JP6017194B2 - 骨、軟骨または皮膚に関連する疾患の治療もしくは予防剤 - Google Patents
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Description
[2] ヒアルロン酸産生促進剤、色素沈着抑制剤、アルカリフォスファターゼ活性抑制剤または前駆破骨細胞分化抑制剤である、[1]記載の治療もしくは予防剤。
[3] 骨粗しょう症、変形性関節炎または光老化の治療もしくは予防剤である、[1]記載の治療もしくは予防剤。
[4] Hyp−Gly−Pro、Hyp−Gly−Pro−Hypまたはこれらの薬学上許容される塩を含有する、飲食品、化粧品または飼料。
また、本発明の治療もしくは予防剤は、天然コラーゲンに由来するペプチドであるHyp−Gly−Pro、Hyp−Gly−Pro−Hypを含有するため、日常的に摂取または塗布しても極めて安全である。そこで、本ペプチド等のかかる効果を利用して、本ペプチド等を含有する飲食品、化粧品または飼料としても有用である。
1.Hyp−Gly−Pro、Hyp−Gly−Pro−Hypまたはこれらの薬学上許容される塩
本発明に用いられるペプチドは、Hyp−Gly−ProおよびHyp−Gly−Pro−Hypであり、本ペプチドは薬学上許容される塩とすることができる。好ましいペプチドとして、Hyp−Gly−Proが挙げられる。
「薬学上許容される塩」としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、コハク酸塩、シュウ酸塩等の有機酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等の無機塩基塩、トリエチルアンモニウム塩等の有機塩基塩等が挙げられる。
本ペプチドは、ゼラチンにエンド型プロテアーゼおよびエキソ型プロテアーゼの2種以上を組み合わせて加水分解することによっても製造することができる。
具体的には、ヒドロキシプロリンの水酸基の化学修飾としては、例えばO−アセチル化等が挙げられる。N末アミノ酸のアミノ基の化学修飾としては、例えばポリペプチジル化、スクシニル化、マレイル化、アセチル化、脱アミノ化、ベンゾイル化、アルキルスルホニル化、アリルスルホニル化、ジニトロフェニル化、トリニトロフェニル化、カルバミル化、フェニルカルバミル化、チオール化等が挙げられる。C末アミノ酸のカルボキシル基の化学修飾としては、例えばエステル化、アミド化等が挙げられる。さらに、本ペプチドをカチオン化する場合は、エチレンジアミン化、スペルミン化などを行うことができる。
本ペプチド等は、後述の評価試験に記載の通り、線維芽細胞のヒアルロン酸産生促進作用、前駆軟骨細胞のアルカリフォスファターゼ抑制作用、および破骨細胞の分化抑制作用を有する。従って、本ペプチド等は、骨、軟骨または皮膚に関連する疾患を治療もしくは予防することができる。
「骨、軟骨または皮膚に関する疾患」としては、例えば、骨粗しょう症、骨ペイジェット病、悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症等の骨カルシウム代謝疾患治療;関節炎、慢性進行性関節炎、変形性関節炎、コラーゲン誘導性関節炎、若年性慢性関節炎、脊椎関節炎、リウマチ性関節炎、若年性慢性関節リウマチ及びその他のリウマチ性疾患;光老化、切り傷、刺し傷、術創、褥瘡、やけど(熱、凍結、化学物質、電気及び放射線等による)、皮膚の擦過又は暴行、骨髄炎、整形外科的創傷、肌荒れ等が挙げられる。
本ペプチドの投与量は、患者の状態や体重、化合物の種類、投与経路等によって異なるが、成人1日当たり、経口投与の場合は、例えば、約0.1〜1000mg、好ましくは約1〜500mg、より好ましくは約10〜200mgが挙げられ、患部に直接投与する場合は、例えば、約0.01〜200mg、好ましくは約0.1〜100mg、より好ましくは約1〜50mgが挙げられる。その他の形態の製剤は、これらの投与量を参考にして適宜決めることができる。これら製剤は、1日1〜数回に分けて投与するか、または1〜数日に1回投与することができる。
他の有効成分として、例えばグルコサミンまたはその薬学上許容される塩、コンドロイチン硫酸などが挙げられる。特に、グルコサミンまたはその薬学上許容される塩は、本ペプチドによる効果を向上させる働きがあるため好ましい。他の有効成分として、骨塩の沈着促進のために、カルシウム、糖転移ヘスペリジン等を用いることができ、またコラーゲンの合成・沈着促進等のためにビタミンC等を用いることもできる。さらに、他の有効成分として、本ペプチド以外のペプチドまたはアミノ酸を含んでいても良い。その場合、コラーゲンまたはゼラチンを加水分解して本ペプチドを含有するコラーゲンペプチドを得て、精製せずにそのまま混合物として使用することもできる。
本ペプチド等は、天然コラーゲンに由来するペプチドであるため、日常的に摂取または塗布しても極めて安全である。そこで、本ペプチド等の優れたヒアルロン酸産生促進作用、アルカリフォスファターゼ抑制作用および破骨細胞分化抑制作用等の効果を利用した、本ペプチド等を含有する飲食品、化粧品または飼料としても有用である。本発明の飲食品、化粧品または飼料における本ペプチド等は、利用する効果に応じて適宜、含有量を変更して用いることができる。
前記のペプチド固相合成法を用いて、以下のペプチドを合成した。
(実施例1)Hyp−Gly−Pro
(実施例2)Hyp−Gly−Pro−Hyp
(比較例1)Pro−Hyp−Gly
(比較例2)Gly−Pro−Hyp
これらのペプチドはいずれも公知のペプチドである。
[ヒアルロン酸産生促進作用]
J. R. Martinsらのヒアルロン酸測定法(Anal Biochem., 319(1): 65-72 (2003))に準じて評価した。
ヒアルロン酸は、分子量1000〜5000kDaの陰イオン性多糖でグルクロン酸−アセチルグルコサミンのニ糖の繰り返しで構成されている。正常ヒト皮膚線維芽細胞NHDF(クラボウ社製)における細胞当たりのヒアルロン酸産生量を測定して、コントロールに対するヒアルロン酸産生促進作用を評価した。
本試験において、測定キットはR&D社製DuoSet(製品コードDY3614)を使用した。NHDF細胞を8×103cells/wellになるように96ウェルプレートに播種し、接着安定後、サンプルを添加した。添加後24時間の培地上清を試験試料とした。試料中のヒアルロン酸量をアグリカンとヒアルロン酸が会合体を形成する性質を利用し、サンドイッチ法を用いてヒアルロン酸のみを特異的に検出・定量した。以下にその試験結果を記す。
[色素沈着抑制作用]
近年、チロシナーゼに関連するタンパクであるTRP-1とTRP-2が黒色のユーメラニン生成に関与することが、遺伝子レベルおよびタンパクレベルで明らかにされた。特に、TRP-1はbrown遺伝子座の産物であり、5,6−ジヒドロキシインドール−2−カルボン酸(DHICA)酸化活性を有すること、TRP-2はslaty遺伝子座の産物であり、ドーパクロームからDHICAへの異性化を触媒する酵素と同一であることが示された。これら3種の酵素の協調的な発現により黒色のメラニンが生成する。本試験ではマウスB16メラノーマ細胞を用いて、上記酵素TRP-1、TRP-2の発現抑制効果を確認した。
メラノーマ細胞を2×104cells/ml×10mlの濃度で100mmシャーレに播種し、2日間、前培養を行った後、培地を試験用無血清DMEM/F12(1:1)培地に変え、試料を添加し、3日間培養した。培養後、回収した細胞にTrizol溶液を1ml加え、プロトコールに従ってtotal RNAを調整した。そして、逆転写酵素にて逆転写し、リアルタイムPCRにて各遺伝子発現量を測定した。GAPDHにて各値を補正し、controlを1.0とし、各遺伝子発現量を計算した。
[アルカリフォスファターゼ抑制作用]
Y. Nakamuraらの軟骨細胞分化培養法(J Pharmacol Sci 109, 413-423 (2009))に準じて評価した。
前軟骨細胞ATDC5は、数日間(約5〜7日間)培養することで石灰化を起こし、さらに培養することで肥大化、石灰化、最後はアポトーシスへと分化していく性質を持った細胞である。この前軟骨細胞の石灰化を抑制することは、関節軟骨を想定した場合に変形性関節症などの関節炎によって起こる痛みの原因(石灰化)を緩和、若しくは遅延できると想定しており、軟骨の再生をin virtoで評価できる系として汎用されている。ATDC5が石灰化を起こす前兆としてアルカリフォスファターゼ(ALP:リン酸モノエステル加水分解酵素)を細胞膜上に排出させることが知られている。このALPの基質となるナフトール又はその誘導体のリン酸エステルがALPに分解されて生じるナフトール又は誘導体がジアゾカップリング反応を起こして、不溶性のアゾ色素を生じる。これらの反応を利用して、ATDC5が石灰化するステップに移る前過程を抑制可能かどうか検証するスクリーニング系である。ATDC5細胞を1×104個/wellになるように播種し、7日間培養した。
試験時には培地を捨て、まずPBSで2回洗浄、0.1% TritonX-100を含む0.1Mトリス−塩酸緩衝液(pH 7.5) 100μl/wellを加えて、細胞けん濁液Aを作製した。次に、0.05M 2−アミノ−2−メチルプロパノール、2mM MgCl2および10mM p−ニトロフェニルホスホン酸の染色液Bを作製した。この染色液B 200μlに細胞けん濁液Aを10μl添加した。37℃で30分間、反応させ、反応後速やかに、405nmのp−ニトロフェノールの吸光度を測定した。コントロールのALP活性を100%とした各ペプチドのALP活性の値を、以下に記す。
[破骨細胞分化抑制作用]
Y. Kobayashiらの破骨細胞分化培養法(J. Bone Miner. Metab., 22: 318-328 (2004))に準じて評価した。
造血細胞を用いた破骨細胞形成系で実験を行なった。8週齢の雄性ddyマウス(東京実験動物)から大腿骨、脛骨を摘出し、筋肉、軟骨などをきれいに取り除いた。骨髄細胞は骨髄空から採取し、シャーレ上で10%FBS(GIBCO)、ロイコプロール(協和発酵)2 uint/ml、ペニシリンGカリウム(明治製菓) 100 units/mlを添加したα-MEM(Minimum Essential Medium Alpha Medium培地:GIBCO)を用い、37℃、5%CO2の条件下で培養した。3日後、T-EDTA(SIGMA)によりマクロファージ様造血細胞を採取した。洗浄後1400Gで4分間遠心し、実験に用いる培地へ交換を行い、培養を開始した。培地交換は2日後に行った。
分離したマクロファージ様造血細胞を1×104/100μL/wellづつ96well細胞培養プレートに播種した。コントロールとして20 ng/mLのM−CSF(R&D)および10 ng/mLのRANKL(WAKO)を添加し、さらにペプチドを各々(total)1mM添加した。96well細胞培養プレート上に播種したものは、培養約64時間後に100%メタノール(WAKO)で固定した。3又は4回水洗後、酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ(TRAP)染色試液SIGMA-ALDRICH 387A-IKT(SIGMA)と37℃で5分間反応させ、光学顕微鏡下で観察した。TRAP陽性多核細胞形成および数を測定した後、顕微鏡デジタルカメラシステムPenguin 600CL(ピクセラコーポレーション)を用いて、細胞画像を取り込み、上記システム専用ソフトウェアであるIn Studio(ピクセラコーポレーション)を用いて画像解析を行った。
Claims (4)
- Hyp−Gly−Pro、Hyp−Gly−Pro−Hypまたはこれらの薬学上許容される塩を含有する、骨、軟骨または皮膚に関連する疾患の治療もしくは予防剤。
- ヒアルロン酸産生促進剤、色素沈着抑制剤、アルカリフォスファターゼ活性抑制剤または前駆破骨細胞分化抑制剤である、請求項1記載の治療もしくは予防剤。
- 骨粗しょう症、変形性関節炎または光老化の治療もしくは予防剤である、請求項1記載の治療もしくは予防剤。
- Hyp−Gly−Pro、Hyp−Gly−Pro−Hypまたはこれらの薬学上許容される塩を含有する、骨、軟骨または皮膚に関連する疾患の治療もしくは予防のための飲食品、化粧品または飼料。
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