JP6021788B2 - 取鍋自然開孔率の向上方法 - Google Patents
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Description
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、取鍋のノズルに充填砂して操業を行った際に、当該取鍋の自然開孔率を100%にすることができる取鍋自然開孔率の向上方法を提供することを目的とする。
即ち、本発明における課題解決のための技術的手段は、取鍋内の溶湯を排出するノズルに充填砂を充填後、取鍋を用いて操業を行うに際し、前記取鍋に充填する充填砂として、温度が1250℃以上1350℃以下の範囲では熱間試料収縮率が1.2%以上2.5%
以下となり、且つ、温度が1450℃以上1550℃以下では冷間試料収縮率が3.0%以上10%以下となるものを使用することとした上で、式(1)を満たすように操業を実施することで取鍋の自然開孔率を向上させることを特徴とする。
ただし、
X≦220
Y≦1700
X:実鍋時間(min)、ここで、実鍋時間は、取鍋内に溶鋼が入っている時間であって、転炉内の溶鋼を受鋼し始めた時点から取鍋内の溶鋼をタンディッシュに排出し始めた時点までの時間。
Y:取鍋内の最高溶鋼温度(℃)
なお、前記充填砂の組成は、Cr 2 O 3 :33.8〜39.6(質量%)、 Fe 2 O 3 :17.8〜26.3(質量%)、SiO 2 :14.2〜24.8(質量%)、C:0.16〜0.63(質量%)、MgO:7.9〜8.6(質量%)、Al 2 O 3 :11.2〜13.2(質量%)、残部:0.19〜2.53(質量%)であり、前記熱間試料収縮率は、ホットプレス機を用い、充填砂からなるサンプルに溶鋼静圧に対応した圧力を加えると共に、サンプルを加熱部で加熱した後の熱間状態でのサンプルの収縮率(試験後のサンプル高さ÷試験前のサンプル高さ×100)であり、冷間試料収縮率は、電気炉を用いて、充填砂からなるサンプルを加熱し、その後サンプルを冷却し、冷間状態となったサンプルの収縮率(試験後のサンプル高さ÷試験前のサンプル高さ×100)のことである。
製鋼工程においては、転炉や電気炉等にて溶銑(溶湯)の一次精錬を行い、一次精錬終了後の溶鋼を取鍋に装入した後、取鍋を二次精錬設備に搬送し、二次精錬設備にて介在物の除去や成分調整等の二次精錬を行う。そして、二次精錬処理後、溶鋼は取鍋によって連続鋳造装置に搬送され、取鍋内の溶鋼は連続鋳造装置のタンディッシュに注入され、連続鋳造装置によって、スラブ等の鋳片へと鋳造される。
図1に示すように、ノズル1は取鍋2の底部3に設置され、当該ノズル1の外側(溶鋼排出側)には、スライドプレート4が設けられている。スライドプレート4は、ノズル1の溶鋼排出側に固定された第1プレート4aと、第1プレート4aの溶鋼排出側に移動自在に設けられた第2プレート4bとを備えており、第2プレート4bは図示省略の油圧シリンダ等の移動機構によって水平方向に移動する。なお、取鍋2の底部3には耐火物5が設けられている。
ここで、ノズル1内に充填した充填砂が著しく焼結しないものである場合、即ち、充填
砂の焼結特性が極端に悪い場合、溶鋼を取鍋2に装入した段階で、例えば、一部の充填砂が溶鋼によって洗い流され、図1(b)の矢印Aに示すように充填層の内部に溶鋼が差し込まれてしまう。そうすると、ノズル1の外側を開放した際に、充填砂Sの焼結層が破壊されず、溶鋼が排出できないという不具合が生じる。つまり、充填砂の焼結特性が極端に悪い場合は、図1(c)の状態にはならず、酸素等によって焼結層等を溶解して溶鋼を排出しなければならない「開孔不良」が発生したり、酸素等によって焼結層等が溶解することが実質的に不可能な「開孔不能」が発生する。
このように、充填砂によっては、開孔不良や開孔不能等が発生するため、適切な充填砂を選定することは重要なことである。発明者は、充填砂の選定について様々な角度から検証を行った。その結果、充填砂がほぼ同様な組成、粒度であっても自然開孔性の優劣が異なることを知見した。その原因として、ほぼ同様な組成、粒度であっても、充填砂に含まれる測定不可能なレベルの微量元素濃度の存在有無により充填砂の焼結特性が変化するためと考えられる。
検証の結果、発明者は、低温域での充填砂の焼結特性と、高温域での充填砂の焼結特性を評価し、その結果から適正な充填砂を選定できることを見いだした。即ち、低温域では溶鋼の洗い流しや溶鋼の差し込みが無い程度に焼結し、且つ、高温域では溶鋼静圧によって破壊される程度に焼結する充填砂を用いれば、上述した開孔不良や開孔不能等が発生しないことを見いだした。
充填砂を選定するにあたって焼結の度合い(焼結特性)を測定しなければならないが、焼結の度合い(焼結特性)を直接測定することが難しいため、まず、焼結の度合いを測定するものとして、充填砂の収縮率を測定することとした。すなわち、充填砂Sをノズル1に充填して焼結を行った場合、焼結が進行している場合は充填砂Sの収縮率は大きく、焼結が進んでいない場合には充填率Sの収縮率は小さい。つまり、充填砂の収縮率の増減は、焼結の進み具合と同等に考えられることから、充填砂の収縮率を測定することで焼結の度合い(焼結特性)を見ることとした。
低温域における熱間試料収縮率の測定では、図2に示すようなホットプレス機を採用した。このホットプレス機は、黒鉛等により形成された筒状の筒体(黒鉛型)10と、黒鉛型10の一方側を閉鎖する固定体11と、黒鉛型10の他方側を閉鎖する移動体(可動体)12と、黒鉛型10を加熱する加熱部(図示省略)を備えたものである。
て上下方向に常に0.5〜1MPaの負荷をかけながらロードセルでサンプルSの収縮率の変化を測定しつつ、約1300℃のまま2時間保持した後、サンプルSの収縮率を求めた。収縮率(%)、即ち、熱間試料収縮率(%)は、「収縮率(%)=加圧2時間保持後のサンプル高さ(ロードセルの上下位置)÷加圧前のサンプルの高さ(ロードセルの上下位置)×100」で求めた。
なお、低温域の試験では加圧を行っているが、加圧なしと比べて極めて精度良く サンプルの収縮率を測定することが可能である。加圧をしない場合は、試験後の収縮変化量が少なくて測定精度が悪化してしまう。
詳しくは、高温の試験では、サンプル量は50gとし、黒鉛坩堝はφ25mmとした。電気炉内は、Ar雰囲気下で約1500℃(10℃/min)まで加熱し、約1500℃のまま2時間保持した後、サンプルSの冷却後の収縮率(冷間試料収縮率)を求めた。
この試験結果と実際の現象とを対比・検証した場合、高温域(温度が1450℃〜1550℃)において、収縮率が3.0%未満の場合、溶鋼の差し込み等による開孔不良が多発した。高温域において、収縮率が10%を超える場合、過焼結による開孔不良が発生した。
Y≦−X+1870 ・・・(1)
ここで、式(1)を満たす操業とは、製鋼工場などにおいて、取鍋で転炉から溶鋼を受鋼してから溶鋼を排出するまでの取鍋の操業であり、例えば、脱炭処理を終了した転炉から溶鋼を受鋼後、当該取鍋を二次精錬設備に移動して二次精錬処理を実施し、二次精錬処理後に取鍋を連続鋳造装置に移動して、連続鋳造装置に到着後に取鍋内の溶鋼をタンディッシュに排出するまでの操業である。
また、式(1)に示した「Y」は取鍋内の最高溶鋼温度(℃)である。この最高溶鋼温度は、取鍋に溶鋼が装入されている状態(実鍋状態)での溶鋼の最高温度であって、例えば、溶鋼を受鋼してから溶鋼をタンディッシュに排出する区間で溶鋼の温度が最も高いときの値である。ただし、最高溶鋼温度Yの上限値は1700℃(Y≦1700)である。
に、開孔不良や開孔不能が発生することがあった。
実施例1〜13としては、低温域(1250〜1350℃)における収縮率が1.2%以上2.5%以下であり、且つ、高温域(1450〜1550℃)における収縮率が3.0%以上10%以下とされた充填砂を選定した。
比較例14〜20(比較例−1)では、低温域における収縮率は1.2%以上2.5%以下であるものの、高温域における収縮率が3.0%未満であったり10%を超えている充填砂を選定した。
次に、表2及び3に示した操業(実施例及び比較例)について説明する。
実施例及び比較例では、取鍋2に充填砂を充填後、当該取鍋2を転炉に移動させ、転炉にて脱炭処理が終了した溶鋼を受鋼した。また、溶鋼の受鋼後、取鍋を二次精錬設備(例えば、LF、CAS、RH等)に移動させて当業者常法通りに溶鋼の二次精錬処理を行った。その後、二次精錬処理の終了後、取鍋2を連続鋳造装置に移動させてタンディッシュに溶鋼を注入する作業を行った。ここで、ノズル1の外側を開放した際(スライドプレート4を閉鎖状態から開放状態にした際)に、ノズル内に酸素を吹き付ける等の強制処置を行うことなく自然に溶鋼がタンディッシュに注入した場合は、自然開孔が実施できたと判断した。
自然開孔率は、強制処置を講じなくても溶鋼がタンディッシュに注入できた割合、即ち、「自然開孔率=自然開孔の数/ノズルの外側を開放した数」で求めた。実施例及び比較例では、転炉から連続鋳造までの処理を300チャージ以上行って、自然開孔率の優劣を評価した。
2 取鍋
3 底部
4 スライドプレート
4a 第1プレート
4b 第2プレート
5 耐火物
8 ホットプレス機
10 筒体(黒鉛型)
11 固定体
12 移動体(可動体)
13 スペーサ
Claims (1)
- 取鍋内の溶湯を排出するノズルに充填砂を充填後、取鍋を用いて操業を行うに際し、
前記取鍋に充填する充填砂として、温度が1250℃以上1350℃以下の範囲では熱間試料収縮率が1.2%以上2.5%以下となり、且つ、温度が1450℃以上1550℃以下では冷間試料収縮率が3.0%以上10%以下となるものを使用することとした上で、式(1)を満たすように操業を実施することで取鍋の自然開孔率を向上する取鍋自然開孔率の向上方法。
Y≦−X+1870 ・・・(1)
ただし、
X≦220
Y≦1700
X:実鍋時間(min)、ここで、実鍋時間は、取鍋内に溶鋼が入っている時間であって、転炉内の溶鋼を受鋼し始めた時点から取鍋内の溶鋼をタンディッシュに排出し始めた時点までの時間。
Y:取鍋内の最高溶鋼温度(℃)
なお、前記充填砂の組成は、Cr 2 O 3 :33.8〜39.6(質量%)、 Fe 2 O 3 :17.8〜26.3(質量%)、SiO 2 :14.2〜24.8(質量%)、C:0.16〜0.63(質量%)、MgO:7.9〜8.6(質量%)、Al 2 O 3 :11.2〜13.2(質量%)、残部:0.19〜2.53(質量%)であり、前記熱間試料収縮率は、ホットプレス機を用い、充填砂からなるサンプルに溶鋼静圧に対応した圧力を加えると共に、サンプルを加熱部で加熱した後の熱間状態でのサンプルの収縮率(試験後のサンプル高さ÷試験前のサンプル高さ×100)であり、冷間試料収縮率は、電気炉を用いて、充填砂からなるサンプルを加熱し、その後サンプルを冷却し、冷間状態となったサンプルの収縮率(試験後のサンプル高さ÷試験前のサンプル高さ×100)のことである。
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