JP6022269B2 - タイヤの加硫方法 - Google Patents

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本発明は、空気入りタイヤの製造において生タイヤ加硫成形るタイヤの加硫方法に関する。
一般に、空気入りタイヤは、生タイヤを加硫成形することにより製造される。具体的には、生タイヤを加硫金型にセットして生タイヤを外側から加熱、加圧すると共に、生タイヤの内腔に膨張するブラダーを配して生タイヤの内側からも加熱、加圧することにより、生タイヤの加硫成形を行う。
このような加硫成形に際して、生タイヤとモールドとの間に空気が残留して、空気溜まりが発生すると、完成タイヤにベアー(傷)を生じさせてしまうため、従来は、ベントホール(排気口)が加硫金型に設けられていた。
しかし、ベントホールが設けられた加硫金型を用いて加硫成形を行うと、加硫時、ベントホールにゴムが侵入して、完成タイヤに多数のスピュー(突起)が発生する恐れがあった。
そこで、加硫金型の密閉に先立って、生タイヤとモールドとの間の空気を真空引きすることにより、加硫金型にベントホールを設ける必要がない加硫装置が提案されている(例えば、特許文献1、2)。
このような加硫装置の一例を図5に示す。図5に示すように、加硫金型31の上部プレート周りには円筒状の真空隔壁32が設けられおり、真空隔壁32が上部プレートと一体となって下降することにより、モールドユニット全体を囲う空間33が形成される。そして、この空間33を真空引きし、加硫中、負圧を掛け続けることにより、ベアーの発生を低減することができる。なお、図5において、Tは加硫金型31内に配置された生タイヤである。
特開平9−216228号公報 特開平11−207745号公報
しかしながら、上記のような加硫装置は、一般に、元々サイズが大きな加硫金型のプレスを外側から包み込んでシールしているため、開発コストや大きさの面で問題となっていた。
また、このような加硫装置は、シーリング性が十分とは言えなかったため、加硫開始から加硫終了まで負圧をかけ続けているにも拘わらず、ベアーの発生を低減する効果は十分とは言えなかった。
そこで、本発明は、上記の問題に鑑み、空気溜まりによるベアーの発生が十分に低減された製品タイヤを製造することができるタイヤの加硫方法を提供することを課題とする。
本発明に関連する第1の技術は、
モールドユニットとコンテナとを備えるタイヤの加硫装置であって、
前記コンテナに、前記コンテナ内の空気を吸引して外部に排出する排気装置が繋がれており、
さらに、前記コンテナを構成する部材間の合わせ面にシール部材が装着されていると共に、前記部材同士を固定するためのボルトにシール部材が装着されており、
前記排気装置による空気の排出と前記シール部材によるシールとにより、タイヤの加硫成形時に前記コンテナ内を所定の負圧に維持できるように構成されている
ことを特徴とするタイヤの加硫装置である。
本発明に関連する第2の技術は、
前記コンテナのセクターシューの隙間を経由して排気を行うように、前記排気装置が前記コンテナに繋がれている
ことを特徴とする第1の技術に記載のタイヤの加硫装置である。
本発明に関連する第3の技術は、
第1の技術または第2の技術に記載のタイヤの加硫装置を用いて生タイヤを加硫するタイヤの加硫方法であって、
前記生タイヤを収容した前記モールドユニットを閉状態とし、
前記排気装置を用いて、前記コンテナ内の空気を吸引して外部に排出し、
その後、前記コンテナ内を所定の負圧に維持した状態で、生タイヤを加硫する
ことを特徴とするタイヤの加硫方法である。
本発明に関連する第4の技術は、
前記生タイヤを前記モールドユニットに収容する際のシェーピング圧が、25kPa〜120kPaであることを特徴とする第3の技術に記載のタイヤの加硫方法である。
本発明に関連する第5の技術は、
前記コンテナ内の空気を吸引して外部に排出するに際して、前記排気装置を用いて、10kPa以上の負圧を5秒以上維持する
ことを特徴とする第3の技術または第4の技術に記載のタイヤの加硫方法である。
本発明は前記第1〜第5の技術に基づいてなされたものであり、請求項1に記載の発明は、
タイヤの加硫装置を用いて生タイヤを加硫するタイヤの加硫方法であって、
前記タイヤの加硫装置が、
モールドユニットとコンテナとを備えるタイヤの加硫装置であって、
前記コンテナに、前記コンテナ内の空気を吸引して外部に排出する排気装置が繋がれており、
さらに、前記コンテナを構成する部材間の合わせ面にシール部材が装着されていると共に、前記部材同士を固定するためのボルトにシール部材が装着されており、
前記排気装置による空気の排出と前記シール部材によるシールとにより、タイヤの加硫成形時に前記コンテナ内を所定の負圧に維持できるように構成されており、
前記排気装置は、真空ポンプと前記真空ポンプに接続された真空タンクと前記真空タンクに接続され真空引きの入切および前記コンテナに掛ける負圧の大きさを制御する電磁弁とを有し、
前記コンテナのセクターシューの隙間を経由して排気を行うように、前記排気装置が前記コンテナに繋がれているタイヤの加硫装置であり、
前記タイヤの加硫装置を用いて生タイヤを加硫するに際して、
前記生タイヤを収容した前記モールドユニットを閉状態とし、
前記排気装置を用いて、前記コンテナ内の空気を吸引して外部に排出し、
その後、前記コンテナ内を所定の負圧に維持した状態で、生タイヤを加硫し、
前記生タイヤを前記モールドユニットに収容する際のシェーピング圧を50kPa〜120kPaとし、
前記コンテナ内の空気を吸引して外部に排出するに際して、前記排気装置を用いて、10kPa以上の負圧を5秒以上維持する
ことを特徴とするタイヤの加硫方法である。
本発明によれば、空気溜まりによるベアーの発生が十分に低減された製品タイヤを製造することができるタイヤの加硫方法を提供することができる。
本発明の一実施の形態のタイヤの加硫装置のコンテナの要部断面図である。 本発明の一実施の形態のタイヤの加硫装置のコンテナに使用されるボルトとシール部材を説明する図である。 本発明の一実施の形態のタイヤの加硫装置に繋がれた排気装置の構成を説明する平面図である。 本発明の一実施の形態のタイヤの加硫方法のフローである。 真空引き下で加硫成形を行う従来の加硫装置の構造の一例を模式的に示す断面図である。
以下、本発明を実施の形態に基づいて説明する。
[1]加硫装置
1.コンテナ
はじめに、本実施の形態において使用するタイヤの加硫装置のコンテナについて説明する。図1は本実施の形態におけるタイヤの加硫装置のコンテナの要部断面図であり、図2は前記コンテナに使用されるボルトとシール部材を説明する図である。
図1に示すように、本実施の形態において、コンテナ2は、上部プレート7、セクターシュー9、アクチュエータ10を有する上部コンテナと、下部プレート8を有する下部コンテナとを備えている。そして、セクターシュー9に図示しないモールドユニットを取り付け、このモールドユニットに生タイヤを収容することにより、生タイヤの加硫が開始される。
アクチュエータ10はボルト(図示省略)により上部プレート7に取り付けられ、上部プレート7は上側プラテン板12Uに取り付けられている。そして、上部プレート7には、ボルトB1によりモールドユニットの上側サイドモールドが取り付けられている。
そして、下部プレート8は、ボルトB2により下側プラテン板12Lに取り付けられていると共に、ボルトB1によりモールドユニットの下側サイドモールドに取り付けられている。なお、アクチュエータ10の下側にはリング20が取り付けられている。
そして、上記した各部材の合わせ面、例えば上部プレート7の上側プラテン板12Uおよびアクチュエータ10とのそれぞれの合わせ面、リング20のアクチュエータ10および下部プレート8とのそれぞれの合わせ面には、Oリングなどのシール部材(図示省略)が配置されている。これにより、プレスを下降させて、モールドユニットを閉状態とした時には、これらのシール部材が締め付けられて各部材の合わせ面が確実にシールされる。
また、図2(a)に示すように、ボルトB1にはシーリングワッシャー21が装着され、ボルトB2にはOリング22が装着されている。このようなシーリングワッシャーやOリングのようなシール部材を装着することにより、ボルトB1およびB2を締め付けた時、ボルトを通すために設けられた貫通孔が確実にシールされる。なお、ボルトB2としては、六角傘付きのボルトを用いることが好ましい。
このように、合わせ面やボルトにOリングなどのシール部材を用いることにより、密閉性が高いコンテナとすることができるため、排気装置を用いてコンテナ内の負圧を安定して維持することができ、空気溜まりによるベアーの発生を十分に低減させることができる。
なお、上記において、上側プラテン板12Uと上部プレート7との間に、8.0mm程度のプレートを挿入すると、よりシール性を向上させることができ好ましい。このとき、下部プレート8を同じ厚みだけ切削して、プレートが挿入されても、上部プラテン板12とU下部プラテン板12Lとの間隔が一定に保たれるようにしておく。
以上のように、本実施の形態においては、従来の加硫装置のように真空隔壁を設ける場合と異なり、コンテナを十分にシールすることにより密閉性を高めているため、加硫装置を大型化することなく、コンテナ内の負圧を安定して維持することができる。また、これらのシール部材は安価であり、開発コストの増加を招くことがない。
2.排気装置
次に、排気装置について説明する。図3は本実施の形態におけるタイヤの加硫装置に繋がれた排気装置の構成を説明する平面図であり、理解し易くするため、排気装置が繋がれるコンテナ2にはセクターシュー9とアクチュエータ10のみを記載している。排気装置は、電磁弁、真空タンク、真空ポンプを備えており、排気管がアクチュエータ10に繋がれている。
コンテナ内の空気は、真空引きによりセクターシュー9の隙間を経由した後、排気管を通って外に排気される。これにより、コンテナ内が所定の負圧に保たれる。なお、図3では排気管を1箇所のみに取り付けているが複数の箇所に取り付けてもよい。例えば排気管を前後2箇所に取り付けることにより、より均一に真空引きすることができる。
真空タンクには、常時コンテナ2に掛ける負圧よりも充分に大きな負圧が掛けられており、真空引きの入・切およびコンテナに掛ける負圧の大きさは、電磁弁により制御される。これにより、コンテナに掛ける負圧の大きさをより安定させることができ、また、より迅速に真空引きをすることができる。なお、真空タンクにはコンテナの大きさなどにより適宜適切な大きさのものが用いられる。
[2]加硫方法
次に、加硫方法について説明する。図4は本実施の形態のタイヤの加硫方法のフローである。
1.生タイヤ配置工程からプレス下降工程まで
まず、加硫しようとする生タイヤをモールドユニットの下部モールドに配置する。次に、所定のシェーピング圧でブラダーと生タイヤとを密着させる。このとき、シェーピング圧は25kPa〜120kPaが好ましい。
その後、モールドユニットの上部モールド、およびコンテナのプレスを下降させ、コンテナを閉状態にする。このとき、前記のシェーピング圧は、20kPa〜200kPaとなっていることが好ましい。
2.排気工程
次に、電磁弁を開にしてバキューム(真空引き)を開始し、コンテナ内に残存する空気を吸引して外部に排出することにより、コンテナ内が所定の負圧となるようにする。好ましい負圧は10kPa以上である。この負圧を維持する時間としては、5秒以上が好ましく、15秒以上であるとより好ましい。これにより生タイヤとモールドの間に残存する空気を確実に十分に吸引して外部に排出することができると共に、コンテナ内の負圧を安定して維持することができる。
3.バキューム加硫工程からバキューム切まで
次に、この負圧を維持した状態で、ブラダーに所定温度、所定圧力の加熱加圧媒体、具体的には例えばスチームをインフレートし加硫成形を行う。バキュームは、ゴム流れが完全に終了するまで行い、その後は負圧を解放する(バキューム切)。
[3]本実施の形態の効果
1.コンテナを構成する複数の部材の合わせ面、さらにはそれらの部材同士を固定するためのボルトにまでシール部材を用いて密閉しているため、シール機能に優れ、タイヤ成形空間を安定して一定の負圧に保つことができるため、生タイヤとモールドの間に残存する空気をより確実に排気除去することができる。
2.この結果、エア溜まりによるベアーの発生を十分に低減させることができる。
3.コンテナのまま密閉可能とし、コンテナに排気装置を連結する構造としているため、小型であり、また、大幅な設計変更を行う必要がないため高額な開発費を必要としない。
以下実例により、本発明をより具体的に説明する。
1.生タイヤの加硫
(実例1〜4)
例1〜4においては、コンテナ負圧、シェーピング圧を一定にし、バキューム時間を変化させてその影響を調べた。
(1)サイズおよび加硫本数
サイズ :215/45R17 LM704(55T)
加硫本数:各実例共に100本
(2)加硫方法
真空タンクに60kPaの負圧を掛けて連続生産を行った。コンテナに掛ける負圧、バキューム時間は電磁弁により制御した。コンテナ負圧、バキューム時間、シェーピング圧は、それぞれ表1に記載の通りである。
(実例5〜8)
例5〜8においては、コンテナ負圧、バキューム時間を一定にし、シェーピング圧を変化させてその影響を調べた。コンテナ負圧、バキューム時間、シェーピング圧は、それぞれ表1に記載の通りである。なお、サイズおよび加硫本数は実例1〜4と同じにした。
(実例9〜11)
例9〜11においては、バキューム時間、シェーピング圧を一定にし、コンテナ負圧を変化させてその影響を調べた。コンテナ負圧、バキューム時間、シェーピング圧は、それぞれ表1に記載の通りである。なお、サイズおよび加硫本数は実例1〜4と同じにした。
従来例1〜3)
従来例1〜3においては、バキュームを行わずに加硫を行った。シェーピング圧は、それぞれ表1に記載の通りとした。なお、サイズおよび加硫本数は実例1〜4と同じにした。
2.評価
(1)評価方法
ベアー発生箇所数を調べた。また、発生したベアーの発生箇所の内、手直しを必要とする箇所数を調べた。
(2)評価結果
例1〜11、従来例1〜3の評価結果をまとめて表1に示す。
Figure 0006022269
表1より、バキューム加硫を行った実例1〜11は、行わなかった従来例1〜3に比べてベアー発生箇所数が低減していることが分かる。
また、実例1〜4の内では、バキューム時間が5秒(s)〜30秒(s)の実例2〜4が、ベアー発生箇所数がより少なくて、手直しを必要とするベアー発生箇所が無く、15s〜30sの実例3、4ではベアー発生箇所数がより一層少ないことが分かる。
例5〜8の内では、シェーピング圧が50kPa〜120kPaの実例6〜8が、ベアー発生箇所数がより少なくて、手直しを必要とするベアー発生箇所が無いことが分かる。
例9〜11の内では、負圧が25kPa、40kPaの実例10、11が、ベアー発生箇所数がより少なくて、手直しを必要とするベアー発生箇所が無いことが分かった。
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
2 コンテナ
7 上部プレート
8 下部プレート
9 セクターシュー
10 アクチュエータ
12U 上側プラテン板
12L 下側プラテン板
20 リング
21 シーリングワッシャー
22 Oリング
31 加硫金型
32 真空隔壁
33 内側の空間
B1、B2 ボルト
T 生タイヤ

Claims (1)

  1. タイヤの加硫装置を用いて生タイヤを加硫するタイヤの加硫方法であって、
    前記タイヤの加硫装置が、
    モールドユニットとコンテナとを備えるタイヤの加硫装置であって、
    前記コンテナに、前記コンテナ内の空気を吸引して外部に排出する排気装置が繋がれており、
    さらに、前記コンテナを構成する部材間の合わせ面にシール部材が装着されていると共に、前記部材同士を固定するためのボルトにシール部材が装着されており、
    前記排気装置による空気の排出と前記シール部材によるシールとにより、タイヤの加硫成形時に前記コンテナ内を所定の負圧に維持できるように構成されており、
    前記排気装置は、真空ポンプと前記真空ポンプに接続された真空タンクと前記真空タンクに接続され真空引きの入切および前記コンテナに掛ける負圧の大きさを制御する電磁弁とを有し、
    前記コンテナのセクターシューの隙間を経由して排気を行うように、前記排気装置が前記コンテナに繋がれているタイヤの加硫装置であり、
    前記タイヤの加硫装置を用いて生タイヤを加硫するに際して、
    前記生タイヤを収容した前記モールドユニットを閉状態とし、
    前記排気装置を用いて、前記コンテナ内の空気を吸引して外部に排出し、
    その後、前記コンテナ内を所定の負圧に維持した状態で、生タイヤを加硫し、
    前記生タイヤを前記モールドユニットに収容する際のシェーピング圧を50kPa〜120kPaとし、
    前記コンテナ内の空気を吸引して外部に排出するに際して、前記排気装置を用いて、10kPa以上の負圧を5秒以上維持する
    ことを特徴とするタイヤの加硫方法。
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