JP6016386B2 - X線光学装置 - Google Patents

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Description

本発明は、X線を被写体に照射するためのX線光学装置に関し、特に、発散しながら進行するX線を平行化して出射するX線光学装置に関する。
X線を1次元平行化するために、いくつかの光学装置が考案されている。金属平板を一定間隔で積層したいわゆるソーラースリットはその一つであり、X線の進行方向と平行に金属平板を積層し、X線の非平行成分を金属平板に吸収させ、一定範囲の平行成分だけを透過させる。X線が金属平板で反射すると、ソーラースリットを透過するX線の非平行成分が増加し平行度が下がる。このため、特許文献1では、金属箔の表面に面粗さを持たせて反射を防止し、所定の平行成分のX線のみを透過させ、高精度の平行X線ビームを形成している。ソーラースリットの他にも以下の光学装置が考案されている。
特許文献2では、複数の微小なキャピラリが2次元に配置されたコリメータを、2次元格子状に配置したマルチX線源と組み合わせることで、マルチX線源からキャピラリの一端側にX線を照射してキャピラリから出力されるX線を平行化している。
また、特許文献3では、小さなスポットのX線源から出現する発散X線を、複数の中空ガラスの毛細管を備えるモノリシックな光学装置内で効率的に捕捉し、捕捉されたX線ビームをその光学装置によって疑似平行ビームに形成している。
特開2000−137098号公報 特開2004−89445号公報 特許第3057378号
特許文献1に記載の技術では、X線の平行成分だけを取り出すため、発生したX線の極めて一部しか使用できず利用効率が低いという問題があった。また、X線源に投入されるパワーはX線源の発熱の影響で限界があるため、発生するX線照射量にも限界があり、X線の照度を向上させることが難しかった。
特許文献2に記載の技術では、コリメータに均一なキャピラリを形成する必要があるが、その形成が難しいという問題があった。また、X線源を2次元に高密度で配置する必要があるが、その配置が難しかった。X線源を2次元に高密度で配置したとしても、その重量が大きくなり、その制御が複雑であった。
特許文献3に記載の技術では、中空ガラスの毛細管が一緒に融解されて塑造成形されるため、均一な毛細管を形成するのが難しいという問題があった。
そこで、本発明は、簡易な構造で、発生したX線を効率的に平行化して出射させることができるX線光学装置の提供を目的とする。
上記課題を解決するために、本発明のX線光学装置は、X線源と、
間隔を空けて並べて配置された少なくとも3枚のX線反射基板からなり、隣り合う前記X線反射基板により規定される複数のX線通路のそれぞれに前記X線源から入射したX線のそれぞれが互いに平行化されて前記各X線通路から出射されるX線反射構造体と、
前記X線源から入射し、前記X線反射構造体の前記X線通路から出射されたX線の強度を検出するX線検出器と、を備えるX線光学装置であって、
前記X線反射構造体の前記X線が入射される一端面をX線の入口、前記X線が出射される他端面をX線の出口としたときに前記出口の前記X線反射基板のピッチが前記入口のピッチより広く、
前記X線通路の両側の前記X線反射基板からの距離が等しい位置に仮想面を設けたとき、前記X線源は複数の前記仮想面の前記入口における接平面上に位置しており、複数の前記仮想面の前記出口における前記接平面は略平行であり、
前記X線源と前記入口との対向方向の距離をL 1 、前記各X線通路にX線が入射するときの視射角の臨界角をθ c とすると、前記X線源と前記X線通路との前記対向方向に垂直な方向の距離Δ s が、
Δ s <L 1 ×θ c である。
そして第一の特徴は、前記X線反射基板の厚さは、前記入口側よりも前記出口側が大きく、
隣り合う前記X線反射基板間の間隔は、前記入口から前記出口に向かう方向において一定であり、
前記X線検出器の画素サイズをΔ d 、前記出口と前記X線検出器との対向方向の距離をL 3 、X線源の光源サイズをs、隣り合う前記X線反射基板間の間隔をgとすると、
0.5×Δ d <L 3 ×(s+g)/L 1 <2×Δ d
である。
第二の特徴は、隣り合う前記X線反射基板間の間隔は、前記入口側よりも前記出口側が大きく、
前記X線反射基板の厚さは、前記入口から前記出口に向かう方向において一定であり、
前記出口と前記X線検出器との対向方向の距離をL 3 、隣り合う前記X線反射基板間の前記出口側の間隔をg out 、隣り合う前記X線反射基板間の前記入口側の間隔をg in 、前記X線反射基板の長さをL 2 とすると、
前記X線検出器に形成される半影量Δ p が、
3 ×(g out −g in )/L 2 <Δ p
である。
第三の特徴は、隣り合う前記X線反射基板間の間隔は、前記入口側よりも前記出口側が大きく、
前記X線反射基板の厚さは、前記入口から前記出口に向かう方向において一定であり、
前記X線検出器の画素サイズをΔ d 、前記出口と前記X線検出器との対向方向の距離をL 3 、隣り合う前記X線反射基板間の前記出口側の間隔をg out 、隣り合う前記X線反射基板間の前記入口側の間隔をg in 、前記X線反射基板の長さをL 2 とすると、
0.5×Δ d <L 3 ×(g out −g in )/L 2 <2×Δ d
である。
本発明によれば、簡易な構造で、発生したX線を効率的に平行化することができる。X線反射基板の形状精度がゆるいため、組み立てや位置調節が容易である。
本発明の原理を示す概念図である。 本発明のX線光学装置の一例を示す図である。 図2のX線反射構造体の二点鎖線で囲まれた領域の拡大図である。 本発明のX線光学装置に適用されるX線源の一例を示す図である。 石英基板のX線反射率を示すグラフである。 図2のX線光学装置の変形例を示す図である。 図6のX線反射構造体を説明する図である。 図2のX線光学装置の別の変形例を示す図である。
本発明は、X線反射構造体(以下、「スリットレンズ」という。)を備えるX線光学装置である。以下、本発明の原理について、本発明をX線撮影装置に適用した場合で説明する。
(1)スリットレンズ
図1に示すように、スリットレンズ3は、X線反射基板11が間隔を空けて並べて配置された構造を有し、少なくとも3枚のX線反射基板11で構成される。隣り合うX線反射基板間の間隔はスペーサ等により形成される。X線反射基板11に両側を挟まれた複数の通路(以下、「X線通路」という。)にそれぞれ入射したX線2は、各X線通路の両側のX線反射基板11で反射され平行化されて各X線通路から出射される。スリットレンズ3の一端面をX線の入口、他端面をX線の出口としたときに出口のX線反射基板11のピッチの方が入口のピッチよりも広くなっている。本発明における「平行化」とは、X線反射基板11の積層方向(y方向)のX線の成分を小さくして、X線の出射方向をy方向と垂直な面(xz平面)に平行にすることをいう。
(2)解像力
まず、本発明を適用したX線撮影装置において、X線源1からスリットレンズ3のX線通路に入射しX線通路を透過したX線を試料に照射して、その透過像をX線検出器4に投影したときの半影量(分解能)について図1及び図2を用いて説明する。図1は本発明の原理を示す概念図、図2は図1のスリットレンズ3のX線源1を通るYZ平面である。
図2に示すように、スリットレンズ3の出口に無限小の物体Aがあって、そのボケを像の半影量Δpと定義すると、半影量Δpはスリットレンズ3の出口におけるX線の発散角θout、スリットレンズ3の出口とX線検出器4との対向方向の距離L3を用いて、
Δp=L3×θout (式1)
と表せる。上記式1は各X線通路から出射されるX線について成立する。
X線撮影装置の解像力は半影量Δpが大きいほど低くなる。従って、解像力を上げるためには、L3を一定とすると発散角θoutを小さくすること、即ちスリットレンズ3の各X線通路から出射されるX線の平行度を上げることが重要である。
しかしながら、X線撮影装置の解像力は、半影量Δpだけで決まるわけではなく、半影量ΔpとX線検出器4(例えばフラットパネルディテクタ(FPD)等)の画素サイズΔdのいずれか大きい方で決まる。画素サイズΔdを小さくすると、X線検出器4が高価になるほかデータ転送処理時間がかかる。一方、半影量Δpを小さくするのは、X線源1の光源サイズを小さくするなど後述のように光学系にかかる負荷が大きくなる。このため、画素サイズΔdと半影量Δpのバランスをとることが重要である。この両者の比が2倍を許容範囲とすると、以下の式が成立する。
0.5<Δp/Δd<2 (式2)
(3)平行化原理
次に、スリットレンズ3の各X線通路から出射されるX線を平行化する原理(平行化原理)について図2及び図3を用いて説明する。図3は図2のスリットレンズ3の二点鎖線で囲まれた領域の拡大図である。以下、X線反射基板11としてガラス薄板を用いた場合で説明するが、X線反射基板11はガラス薄板でなくても良く、金属等でも良い。
図2に示すように、X線源1から発せられたX線2は発散光であり全方位に放射される。X線源1としては、図4に示すX線源を用いることができる。X線源1の対向方向に距離L1だけ離れてスリットレンズ3が配置されている。スリットレンズ3は、緩やかな曲率を持つガラス薄板が、所定のピッチで並べて配置されてなり、X線の出口のピッチの方がX線の入口のピッチよりも広くなっている。ガラス薄板は、1枚の厚さが数μm〜数十μmで、数十枚から数百枚重ねられており、両面でX線を反射することができる。ガラス薄板11aと11bの間のX線通路に入射したX線2は、ガラス薄板11aと11bの両方で反射されながら進んでいき、X線通路から出射される。ガラス薄板11bと11cの間のX線通路でも同様に、入射したX線がガラス薄板11bと11cの両方で反射されながら進んでいき、X線通路から出射される。他の隣り合うガラス薄板間のX線通路でも同様である。各X線通路に入射したX線2の多くは上述のようにして平行化されるが、各X線通路に入射したX線2のうち、平行な方向に進むX線は、ガラス薄板で反射されず、各X線通路からそのまま出射される。
このように、スリットレンズ3のX線通路をX線が進行するにつれて、進行方向が平行な方向ではないX線は、ガラス薄板で複数回反射されて、進行方向が徐々に平行に近づいていき、平行化されて各X線通路から出射される。また、平行な方向に進むX線は、各X線通路からそのまま出射される。よって、簡易な構造で、X線を効率的に平行化して出射させることができる。これにより、X線検出器4に形成される半影量Δpも小さくなる。
ここで、X線通路の両側のガラス薄板から等距離の位置に仮想面5を置き、スリットレンズ3の入口において仮想面5の接平面6を考える。X線源1が複数の仮想面5の入口側の接平面上に位置していると、より多くのX線を各X線通路に入射させることができる点で良い。図4のX線源1の場合、光源サイズsのX線を発生させるX線発生部が、複数の仮想面5の入口側の接平面上に位置しているのが良い。図2に示すように、隣り合うガラス薄板間に作製した複数の仮想面5の入口側の全ての接平面6が共通の直線で交わり、その直線上にX線源1が位置していると、X線源1の光源サイズを小さくすることができる点で好ましい。また、スリットレンズ3の出口においてガラス薄板が平行になっている、即ち複数の仮想面5の出口側の接平面6が略平行であると、各X線通路から出射されるX線の平行度を上げることができる点で良い。
図5に波長0.071nmのX線に対する石英基板のX線反射率を示す。横軸は各X線通路にX線が入射するときの視射角θg、縦軸はX線反射率である。視射角θg=0.5mradでは、X線反射率が99.8%以上であり、50回の反射で90%以上透過することが分かる。また、図5より、視射角θg=1.8mradでX線反射率が急激に減衰しているが、このときの視射角θgを臨界角と呼びθcで表す。X線源1が複数の仮想面5の入口側の接平面上に位置する場合、各接平面6の角度ずれが大きくなると、X線源1を見込む各ガラス薄板の角度ずれが生じ、視射角θgが臨界角θcより大きくなる位置のX線源1から発せられたX線2がガラス薄板で反射しなくなる。このため、X線源1とスリットレンズ3の入口との対向方向の距離をL1、各X線通路にX線が入射するときの視射角θgの臨界角θcを用いて、X線源1とX線通路との前記対向方向に垂直な方向の距離Δsが、
Δs<L1×θc (式3)
となる必要がある。即ち、上記式3を満たすように、スリットレンズ3とX線源1の相対位置、ガラス薄板とX線源1の相対位置を決める必要がある。図4のX線源1の場合、L1は光源サイズsのX線を発生させるX線発生部とスリットレンズ3の入口との対向方向の距離、Δsは前記X線発生部とX線通路との前記対向方向に垂直な方向の距離を指す。
ここで、図2に示すように、隣り合うガラス薄板間の間隔は一定で、全てのガラス薄板の厚さは出口側の方が入口側よりも厚いスリットレンズ3を考える。このようなスリットレンズ3は、楔形の厚さのガラス薄板を積層することで作製することができる。各X線通路にX線が入射しガラス薄板で反射する最大の視射角θgmaxは、
θgmax=(s+g)/2L1 (式4)
となる。ここで、sはX線源1の光源サイズ(光源の直径)であり、光源の強度分布がガウシアン分布に近似できる場合2σとする。gは隣り合うガラス薄板間の間隔とする。但し、θgmaxは臨界角θcより小さい角度でなければならない。
スリットレンズ3の出口においてガラス薄板が平行になっていると、スリットレンズ3の各X線通路から出射されるX線の発散角θoutは、
θout=2×θgmax (式5)
となる。このとき、半影量Δpは、上記式1、式4及び式5より、
Δp=L3×(s+g)/L1 (式6)
となる。また、上記式2及び式6より、
0.5×Δd<L3×(s+g)/L1<2×Δd (式7)
となる。
ガラス薄板の平行度が下がると、X線の強度を検出するX線検出器4の画素にX線が到達しない、又は極端にX線の強度が低い画素が生じる。このため、全てのガラス薄板の平行度Δoutは、以下の式8aの許容値Δout-a又は式8bの許容値Δout-bのどちらか大きい方の許容値を満たす必要がある。ここで、ΔdはX線検出器4の画素サイズとする。
Δout-a<(s+g)/L1 (式8a)
Δout-b<Δd/L3 (式8b)
続いて、図6に示すように、全てのガラス薄板の厚さは一定で、隣り合うガラス薄板間の間隔は出口側の方が入口側よりも広いスリットレンズ3を考える。ここでは、簡単にするために、図7に示すように、ガラス薄板11aと11bが角度θaをなす直管の場合を考える。仮想面5とX線2のなす角を半発散角とすると、半発散角θ0(0.5×θa<θ0<θc)でガラス薄板11aと11bの間のX線通路に入射したX線はガラス薄板11bの点P0で反射した後、ガラス薄板11aの点P1で反射するものとする。1回目の反射後の半発散角θ1は、
θ1=θ0−θa (式9)
となる。従って、n回目の反射後の角度θnは、θ0−n×θa>0の範囲で、
θn=θ0−n×θa (式10)
となる。θn<0.5×θaとなると、X線2がガラス薄板に到達しないので、半発散角は変わらない。また、隣り合うガラス薄板間の出口側の間隔をgout、隣り合うガラス薄板間の入口側の間隔をginとし、ガラス薄板の長さをL2とすると、
θa=(gout−gin)/L2 (式11)
となる。このとき、θa<θoutなので、半影量Δpは、上記式1及び式11より、
(gout−gin)×L3/L2<Δp (式12)
となる。また、上記式2及び式12より、
0.5×Δd<L3×(gout−gin)/L2<2×Δd (式13)
となる。
上述した図2に示す構成のスリットレンズ3と同じ理由から、図6に示す構成のスリットレンズ3でも、スリットレンズ3の出口においてガラス薄板が平行になっているのが良い。このため、全てのガラス薄板の平行度Δoutは、以下の式14aの許容値Δout-a又は式14bの許容値Δout-bのどちらか大きい方の許容値を満たす必要がある。ここで、ΔdはX線検出器4の画素サイズとする。
Δout-a<(gout−gin)/L2 (式14a)
Δout-b<Δd/L3 (式14b)
一方、ガラス薄板が曲率を持たない次元、即ちX線源1とスリットレンズ3の入口との対向方向と、X線源1とX線通路との前記対向方向に垂直な方向とのいずれにも垂直な方向(x方向)の半影量Δxは、
Δx=s×L3/(L2+L1) (式15)
となり、スリットレンズ3、X線源1、X線検出器4の相対位置で決まる。
尚、X線源1が複数の仮想面5の入口側の接平面上に位置しており、複数の仮想面の出口側の接平面16が共通の直線17で交差しているスリットレンズ3も本発明のX線光学装置に適用できる(図8参照)。この構成でも本発明の効果を奏する。図8に示すように、複数の仮想面5の入口側の全ての接平面6が共通の直線で交わり、その直線上にX線源1が位置していると、X線源1の光源サイズを小さくすることができる点で好ましい。この場合、入口側で交差する共通の直線は、出口側で交差する共通の直線17とは別の直線である。
[実施例1]
本実施例は、図2に示すように、隣り合うガラス薄板間の間隔gは10μmで一定、全てのガラス薄板の厚さは出口側が20μm、入口側が10μmのスリットレンズ3を用いた例である。
X線源1から放射されたX線2は、ガラス薄板11aと11bの間のX線通路に入射し、ガラス薄板11aと11bの両方で反射されながら進む。他の隣り合うガラス薄板間のX線通路でも同様である。1個のX線通路に入射するX線の立体角Ω1は間隔gに比例するが、複数のガラス薄板が間隔gを空けて並ぶため、間隔gを小さくしても、全体として取り込めるX線量は、発散角θinと開口率に比例する。ここで、「開口率」とは、スリットレンズ3の入口において間隙が占める割合のことであり、本実施例では開口率は50%(=10μm/(10μm+10μm))となる。X線源1から発散角θin以下で放射されたX線2の50%が、X線通路に入射し、ガラス薄板で反射されながら進み、発散角θoutでX線通路から放射される。放射されたX線によって、スリットレンズ3の出口とFPDの間に置かれた物体の像がFPDに投影される。このとき、上記式1に従って、FPDには物体の像の半影量Δpが形成される、即ち分解能の低下が起こる。
ここで、分解能低下を所定の範囲に抑える方法について説明する。半影量Δpは上記式6のように表せるため、上記式2及び式6より、X線源1の光源サイズsは、
0.5×L1/L3×Δd−g<s<2×L1/L3×Δd−g (式16)
となる。X線源1とスリットレンズ3の入口との対向方向の距離L1=100mm、スリットレンズ3の出口とFPDとの対向方向の距離L3=200mm、FPDの画素サイズΔd=100μmのとき、光源サイズsの許容範囲は15μm<s<90μmとなる。この範囲に入るように、光源サイズsを調整すれば良い。図4に示す透過型のX線源1では、電子線源12から放出された電子線13が、電子を収束させるための電子レンズ14で収束されてターゲット15上に集光される。電子線13のサイズは、電子レンズ14のパワーを変えることで容易に変えることができる。これにより、X線源1の光源サイズsを調整することができる。
一方、上記式15より、スリットレンズ3の長さL2=100mm、光源サイズs=90μmのとき、半影量Δxは90μmとなり、FPDの画素サイズΔdとほぼ同じ大きさとなる。
以上より、X線源1とスリットレンズ3の入口との対向方向と、X線源1とX線通路との前記対向方向に垂直な方向とのいずれにも垂直な方向の分解能も、X線源1とスリットレンズ3の入口との対向方向の分解能と同等な分解能が得られる。よって、簡易な構造で、X線を効率的に平行化して出射させることができ、分解能の低下を所定の範囲に抑えることができる。
[実施例2]
本実施例は、図6に示すように、全てのガラス薄板の厚さは一定で、隣り合うガラス薄板間の間隔は出口側goutが50μm、入口側ginが10μmのスリットレンズ3を用いた例である。
実施例1と同様に、X線源1から放射されたX線2は、X線通路に入射し、ガラス薄板で反射されながら進み、発散角θoutでX線通路から放射され、FPDに物体の像が投影される。このとき、上記式1に従って分解能の低下が起こる。
ここで、スリットレンズの長さL2=100mmとすると、隣り合うガラス薄板のなす角度θaは0.4mradとなる。臨界角θcである1.8mradの視射角θgで入射したX線は、4回反射すると、θn<0.5×θaを満たし、発散角θoutは0.4mrad以下となる。スリットレンズ3の出口とFPDとの対向方向の距離L3=200mmとすると、半影量Δpは80μmとなり、画素サイズΔdが100μmの場合、上記式2を満たす。よって、簡易な構造で、X線を効率的に平行化して出射させることができ、分解能の低下を所定の範囲に抑えることができる。
尚、光源サイズsが大きい場合には、X線が臨界角θcより大きい角度でスリットレンズ3に入射しても、1回目の反射が起こらないため、分解能の低下は発生しない。しかし、臨界角θcより大きい角度で入射したX線はガラス薄板に吸収されるためスリットレンズ3を透過できない。そこで、X線源1から放射されたX線を有効利用するためには、光源サイズsが
s<L1×2θc (式17)
となるように調整する。
[実施例3]
本実施例は、図8に示すように、隣り合うガラス薄板から等距離の位置に仮想面を設けたとき、X線源が複数の仮想面の入口側の接平面上に位置しており、複数の仮想面の出口側の接平面16は共通の直線17で交差しているスリットレンズ3を用いた例である。本実施例においても、簡易な構造で、X線を効率的に平行化して出射させることができ、分解能の低下を所定の範囲に抑えることができる。
本発明は、X線源から発散されたX線を平行化させるX線光学装置であり、X線CT等のX線撮影装置に適用可能である。
1:X線源、2:X線、3:X線反射構造体、4:X線検出器、5:仮想面、6:仮想面の入口側の接平面、11:X線反射基板、12:電子線源、13:電子線、14:電子レンズ、15:ターゲット、16:仮想面の出口側の接平面、17:直線

Claims (16)

  1. X線源と、
    間隔を空けて並べて配置された少なくとも3枚のX線反射基板からなり、隣り合う前記X線反射基板により規定される複数のX線通路のそれぞれに前記X線源から入射したX線のそれぞれが互いに平行化されて前記各X線通路から出射されるX線反射構造体と、
    前記X線源から入射し、前記X線反射構造体の前記X線通路から出射されたX線の強度を検出するX線検出器と、を備えるX線光学装置であって、
    前記X線反射構造体の前記X線が入射される一端面をX線の入口、前記X線が出射される他端面をX線の出口としたときに前記出口の前記X線反射基板のピッチが前記入口のピッチより広く、
    前記X線通路の両側の前記X線反射基板からの距離が等しい位置に仮想面を設けたとき、前記X線源は複数の前記仮想面の前記入口における接平面上に位置しており、複数の前記仮想面の前記出口における前記接平面は略平行であり、
    前記X線源と前記入口との対向方向の距離をL 1 、前記各X線通路にX線が入射するときの視射角の臨界角をθ c とすると、前記X線源と前記X線通路との前記対向方向に垂直な方向の距離Δ s が、
    Δ s <L 1 ×θ c であり、
    前記X線反射基板の厚さは、前記入口側よりも前記出口側が大きく、
    隣り合う前記X線反射基板間の間隔は、前記入口から前記出口に向かう方向において一定であり、
    前記X線検出器の画素サイズをΔ d 、前記出口と前記X線検出器との対向方向の距離をL 3 、X線源の光源サイズをs、隣り合う前記X線反射基板間の間隔をgとすると、
    0.5×Δ d <L 3 ×(s+g)/L 1 <2×Δ d
    であることを特徴とするX線光学装置。
  2. 記全てのX線反射基板の平行度Δoutが、
    (s+g)/L1、Δd/L3
    のうちの大きい方よりも小さいことを特徴とする請求項に記載のX線光学装置。
  3. 隣り合う前記X線反射基板の間隔は、前記X線反射基板が積層された方向において一定であることを特徴とする請求項1又は2に記載のX線光学装置。
  4. 隣り合う前記X線反射基板の間隔は、前記X線反射基板が前記X線源と対向する辺に沿って一定であることを特徴とする請求項乃至のいずれか一項に記載のX線光学装置。
  5. 隣り合う前記X線反射基板間の間隔は、前記X線反射基板間に配置されたスペーサにより規定されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のX線光学装置。
  6. X線源と、
    間隔を空けて並べて配置された少なくとも3枚のX線反射基板からなり、隣り合う前記X線反射基板により規定される複数のX線通路のそれぞれに前記X線源から入射したX線のそれぞれが互いに平行化されて前記各X線通路から出射されるX線反射構造体と、
    前記X線源から入射し、前記X線反射構造体の前記X線通路から出射されたX線の強度を検出するX線検出器と、を備えるX線光学装置であって、
    前記X線反射構造体の前記X線が入射される一端面をX線の入口、前記X線が出射される他端面をX線の出口としたときに前記出口の前記X線反射基板のピッチが前記入口のピッチより広く、
    前記X線通路の両側の前記X線反射基板からの距離が等しい位置に仮想面を設けたとき、前記X線源は複数の前記仮想面の前記入口における接平面上に位置しており、複数の前記仮想面の前記出口における前記接平面は略平行であり、
    前記X線源と前記入口との対向方向の距離をL 1 、前記各X線通路にX線が入射するときの視射角の臨界角をθ c とすると、前記X線源と前記X線通路との前記対向方向に垂直な方向の距離Δ s が、
    Δ s <L 1 ×θ c であり、
    隣り合う前記X線反射基板間の間隔は、前記入口側よりも前記出口側が大きく、
    前記X線反射基板の厚さは、前記入口から前記出口に向かう方向において一定であり、
    前記出口と前記X線検出器との対向方向の距離をL3、隣り合う前記X線反射基板間の前記出口側の間隔をgout、隣り合う前記X線反射基板間の前記入口側の間隔をgin、前記X線反射基板の長さをL2とすると、
    前記X線検出器に形成される半影量Δpが、
    3×(gout−gin)/L2<Δp
    であることを特徴とするX線光学装置。
  7. 前記X線検出器の画素サイズをΔ d すると、
    0.5×Δd<L3×(gout−gin)/L2<2×Δd
    であることを特徴とする請求項に記載のX線光学装置。
  8. 前記X線検出器の画素サイズをΔ d すると、
    前記全てのX線反射基板の平行度Δoutが、
    (gout−gin)/L2、Δd/L3
    のうちの大きい方よりも小さいことを特徴とする請求項6又は7に記載のX線光学装置。
  9. 前記X線反射基板の厚さは、前記X線反射基板が積層された方向において一定であることを特徴とする請求項乃至のいずれか一項に記載のX線光学装置。
  10. 前記X線反射基板の厚さは、前記X線反射基板が前記X線源と対向する辺に沿って一定であることを特徴とする請求項乃至のいずれか一項に記載のX線光学装置。
  11. 隣り合う前記X線反射基板間の間隔は、前記X線反射基板間に配置されたスペーサにより規定されていることを特徴とする請求項6乃至10のいずれか一項に記載のX線光学装置。
  12. X線源と、
    間隔を空けて並べて配置された少なくとも3枚のX線反射基板からなり、隣り合う前記X線反射基板により規定される複数のX線通路のそれぞれに前記X線源から入射したX線のそれぞれが互いに平行化されて前記各X線通路から出射されるX線反射構造体と、
    前記X線源から入射し、前記X線反射構造体の前記X線通路から出射されたX線の強度を検出するX線検出器と、を備えるX線光学装置であって、
    前記X線反射構造体の前記X線が入射される一端面をX線の入口、前記X線が出射される他端面をX線の出口としたときに前記出口の前記X線反射基板のピッチが前記入口のピッチより広く、
    前記X線通路の両側の前記X線反射基板からの距離が等しい位置に仮想面を設けたとき、前記X線源は複数の前記仮想面の前記入口における接平面上に位置しており、複数の前記仮想面の前記出口における前記接平面は略平行であり、
    前記X線源と前記入口との対向方向の距離をL 1 、前記各X線通路にX線が入射するときの視射角の臨界角をθ c とすると、前記X線源と前記X線通路との前記対向方向に垂直な方向の距離Δ s が、
    Δ s <L 1 ×θ c であり、
    隣り合う前記X線反射基板間の間隔は、前記入口側よりも前記出口側が大きく、
    前記X線反射基板の厚さは、前記入口から前記出口に向かう方向において一定であり、
    前記X線検出器の画素サイズをΔ d 、前記出口と前記X線検出器との対向方向の距離をL 3 、隣り合う前記X線反射基板間の前記出口側の間隔をg out 、隣り合う前記X線反射基板間の前記入口側の間隔をg in 、前記X線反射基板の長さをL 2 とすると、
    0.5×Δ d <L 3 ×(g out −g in )/L 2 <2×Δ d
    であることを特徴とするX線光学装置。
  13. 前記全てのX線反射基板の平行度Δ out が、
    (g out −g in )/L 2 、Δ d /L 3
    のうちの大きい方よりも小さいことを特徴とする請求項12に記載のX線光学装置。
  14. 前記X線反射基板の厚さは、前記X線反射基板が積層された方向において一定であることを特徴とする請求項12又は13に記載のX線光学装置。
  15. 前記X線反射基板の厚さは、前記X線反射基板が前記X線源と対向する辺に沿って一定であることを特徴とする請求項12乃至14のいずれか一項に記載のX線光学装置。
  16. 隣り合う前記X線反射基板間の間隔は、前記X線反射基板間に配置されたスペーサにより規定されていることを特徴とする請求項12乃至15のいずれか一項に記載のX線光学装置。
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