JP6012485B2 - 燃料電池システム - Google Patents

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Description

本発明は、燃料電池システムに関する。
燃料電池は、低公害で発電効率が高いため、近年、各種分野での利用が期待されている。燃料電池を用いた燃料電池システムとしては、燃料電池単体の運転システムや、燃料電池とガスタービンとを連携したコンバインド発電システムが知られている。
また、燃料電池は、燃料ガスと空気等の酸化性ガスとから発電を行うカートリッジが圧力容器内に収容された構成である。カートリッジは、燃料電池セル集合体であるセルスタックの束で構成されている。
ところで、燃料電池システムでは、電力負荷系統との電気的接続が断たれるなどして燃料電池モジュールでの発電が停止した場合、セルスタックの燃料極が損傷することを防止する観点から、セルスタックの燃料極側に還元性ガスに供給している。即ち、停止時において、セルスタックの燃料極側に還元性ガスが供給されることによって、セルスタックが保護される。
そこで、特許文献2では、気化器、改質器、及びこれらを加熱するためのバーナを設け、停止時においても改質器により生成される水素をセルスタックの燃料極側に供給してセルスタックを保護する技術が開示されている。
特開2010−80192号公報
ところで、上記従来のシステムにおいては、水素を発生させるために、改質器、気化器、及び加熱バーナが設けられた構成であり、内部改質を利用する燃料電池システムであり発電システムに改質器を有していない場合は従来のシステムを適用することができない。また、内部改質を利用する燃料電池システムにおいて、改質器等の水素供給設備を附帯させることもできるが、設備コスト、及び商品性の面で好ましくない。
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、燃料電池の停止動作において、セルスタックの保護を確実にできると共に、内部改質を利用する燃料電池システムにおいて、設備コストを抑えられる燃料電池システムを提供することにある。
上記の目的を達成するために、この発明は以下の手段を提供している。
即ち、本発明の燃料電池システムは、酸素を含む酸化剤ガスと水素との反応で発電するセルを有し、炭化水素と水蒸気とから水素を生成する改質能を有する触媒を含む長尺状の複数のセルスタックと、前記セルスタックにおける発電の停止時に、前記セルスタックに水蒸気を供給する水蒸気供給手段と、前記セルスタックが発生する熱で水を加熱し、水蒸気を発生させる気化器と、を備え、前記気化器は板状をなす気化器本体と、前記気化器本体の内部を蛇行するように形成され、前記水が導入される蛇行孔と、を有し、前記気化器は、前記気化器本体の主面が複数の前記セルスタックが束ねられることで構成されたカートリッジに沿い、かつ、前記カートリッジの近傍に配置されていることを特徴とする。
上記構成によれば、停止時において、セルスタックの有する顕熱で水を加熱し、セルスタックに水蒸気を燃料極側に供給することで、セルスタックの触媒機能を利用した改質による水素の生成が可能となり、水蒸気から水素を生成する改質器や、水素ボンベなどの水素を保有するための設備が不用となり、設備コストの増大を抑えることができる。
また、セルスタックに供給される水蒸気は、セルスタックが発する熱で水を加熱することによって発生させるため、停電時においても水蒸気を発生させることが可能となる。
上記燃料電池システムにおいて、前記燃料電池システムは、前記セルスタックが収容される圧力容器を備え、前記水蒸気供給手段は、前記圧力容器の内部に設けられた前記気化器と、前記圧力容器の外部に設けられた水供給源と前記気化器とを接続する配管と、を有することが好ましい。
上記構成によれば、気化器が圧力容器の内部であって、セルスタックの周囲に配置されることによって、セルスタックが発する熱が気化器により伝わり、水蒸気の発生効率を向上させることができる。
上記燃料電池システムにおいて、前記水蒸気供給手段は、前記配管に設けられ、停止時に開状態となる弁を有することが好ましい。
上記燃料電池システムにおいて、内部に気体が圧縮状態で封入され、前記水供給源から供給される水を加圧する蓄圧器を備えていることが好ましい。
本発明によれば、内部改質を利用する発電システムのトリップ時を含む停止動作において、セルスタックの燃料極側に水蒸気を供給し、燃料極の触媒作用によって、燃料ガスと水蒸気から水素が生成されることで燃料極側の還元雰囲気を確保することができるため、改質器や水素ボンベなどの水素供給設備を保有するための設備が不用となり、発電室の熱を利用して設備コストを抑える燃料電池システムを提供することができる。
本発明の実施形態に係る燃料電池システムを含むコンバインド発電システムの系統図である。 本発明の実施形態に係る気化器の構成を説明する斜視図である。 本発明の実施形態に係る燃料電池モジュールの概略構成を示す模式図である。 本発明の実施形態に係るセルスタックの要部断面図である。 本発明の実施形態に係るカートリッジの断面図である。 本発明の実施形態に係るカートリッジの斜視図である。 本発明の実施形態に係る燃料電池システムのトリップ発生後の発電室温度を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態のコンバインド発電システム1は燃料電池モジュール2を含む燃料電池システム7と、ガスタービン3とを組み合わせた発電システムである。
ガスタービン3は、外気を吸入して圧縮する空気圧縮機4と、空気圧縮機4の下流側に設けられた燃焼器5と、燃焼器5の下流側に設けられたタービン6とを主な構成要素として有している。さらに、ガスタービン3には、発電機8が接続されている。
燃焼器5は、空気に燃料ガスを噴射して、高温燃焼ガスを生成する。本実施形態の燃焼器5には、後述する排酸化剤ガス配管340から供給される排酸化剤ガスO2と、排燃料配管320から供給される排燃料ガスF2と、第二燃料供給源21から供給される燃料ガスが供給される。
タービン6は、燃焼器5により生成された高温燃焼ガスの供給を受けて回転駆動力を発生させ、圧縮機4を回転駆動させるとともに、発電機8を駆動する。タービン6には、タービン6を回転駆動した後の高温燃焼ガス、即ち、排ガスが導入されるガスタービン排ガスダクト9が設けられている。ガスタービン排ガスダクト9は、排ガスを外部に導く配管である。
燃料電池システム7は、燃料電池モジュール2と、燃料電池モジュール2が停止した際に燃料電池モジュール2の燃料配管310に水蒸気を供給する水蒸気供給装置30とを有している。ここで、停止とはセルスタック101での電気化学反応を停止し、燃料電池モジュールによる発電を停止させることを意味している。
燃料電池モジュール2は圧力容器10と圧力容器10の内部に収納された複数のカートリッジ201とを有している。カートリッジ201は、セルスタック101が複数束ねられることで構成されており、燃料ガスF1及び酸化剤ガスO1の供給を受けて発電を行うものである。セルスタック101の詳細については後述する。
カートリッジ201には、ガスタービン3から酸化剤ガスO1を供給する酸化剤ガス配管330と、燃料供給源20から燃料ガスF1を供給する燃料配管310が接続されている。燃料配管310には、燃料配管310を介してカートリッジ201に供給される燃料ガスF1の流量を調整する流量調整弁22が設けられている。
なお、本実施形態のコンバインド発電システム1においては、燃料供給源20はカートリッジ201のみに燃料ガスを供給する構成となっているが、燃料供給源20からカートリッジ201に加えて、燃焼器5に燃料ガスを供給する構成としてもよい。即ち、前述した第二燃料供給源21を廃して、燃料供給源20と燃焼器5とを接続する構成としてもよい。
燃料ガスF1としては、例えば、水素、一酸化炭素、メタン等の炭化水素系ガス、石炭等の炭素質原料のガス化により得られたガス、又は、これらの2以上の成分を含むガス等が利用される。また、酸化剤ガスO1としては、例えば、酸素を15〜30vol%含むガス等が利用される。代表的な酸化剤ガスO1としては、空気であるが、排燃焼ガスと空気との混合ガスや、酸素と空気との混合ガスを利用してもよい。
さらに、コンバインド発電システム1には、カートリッジ201における発電に用いられた後の排酸化剤ガスO2を、ガスタービン3の燃焼器5に供給する排酸化剤ガス配管340と、カートリッジ201から排出される燃料ガス(排燃料ガスF2)を燃焼器5に供給する排燃料配管320とが設けられている。排燃料ガスF2とは、燃料電池モジュール2において発電に用いられた後の燃料ガスである。
酸化剤ガス配管330は、ガスタービン3の空気圧縮機4において圧縮された酸化剤ガスをカートリッジ201に導く配管である。
排燃料配管320には、排燃料ガスF2の一部を燃料配管310に再循環させる燃料再循環配管325が接続されている。即ち、燃料再循環配管325の一方の端部は排燃料配管320に接続され、他方の端部は燃料配管310に接続されている。燃料再循環配管325には、燃料再循環配管325を流れる排燃料ガスF2を燃料配管310に送給する為の燃料再循環ブロア15が設けられている。
そして、本実施形態の燃料電池システム7を含むコンバインド発電システム1は、燃料電池モジュール2のセルスタック101に水蒸気を供給する水蒸気供給装置30(水蒸気供給手段)を備えている。
水蒸気供給装置30は、圧力容器10の内部に配置された気化器31と、圧力容器10の外部に配置された水供給源32と、気化器31と水供給源32とを接続する第一配管33と、気化器31と燃料配管310とを接続する第二配管34とを有している。水供給源32は蓄圧器38を有しており、蓄圧器38の圧力によって、水が第一配管33に供給される。蓄圧器38の内部には気体が圧縮状態で封入されており、水を加圧することができる。
また、第一配管33には弁39が設けられている。弁39はシステムの停止時に開状態となるように構成されている。即ち、システムの停止時に弁39が開状態となり、第一配管33に加圧された水が流入する。
気化器31は、圧力容器10の内部であって、セルスタック101を構成するカートリッジ201の近傍に配置されている。即ち、発電室の温度が700℃以上の高温型の燃料電池の停止時において、カートリッジ201の発する熱が気化器31に十分伝わるような位置に配置されている。
図2に示すように、気化器31は、例えば、SUSなどの金属によって形成された矩形の板部材である気化器本体35と、気化器本体35の内部を蛇行するように形成された蛇行孔36とから構成されている。蛇行孔36は、その両端が気化器本体35の端面で開口されており、蛇行孔36の一端に第一配管33が接続されているとともに、蛇行孔36の他端に第二配管34が接続されている。なお、気化器本体35の形状は、矩形に限ることはなく、配置箇所の形状により適宜変更することができる。
また、本実施形態のコンバインド発電システム1は、燃料配管310に窒素(N2)を供給する窒素発生源81を備えている。窒素発生源81は、配管を介して燃料配管310に接続されている。窒素発生源81は、例えば窒素ボンベを採用することができる。
また、酸化剤ガス配管330からは、酸化剤ガスO1を排酸化剤ガス配管340へ分岐する空気分岐配管18が設けられている。
次に、燃料電池モジュール2の詳細構造について説明する。
図3に示すように、燃料電池モジュール2は、容器中心軸Avを中心として容器中心軸方向Dvに延びる円筒形状の圧力容器10と、この圧力容器10内に配置されている複数のカートリッジ201を有している。
圧力容器10は、例えば、内部の圧力が0.1MPa〜約5MPa、内部の温度が大気温度〜約550℃で運用される。このため、この圧力容器10は、耐圧性を考慮して、円筒形状の胴部11と、胴部11の中心軸方向における両端部に形成されている半球状の鏡部12とを有している。この圧力容器10は、全体として円筒形状を成し、その容器中心軸Avが上下方向に延びるよう設置されている。また、この圧力容器10は、耐圧性と共に、酸化剤ガスO1中に含まれる酸素などの酸化剤に対する耐食性も要求されるため、例えば、SUS304などのステンレス系材で形成されている。
カートリッジ201は、複数のセルスタックの束で構成されている。図4に示すように、セル集合体であるセルスタック101は、円筒形状(又は管形状)の基体管103と、基体管103の外周面に形成されている複数の燃料電池セル105と、隣り合う燃料電池セル105の間に形成されているインターコネクタ107とを有する。燃料電池セル105は、燃料極112と固体電解質111と空気極113とが積層して形成されている。セルスタック101は、さらに、基体管103の外周面に形成されている複数の燃料電池セル105のうちで、基体管103の軸方向において最も端に形成されている燃料電池セル105の空気極113に、インターコネクタ107を介して電気的に接続されているリード膜115を有する。
本実施形態では、この円筒形状(又は管形状)のセルスタック101の内周側に燃料ガスF1が通り、外周側に酸化剤ガスO1が通る。
基体管103は、例えば、CaO安定化ZrO(CSZ)、Y安定化ZrO(YSZ)、MgAl等のいずれかで形成されている多孔質体である。この基体管103は、燃料電池セル105とインターコネクタ107とリード膜115とを支持する役目を担っている。さらに、この基体管103は、内周側に供給された燃料ガスF1を基体管103の細孔を介して基体管103の外周面に形成される燃料電池セル105に拡散させる役目も担っている。
燃料極112は、例えば、Ni/YSZ等、Niとジルコニア系電解質材料との複合材の酸化物で形成されている。この場合、燃料極112は、燃料極112の成分であるNiが燃料ガスF1に対して触媒として作用する。この触媒としての作用は、基体管103を介して供給された燃料ガスF1中に、例えば、メタン(CH)と水蒸気とが含まれている場合、これら相互を反応させ、水素(H)と一酸化炭素(CO)に改質する作用である。
空気極113は、例えば、LaSrMnO系酸化物、又はLaCoO系酸化物で形成されている。この空気極113は、固体電解質111との界面付近において、供給される酸化剤ガスO1中の酸素を解離させて酸素イオン(O2−)を生成する。
固体電解質111は、例えば、主としてYSZで形成されている。このYSZは、ガスを通しにくい気密性と、高温下での高い酸素イオン導電性とを有している。この固体電解質111は、空気極113で生成された酸素イオン(O2−)を燃料極112に移動させる。
前述の燃料極112では、固体電解質111との界面付近において、改質により得られた水素(H)及び一酸化炭素(CO)と、固体電解質111から供給された酸素イオン(O2−)とが反応し、水(HO)及び二酸化炭素(CO)が生成される。この燃料電池セル105では、この反応過程で酸素イオンから電子が放出されて、発電が行われる。
インターコネクタ107は、例えば、SrTiO系などのM1−xLxTiO(Mはアルカリ土類金属元素、Lはランタノイド元素)で表される導電性ペロブスカイト型酸化物で形成されている。このインターコネクタ107は、燃料ガスF1と酸化剤ガスO1とが混合しないように緻密な膜で、酸化雰囲気と還元雰囲気との両雰囲気下で安定した電気導電性を有する。このインターコネクタ107は、隣り合う燃料電池セル105において、一方の燃料電池セル105の空気極113と他方の燃料電池セル105の燃料極112とを電気的に接続する。つまり、このインターコネクタ107は、隣り合う燃料電池セル105同士を電気的に直列接続する。
リード膜115は、電子伝導性を有すること、及びセルスタック101を構成する他の材料との熱膨張係数が近いことが必要であることから、例えば、Ni/YSZ等のNiとジルコニア系電解質材料との複合材で形成されている。このリード膜115は、インターコネクタ107により電気的に直列接続されている複数の燃料電池セル105で発電された直流電力をセルスタック101の端部付近まで導出する役目を担っている。
カートリッジ201は、図5及び図6に示すように、複数のセルスタック101と、複数のセルスタック101の束の一方の端部を覆う第一カートリッジヘッダ220aと、複数のセルスタック101の束の他方の端部を覆う第二カートリッジヘッダ220bと、を有している。複数のセルスタック101は、互いに平行で且つその長手方向における互いの位置が揃って、全体として円柱形状を成している。また、第一カートリッジヘッダ220a及び第二カートリッジヘッダ220bは、円柱形状を成している複数のセルスタック101の束の外径よりわずかに大きな外径の円筒形状を成している。このため、カートリッジ201は、全体として、セルスタック101の長手方向に長い円柱形状を成している。
第一カートリッジヘッダ220a及び第二カートリッジヘッダ220bは、いずれも、複数のセルスタック101の束の端部が開口228から内部に入り込む円筒形状のケーシング229a,229bと、ケーシング229a,229bの開口228を塞ぐ断熱体227a,227bと、ケーシング229a,229bの内部空間をセルスタック101の長手方向で2つの空間に仕切る管板225a,225bと、を有している。管板225a,225b等は、インコネル(ニッケル基合金に対するスペシャルメタルズ社の登録商標)等の高温耐久性のある金属材料で形成されている。管板225a,225b及び断熱体227a,227bには、複数のセルスタック101の端部のそれぞれが挿通可能な貫通孔が形成されている。管板225a,225bは、その貫通孔に挿通されたセルスタック101の端部をシール部材又は接着剤237を介して支持する。このため、この管板225a,225bには貫通孔が形成されているものの、この管板225a,225bを基準にしてケーシング229a,229b内の一方の空間に対する他方の空間の気密性が確保されている。断熱体227a,227bの貫通孔の内径は、ここに挿通されるセルスタック101の外径よりも大きく形成されている。つまり、断熱体227a,227bの貫通孔の内周面と、この貫通孔に挿通されたセルスタック101の外周面との間には隙間235a,235bが存在する。
第一カートリッジヘッダ220aのケーシング229aと管板225aとで形成されている空間は、燃料ガスF1が供給される燃料ガス供給室217を形成している。このケーシング229aには、燃料配管310からの燃料ガスF1を燃料ガス供給室217に導くための燃料ガス供給孔231aが形成されている。この燃料ガス供給室217内には、複数のセルスタック101における基体管103の端部が位置し、ここで開放している。燃料配管310から燃料ガス供給室217に導かれた燃料ガスF1は、複数のセルスタック101の基体管103の内部に流れ込む。この際、燃料ガスF1は、燃料ガス供給室217により、複数のセルスタック101の各基体管103に対してほぼ均等流量に配分される。このため、複数のセルスタック101における各発電量の均一化を図ることができる。
第二カートリッジヘッダ220bのケーシング229bと管板225bとで形成されている空間は、セルスタック101の基体管103内を通過した燃料ガスF1が流れ込む燃料ガス排出室219を形成している。このケーシング229bには、燃料ガス排出室219に流れ込んだ排燃料ガスF2を排燃料配管320に導くための燃料ガス排出孔231bが形成されている。この燃料ガス排出室219内には、複数のセルスタック101における基体管103の端部が位置し、ここで開放している。複数のセルスタック101の各基体管103内を通過した燃料ガスF1は、前述したように、燃料ガス排出室219に流入した後、排燃料配管320を通って、圧力容器10外へ排出される。
第二カートリッジヘッダ220bのケーシング229bと断熱体227bと管板225bとで形成されている空間は、酸化剤ガス供給室216を形成している。このケーシング229bには、酸化剤ガス配管330からの酸化剤ガスO1を酸化剤ガス供給室216に導くための酸化剤ガス供給孔233bが形成されている。この酸化剤ガス供給室216内に導かれた酸化剤ガスO1は、断熱体227bの貫通孔の内周面と、この貫通孔に挿通されているセルスタック101の外周面との間の隙間235bから、第一カートリッジヘッダ220aと第二カートリッジヘッダ220bとの間の発電室215へと流出する。
第一カートリッジヘッダ220aと第二カートリッジヘッダ220bとの間の発電室215には、複数のセルスタック101の燃料電池セル105が配置されている。このため、この発電室215では、燃料ガスF1と酸化剤ガスO1とが電気化学的反応して、発電が行われる。なお、この発電室215で、セルスタック101の長手方向における中央部付近の温度は、燃料電池モジュール2の定常運転時に、およそ700℃〜1100℃の高温雰囲気になる。また、この発電室215は、第一カートリッジヘッダ220aと第二カートリッジヘッダ220bとの間であって、外周側が後述の内側断熱材16で囲まれた空間である。
第一カートリッジヘッダ220aのケーシング229aと断熱体227aと管板225aとで形成されている空間は、発電室215を通った排酸化剤ガスO2が流入する空気排出室218を形成している。このケーシング229aには、空気排出室218に流れ込んだ排酸化剤ガスO2を排酸化剤ガス配管340に導くための空気排出孔233aが形成されている。発電室215中の酸化剤ガスO1は、断熱体227aの貫通孔の内周面と、この貫通孔に挿通されているセルスタック101の外周面との間の隙間235aから空気排出室218内に流入した後、排酸化剤ガス配管340を通って、圧力容器10外へ排酸化剤ガスO2として排出される。
発電室215の高温化に伴って、各カートリッジヘッダ220a,220bの管板225a,225bが高温化する。第一カートリッジヘッダ220a及び第二カートリッジヘッダ220bの断熱体227a,227bは、この管板225a,225bが高温化による強度低下や酸化剤ガスO1中に含まれている酸化剤による腐食を抑える。さらに、この断熱体227a,227bは、管板225a,225bの熱変形も抑える。
前述したように、発電室215中の酸化剤ガスO1と、この発電室215に配置されている複数のセルスタック101の内側を通る燃料ガスF1とは、セルスタック101における複数の燃料電池セル105で電気化学反応する。この結果、複数の燃料電池セル205で発電が行われる。
複数の燃料電池セル205での発電で得られた直流電流は、複数の燃料電池セル205相互間に設けられているインターコネクタ107を経て、セルスタック101の端部側へ流れ、このセルスタック101のリード膜115に流れ込む。そして、この直流電流は、リード膜115から、集電板(不図示)を介して、カートリッジ201の集電棒(不図示)に流れ、カートリッジ201外部へ取り出される。複数の集電棒は、互いに直列及び/又は並列接続されている。集電棒のうち、最も下流側の集電棒は、例えば、図示されていないインバータに接続されている。カートリッジ201外部に取り出された直流電流は、直列及び/又は並列接続されている複数の集電棒を経て、例えば、インバータに流れ、ここで交流電流に変換されて、電力負荷へと供給される。
セルスタック101の内周側を流れる燃料ガスF1とセルスタック101の外周側を流れる酸化剤ガスO1とは、このセルスタック101を介して熱交換する。この結果、燃料ガスF1は、酸化剤ガスO1により加熱され、酸化剤ガスO1は、逆に燃料ガスF1により冷却される。本実施形態では、これら燃料ガスF1と酸化剤ガスO1とがセルスタック101の内周側と外周側とを対向して流れる。このため、燃料ガスF1と酸化剤ガスO1との熱交換率が高まり、燃料ガスF1による酸化剤ガスO1の冷却効率、及び酸化剤ガスO1による燃料ガスF1の加熱効率が高まる。よって、本実施形態において、酸化剤ガスO1は、第一カートリッジヘッダ220aを形成する管板225a等が座屈変形等しない温度に冷却されてから、この第一カートリッジヘッダ220aの酸化剤ガス排出室218に流れ込む。また、本実施形態において、燃料ガスF1は、発電室215内のセルスタック101内で、ヒーター等を用いることなく発電に適した温度に予熱昇温される。
なお、本実施形態では、燃料ガスF1と酸化剤ガスO1とがセルスタック101の内周側と外周側とを対向して流れる、つまり燃料ガスF1と酸化剤ガスO1とが逆向きに流れるが、必ずしもこの必要はなく、例えば、燃料ガスF1と酸化剤ガスO1とがセルスタック101の内周側と外周側で同じ向きに流れてもよいし、酸化剤ガスO1が燃料ガスF1の流れに対して直交する方向に流れてもよい。
円柱形状の複数のカートリッジ201は、図3に示すように、いずれも、カートリッジ中心軸Acが圧力容器10の容器中心軸Avと平行になるよう、圧力容器10内に配置されている。つまり、本実施形態では、カートリッジ中心軸Acは、容器中心軸Avと同様、上下方向に延びている。
なお、カートリッジ201の構成は上記したものに限らず、カートリッジを圧力容器の中心軸と直交する方向に延びるように配置してもよい。また、カートリッジは円柱形状に限らず、角柱形状としてもよい。
次に、上記の構成からなるコンバインド発電システム1の動作について説明する。
コンバインド発電システム1が定常運転されている場合には、ガスタービン3の運転により、空気圧縮機4は空気供給部より酸化剤ガスO1を吸入して圧縮する。圧縮された酸化剤ガスO1は空気圧縮機4から酸化剤ガス配管330を介して燃料電池モジュール2のカートリッジ201に流入する。
一方、燃料供給源20より供給された燃料ガスF1は、燃料配管310を介して燃料電池モジュール2のカートリッジ201に供給される。カートリッジ201は、酸化剤ガスO1、及び燃料ガスF1を用いて発電を行う。発電に使用された排酸化剤ガスO2は、カートリッジ201から排酸化剤ガス配管340を介して燃焼器5に導入される。
一方、排燃料ガスF2は、排燃料配管320を介して燃焼器5に導入される。排燃料ガスF2の一部は、燃料再循環ブロア15が駆動していることによって、燃料再循環配管325を介して燃料配管310に流入する。
燃焼器5では、排燃料ガスF2が燃焼され、高温高圧の排気ガスが生成される。高温高圧の排気ガスは、燃焼器5からタービン6に導入され、タービン6を回転駆動させる。タービン6は、導入された高温燃焼ガスによって回転駆動力を発生させ、ロータの一端に設けられたタービン6の駆動力がロータの他端に設けられた圧縮機4を回転駆動させる。回転駆動力は発電機8にも伝達され、発電が行われる。
このように、コンバインド発電システム1では、燃料電池モジュール2とガスタービン3とで発電が行われる。
次に、電力負荷系統との電気的接続が断たれるなどして燃料電池モジュール2が停止した場合の動作について説明する。電力負荷系統との電気的接続が断たれると、運転を継続することができないので、コンバイン発電システム1を停止する動作に移行する。まず、図示しない開閉弁を閉じることで、燃料電池システム7とガスタービン3との連携を解除する。
それと同時に、燃料電池モジュール2からの電力の取り出しを停止することで、即ちセルスタック101での水素と酸素との電気化学反応を停止させる。この状態において燃料電池システム7のカートリッジ201の温度は発電温度であることから、700℃以上を保持している。また、燃料電池モジュールの停止前に燃料配管310を流れていた燃料ガスF1と再循環された排燃料ガスF2の混合ガス中には、セルスタック101における電気化学反応で生成される水蒸気を多量に含んでいる 。しかし、電気化学反応が停止することで、水蒸気が発生しなくなる。よって、燃料電池モジュール2が停止した後において、燃料極における改質反応を継続すると、燃料配管310の水蒸気(水分)量が少なくなり、炭化水素を含む燃料ガスF1がセルスタック101に供給されても水素が生成されないばかりか、炭素が析出する可能性がある。なお、水蒸気の供給量としては燃料配管310における水蒸気と炭素の比(S/C)がS/C>3であることが望ましい。
本実施形態の燃料電池システム7は、セルスタック101による発電が停止した場合、水蒸気供給装置30を作動させる。即ち、水蒸気供給装置30の水供給源32から第一配管33を介して気化器31に水が供給される。気化器31に供給された水は、圧力容器内部の顕熱を気化器31が回収することによって水蒸気となる。即ち、図7に示すように、停止時直後から徐々に低下するが、発電室の温度の熱を利用して、気化器31内の水を加熱し、水蒸気を発生させる。
また、コンバインド発電システム1が停止すると、窒素発生源81から燃料配管310に窒素が導入される。
気化器31で発生した水蒸気は、第二配管34を介して燃料配管310に流入し、窒素とともに、カートリッジ201のセルスタック101内に流入する。上述したように、セルスタック101の燃料極112は、燃料極112の成分であるNiが燃料ガスF1に対して触媒として作用する。よって、水蒸気は、燃料ガスF1中に含まれるメタン(炭化水素、CH)と反応し、水素(H)と一酸化炭素(CO)に改質する。
改質によって発生した水素は、窒素とともにセルスタック101内に流入し、セルスタック101内を還元性雰囲気に保持する。
上記実施形態によれば、トリップ発生時などのコンバインド発電システム1の停止時において、水蒸気供給装置30よりセルスタック101に水蒸気が供給され、セルスタック101の燃料極112の触媒によってこの水蒸気から水素が生成される。これにより、水素ボンベなどの水素を保有するための設備が不用となり、発電室の熱を利用して設備コストを抑える水蒸気の供給手段を提供することができる。
また、停止時においてセルスタック101に供給される水蒸気は、セルスタック101が発する熱で水を加熱することによって発生させるため、コンバインド発電システム1の停電時においても水蒸気を発生させることが可能となる。また、セルスタック101の熱を利用するのでセルスタック101の冷却にも寄与することができる。
さらに、気化器31が圧力容器10の内部であって、セルスタック101の周囲に配置されることによって、セルスタック101が発する熱が気化器31により伝わり、水蒸気の発生効率を向上させることができる。
なお、本発明の技術範囲は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態においては、燃料電池モジュール2を含む燃料電池システム7と、ガスタービン3とを有するコンバインドサイクル発電システム1を用いて、本発明の燃料電池システム7を説明したが、これに限ることはない。本発明の燃料電池システムは、単体の燃料電池モジュールを有する燃料電池システムや、マイクロガスタービン複合発電システムにも応用可能である。
1 コンバインド発電システム
2 燃料電池モジュール(燃料電池)
7 燃料電池システム
10 圧力容器
30 水蒸気供給装置(水蒸気供給手段)
31 気化器
32 水供給源
33 第一配管(配管)
101 セルスタック
112 燃料極(触媒)
F1 燃料ガス
F2 排燃料ガス
O1 酸化剤ガス
O2 排酸化剤ガス

Claims (4)

  1. 酸素を含む酸化剤ガスと水素との反応で発電するセルを有し、炭化水素と水蒸気とから水素を生成する改質能を有する触媒を含む長尺状の複数のセルスタックと、
    前記セルスタックにおける発電の停止時に、前記セルスタックに水蒸気を供給する水蒸気供給手段と、
    前記セルスタックが発生する熱で水を加熱し、水蒸気を発生させる気化器と、を備え
    前記気化器は板状をなす気化器本体と、前記気化器本体の内部を蛇行するように形成され、前記水が導入される蛇行孔と、を有し、
    前記気化器は、前記気化器本体の主面が複数の前記セルスタックが束ねられることで構成されたカートリッジに沿い、かつ、前記カートリッジの近傍に配置されていることを特徴とする燃料電池システム。
  2. 前記燃料電池システムは、前記セルスタックが収容される圧力容器を備え、
    前記水蒸気供給手段は、前記圧力容器の内部に設けられた前記気化器と、前記圧力容器の外部に設けられた水供給源と前記気化器とを接続する配管と、を有することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
  3. 前記水蒸気供給手段は、前記配管に設けられ、前記停止時に開状態となる弁を有することを特徴とする請求項2に記載の燃料電池システム。
  4. 前記配管に接続され、内部に気体が圧縮状態で封入されて、前記水供給源から供給される水を加圧する蓄圧器を備えていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の燃料電池システム。
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