部分を冷却空間352の底部に位置させた場合、導水部材396の冷却空間352内に位置する部分と貫通孔とが同等の高さになり、冷却空間352内における導水部材396の配設が容易になるためである。
導水部材396の冷却空間352外に位置する部分の先端部は、貫通孔よりも、ヒートシンク393またはペルチェ素子392に近い位置に位置している。本実施形態では、貫通孔から導水部材396がヒートシンク393またはペルチェ素子392に向かって延びている。導水部材396の冷却空間352外に位置する部分が、ヒートシンク393またはペルチェ素子392に近い位置に位置することで、冷却空間352の冷却のために生じたヒートシンク393またはペルチェ素子392の熱を、結露水の蒸発に利用できる。また、ヒートシンク393またはペルチェ素子392の熱を効率よく結露水の蒸発に利用することのみを考慮し、ヒートシンク393またはペルチェ素子392の近くに貫通孔を設けると、冷却空間352内における導水部材396の配設が困難になる場合がある。そこで、上述の構成にすることで、ヒートシンク393またはペルチェ素子392の熱を、効率よく結露水の蒸発に利用することと、冷却空間352内における導水部材396の配設を容易とすることの両方を達成できる。
なお、本実施形態では、導水部材396の冷却空間352外に位置する部分が冷却機構排気部367に位置し、昇温した排気と一緒に外装体350の外部に蒸散できるようにしている。また、本実施形態では、導水部材396の冷却空間352外に位置する部分は、ペルチェ素子392またはヒートシンク393の放熱を促進するための放熱用ファン394からの風が当たる部分に配置されている(図4参照)。これにより、1つのファン394により、ペルチェ素子392またはヒートシンク393の放熱と、結露水の蒸発の促進に利用できる。
このように構成した冷却部9の蓋体351は、装置本体1の着脱準備位置の近傍の1箇所だけに設けた開閉駆動部400により開放され、作動部369のスプリング373の付勢力により閉塞される。この開閉駆動部400は、図3および図17に示すように、装置本体1に配設した支持プレート401と、支持プレート401に固定した支持ブロック402とを備える。支持ブロック402にはスライド用モータ403が配設され、その回転軸にピニオン404が配設されている。また、支持ブロック402には、ピニオン404に噛合する駆動ラックギア405が配設されている。この駆動ラックギア405は、一端側のギア部がピニオン404に噛合され、他端側が支持プレート401から環状支持体167の内側に向けて突出した状態をなす。また、駆動ラックギア405は、着脱準備位置に回転した冷却部9の受動ラックギア371の進退方向外側に位置し、この受動ラックギア371の進退方向に沿って進退可能に配設されている。
また、各冷却部9は、装置本体1に回転可能に配設した回転板407によって上部が支持されている。この回転板407は、装置本体1の上部に固定した取付板408に回転可能に取り付けられている。回転板407の中央には、固定された取付板408を通して供給される電力を受けて、冷却部9等に電力を分配する電源供給ユニット409が配設されている。また、回転板407の外周部には、冷却部9の引込部材375を装着する装着穴が設けられている。そして、電源供給ユニット409に接続した配線を引込部材375から引き込んで冷却装置353に供給できるように構成している。また、図18に示すように、本実施形態の回転板407の下面には一対の冷却用ファン410が配設されている。この冷却用ファン410は、各冷却部9の冷却風導入口382に風を供給することにより、蓋体351を含む外装体350を冷却する。
(1−9.制御装置10)
制御装置10は、図19に示すように、制御部88および記憶部89を備える。制御部88は、後述するように、サーバ90からLAN等を介して入力される処方データや、各センサからの入力信号に基づいて、記憶部89に記憶させたデータベースを参照して各構成部品を駆動制御する。具体的には、環状支持体167を回転させることにより薬液ボトル2を着脱準備位置に移動させて、回動支持部168を回動させることにより薬液ボトル2を内の薬液を撹拌した後、環状支持体167を回転させることにより薬液ボトル2を注出位置に移動させて、薬液ボトル2から患者用ボトル6に薬液を注出する。また、冷却部9内の薬液ボトル2の薬液を注出する際には、着脱準備位置にて開閉駆動部400により作動部369を作動させて蓋体351を開放させて薬液を撹拌した後、蓋体351を閉塞して注出位置にて薬液を注出する。そして、薬液を患者用ボトル6に注出した後には、希釈水注入部7によって薬液を希釈水で希釈し、ノズル洗浄部8によって排出チューブ221を洗浄して乾燥する等の一連の分注処理を制御する。
制御装置10は常に冷却部9を動作させ、冷却が必要な薬液を収容した薬液ボトル2を冷却している。具体的には、冷却部9には冷却空間352の温度を検知するセンサ(図示せず)が設けられ、その検出温度と予め設定した設定温度とが一致するようにフィードバック制御されている。また、制御装置10は、薬液を分注しない待機(非排出)時には、装置本体1の本体排気口161の内側部に冷却部9が位置するように、環状支持体167を回転させる。これにより、本体排気口161の内側に冷却部9の排気口384を位置させ、冷却部9で発生した熱を装置本体1内に溜めることなく、効率的に外部に排気できるようにしている。
また、前述した電源供給ユニット409は、2つの電源供給系統で構成されている。第1系統は、ボトル支持部3、回動駆動部4、薬液注出部5、希釈水注入部7およびノズル洗浄部8からなる分注装置を駆動し、第2系統は、冷却部9を駆動する。このように、電源供給系統を2つに分けることで、薬局の営業時間終了後に、分注装置の電源を落としても、冷却部9だけを駆動させ続けることができる。即ち、分注装置全体の電源を入れ続ける必要が無いため、電力消費量を低減できる。
(2.動作)
次に、前記構成からなる分注装置の動作について説明する。
まず、薬液ボトル2の口部に栓体部材218を装着する。すなわち、薬液ボトル2の口部からエアチューブ220を挿入して栓体219で覆い、口部を栓体219の凹部224内に配置する。そして、ボトル留め具227をスライドさせ、その押え部229で薬液ボトル2に栓体部材218を固定する。このように、薬液ボトル2内にエアチューブ220を挿入し、口部を栓体219で覆い、ボトル留め具227をスライド移動させるだけで、薬液ボトル2への栓体部材218の装着を簡単に行うことができる。
栓体部材218の装着後は、薬液ボトル2の外周面に貼着したバーコードをバーコードリーダで読み取る。これにより、記憶部89に記憶させたデータが参照され、該当する薬液に関する情報(薬液の名称、コード番号等。以下、薬液情報と記載する。)が呼び出され、RFID225に書き込まれる。
続いて、シャッター165をスライドさせ、着脱空間163を露出させる。シャッター165をスライドさせることにより、装置本体161の前方側のみならず側方側にも開口し、着脱空間163にアクセス容易な広い領域を確保することができる。これは、環状支持体167の上方に、回動支持部168に支持した薬液ボトル2、ロック機構186、移動部材253、第2押圧部材254等を配置し、薬液ボトル2を交換する場合にのみ、回動支持部168を回動させて薬液ボトル2を環状支持体167の下方側の着脱空間163に移動させるようにしているためである。したがって、以下の薬液ボトル2の着脱作業のほか、着脱空間163の清掃、その他メンテナンス等をスムーズに行うことができる。
そして、着脱空間163を露出させた状態で、環状支持体167の回動支持部168に薬液ボトル2を装着する。薬液ボトル2の装着では、ロック部材204を作動させて回動部171をアンロック状態とした後、回動駆動部4を動作させ(第2モータ201を駆動して第1モータ198を上昇させ)、回動支持部168の従動ギア176に、回動駆動部4の中間ギア200を噛合させる。そして、第1モータ198を駆動することにより、第1駆動ギア199を回転させ、中間ギア200を介して従動ギア176を回転させる。これにより、回動支持部168の回動部171が着脱準備位置から着脱位置へと回動する。
回動部171が着脱位置に回動すれば、栓体部材218を装着した薬液ボトル2を取り付ける。このとき、記憶部89には、これから装着しようとする薬液ボトル2に収容される薬液情報と、着脱位置に位置する回動部171の回動支持部168の取付位置IDとが関連付けて記憶される。
回動支持部168への薬液ボトル2の装着が完了すると、回動駆動部4を逆転駆動することにより、薬液ボトル2を環状支持体167の下側の着脱位置から上側の着脱準備位置へ回動させる。
一方、薬液ボトル2に収容した薬液が冷却を必要とする場合、冷却部9を配置した回動支持部168が着脱準備位置に配置されるように環状支持体167が回転される。そして、開閉駆動部400が動作されることにより作動部369が作動し、蓋体351が開放位置に回転される。そして、開閉駆動部400による蓋体351の開放状態を維持した状態で、前述と同様にして、回動支持部168が着脱準備位置から着脱位置に回動される。そして、薬液ボトル2の装着が完了すると、回動支持部168が着脱位置から着脱準備位置に回動された後、開閉駆動部400の動作を停止することにより、スプリング373の付勢力で蓋体351が閉塞位置に回転される。
このようにして、薬液ボトル2の装着作業が完了すれば、次のようにして分注処理を開始する。
まず、冷却部9によって特定の薬液ボトル2に収容された薬液を冷却しながら、処方データが入力されるまで待機する。この待機状態では、前述のように、一対の冷却部9が装置本体1の本体排気口161の内側に位置するように、環状支持体167を回転制御される。そして、冷却部9では、ペルチェ素子392に電流が通電されることにより、内面側と外面側とで大きな温度差が生じ、スペーサ391が冷やされ、ヒートシンク393が昇温される。
冷却空間352内は、スペーサ391および内壁361を介して冷却される。これにより、冷却空間352内に収容した特定の薬液ボトル2内の薬液のみ、所定温度に冷却される。また、冷却空間352内で結露水が発生した場合には、導水部材396に吸水されて冷却機構排気部367へ導かれる。そのため、冷却部9からの漏水を防ぐことができる。
一方、冷却装置353を収容した冷却機構排気部367は、ペルチェ素子392の熱をヒートシンク393に吸熱することにより昇温する。そして、その熱は、放熱用ファン394の駆動により排気口384から外装体350の外部へ排気される。この場合、この冷却装置353の熱が装置本体1内に溜まることになる。しかし、本実施形態では、待機状態で冷却部9の停止位置を装置本体1の本体排気口161の内側に位置するようにしているため、冷却装置353で発生した熱を装置本体1内に溜めることなく、効率的に外部に排気することができる。しかも、冷却機構排気部367内の熱(具体的には、冷却空間352の冷却により生じた熱)で導水部材396が吸引した水を気化させ、排気と一緒に外部に蒸散させることができる。なお、本実施形態の分注装置は、冷却装置専用の電源を備えており、他の部分(例えば薬液抽出部5)の電源が故障しても、薬液の冷却が継続できるようになっている。
このように、実施形態に係る分注装置では、冷却を必要とする薬液があっても装置本体1内全体を冷却する必要がないため、消費電力を低減できる。また、冷却部9の蓋体351を含む外周壁356は断熱壁構造であるため、冷却装置353による冷却効率を向上できる。
図20に示すように、サーバ90から処方データを受信すると(ステップS1)、その処方データに含まれる薬液(複数ある場合、最初の薬液)が充填された薬液ボトル2を特定する(ステップS2)。この場合、薬液ボトル2の特定は、予め、薬液ボトル2をボトル支持部3の各回動支持部168に装着する際、収容される薬液と、装着される回動支持部168とを互いに関連付けて記憶部89に記憶させておいたデータに基づいて行う。
薬液ボトル2が特定されれば、収容される薬液が注出する前に撹拌が必要であるか否かを判断する(ステップS3)。この判断は、薬液ボトル2に収容する薬液に関する情報(薬液情報)として予め記憶部89に記憶させたデータを使用する。撹拌が必要であると判断されれば、環状支持体167を回転させることにより、該当する薬液ボトル2が装着された回動支持部168を着脱準備位置に位置させる(ステップS4)。
次に、撹拌を要する薬液が冷却部9で冷却されている薬液であるか否かを判断する(ステップS5)。この判断は、薬液ボトル2に収容する薬液に関する情報(薬液情報)として予め記憶部89に記憶させたデータを使用する。冷却部9にて冷却されている薬液であると判断されれば、開閉駆動部400を駆動させて冷却部9の蓋体351を開放させる(ステップS6)。
その後、回動駆動部4を駆動することにより回動支持部168を回動させ、そこに装着された薬液ボトル2を着脱準備位置と着脱位置との間で移動させる(ステップS7)。ここで、薬液ボトル2の回動方向は、略同一円周上に配置された薬液ボトル2の内側、すなわち部品が配置されてないデッドスペースである。したがって、装置を大型化することなく、薬液ボトル2内の薬液を撹拌することができる。しかも、薬液ボトル2は、上下逆向きとなった着脱準備位置と、口部が上方を向いた着脱位置との間の、ほぼ180度の範囲で回動されるため、収容した薬液を十分に撹拌することができる。この場合、薬液ボトル2が着脱位置まで回動すると、エアチューブ220の先端部分が薬液内に浸漬することになる。しかし、エアチューブ220には、逆止弁239が取り付けられているため、エアチューブ220内に薬液が浸入することがない。また、逆止弁239はエアチューブ220の途中ではなく、先端に設けられているため、薬液がエアチューブ220内に残留することもなく、エアチューブ220内の薬液によって逆止弁239を開放できなくなることもない。また、たとえ逆止弁239の表面に付着した薬液が固化したとしても、薄膜が形成されるだけであり、内圧の上昇により簡単に開放させることができる。よって、薬液が薬液ボトル2から漏出して周囲を汚染したり、エアチューブ220内に残留して固化する等により、注出できなくなったりするような不具合の発生を防止することができる。
薬液ボトル2内の薬液が撹拌されれば、薬液ボトル2を着脱準備位置に位置させた状態で、回動駆動部400の駆動を停止して冷却部9の蓋体351を閉塞状態とする(ステップS8)。その後、さらに環状支持体167を回転させ、該当する薬液ボトル2を注出位置に移動させる(ステップS9)。また、載置プレート311の凹部311aに患者用ボトル6が載置されると、挟持モータ325を駆動して挟持片321を所定位置まで接近させ、その後はスプリングの付勢力を利用して患者用ボトル6を保持することにより、注出待機位置に位置決めする(ステップS10)。患者用ボトル6は載置プレート311に載置してから挟持片321で挟持するようにしているので、傾いたり、位置ずれしたりすることなく、常に同じ位置で保持することができる。
患者用ボトル6が注出待機位置に位置決めされれば、この患者用ボトル6を載置したボトル載置部300を上昇させ、その上方開口部をチューブコネクタ245の近傍に位置させる。このとき、ロードセル314で検出される重量が、予め設定した重量を超えていないか否かを判断する。例えば、患者用ボトル6が載置プレート311ではなく、挟持片321に載置されている場合等では、患者用ボトル6が第2ガイド部242以外の部材に当接し、ロードセル314に過大な荷重が作用して損傷させる恐れがある。このため、ロードセル314で検出される重量が予め設定した重量を超えれば、昇降台310の上昇を停止し、エラーを報知する。
患者用ボトル6が挟持片321によって適切に保持された状態で、ボトル載置部300が上昇することにより、第2ガイド部242に設けた検出センサによって患者用ボトル6の口部が検出されれば、昇降台310の上昇を停止する。そして、後述する薬液注出処理を開始する(ステップS11)。
薬液注出処理が完了すると、希釈水の注水が必要か否かを判断する(ステップS12)。そして、希釈水の注水が必要であると判断すれば、希釈水注入処理を開始する(ステップS13)。この希釈水注入処理では、載置プレート311を降下させて薬液ボトル2を希釈水注入位置に位置させた後、希釈水注入部7の回動アーム76を回動させ、患者用ボトル6の口部の上方に注入チューブ74の注入口76bを位置させる。そして、薬液の注出の場合と同様にして、処方データに基づいて所望量の希釈水を注水する。
適宜行う希釈水注入処理が完了すると、さらに環状支持体167を回転させ、該当する薬液ボトル2を洗浄位置に移動させ(ステップS14)、洗浄処理を開始する(ステップS15)。この洗浄処理では、洗浄チューブポンプ86を駆動して洗浄水タンク内の洗浄水を洗浄ノズル83から排出チューブ221の下端開口部に噴出させ、第1押圧部材223で閉鎖した排出チューブ221の下側を洗浄する。その後、コンプレッサ87を駆動してエア供給ノズル84を介して排出チューブ221に空気を吹き付け、付着した洗浄水を乾燥させる。なお、洗浄後の廃水は、洗浄皿80で底面中央部へと流動し、廃水口81から廃水チューブ82を介して廃水タンクへと回収される。
同様にして処方データに含まれる各薬液についての分注処理を実行し、処方データに含まれる全ての薬液についての分注処理が完了すれば、次の処方データについて同様の処理を行う。また、次の処方データが入力されていない待機状態になると、冷却部9が装置本体1の本体排気口161の内側に位置するように、環状支持体167を回転させる。
ステップS11の薬液注出処理では、図21に示すように、スライド用モータ255を駆動することによりスライド台256を前進させ、回動支持部168に対して第2押圧部材254を所定位置に位置決めする(ステップS21)。これにより、ノズル部261が栓体219のガイド凹部238に侵入し、貫通孔237aに接続される。
次いで、回転用モータ270を逆転駆動し、カム271を逆回転させ、押圧部272で押圧受用ローラ249を押圧することによりリンクプレート246を回動させる。これにより、リンクプレート246に一体化した第1押圧部材223が排出チューブ221から離間する。そして、この状態を維持することにより、排出チューブ221を介して薬液ボトル2内の薬液を連続して患者用ボトル6へと供給する(ステップS22)。患者用ボトル6への薬液の供給量は、ボトル載置部300で検出する重量に基づいて、希望する供給量(分注値)に至る前の第1設定値になるまで行う(ステップS23)。
このとき、薬液ボトル2内への空気の供給は、圧力センサ266での検出信号等に基づいて、薬液ボトル2内が一定圧力に維持されるように行ってもよいし、薬液の水位の低下に伴って吐出量が減少しないように、徐々に内圧が上昇するように行ってもよい。
患者用ボトル6への薬液の供給量が第1設定値に到達すると、回転用モータ270の停止および逆転を繰り返し行うことにより、排出チューブ221に対して第1押圧部材223を接離させる。すなわち、排出チューブ221の流路の開閉を繰り返す(ステップS24)。これにより、排出チューブ221を介して患者用ボトル6に薬液が間欠的に供給されることになる。そして、排出チューブ221の開閉動作は患者用ボトル6への薬液の供給量が第2設定値に到達するまで行う(ステップS25)。
ところで、排出チューブ221の開時間と、薬液の排出量との関係は、予めデータテーブルに記憶されている。ここでは、薬液よりも粘度の小さい水について、排出チューブ221の開時間と、薬液の排出量との関係が記憶されている。そして、このデータテーブルに従って患者用ボトル6に薬液を供給すれば、最も流れやすい水を基準としているので、患者用ボトル6から薬液が溢れることがない。但し、供給する薬液の粘度の違いに応じて、排出チューブ221の開時間と、薬液の排出量との関係を設定したデータテーブルを記憶するようにしてもよい。これによれば、患者用ボトル6への薬液の供給量を正確に所望の値とすることができる点で好ましい。
また、排出チューブ221の開閉のタイミング(開時間と閉時間の割合)は、自由に設定することができる。さらに、開閉のタイミングは、薬液の供給量が第2設定値に到達するまで自由に変更することも可能である。例えば、第2設定値に到達する直前まで開時間を長くとり、その後第2設定値に到達するまで開時間を短くする等、その設定方法は自由である。
患者用ボトル6への薬液の供給量が第2設定値に到達すると、回転用モータ270を正転駆動し、カム271を正回転させる(ステップS26)。これにより、リンクプレート246は、スプリング250の付勢力によって元の位置に復帰し、第1押圧部材223によって排出チューブ221が押圧され、流路が遮断される。そして、カム271がさらに正回転すると、これに一体化した押圧用ローラ273が回転して排出チューブ221に対して上方側から下方側に向かって圧接しながら転動する。これにより、押圧用ローラ273によって押さえられていた位置よりも下方側で排出チューブ221内に留まっていた薬液が下流側へと圧送され、一定量の薬液がチューブコネクタ245を介して患者用ボトル6へと流下する。
第2設定値よりも分注値に近付いた第3設定値に至るまでカム271の正回転動作を続行し(ステップS27)、一定量ずつ患者用ボトル6に薬液を分注する。そして、検出値が第3設定値になると、回転用モータ270への印加電圧を低下させることにより回転速度を抑制する(ステップS28)。これは、間欠的であっても比較的高速で患者用ボトル6に薬液を分注することによる検出値のばらつきを解消するためである。検出値が安定した状態で、薬液を一定量ずつ供給し、分注値に至った時点で(ステップS29)、回転用モータ270の駆動を停止させる(ステップS30)。
このように、前記実施形態に係る分注装置では、デッドスペースである薬液ボトル2で囲まれた中央部の空間を、薬液ボトル2内の薬液を撹拌する際の回動領域として有効利用している。このため、装置を大型化することなく、薬液の撹拌を行うことができる。また、薬液ボトル2自体を回動させるため、薬液の撹拌を十分に行うことができる。即ち、液体を一時的に貯留する貯留室を設ける必要はないうえ、高性能で大型のポンプを搭載する必要はない。しかも、回動駆動部4は、1箇所に設けるだけでよいので、構造が複雑化することもなく、コストアップを招来することもない。
さらに、本実施形態では、冷却部9を2箇所の回動支持部168に配設しているが、各蓋体351を開放する作動部369を作動させるための開閉駆動部400は、着脱および撹拌を行う着脱準備位置の1箇所だけに設けた構成である。よって、この点でも、部品点数を削減し、装置本体1内を簡素化できるとともに、コストダウンを図ることができる。
なお、本発明の分注装置は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
例えば、図22に示すように、冷却空間352の後方内壁部361bに、後方内壁部361bを介してペルチェ素子392によって冷却されるヒートシンク415を配設するとともに、冷却空間352内の空気を強制対流させる対流ファン416を配設してもよい。このようにすれば、冷却空間352に収容した薬液ボトル2内の薬液の冷却効率を向上できる。
また、図22に示す変形例において、ヒートシンク415の代わりに、ジェル状の保冷剤を密封した変形可能な冷却部材を配設し、この冷却部材に薬液ボトル2を接触させて直接冷却できる構成としてもよい。さらに、ヒートシンク415または冷却部材を配設することなく、対流ファン416だけを配設する構成としてもよい。
さらにまた、外装体350の開口を開放可能に閉塞する蓋体351は、回転軸390を中心とした回転による開閉に限られず、栓体部材218を装着した回動部171に着脱可能に装着し、回動部171の回動により一体的に開閉する構成としてもよい。
そして、前記実施形態では、薬液を収容した薬液ボトル2について説明したが、シロップ等の薬液以外の液体を収容した液体ボトルであっても同様に、冷却部9を採用することができる。