以下、本発明の実施の形態例を図面に基づいて詳細に説明する。
<実施の形態例1>
図1〜図3に基づき、本発明の実施の形態例1に係る予混合燃焼方式のガスタービン燃焼器について説明する。図1において、左側が上流側、右側が下流側である。
図1〜図3に示すように、本実施の形態例1の予混合燃焼方式のガスタービン燃焼器31は、燃焼器外筒(図示省略)の内側に設けられた燃焼器内筒32と、燃焼器尾筒33とを有している。
燃焼器尾筒33は内部が燃焼室34となっており、上流側端部が燃焼器内筒32の下流側端部に接続される一方、下流側端部がロータなどを備えたガスタービン本体部(図示省略)に繋がっている。
燃焼器内筒32は円筒状のものである。燃焼器内筒32の内部には、予混合燃焼を行う複数(図示例では8体)の予混合バーナ(メインバーナ)35と、拡散燃焼を行うパイロットバーナ36と、これらのバーナ35,36を支持する基板37とが設けられている。
そして更に本実施の形態例1では、燃焼器内筒32の内部に内側のガイドリング38と、外側のガイドリング39も設けられている。
基板37は円板状のものであり、外周部が燃焼器内筒32の内周面に溶接で固定されることにより、燃焼器内筒32に支持されている。基板37には多数の空気孔37aが開けられ、且つ、パイロットバーナ孔37bと、複数(図示例では8個)の予混合バーナ孔37cも設けられている。パイロットバーナ孔37bは基板37の中央部に開けられ、複数の予混合バーナ孔37cは基板37の周方向に等間隔に開けられてパイロットバーナ孔37bの周囲を囲んでいる。
パイロットバーナ36は燃焼器内筒32内の中央部(燃焼器内筒32と同軸上)に配設されており、パイロット空気スワラー筒41と、パイロットノズル42と、複数(図示例では6枚)パイロット空気スワラーベーン(パイロット空気旋回翼)45と、パイロットコーン44とを備えている。
パイロット空気スワラー筒41は円筒状のものであり、基板37のパイロットバーナ孔37bに挿入され、基板37に溶接で固定されて支持されている。パイロットノズル42は、パイロット空気スワラー筒41内の中央部(パイロット空気スワラー筒41と同軸上)に配設されている。図示は省略するが、パイロットノズル42の上流側端部は、燃焼器内筒32の上流側端部に設けられた支持部に固定されて支持されている。パイロットノズル42の下流側端部には、燃料噴射孔42aが設けられている。パイロット空気スワラーベーン45は、パイロット空気スワラー筒41の内周面とパイロットノズル42の外周面との間に介設され、パイロットノズル42の周方向に等間隔に配設されている。
パイロットコーン44は、上流側端部から下流側端部に向かうにしたがって径方向の外側へ広がった円錐台状の筒であり、前記上流側端部がパイロット空気スワラー筒41の下流側端部に溶接で接続されている。保炎器43は円環状の板であり、内周部がパイロットコーン44の下流側端部に溶接で接続され、下流側の面がバックステップ面43aとなっている。
複数の予混合バーナ35は、燃焼器内筒32の周方向に等間隔に配設されて、パイロットバーナ36の周囲を囲んでいる。これらの予混合バーナ35は何れも、予混合空気スワラー筒51と、予混合ノズル52と、複数(図示例では6枚)の予混合空気スワラーベーン(予混合空気旋回翼)53と、延長管54とを備えている。
予混合空気スワラー筒51は円筒状のものであり、上流側端部がボルト55によって燃焼器内筒32に固定され、下流側端部が基板37の予混合バーナ孔37c内に位置している。予混合ノズル52は、予混合空気スワラー筒51内の中央部(予混合空気スワラー筒51と同軸上)に配設されている。図示は省略するが、予混合ノズル52の上流側端部は、前記支持部に固定されて支持されている。予混合空気スワラーベーン53は、予混合ノズル52の外周面に溶接で固定され、予混合ノズル52の周方向に等間隔に配設されている。予混合空気スワラーベーン53には、燃料噴射孔53aが設けられている。なお、これに限定するものではなく、予混合ノズル52に燃料噴射孔を設けてもよい。
そして、本実施の形態例1では、延長管54を従来の延長管18(図30)よりも短くし、且つ、延長管54よりも下流側へ長く延ばした内側のガイドリング38と、延長管54よりも下流側へ長く延ばした外側のガイドリング39を設けている。延長管54の下流端は、保炎器43のバックステップ面43aよりも上流側に位置している。
詳述すると、延長管54は予混合バーナ孔37cを介して予混合空気スワラー筒51と連通しており、上流側が基板37の予混合バーナ孔37cに挿通されて基板37に溶接で固定されて支持されており、下流側端部54bが基板37の下流側へ延びている。延長管54は、横断面形状が、上流側端部54aでは円形状である一方、下流へ向かうにしたがって連続的に変形され、下流側端部54bでは矩形状になっている。
従来は延長管18の下流端が保炎器12のバックステップ面12aと同じ位置であるのに対して(図30)、本実施の形態例1では延長管54の下流端が保炎器43のバックステップ面43aよりも上流側に位置している。
また、延長管54の円筒状の上流側端部54aの内径が、円筒状の予混合空気スワラー筒51の下流側端部51aの外径よりも大きいため、延長管54の上流側端部54aの内周面と予混合空気スワラー筒51の下流側端部51aの外周面との間には円環状の隙間が形成されており、この隙間が空気フィルムを生成するための空気流路56になっている。
内側のガイドリング38は、延長管54よりも燃焼器内筒32の径方向の内側に位置しており、上流側端部が基板31に溶接で固定されて支持されている。また、内側のガイドリング38は、上流側端部38aから下流側端部38bに向かうにしたがって径方向の外側へ広がった円錐台状の筒である。また、内側のガイドリング38は、下流側端部38bが延長管54の下流端よりも下流側へ延びており、下流端が保炎器43のバックステップ面43aと同じ位置になっている。
外側のガイドリング39は円筒状のものであり、延長管54よりも燃焼器内筒32の径方向の外側に位置し、上流側端部39aが基板31に溶接で固定されて支持されている。また、外側のガイドリング39は、下流側端部39bが延長管54の下流端よりも下流側へ延びており、下流端が保炎器43のバックステップ面43aと同じ位置になっている。
従って、予混合空気スワラー筒51内及び延長管54内が第1次予混合領域であるのに対して、外側のガイドリング39の下流側端部39bと内側のガイドリング38の下流側端部38bとの間の空間が第2次予混合領域57となっている。この第2次予混合領域57は、延長管54に連通し、且つ、燃焼器内筒32の周方向(ガイドリング38,39の周方向)の全体に亘って連続した円環状の空間(アニュラ型流路)となっている。換言すれば、第1次予混合領域(予混合空気スワラー筒51内及び延長管54内)が予混合バーナ35ごとに個別の予混合領域であるのに対して、第2次予混合領域57は全ての予混合バーナ35に共通の予混合領域となっている。また、第2次予混合領域57は、その幅(燃焼器内筒32の径方向の幅)が、下流側に向かうにしたがって狭くなっている。
次に、この予混合燃焼方式のガスタービン燃焼器31の運転について説明する。
ガスタービン燃焼器31に対して、圧縮機(図示省略)で圧縮された空気aは、燃焼器外筒と燃焼器内筒32との間の空気流路(図示省略)から、燃焼器内筒32の上流側端部の空気孔(図示省略)を通って燃焼器内筒32内へ流入した後、パイロットバーナ36のパイロット空気スワラー筒41内と、予混合バーナ35の予混合空気スワラー筒51内と、空気流路56内と、基板37の空気孔37aとに供給され、燃料供給系統(図示省略)から送られてきた燃料fは、パイロットノズル42内と予混合ノズル52内とに供給される。
パイロットバーナ36では、パイロット空気スワラー筒41内に供給された空気aが、パイロット空気スワラー筒41内を流通する間にパイロット空気スワラーベーン45によって旋回流となり、パイロットコーン44内へ噴射される一方、パイロットノズル42内に供給された燃料fが、パイロットノズル42内を流通し、パイロットノズル42の燃料噴射孔42aから、パイロットコーン44内へ噴射される。従って、これらの空気aと燃料fがパイロットコーン44内で混合され、この混合気が着火装置(図示省略)によって着火されることにより、パイロットコーン44内及び燃焼室34において拡散燃焼が行われる(拡散炎が生成される)。
予混合バーナ35では、予混合空気スワラー筒51内に供給された空気aが、予混合空気スワラー筒51内を流通する間に予混合空気スワラーベーン53によって旋回流となる一方、予混合ノズル52内に供給された燃料fが、予混合ノズル52内及び予混合空気スワラーベーン53内を流通して予混合空気スワラーベーン53の燃料噴射孔53aから、或いは予混合ノズル52の燃料噴射孔から、予混合空気スワラー筒51内に噴射される。従って、これらの空気aと燃料fが、第1次予混合領域(予混合空気スワラー筒51内及び延長管54内)において予混合され、この予混合気が第2次予混合領域57に流入する。
一方、空気流路56内に供給された空気aは、空気流路56内を流通してフィルム状となり、この空気フィルムが延長管54の内周面に沿って流れることにより、この内周面近傍で逆火の発生を防止する。
また、基板37の空気孔37aに供給された空気aは、空気孔37aを通って基板空気となり、この基板空気が、焼器内筒32の周方向において隣接(以下、単に隣接と称する)する延長管54の間の領域など、延長管54の周囲に流れる。このため、燃焼室34で生成された高温の燃焼ガスが、基板37の近傍の低流速域や逆流領域に巻き込まれるのを、基板空気によって防止することができる。
延長管54を設置することによって、基板37の低流速域や逆流領域が小さくなるが、延長管54の設置では除去しきれない低流速域や逆流領域については、基板空気を流すことにより、その燃料濃度を可燃限界以下、或いは、それに近い燃料濃度とすることができるため、万一、逆火が発生しても、ここに火炎が存在するのを防止するとができる。
そして、第2次予混合領域57では、第1次予混合領域(延長管54)から流出されて第2次予混合領域57へ流入した予混合気と、第1次予混合領域(延長管54)から流出されて第2次予混合領域57へ流入した空気フィルムと、隣接する延長管54の間の領域に流れる基板空気とが、よく混合される。
詳述すると、予混合バーナ35では何れも、予混合空気スワラーベーン53によって空気aが同方向に旋回する。このため、第2次予混合領域57には図2に矢印P1で示すように前記同方向(図示例では反時計回り方向)に旋回した予混合気が流入する。そして、第2次予混合領域57では、これらの予混合気の旋回流が合体することにより、第2次予混合領域57の全周に亘る大きな予混合気の旋回流となる。この大きな旋回流は第2次予混合領域57の内周側と外周側で逆旋回となる。このため、第2次予混合領域57では、予混合気と空気フィルムと基板空気の流動の乱れが大きくなり、予混合気と空気フィルムと基板空気の混合が促進される。
更には、第2次予混合領域57において、隣接する予混合バーナ35(延長管54)の間の領域(例えば図2のQ1領域)では、旋回方向が互いに逆方向になり、予混合気と空気フィルムと基板空気に対してせん断力が生じるため、予混合気と空気フィルムと基板空気の混合が更に促進される。
また、予混合空気スワラー筒51及び延長管54では予混合気の旋回流の中心部に低流速域が存在するが、第2次予混合領域57において前記低流速域を消滅させることができる。このため、前記低流速域で逆火が発生するのを防止することができる。
また、従来の延長管18の周長に比べて、第2次予混合領域57は、その周長(即ち内側のガイドリング38の周長と外側のガイドリング39の周長とを加えた長さ)が短いため、内周面近傍の低流速域が少なく、前記低流速域に逆火が生じる可能性が低下する。
また、第2次予混合領域57は上流側よりも下流側の方が幅が狭くなっており、第2次予混合領域57の出口に向かって予混合気が増速するため、境界層を薄くする、或いは、壁面(内側及び外側のガイドリング38,39の内周面)近傍の燃料濃度を薄くことができる。このため、前記壁面近傍で逆火が発生するのを防止することができる。
第2次予混合領域57において生成された予混合気(前述の予混合気と空気フィルムと基板空気とがよく混合されて生成された予混合気)は、第2次予混合領域57から流出して燃焼室34へ流入する。燃焼室34では、パイロットバーナ36で生成された拡散炎が火種として利用されることにより、前記予混合気が着火されて予混合燃焼が行われる。
保炎器43では、バックステップ面43aにおいて、第2次予混合領域57から流出した予混合気の一部やパイロットコーン44から流出した混合気の一部に対して矢印R1のような逆流や減速を生じさせることにより、確実に拡散炎を火種とする予混合燃焼を維持することができる。
以上のように、本実施の形態例1のガスタービン燃焼器31によれば、パイロットバーナ36と、予混合空気スワラー筒51内に予混合ノズル52と予混合空気スワラーベーン53が設けられ、パイロットバーナ36の周囲を囲むように配設された複数の予混合バーナ35と、パイロットバーナ孔37bとパイロットバーナ孔37bの周囲を囲むように配設された複数の予混合バーナ孔37cとが設けられ、パイロットバーナ36と予混合バーナ35を支持する基板37と、予混合バーナ孔37cを介して予混合空気スワラー筒51に連通し、基板37の下流側へ延びた延長管54とが、燃焼器内筒32内に設けられており、予混合空気スワラー筒51内及び延長管54内が、第1次予混合領域であり、予混合空気スワラー筒51と延長管54との間に形成した空気流路56から延長管54の内周面へ空気フィルムを流す構成と、基板37に設けた空気孔37aから隣接する延長管54の間の領域へ基板空気を流す構成とを有するガスタービン燃焼器31において、延長管54の外側に位置して下流側端部39bが延長管54の下流端よりも下流側へ延びている外側のガイドリング39と、延長管54の内側に位置して下流側端部が延長管54の下流端よりも下流側へ延びている内側のガイドリング38とを有しており、前記外側のガイドリング39の下流側端部と内側のガイドリング38の下流側端部との間の空間が、延長管54に連通し且つ周方向全体に亘って連続した円環状の第2次予混合領域57であることを特徴としているため、第2次予混合領域57において、予混合気と、空気フィルム及び基板空気とが、よく混合される。このため、予混合気の燃料濃度が均一な状態で予混合燃焼が行われる。
また、従来の延長管18の周長に比べて、第2次予混合領域57は、その周長が短いため、内周面近傍の低流速域が少なく、前記低流速域に逆火が生じる可能性が低下する。
更には、予混合空気スワラー筒51及び延長管54では予混合気の旋回流の中心部に低流速域が存在するが、第2次予混合領域57において前記低流速域を消滅させることができるため、前記低流速域で逆火が発生するのを防止することもできる。
また、本実施の形態例1のガスタービン燃焼器31によれば、第2次予混合領域57の幅が、下流側に向かうにしたがって狭くなっていることを特徴としていることから、第2次予混合領域57の出口に向かって予混合気を増速させて、境界層を薄くし、或いは、壁面近傍の燃料濃度を薄くことができるため、前記壁面近傍で逆火が発生するのを防止することができる。
なお、上記では外側のガイドリング39を設けているが、必ずしもこれに限定するものではなく、外側のガイドリング39に代えて、燃焼器内筒32の下流側部分を外側のガイドリングとして利用することもできる。
燃焼器内筒32の下流端側部分を外側のガイドリングとして利用した場合には、燃焼器内筒32を有効利用して、低コストで第2次予混合領域57を設けることができる。
<実施の形態例2>
図4及び図5に基づき、本発明の実施の形態例2に係る予混合燃焼方式のガスタービン燃焼器について説明する。なお、図4及び図5において、上記実施の形態例1(図1〜図3)と同様の部分については同一の符号を付し、重複する詳細な説明は省略する。
図4及び図5に示すように、本実施の形態例2のガスタービン燃焼器61では、延長管54を、上記実施の形態例1の場合よりも下流側に長く延ばしている。即ち、延長管54を従来の延長管18(図30)と同じ長さにしている。一方、本実施の形態例2のガスタービン燃焼器61では、内側のガイドリング38及び外側のガイドリング39を、上記実施の形態例1の場合よりも下流側に長く延ばすことにより、延長管54よりも下流側へ長く延ばしている。
このため、上記実施の形態例1の場合と同様に外側のガイドリング39の下流側端部39bと内側のガイドリング38の下流側端部38bとの間の空間が、第2次予混合領域57となっている。この第2次予混合領域57も、延長管54に連通し、且つ、燃焼器内筒32の周方向(ガイドリング38,39の周方向)の全体に亘って連続した円環状の空間(アニュラ型流路)となっている。
また、パイロットコーン44も、上記実施の形態例1のパイロットコーン44に比べて下流側に長く延ばし、パイロットコーン44の下流側端部に接続されている保炎器43を、上記実施の形態例1の保炎器43よりも下流側に位置させている。従って、上記実施の形態例1の場合と同様に内側及び外側のガイドリング38,39の下流端は、保炎器43のバックステップ面43aと同じ位置になっており、延長管54の下流端は、保炎器43のバックステップ面43aよりも上流側に位置している。
本実施の形態例2のガスタービン燃焼器61におけるその他の構成については、上記実施の形態例1のガスタービン燃焼器31と同様である。また、ガスタービン燃焼器61の運転についても、上記実施の形態例1のガスタービン燃焼器31と同様である。
従って、本実施の形態例2のガスタービン燃焼器61においても、上記実施の形態例1のガスタービン燃焼器31と同様の作用効果が得られる。
なお、本実施の形態例2においても、外側のガイドリング39に代えて、燃焼器内筒32の下流側部分を外側のガイドリングとして利用してもよい。
<実施の形態例3>
図6〜図10に基づき、本発明の実施の形態例3に係る予混合燃焼方式のガスタービン燃焼器について説明する。なお、図6及び図7において、上記実施の形態例1(図1,図2)と同様の部分については同一の符号を付し、重複する詳細な説明は省略する。
図6〜図10示すように、本実施の形態例3のガスタービン燃焼器71では、上記実施の形態例1(図1,図2)のガスタービン燃焼器31における延長管54及びガイドリング38,39に代えて、基板37の低流速域や逆流領域を埋めるために3次元形状の物体である外側の詰め物72及び内側の詰め物73を備えている。
また、本実施の形態例3のガスタービン燃焼器71は、上記実施の形態例1(図1)のガスタービン燃焼器31における延長管54の上流側端部54aに代えて、空気フィルムを生成するために流路用円筒74を備えている。
流路用円筒74は、基板37の予混合バーナ孔37cに挿通されて基板37に溶接で固定されて支持されており、基板37の上流側へ突出している。流路用円筒74の内径が、円筒状の予混合空気スワラー筒51の下流側端部51aの外径よりも大きいため、流路用円筒74の内周面と予混合空気スワラー筒51の下流側端部51aの外周面との間には円環状の隙間が形成され、この隙間が空気フィルムを生成するための空気流路76になっている。
外側の詰め物72は、基板37の下流側の面37dにおいて、隣接する予混合バーナ孔37c(予混合バーナ35)の間における外側(即ち燃焼器内筒32の径方向の外側)の領域(三角地帯)37eに溶接で固定されている(図8,図9)。即ち、外側の詰め物72は、外側の領域(三角地帯)37eを埋めている。
内側の詰め物73は、基板37の下流側の面37dにおいて、隣接する予混合バーナ孔37c(予混合バーナ35)の間における内側(即ち前記径方向の内側)の領域(三角地帯)37fに溶接で固定されている(図8,図9)。即ち、内側の詰め物72は、内側の領域(三角地帯)37fを埋めている。
外側の詰め物72と内側の詰め物73は、前記径方向において、間が離れている。
外側の詰め物72は三角錐状の物であり、上流側の端面72bが前記外側の領域(三角地帯)37eを覆い(埋め)、下流側の先端72aに向かうにしたがって細くなっている。
詳述すると、外側の詰め物72の上流側の端面72bは、燃焼器内筒32の周方向に沿って湾曲した辺72cと、隣接する予混合バーナ孔37cのうちの一方の予混合バーナ孔37cの周方向に沿って湾曲した辺72dと、前記隣接する予混合バーナ孔37cのうちの他方の予混合バーナ孔37cの周方向に沿って湾曲した辺72eとから成る三角形状の面である。
外側の詰め物72の外側の面72fは、燃焼器内筒32の軸方向に延びており、辺72cと、端面72bにおける外側の2つの角72g,72hのそれぞれから先端72aへ延びた両側の辺72i及び辺72jとから成る三角形状の面である。
外側の詰め物72の一方の側面72kは、辺72dと、辺72iと、端面72bにおける内側の角72mから先端72aへ延びた辺72nとから成る三角形状の面である。辺72nは、湾曲した状態で燃焼器内筒32の径方向の外側に傾斜した稜線のようになっている。
外側の詰め物72の他方の側面72oは、辺72eと、辺72jと、辺72nとから成る三角形状の面である。
内側の詰め物73は三角錐状の物であり、上流側の端面73bが前記内側の領域(三角地帯)37fを覆い(埋め)、下流側の先端73aに向かうにしたがって細くなっている。
詳述すると、内側の詰め物73の上流側の端面73bは、燃焼器内筒32の周方向に沿って湾曲した辺73cと、隣接する予混合バーナ孔37cのうちの一方の予混合バーナ孔37cの周方向に沿って湾曲した辺73dと、前記隣接する予混合バーナ孔37cのうちの他方の予混合バーナ孔37cの周方向に沿って湾曲した辺73eとから成る三角形状の面である。
内側の詰め物73の内側の面73fは、燃焼器内筒32の軸方向に延びており、辺73cと、端面73bにおける内側の2つの角73g,73hのそれぞれから先端73aへ延びた両側の辺73i及び辺73jとから成る三角形状の面である。
内側の詰め物73の一方の側面73kは、辺73dと、辺73iと、端面73bにおける外側の角72mから先端72aへ延びた辺73nとから成る三角形状の面である。辺73nが、湾曲し且つ燃焼器内筒32の径方向の内側に傾斜して稜線のようになっている。
内側の詰め物73の他方の側面73oは、辺73eと、辺73jと、辺73nとから成る三角形状の面である。
そして、本実施の形態例3では、予混合空気スワラー筒51内が第1次予混合領域であるのに対して、外側の詰め物72と内側の詰め物73との間の空間が第2次予混合領域75となっている。この第2次予混合領域75は、予混合空気スワラー筒51に連通し、且つ、燃焼器内筒32の周方向全体に亘って連続した円環状の空間となっている。換言すれば、第1次予混合領域(予混合空気スワラー筒51内)が予混合バーナ35ごとに個別の予混合領域であるのに対して、第2次予混合領域75は全ての予混合バーナ35に共通の予混合領域となっている。
また、隣接する予混合バーナ孔37cの間の領域37e,37fを詰め物72,73で埋めているため、この領域37e,37fには空気孔37aが設けられていない。空気孔37aは、基板37の外周側と内周側にだけ設けられている。
本実施の形態例3のガスタービン燃焼器71におけるその他の構成については、上記実施の形態例1のガスタービン燃焼器31と同様である。
次に、この予混合燃焼方式のガスタービン燃焼器71の運転について説明する。
ガスタービン燃焼器71に対して、圧縮機(図示省略)で圧縮された空気aは、燃焼器外筒と燃焼器内筒32との間の空気流路(図示省略)から、燃焼器内筒32の上流側端部の空気孔(図示省略)を通って燃焼器内筒32内へ流入した後、パイロットバーナ36のパイロット空気スワラー筒41内と、予混合バーナ35の予混合空気スワラー筒51内と、空気流路76内と、基板37の空気孔37aとに供給され、燃料供給系統(図示省略)から送られてきた燃料fは、パイロットノズル42内と予混合ノズル52内とに供給される。
パイロットバーナ36では、パイロット空気スワラー筒41内に供給された空気aが、パイロット空気スワラー筒41内を流通する間にパイロット空気スワラーベーン45によって旋回流となり、パイロットコーン44内へ噴射される一方、パイロットノズル42内に供給された燃料fが、パイロットノズル42内を流通し、パイロットノズル42の燃料噴射孔42aから、パイロットコーン44内へ噴射される。従って、これらの空気aと燃料fがパイロットコーン44内で混合され、この混合気が着火装置(図示省略)によって着火されることにより、パイロットコーン44内及び燃焼室34において拡散燃焼が行われる(拡散炎が生成される)。
予混合バーナ35では、予混合空気スワラー筒51内に供給された空気aが、予混合空気スワラー筒51内を流通する間に予混合空気スワラーベーン53によって旋回流となる一方、予混合ノズル52内に供給された燃料fが、予混合ノズル52内及び予混合空気スワラーベーン53内を流通して予混合空気スワラーベーン53の燃料噴射孔53aから、或いは予混合ノズル52の燃料噴射孔から、予混合空気スワラー筒51内に噴射される。従って、これらの空気aと燃料fが、第1次予混合領域(予混合空気スワラー筒51内)において予混合され、この予混合気が第2次予混合領域75に流入する。
一方、空気流路76内に供給された空気aは、空気流路56内を流通してフィルム状となり、この空気フィルムが、外側の詰め物72の表面(側面72k,72o)及び内側の詰め物73の表面(側面73k,73o)に沿って流れることにより、この表面近傍で逆火の発生を防止することができる。
また、基板37の空気孔37aに供給された空気aは、空気孔37aを通って基板空気となり、基板37の外周側や内周側に流れる。このため、燃焼室34で生成された高温の燃焼ガスが、基板37の近傍の低流速域や逆流領域に巻き込まれるのを、基板空気によって防止することができる。
そして、第2次予混合領域75では、第1次予混合領域(予混合空気スワラー筒51)から流出されて第2次予混合領域75へ流入した予混合気と、空気流路76から流出されて第2次予混合領域75へ流入した空気フィルムとが、よく混合される。
詳述すると、予混合バーナ35では何れも、予混合空気スワラーベーン53によって空気aが同方向に旋回する。このため、第2次予混合領域75には図7に矢印P2で示すように前記同方向(図示例では反時計回り方向)に旋回した予混合気が流入する。そして、第2次予混合領域75では、これらの予混合気の旋回流が合体することにより、第2次予混合領域75の全周に亘る大きな予混合気の旋回流となる。この大きな旋回流は第2次予混合領域75の内周側と外周側で逆旋回となる。このため、第2次予混合領域75では、予混合気と空気フィルムの流動の乱れが大きくなり、予混合気と空気フィルムの混合が促進される。
更には、第2次予混合領域75において、隣接する予混合バーナ35の間の領域(例えば図7のQ2領域)では、旋回方向が互いに逆方向になり、予混合気と空気フィルムに対してせん断力が生じるため、予混合気と空気フィルムの混合が更に促進される。
また、予混合空気スワラー筒51では予混合気の旋回流の中心部に低流速域が存在するが、第2次予混合領域75において前記低流速域を消滅させることができる。このため、前記低流速域で逆火が発生するのを防止することができる。
また、第2次予混合領域75を構成する外側の詰め物72及び内側の詰め物73は、下流側の先端72a,73aに向かうにしたがって細くなっているため、表面近傍の低流速域が少なく、前記低流速域に逆火が生じる可能性が低下する。
第2次予混合領域75において生成された予混合気(前述の予混合気と空気フィルムとがよく混合されて生成された予混合気)は、第2次予混合領域75から流出して燃焼室34へ流入する。燃焼室34では、パイロットバーナ36で生成された拡散炎が火種として利用されることにより、前記予混合気が着火されて予混合燃焼が行われる。
保炎器43では、バックステップ面43aにおいて、第2次予混合領域75から流出した予混合気の一部やパイロットコーン44から流出した混合気の一部に対して矢印R2のような逆流や減速を生じさせることにより、確実に拡散炎を火種とする予混合燃焼を維持することができる。
以上のように、本実施の形態例3のガスタービン燃焼器71によれば、パイロットバーナ36と、予混合空気スワラー筒51内に予混合ノズル52と予混合空気スワラーベーン53が設けられ、パイロットバーナ36の周囲を囲むように配設された複数の予混合バーナ35と、パイロットバーナ孔37bとパイロットバーナ孔37bの周囲を囲むように配設された複数の予混合バーナ孔37cとが設けられ、パイロットバーナ36と予混合バーナ35を支持する基板37とが、燃焼器内筒32内に設けられており、予混合空気スワラー筒51内が、第1次予混合領域であり、予混合空気スワラー筒51と流路用円筒74との間に形成した空気流路76から、空気フィルムを流す構成を有するガスタービン燃焼器71において、基板37の下流側の面37dにおいて隣接する予混合バーナ孔37cの間における外側の領域37eを上流側の端面72bが埋め且つ下流側の先端72aに向かうにしたがって細くなっている外側の詰め物72と、基板37の下流側の面37dにおいて隣接する予混合バーナ孔37cの間における内側の領域37fを上流側の端面73bが埋め且つ下流側の先端73aに向かうにしたがって細くなっている内側の詰め物73とを有しており、外側の詰め物72と内側の詰め物73との間の空間が、予混合バーナ孔37cを介して予混合空気スワラー筒51に連通し且つ周方向全体に亘って連続した円環状の第2次予混合領域75であることを特徴としているため、第2次予混合領域75において、予混合気と空気フィルムとが、よく混合される。このため、予混合気の燃料濃度が均一な状態で予混合燃焼が行われる。
また、従来の延長管18の周長に比べて、第2次予混合領域75は、その周長が短いため、内周面近傍の低流速域が少なく、前記低流速域に逆火が生じる可能性が低下する。
更には、予混合空気スワラー筒51では予混合気の旋回流の中心部に低流速域が存在するが、第2次予混合領域75において前記低流速域を消滅させることができるため、前記低流速域で逆火が発生するのを防止することもできる。
また、隣接する予混合バーナ孔37cの間の領域37e,37fを詰め物72,73で埋めているため、この領域には空気孔37aを設ける必要がなく、その分、基板空気の量を低減することができる。従って、その分の空気を予混合に利用することができ、予混合バーナ35全体の予混合気の燃料濃度を低下させることができる。
また、第2次予混合領域75を構成する外側の詰め物72及び内側の詰め物73は、下流側の先端72a,73aに向かうにしたがって細くなっているため、表面近傍の低流速域が少なく、前記低流速域に逆火が生じる可能性が低下する。
<実施の形態例4>
図11〜図13に基づき、本発明の実施の形態例4に係る予混合燃焼方式のガスタービン燃焼器について説明する。なお、図11及び図12において、上記実施の形態例1(図1,図2)及び実施の形態例3(図6〜図10)と同様の部分については同一の符号を付し、重複する詳細な説明は省略する。
図11〜図13に示すように、本実施の形態例4のガスタービン燃焼器81では、上記実施の形態例3(図6〜図10)のガスタービン燃焼器71における内側の詰め物73に代えて、3次元形状の物体である内側の詰め物82を有している。
内側の詰め物82は、基板37の下流側の面37dにおいて、前述の内側の領域(三角地帯)37f(図8,図9)に溶接で固定されている。即ち、内側の詰め物82は、内側の領域(三角地帯)37fを埋めている。
外側の詰め物72と内側の詰め物82は、燃焼器内筒32の径方向において、間が離れている。
内側の詰め物82は三角柱状の物であり、上流側の端面82bが前記内側の領域(三角地帯)37fを覆い(埋め)、下流側の端面82aへと延びている。そして、この下流側の端面82aが、バックステップ面となり、保炎器として機能する。
詳述すると、内側の詰め物82の上流側の端面82bは、燃焼器内筒32の周方向に沿って湾曲した辺82cと、隣接する予混合バーナ孔37cのうちの一方の予混合バーナ孔37cの周方向に沿って湾曲した辺82dと、前記隣接する予混合バーナ孔37cのうちの他方の予混合バーナ孔37cの周方向に沿って湾曲した辺82eとから成る三角形状の面である。
内側の詰め物82の下流側の端面82aは、上流側の端面82bと同一形状であり、燃焼器内筒32の周方向に沿って湾曲した辺82pと、隣接する予混合バーナ孔37cのうちの一方の予混合バーナ孔37cの周方向に沿って湾曲した辺82qと、前記隣接する予混合バーナ孔37cのうちの他方の予混合バーナ孔37cの周方向に沿って湾曲した辺82rとから成る三角形状の面である。
内側の詰め物82の内側の面82fは、燃焼器内筒32の軸方向へ延びており、辺82cと、端面82bにおける内側の2つの角82g,82hのそれぞれから前記軸方向へ延びた両側の辺82i及び辺82jと、辺82pとから成る四角形状の面である。
内側の詰め物82の一方の側面82kは、前記軸方向へ延びており、辺82dと、辺82iと、端面823bにおける外側の角82mから前記軸方向へ延びた辺82nと、辺82qとから成る四角形状の面である。
内側の詰め物82の他方の側面82oは、前記軸方向へ延びており、辺82eと、辺82jと、辺823nと、辺81rとから成る四角形状の面である。
なお、内側の詰め物82は、上記のような形状(図13(a))に限定するものでなく、図13(b)のような形状であってもよい。図13(b)では、上流側の端面82bに比べて下流側の端面81aの高さが低くなっており、辺82nが下流に向かうしたがって内側に傾斜している。この場合にも、下流側の端面82aが、バックステップ面となり、保炎器として機能する。
そして、本実施の形態例4では、予混合空気スワラー筒51内が第1次予混合領域であるのに対して、外側の詰め物72と内側の詰め物82との間の空間が第2次予混合領域83となっている。この第2次予混合領域83は、予混合空気スワラー筒51に連通し、且つ、燃焼器内筒32の周方向全体に亘って連続した円環状の空間となっている。換言すれば、第1次予混合領域(予混合空気スワラー筒51内)が予混合バーナ35ごとに個別の予混合領域であるのに対して、第2次予混合領域83は全ての予混合バーナ35に共通の予混合領域となっている。
また、隣接する予混合バーナ孔37cの間の領域37e,37fを詰め物72,82で埋めているため、この領域37e,37fには空気孔37aが設けられていない。空気孔37aは、基板37の外周側と内周側にだけ設けられている。
本実施の形態例4のガスタービン燃焼器81におけるその他の構成については、上記実施の形態例1,3のガスタービン燃焼器31,71と同様である。
次に、この予混合燃焼方式のガスタービン燃焼器81の運転について説明する。
ガスタービン燃焼器81に対して、圧縮機(図示省略)で圧縮された空気aは、燃焼器外筒と燃焼器内筒32との間の空気流路(図示省略)から、燃焼器内筒32の上流側端部の空気孔(図示省略)を通って燃焼器内筒32内へ流入した後、パイロットバーナ36のパイロット空気スワラー筒41内と、予混合バーナ35の予混合空気スワラー筒51内と、空気流路76内と、基板37の空気孔37aとに供給され、燃料供給系統(図示省略)から送られてきた燃料fは、パイロットノズル42内と予混合ノズル52内とに供給される。
パイロットバーナ36では、パイロット空気スワラー筒41内に供給された空気aが、パイロット空気スワラー筒41内を流通する間にパイロット空気スワラーベーン45によって旋回流となり、パイロットコーン44内へ噴射される一方、パイロットノズル42内に供給された燃料fが、パイロットノズル42内を流通し、パイロットノズル42の燃料噴射孔42aから、パイロットコーン44内へ噴射される。従って、これらの空気aと燃料fがパイロットコーン44内で混合され、この混合気が着火装置(図示省略)によって着火されることにより、パイロットコーン44内及び燃焼室34において拡散燃焼が行われる(拡散炎が生成される)。
予混合バーナ35では、予混合空気スワラー筒51内に供給された空気aが、予混合空気スワラー筒51内を流通する間に予混合空気スワラーベーン53によって旋回流となる一方、予混合ノズル52内に供給された燃料fが、予混合ノズル52内及び予混合空気スワラーベーン53内を流通して予混合空気スワラーベーン53の燃料噴射孔53aから、或いは予混合ノズル52の燃料噴射孔から、予混合空気スワラー筒51内に噴射される。従って、これらの空気aと燃料fが、第1次予混合領域(予混合空気スワラー筒51内)において予混合され、この予混合気が第2次予混合領域83に流入する。
一方、空気流路76内に供給された空気aは、空気流路76内を流通してフィルム状となり、この空気フィルムが、外側の詰め物72の表面(側面72k,72o)及び内側の詰め物82の表面(側面82k,82o)に沿って流れることにより、この表面近傍で逆火の発生を防止することができる。
また、基板37の空気孔37aに供給された空気aは、空気孔37aを通って基板空気となり、基板37の外周側や内周側に流れる。このため、燃焼室34で生成された高温の燃焼ガスが、基板37の近傍の低流速域や逆流領域に巻き込まれるのを、基板空気によって防止することができる。
そして、第2次予混合領域83では、第1次予混合領域(予混合空気スワラー筒51)から流出されて第2次予混合領域83へ流入した予混合気と、空気流路76から流出されて第2次予混合領域75へ流入した空気フィルムとが、よく混合される。
詳述すると、予混合バーナ35では何れも、予混合空気スワラーベーン53によって空気aが同方向に旋回する。このため、第2次予混合領域83には図12に矢印P3で示すように前記同方向(図示例では反時計回り方向)に旋回した予混合気が流入する。そして、第2次予混合領域83では、これらの予混合気の旋回流が合体することにより、第2次予混合領域83の全周に亘る大きな予混合気の旋回流となる。この大きな旋回流は第2次予混合領域83の内周側と外周側で逆旋回となる。このため、第2次予混合領域83では、予混合気と空気フィルムの流動の乱れが大きくなり、予混合気と空気フィルムの混合が促進される。
更には、第2次予混合領域83において、隣接する予混合バーナ35の間の領域(例えば図12のQ3領域)では、旋回方向が互いに逆方向になり、予混合気と空気フィルムに対してせん断力が生じるため、予混合気と空気フィルムの混合が更に促進される。
また、予混合空気スワラー筒51では予混合気の旋回流の中心部に低流速域が存在するが、第2次予混合領域83において前記低流速域を消滅させることができる。このため、前記低流速域で逆火が発生するのを防止することができる。
また、第2次予混合領域83を構成する外側の詰め物72は、下流側の先端72aに向かうにしたがって細くなっているため、表面近傍の低流速域が少なく、前記低流速域に逆火が生じる可能性が低下する。
また、第2次予混合領域83を構成する内側の詰め物82は、下流側の端面82aへと延びた形状であることから、予混合気がストレートに流れるようになるため、逆火耐性に有利である(逆火が生じにくい)。
第2次予混合領域83において生成された予混合気(前述の予混合気と空気フィルムとがよく混合されて生成された予混合気)は、第2次予混合領域83から流出して燃焼室34へ流入する。燃焼室34では、パイロットバーナ36で生成された拡散炎が火種として利用されることにより、前記予混合気が着火されて予混合燃焼が行われる。
そして、保炎器のバックステップ面として機能する内側の詰め物82の下流側の端面82aでは、第2次予混合領域83から流出した予混合気の一部やパイロットコーン44から流出した混合気の一部に対して矢印R3のような逆流や減速を生じさせることにより、確実に拡散炎を火種とする予混合燃焼を維持することができる。
以上のように、本実施の形態例4のガスタービン燃焼器81によれば、パイロットバーナ36と、予混合空気スワラー筒51内に予混合ノズル52と予混合空気スワラーベーン53が設けられ、パイロットバーナ36の周囲を囲むように配設された複数の予混合バーナ35と、パイロットバーナ孔37bとパイロットバーナ孔37bの周囲を囲むように配設された複数の予混合バーナ孔37cとが設けられ、パイロットバーナ36と予混合バーナ35を支持する基板37とが、燃焼器内筒32内に設けられ、予混合空気スワラー筒51内が、第1次予混合領域であり、予混合空気スワラー筒51と流路用円筒74との間に形成した空気流路76から、空気フィルムを流す構成を有するガスタービン燃焼器81において、基板37の下流側の面37dにおいて隣接する予混合バーナ孔37cの間における外側の領域37eを上流側の端面72bが埋め且つ下流側の先端72aに向かうにしたがって細くなっている外側の詰め物72と、基板37の下流側の面72dにおいて隣接する予混合バーナ孔37cの間における内側の領域37fを上流側の端面82bが埋め且つ下流側の端面82aへと延びており下流側の端面82aが保炎器のバックステップ面である内側の詰め物82とを有しており、外側の詰め物72と内側の詰め物82との間の空間が、予混合バーナ孔37cを介して予混合空気スワラー筒51に連通し且つ周方向全体に亘って連続した円環状の第2次予混合領域83であることを特徴としているため、第2次予混合領域83において、予混合気と空気フィルムとが、よく混合される。このため、予混合気の燃料濃度が均一な状態で予混合燃焼が行われる。
また、従来の延長管の周長に比べて、第2次予混合領域83は、その周長が短いため、内周面近傍の低流速域が少なく、前記低流速域に逆火が生じる可能性が低下する。
更には、予混合空気スワラー筒51では予混合気の旋回流の中心部に低流速域が存在するが、第2次予混合領域83において前記低流速域を消滅させることができるため、前記低流速域で逆火が発生するのを防止することもできる。
また、隣接する予混合バーナ孔37cの間の領域37e,37fを詰め物72,82で埋めているため、この領域37e,37fには空気孔37aを設ける必要がなく、その分、基板空気の量を低減することができる。従って、その分の空気を予混合に利用することができ、予混合バーナ35全体の予混合気の燃料濃度を低下させることができる。
また、第2次予混合領域83を構成する外側の詰め物72は、下流側の先端72aに向かうにしたがって細くなっているため、表面近傍の低流速域が少なく、前記低流速域に逆火が生じる可能性が低下する。
また、第2次予混合領域83を構成する内側の詰め物82は、下流側の端面82aへの延びた形状であるため、予混合気がストレートに流れるようになり、逆火耐性に有利である(逆火が生じにくい)。しかも、下流側の端面82aを、保炎器のバックステップ面として有効利用することができる。
<実施の形態例5>
図14〜図16に基づき、本発明の実施の形態例5に係る予混合燃焼方式のガスタービン燃焼器について説明する。図14において、左側が上流側、右側が下流側である。
図14〜図16に示すように、本実施の形態例5の予混合燃焼方式のガスタービン燃焼器91は、予混合バーナ(メインバーナ)95を配設する領域を、環状の空間(アニュラ流路)111としたものである。
詳述すると、ガスタービン燃焼器91は、燃焼器外筒(図示省略)の内側に設けられた燃焼器内筒92と、予混合バーナ内筒112と、燃焼器尾筒93とを有している。
燃焼器尾筒93は内部が燃焼室94となっており、上流側端部が燃焼器内筒92の下流側端部に接続される一方、下流側端部がロータなどを備えたガスタービン本体部(図示省略)に繋がっている。
燃焼器内筒92は円筒状のものである。予混合バーナ内筒112は円筒状のものであり、燃焼器内筒92よりも小径で、且つ、下流側が径方向の外側に広がった形状を有している。図示は省略するが、予混合バーナ内筒112の上流側端部は、燃焼器内筒92の上流側端部に設けられた支持部に固定されて支持されている。
予混合バーナ内筒112は、燃焼器内筒92の内側に配設(燃焼器内筒92と同軸上に配設)されている。燃焼器内筒92と予混合バーナ内筒112との間の空間であるアニュラ流路111は、燃焼器内筒92(予混合バーナ内筒112)の周方向の全体に亘って連続している。そして、このアニュラ流路111の下流側の部分が、予混合領域111aとなっている。従って、この予混合領域111aも、勿論、前記周方向の全体に亘って連続している。予混合領域111aは、その幅(燃焼器内筒92の径方向の幅)が、下流側に向かうにしたがって狭くなっている。
アニュラ流路111には、予混合燃焼を行う複数(図示例では8体)の予混合バーナ(メインバーナ)95が設けられている。また、予混合バーナ内筒112の内側には、拡散燃焼を行うパイロットバーナ96が設けられている。
パイロットバーナ96は予混合バーナ内筒112の内側の中央部(予混合バーナ内筒112と同軸上)に配設されており、パイロット空気スワラー筒98と、パイロットノズル99と、複数(図示例では6枚)パイロット空気スワラーベーン(パイロット空気旋回翼)97と、パイロットコーン100とを備えている。
パイロット空気スワラー筒98は円筒状のものである。パイロットノズル99は、パイロット空気スワラー筒98内の中央部(パイロット空気スワラー筒98と同軸上)に配設されている。図示は省略するが、パイロットノズル99の上流側端部は、燃焼器内筒92の上流側端部に設けられた支持部に固定されて支持されている。パイロットノズル99の下流側端部には、燃料噴射孔99aが設けられている。パイロット空気スワラーベーン97は、パイロット空気スワラー筒98の内周面とパイロットノズル99の外周面との間に介設され、パイロットノズル99の周方向に等間隔に配設されている。
パイロットコーン100は、上流側端部から下流側端部に向かうにしたがって徐々に径方向の外側へ広がった円錐台状の筒であり、前記上流側端部がパイロット空気スワラー筒98の下流側端部に溶接で接続されている。保炎器101は円環状の板であり、内周部がパイロットコーン100の下流側端部に溶接で接続され、下流側の面がバックステップ面101aとなっている。予混合バーナ内筒112の下流端は、バックステップ面101aと同じ位置になっている。
複数の予混合バーナ95は、アニュラ流路111内において、アニュラ流路111の周方向に等間隔に配設され、パイロットバーナ96の周囲を囲んでいる。これらの予混合バーナ95は何れも、予混合ノズル102と、複数(図示例では6枚)の予混合空気スワラーベーン(予混合空気旋回翼)103とを備えている。図示は省略するが、予混合ノズル102の上流側端部は、前記支持部に固定されて支持されている。予混合空気スワラーベーン103は、予混合ノズル102の外周面に溶接で固定され、予混合ノズル102の周方向に等間隔に配設されている。予混合空気スワラーベーン103には、燃料噴射孔103aが設けられている。なお、これに限定するものではなく、予混合ノズル102に燃料噴射孔を設けてもよい。予混合領域111aは、予混合空気スワラーベーン103の下流側に位置している。
次に、この予混合燃焼方式のガスタービン燃焼器91の運転について説明する。
ガスタービン燃焼器91に対して、圧縮機(図示省略)で圧縮された空気aは、燃焼器外筒と燃焼器内筒92との間の空気流路(図示省略)から、燃焼器内筒92の上流側端部の空気孔(図示省略)を通って燃焼器内筒92内へ流入し、更に予混合バーナ内筒112の上流側端部の空気孔(図示省略)を通って予混合バーナ内筒112内へも流入した後、パイロットバーナ96のパイロット空気スワラー筒98内と、アニュラ流路111内とに供給され、燃料供給系統(図示省略)から送られてきた燃料fは、パイロットノズル99内と予混合ノズル102内とに供給される。
パイロットバーナ96では、パイロット空気スワラー筒98内に供給された空気aが、パイロット空気スワラー筒98内を流通する間にパイロット空気スワラーベーン97によって旋回流となり、パイロットコーン100内へ噴射される一方、パイロットノズル99内に供給された燃料fが、パイロットノズル99内を流通し、パイロットノズル99の燃料噴射孔99aから、パイロットコーン100内へ噴射される。従って、これらの空気aと燃料fがパイロットコーン100内で混合され、この混合気が着火装置(図示省略)によって着火されることにより、パイロットコーン100内及び燃焼室94において拡散燃焼が行われる(拡散炎が生成される)。
予混合バーナ95が設けられているアニュラ流路111では、アニュラ流路111内に供給された空気aが、アニュラ流路111内を流通する間に予混合空気スワラーベーン103によって旋回流となる一方、予混合ノズル102内に供給された燃料fが、予混合ノズル102内及び予混合空気スワラーベーン103内を流通して予混合空気スワラーベーン103の燃料噴射孔103aから、或いは予混合ノズル102の燃料噴射孔から、アニュラ流路111内に噴射される。
そして、このアニュラ流路111の予混合領域111aでは、これらの空気aと燃料fが予混合される。予混合領域111aでは空気aと燃料fとが、よく混合される。
詳述すると、予混合バーナ95では何れも、予混合空気スワラーベーン103によって空気aが同方向に旋回する。このため、予混合領域111aでは、図15に矢印P4で示すように空気a及び燃料が前記同方向(図示例では反時計回り方向)に旋回する。そして、予混合領域111aでは、これらの旋回流が合体することにより、予混合領域111aの全周に亘る大きな旋回流となる。この大きな旋回流は予混合領域111aの内周側と外周側で逆旋回となる。このため、予混合領域111aでは、空気aと燃料の流動の乱れが大きくなり、空気aと燃料の混合が促進される。
また、予混合領域111aにおいて、隣接する予混合バーナ95の間の領域(例えば図15のQ4領域)では、旋回方向が互いに逆方向になり、空気aと燃料に対してせん断力が生じるため、空気aと燃料の混合が更に促進される。
また、隣接する予混合バーナ95の間の領域で旋回方向が互いに逆方向になるため、この逆旋回成分により、燃焼器内筒92の径方向の速度成分が弱められ、燃焼器内筒92や予混合バーナ内筒112の壁面に向かう流れが抑制されて、逆火を防ぐことができる。
予混合領域111aにおいて生成された予混合気は、予混合領域111aから流出して燃焼室94へ流入する。燃焼室94では、パイロットバーナ96で生成された拡散炎が火種として利用されることにより、前記予混合気が着火されて予混合燃焼が行われる。
そして、このとき、本実施の形態例5のガスタービン燃焼器91では基板空気が不要であり、その分の空気が燃料との予混合に有効に利用されて、予混合燃焼が行われるため、平均火炎温度を低下する。
また、予混合領域111aにおいて予混合気の旋回が弱まり、この旋回が弱まった予混合気が燃焼室94に流入するため、火炎が軸方向に長炎化する。このため、低NOx化に有利である。
なお、保炎器101では、バックステップ面101aにおいて、予混合領域111aから流出した予混合気の一部やパイロットコーン100から流出した混合気の一部に対して矢印R4のような逆流や減速を生じさせることにより、確実に拡散炎を火種とする予混合燃焼を維持することができる。
以上のように、本実施の形態例5のガスタービン燃焼器91によれば、パイロットバーナ96と、予混合ノズル102と予混合空気スワラーベーン103とを有し、パイロットバーナ96の周囲を囲むように配設された複数の予混合バーナ95とが、燃焼器内筒92内に設けられているガスタービン燃焼器91において、燃焼器内筒92の内側に予混合バーナ内筒112が配設され、燃焼器内筒92と予混合バーナ内筒112との間の空間であるアニュラ流路111は周方向全体に亘って連続し、アニュラ流路111の下流側の部分が予混合領域111aとなっており、予混合バーナ95はアニュラ流路111内に配設され、パイロットバーナ96は予混合バーナ内筒112の内側に配設されていることを特徴としているため、予混合領域111aにおいて、燃料fと空気aとが、よく混合される。このため、予混合気の燃料濃度が均一な状態で予混合燃焼が行われる。
また、基板空気が不要であり、その分の空気aを燃料fとの予混合に有効利用して予混合燃焼を行うことができるため、平均火炎温度を低下させることもできる。
また、本実施の形態例5のガスタービン燃焼器によれば、予混合領域111aの幅が、下流側に向かうにしたがって狭くなっていることを特徴としているため、予混合領域111aの出口に向かって予混合気の流速が増速することより、境界層を薄くし、或いは、壁面近傍の燃料濃度を薄くことができるため、この表面近傍で逆火が発生するのを防止することができる。
<実施の形態例6>
図17〜図22に基づき、本発明の実施の形態例6に係る予混合燃焼方式のガスタービン燃焼器について説明する。図17において、左側が上流側、右側が下流側である。
図17〜図20に示すように、本実施の形態例6の予混合燃焼方式のガスタービン燃焼器121は、燃焼器外筒(図示省略)の内側に設けられた燃焼器内筒122と、燃焼器尾筒123とを有している。
燃焼器尾筒123は内部が燃焼室124となっており、上流側端部が燃焼器内筒122の下流側端部に接続される一方、下流側端部がロータなどを備えたガスタービン本体部(図示省略)に繋がっている。
燃焼器内筒122は円筒状のものである。燃焼器内筒122の内部には、予混合燃焼を行う複数(図示例では8体)の予混合バーナ(メインバーナ)125と、拡散燃焼を行うパイロットバーナ126と、これらのバーナ125,126を支持する基板127とが設けられている。
そして更に本実施の形態例6では、燃焼器内筒122の内部に淀み排除構造物(詰め物)128Aと、内側のガイドリング129と、外側のガイドリング130も設けられている。
基板127は円板状のものであり、外周部が燃焼器内筒122の内周面に溶接で固定されることにより、燃焼器内筒122に支持されている。基板127にはパイロットバーナ孔127aと、複数(図示例では8個)の予混合バーナ孔127bが設けられている。また、基板127の内周側と外周側には空気孔127cも設けられている。パイロットバーナ孔127aは基板127の中央部に開けられ、複数の予混合バーナ孔127bは基板127の周方向に等間隔に開けられてパイロットバーナ孔127aの周囲を囲んでいる。
パイロットバーナ126は燃焼器内筒122内の中央部(燃焼器内筒122と同軸上)に配設されており、パイロット空気スワラー筒131と、パイロットノズル132と、複数(図示例では6枚)パイロット空気スワラーベーン(パイロット空気旋回翼)133と、パイロットコーン134とを備えている。
パイロット空気スワラー筒131は円筒状のものであり、基板127のパイロットバーナ孔127aに挿入され、基板127に溶接で固定されて支持されている。パイロットノズル132は、パイロット空気スワラー筒131内の中央部(パイロット空気スワラー筒131と同軸上)に配設されている。図示は省略するが、パイロットノズル132の上流側端部は、燃焼器内筒122の上流側端部に設けられた支持部に固定されて支持されている。パイロットノズル132の下流側端部には、燃料噴射孔132aが設けられている。パイロット空気スワラーベーン133は、パイロット空気スワラー筒131の内周面とパイロットノズル132の外周面との間に介設され、パイロットノズル132の周方向に等間隔に配設されている。
パイロットコーン134は、上流側端部から下流側端部に向かうにしたがって径方向の外側へ広がった円錐台状の筒であり、前記上流側端部がパイロット空気スワラー筒131の下流側端部に溶接で接続されている。保炎器135は円環状の板であり、内周部がパイロットコーン134の下流側端部に溶接で接続され、下流側の面がバックステップ面135aとなっている。
複数の予混合バーナ125は、燃焼器内筒122の周方向に等間隔に配設されて、パイロットバーナ126の周囲を囲んでいる。これらの予混合バーナ125は何れも、予混合空気スワラー筒141と、予混合ノズル142と、複数(図示例では6枚)の予混合空気スワラーベーン(予混合空気旋回翼)143とを備えている。
予混合空気スワラー筒141は、燃焼器内筒122に溶接で固定されている。予混合空気スワラー筒141の上流側部分141aは円筒状である。予混合空気スワラー筒141の下流側部分141b(予混合空気スワラーベーン143よりも下流側の部分)は、横断面形状が、上流側端部141cでは円形状である一方、下流に向かうにしたがって連続的に変形され、下流側端部141dでは矩形状になっている。予混合空気スワラー筒141の下流側端部141dは、基板127の予混合バーナ孔127b内に位置している。
予混合ノズル142は、予混合空気スワラー筒141内の中央部(予混合空気スワラー筒141と同軸上)に配設されている。図示は省略するが、予混合ノズル142の上流側端部は、前記支持部に固定されて支持されている。予混合空気スワラーベーン143は、予混合空気スワラー筒141の内周面と予混合ノズル142の外周面との間に介設され、予混合ノズル142の周方向に等間隔に配設されている。予混合空気スワラーベーン143には、燃料噴射孔143aが設けられている。なお、これに限定するものではなく、予混合ノズル142に燃料噴射孔を設けてもよい。
複数(図示例では8体)の淀み排除構造物128Aは、基板127の下流側の面に設けられ、基板127の周方向に等間隔に配置されている。これらの淀み排除構造物128Aは何れも、基板127と一体に形成され、隣接する予混合バーナ孔127bの間の領域を埋めている。なお、淀み排除構造物128Aは、基板127と一体に形成したものに限定されず、基板127と別体のものであってもよい(この場合には溶接などの固定手段によって基板127に固定される)。淀み排除構造物128Aは、内側のガイドリング129の下流端及び外側のガイドリング130の下流端よりも上流側に位置している。
内側のガイドリング129は、淀み排除構造物128Aよりも、燃焼器内筒122の径方向の内側に位置しており、上流側端部129aが基板127に溶接で固定されて支持されている。また、内側のガイドリング129は、上流側端部129aから下流側端部129bに向かうにしたがって前記径方向の外側へ湾曲するように広がった概ね円錐台状の筒である。また、内側のガイドリング129は、下流側端部129bが淀み排除構造物128Aの下流端よりも下流側へ延びており、下流端が保炎器135のバックステップ面135aと同じ位置になっている。
外側のガイドリング130は、淀み排除構造物128Aよりも、燃焼器内筒122の径方向の外側に位置しており、上流側端部130aが基板127に溶接で固定されて支持されている。また、外側のガイドリング130は、上流側端部130aから下流側端部130bに向かうにしたがって前記径方向の外側へ湾曲するように広がった概ね円錐台状の筒である。また、外側のガイドリング130は、下流側端部130bが淀み排除構造物128Aの下流端よりも下流側へ延びており、下流端が保炎器135のバックステップ面135aと同じ位置になっている。
なお、内側のガイドリング129と外側のガイドリング130は、基板127と別体のものに限らず、基板127と一体に形成されていてもよく、更には淀み排除構造物128Aと一体に形成されていてもよい。即ち、基板127と淀み排除構造物128Aと内側のガイドリング129と外側のガイドリング130とが一体になっていてもよい。
また、基板127には、空気フィルムを生成するための流路用筒144も設けられている。流路用筒144は予混合空気スワラー筒141の下流側端部141dと同様に横断面形状が矩形状のものであり、基板127の上流側の面に溶接で固定されて支持され、基板127の上流側へ突出している。流路用筒144が予混合空気スワラー筒141の下流側端部141dよりも大きいため、流路用筒144の内周面と予混合空気スワラー筒141の下流側端部141dの外周面との間には環状の隙間が形成され、この隙間が空気フィルムを生成するための空気流路145になっている。
また、予混合空気スワラー筒141内が第1次予混合領域であるのに対して、外側のガイドリング129と内側のガイドリング130との間の空間が第2次予混合領域146となっている。この第2次予混合領域146は、予混合空気スワラー筒141に連通し、且つ、燃焼器内筒122の周方向(ガイドリング129,130の周方向)の全体に亘って連続した円環状の空間(アニュラ型流路)となっている。換言すれば、第1次予混合領域(予混合空気スワラー筒141内)が予混合バーナ125ごとに個別の予混合領域であるのに対して、第2次予混合領域146は全ての予混合バーナ125に共通の予混合領域となっている。
淀み排除構造物128Aは、下流側に向かうにしたがって幅が狭くなるような断面形状を有している。図21に基づき、淀み排除構造物128Aの構成について詳述する。
図21(a)〜図21(c)に示すように、淀み排除構造物128Aは概ね三角柱状のものであり、5つの面、即ち上流側の面128aと、外周側の面128bと、内周側の面128cと、一方の側面128dと、他方の側面128eとを有している。
予混合空気スワラー筒141の下流側端部141dでは横断面形状が矩形状で且つ角が丸くなっており(図18,図19)、これに合わせて基板127の予混合バーナ孔127bも矩形状で且つ角が何れも丸くなっている(図18〜図20、図21(b))。このため、隣接する予混合バーナ孔127bの間の領域は、燃焼器内筒122(基板127)の径方向の中央部分に比べて前記径方向の外側部分及び内側部分のほうが幅(即ち図21(b)における左右方向の幅)が広くなっている。
従って、このような隣接する予混合バーナ孔127bの間の領域の形状に合わせて淀み排除構造物128Aの上流側の面128aは、前記径方向の中央部分に比べて前記径方向の外側部分及び内側部分のほうが幅(即ち図21(b)における左右方向の幅)が広くなっている。この上流側の面128aの幅は、前記中央部分から前記外側部分及び前記内側部分に向かうにしたがって滑らかに変化している。
淀み排除構造物128Aの外周側の面128bは外側のガイドリング130に沿って湾曲し、淀み排除構造物128Aの内周側の面128cは内側のガイドリング129に沿って湾曲している。
そして、図21(d)〜図21(f)に示すように、淀み排除構造物128Aの断面形状(上流から下流へ向かう予混合気の流れ方向に沿った断面の形状)は、淀み排除構造物128Aにおける前記径方向の中央部分(図21(e))、前記径方向の外側部分(図21(d))、前記径方向の内側部分(図21(f))の何れも、上流側の辺(上流側の面128a)を底辺とする二等辺三角形状になっている。即ち、淀み排除構造物128Aは、全体的に断面形状が二等辺三角形状のものである。
また、淀み排除構造物128Aにおける前記径方向の中央部分、外側部分及び内側部分の何れの断面形状も、底辺の角度θが同じなるように設定されており、予混合気の流れ方向が急激に変化しないようにしている。このため、底辺の幅が広い外側部分(図21(d)及び内側部分(図21(f)では、底辺の幅が狭い中央部分(図21(e))に比べて、淀み排除構造物128Aの予混合気の流れ方向の長さが長くなっている。
次に、この予混合燃焼方式のガスタービン燃焼器121の運転について説明する。
ガスタービン燃焼器121に対して、圧縮機(図示省略)で圧縮された空気aは、燃焼器外筒と燃焼器内筒122との間の空気流路(図示省略)から、燃焼器内筒122の上流側端部の空気孔(図示省略)を通って燃焼器内筒122内へ流入した後、パイロットバーナ126のパイロット空気スワラー筒131内と、予混合バーナ125の予混合空気スワラー筒141内と、空気流路145内と、基板127の空気孔127cとに供給され、燃料供給系統(図示省略)から送られてきた燃料fは、パイロットノズル132内と予混合ノズル142内とに供給される。
パイロットバーナ126では、パイロット空気スワラー筒131内に供給された空気aが、パイロット空気スワラー筒131内を流通する間にパイロット空気スワラーベーン133によって旋回流となり、パイロットコーン134内へ噴射される一方、パイロットノズル132内に供給された燃料fが、パイロットノズル132内を流通し、パイロットノズル132の燃料噴射孔132aから、パイロットコーン134内へ噴射される。従って、これらの空気aと燃料fがパイロットコーン134内で混合され、この混合気が着火装置(図示省略)によって着火されることにより、パイロットコーン134内及び燃焼室124において拡散燃焼が行われる(拡散炎が生成される)。
予混合バーナ125では、予混合空気スワラー筒141内に供給された空気aが、予混合空気スワラー筒141内を流通する間に予混合空気スワラーベーン143によって旋回流となる一方、予混合ノズル142内に供給された燃料fが、予混合ノズル142内及び予混合空気スワラーベーン143内を流通して予混合空気スワラーベーン143の燃料噴射孔143aから、或いは予混合ノズル142の燃料噴射孔から、予混合空気スワラー筒141内に噴射される。従って、これらの空気aと燃料fが、第1次予混合領域(予混合空気スワラー筒141内)において予混合され、この予混合気が第2次予混合領域146に流入する。
一方、空気流路145内に供給された空気aは、空気流路145内を流通してフィルム状となり、この空気フィルムがリング129,130の内周面に沿って流れることにより、この内周面近傍で逆火の発生を防止する。
また、基板127の空気孔127cに供給された空気aは、空気孔127cを通って基板空気となり、基板127の外周側や内周側に流れる。このため、燃焼室124で生成された高温の燃焼ガスが、基板127の近傍の低流速域や逆流領域に巻き込まれるのを、基板空気によって防止することができる。
そして、淀み排除構造物128Aは、隣接する予混合バーナ孔127bの間の領域を埋めているため、前記領域の近傍において予混合気の流れが淀むのを防止する。
即ち、図22(a)に示すように、隣接する予混合バーナ孔127bの間の領域127dが淀み排除構造物128Aによって埋められていない場合には、当該領域127dの近傍において予混合気が大きく減速し、逆流することもある。図22(b)の2次元軸流速度コンター図には、淀み排除構造物128Aを設けない場合の予混合気の速度分布を示している。隣接する予混合バーナ孔127bの間の領域127dに近づくほど予混合気の速度が低下し、当該領域127dの近傍では予混合気が大きく減速し又は逆流して淀み領域161が発生している。この淀み領域161では逆火現象を誘発する可能性がある。
これに対して、図22(c)に示すように、隣接する予混合バーナ孔127bの間の領域127dが淀み排除構造物128Aによって埋められている場合には、当該領域127dの近傍において予混合気が大きく減速したり逆流したりするのを、淀み排除構造物128Aによって防止することができる。図22(d)の2次元軸流速度コンター図には、淀み排除構造物128Aを設けた場合の予混合気の速度分布を示している。隣接する予混合バーナ孔127bの間の領域127dに近づくほど予混合気の速度が低下するが、当該領域127dの近傍で予混合気が大きく減速したり逆流したりするのを、淀み排除構造物128Aによって防止することができるため、当該領域127dの近傍に淀み領域が発生することはない。
また、第2次予混合領域146では、第1次予混合領域(予混合空気スワラー筒141)から流出されて第2次予混合領域146へ流入した予混合気が、第2次予混合領域146の周方向全体に亘ってよく混合され、更には予混合気と、空気流路145から流出されて第2次予混合領域146へ流入した空気フィルムもよく混合される。
詳述すると、予混合バーナ125では何れも、予混合空気スワラーベーン143によって空気aが同方向に旋回する。このため、第2次予混合領域146には図18に矢印P5で示すように前記同方向(図示例では反時計回り方向)に旋回した予混合気が流入する。そして、第2次予混合領域146では、これらの予混合気の旋回流が合体することにより、第2次予混合領域146の全周に亘る大きな予混合気の旋回流となる。この大きな旋回流は第2次予混合領域146の内周側と外周側で逆旋回となる。このため、第2次予混合領域57では、予混合気や空気フィルムの流動の乱れが大きくなり、第2次予混合領域146の周方向全体に亘って予混合気がよく混合され、更には予混合気と空気フィルムもよく混合される。
また、第2次予混合領域146において、隣接する予混合バーナ125の間の領域(例えば図18のQ5領域)では、旋回方向が互いに逆方向になり、予混合気と空気フィルムに対してせん断力が生じるため、予混合気と空気フィルムの混合が更に促進される。
第2次予混合領域146において生成された予混合気(前述の予混合気と空気フィルムとがよく混合されて生成された予混合気)は、第2次予混合領域146から流出して燃焼室124へ流入する。燃焼室124では、パイロットバーナ126で生成された拡散炎が火種として利用されることにより、前記予混合気が着火されて予混合燃焼が行われる。
保炎器135では、バックステップ面135aにおいて、第2次予混合領域146から流出した予混合気の一部やパイロットコーン134から流出した混合気の一部に対して矢印R5のような逆流や減速を生じさせることにより、確実に拡散炎を火種とする予混合燃焼を維持することができる。
以上のように、本実施の形態例6のガスタービン燃焼器121によれば、パイロットバーナ126と、予混合空気スワラー筒141内に予混合ノズル142と予混合空気スワラーベーン143が設けられ、パイロットバーナ126の周囲を囲むように配設された複数の予混合バーナ125と、パイロットバーナ孔127aと、パイロットバーナ孔127aの周囲を囲むように配設された複数の予混合バーナ孔127bとが設けられ、パイロットバーナ126と予混合バーナ125を支持する基板127とを有し、予混合空気スワラー筒141内が第1次予混合領域であり、予混合空気スワラー筒141と流路用筒144との間に形成した空気流路145から、空気フィルムを流す構成であるガスタービン燃焼器において、基板127の下流側の面には、隣接する予混合バーナ孔127bの間の領域127dを埋めた淀み排除構造物128Aを有し、且つ、淀み排除構造物127Aの断面形状は二等辺三角形状(下流側に向かうにしたがって幅が狭くなった形状)になっており、淀み排除構造物128Aの外側に位置する外側のガイドリング130と、淀み排除構造物128Aの内側に位置する内側のガイドリング129とを有し、外側のガイドリング130と内側のガイドリング129との間の空間が、予混合バーナ孔127bを介して予混合空気スワラー筒141に連通し且つ周方向全体に亘って連続した円環状の第2次予混合領域146であることを特徴としているため、基板127の隣接する予混合バーナ孔127bの間の領域127dの近傍において予混合気の流れが淀むのを、淀み排除構造物128Aによって防止(排除)することができる。
また、淀み排除構造物128Aの断面形状は二等辺三角形状であることから下流端が尖っているため、当該下流端において予混合気の流れの淀みが発生する恐れもない。
また、第2次予混合領域146では、第1次予混合領域(予混合空気スワラー筒141内)から流出して第2次予混合領域146へ流入した予混合気が、第2次予混合領域146の周方向全体に亘ってよく混合され、更には予混合気と、空気流路145から流出して第2次予混合領域146へ流入した空気フィルムもよく混合される。
<実施の形態例7>
図23,図24に基づき、本発明の実施の形態例7に係る予混合燃焼方式のガスタービン燃焼器について説明する。
本実施の形態例7のガスタービン燃焼器は、上記実施の形態例6のガスタービン燃焼器(図17〜図20)において、淀み排除構造物128Aの代わりに図23に示す淀み排除構造物128Bを設けたものであり、その他の構成については上記実施の形態例6のガスタービン燃焼器と同様である。
従って、ここでは淀み排除構造物128Bについて説明し、ガスタービン燃焼器の全体的な構成については説明及び図示を省略する(図17〜図20参照)。
また、図23に示す淀み排除構造物128Bの構成において、図21に示す淀み排除構造物128Aの構成と対応する部分については同一の符号を付した。
本実施の形態例7における淀み排除構造物128Bも、上記実施の形態例6における淀み排除構造物128Aと同様に隣接する予混合バーナ孔127bの間の領域を埋めており、下流側に向かうにしたがって幅が狭くなるような断面形状を有している。図23に基づき、淀み排除構造物128Bの構成について詳述する。
図23(a),図23(b)に示すように、淀み排除構造物128Bは淀み排除構造物128Aと同様に概ね三角柱状のものであり、5つの面、即ち上流側の面128aと、外周側の面128bと、内周側の面128cと、一方の側面128dと、他方の側面128eとを有している。
隣接する予混合バーナ孔127bの間の領域の形状に合わせて淀み排除構造物128Bの上流側の面128aは、燃焼器内筒122(基板127)の径方向の中央部分に比べて前記径方向の外側部分及び内側部分のほうが幅(図23(b)における左右方向の幅)が広くなっている。
淀み排除構造物128Bの外周側の面128bは外側のガイドリング130に沿って湾曲し、淀み排除構造物128Bの内周側の面128cは内側のガイドリング129に沿って湾曲している。
そして、図23(c)〜図23(e)に示すように、淀み排除構造物128Bの断面形状(上流から下流へ向かう予混合気の流れ方向に沿った断面の形状)は、淀み排除構造物128Bにおける前記径方向の中央部分(図23(d))、前記径方向の外側部分(図23(c))、前記径方向の内側部分(図23(e))の何れも、下流側が尖った釣鐘形状になっている。即ち、淀み排除構造物128Bは、全体的に断面形状が釣鐘形状のものである。なお、この断面形状は下流(片側)が尖った紡錘形状とも言うこともできる。
淀み排除構造物128Bは、断面形状が釣鐘形状(紡錘形状)であるため、上流側の端部が、予混合空気スワラー筒141の下流側端部141d(予混合バーナ孔127b)に正接している(予混合空気スワラー筒141の軸方向に沿って延びている)。
淀み排除構造物128Aのように断面形状が二等辺三角形状の場合には、図24(a)に示すように予混合空気スワラー筒141から流出した予混合気が淀み排除構造物128Aの側面128d,128eに沿って流れるとき、この予混合気の流れ方向が急に変わってしまう。
これに対して、淀み排除構造物128Bのように断面形状が釣鐘形状の場合には、図24(b)に示すように予混合空気スワラー筒141から流出した予混合気が淀み排除構造物128Bの側面128d,128eに沿って流れるとき、この予混合気の流れ方向が滑らかに変化する。
以上のように、本実施の形態例7のガスタービン燃焼器によれば、淀み排除構造物128Bの断面形状は、釣鐘形状であることを特徴としているため、断面形状が二等辺三角形状の場合に比べて予混合気の流れ方向が滑らかに変化する。このため、断面形状が二等辺三角形状の場合に比べて予混合気の流速低下度合が低減される。
<実施の形態例8>
図25,図26に基づき、本発明の実施の形態例8に係る予混合燃焼方式のガスタービン燃焼器について説明する。
本実施の形態例8のガスタービン燃焼器は、上記実施の形態例6のガスタービン燃焼器(図17〜図20)において、淀み排除構造物128Aの代わりに図25に示す淀み排除構造物128Cを設けたものであり、その他の構成については上記実施の形態例6のガスタービン燃焼器と同様である。
従って、ここでは淀み排除構造物128Cについて説明し、ガスタービン燃焼器の全体的な構成については説明及び図示を省略する(図17〜図20参照)。
また、図25に示す淀み排除構造物128Cの構成において、図21に示す淀み排除構造物128Aの構成と対応する部分については同一の符号を付した。
本実施の形態例8における淀み排除構造物128Bも、上記実施の形態例6における淀み排除構造物128Aと同様に隣接する予混合バーナ孔127bの間の領域を埋めており、下流側に向かうにしたがって幅が狭くなるような断面形状を有している。図25に基づき、淀み排除構造物128Cの構成について詳述する。
図25(a),図25(b)に示すように、淀み排除構造物128Cは淀み排除構造物128Aと同様に概ね三角柱状のものであり、5つの面、即ち上流側の面128aと、外周側の面128bと、内周側の面128cと、一方の側面128dと、他方の側面128eとを有している。
隣接する予混合バーナ孔127bの間の領域の形状に合わせて淀み排除構造物128Cの上流側の面128aは、燃焼器内筒122(基板127)の径方向の中央部分に比べて前記径方向の外側部分及び内側部分のほうが幅(図25(b)における左右方向の幅)が広くなっている。
淀み排除構造物128Cの外周側の面128bは外側のガイドリング130に沿って湾曲し、淀み排除構造物128Bの内周側の面128cは内側のガイドリング129に沿って湾曲している。
そして、図25(c)〜図25(e)に示すように、淀み排除構造物128Cの断面形状(上流から下流へ向かう予混合気の流れ方向に沿った断面の形状)は、淀み排除構造物128Cにおける前記径方向の中央部分(図25(d))では下流側が尖った釣鐘形状になっている一方、前記径方向の外側部分(図25(c))及び前記径方向の内側部分(図25(e))では上流側の辺(上流側の面128a)を底辺とする二等辺三角形状になっている。この場合、淀み排除構造物128Cの断面形状は、前記中央部分から前記外側部分や前記内側部分に向かうにしたがって釣鐘形状から二等辺三角形状へ連続的に変形している。なお、これに限定するものではなく、前記径方向の途中位置で釣鐘形状から二等辺三角形状に変化するようにしてもよい。
上記実施の形態例7の淀み排除構造物128Bのように上流側の面128aの幅が広い外側部分や内側部分における断面形状を、釣鐘形状にした場合、図26(a)に示すように淀み排除構造物128Bの下流端部分において予混合気の流れが、淀み排除構造物128Bの側面128d,128eから剥離してしまう場合がある。
これに対して、上流側の面128aの幅が狭い中央部分では、断面形状が釣鐘形状であっても、図26(b)に示すように予混合気が、淀み排除構造物128Bの側面128d,128e全体に亘って滑らかに流れるため、当該側面128d,128eの下流端部分で剥離する恐れがない。
そこで、本実施の形態例8の淀み排除構造物128Cでは、上記のような剥離の恐れがある場合の対策として、外側部分及び内側部分における断面形状を二等辺三角形状とした。
以上のように、本実施の形態例8のガスタービン燃焼器によれば、淀み排除構造物128Cの上流側の端面128aは、淀み排除構造物128Cにおける径方向の中央部分に比べて外側部分及び内側部分のほうが幅が広くなっており、淀み排除構造物128Cの断面形状は、前記中央部分では釣鐘形状であり、前記外側部分及び前記内側部分では二等辺三角形状であることを特徴としているため、上流側の端面128a(底面)の幅が狭い淀み排除構造物128Cの中央部分においては、予混合気の流速低下度合を低減することができ、且つ、上流側の端面128a(底面)の幅が広い淀み排除構造物128Cの外側部分及び内側部分においては、淀み排除構造物128Cの下流端部で予混合気が、当該下流端部の側面128d,128eから剥離するのを防止することができる。
<実施の形態例9>
図27に基づき、本発明の実施の形態例9に係る予混合燃焼方式のガスタービン燃焼器について説明する。
本実施の形態例9のガスタービン燃焼器は、上記実施の形態例6のガスタービン燃焼器(図17〜図20)において、淀み排除構造物128Aの代わりに図27に示す淀み排除構造物128Dを設けたものであり、その他の構成については上記実施の形態例6のガスタービン燃焼器と同様である。
従って、ここでは淀み排除構造物128Dについて説明し、ガスタービン燃焼器の全体的な構成については説明及び図示を省略する(図17〜図20参照)。
また、図27に示す淀み排除構造物128Dの構成において、図21に示す淀み排除構造物128Aの構成と対応する部分については同一の符号を付した。
本実施の形態例9における淀み排除構造物128Dも、上記実施の形態例6における淀み排除構造物128Aと同様に隣接する予混合バーナ孔127bの間の領域を埋めており、下流側に向かうにしたがって幅が狭くなるような断面形状を有している。図27に基づき、淀み排除構造物128Dの構成について詳述する。
図27(a),図27(b)に示すように、淀み排除構造物128Dは淀み排除構造物128Aと同様に概ね三角柱状のものであり、5つの面、即ち上流側の面128aと、外周側の面128bと、内周側の面128cと、一方の側面128dと、他方の側面128eとを有している。
隣接する予混合バーナ孔127bの間の領域の形状に合わせて淀み排除構造物128Dの上流側の面128aは、燃焼器内筒122(基板127)の径方向の中央部分に比べて前記径方向の外側部分及び内側部分のほうが幅(図27(b)における左右方向の幅)が広くなっている。
淀み排除構造物128Dの外周側の面128bは外側のガイドリング130に沿って湾曲し、淀み排除構造物128Dの内周側の面128cは内側のガイドリング129に沿って湾曲している。
そして、図27(c)〜図27(e)に示すように、淀み排除構造物128Dの断面形状(上流から下流へ向かう予混合気の流れ方向に沿った断面の形状)は、淀み排除構造物128Dにおける前記径方向の中央部分(図27(d))、前記径方向の外側部分(図27(c))、前記径方向の内側部分(図27(e))の何れも、上流側に釣鐘形状部128fを有し、下流側に二等辺三角形状部128gを有する形状になっている。即ち、淀み排除構造物12Dは、全体的に断面形状が釣鐘形状と二等辺三角形状を組み合わせた形状になっている。
このように淀み排除構造物128Dの断面形状が釣鐘形状部128fと二等辺三角形状128gとを有する形状であるため、予混合空気スワラー筒141から流出した予混合気は、釣鐘形状部128fと二等辺三角形状128gとに沿って滑らかに変化する。
以上のように、本実施の形態例9のガスタービン燃焼器によれば、淀み排除構造物128Dの断面形状は、上流側に釣鐘形状部128fを有し、下流側に二等辺三角形状部128gを有する形状であることを特徴としているため、淀み排除構造物128Dの釣鐘形状部128f及び二等辺三角形状部128gにおいて予混合気の流れ方向が滑らかに変化することから、予混合気の流速低下度合を低減することができ、且つ、淀み排除構造物128Dの下流端部で予混合気が当該下流端部の側面128d,128eから剥離するのを防止することもできる。
<実施の形態例10>
図28に基づき、本発明の実施の形態例10に係る予混合燃焼方式のガスタービン燃焼器について説明する。
本実施の形態例10のガスタービン燃焼器は、上記実施の形態例6のガスタービン燃焼器(図17〜図20)において、淀み排除構造物128Aの代わりに図27に示す淀み排除構造物128Eを設けたものであり、その他の構成については上記実施の形態例6のガスタービン燃焼器と同様である。
従って、ここでは淀み排除構造物128Eについて説明し、ガスタービン燃焼器の全体的な構成については説明及び図示を省略する(図17〜図20参照)。
また、図28に示す淀み排除構造物128Eの構成において、図21に示す淀み排除構造物128Aの構成と対応する部分については同一の符号を付した。
本実施の形態例10における淀み排除構造物128Eも、上記実施の形態例6における淀み排除構造物128Aと同様に隣接する予混合バーナ孔127bの間の領域を埋めており、下流側に向かうにしたがって幅が狭くなるような断面形状を有している。図28に基づき、淀み排除構造物128Eの構成について詳述する。
図28(a),図28(b)に示すように、淀み排除構造物128Eは淀み排除構造物128Aと同様に概ね三角柱状のものであり、5つの面、即ち上流側の面128aと、外周側の面128bと、内周側の面128cと、一方の側面128dと、他方の側面128eとを有している。
隣接する予混合バーナ孔127bの間の領域の形状に合わせて淀み排除構造物128Eの上流側の面128aは、燃焼器内筒122(基板127)の径方向の中央部分に比べて前記径方向の外側部分及び内側部分のほうが幅(図28(b)における左右方向の幅)が広くなっている。
淀み排除構造物128Eの外周側の面128bは外側のガイドリング130に沿って湾曲し、淀み排除構造物128Eの内周側の面128cは内側のガイドリング129に沿って湾曲している。
そして、図28(c)〜図28(e)に示すように、淀み排除構造物128Eの断面形状(上流から下流へ向かう予混合気の流れ方向に沿った断面の形状)は、淀み排除構造物128Eにおける前記径方向の中央部分(図28(d))では上流側に釣鐘形状部128fを有し、下流側に二等辺三角形状部128gを有する形状になっている一方、前記径方向の外側部分(図28(c))及び前記径方向の内側部分(図28(e))では下流側が尖った釣鐘形状になっている。この場合、淀み排除構造物128Eの断面形状は、前記中央部分から前記外側部分や前記内側部分に向かうにしたがって釣鐘形状部128fと二等辺三角形状部128gを有する形状から釣鐘形状へ連続的に変形している。なお、これに限定するものではなく、前記径方向の途中位置で、釣鐘形状部128fと二等辺三角形状部128gを有する形状から釣鐘形状へ変化していてもよい。
以上のように、本実施の形態例10のガスタービン燃焼器によれば、淀み排除構造物128Eの上流側の端面128aは、淀み排除構造物128Eにおける径方向の中央部分に比べて外側部分及び内側部分のほうが幅が広くなっており、淀み排除構造物128Eの断面形状は、前記中央部分では上流側に釣鐘形状部128fを有し下流側に二等辺三角形状部128gを有する形状であり、前記外側部分と前記内側部分では釣鐘形状であることを特徴としているため、幅の広い淀み排除構造物128Eの外側部分及び内側部分にも釣鐘形状部と二等辺三角形状部とを設けた場合に比べて、これらの外側部分及び内側部分における予混合気の流れ方向の長さを短くすることができる。このため、外側及び内側のガイドリング129,130の下流端よりも上流側に淀み排除構造物128Eを容易に配置することができる。
<実施の形態例11>
図29に基づき、本発明の実施の形態例11に係る予混合燃焼方式のガスタービン燃焼器について説明する。
本実施の形態例11のガスタービン燃焼器は、上記実施の形態例6のガスタービン燃焼器(図17〜図20)において、淀み排除構造物128Aの代わりに図29に示す淀み排除構造物128Fを設けたものであり、その他の構成については上記実施の形態例6のガスタービン燃焼器と同様である。
従って、ここでは淀み排除構造物128Fについて説明し、ガスタービン燃焼器の全体的な構成については説明及び図示を省略する(図17〜図20参照)。
また、図29に示す淀み排除構造物128Fの構成において、図21に示す淀み排除構造物128Aの構成と対応する部分については同一の符号を付した。
本実施の形態例11における淀み排除構造物128Fも、上記実施の形態例6における淀み排除構造物128Aと同様に隣接する予混合バーナ孔127bの間の領域を埋めており、下流側に向かうにしたがって幅が狭くなるような断面形状を有している。図29に基づき、淀み排除構造物128Fの構成について詳述する。
図29(a),図29(b)に示すように、淀み排除構造物128Fは淀み排除構造物128Aと同様に概ね三角柱状のものであり、5つの面、即ち上流側の面128aと、外周側の面128bと、内周側の面128cと、一方の側面128dと、他方の側面128eとを有している。
隣接する予混合バーナ孔127bの間の領域の形状に合わせて淀み排除構造物128Fの上流側の面128aは、燃焼器内筒122(基板127)の径方向の中央部分に比べて前記径方向の外側部分及び内側部分のほうが幅(図29(b)における左右方向の幅)が広くなっている。
淀み排除構造物128Fの外周側の面128bは外側のガイドリング130に沿って湾曲し、淀み排除構造物128Fの内周側の面128cは内側のガイドリング129に沿って湾曲している。
また、図29(c)〜図29(e)に示すように、淀み排除構造物128Fの断面形状(上流から下流へ向かう予混合気の流れ方向に沿った断面の形状)は、淀み排除構造物128Fにおける前記径方向の中央部分(図29(d))、前記径方向の外側部分(図29(c))、前記径方向の内側部分(図29(e))の何れも、下流側が尖った釣鐘形状になっている。
そして、この淀み排除構造物128Fには、複数の中空孔128hが形成されている。中空孔128hの下流側は、淀み排除構造物128Fの下流端が欠損していない通常の状態では閉じている(開放していない)。一方、中空孔128hの上流側は、そのぞれの中空孔128hに対応するように基板127に設けられた中空孔用の空気孔127eに連通している。
また、図29(f)に他の構造例を示すように、淀み排除構造物128Fの上流部に空間部128iを設け、この空間部128iを介して淀み排除構造物128Fの中空孔128hが、基板127に設けられた中空孔用の空気孔127eに連通するように構成してもよい。この場合、基板127に設ける空気孔127eは、図示例のように1つでもよく、複数でもよい。
また、図29(g)に他の構造例を示すように、淀み排除構造物128Fを、多孔質材料(多孔質の金属など)で形成した多孔質部128jと、この多孔質部128jの表面を覆ったコーティング部128kとを有する構成としてもよい。コーティング部128kは、コーティング材(多孔質ではない金属など)でコーティングすることによって形成され、多孔質部128iの孔を塞いでいる。一方、淀み排除構造物128Fの上流側では、多孔質部128jの孔が、基板127に設けた多孔質部用の空気孔127eに連通している。
なお、上記では断面形状が釣鐘形状の淀み排除構造物128Fに中空孔128hを設けているが、これに限定するものではなく、その他の断面形状の淀み排除構造物、例えば図21,図25,図27,図28に示すような断面形状の淀み排除構造物128A,128C,128D,128Eなどに中空孔を設けてもよい。
また、上記では断面形状が釣鐘形状の淀み排除構造物128Fに多孔質部128iとコーティング部128を設けているが、これに限定するものではなく、その他の断面形状の淀み排除構造物、例えば図21,図25,図27,図28に示すような断面形状の淀み排除構造物128A,128C,128D,128Eなどに多孔質部とコーティング部を設けてもよい。
以上のように、本実施の形態例11のガスタービン燃焼器によれば、淀み排除構造物128Fは中空孔128hを有しており、中空孔128hの下流側は閉じている一方、中空孔128hの上流側は基板127に設けられた空気孔127eに連通していること、又は、淀み排除構造物128Fは多孔質部128jと、多孔質部128jの表面を覆ったコーティング部128kとを有し、多孔質部128jの孔が基板127に設けられた空気孔127eに連通していることを特徴としているため、淀み排除構造物128の下流端部が焼損などによって欠損した際、当該欠損によって開放された中空孔128h又は多孔質部128jの孔から、空気(圧縮機で圧縮された空気)が噴出される。このため、当該欠損部において予混合気の流れが淀んで逆火現象が誘発されるのを防止することができる。
なお、上記実施の形態例6〜11では基板の予混合バーナ孔が矩形状で且つ角が丸くなっている構成に対して淀み排除構造物を適用した場合について説明したが、これに限定するものではく、基板の予混合バーナ孔が、その他の構成、例えば図3に示すような円形状である場合や、矩形状で角が丸くなっていない形状である場合などにも淀み排除構造物を適用することができる。即ち、隣接する予混合バーナ孔の間の領域の形状に対応した形状を有する上流側の面を備えた淀み排除構造物によって、当該領域を埋めればよい。