JP6015761B2 - 磁性体のシミュレーションプログラム、シミュレーション装置及びシミュレーション方法 - Google Patents

磁性体のシミュレーションプログラム、シミュレーション装置及びシミュレーション方法 Download PDF

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Description

本発明は、磁性体のシミュレーションプログラム、シミュレーション装置及びシミュレーション方法に関する。
モータや発電機といった磁性材料を用いた電気機器のシミュレーションは、コンピュータの性能向上と電磁界解析手法の進歩により、さまざまな場面で広く行なわれるようになってきている。電磁界解析の手法としては、差分法や有限要素法が一般的に用いられている。近年、CO2削減や地球温暖化防止への取組みとして、電気機器の効率は非常に重要視されており、シミュレーションへの期待はさらに高まっている。
モータや変圧器といった低周波の交流電流が入力されるデバイスに最も用いられている材料には、電磁鋼板がある。電磁鋼板とは、電気エネルギーと磁気エネルギーとの変換効率を高くした板状の鋼である。電磁鋼板のヒステリシス性を表す際に問題になるのが磁気異方性である。電磁鋼板には2種類あり、特定の方向に対し磁気特性がよい方向性電磁鋼板とある程度どの方向に対しても磁気特性のよい無方向性電磁鋼板である。特に方向性電磁鋼板では磁界印加方向により磁化曲線が大きく異なる。
図13は、方向性電磁鋼板の磁化曲線の一例を示すグラフである。このようなヒステリシス曲線を数値計算で取り扱う方法として、ストップモデルがある。この方法は数学的な観点から任意のヒステリシス特性を表現する方法として利用される(下記非特許文献1を参照。)。
また、ミクロな視点でモデル化する手法として、マイクロマグネティックスに基づいた技術が開示されている(下記特許文献1を参照。)。特許文献1の従来技術は磁壁移動を簡略化した形で取り扱う。
国際公開第2011/114492号
Tetsuji Matsuo, Masaaki Shimasaki, "Representation Theorems for Stop and Play Models With Input−Dependent Shape Functions", IEEE TRANSACTIONS ON MAGNETICS, VOL. 41, NO. 5, MAY 2005, Pages 1548−1551.
しかしながら、上述した非特許文献1の従来技術では、ヒステリシス曲線を数値計算する際に、ヒステロン分布を求める必要があり、ヒステロン分布を同定するために多くの測定をしなければならないという問題がある。また、測定される磁性体の磁気特性は材料のもつミクロな結晶構造などに起因するが、結晶構造が変わった場合の特性を計算することはできない。
また、上述した特許文献1の従来技術では、方向性電磁鋼板や無方向性電磁鋼板でみられる磁気特性の方向依存性を再現することはできない。したがって、非特許文献1の従来技術に、特許文献1の従来技術を適用しても、結晶構造がどのように変化すると特性がどのくらい変化するか把握するのが困難であるという問題がある。
1つの側面では、磁性体内部の方向依存性を高精度に再現することができる磁性体のシミュレーションプログラム、シミュレーション装置、およびシミュレーション方法を提供することを目的とする。
本発明の一側面によれば、磁性体を構成する要素群のいずれかの要素から分割された領域における容易軸ベクトルを生成し、分割された領域の磁化ごとの磁気的エネルギーを算出し、算出した磁気的エネルギー群の中から最大ではない磁気的エネルギーを選択し、前記領域の磁化と、選択された磁気的エネルギーの場合の特定の容易軸ベクトルと、に基づいて、前記領域内のピニングによるエネルギー障壁の高さに応じた磁化反転の反転角度を特定し、特定された反転角度により前記磁化を反転させる磁性体のシミュレーションプログラム、シミュレーション装置及びシミュレーション方法が提案される。
本発明の一側面によれば、磁性体内部の方向依存性を高精度に再現することができるという効果を奏する。
図1は、実施の形態1にかかるシミュレーションの一例を示す説明図である。 図2は、シミュレーションを実行するシミュレーション装置200のハードウェア構成例を示すブロック図である。 図3は、図2に示したシミュレーション装置200を用いたシステム構成例を示す説明図である。 図4は、磁性体DBの記憶内容の一例を示す説明図である。 図5は、本実施の形態にかかるシミュレーション装置200の機能的構成例を示すブロック図である。 図6は、フェライトに対する直流でのヒステリシス曲線、ならびに、1.0MHzでのヒステリシス曲線の実測データを示すグラフである。 図7は、本実施の形態でのシミュレーション結果を示すグラフである。 図8は、図5に示した反転処理部500の機能的構成例を示すブロック図である。 図9は、実施の形態にかかるシミュレーション装置200によるシミュレーション処理手順例を示すフローチャートである。 図10は、図9に示した磁性体内の要素Cgでのシミュレーション処理(ステップS903)の詳細な処理手順を示すフローチャート(その1)である。 図11は、図9に示した磁性体内の要素Cgでのシミュレーション処理(ステップS903)の詳細な処理手順を示すフローチャート(その2)である。 図12は、図10に示した反転処理(ステップS1004)の詳細な処理手順例を示すフローチャートである。 図13は、方向性電磁鋼板の磁化曲線の一例を示すグラフである。
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる磁性体のシミュレーションプログラム、シミュレーション装置、およびシミュレーション方法の実施の形態を詳細に説明する。なお、本明細書では、図面および数式において太字で表現されているベクトルを、『[ ]』を用いて表記する。たとえば、ベクトルXは、[X]とする。また、図面および数式においてベクトルの上に表記されているバーは、平均を表している。明細書中では、バーが表記されているベクトルを、『[ av]』を用いて表記する。たとえば、バーがあるベクトルXは、[Xav]とする。
(実施の形態1)
<シミュレーションの一例>
図1は、実施の形態1にかかるシミュレーションの一例を示す説明図である。磁性体モデル100は、磁性体の一例である方向性電磁鋼板をモデル化した電子データである。方向性電磁鋼板は、たとえば、周波数fが1.0MHz以上の交流磁界となる磁性体である。
(A)は、方向性電磁鋼板の磁性体モデル100を示す。(A)において、RDは加工時の圧延方向であり、TDは圧延方向に直交する方向である。方向性電磁鋼板の磁性体は、圧延方向RDと直交方向TDとで特性が異なる。圧延方向RDの透磁率は直交方向TDに比べて高く、また、圧延方向RDのヒステリシス損失は直交方向TDに比べて少ない。本実施の形態では、圧延方向RDと直交方向TDとの特性の違いが再現できるようにシミュレーションが実行される。磁性体モデル100は、N個(N≧2)の要素C1〜CNに個々に割り当てられる。
(B)は、磁性体モデル100のある要素Cgの拡大図である。(A)に示したように、磁性体モデル100は3次元で表現されるが、(B)では便宜上2次元で表現する。要素Cg(1≦g≦N)は、n個(n≧2)のメッシュc1〜cnをもつ。n個(n≧2)のメッシュc1〜cnは、たとえば、マイクロマグネティクスの磁化分布を表す。マイクロマグネティクスにおける磁性体内の磁気的エネルギーは、下記式(1)〜(7)の磁気異方性エネルギーEani、静磁エネルギーEmag、交換相互エネルギーEexcおよびゼーマンエネルギーEextで表現される。
Figure 0006015761
Figure 0006015761
Figure 0006015761
Figure 0006015761
Figure 0006015761
Figure 0006015761
ここで、K:磁気異方性係数、[k]:磁化容易軸方向の単位ベクトル、[m]:磁化方向の単位ベクトル、[M]:メッシュciの磁化、M:磁化[M]の大きさ、Dij:メッシュciの幾何学的形状から決定される反磁界係数、[r]:メッシュciの位置ベクトル、[r']:メッシュcjの位置ベクトル、A*:スティフィネス・コンスタント、a:メッシュ間隔、[Happ]:外部印加磁界、n:メッシュ数である。なお、式(5)のΣ[Mj]は、[Mi]のメッシュに隣接するメッシュの磁化の総和である。
λ100とλ111は磁歪定数である。磁歪定数は結晶軸によって異なる値をもち、λ100は、(100)方向の磁歪定数であり、λ111は(111)方向の磁歪定数である。また、αおよびγは以下の式(8),(9)で与えられる。
Figure 0006015761
ここで、[a1,i]、[a2,i]および[a3,i]は、i番目の磁化に対応する結晶容易軸であり、立方晶の場合は結晶方向を示すa軸、b軸、c軸方向をもち、長さが1となるベクトルである。[σ]は応力の印加方向の単位ベクトルである。容易軸は方向性電磁鋼板では圧延方向RDをx軸とする場合、[a1,i]=(1,0,0)の値をもつ。電磁鋼板の圧延方向RDに対し直交方向TDをy軸とすると、[a2,i]=(0,1/√2,1/√2)である。[a3,i]は、[a1,i]および[a2,i]に直交する向きに設定される。
図1において、各メッシュci(1≦i≦n)内の矢印は、磁化[Mi]を示している。磁化[Mi]は微小時間Δτごとに変化する。各メッシュciの磁化[Mi]の合計をメッシュ数nで割ることで、平均磁化[Mav]が求められる。なお、メッシュciにおける磁化方向の単位ベクトル[mi]は、[mi]=[Mi]/Miで表される。
また、磁性体の要素Cg内の磁気的な全エネルギーEtotは、下記式(10)に示すように磁気異方性エネルギーEani、静磁エネルギーEmag、交換エネルギーEexc、ゼーマンエネルギーEext、および応力による磁気弾性エネルギーEσ([mi])の和で表される。
Figure 0006015761
これらのエネルギーは計算対象により異なり、上記エネルギーの組み合わせであり1つ以上の項をもつものとして計算される。ここで磁化状態を計算する際に磁化回転と磁化反転の2種類の過程を計算する。1つ目はランダウ−リフシッツ−ギルバート(Landau−Lifshitz−Gilbert)方程式(以下、「LLG方程式」)に伴う方法である。そこでは有効磁界に従って磁化の回転運動が計算される。
(C)は、磁化の回転運動の概念を示す。磁化回転運動ではそれぞれの磁化はLLG方程式に従って変化する。その場合、磁化は、エネルギーの小さい方向に回転するため、u1に示すように、連続的にエネルギーの小さい磁化方向へと変化する。一方で磁化反転においては、u2に示すように、磁化は、エネルギー障壁である磁壁のピニングPを乗り越えて、180度または90度に対応するエネルギーの位置へ不連続に変化する。本実施の形態では、シミュレーションでメッシュciごとに(C)を再現することにより、(D)に示すような磁化回転または磁化反転後の状態を得る。
このように、(A)のように巨視的にみれば磁性体の磁化の方向は圧延方向RDとなるが、(D)のように微視的にみれば要素Cg内のメッシュciの磁化[Mi]の方向は、一様ではない。これは、磁性体内部に存在する不純物などの存在を考慮してシミュレーションが実行されたからである。このようなシミュレーションをシミュレーション装置が実行することにより、磁性体内部において、磁化の方向が特定の結晶軸の方向に依存して反転するという方向依存性を、高精度に再現することができる。
<磁化回転運動>
ここで、(C)のu1に示す磁化回転運動の計算について説明する。磁化回転運動はエネルギーにより計算される有効磁界から計算される。有効磁界は式(11)のように算出される。
Figure 0006015761
式(11)はメッシュci内の磁化[Mi]に対する磁気的エネルギーによる磁界である。有効磁界[Hi]は、次の時刻での磁化[Mi]の時間変化を求めるのに用いられる。式(11)を磁気異方性Hk=2K/Mによって規格化して、下記式(12)を得る。
Figure 0006015761
ここで、hm,heは、下記式(13),(14)に示すように、それぞれ磁気異方性Hkで規格化された静磁界係数および交換相互作用係数である。また、haは磁気異方性Hkで規格化された外部印加磁界Happ/Hkである。
Figure 0006015761
Figure 0006015761
また、磁性体の磁化の運動は、下記式(15)に示すLLG方程式によって決定される。
Figure 0006015761
ここで、αはダンピングコンスタントである。ダンピングコンスタントαは、減衰していく過程での速さを表す磁性体固有の定数である。式(15)の右辺の第1項は歳差運動項であり、第2項はダンピング項である。フェライトの場合、たとえば、α=0.1を用いた。τはLLG方程式の計算を実行する時間変数である。
ここでLLG方程式の分布計算方法を、下記式(16)を用いて示す。式(16)を計算するにあたり、ΔτはLLG方程式の計算時間ステップ幅である。ここではステップごとにステップ幅は一様とする。
Figure 0006015761
[mioldは、現在の時間ステップτでの[mi]であり、[minewは、次の時間ステップ(τ+Δτ)での[mi]である。
また、時間ステップ毎に以下の式(17),(18)が評価される。
Figure 0006015761
Figure 0006015761
ここで、[Mav]jは、要素Cg内の磁化[Mi]がいずれも収束したとき(時刻tj)での要素Cg内の平均磁化である。[Mav]j-1は、[Mav]jの直近で要素Cg内の磁化[Mi]がいずれも収束したときの平均磁化である。また、[Mav]j-2は、[Mav]j-1の直近で要素Cg内の磁化[Mi]がいずれも収束したときの平均磁化である。
上述した磁化の収束判定は、たとえば、下記式(19)で実行される。
Figure 0006015761
シミュレーション装置は、すべての[mi]に対して微小量εmより小さくなった場合に収束したと判定する。ここではεmは1.e−6を用いた。
<磁化反転運動>
つぎに、磁化反転運動について説明する。磁化反転過程は、エネルギーが小さくなる容易軸へと磁化の向きを急激に変えることに対応する。これは磁壁移動により微小領域における磁化が全体的に回転するのではなく、磁壁移動によりエネルギーの小さい磁区が増加することと対応する。しかし、一般的には磁壁移動は必ずしもスムーズに動かず、不純物等によるピニングと呼ばれる磁壁移動の抑制が生じる。磁壁のピニングがあるため、磁化がさらにエネルギーの低い状態へ遷移できない。磁化反転では180度および90度に対応する不連続な磁化変化を考え、その際にエネルギーの大小関係から反転を計算する。180度の磁壁移動に相当する180度反転過程は、下記式(20)で計算される。
Figure 0006015761
ここで、ΔEi 180は、ピニングによるエネルギー障壁の高さに対応するパラメータである。電磁鋼板では主に立方晶による異方性をもつ。つまり、結晶軸であるa軸,b軸,c軸方向に磁気異方性エネルギーが小さくなる。そのため、180度の反転だけでなく、90度の反転も存在する。90度反転過程は、下記式(21)で計算される。
Figure 0006015761
式(21)において、[aj]は容易軸ベクトルである。また、式(21)のEtot([aj])は、[mi]の代わりに[aj]をEtot()代入した場合の(10)式を計算することにより計算される。磁化[Mi]の単位ベクトル[mi]は、結晶軸であるa軸,b軸,c軸のいずれかの軸に平行になりやすいという性質がある。したがって、反転前の磁化[Mi]の単位ベクトル[mi]は、90度反転によりエネルギーの低い結晶軸に反転させられる。たとえば、反転前の磁化[Mi]の単位ベクトル[mi]の方向がa軸方向である場合、反転後の磁化[Mi]の単位ベクトル[mi]の方向は、a軸方向よりも磁気的エネルギーが低いb軸またはc軸方向のいずれかとなる。具体的には、反転後の磁化[Mi]の単位ベクトル[mi]の方向は、b軸またはc軸方向のうち、より磁気的エネルギーが低い方向となる。
この性質を再現するため、本実施の形態では、90度反転において式(21)の不等式を満たした場合、反転前の磁化[Mi]の単位ベクトル[mi]は、反転前の磁化[Mi]の単位ベクトル[mi]よりも磁気的エネルギーの低い容易軸ベクトル[aj]に更新される。反転前の磁化[Mi]の単位ベクトル[mi]と容易軸ベクトル[aj]とは直交することになるため、簡単な計算により90度反転が再現されることになる。
図1の(C)のu2に示したように、磁化反転では、式(20)の180度反転と式(21)の90度反転の両方が起こり得る。この場合はエネルギー差が最も大きい状態へ遷移すると考えられるため、シミュレーション装置は、エネルギーが最も小さくなる状態に磁化を反転させることになる。
<静磁界計算>
このあと、いずれの磁化[Mi]も式(19)の収束判定を満たした場合、要素Cgでは、平均磁化[Mav]を用いて静磁界計算が実行される。静磁界計算では、下記式(22)を用いて、静磁界Hsgが求められる。νは、透磁率μの逆数である。
Figure 0006015761
有限要素法における静磁界計算は、電磁気学の基礎方程式であるマックスウェル方程式から導かれる上記式(16)を用いて計算される。ここで、Aは磁気ベクトルポテンシャル、J0は計算の対象となる磁性体内を流れる電流である。
本実施の形態では、磁性体は高抵抗であるため、磁性体内に流れる電流はJ0=0となる。また、外部電流が存在する場合は、外部電流の影響を考慮する必要があるため、J0に外部電流の値を与える。そして、式(22)の磁気ベクトルポテンシャルAに要素Cgの位置座標を与えることで、磁気ベクトルポテンシャルAが求まる。磁気ベクトルポテンシャルAは、磁束密度[B]=μ[H]+[M]とした場合、[B]=rot(A)で定義される。したがって、磁気ベクトルポテンシャルAが求まれば磁束密度[B]も求まる。磁束密度[B]が求まれば、磁化[M]を与えることで静磁界[H]が求まる。
本例では、Mに[Mav]を与えることで、静磁界計算により、静磁界[Hsg]が求められる。静磁界[Hsg]が磁化収束する都度、そのときの平均磁化[Mav]と静磁界[Hsg]との組が保存される。平均磁化[Mav]と静磁界[Hsg]は複数組得られるため、グラフにプロットすることで、ヒステリシス曲線HLgが作成される。そして、ヒステリシス曲線HLg内の面積Sgが要素Cgでのヒステリシス損失となる。
このように、高抵抗磁性材料の磁性体であっても、共鳴現象による磁化変化を高精度に再現することができるため、高抵抗磁性材料の磁性体の共鳴現象によるヒステリシス損失を高精度に求めることができる。
<コンピュータのハードウェア構成例>
図2は、シミュレーションを実行するシミュレーション装置200のハードウェア構成例を示すブロック図である。図2において、シミュレーション装置200は、プロセッサ201、記憶装置202、入力装置203、出力装置204、および通信装置205が、バス206に接続されて構成されるコンピュータである。
プロセッサ201は、シミュレーション装置200の全体の制御を司る。また、プロセッサ201は、記憶装置202に記憶されている各種プログラム(OS(Operating System)や本実施の形態のプログラム)を実行することで、記憶装置202内のデータを読み出したり、実行結果となるデータを記憶装置202に書き込んだりする。
記憶装置202は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ、磁気ディスクドライブなどで構成され、プロセッサ201のワークエリアになったり、各種プログラム(OSや本実施の形態のプログラム)や各種データ(各プログラムの実行により得られたデータを含む)を記憶したりする。
入力装置203は、キーボード、マウス、タッチパネルなどユーザの操作により、各種データの入力をおこなうインターフェースである。出力装置204は、プロセッサ201の指示により、データを出力するインターフェースである。出力装置204には、ディスプレイやプリンタが挙げられる。通信装置205は、ネットワークを介して外部からデータを受信したり、外部にデータを送信したりするインターフェースである。
<システム構成例>
図3は、図2に示したシミュレーション装置200を用いたシステム構成例を示す説明図である。図3において、ネットワークNWは、サーバ301,302とクライアント331〜334とが通信可能なネットワークであり、たとえば、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネット、携帯電話網などで構成される。
サーバ302は、クラウド320を構成するサーバ群(サーバ321〜325)の管理サーバである。クライアント331〜334のうち、クライアント331はノート型パソコン、クライアント332はデスクトップ型パソコン、クライアント333は携帯電話機(スマートフォン、PHS(Personal Handyphone System)でもよい)、クライアント334はタブレット型端末である。図3のサーバ301,302,321〜325、クライアント331〜334は、たとえば、図2に示したシミュレーション装置200により実現される。なお、クライアント331〜334は、必ずしもネットワークNWに接続する必要はない。
<磁性体DB(データベース)の記憶内容例>
図4は、磁性体DBの記憶内容の一例を示す説明図である。図4において、磁性体DB400には、磁性体ごとに、磁性体ID、ダンピングコンスタントα、摩擦項係数β、慣性項係数γ、導電率σ、異方性磁界Hk、容易軸タイプAEが格納されている。
導電率σ、異方性磁界Hkは、要素Cgでの静磁界計算に用いられる。容易軸タイプAEとは、磁性体に適用される磁化容易軸(以下、単に「容易軸」)を示す。容易軸とは、磁化され易い結晶方位である。たとえば、鉄の場合、容易軸は6個存在する。容易軸タイプには、一軸異方性と立方異方性の2種類がある。一軸異方性の場合は、容易軸は、互いに反対方向に向いている2軸であり、立方異方性の場合は、容易軸は、a軸、b軸、c軸の3軸と各軸の反対方向の3軸とを合わせて6軸である。鉄の容易軸タイプAEは、立方異方性であるため、鉄の容易軸は6軸である。コンピュータにより磁性体IDが指定されると、指定された磁性体IDのレコードの各項の値が磁性体DB400から読み出されることになる。磁性体DB400は、具体的には、たとえば、図2に示した記憶装置202によりその機能を実現する。
<シミュレーション装置の機能的構成例>
図5は、本実施の形態にかかるシミュレーション装置200の機能的構成例を示すブロック図である。シミュレーション装置200は、磁性体DB400と記憶領域511を有する。また、シミュレーション装置200は、反転処理部500と、平均磁化算出部501と、磁界算出部502と、磁化算出部503と、判断部504と、静磁界算出部505と、判定部506と、格納部507と、作成部508と、損失算出部509と、出力部510と、を有する。反転処理部500〜出力部510は、具体的には、たとえば、図2に示した記憶装置202に記憶されたシミュレーションプログラムをプロセッサ201に実行させることによりその機能を実現する。また、記憶領域511は、図2に示した記憶装置202によりその機能を実現する。
反転処理部500は、要素Cg内のメッシュc1〜cnの磁化[M1]〜[Mn]について反転処理を実行する。反転処理部500の詳細については、図8で説明する。
平均磁化算出部501は、時刻τがΔτ変化する都度、要素Cg内のメッシュc1〜cnの磁化[M1]〜[Mn]の平均磁化[Mav]を算出する。具体的には、たとえば、下記式(23)により算出される。
Figure 0006015761
磁界算出部502は、磁性体を構成する要素群のいずれかの要素から分割された領域群の領域ごとの磁化が更新されると、領域内の磁気的エネルギーで生成される有効磁界を、領域ごとに算出する。ここで、「領域内の磁気的エネルギーで生成される磁界」とは、メッシュci内の磁気的エネルギーで生成される磁界であり、上記式(11)の右辺に相当する。
また、磁界算出部502は、更新された領域ごとの磁化の平均磁化の変化を阻止する方向に働く磁化変化速度と、磁化変化速度を一定に保つ方向に磁界を働かせる慣性と、を考慮して有効磁界を算出してもよい。この場合、上記式(11)に替え、下記式(24)が用いられる。
Figure 0006015761
「更新された領域ごとの磁化の平均磁化の変化を阻止する方向に働く磁化変化速度」とは、平均磁化[Mav]の変化を阻止する方向に働く磁化変化速度であり、式(24)の右辺第3項の摩擦項に相当する。また、「磁化変化速度を一定に保つ方向に磁界を働かせる慣性」とは、式(24)の摩擦項で表現された磁化変化速度を一定に保つ方向に磁界を働かせる慣性であり、式(24)の右辺第2項の慣性項に相当する。なお、式(24)において、右辺第1項は、上述したメッシュci内の磁気的エネルギーで生成される磁界であり、上記式(11)の右辺に相当する。
磁界算出部502は、式(11)または式(24)により、時刻τがΔτ変化する都度、メッシュciの有効磁界[Hi]を算出することになる。なお、式(24)の右辺から慣性項を除いてもよい。有効磁界[Hi]は、次の時刻での磁化[Mi]を求めるのに用いられる。
このように、摩擦項を用いた有効磁界[Hi]を求めることで、メッシュciにおいて、時刻(τ−Δτ)での磁化[Mi]から時刻τでの磁化[Mi]への変化量Δ[Mi]を、時刻(τ−Δτ)での磁化[Mi]と時刻τでの磁化[Mi]との摩擦を考慮して求めることができる。したがって、共鳴現象より経時的に変化する磁化[Mi]での磁化変化を阻止する挙動を再現することができる。
また、摩擦項とともに慣性項も加えた場合、摩擦項および慣性項を用いた有効磁界[Hi]を求めることで、メッシュciにおいて、時刻(τ−Δτ)での磁化[Mi]から時刻τでの磁化[Mi]への変化量Δ[Mi]を、時刻(τ−Δτ)での磁化[Mi]と時刻τでの磁化[Mi]との摩擦および慣性を考慮して求めることができる。したがって、共鳴現象より経時的に変化する磁化[Mi]での磁化変化を阻止する挙動や磁化変化速度を一定に保つ挙動を再現することができる。
磁化算出部503は、領域ごとに算出された有効磁界と、領域ごとの磁化と、に基づいて、領域ごとに磁化変化量を求めることにより、領域ごとの磁化を算出する。磁化算出部503では、磁化算出に先立って磁化変化量を算出する。磁化変化量は、時刻がτからτ+Δτに変化した場合の磁化[Mi]の単位ベクトル[mi]の変化量であり、具体的には、上記式(16)の右辺第2項で表現される。式(16)の単位ベクトルが[mioldから[minewに更新されると、更新後の[minewに磁化[Mi]の大きさMiを乗じることで、更新後の磁化[Mi]が算出される。算出された磁化[Mi]は、磁界算出部502に与えられ、つぎの時刻での有効磁界[Hi]が算出される。
判断部504は、磁化算出部503による領域ごとの変化前の磁化と変化後の磁化に基づいて、いずれかの要素での磁化収束を判断する。具体的には、たとえば、判断部504は、要素Cgにおいて、上述した更新前の[mioldと更新後の[minewを用いて、上記式(19)により判断する。
静磁界算出部505は、上記式(22)を用いて、要素Cgの静磁界Hsgを算出する。具体的には、たとえば、静磁界算出部505は、判断部504で同一時刻τにおいていずれの磁化[Mi]も式(19)の磁化収束条件を満たす場合に、要素Cgの静磁界Hsgを算出する。静磁界計算で用いられる透磁率μとしては、たとえば、真空の透磁率が用いられる。
判定部506は、静磁界が磁界収束条件を満たすか否かを判定する。具体的には、たとえば、判定部506は、今回の静磁界[Hsgnewと前回の静磁界[Hsgoldとの差分ΔHsがしきい値εh以内であれば、磁界収束と判定する。
格納部507は、式(19)の磁化収束条件を満たした時刻tjでの平均磁化[Mi]と判定部506による磁界収束条件を満たした静磁界Hsgとの組み合わせを記憶領域511に格納する。格納された平均磁化[Mi]と静磁界Hsgとの組み合わせ群は、ヒステリシス曲線の元となる。
作成部508は、格納された平均磁化[Mi]と静磁界[Hsg]との組み合わせ群を、横軸が磁界、縦軸が磁束密度のグラフにプロットすることで、ヒステリシス曲線を作成する。作成部508では、磁束密度[B]=μ[H]+[M]に平均磁化[Mav]と静磁界[Hsg]とを与えることで、時刻tjごとの磁束密度[B]が得られる。これにより、ヒステリシス曲線を作成することができる。
損失算出部509は、作成部508で作成されたヒステリシス曲線内の面積を算出することでヒステリシス損失を算出する。式(24)を適用した場合、式(24)の摩擦項や慣性項を考慮したヒステリシス損失が得られる。
出力部510は、損失算出部509によって算出されたヒステリシス損失を出力する。出力部510は、ヒステリシス損失をディスプレイに表示してもよく、プリンタにより印刷出力してもよい。また、外部装置に送信したり、記憶装置202に格納してもよい。また、出力部510は、作成部508によって作成されたヒステリシス曲線も出力してもよい。ここで、ヒステリシス曲線の例について説明する。
図6は、フェライトに対する直流でのヒステリシス曲線、ならびに、1.0MHzでのヒステリシス曲線の実測データを示すグラフである。(b)は(a)の拡大グラフである。ヒステリシス曲線のループ内の面積が磁性体内で消費された1サイクル当たりのエネルギー損失となることが知られている。
図7は、本実施の形態でのシミュレーション結果を示すグラフである。式(11)を用いて計算したヒステリシス曲線が点線701で示されている。また、慣性項のみ0として計算したヒステリシス曲線が一点鎖線702で示されている。また、式(24)により慣性項および摩擦項を含めて計算したヒステリシス曲線が実線703で示されている。実線703のヒステリシス曲線は楕円であり、実測でのヒステリシス曲線が再現されている。点線701および一点鎖線702のヒステリシス曲線では、楕円で再現できていない。図7では、周波数f=1.0MHz、γ=0.75×10-11、β=4.0×10-5とした。
<反転処理部500の機能的構成例>
図8は、図5に示した反転処理部500の機能的構成例を示すブロック図である。反転処理部500は、生成部801と、選択部802と、特定部803と、反転判断部804と、反転部805と、を有する。
生成部801は、磁性体を構成する要素群のいずれかの要素から分割された領域における容易軸ベクトルを生成する。具体的には、たとえば、生成部801は、磁性体DB400を参照して、解析対象となる磁性体の容易軸タイプを特定する。そして、生成部801は、容易軸タイプに応じて、容易軸ベクトルを生成する。たとえば、容易軸タイプが、立方異方性である場合、a軸〜c軸のそれぞれの正負の方向となる6個の単位ベクトルを容易軸ベクトルとして生成する。また、容易軸タイプが、1軸異方性の場合、たとえば、a軸の正負の方向となる2個の単位ベクトルを容易軸ベクトルとして生成する。より具体的には、生成部801は、圧延方向RDが(100)、その直交方向TDが(011)となるように容易軸ベクトルを生成する。
選択部802は、分割された領域の磁化ごとの磁気的エネルギーを算出し、算出した磁気的エネルギー群の中から最大ではない磁気的エネルギーを選択する。具体的には、たとえば、選択部802は、分割された領域の磁化ごとに、上記式(10)に示したような磁気的エネルギーEtotを算出する。選択部802は、式(10)において、パラメータとして磁化ベクトル[mi]のかわりに、容易軸ベクトルを与える。これにより、分割された領域の磁化ごとに、磁気的エネルギーEtotが算出される。
そして、選択部802は、分割された領域の磁化ごとに算出された磁気的エネルギーEtotの中から最大ではない磁気的エネルギー、好ましくは最小の磁気的エネルギーを選択する。磁化反転過程では、エネルギーが小さくなる容易軸へと磁化の向きを急激に変える。したがって、選択部802は、磁気的エネルギーEtotの中から最大ではない磁気的エネルギーを選択することにより、選択された磁気的エネルギーEtotの算出元となる容易軸ベクトルへの変化を再現することができる。これにより、磁壁移動により微小領域における磁化の全体的な回転ではなく、磁壁移動によりエネルギーの小さい磁区の増加を再現することができる。
特定部803は、領域の磁化と、選択された磁気的エネルギーの場合の特定の容易軸ベクトルと、に基づいて、領域内のピニングによるエネルギー障壁の高さに応じた磁化反転の反転角度を特定する。具体的には、たとえば、特定部803は、下記式(25)を満たすか否かを判断する。特定の容易軸ベクトルとは、選択部802によって選択された磁気的エネルギーの算出に用いられた容易軸ベクトルである。ここでは、[aikmin]とする。
Figure 0006015761
上記式(25)は、磁化ベクトル[mi]と特定の容易軸ベクトル[aikmin]との内積である。すなわち、磁化ベクトル[mi]と特定の容易軸ベクトル[aikmin]とのなす角度が135度〜225度の間であれば、特定部803は、磁化ベクトル[mi]の反転角度を180度とし、そうでない場合は、磁化ベクトル[mi]の反転角度を90度とする。なお、ここでは、磁化ベクトル[mi]と特定の容易軸ベクトル[aikmin]とのなす角度の範囲を135度〜225度としたが、90度〜270度の範囲内であれば、任意に設定してもよい。
反転部805は、特定された反転角度により磁化を反転させる。具体的には、たとえば、反転角度が180度である場合、反転部805は、磁化[Mi]の単位ベクトル[mi]を−[mi]に更新する。これにより、磁化[Mi]の単位ベクトル[mi]は180度反転させられた状態となる。また、反転角度が90度である場合、反転部805は、磁化[Mi]の単位ベクトル[mi]を特定の容易軸ベクトル[aikmin]に更新する。これにより、磁化[Mi]の単位ベクトル[mi]は90度反転させられた状態となる。
また、特定部803は、磁化と、特定の容易軸ベクトルと、に基づいて、ピニングによるエネルギー障壁の高さに対応するパラメータΔEを特定する。上述したように、磁化反転過程では、磁壁移動により微小領域における磁化が全体的に回転するのではなく、磁壁移動によりエネルギーの小さい磁区が増加するため、エネルギーが小さくなる容易軸へと磁化の向きが急激に変化する。しかし、一般的には磁壁移動は必ずしもスムーズに動かず、図1の(C)に示したように、不純物等によるピニングがおきる。
このため、特定部803では、180度または90度の磁化反転に対応する不連続な磁化変化について、磁気的エネルギーの大小関係から反転を計算するためのパラメータを特定する。具体的には、180度反転の場合は、特定部803は、ピニングによるエネルギー障壁の高さに対応するパラメータΔEをΔEi 180に設定する。90度反転の場合は、特定部803は、ピニングによるエネルギー障壁の高さに対応するパラメータΔEをΔEi 90に設定する。エネルギー障壁の高さに対応するパラメータは、反転角度ごとに固定の値を用いてもよいが、ここでは、ローレンツ分布を仮定して、乱数により磁化[Mi]ごとに異なる値とした。例えば、ΔEi 180は、10±15[J/m3]となり、ΔEi 90は、40±20[J/m3]となる。
反転判断部804は、磁化に関する領域内の磁気的エネルギーとピニングによるエネルギー障壁の高さに対応するパラメータとに基づいて、反転角度により磁化を反転させるか否かを判断する。具体的には、たとえば、反転判断部804は、180度反転の場合は、式(20)に示す180度反転条件を満たすか否かを判断する。180度反転条件を満たした場合、反転部805は、磁化[Mi]の単位ベクトル[mi]を−[mi]に更新する。これにより、磁化[Mi]の単位ベクトル[mi]は180度反転させられた状態となる。
同様に、反転判断部804は、90度反転の場合は、式(21)に示す90度反転条件を満たすか否かを判断する。90度反転条件を満たした場合、反転部805は、磁化[Mi]の単位ベクトル[mi]を特定の容易軸ベクトル[aikmin]に更新する。式(21)の90度反転条件を満たした場合は、磁化[Mi]の単位ベクトル[mi]と特定の容易軸ベクトル[aikmin]とのなす角度が90度であるため、磁化[Mi]の単位ベクトル[mi]は90度反転させられた状態となる。いずれの場合も反転条件を満たさない場合には、反転部805は、磁化[Mi]の単位ベクトル[mi]を更新しない。
<シミュレーション処理手順例>
図9は、実施の形態にかかるシミュレーション装置200によるシミュレーション処理手順例を示すフローチャートである。まず、シミュレーション装置200は、要素を特定する変数gをg=1とし(ステップS901)、g>Nであるか否かを判断する(ステップS902)。Nは要素の総数である。g>Nでない場合(ステップS902:No)、シミュレーション装置200は、磁性体内の要素Cgでのシミュレーション処理を実行する(ステップS903)。
このあと、シミュレーション装置200は、gをインクリメントし(ステップS904)、ステップS902に戻る。ステップS902において、g>Nである場合(ステップS902:Yes)、シミュレーションすべき要素Cgがないため、シミュレーション装置200は、出力部510による出力処理を実行して(ステップS905)、一連のシミュレーション処理を終了する。なお、図9では、要素Cgごとに順番にシミュレーション処理(ステップS903)を実行することとしているが、並列に実行することとしてもよい。
図10は、図9に示した磁性体内の要素Cgでのシミュレーション処理(ステップS903)の詳細な処理手順を示すフローチャート(その1)である。まず、シミュレーション装置200は、時刻変数jと更新時刻τをj=0、τ=0とする(ステップS1001)。つぎに、シミュレーション装置200は、時刻tjでの外部印加磁界[Happ]を設定する(ステップS1002)。外部印加磁界[Happ]は周波数fと時刻tjで決まる磁界である。周波数fはあらかじめ与えられるものとする。外部印加磁界[Happ]は、上記式(6)で用いられる。
そして、シミュレーション装置200は、磁化[Mi]の初期値を記憶装置202から読み込む(ステップS1003)。磁化[Mi]の初期値は、たとえば、あらかじめ記憶装置202に記憶させておき、シミュレーション開始時に記憶装置202から読み込むものとする。
このあと、シミュレーション装置200は、反転処理部500により、磁化[Mi]の反転処理を実行する(ステップS1004)。反転処理(ステップS1004)の詳細については、図12で説明する。
つぎに、シミュレーション装置200は、平均磁化算出部501により、時刻τでの平均磁化[Mgav]を算出する(ステップS1005)。そして、シミュレーション装置200は、磁界算出部502により、時刻τでの有効磁界[Hi]を算出する(ステップS1006)。
このあと、シミュレーション装置200は、時刻τを所定時間幅Δτ進め(ステップS1007)、式(15)のLLG方程式を用いて、磁化[Mi]の単位ベクトル[mi]の変化量を算出することで、磁化算出部503により、式(16)を用いて磁化[Mi]を算出する(ステップS1008)。そして、シミュレーション装置200は、変化前後の磁化[Mi]を用いて、判断部504により磁化収束条件を満たすか否かを、メッシュciごとに判断する(ステップS1009)。
いずれか1つのメッシュciでも磁化収束条件を満たさない場合(ステップS1009:No)、ステップS1005に戻って、ステップS1008で更新後の磁化[Mi]により、平均磁化[Mav]を算出することになる。一方、いずれのメッシュciでも磁化収束条件を満たした場合(ステップS1009:Yes)、図11のステップS1101に移行する。
図11は、図9に示した磁性体内の要素Cgでのシミュレーション処理(ステップS903)の詳細な処理手順を示すフローチャート(その2)である。ステップS1009:Yesのあと、図10において、シミュレーション装置200は、[M]jを、ステップS1005で得られた最新の平均磁化[Mav]に設定する(ステップS1101)。[M]jは、式(17)の摩擦項および式(18)の慣性項で用いられる値である。後続のステップS1106でjがインクリメントされるため、その後の有効磁界の算出(ステップS1006)では、[Mgj-1となる。
このあと、シミュレーション装置200は、静磁界算出部505により、式(22)を用いて静磁界計算処理を実行する(ステップS1102)。そして、シミュレーション装置200は、判定部506により、静磁界[Hsg]が磁界収束条件を満たすか否かを判定する(ステップS1103)。満たさない場合(ステップS1103:No)、図10のステップS1004に戻る。このときの静磁界[Hsg]と平均磁化[Mav]の組み合わせは記憶領域511に格納されず、ヒステリシス曲線には反映されないことになる。
一方、満たした場合(ステップS1103:Yes)、シミュレーション装置200は、時刻tjでの静磁界[Hsgjと平均磁化[Mav]jとして、記憶領域511に保持する(ステップS1104)。このあと、j>jmaxであるか否かを判断する(ステップS1105)。jmaxは変数jの最大値であり、tjmaxがシミュレーション時間となる。j>jmaxでない場合(ステップS1105:No)、jをインクリメントして(ステップS1106)、図10のステップS1002に戻り、インクリメント後の時刻tjで外部印加磁界[Happ]を再設定する。
また、jのインクリメントにより、ステップS1001での最新の平均磁化[Mav]jは、平均磁化[Mav]j-1となり、平均磁化[Mav]j-1は平均磁化[Mav]j-2となる。これにより、摩擦項(式(17))と慣性項(式(18))の計算をおこなうことができることになる。一方、j>jmaxである場合(ステップS1105:Yes)、要素Cgでのシミュレーション処理が終了するため、図9のステップS904に移行する。
図12は、図10に示した反転処理(ステップS1004)の詳細な処理手順例を示すフローチャートである。まず、シミュレーション装置200は、磁化番号iを=1とし(ステップS1201)、i>imaxであるか否かを判断する(ステップS1202)。imaxは、磁化番号iの最大値である。i>imaxでない場合(ステップS1202:No)、シミュレーション装置200は、生成部801により、磁化[Mi]の容易軸ベクトル[aik]を生成する(ステップS1203)。kは、容易軸ベクトルの番号であり、一軸異方性の場合は、k=1,2となり、立方異方性の場合は、k=1,2,3,4,5,6となる。
そして、シミュレーション装置200は、選択部802により、各kについて、磁気的エネルギーEtot([aik])を算出する(ステップS1204)。シミュレーション装置200は、選択部802により、最小の磁気的エネルギーEtot([aik])を選択して、Etot([aikmin])とする(ステップS1205)。容易軸ベクトル[aikmin]が、特定の容易軸ベクトルとなる。
つぎに、シミュレーション装置200は、特定部803により、式(25)を満たすか否かを判断する(ステップS1206)。満たす場合(ステップS1206:Yes)、シミュレーション装置200は、特定部803により、反転角度θをθ=180度とし、ピニングによるエネルギー障壁の高さに対応するパラメータΔEをΔEi 180に設定する(ステップS1207)。そして、シミュレーション装置200は、反転判断部804により、式(20)に示す180度反転条件を満たすか否かを判断する(ステップS1208)。式(20)に示す180度反転条件を満たす場合(ステップS1208:Yes)、シミュレーション装置200は、反転部805により、磁化[Mi]の単位ベクトル[mi]を−[mi]に更新して(ステップS1209)、ステップS1213に移行する。一方、式(20)に示す180度反転条件を満たさない場合(ステップS1208:No)、磁化[Mi]の単位ベクトル[mi]を更新せずに、ステップS1213に移行する。
また、ステップS1206において、式(25)を満たさない場合(ステップS1206:No)、シミュレーション装置200は、特定部803により、反転角度θをθ=90度とし、ピニングによるエネルギー障壁の高さに対応するパラメータΔEをΔEi 90に設定する(ステップS1210)。そして、シミュレーション装置200は、反転判断部804により、式(21)に示す90度反転条件を満たすか否かを判断する(ステップS1211)。式(21)に示す90度反転条件を満たす場合(ステップS1211:Yes)、シミュレーション装置200は、反転部805により、磁化[Mi]の単位ベクトル[mi]を特定の容易軸ベクトル[aikmin]に更新して(ステップS1212)、ステップS1213に移行する。一方、式(21)に示す90度反転条件を満たさない場合(ステップS1211:No)、磁化[Mi]の単位ベクトル[mi]を更新せずに、ステップS1213に移行する。
そして、シミュレーション装置200は、ステップS1213において、iをインクリメントして(ステップS1213)、ステップS1202に戻る。ステップS1202において、i>imaxである場合(ステップS1202:Yes)、反転処理(ステップS1004)を終了し、ステップS1005に移行する。
このように、本実施の形態によれば、方向性電磁鋼板や無方向性電磁鋼板でもみられる磁気特性の方向依存性を再現することができる。また、本実施の形態では、方向性電磁鋼板の圧延方向RDだけでなく、直交方向TDの磁気特性も再現することができる。また、式(20)や式(21)に示したように、簡単な演算により方向依存性を再現するため、方向依存性の再現に際して計算量の増加を抑制することができる。また、反転処理後の状態から磁化収束を判断したり、静磁界を計算したりするため、モータや変圧器などの電磁鋼板内で発生するヒステリシス損失を計算することができる。
また、本実施の形態によれば、摩擦を考慮して有効磁界[Hi]を求めることができるため、共鳴現象より経時的に変化する磁化[Mi]での磁化変化を阻止する挙動を再現することができる。したがって、その挙動に影響されたヒステリシス曲線が得られ、高周波での高抵抗磁性材料の磁性体についてヒステリシス損を高精度に求めることができる。
また、摩擦項とともに慣性項も加えた場合、摩擦および慣性を考慮して有効磁界[Hi]を求めることができるため、共鳴現象より経時的に変化する磁化[Mi]での磁化変化を阻止する挙動と、磁化変化速度を一定に保つ挙動と、を再現することができる。したがって、その挙動に影響されたヒステリシス曲線が得られ、高周波での高抵抗磁性材料の磁性体についてヒステリシス損失を高精度に求めることができる。
なお、上述した実施の形態では、シミュレーション装置200において作成部508によりヒステリシス曲線を作成し、損失算出部509によりヒステリシス損失を算出することとしたが、作成部508および損失算出部509は、シミュレーション装置200ではない他の装置に実行させてもよい。たとえば、シミュレーション装置200では、格納部507により記憶領域511に、時刻tjでの静磁界[Hsgjと平均磁化[Mav]jとの組み合わせを格納して、作成部508および損失算出部509を有する他の装置に対し送信することとしてもよい。
上述した実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)磁性体のシミュレーションプログラムにおいて、
コンピュータに、
前記磁性体を構成する要素群のいずれかの要素から分割された領域における容易軸ベクトルを生成させ、
分割された領域の磁化ごとの磁気的エネルギーを算出し、算出した磁気的エネルギー群の中から最大ではない磁気的エネルギーを選択させ、
前記領域の磁化と、選択された磁気的エネルギーの場合の特定の容易軸ベクトルと、に基づいて、前記領域内のピニングによるエネルギー障壁の高さに応じた磁化反転の反転角度を特定させ、
特定された反転角度により前記磁化を反転させる、
ことを特徴とする磁性体のシミュレーションプログラム。
(付記2)前記磁気的エネルギーの選択において、
前記コンピュータに、
前記磁気的エネルギー群の中から最小となる磁気的エネルギーを選択させることを特徴とする付記1記載の磁性体のシミュレーションプログラム。
(付記3)前記コンピュータに、
前記磁化と、前記特定の容易軸ベクトルと、に基づいて、前記ピニングによるエネルギー障壁の高さに対応するパラメータを特定させ、
前記磁化に関する前記領域内の磁気的エネルギーと、特定されたパラメータと、に基づいて、前記反転角度により前記磁化を反転させるか否かを判断させ、
前記磁化の反転において、
前記コンピュータに、
前記磁化を反転させると判断された場合、前記反転角度により前記磁化を反転させることを特徴とする付記1または2記載の磁性体のシミュレーションプログラム。
(付記4)前記磁化を反転させるか否かの判断において、
前記コンピュータに、
前記反転角度が180度である場合、前記磁化に関する前記領域内の磁気的エネルギーから前記磁化に対し方向が180度反転した磁化に関する前記領域内の磁気的エネルギーを引いた差分が、前記パラメータ以上であるか否かを判断させ、
前記磁化の反転において、
前記コンピュータに、
前記磁化を反転させると判断された場合、前記磁化を前記磁化に対し方向が180度反転した磁化に更新させることを特徴とする付記3記載の磁性体のシミュレーションプログラム。
(付記5)前記磁化を反転させるか否かの判断において、
前記コンピュータに、
前記反転角度が90度である場合、前記磁化に関する前記領域内の磁気的エネルギーから前記特定の容易軸ベクトルに関する前記領域内の磁気的エネルギーを引いた差分が、前記パラメータ以上であるか否かを判断させ、
前記磁化の反転において、
前記コンピュータに、
前記磁化を反転させると判断された場合、前記磁化を前記特定の容易軸ベクトルに更新させることを特徴とする付記3記載の磁性体のシミュレーションプログラム。
(付記6)前記コンピュータに、
前記磁化の反転がおこなわれた後に、前記磁性体を構成する要素群のいずれかの要素から分割された各領域内の磁気的エネルギーから生成される磁界と、前記各領域の磁化を平均した平均磁化の変化を阻止する方向に働く磁化変化速度と、に基づく有効磁界を、領域ごとに算出させ、
前記領域ごとに算出された有効磁界と、前記領域ごとの磁化に基づいて、前記領域ごとに磁化変化量を求めて、前記領域ごとに前記変化後の磁化を算出させ、
前記領域ごとの変化前の磁化と前記変化後の磁化に基づいて、前記いずれかの要素における磁化が収束するかを判断させ、
前記いずれかの要素における磁化が収束すると判断された場合の前記領域ごとの平均磁化および前記平均磁化に基づく静磁界との組み合わせを記憶装置に格納させる、
ことを特徴とする付記1〜5のいずれか1項に記載の磁性体のシミュレーションプログラム。
(付記7)前記有効磁界の算出において、
前記コンピュータに、
前記領域ごとの磁化が変化する場合、前記領域内の磁気的エネルギーにより生成される磁界と、前記磁化変化速度と、前記磁化変化速度を一定に保つ方向に前記磁界を働かせる慣性と、に基づく有効磁界を、前記領域ごとに算出させることを特徴とする付記6記載の磁性体のシミュレーションプログラム。
(付記8)前記コンピュータに、
前記記憶装置に格納された前記平均磁化および前記静磁界の組み合わせ群から得られるヒステリシス曲線の面積からヒステリシス損失を算出させる、
ことを特徴とする付記6または7記載の磁性体のシミュレーションプログラム。
(付記9)磁性体を構成する要素群のいずれかの要素から分割された領域における容易軸ベクトルを生成する生成部と、
分割された領域の磁化ごとの磁気的エネルギーを算出し、算出した磁気的エネルギー群の中から最大ではない磁気的エネルギーを選択する選択部と、
前記領域の磁化と、選択された磁気的エネルギーの場合の特定の容易軸ベクトルと、に基づいて、前記領域内のピニングによるエネルギー障壁の高さに応じた磁化反転の反転角度を特定する特定部と、
前記特定部によって特定された反転角度により前記磁化を反転させる反転部と、
を有することを特徴とする磁性体のシミュレーション装置。
(付記10)磁性体のシミュレーション方法において、
コンピュータが、
前記磁性体を構成する要素群のいずれかの要素から分割された領域における容易軸ベクトルを生成し、
分割された領域の磁化ごとの磁気的エネルギーを算出し、算出した磁気的エネルギー群の中から最大ではない磁気的エネルギーを選択し、
前記領域の磁化と、選択された磁気的エネルギーの場合の特定の容易軸ベクトルと、に基づいて、前記領域内のピニングによるエネルギー障壁の高さに応じた磁化反転の反転角度を特定し、
特定された反転角度により前記磁化を反転させる、
処理を実行することを特徴とする磁性体のシミュレーション方法。
200 シミュレーション装置
202 記憶装置
500 反転処理部
501 平均磁化算出部
502 磁界算出部
503 磁化算出部
504 判断部
505 静磁界算出部
506 判定部
507 格納部
508 作成部
509 損失算出部
510 出力部
801 生成部
802 選択部
803 特定部
804 反転判断部
805 反転部

Claims (6)

  1. 磁性体のシミュレーションプログラムにおいて、
    コンピュータに、
    前記磁性体を構成する要素群のいずれかの要素から分割された領域における容易軸ベクトルを生成させ、
    分割された領域の磁化ごとに、生成された前記容易軸ベクトルそれぞれに磁化した場合の磁気的エネルギーを算出し、算出した磁気的エネルギー群の中から最大ではない磁気的エネルギーを選択させ、
    分割された領域の磁化ごとに、反転前の当該磁化と、前記容易軸ベクトルのうち選択された磁気的エネルギーの場合の特定の容易軸ベクトルと、に基づいて、磁化反転の反転角度を特定させ、
    分割された領域の磁化ごとに、当該領域内のピニングによるエネルギー障壁の高さに応じて、当該磁化について特定された反転角度により当該磁化を反転させるか否かを判断させる、
    ことを特徴とする磁性体のシミュレーションプログラム。
  2. 前記コンピュータに、
    分割された領域の磁化ごとに、当該磁化と、前記特定の容易軸ベクトルとの間の角度に基づいて、所定のパラメータ群の中から前記ピニングによるエネルギー障壁の高さに対応するパラメータを特定させ、
    前記磁化を反転させるか否かの判断において、
    前記コンピュータに、
    分割された領域の磁化ごとに、反転前後の当該磁化に関する前記領域内の磁気的エネルギーと、特定されたパラメータと、に基づいて、当該磁化について特定された前記反転角度により当該磁化を反転させるか否かを判断させ、
    前記コンピュータに、
    分割された領域の磁化ごとに、当該磁化を反転させると判断された場合、当該磁化について特定された前記反転角度により当該磁化を反転させることを特徴とする請求項1記載の磁性体のシミュレーションプログラム。
  3. 前記磁化を反転させるか否かの判断において、
    前記コンピュータに、
    分割された領域の磁化ごとに、当該磁化について特定された前記反転角度が180度である場合、当該磁化に関する当該領域内の磁気的エネルギーから当該磁化に対し方向が180度反転した磁化に関する当該領域内の磁気的エネルギーを引いた差分が、特定された前記パラメータ以上であるか否かを判断させ、
    前記磁化の反転において、
    前記コンピュータに、
    分割された領域の磁化ごとに、当該磁化を反転させると判断された場合、当該磁化を当該磁化に対し方向が180度反転した磁化に更新させることを特徴とする請求項2記載の磁性体のシミュレーションプログラム。
  4. 前記磁化を反転させるか否かの判断において、
    前記コンピュータに、
    分割された領域の磁化ごとに、当該磁化について特定された前記反転角度が90度である場合、当該磁化に関する当該領域内の磁気的エネルギーから前記特定の容易軸ベクトルに関する当該領域内の磁気的エネルギーを引いた差分が、特定された前記パラメータ以上であるか否かを判断させ、
    前記磁化の反転において、
    前記コンピュータに、
    分割された領域の磁化ごとに、当該磁化を反転させると判断された場合、当該磁化を前記特定の容易軸ベクトルに更新させることを特徴とする請求項2記載の磁性体のシミュレーションプログラム。
  5. 磁性体を構成する要素群のいずれかの要素から分割された領域における容易軸ベクトルを生成する生成部と、
    分割された領域の磁化ごとに、生成された前記容易軸ベクトルそれぞれに磁化した場合の磁気的エネルギーを算出し、算出した磁気的エネルギー群の中から最大ではない磁気的エネルギーを選択する選択部と、
    分割された領域の磁化ごとに、反転前の当該磁化と、前記容易軸ベクトルのうち選択された磁気的エネルギーの場合の特定の容易軸ベクトルと、に基づいて磁化反転の反転角度を特定する特定部と、
    分割された領域の磁化ごとに、当該領域内のピニングによるエネルギー障壁の高さに応じて、前記特定部によって当該磁化について特定された反転角度により当該磁化を反転させるか否かを判断する反転部と、
    を有することを特徴とする磁性体のシミュレーション装置。
  6. 磁性体のシミュレーション方法において、
    コンピュータが、
    前記磁性体を構成する要素群のいずれかの要素から分割された領域における容易軸ベクトルを生成し、
    分割された領域の磁化ごとに、生成された前記容易軸ベクトルそれぞれに磁化した場合の磁気的エネルギーを算出し、算出した磁気的エネルギー群の中から最大ではない磁気的エネルギーを選択し、
    分割された領域の磁化ごとに、反転前の当該磁化と、前記容易軸ベクトルのうち選択された磁気的エネルギーの場合の特定の容易軸ベクトルと、に基づいて磁化反転の反転角度を特定し、
    分割された領域の磁化ごとに、当該領域内のピニングによるエネルギー障壁の高さに応じて、当該磁化について特定された反転角度により当該磁化を反転させるか否かを判断する、
    処理を実行することを特徴とする磁性体のシミュレーション方法。
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