JP6015520B2 - 重合性塗布液並びにこれを用いて形成した樹脂及び有機エレクトロルミネッセンス素子並びに重合性塗布液及び有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法 - Google Patents

重合性塗布液並びにこれを用いて形成した樹脂及び有機エレクトロルミネッセンス素子並びに重合性塗布液及び有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法 Download PDF

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本発明は、重合性塗布液並びにこれを用いて形成した樹脂及び有機エレクトロルミネッセンス素子並びに重合性塗布液及び有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法に関する。
有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)は、厚さ数十nmの有機固体材料を積層した構造であり、薄型、軽量、フレキシブルな照明やディスプレイを提供する素子として注目されている。また、有機EL素子は、自発光であるため、高視野角が可能で、発光体自体の応答速度も高く、高速動画表示に適している。このため、液晶ディスプレイに代わるディスプレイとして期待されており、製品化が進んでいる。
有機EL素子に使用する有機固体材料は、低分子系及び高分子系に大別される。高分子系有機材料は、印刷法、インクジェット法等の湿式プロセスに向いており、量産性、製造プロセスの低コスト化及び大画面化の利点で期待されている。
しかし、高分子型有機材料は、湿式プロセスを用いて製膜を行う場合、有機膜を積層すると、新たな層を製膜する際に、既に製膜した層が溶けるという問題がある。
この対策として、高分子に硬化性の架橋基を付加した主剤を含む硬化性溶液を湿式プロセスで塗布した後に、熱や光処理により高分子を硬化する方法がある。硬化した膜(硬化樹脂)は、溶媒に溶けにくい性質を持つので、湿式プロセスでの積層が容易になる。
上記のような有機EL素子の製造に用いる硬化性の高分子型有機材料として、特許文献1には、(i)架橋基を有し、発光性及び電荷輸送性の少なくとも一方の性質を示す架橋製高分子化合物、及び、(ii)架橋基を有し、発光性及び電荷輸送性の少なくとも一方の性質を示す架橋性低分子化合物を含む組成物が記載されている。当該文献には、上記の組成物を用いることで、低温領域で硬化する樹脂を得ることができることが記載されている。
特許文献2には、有機エレクトロルミネッセント素子に関し、溶液を塗布することにより形成される塗膜である第1の有機層及び第2の有機層のうち、第1の有機層が、キャリア輸送性または発光性を有するポリマーと、官能基を有する低分子架橋剤とを含有し、低分子架橋剤が第1の有機層内で架橋しているものが開示されている。
なお、非特許文献1〜3には、モノマに含まれる芳香環同士をクロスカップリングさせ、該モノマを重合させる方法が記載されている。
特開2011−149012号公報 特開2005−243300号公報
Yamamotoら, Bull. Chem. Soc. Jpn.,51巻,7号,2091頁(1978) Zembayashiら, Tet. Lett.,47巻,4089頁(1977) Suzukiら, Synthetic Communications,11巻,7号,513頁(1981)
上記のように、有機EL素子のような有機素子の製造に用いる硬化性の有機材料として、様々な架橋基を導入した重合体が開発されている。しかし、架橋基が多いと、不溶性は向上するが、電荷輸送効率が低下する。
特許文献1及び2に記載されている架橋性低分子の場合、低分子に占める架橋基の体積密度が高く、電荷輸送効率が低下を招き、不溶性を有しかつ電荷輸送効率の高い樹脂及びこれを作製するための塗布液を提供するものではなく、また、最適な化合物構成を開示するものではない。
本発明は、有機EL素子の製造に用いる高分子型有機材料として、不溶性を有し、且つ、高い電荷輸送効率を有する樹脂を形成できる重合性塗布液を提供し、この重合性塗布液を用いて樹脂及び有機EL素子を作製することを目的とする。
本発明の重合性塗布液は、電荷輸送性又は発光性の構造単位を有しかつ重合性架橋基を有する第1の高分子と、当該構造単位を有しかつ重合性架橋基を有しない第2の高分子と、溶媒とを含むことを特徴とする。
本発明によれば、有機EL素子向けの導電性樹脂において不溶性と電荷輸送効率の向上とを両立することができる。
実施例の重合性塗布液に溶解している高分子を示す模式図である。 図1Aの高分子を硬化して得られた樹脂を示す模式図である。 実施例の架橋基を有する硬化前の高分子の構造を示す模式図である。 図1Aの高分子を硬化した後の樹脂の構造を示す模式図である。 実施例の有機エレクトロルミネッセンス素子を示す断面図である。
本発明は、電荷輸送性又は発光性の構造単位を有しかつ重合性架橋基を有する第1の高分子(硬化性重合体)と、当該構造単位を有しかつ重合性架橋基を有しない第2の高分子と、溶媒とを含む重合性塗布液を用いることを特徴とする。この重合性塗布液を塗布し、硬化することにより、樹脂を形成することができる。当該樹脂は、有機EL素子等の正孔輸送層、発光層等に用いることができる。ここで、上記の構造単位は、後述のモノマに由来する原子団を含むものである。
有機EL素子は、陽極、正孔輸送層、発光層及び陰極をこの順に積層した構造を有する。正孔輸送層は、上記の樹脂で形成されたものであり、重合性架橋基が結合して形成された網目構造を有する。網目構造の密度は、正孔輸送層の陽極又は発光層に接する一方の界面の方が他方の界面より高い。
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
<1.重合性塗布液>
本明細書において、「重合性塗布液」は、基板に塗布した後に、熱又は光のような硬化処理によって、架橋基を有する高分子の架橋反応を開始し、高分子間及び/又は高分子内架橋を形成することにより、硬化した樹脂(以下「硬化樹脂」とも記載する。)を形成することのできる重合性塗布液を意味する。
本発明者は、まず、電荷輸送性(電子輸送性若しくは正孔輸送性)又は発光性を有する構造単位(「反復単位」又は「繰り返し単位」ともいう。)で構成された主鎖を有する高分子と、この高分子に硬化性を付与する側鎖として、環状エーテル基(例えばエポキシ基又はオキセタン基)に代表される架橋基を結合した高分子とを作製した。そして、これら複数の高分子を溶媒とともに混合し、重合性塗布液とし、この重合性塗布液を硬化することにより硬化樹脂を作製した。さらに、この硬化樹脂を評価した結果、架橋基を有する高分子のみからなる重合性塗布液により作製した硬化樹脂と比較して、同等の有機溶媒耐性が維持され、かつ、硬化樹脂の導電性が向上することを見いだした。
有機溶媒耐性は、架橋基を有する高分子の濃度が、架橋基を有しない高分子の濃度よりも、塗布液の表面において高く、硬化処理後の樹脂は、その表面近傍において、架橋構造を形成していることにより維持される。一方、導電性は、導電性の低下要因となる架橋基を含まない高分子の濃度が表面近傍以外で高いことにより向上する。
本発明の重合性塗布液を用いて作製された樹脂は、従来技術の重合性塗布液を用いて作製される樹脂と比較して導電性が高まるため、例えば、有機素子の正孔輸送層に用いる場合に、高い電荷輸送効率を発現することが可能となる。本発明の重合性塗布液を用いて作製された樹脂は、従来技術の重合性塗布液を用いて作製された樹脂と同等の有機溶媒耐性を確保できるため、例えば有機素子の正孔輸送層の作製に用いる場合に高い有機溶媒耐性を発現し、湿式プロセスによる有機素子の生産性を向上させることが可能となる。
本明細書において、「有機素子」は、有機化合物からなる有機材料を用いて作製された素子を意味する。有機素子の例としては、有機EL素子、有機太陽電池素子及び有機薄膜トランジスタ素子(有機TFT素子)を挙げることができる。本発明の硬化性重合体を含む重合性塗布液を用いて作製された樹脂は、高い硬化性及び高い導電性を有するため、有機EL素子の正孔輸送層に使用することが好ましい。
また、「硬化性重合体」とは、加熱等の硬化処理によって架橋反応を生じる架橋基(重合性架橋基)を有する重合体(高分子)を意味する。架橋基の代表例は、エポキシ基、オキセタン基等である。
本発明の重合性塗布液の高分子の主鎖に含まれる電荷輸送性又は発光性を有する構造単位を形成するモノマは、有機素子の作製、例えば有機EL素子の正孔輸送層又は発光層を形成する樹脂を作製するために使用される公知のモノマでよい。
当該モノマは、例えば、アリールアミン、スチルベン、ヒドラゾン、カルバゾール、アニリン、オキサゾール、オキサジアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾオキサジアゾール、ベンゾキノン、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、チオフェン、ベンゾチオフェン、チアジアゾール、ベンゾジアゾール、ベンゾチアジアゾール、トリアゾール、ペリレン、キナクリドン、ピラゾリン、アントラセン、ルブレン、クマリン、ナフタレン、ベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、アントラセン、テトラセン、フルオレン、フェナントレン、ピレン、クリセン、ピリジン、ピラジン、アクリジン、フェナントロリン、フラン及びピロール、並びにこれらの誘導体を骨格として有する化合物を挙げることができる。なお、当該モノマは、上記のものに限定されるものではない。
好ましくは、直鎖状及び分岐状の共役モノマは、下記化学式(1)〜(3)で表される骨格を有する化合物から選択される。
Figure 0006015520
Figure 0006015520
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式中、R〜Rは、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜22の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数2〜22の直鎖状、分岐状又は環状のアルケニル基、炭素数2〜22の直鎖状、分岐状又は環状のアルキニル基、炭素数6〜21のアリール基、炭素数12〜20のヘテロアリール基、炭素数7〜21のアラルキル基及び炭素数13〜20のヘテロアリールアルキル基からなる群より選択されることが好ましく、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜22の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜21のアリール基、炭素数12〜20のヘテロアリール基及び炭素数7〜21のアラルキル基からなる群より選択されることがより好ましく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基及び炭素数6〜10のアリール基からなる群より選択されることが更に好ましく、水素原子、臭素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基及びフェニル基からなる群より選択されることが特に好ましい。
上記の基を構成する水素は、1個若しくは複数個のハロゲン原子で置換されていてもよいが、非置換であることがより好ましい。ここで、「非置換」とは、上記の基を構成する水素のうちハロゲン原子で置換されているものが1個もないことをいう。
m1及びm2は、互いに独立して、0〜5の整数であることが好ましく、0又は1であることがより好ましい。
n1及びn2は、互いに独立して、0〜4の整数であることが好ましく、0又は1であることがより好ましい。
上記化学式(1)〜(3)で表される骨格を有する化合物は、高分子の反復単位であるが、隣接するモノマとの結合部位が2カ所の場合は直鎖状の共役モノマ、3カ所以上の場合は分岐状の共役モノマとなる。例えば、後述するスズキの方法を用いて共役モノマを結合することにより高分子を作製する場合において、ボロン酸基もしくはハロゲンの置換箇所が2カ所の場合には、直鎖状に結合し、3カ所の置換位を有する場合には、その共役モノマで高分子の骨格が分岐する。
本明細書において、「アラルキル基」は、アルキル基の水素原子の1個がアリール基に置換された基を意味する。好適なアラルキル基は、限定するものではないが、例えばベンジル基、1−フェネチル基、2−フェネチル基等を挙げることが出来る。
本明細書において、「アリールアルケニル基」は、アルケニル基の水素原子の1個がアリール基に置換された基を意味する。好適なアリールアルケニル基は、限定するものではないが、例えばスチリル基等を挙げることが出来る。
本明細書において、「ヘテロアリール基」は、アリール基の1個以上の炭素原子が、それぞれ独立して窒素原子(N)、硫黄原子(S)及び酸素原子(O)から選択された複素原子に置換された基を意味する。例えば、「炭素数12〜20のヘテロアリール基」及び「(環の)員数12〜20のヘテロアリール基」は、少なくとも12個且つ多くても20個の炭素原子を含む芳香族基の1個以上の炭素原子が、それぞれ独立して上記の複素原子に置換された基を意味する。この場合において、N又はSによる置換は、それぞれN−オキシド又はSのオキシド若しくはジオキシドによる置換を包含する。好適なヘテロアリール基は、限定するものではないが、例えば、フラニル基、チエニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、イソチアゾリル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、インドリル基等を挙げることが出来る。
本明細書において、「ヘテロアリールアルキル基」は、アルキル基の水素原子の1個がヘテロアリール基に置換された基を意味する。
本明細書において、「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を意味する。
電荷輸送性又は発光性を有する構造単位を構成するモノマは、特に好ましくは、トリフェニルアミン、N−(4−ブチルフェニル)−N’,N’’−ジフェニルアミン、9,9−ジオクチル−9H−フルオレン、N−フェニル−9H−カルバゾール、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン及びN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス(2−ナフチル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン、並びにこれらの誘導体を骨格として有する化合物から選択される。
上記の骨格を有する電荷輸送性又は発光性を有する構造単位で構成された主鎖を有する高分子を含む本発明の重合性塗布液を用いることにより、結果として得られる樹脂の硬化性を向上させ、且つ、電荷輸送能力を向上させることが可能となる。
図1Aは、実施例の重合性塗布液に溶解している高分子を示す模式図である。
本図において、重合性塗布液は、端部に重合性架橋基1を有する第1の高分子2と、端部の構造が第1の高分子2と異なる第2の高分子3とを含む。第1の高分子2及び第2の高分子3のいずれも、主鎖4は、電荷輸送性又は発光性を有する構造単位で構成されている。第2の高分子3は、重合性架橋基1を有しないため、架橋反応を生じない。
ここで、重合性架橋基とは、重合性塗布液に含まれる高分子が有する原子団であって、当該高分子に硬化性を付与するものをいう。硬化性とは、加熱等の硬化処理によって架橋反応を生じ、分子量が増加して溶媒に対する溶解性を失う性質をいう。
重合性塗布液の溶媒に対する溶解性は、第1の高分子2の方が、第2の高分子3よりも低い。溶媒に対する溶解性又は親和性の違いから、重合性架橋基1を有する第1の高分子2が表面(積層方向5の上部)に向かって高濃度で分布することが望ましい。
主鎖4は、直鎖状及び分岐状のいずれであってもよい。主鎖4が直鎖状の部分及び分岐状の部分の両方を含む場合、それぞれの構成比率は、硬化性重合体に付与すべき特性に応じて適宜設定すればよい。例えば、硬化性を向上するためには、重合性架橋基1を有する第1の高分子2は、直鎖状の部分よりも分岐状の部分を多く含むことが望ましい。導電性を向上するためには、重合性架橋基1を有しない第2の高分子3は、直鎖状の部分を多く含むことが望ましい。
第1の高分子2に対する第2の高分子3の構成比率は、1:0.1〜1:100の範囲であることが好ましく、1:1〜1:10の範囲であることがより好ましい。第1の高分子2が少なく、上記の構成比率が低い場合、結果として得られる樹脂の硬化性が低くなるため好ましくない。
第1の高分子2は、第2の高分子3よりも溶解性が低いことが望ましい。溶解性は、以下のいずれかの方法で確認できる。
溶媒内での該高分子の分布を目視観察や液内の吸光度分布で測定し、該高分子が、表面に相分離するか若しくは底面に沈殿する場合には、溶解性が低く、溶媒内に一様に分散すれば、溶解性が高い。
また、溶解度を測定することにより、溶解性の大小を評価することができる。即ち、該高分子を溶媒に少量ずつ添加し、より少ない濃度で表面に析出するか又は底面に沈殿する場合は、溶解性が低く、より高い濃度まで析出や沈殿が生じない場合には、溶解性が高い。
さらに、以下で定義する溶解パラメーターを用いて比較した場合において、塗布液の溶媒の溶解パラメーターと該高分子の溶解パラメーターとが近い値を示すときには、該高分子は、溶媒に溶けやすく、そうでない場合には、溶媒に溶けにくい。ここで、溶解パラメーターδは、分子の液体状態におけるモル蒸発エンタルピーΔH及びモル体積Vから、下記計算式によりで定義される。
δ=((ΔH−RT)/V)1/2
式中、Rは気体定数であり、Tは絶対温度である。この計算式は、1cmの液体が蒸発するために必要な蒸発熱の平方根を意味している。
<2.重合性塗布液に含まれる高分子の作製>
本発明の重合性塗布液に含まれる重合性架橋基を有する高分子は、上述の電荷輸送性及び発光性の少なくともいずれかを有する構造単位を含むモノマ、並びに重合性架橋基を含むモノマを、当該技術分野で公知の方法によって重合することにより、作製することができる。例えば、架橋基を含むモノマが架橋基と芳香族基とを結合したモノマであれば、全てのモノマが芳香環を有する。この場合、例えば、ヤマモトらの方法(非特許文献1)、ゼンバヤシらの方法(非特許文献2)又はスズキの方法(非特許文献3)を用いて、各モノマに含まれる芳香環同士をクロスカップリングさせることにより、該モノマを重合することができる。ここでは、スズキの方法を用いることが好ましい。
スズキの方法は、芳香族ボロン酸(boronic acid)誘導体と芳香族ハロゲン化物との間でPd触媒クロスカップリング反応(以下、「鈴木反応」とも記載する。)を生じさせるものである。鈴木反応を用いて、電荷輸送性又は発光性を有する構造単位を構成するモノマの少なくともいずれか、並びに架橋基と芳香族基とが結合したモノマの芳香環同士を結合させることにより、該モノマを重合させ、本発明の重合性塗布液に含まれる重合性架橋基を有する高分子を作製することが可能となる。
上記の高分子の作製において、架橋基を含むモノマを用いないことで、本発明の重合性塗布液に含まれる重合性架橋基を有さない高分子も同様に作製することができる。
鈴木反応は、通常、Pd(II)塩又はPd(0)錯体の形態の可溶性Pd化合物を触媒として必要とする。鈴木反応の基質となる芳香族化合物、すなわち上述の架橋性モノマを基準として、0.01〜5モルパーセントのPd(PhP)、3級ホスフィンリガンドとのPd(OAc)錯体又はPdCl(dppf)錯体をPd触媒として用いることが好ましい。
鈴木反応はまた、塩基も必要とする。塩基としては、水性アルカリカーボネート又はバイカーボネートを用いることが好ましく、炭酸カリウムを用いることがより好ましい。溶媒は、N,N−ジメチルホルムアミド、トルエン、アニソール、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等を用いることが好ましく、トルエンを用いることがより好ましい。トルエンのような非極性溶媒を用いる場合、トリスカプリリルメチルアンモニウムクロリド(Aliquat(登録商標)336)のような相間移動触媒を用いて反応を促進することが好ましい。
上記の条件で各架橋性モノマを重合させることにより、高収率で本発明の硬化性重合体を作製することが可能となる。
<3.重合性塗布液の溶媒>
上記のような塗布方法は、通常、−20〜300℃の温度範囲、好ましくは10〜100℃、特に好ましくは15〜50℃で実施することができ、また、上記溶液に用いる溶媒としては、特に限定されないが、例えば、トルエン、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、キシレン、メシチレン、アニソール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセロソルブアセテート等を挙げることができる。
<4.重合性塗布液によって形成された樹脂>
図1Bは、図1Aの高分子を硬化して得られた樹脂を示す模式図である。
本発明の重合性塗布液を基板に塗布した後、硬化処理することにより、架橋基を端部に有する高分子の架橋基が高分子間及び/又は高分子内の架橋部6を形成して硬化樹脂を得ることができる。
当該硬化樹脂は、高分子間及び/又は高分子内の架橋部6が形成されることにより、樹脂膜の表面部(積層方向5の上部)においては網目構造(架橋された高分子)が形成されて強固となり、かつ、当該表面部以外においては、架橋されていない高分子の密度が高くなるため電荷の移動が容易になる。それ故、本発明の重合性塗布液を用いて作製された樹脂を用いることにより、有機素子、例えば有機EL素子の正孔輸送層の作製に用いる場合に、高い有機溶媒耐性を得ることができ、且つ、湿式プロセスによる有機素子の生産性を向上させることが可能となる。また、有機素子、例えば有機EL素子の正孔輸送層に用いる場合に、高い電荷輸送効率を発現することが可能となる。
本明細書において、「硬化処理」は、上述のように架橋基を反応させて、分子間及び/又は分子内の架橋部6を形成する処理を意味する。本発明の硬化性重合体に適用される硬化処理としては、例えば、加熱、又は光、マイクロ波、放射線、電子線等の照射を挙げることができる。このうち、加熱による硬化処理が好ましい。
上記の硬化処理は、本発明の硬化性重合体と架橋開始剤とを混合した混合物に対して実施することが好ましい。
本明細書において、「架橋開始剤」は、上記の硬化処理によって活性化され、架橋基の架橋反応を促進する化合物を意味する。本発明の硬化性重合体の硬化処理に適用される架橋開始剤としては、例えば、ヨードニウム塩、スルホニウム塩及びフェロセン誘導体を挙げることができる。上記の架橋開始剤は、反応性が高いことから好ましい。
特に好ましくは、架橋開始剤は、下記化学式(4)〜(6)で表される化合物から選択される。
Figure 0006015520
Figure 0006015520
Figure 0006015520
式中、Xは、Sb、(CB、CFSO、PF、BF、CSO又はCHSOである。
11〜R15は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜22の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数2〜22の直鎖状、分岐状又は環状のアルケニル基、炭素数2〜22の直鎖状、分岐状又は環状のアルキニル基、炭素数6〜21のアリール基、炭素数12〜20のヘテロアリール基、炭素数7〜21のアラルキル基及び炭素数13〜20のヘテロアリールアルキル基からなる群より選択されることが好ましく、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜22の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜21のアリール基、炭素数12〜20のヘテロアリール基及び炭素数7〜21のアラルキル基からなる群より選択されることが更に好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
s1、s2、t1、t2及びt3は、互いに独立して、0〜5の整数であることが好ましい。
特に好ましくは、本発明の硬化性重合体と上記で説明した架橋開始剤とを混合した混合物を加熱処理することによって架橋基を反応させて、分子間及び/又は分子内に架橋部を形成する。この場合、加熱処理の温度は、100〜250℃の範囲であることが好ましい。また、加熱処理の時間は、10〜180分の範囲であることが好ましい。
本発明の硬化性重合体によって形成された樹脂は、通常、仕事関数が4〜7eVの範囲であり、典型的には4.7〜5.8eVの範囲である。この仕事関数は、本発明の硬化性重合体に含まれる構造単位(繰り返し単位)の比率を適宜設定することによって調整することが出来る。例えば、本発明の硬化性重合体に含まれる直鎖状共役モノマに対する分岐状共役モノマの構成比率が上記の範囲である場合、結果として得られる樹脂の仕事関数は、有機EL素子に通常使用される発光層の仕事関数及び酸化インジウムスズ(ITO:Indium Tin Oxide)電極の仕事関数の中間の値となる。それ故、本発明の硬化性重合体によって作製された樹脂は、有機EL素子の正孔輸送層に適した電荷輸送効率を発現することが可能となる。
なお、本発明の硬化性重合体によって形成された樹脂の仕事関数は、限定するものではないが、例えば、理研計器製表面分析装置AC−1を用いて、照射光量50nWの条件で、仕事関数を測定することができる。
<5.有機EL素子>
本発明の重合性塗布液を用いて作製された樹脂は、有機素子、例えば有機EL素子の有機材料として好ましい硬化性及び電荷輸送効率を有する。それ故、本発明はまた、本発明の重合性塗布液を用いることにより形成された樹脂を用いて作製された有機EL素子に関する。
図3は、有機EL素子の構成例を示す断面図である。
本図において、有機EL素子201は、陽極22、正孔輸送層23(「正孔注入層」ともいう。)、発光層24及び陰極25をこの順に積層した構造を有する。
陽極22は、例えば、ガラス基板21の表面に酸化インジウムスズ(ITO)をパターニングすることによって形成される。陰極25は、例えば、ガラス基板21の陽極22の表面に、正孔輸送層23及び発光層24を順次形成した後、該発光層24の上にアルミニウム(Al)を蒸着させることによって形成される。その後、陰極25の表面に封止ガラス板26を配置する。すなわち、完成した有機EL素子201は、ガラス基板21と封止ガラス板26との間に、陽極22、正孔輸送層23、発光層24及び陰極25の積層構造を有するものである。ガラス基板21と封止ガラス板26とを張り合わせる際には、例えば、光硬化性エポキシ樹脂のような硬化樹脂を用いて封止することが好ましい。
有機EL素子201において、正孔輸送層23は、本発明の重合性塗布液を用いることにより形成された樹脂を用いて作製される。正孔輸送層23は、当該技術分野で慣用される手段を用いて作製することができる。例えば、ガラス基板21の表面に陽極22をパターニングし、その陽極22の表面に、スピンコート法、印刷法、インクジェット法等の湿式プロセスを用いて本発明の重合性塗布液を塗布する。その後、上述の硬化処理により樹脂を形成することにより作製すればよい。
本発明の重合性塗布液によって形成された樹脂は、硬化性が高く、有機溶媒耐性に優れる。このため、当該樹脂を用いて作製された正孔輸送層23の表面に、例えば上記の湿式プロセスによって発光層24を積層する場合、発光層24の重合体溶液に含まれる有機溶媒によって正孔輸送層23が溶解することを抑制することができる。例えば、本発明の重合性塗布液を用いることにより形成された樹脂を用いて作製された正孔輸送層23は、通常、残膜率が60〜100%の範囲であり、典型的には80〜99%の範囲である。上記の残膜率で表される有機溶媒耐性を有する樹脂は、硬化性が高い。それ故、本発明の樹脂を正孔輸送層23に用いることにより、湿式プロセスによる有機EL素子201の生産性を向上させることが可能となる。
なお、残膜率の評価は、例えば、以下の手順で実施することができる。
ITOガラス基板の陽極の表面に、本発明の重合性塗布液を用いることにより形成された樹脂を用いて正孔輸送層を作製する。正孔輸送層が形成されたITOガラス基板を、有機溶媒(例えばトルエン)に20〜250℃、10〜60秒間の条件で浸漬する。その後、ITOガラス基板を有機溶媒中から取り出し、浸漬前後の薄膜の吸光度を測定する。薄膜の残存率(残膜率)は、吸光度の比より求めた。吸光度は、膜厚に比例するので、吸光度の比(浸漬あり/浸漬なし)は、正孔輸送層の残膜率(浸漬あり/浸漬なし)に一致する。残膜率が高い程、有機溶媒耐性が高いと評価される。
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
<架橋基を端部に有する高分子の合成(1)>
下記化学式(7)〜(9)で表される化合物はそれぞれ、直鎖状トリフェニルアミンモノマ、分岐状トリフェニルアミンモノマ、オキセタン架橋モノマである。これらの化合物を、鈴木反応によって重合し、硬化性重合体を合成した。
架橋性の直鎖状トリフェニルアミンモノマ(化学式(7))及び分岐トリフェニルアミンモノマ(化学式(8))は、鈴木反応の反応点をそれぞれ2個及び3個有しており、重合によって主鎖を形成する。架橋性のオキセタン架橋モノマ(化学式(9))は、いずれも鈴木反応の反応点を1個有しており、重合によって側鎖を形成する。
架橋性のオキセタン架橋モノマ(化学式(9))は、フェニレン及びオキシメチレンの組み合わせからなる二価の架橋基に1−エチルオキセタン−1−イル基が結合した構造を有するモノマである。
Figure 0006015520
Figure 0006015520
Figure 0006015520
以下、架橋基を端部に有する高分子の合成手順を説明する。
丸底フラスコに、4,4’−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−4’’−n−ブチルトリフェニルアミン(化学式(7))(0.4mmol)、4,4’,4’’−トリブロモトリフェニルアミン(化学式(8))(1.0mmol)、3−(4−ブロモフェノキシメチル)3−エチルオキセタン(化学式(9))(1.2mmol)、2−ブロモ−3−n−オクチルチオフェン(5.3mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0.008mmol)、2M炭酸カリウム水溶液(5.3mmol)、Aliquat(登録商標)336(0.4mmol)及びアニソール(4ml)を入れ、窒素雰囲気下、90℃で2時間撹拌した。
上記の方法で、架橋性直鎖状トリフェニルアミンモノマ(化学式(7)):架橋性分岐トリフェニルアミンモノマ(化学式(8)):架橋性オキセタン架橋モノマ(化学式(9))=20:50:40のモル比で合成したところ、分子量約40kDaの架橋基を有する高分子Aを得た。分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いてポリスチレン換算で測定したときの数平均で決定した。
<硬化の前後における高分子の構造>
図2Aは、上記の方法で作製した架橋基を有する高分子の硬化前における構造を模式的に示したものである。
本図において、高分子は、直鎖部11、分岐部12及び架橋部13が結合した構造を有する。架橋部13は、架橋基を含む原子団である。
この高分子は、後述の実施例6の[硬化性重合体を用いた樹脂の形成]に記載した方法で、本高分子を含む塗布液をITO基板に塗布した後、加熱すると、架橋基であるオキセタン等の酸素Oと炭素Cとの結合が切れて開環し、異なるオキセタン同士が重合する。
図2Bは、硬化後の高分子の構造を示したものである。
本図において、硬化後の高分子は、分岐部16と、架橋基が結合して長くなった直鎖部17とを含む。
<架橋基がエポキシ基の場合における高分子の合成>
実施例1で説明した手順において、架橋性のオキセタン架橋モノマ(化学式(9))を、下記化学式(10)で表される化合物であるエポキシ架橋モノマに変更した他は、実施例1と同様の手順で合成を行い、分子量が約40kDaの架橋基を有する高分子A’を得た。
Figure 0006015520
<架橋基を端部に有する高分子の合成(2)>
実施例1で説明した手順において、直鎖状トリフェニルアミンモノマ(化学式(7))を、下記化学式(11)で表される化合物である2,7−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジオクチル−9H−フルオレンに変更した他は、実施例1と同様の手順で分子量が約40kDaの架橋基を有する高分子Bを得た。
Figure 0006015520
<架橋基を端部に有する高分子の合成(3)>
実施例1で説明した手順において、架橋性直鎖状トリフェニルアミンモノマ(化学式(7))を、下記化学式(12)で表される化合物である2,7−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−N−フェニル−9H−カルバゾールに変更した他は、実施例1と同様の手順で分子量が約40kDaの架橋基を有する高分子Cを得た。
Figure 0006015520
<架橋基を端部に有さない高分子の合成>
実施例1で説明した手順において、直鎖状トリフェニルアミンモノマ(化学式(7))を、側鎖に炭素数4のアルキル鎖を付加した下記化学式(13)で表される化合物であるモノマで置換し、オキセタン架橋モノマ(化学式(9))を含まない条件で、実施例1と同様の手順で高分子を作製したところ、分子量が約80kDaの架橋基を有さない高分子Dを得た。
Figure 0006015520
実施例1〜4においては、オキセタン架橋モノマ(化学式(9))の鈴木反応の反応点は1点であり、高分子の末端となる。モノマ(化学式(9))において、側鎖に炭素数4のアルキルを付加したのは、作製された高分子の溶媒(トルエン)への溶解性を向上させるためである。これに対して、本実施例においては、オキセタン架橋モノマ(化学式(9))を含まないので、より大きな分子量の高分子を得た。
<重合性塗布液を用いた樹脂の作製(1)>
[重合性塗布液の調製]
実施例1で合成した高分子A(1.8g)、実施例5で合成した高分子D(3.4g)、上記化学式(4)で表される開始剤(式中、R11及びR12はHであり、s1及びs2は1である。)0.13mgを1.2mlのトルエンに溶解し、重合性塗布液を作製した。重合液の表面に半透明な白濁相を確認した。このような白濁相は、高分子Aを含まず高分子Dのみを含む塗布液では確認されなかった。
高分子Aの主鎖に含まれる直鎖状のトリフェニルアミン(化学式(7))は、側鎖に炭素数4のアルキルを含まないためトルエンへの溶解性が劣ること、及び高分子Aの分子量が高分子Dよりも大きいことが要因となって、重合液の表面に多く分布し、半透明な白濁相を形成していると考えられる。
[硬化性重合体を用いた樹脂の形成]
酸化インジウムスズ(ITO:Indium Tin Oxide)を、1.6mm幅でガラス基板の表面にパターニングした。このITOガラス基板の表面に、上記の手順で作製した重合性塗布液を300回転/分の条件でスピンコートした。その後、重合性塗布液をコートしたITOガラス基板を、ホットプレート上で180℃、60分間加熱することにより硬化処理し、硬化性重合体を加熱重合して、樹脂を形成した。本樹脂を樹脂Aとする。
[残膜率の評価]
樹脂Aの薄膜をガラス板ごとトルエン中でリンスし、リンス前後の薄膜の吸光度を測定し、リンス前後の吸光度の比より薄膜の残存率(残膜率)を求めた。樹脂Aの場合、残膜率は90%以上であった。
<重合性塗布液を用いた樹脂の作製(2)>
実施例6で説明した手順において、高分子Aを、実施例3又は4で合成した高分子B又はCに変更した他は、実施例6と同様の手順で樹脂を形成した。本樹脂を、それぞれ樹脂B又はCとする。
樹脂B又はCからなる正孔輸送層の表面に、実施例6で説明した手順で発光層を形成した。実施例6と同様の手順で発光層形成後の正孔輸送層の残膜の膜厚を測定し、樹脂B又はCからなる正孔輸送層の残膜率を算出したところ、残膜率はいずれも90%以上であった。
[仕事関数の評価]
光電子収量分光装置(理研計器製表面分析装置AC−1)を用いて、硬化性重合体を用いた樹脂の仕事関数を決定した。測定に際しては、照射光量を50nWとした。
樹脂Aの仕事関数は5.0eVであったのに対し、樹脂B及びCの仕事関数は、それぞれ、5.2eV、5.3eVであった。この結果から、硬化性重合体を合成する際に使用される電荷輸送性もしくは発光性のモノマの種類を変更することにより、発光層及びITOの中間の仕事関数を有する樹脂を作製し、有機EL素子の作製に使用できると考えられる。
(比較例1)
<架橋基を側鎖(端部)に有さない高分子のみを用いた重合性塗布液を用いた樹脂の作製>
実施例6で説明した手順において、高分子を、側鎖に架橋基を有さない高分子D(4.4g)のみとし、側鎖に架橋基を有する高分子Aを含まない条件で重合性塗布液を調製し、樹脂を作製したところ、残膜率は10%以下であった。この樹脂を比較樹脂1とする。
(比較例2)
<架橋基を側鎖に有する高分子のみを用いた重合性塗布液を用いた樹脂の作製>
実施例1で説明した、架橋基を側鎖に有する高分子の合成において、直鎖状トリフェニルアミンモノマ(化学式(7))を、側鎖に炭素数4のアルキル鎖を付加したモノマ(化学式(9))に変更した以外は、同一の条件で、側鎖に架橋基を有する高分子Eを作製した。さらに、実施例6で説明した手順において、高分子として、側鎖に架橋基を有する高分子E(4.4g)を用い、側鎖に架橋基を有さない高分子Dを含まない条件で重合性塗布液の調製し、樹脂を作製したところ残膜率は、90%以上であった。この樹脂を比較樹脂2とする。
<有機EL素子>
[発光層材料の作製]
丸底フラスコに、4,4’−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−4’’−n−ブチルトリフェニルアミン(化学式(7))(0.4mmol)、4,4’−ジブロモトリフェニルアミン(化学式(8))(0.08mmol)、4,7−ジブロモ−2,1,3−ベンゾチアジアゾール(0.32mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0.004mmol)、2M炭酸カリウム水溶液(10.6mmol)、Aliquat336(0.4mmol)及びトルエン(7ml)を入れ、窒素雰囲気下、80℃で48時間撹拌し、反応させた。これにより得られた溶液をメタノール/水混合溶媒(9:1)に注ぎ、析出した重合体をろ別した。再沈殿を2回繰り返し行って精製し、黄色発光重合体Dを得た。
[有機EL素子の作製]
実施例6で作製した樹脂Aからなる正孔輸送層及び黄色発光重合体Dからなる発光層を有するITOガラス基板を、真空蒸着機に入れ、発光層の上に100nmの膜厚のAl電極を蒸着させた。電極形成後、大気開放することなく、乾燥窒素環境中に基板を移動した。得られたITOガラス基板と、0.7mmの無アルカリガラスに0.4mmのザグリを入れた封止ガラスとを、光硬化性エポキシ樹脂を用いて貼り合わせることにより封止し、多層構造の有機EL素子を作製した。本有機EL素子は、有機EL素子Aとする。
(比較例3)
<架橋基を側鎖に有する高分子のみを用いた樹脂を用いた有機EL素子の作製>
実施例7で説明した手順において、正孔輸送層として、比較例2で作製した比較樹脂2に変更した以外は、上記と同様の手順で有機EL素子を作製した。本有機EL素子を、比較例3の有機EL素子とする。
<使用例:有機EL素子の性能評価>
実施例8の有機EL素子A、並びに比較例3の有機EL素子の性能評価は、大気中、室温(25℃)において、3000cd/mの輝度を維持するための電圧を測定することによって行った。
実施例7の有機EL素子Aの場合、3000cd/mの輝度を維持するための電圧は8Vであったのに対して、比較例3の有機EL素子の場合、10Vであった。
これは、実施例7の有機EL素子Aの場合、架橋基を有する高分子が正孔輸送層の表面近傍で架橋構造を形成することで、発光層の塗布時の正孔輸送層の溶解を防ぎ、かつ、正孔輸送層の表面以外では、架橋基が少ないため、導電性が高いためであると考えられる。
なお、本発明は、上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除及び/又は置換をすることが可能である。
本発明の重合性塗布液及びこれを用いて作製した樹脂は、高硬化性と高伝導性とを両立可能であり、有機EL素子の正孔輸送層を始めとした溶媒に溶けにくい有機導電性膜として利用することができる。
1:重合性架橋基、2:第1の高分子、3:第2の高分子、4:主鎖、5:積層方向、6:架橋部、11:直鎖部、12:分岐部、13:架橋部、16:分岐部、17:直鎖部、21:ガラス基板、22:陽極、23:正孔輸送層、24:発光層、25:陰極、26:封止ガラス板、201:有機EL素子。

Claims (11)

  1. 電荷輸送性又は発光性の構造単位を有しかつ重合性架橋基を有する第1の高分子と、前記構造単位を有しかつ前記重合性架橋基を有しない第2の高分子と、溶媒とを含み、
    前記溶媒に対する溶解性は、前記第1の高分子の方が前記第2の高分子よりも低く、
    前記第1の高分子と前記第2の高分子との構成比率は、1:1〜1:10であることを特徴とする重合性塗布液。
  2. 前記重合性架橋基は、環状エーテル基であることを特徴とする請求項記載の重合性塗布液。
  3. 前記溶媒は、トルエンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の重合性塗布液。
  4. 前記構造単位は、下記化学式(1)、(2)又は(3)で表される骨格を有することを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の重合性塗布液。
    Figure 0006015520
    Figure 0006015520
    Figure 0006015520
    (式中、R〜Rは、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜22の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数2〜22の直鎖状、分岐状又は環状のアルケニル基、炭素数2〜22の直鎖状、分岐状又は環状のアルキニル基、炭素数6〜21のアリール基、炭素数12〜20のヘテロアリール基、炭素数7〜21のアラルキル基及び炭素数13〜20のヘテロアリールアルキル基からなる群より選択され(前記基は、非置換又は1個若しくは複数個のハロゲン原子で置換されている。)、m1及びm2は、互いに独立して、0〜5の整数であり、n1及びn2は、互いに独立して、0〜4の整数である。)
  5. 前記第1の高分子の平均分子量は、前記第2の高分子の平均分子量よりも小さいことを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の重合性塗布液。
  6. 請求項1〜のいずれか一項に記載の重合性塗布液を用いて作製されたことを特徴とする樹脂。
  7. 陽極、正孔輸送層、発光層及び陰極をこの順に積層した構造を有し、前記正孔輸送層又は前記発光層は、請求項記載の樹脂で形成されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  8. 陽極、正孔輸送層、発光層及び陰極をこの順に積層した構造を有し、前記正孔輸送層は、請求項6記載の樹脂であり、重合性架橋基が結合して形成された網目構造を有し、前記網目構造の密度は、前記正孔輸送層の前記陽極又は前記発光層に接する一方の界面の方が他方の界面より高いことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  9. 陽極、正孔輸送層、発光層及び陰極をこの順に積層した構造を有し、前記発光層は、請求項6記載の樹脂であり、重合性架橋基が結合して形成された網目構造を有し、前記網目構造の密度は、前記発光層の前記陰極又は前記正孔輸送層に接する一方の界面の方が他方の界面より高いことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  10. 電荷輸送性又は発光性の構造単位を有しかつ重合性架橋基を有する第1の高分子と、前記構造単位を有しかつ前記重合性架橋基を有しない第2の高分子と、溶媒とを含み、前記溶媒に対する溶解性は、前記第1の高分子の方が前記第2の高分子よりも低く、前記第1の高分子と前記第2の高分子との構成比率は、1:1〜1:10である重合性塗布液を製造する方法であって、前記構造単位を含むモノマと、前記重合性架橋基を含むモノマとを混合し、これらを重合することを特徴とする重合性塗布液の製造方法。
  11. 陽極、正孔輸送層、発光層及び陰極をこの順に積層した構造を有する有機エレクトロルミネッセンス素子を製造する方法であって、電荷輸送性又は発光性の構造単位を有しかつ重合性架橋基を有する第1の高分子と、前記構造単位を有しかつ前記重合性架橋基を有しない第2の高分子と、溶媒とを含み、前記溶媒に対する溶解性は、前記第1の高分子の方が前記第2の高分子よりも低く、前記第1の高分子と前記第2の高分子との構成比率は、1:1〜1:10である重合性塗布液を、前記陽極又は前記陰極の表面に塗布し、硬化処理を施すことにより前記正孔輸送層又は前記発光層を形成することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
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