以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態による電子部品であるコイル部品1の構造を示す略斜視図である。
図1に示すように、本実施形態によるコイル部品1はコモンモードフィルタであって、基板10と、基板10の一方の主面(上面)に設けられたコモンモードフィルタ素子を含む薄膜コイル層11と、薄膜コイル層11の主面(上面)に設けられた第1〜第4のバンプ電極12a〜12dと、バンプ電極12a〜12dの形成位置を除いた薄膜コイル層11の主面に設けられた磁性樹脂層13とを備えている。
コイル部品1は略直方体状の表面実装型チップ部品であり、長手方向(X方向)と平行な2つの側面10a,10bと、長手方向と直交する他の2つの側面10c,10dを有している。第1〜第4のバンプ電極12a〜12dはコイル部品1のコーナー部に設けられ、コイル部品1の外周面にも露出面を有するように形成されている。このうち、第1のバンプ電極12aは、側面10aと側面10cの両方に露出面を有し、第2のバンプ電極12bは、側面10bと側面10cの両方に露出面を有している。また、第3のバンプ電極12cは、側面10aと側面10dの両方に露出面を有し、第4のバンプ電極12dは、側面10bと側面10dの両方に露出面を有している。なお、実装時には上下反転し、バンプ電極12a〜12d側を下向きにして使用されるものである。
基板10は、コイル部品1の機械的強度を確保すると共に、コモンモードフィルタの閉磁路としての役割を果たすものである。基板10の材料としては例えば焼結フェライト等の磁性セラミック材料を用いることができる。特に限定されるものではないが、チップサイズが0605タイプ(0.6×0.5×0.5(mm))であるとき、基板10の厚さは0.1〜0.3mm程度とすることができる。
薄膜コイル層11は、基板10と磁性樹脂層13との間に設けられたコモンモードフィルタ素子を含む層である。詳細は後述するが、薄膜コイル層11は絶縁層と導体パターンとを交互に積層して形成された多層構造を有している。このように、本実施形態によるコイル部品1はいわゆる薄膜タイプであって、磁性コアに導線を巻回した構造を有する巻線タイプとは区別されるものである。
磁性樹脂層13は、コイル部品1の実装面(底面)を構成する層であり、基板10と共に薄膜コイル層11を保護すると共に、コイル部品1の閉磁路としての役割を果たすものである。ただし、磁性樹脂層13の機械的強度は基板10よりも小さいため、強度面では補助的な役割を果たす程度である。磁性樹脂層13としては、主にフェライト粉を含有するエポキシ樹脂(複合フェライト)を用いることができる。特に限定されるものではないが、チップサイズが0605タイプであるとき、磁性樹脂層13の厚さは0.02〜0.1mm程度とすることができる。
図2は、コイル部品1の層構造を詳細に示す略分解斜視図である。また、図3は、各層を分解して示す平面図である。
図2に示すように、薄膜コイル層11は、基板10側から磁性樹脂層13側に向かって順に積層された第1〜第4の絶縁層15a〜15dと、第1の絶縁層15a上に形成された第1のスパイラル導体16及び内部端子電極24a〜24dを含む第1の導体層と、第2の絶縁層15b上に形成された第2のスパイラル導体17及び内部端子電極24a〜24dを含む第2の導体層と、第3の絶縁層15c上に形成された第1及び第2の引き出し導体20,21及び内部端子電極24a〜24dを含む第3の導体層とを備えている。第4の絶縁層15d上にはバンプ電極12a〜12dが設けられており、内部端子電極等の導体パターンは形成されていない。
第1〜第4の絶縁層15a〜15dは、異なる導体層に設けられた導体パターン間を絶縁すると共に、導体パターンが形成される平面の平坦性を確保する役割を果たす。特に、第1の絶縁層15aは、基板10の表面の凹凸を吸収し、スパイラル導体パターンの加工精度を高める役割を果たす。絶縁層15a〜15dの材料としては、電気的及び磁気的な絶縁性に優れ、微細加工の容易な樹脂を用いることが好ましく、特に限定されるものではないが、ポリイミド樹脂やエポキシ樹脂を用いることができる。
第1のスパイラル導体16の内周端16aは、第2及び第3の絶縁層15b,15cを貫通する第1のコンタクトホール導体18、第1の引き出し導体20及び第1の内部端子電極24aを介して、第1のバンプ電極12aに接続されている。また、第1のスパイラル導体16の外周端16bは第2の内部端子電極24bを介して第2のバンプ電極12bに接続されている。
第2のスパイラル導体17の内周端17aは、第3の絶縁層15cを貫通する第2のコンタクトホール導体19、第2の引き出し導体21及び第4の内部端子電極24dを介して、第4のバンプ電極12dに接続されている。また、第2のスパイラル導体17の外周端17bは第3の内部端子電極24cを介して第3のバンプ電極12cに接続されている。
第1及び第2のスパイラル導体16,17は実質的に同一の平面形状を有しており、しかも平面視で同じ位置に設けられている。第1及び第2のスパイラル導体16,17は重なり合っていることから、両者の間には強い磁気結合が生じている。第1のスパイラル導体16はその内周端16aから外周端16bに向かって反時計回りであり、第2のスパイラル導体17はその外周端17bから内周端17aに向かって同じく反時計回りであるので、第1のバンプ電極12aから第2のバンプ電極12bに向かって流れる電流により発生する磁束の向きと、第3のバンプ電極12cから第2のバンプ電極12dに向かって流れる電流により発生する磁束の向きが同じになり、全体の磁束は強まる。以上の構成により、薄膜コイル層11内の導体パターンはコモンモードフィルタを構成している。
第1及び第2のスパイラル導体16,17の外形は共に円形スパイラルである。円形スパイラル導体は高周波信号成分の減衰が少ないため、高周波用インダクタンスとして好ましく用いることができる。なお、本実施形態によるスパイラル導体16,17は長円であるが、真円であってもよく、楕円であってもよい。また、略矩形であっても構わない。
第1及び第2のスパイラル導体16,17は、その直流抵抗を低減するためある程度の厚さを有することが好ましい。スパイラル導体の断面のアスペクト比(高さ/幅)は1以上であることが好ましい。
第1〜第4の絶縁層15a〜15dの中央領域であって第1及び第2のスパイラル導体16,17の内側には、第1〜第4の絶縁層15a〜15dを貫通する開口hgが設けられており、開口hgの内部には、磁路を形成するためのスルーホール磁性体14が設けられている。スルーホール磁性体14は磁性樹脂層13と同一材料からなりこれと一体的に形成されていることが好ましい。
第1及び第2の引き出し導体20,21は、第3の絶縁層15cの表面に形成されている。第1の引き出し導体20の一端はコンタクトホール導体18の上端に接続されており、他端は内部端子電極24aに接続されている。また、第2の引き出し導体21の一端はコンタクトホール導体19の上端に接続されており、他端は内部端子電極24dに接続されている。
薄膜コイル層11の表層を構成する第4の絶縁層15d上には第1〜第4のバンプ電極12a〜12dがそれぞれ設けられている。第1〜第4のバンプ電極12a〜12dは外部端子電極であって、内部端子電極24a〜24dにそれぞれ接続されている。なお、本明細書において「バンプ電極」とは、フリップチップボンダーを用いてCu,Au等の金属ボールを熱圧着することにより形成されるものとは異なり、めっき処理により形成された厚膜めっき電極を意味する。バンプ電極の厚さは、磁性樹脂層13の厚さと同等かそれ以上であり、0.02〜0.1mm程度とすることができる。すなわち、バンプ電極12a〜12dの厚さは薄膜コイル層11内の導体パターンよりも厚く、特に、薄膜コイル層11内のスパイラル導体パターンの5倍以上の厚さを有している。
第1〜第4のバンプ電極12a〜12dの平面形状は実質的に同一である。この構成によれば、コイル部品1の底面のバンプ電極パターンが対称性を有しているので、実装の方向性に制約がなく見栄えの良い端子電極パターンを提供することができる。
第4の絶縁層15d上には第1〜第4のバンプ電極12a〜12dと共に磁性樹脂層13が形成されている。磁性樹脂層13はバンプ電極12a〜12dの周囲を埋めるように設けられている。磁性樹脂層13と接するバンプ電極12a〜12dの側面は、エッジのない曲面形状であることが好ましい。磁性樹脂層13は、バンプ電極12a〜12dを形成した後、複合フェライトのペーストを流し込むことにより形成されるが、このときバンプ電極12a〜12dの側面にエッジの効いたコーナー部があるとバンプ電極の周囲にペーストが完全に充填されず、気泡を含む状態となりやすい。しかし、バンプ電極12a〜12dの側面が曲面である場合には、流動性のある樹脂が隅々まで行き渡るので、気泡を含まない緻密な磁性樹脂層13を形成することができる。しかも、磁性樹脂層13とバンプ電極12a〜12dとの密着性が高まるので、バンプ電極12a〜12dに対する補強性を高めることができる。
第2の絶縁層15bには更に、第1〜第4の内部端子電極24a〜24dに対応する開口ha〜hd及び第1のコンタクトホール導体18に対応する開口heが設けられている。開口ha〜heは、上下の導体層間の電気的接続を確保するために設けられるものである。第2の絶縁層15b上に形成された内部端子電極24a〜24dの一部は、その直下に設けられた第2の絶縁層15bの開口ha〜hdの内部に埋め込まれており(図4(b)参照)、これにより第1の絶縁層15a上の内部端子電極24a〜24dと電気的に接続される。なお、第1の絶縁層15aには内部端子電極に対応する開口ha〜hdは設けられていない。
第3の絶縁層15cには、開口ha〜heに加えて、第2のコンタクトホール導体19に対応する開口hfがさらに設けられている。第3の絶縁層15c上に形成された内部端子電極24a〜24dの一部は、その直下に設けられた第3の絶縁層15cの開口ha〜hdの内部に埋め込まれており(図4(b)参照)、これにより第2の絶縁層15b上の内部端子電極24a〜24dと電気的に接続される。
第4の絶縁層15dには開口ha〜hdが設けられているが、第1及び第2のコンタクトホール導体18,19に対応する開口he,hfは設けられていない。バンプ電極12a〜12dの一部は、第4の絶縁層15dの開口ha〜hdの内部に埋め込まれる。これにより、バンプ電極12a〜12dは第4の絶縁層15dに形成された開口ha〜hdを介して第3の絶縁層15c上の内部端子電極24a〜24dの上面にそれぞれ接続される。
図3に示すように、第3の絶縁層15c上に形成されるコンタクトホール導体18,19並びに内部端子電極24a〜24dはその所望の形成領域の全面に形成されている。これに対し、第2の絶縁層15b上に形成されるコンタクトホール導体18,19並びに内部端子電極24a〜24dは、第3の絶縁層15c上に形成されたものに比べて、中央部の導体が排除されたドーナツ形状となっている。さらに下層である第1の絶縁層15a上に形成されるコンタクトホール導体18,19並びに内部端子電極24a〜24dは、第2の絶縁層15b上に形成されたものに比べて、ループの導体幅が細く(中央の導体非形成領域の面積が大きく)なっている。
コンタクトホール導体18,19並びに内部端子電極24a〜24dは比較的広い面積を有する導体パターンであるため、その中央部においてめっきが成長しやすく、最下層から最上層までのすべての導体層において所望の形成領域の全面に形成すると、導体パターンの厚みの増加が強調されてしまい、最上層の導体パターンの上面に隆起が発生しやすい。特に、直流抵抗を低減するためスパイラル導体16,17の厚さを厚く(アスペクト比を高く)する場合、これと同時に形成されるコンタクトホール導体18,19や内部端子電極24a〜24dの厚さも厚くなり、その面内ばらつきも大きくなりやすい。つまり、最上層の導体パターンの上面の隆起が顕著となる。しかしながら、本実施形態のように下層の導体パターンの平面方向の中央部に空洞を設け、上層になるほど空洞の平面サイズを徐々に小さくすることで、最上層の上面の平坦性を高めることができる。
以下、最上層の隆起を防止するための導体パターンの積層構造について詳細に説明する。
図4(a)〜(c)は、最上層の隆起を防止するための導体パターンの2層の積層構造を示す略断面図であり、(a)は下層(1層目)の導体パターンの平面形状、(b)は上層(2層目)の導体パターンの平面形状、(c)は(a)及び(b)のX1−X1'線に沿った断面図である。なお、以下の例では導体パターンの形状を矩形とするが、図2及び図3に示したコンタクトホール導体18,19や内部端子電極24a〜24dのように、導体パターンの平面形状は矩形に限定されず、その機能や配置に合わせて任意に設定することができる。
図4(a)〜(c)に示すように、下層(第1の導体層LC1)の導体パターンP1(第1の導体パターン)は所定の導体形成領域S1内に形成されており、その平面形状はその中央に空洞部C1を有するドーナツ形状(閉ループ形状)である。導体パターンP1の周囲は絶縁層LI1で覆われており、絶縁層LI1を貫通する開口h1(第1の開口)から露出している。
図4(a)において、破線で示す開口h1の内側の平面領域(第1の開口領域)は、ハッチングで示す導体パターンP1が形成された領域(第1の領域)と、導体パターンP1が形成されていない領域(第2の領域)とを有している。第1の領域は、第1の開口領域のうちその中央部の空洞部C1を除いた領域であり、第2の領域は、開口領域のうち第1の領域を除いた領域、つまり空洞部C1である。
下層の導体パターンP1に重ねて設けられる上層(第2の導体層LC2)の導体パターンP2(第2の導体パターン)はその導体形成領域S2の全面に形成され、導体パターンP2は、平面視にて導体パターンP1の全面を覆っている。導体パターンP2の一部は導体パターンP1の中央の空洞部C1の内部にも埋め込まれる。すなわち、導体パターンP2は、開口h1の第1の領域と第2の領域の両方に埋め込まれている。導体パターンP2の周囲には絶縁層LI2が充填されている。
図12(a)に示したように、各導体層の導体パターンをその形成領域の全面に形成した場合にはめっき電流の集中によって隆起が発生しやすく、上層に行くほど隆起がより強調された形状となってしまう。しかし、図4に示すように、下層の導体パターンP1の中央に空洞部C1を設け、導体パターンP1の中央が陥没している場合には、下層の陥没と上層の隆起とが相殺されるので、上層の導体パターンP2の上面を概ね平坦にすることができる。
図4に示した積層構造の形成では、まず第1の導体形成領域S1に導体パターンP1を形成し、その上に絶縁層LI1を形成し、絶縁層LI1に開口h1を形成して導体パターンP1を露出させる。このとき、開口h1からは導体パターンP1の上面と側面とが露出する。次に、絶縁層LI1の上面のうち第1の導体形成領域S1と平面視にて重なる第2の導体形成領域S2に導体パターンP2を形成する。導体パターンP2は、平面視にて導体パターンP1の全面を覆うように形成し、これにより第1の導体パターンP1と第2の導体パターンP2とを接続する。
図5は、最上層の隆起を防止するための導体パターンの4層の積層構造を示す略断面図である。
図5に示すように、導体パターンの積層数がさらに多い場合、導体パターンの空洞部の面積が上層に向かうほど徐々に縮小するようにすればよい。すなわち、1〜3層目の導体パターンP1〜P3の平面形状はその中央に空洞部C1〜C3をそれぞれ有するドーナツ形状であり、2層目の導体パターンP2の空洞部C2の大きさは1層目のそれよりも小さく、3層目の導体パターンP3の空洞部C3の大きさは2層目のそれよりも小さい。最上層である4層目の導体パターンP4はその形成領域S4の全面に形成され、その一部は導体パターンP3の空洞部C3の内部にも埋め込まれる。このように導体パターンの積層数が増えた場合にも、最下層の意図的な陥没が上層に向かうにつれて徐々に平坦化するので、最上層の導体パターンの上面を概ね平坦にすることができる。
図6(a)〜(f)は、図4に示した下層の導体パターンの平面レイアウトの変形例を示す略平面図である。
図6(a)及び(b)に示す下層の導体パターンP1は、図4(a)と同様、矩形パターンの中央に空洞部C1を有する閉ループパターンである。このうち、図6(a)は、導体パターンP1の上層に形成される絶縁層LI2の開口h1が導体パターンP1の外周の外側にはみ出すことなく内側に収まっている。また図6(b)は、その上層の絶縁層に形成される開口h1が導体パターンP1の外周よりも外側にはみ出すように形成されている。ここでは開口h1がはみ出す方向は、導体パターンP1の長手方向と直交する方向(Y方向)である。
図6(c)及び(d)に示す下層の導体パターンP1は、矩形パターンの長手方向と平行な一辺が切り欠かれてなる略U字パターンである。このU字パターンも、矩形パターンの中央に空洞部C1を有するパターンの一つと見ることができる。このうち、図6(c)は、その上層の絶縁層に形成される開口h1が導体パターンP1の外周の内側に収まるように形成されている。また図6(d)は、その上層の絶縁層に形成される開口h1が導体パターンP1の外周よりも外側にはみ出すように形成されている。ここでは開口h1がはみ出す方向は、導体パターンP1の切り欠きがある方向である。
図6(e)及び(f)に示す下層の導体パターンP1は、矩形パターンの長手方向と直交する一辺が切り欠かれてなる略U字パターンである。このU字パターンも、矩形パターンの中央に空洞部C1を有するパターンの一つと見ることができる。このうち、図6(e)は、その上層の絶縁層に形成される開口h1が導体パターンP1の外周の内側に収まるように形成されている。また図6(f)は、その上層の絶縁層に形成される開口h1が導体パターンP1の外周よりも外側にはみ出すように形成されている。ここでは開口h1がはみ出す方向は、導体パターンP1の切り欠きがある方向である。
図6(a)〜(f)のいずれも、下層の導体パターンP1はその中央に空洞部C1を有する形状となっているので、これに重ねて設けられる上層の導体パターンをその形成領域の全面に形成したとしても、上層の導体パターンの上面の隆起が抑制されるので、最上層の導体パターンの上面を概ね平坦にすることができる。また、上層の導体パターンは下層の導体パターンの上面のみならず側面にも接しているので、両者の接合強度を向上させることができる。特に、図6(b)、(d)、(f)においては、開口h1を広げて下層の導体パターンP1の内側の側面のみならず外側の側面をも露出させるので、両者の接合強度をさらに向上させることができる。
次に、最上層の陥没を防止するための導体パターンの積層構造について詳細に説明する。
図7(a)〜(c)は、最上層の陥没を防止するための導体パターンの2層の積層構造を示す略断面図であり、(a)は下層(1層目)の導体パターンの平面形状、(b)は上層(2層目)の導体パターンの平面形状、(c)は(a)及び(b)のX1−X1'線に沿った断面図である。なお、以下の例でも導体パターンの形状を矩形とするが、図2及び図3に示したコンタクトホール導体18,19や内部端子電極24a〜24dのように、導体パターンの平面形状は矩形に限定されず、その機能や配置に合わせて任意に設定することができる。
図7(a)〜(c)に示すように、下層(第1の導体層LC1)の導体パターンP1(第1の導体パターン)は所定の導体形成領域S1内に形成されており、その平面形状は導体形成領域S1の略中央にのみ形成された島パターンである。なおこの島パターンは全周が絶縁領域で囲まれた孤島パターンではなく半島パターンである。島パターンは、その形成領域の外側に向かって一方向に引き出されている。形成領域の中央部にのみ導体パターンが形成されているので、周囲に空洞部C1を有するということができる。導体パターンP1の周囲は絶縁層LI1で覆われており、絶縁層LI1を貫通する開口h1(第1の開口)から露出している。
図7(a)において、破線で示す開口h1の内側の平面領域(第1の開口領域)は、ハッチングで示す導体パターンP1が形成された領域(第1の領域)と、導体パターンP1が形成されていない領域(第2の領域)とを有している。第2の領域は、第1の開口領域のうち少なくともその中央部を除いた領域、つまり空洞部C1であり、第1の領域は、開口領域のうち第2の領域を除いた領域である。
下層の導体パターンP1に重ねて設けられる上層(第2の導体層LC2)の導体パターンP2(第2の導体パターン)はその導体形成領域S2の全面に形成され、導体パターンP2は、平面視にて導体パターンP1の全面を覆っている。導体パターンP2の一部は導体パターンP1の周囲の空洞部C1の内部にも埋め込まれる。すなわち、導体パターンP2は、開口h1の第1の領域と第2の領域の両方に埋め込まれている。導体パターンP2の周囲には絶縁層LI2が充填されている。
図12(b)に示したように、各導体層の導体パターンをその広い形成領域の全面に形成した場合には中央に陥没が発生しやすく、上層に行くほど陥没が強調された形状となってしまう。しかし、図7に示すように、下層の導体パターンP1の周囲に空洞部C1を設け、導体パターンP1の中央が相対的に隆起している場合には、下層の隆起と上層の陥没とが相殺されるので、上層の導体パターンP2の上面を概ね平坦にすることができる。
図8は、最上層の隆起を防止するための導体パターンの4層の積層構造を示す略断面図である。
図8に示すように、導体パターンの積層数がさらに多い場合、導体パターンの面積が上層に向かうほど徐々に拡大するようにすればよい。すなわち、1〜3層目の導体パターンP1〜P3の平面形状はその中央にのみ形成され、その周囲には空洞部C1〜C3をそれぞれ有する隆起形状であり、2層目の導体パターンP2の大きさは1層目のそれよりも大きく、3層目の導体パターンP3の大きさは2層目のそれよりもさらに大きい。最上層である4層目の導体パターンP4はその形成領域S4の全面に形成され、その一部は導体パターンP3の周囲の空洞部C3の内部にも埋め込まれる。このように導体パターンの積層数が増えた場合にも、最下層の意図的な隆起が上層に向かうにつれて徐々に平坦化されるので、最上層の導体パターンの上面を概ね平坦にすることができる。
導体パターンの高さの面内ばらつきはその平面サイズによって異なる。導体パターンの平面サイズ(特に最小幅)がスパイラル導体の線幅よりも少し広い程度である場合、導体パターンの最上層の上面は中央部が隆起しやすい。しかし、導体パターンの平面サイズが十分に大きい場合には、導体パターンの最上層の上面は中央部が陥没しやすい。面積が大きすぎると、めっき電流は端部に流れる傾向があるため、めっきが端部に集中して厚みが増加する。そのため、端部が隆起し、中央部が相対的に陥没した形状となってしまう。いずれの場合も、導体パターンを単に積層しただけではその最上層の上面が平坦になりにくいことから、本発明では下層の導体パターンを以下に示す適切な形状(隆起防止パターン又は陥没防止パターン)とすることで最上層の平坦性を確保する。
図4〜図6に示した隆起防止パターンと図7及び図8に示した陥没防止パターンのどちらを採用するかは、従来の方法で実際に試作したときの結果から判断すればよいが、例えば、スパイラル導体の線幅に対して、1.5〜4倍程度の幅を有する導体パターンについては"隆起防止パターン(閉ループパターン又はU字パターン)"を採用し、スパイラル導体の線幅に対して、4倍以上の幅を有する導体パターンについては"陥没防止パターン"採用するようにしてもよい。
コンタクトホール導体18,19は、スパイラル導体16,17の内側という非常に限られた範囲内に形成されるものであり、スルーホール磁性体14を設ける場合にはその形成範囲はさらに限定される。そのため、コンタクトホール導体18,19の面積は比較的小さく、最上層に隆起が発生しやすい。したがって、コンタクトホール導体18,19には隆起防止パターンを採用することが好ましい。
これに対し、内部端子電極24a〜24dは、スパイラル導体16,17の外側に設けられ、コンタクトホール導体18,19よりも大きく形成することも可能である。また、集合基板上に多数の素子を形成する量産プロセスにおいて、隣接する素子間に共通の大きな内部端子電極を形成する場合には、内部端子電極の面積は非常に大きくなる。このように、内部端子電極の面積が比較的大きく、最上層に陥没が発生しやすい場合には内部端子電極24a〜24dには陥没防止パターンを採用することが好ましい。
ただし、スパイラル導体16,17のループサイズを大きくしたり、スルーホール磁性体14を省略したりする場合には、比較的大きなコンタクトホール導体18,19を形成できるので、この場合には、コンタクトホール導体18,19に陥没防止パターンを採用したほうがよい。また、スパイラル導体16,17のループサイズを大きくして内部端子電極24a〜24dの形成領域が非常に限定されるような場合、内部端子電極24a〜24dの面積が小さくなるので、この場合には、内部端子電極24a〜24dに隆起防止パターンを採用したほうがよい。
図9は、各導体層の平面レイアウトの他の例を示す略平面図である。図示のように、スパイラル導体16,17の内側のスルーホール磁性体14(図3参照)を省略してコンタクトホール導体18,19のサイズを大きくした場合には、コンタクトホール導体18,19に陥没防止パターンを採用したほうがよい。
図10は、集合基板の平面レイアウトを示す略平面図である。図示のように、内部端子電極24a〜24bが隣接する4つの素子のコーナー部に位置する場合は、それらが一体化された集合端子電極BBとして形成され、その面積が非常に大きくなる。この場合には、集合端子電極BBに対して陥没防止パターンを採用することが好ましい。
図11は、コイル部品1の製造方法を示すフローチャートである。
コイル部品1の製造ではまず磁性ウェハーを用意し、(ステップS11)、磁性ウェハーの表面に多数のコモンモードフィルタ素子がレイアウトされた薄膜コイル層11を形成する(ステップS12)。
薄膜コイル層11は絶縁層を形成した後、絶縁層の表面に導体パターンを形成する工程を繰り返すことにより形成することができる。以下、薄膜コイル層11の形成工程について詳細に説明する。
薄膜コイル層11の形成では、まず絶縁層15aを形成した後、絶縁層15a上に第1のスパイラル導体16及び内部端子電極24a〜24dを形成する。次に、絶縁層15a上に絶縁層15bを形成した後、絶縁層15b上に第2のスパイラル導体17及び内部端子電極24a〜24dを形成する。次に、絶縁層15b上に絶縁層15cを形成した後、絶縁層15c上に第1及び第2の引き出し導体20,21及び内部端子電極24a〜24dを形成する。さらに絶縁層15c上に絶縁層15dを形成する(図2参照)。
ここで、各絶縁層15a〜15dは、下地面に感光性樹脂をスピンコート、または感光性樹脂フィルムを貼り付けし、これを露光及び現像することにより形成することができる。特に、第1の絶縁層15aには開口hgが形成され、第2の絶縁層15bには開口ha〜he、hgが形成され、第3の絶縁層15cには開口ha〜hgが形成され、第4の絶縁層15dには開口ha〜hd及び開口hgが形成される。
導体パターンの材料にはCuを用いることが好ましい。導体パターンは蒸着法又はスパッタリング法により導体層を形成した後、その上にパターニングされたレジスト層を形成し、そこに電解めっきを施し、レジスト層及び不要な下地導体層を除去することにより形成することができる。
このとき、コンタクトホール導体18,19を形成するための開口(貫通孔)he,hfの内部がめっき材料で埋められ、これによりコンタクトホール導体18,19が形成される。また、内部端子電極24a〜24bを形成するための開口ha〜hdの内部もめっき材料で埋められ、これにより内部端子電極24a〜24dが形成される。
次に、薄膜コイル層11の表層である絶縁層15d上にバンプ電極12a〜12dの集合体であるバンプ電極12を形成する(ステップS13)。バンプ電極12の形成方法は、まず絶縁層15dの全面に下地導体層をスパッタリング法により形成する。下地導体層の材料としてはCu等を用いることができる。その後、ドライフィルムを貼り付け、露光及び現像することにより、バンプ電極12a〜12d及び第1及び第2の引き出し導体20,21を形成すべき位置にあるドライフィルムを選択的に除去してドライフィルム層を形成し、下地導体層を露出させる。なお、バンプ電極の形成はドライフィルムを用いた方法に限定するものではない。
さらに電解めっきを行い、下地導体層の露出部分を成長させることにより、肉厚なバンプ電極12a〜12dの集合体を形成する。このとき、絶縁層15dに形成された開口ha〜hdの内部がめっき材料で埋められ、これによりバンプ電極12a〜12dと内部端子電極24a〜24dとが電気的に接続される。
その後、ドライフィルム層を除去し、全面をエッチングして不要な下地導体層を除去することにより、略柱状のバンプ電極12が完成する。この例では、略柱状のバンプ電極12は、X方向及びY方向に隣接する4つのチップ部品に共通の電極として形成されるが、個々にバンプ電極が形成されても良い。バンプ電極12は後述のダイシングによって4分割され、これにより各素子に対応する個別のバンプ電極12a〜12dが形成される。
次に、バンプ電極12が形成された磁性ウェハー上に複合フェライトのペーストを充填し、硬化させて、磁性樹脂層13を形成する(ステップS14)。また、複合フェライトのペーストを開口hgの内部にも充填することにより、スルーホール磁性体14を同時に形成する。このとき、磁性樹脂層13を確実に形成するため多量のペーストが充填され、これによりバンプ電極12は磁性樹脂層13内に埋没した状態となる。そのため、バンプ電極12の上面が露出するまで磁性樹脂層13を研磨して所定の厚さにすると共に表面を平滑化する(ステップS15)。さらに、磁性ウェハーについても所定の厚さとなるように研磨する(ステップS15)。
その後、磁性ウェハーのダイシングによって各コモンモードフィルタ素子を個片化(チップ化)する(ステップS16)。このとき、図10に示すように、X方向に延びる切断ラインD1及びY方向に延びる切断ラインD2はバンプ電極12の中央を通過し、得られたバンプ電極12a〜12dの切断面は、チップ化した部品(チップ部品)の側面に露出することになる。バンプ電極12a〜12dの2つの側面は実装時において半田フィレットの形成面となるので、半田実装時の固着強度を高めることができる。
次に、チップ部品のバレル研磨を行ってエッジを除去した後(ステップS17)、電気めっきを行い(ステップS18)、これにより図1に示すバンプ電極12a〜12dが完成する。このように、チップ部品の外表面をバレル研磨することによりチップ欠け等の破損が生じにくいコイル部品を製造することができる。また、チップ部品の外周面に露出するバンプ電極12a〜12dの表面をめっき処理するため、バンプ電極12a〜12dの表面を平滑面とすることができる。
以上説明したように、本実施形態による電子部品およびその製造方法によれば、導体パターンを積層する際に各導体層の導体パターンの上面の高さばらつきを抑えることが可能な電子部品を簡易且つ低コストで製造することができる。また、バンプ電極12a〜12dの周囲に磁性樹脂層13を形成しているので、バンプ電極12a〜12dを補強することができ、バンプ電極12a〜12dの剥離等を防止することができる。また、本実施形態によるコイル部品1の製造方法は、バンプ電極12a〜12dをめっきにより形成しているので、例えばスパッタリングで形成する場合よりも加工精度の高く安定した外部端子電極を提供することができる。さらに、工数の削減及び低コスト化を図ることができる。
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能であり、それらも本発明に包含されるものであることは言うまでもない。
例えば、上記実施形態においては、バンプ電極の周囲に磁性樹脂層を充填しているが、本発明においては、磁性樹脂層に限定されず、磁性のない単なる絶縁体層であってもよい。また、スルーホール磁性体14を省略することも可能である。
また、上記実施形態においては、3層導体層構造の薄膜コイル層11を例に挙げたが、本発明において導体層の積層数はいくつであってもよく、3層構造に限定されない。また、上記実施形態においては、コイル部品としてコモンモードフィルタを例に挙げたが、本発明はコモンモードフィルタに限定されるものではなく、例えばトランスや電源系コイルなど、他の種々のコイル部品に適用可能である。さらには、コイル部品に限らず、めっきにより薄膜パターンが形成される種々の電子部品に適用することが可能である。