JP6017370B2 - 吊荷の姿勢制御装置 - Google Patents
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Description
特許文献1に記載の吊荷の姿勢制御装置はコマ及びモータを含んで構成されている。コマ及びモータは、ワイヤーロープ等により水平に懸吊される吊りビームの上に設置されている。モータの出力軸とコマの回転軸とはベルト伝動機構を介して連系しており、これにより、モータがコマの回転駆動源として機能している。モータの作動については、地上から無線方式により遠隔操作され得る。
また、特許文献1に記載のような吊荷の姿勢制御装置において、被制御側の良好な応答性を得るべく、フライホイールの大型化・重量化により、操作側の慣性モーメントを大きくすると、吊荷の姿勢制御装置の総重量が増大するので、クレーン等がその吊り能力を十分に発揮できない。
また本発明によれば、操作側に、電動機、制御ユニット、及び電源が配置されることにより、その分、被制御側の慣性モーメントを小さく抑えることができるので、電動機の小型化・軽量化を実現することができ、ひいては、吊荷の姿勢制御装置の小型化・軽量化を実現することができる。
図1は、本発明の一実施形態における吊荷の姿勢制御装置の吊荷への設置を示す。図2は、吊荷の姿勢制御装置の概略構成を示す。図3は、吊荷の姿勢制御装置の縦断面を示す。
尚、以下の説明では、上方から見た平面視で、反時計回りの方向に対応する符号をプラス(+)とし、時計回りの方向に対応する符号をマイナス(−)とする。
吊荷4は水平方向に延在しており、その長手方向を、本実施形態では吊荷の基準方向S(以下、単に「基準方向S」と称する)としている。
姿勢制御装置10は吊荷4の回転(特に、ヨーイング)を制御するものである。ここで、吊荷4の回転の中心軸上に、後述する軸13(図2、図3参照)が位置するように、姿勢制御装置10を吊荷4の上面に取り付けることが好ましい。
ケース11は、円形ラック12と、軸13と、フライホイール14と、2つの電動機15と、2つのピニオンギヤ16と、制御ユニット17と、電源18と、方位センサ19とを収容する。ケース11の底面を構成する基礎部材11aは板状であり、この基礎部材11aが、吊荷4の上面の中央部に着脱可能に取り付けられている。
円形ラック12は、鉛直方向に厚みを有する円環状である。円形ラック12は、その中心と軸13の中心とが一致するように、基礎部材11aの上面にブラケット12aを介して取り付けられている。円形ラック12の外側の円周面には、図示しない歯部が形成されている。この歯部には、ピニオンギヤ16の歯部が噛み合っている。
フライホイール14の上面の外周縁部には、フライホイール14の回転駆動源である2つの電動機15が設置されている。2つの電動機15は、各々がフライホイール14の同一直径上に配置されて、フライホイール14の周方向に互いに間隔を空けて配置されている。
各電動機15の出力軸15aの下端には、それぞれ、ピニオンギヤ16が取り付けられている。ピニオンギヤ16の外周面には歯部(図示せず)が形成されており、この歯部が、円形ラック12の歯部に噛み合っている。
電源18は、図示しない電力線を介して、2つの電動機15及び制御ユニット17に電力を供給する。電源18としては、例えば、固形タイプのバッテリが用いられ得る。
制御ユニット17は、無線通信用の受信部(図示せず)と、2つの電動機15の運転を制御する運転制御部(図示せず)と、を含んで構成される。
方位センサ19によって測定された方位(すなわち、基準方向Sの方位)に対応する信号は、図示しない送信部から、無線通信により、制御ユニット17の受信部と、操縦装置20(図1参照)の受信部(図示せず)とに伝達される。尚、方位センサ19として、例えば、ジャイロコンパスが用いられる。
操縦装置20の入力部21で入力された命令に基づいて生成される命令信号は、操縦装置20の送信部から、無線通信により、制御ユニット17の受信部に伝達される。
操縦装置20の表示部22は、本発明の「表示装置」として機能するものであり、方位センサ19で測定された基準方向Sの方位に対応する信号に基づいて、基準方向Sの方位を表示する。
制御ユニット17の運転制御部と2つの電動機15とは、図示しない信号線により接続されている。制御ユニット17の運転制御部は、操縦装置20からの命令信号に基づいて、又は、この命令信号に加えて、方位センサ19にて測定された基準方向Sの方位に対応する信号に基づいて、2つの電動機15の運転の制御を行う。
図4は、吊荷4の角速度ω4と、フライホイール14の角速度ω14と、時間tとの関係を示す。図5は、操作側の回転方向と、被制御側の回転方向とを示す。ここで、操作側には、フライホイール14、電動機15、ピニオンギヤ16、制御ユニット17、電源18が含まれる。一方、被制御側には、吊荷4、ケース11、円形ラック12、軸13、方位センサ19が含まれる。吊荷4の角速度ω4は、地面に対する吊荷4の角速度(対地角速度)である。フライホイール14の角速度ω14は、地面に対するフライホイール14の角速度(対地角速度)である。尚、図5では、ケース11、円形ラック12、軸13、ピニオンギヤ16、方位センサ19の図示を省略している。
I14:軸13周りのフライホイール14の慣性モーメント
I15:軸13周りの電動機15の慣性モーメント
I16:軸13周りのピニオンギヤ16の慣性モーメント
I17:軸13周りの制御ユニット17の慣性モーメント
I18:軸13周りの電源18の慣性モーメント
ir:出力軸15a周りの電動機15のロータの慣性モーメント
i16:出力軸15a周りのピニオンギヤ16の慣性モーメント
I4:吊荷4の慣性モーメント
I11:ケース11の慣性モーメント
I12:円形ラック12の慣性モーメント
I13:軸13の慣性モーメント
I19:方位センサ19の慣性モーメント
この後、図4に示す時刻t1にて、電動機15の運転を開始して、電動機15の出力軸15aの回転を反時計回りに加速させる(図5(b)の回転方向R1参照)。この出力軸15aの回転に伴って、ピニオンギヤ16も反時計回りに回転する。また、ピニオンギヤ16の歯部が円形ラック18の歯部に噛み合っているので、フライホイール14自体も軸13を回転中心として反時計回りに回転する(図5(b)の回転方向R2参照)。
ω4:吊荷4の角速度
ω14:フライホイール14の角速度
ω15a:電動機15の出力軸15aの角速度
ここで、電動機15の出力軸15aの角速度ω15aは、電動機15のステータに対する出力軸15aの角速度である。
次に、時刻t2から時刻t3までの間では、電動機15の出力軸15aの角速度ω15aを一定にする。これにより、フライホイール14の角速度ω14が角速度ω14cで一定になる。また、吊荷4の角速度ω4が角速度ω4cで一定になる。
時刻t4以降については、電動機15の出力軸15aの角速度ω15aをゼロのままとする。これにより、フライホイール14の角速度ω14がゼロで一定となる(すなわち、地面に対して静止する)。また、吊荷4の角速度ω4がゼロのままとなる(すなわち、地面に対して静止する)。
このようにして、吊荷4が地面に対して静止している状態(図5(a)参照)から、吊荷4を、その上方から見た平面視で時計回りにθr[rad]回転させて静止させる(図5(b)、(c)参照)ことができる。
図6は、吊荷4の角速度ω4と、フライホイール14の角速度ω14と、時間tとの関係を示す。
上述の吊荷4の姿勢制御方法の第1例と異なる点について説明する。
図6に示す時刻t11から時刻t12までの間では、吊荷4に風が作用し、この結果、フライホイール14の角速度ω14と吊荷4の角速度ω4との双方が加速されて、角速度ω0に達する。
時刻t13より、吊荷4の角速度ω4を減速するべく、フライホイール14の角速度ω14を角速度ω0から加速させる。ここで、フライホイール14の角速度ω14を角速度ω0から加速させることにより、その反作用として、被制御側(吊荷4)の角速度ω4がトルクTuにより減速される。このフライホイール14の角速度ω14の加速は、電動機15の出力軸15aの角速度ω15aを加速することにより実現される。
=ω0・(Iw+Id) ・・・(6)
このようにして、吊荷4に風が作用し、操作側と被制御側との双方が一体的に角速度ω0で回転している状態から、吊荷4の回転を停止させることができる。
図7は、吊荷4の姿勢制御方法の第3例を示すブロック線図である。
上述の吊荷4の姿勢制御方法の第1例と異なる点について説明する。
次に、制御ユニット17の運転制御部では、操縦装置20からの命令信号と、方位センサ19にて測定された基準方向Sの方位に対応する信号と、に基づいて、電動機15の運転の制御を行う。具体的には、制御ユニット17の運転制御部では、操縦装置20からの目標方位と、方位センサ19からの測定方位と、の差分を算出し、この差分が小さくなるように、電動機15の運転を制御する。
そして、方位センサ19にて基準方向Sの方位を測定し、この測定方位と、操縦装置20からの目標方位と、の差分を算出し、この差分が小さくなるように、電動機15の運転を制御する。
このようにして、電動機15の運転をフィードバック制御することにより、吊荷4の基準方向Sが任意の方位になるように吊荷4を回転させることができる。また、吊荷4の基準方向Sを任意の方位に向かわせた状態で、吊荷4の回転を抑制して吊荷4の姿勢を保持することができる。
また本実施形態によれば、姿勢制御装置10の小型化・軽量化を実現することができるので、クレーン等の吊り能力のうち、姿勢制御装置10の自重により損失となる部分を軽減することができ、ひいては、クレーン等の吊り能力を有効に使うことができる。
また本実施形態によれば、クレーン等により吊荷4をその取付高さまで揚重する間に、姿勢制御装置10を用いて、吊荷4の基準方向Sを任意の方向に向けることができるので、作業効率を向上させることができる。
また本実施形態によれば、風の影響により吊荷4が回転しかねない状況においても、姿勢制御装置10を用いて吊荷4の姿勢を制御することにより、吊荷4に対する風の影響を抑制することができる。
また本実施形態によれば、電動機15は、その出力軸15aが正逆双方向に回転可能である。これにより、操作側を回転させるトルクTm、Tdの方向として、時計回りの方向と反時計回りの方向との一方を適宜選択することができる。
図8(a)は、姿勢制御装置10の第1変形例を示す。図8(b)は、姿勢制御装置10の第2変形例を示す。
図3に示す姿勢制御装置10と異なる点について説明する。
レール36は平面視で円環状であり、略菱形の断面形状を有する。レール36は、ブラケット38を介して、ケース11の側壁に取り付けられている。
フライホイール14の下面には、複数の車輪37が回転自在に取り付けられている。複数の車輪37は、レール36の内周部(頂部)を鉛直方向で挟みつつレール36上を転動する複数の車輪と、レール36の外周部(頂部)を鉛直方向で挟みつつレール36上を転動する複数の車輪と、からなる。
従って、円形スライダ35が、フライホイール14及びそれに搭載される電動機15、制御ユニット17、電源18の重量を受け止めつつ、フライホイール14を回転自在に支持する。
例えば、被制御側の慣性モーメントIwが図1の状態より2倍になった場合には、図9(a)に示すように、2つの姿勢制御装置10を上下に積み重ねて、吊荷4の上面の中央部に設置してもよい。
また、図9(b)に示すように、2つの姿勢制御装置10が、吊荷4の上面のうち、吊荷4の長手方向で一側と他側とにそれぞれに設置されてもよい。
また、複数の姿勢制御装置10が、それぞれ、吊荷4上の任意の場所に配置されてもよい。
図10に示すように、吊具40は、例えば、架台41とワイヤーロープ42とを含んで構成される。
クレーン等のワイヤーロープ1は、フック2及び玉掛け用ワイヤーロープ3を介して、直方体状の架台41を吊下支持している。尚、架台41の形状は直方体状に限らない。
架台41の上面の中央部には、姿勢制御装置10が着脱可能に取り付けられている。
ここで、吊荷4の回転の中心軸上に、フライホイール14の回転中心が位置するように、姿勢制御装置10を架台41の上面に取り付けることが好ましい。
また、上述の実施形態における姿勢制御装置10では、方位センサ19で基準方向Sの方位を測定する構成としたが、この他、方位センサ19を省略して、作業者が、吊荷4の基準方向Sの方位を目視により確認しつつ、操縦装置20を操作することで、姿勢制御装置10を用いて、吊荷4の姿勢を制御してもよい。
また、上述の実施形態にて示した姿勢制御装置10は、その天地が逆転しても同様の機能を実現し得ることはいうまでもない。
2 フック
3 ワイヤーロープ
4 吊荷
10 吊荷の姿勢制御装置
11 ケース
11a 基礎部材
12 円形ラック
12a ブラケット
13 軸
14 フライホイール
14a 貫通孔
15 電動機
15a 出力軸
16 ピニオンギヤ
17 制御ユニット
18 電源
19 方位センサ
20 操縦装置
21 入力部
22 表示部
30 スラスト軸受
31 ベアリング
32 回転軸
35 円形スライダ
36 レール
37 車輪
38 ブラケット
40 吊具
41 架台
42 ワイヤーロープ
S 吊荷の基準方向
Claims (8)
- 線状部材により吊下支持される吊荷の姿勢を制御する装置であって、
前記吊荷に取り付けられる基礎部材と、
鉛直な線を軸中心として前記基礎部材に対して回転自在に前記基礎部材に設けられるフライホイールと、
前記フライホイールの回転駆動源である電動機と、
前記電動機の運転を制御する制御ユニットと、
前記電動機及び前記制御ユニットに電力を供給する電源と、
を含んで構成され、
前記電動機、前記制御ユニット、及び前記電源が、前記フライホイールに搭載されることを特徴とする吊荷の姿勢制御装置。 - 前記電動機は、その出力軸が、鉛直な線に沿って、前記フライホイールより延びており、
前記吊荷の姿勢制御装置は、前記電動機の出力軸の回転力により、前記フライホイールを前記基礎部材に対して回転させる回転機構を更に含んで構成され、
前記フライホイールの回転方向が前記電動機の出力軸の回転方向に一致することを特徴とする請求項1に記載の吊荷の姿勢制御装置。 - 前記基礎部材又は前記吊荷に取り付けられて前記吊荷の基準方向の方位を測定する方位センサを更に含んで構成され、
前記制御ユニットは、前記方位センサからの信号に基づいて、前記電動機の運転を制御することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の吊荷の姿勢制御装置。 - 前記方位センサからの信号に基づいて、前記吊荷の基準方向の方位を表示する表示装置を更に含んで構成されることを特徴とする請求項3に記載の吊荷の姿勢制御装置。
- 前記基礎部材又は前記吊荷に取り付けられて前記吊荷の基準方向の方位を測定する方位センサと、この方位センサからの信号に基づいて、前記吊荷の基準方向の方位を表示する表示装置と、を更に含んで構成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の吊荷の姿勢制御装置。
- 複数の前記電動機が、前記フライホイールの周方向に互いに間隔を空けて配置されることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載の吊荷の姿勢制御装置。
- 前記電動機は、その出力軸が正逆双方向に回転可能であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1つに記載の吊荷の姿勢制御装置。
- 前記吊荷は、前記線状部材によって吊下支持される吊具により吊下支持され、
前記吊荷の姿勢制御装置は、前記吊荷に取り付けられる代わりに、前記吊具に取り付けられることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1つに記載の吊荷の姿勢制御装置。
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