JP6009323B2 - 静電荷像現像用トナー及び静電荷像現像用トナーの製造方法 - Google Patents

静電荷像現像用トナー及び静電荷像現像用トナーの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、静電荷像現像用トナー及び静電荷像現像用トナーの製造方法に関する。
電子写真方式による画像形成法は、高品質な画像や印字が高速で得られることから、各種プリンタ、複写機、ファクシミリ等において広く用いられている。この画像形成法では、帯電させた感光体の表面に対して所望の画像に応じた露光を行うことで静電荷像を形成させ、次いでその静電荷像に粉体の静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」とも呼ぶ。)を静電的に付着させることにより感光体の表面にトナーによる画像を形成させる。そして、このトナーによる画像が紙等の記録媒体に転写されることで、当該記録媒体上に所望の画像が形成される。
そして、記録媒体上に形成されたトナーによる画像は、定着ローラーによる加熱及び加圧を受ける定着過程を経て記録媒体上に固定される。近年、省エネルギーの観点から、この定着過程における加熱温度、すなわち定着温度の低温化が求められている。それに伴い、使用されるトナーについても、結着樹脂の低融点化が必要であり、同時に定着ロールからの離型性を確保するために含まれる離型剤(ワックス)の低融点化や添加量の増量が必要になる。このようなトナー用の離型剤として、例えば特許文献1には、示差走査型熱量計において所定の融解温度を有する平均炭素数30〜40の炭化水素型ワックスが提案されている。
上記のように、トナーは、静電的に感光体の表面に付着する必要があるので、感光体の表面に供給された際に帯電していなければならない。通常、トナーは、現像器の内部にあるトナー供給容器に収容され、トナー供給容器の出口に接する現像ローラーによって感光体へと搬送される。トナー供給容器の出口には現像ローラーへのトナーの供給量を規制するブレードが設けられ、トナーは、このブレードと現像ローラーとの間で摩擦を受けることにより帯電する。このブレードは、帯電ブレードとも呼ばれる。
ところで、適切な濃度を備えた良好な画像を紙等の記録媒体上に再現させるためには、十分な量のトナーがトナー供給容器から現像ローラーへ供給される必要がある。そのため、トナーには粉体としての良好な流動性が求められ、この流動性により、トナー供給容器の内部側から出口側に向かってトナーがスムースに移動でき、トナー供給容器の出口付近に常に十分な量のトナーを溜めておくことができる。トナーの流動性は、トナー粒子の形状に大きく左右され、一般にトナー粒子の円形度が高いほど向上する。
円形度の高いトナー粒子を製造するには、懸濁重合や乳化重合を利用する重合法が優れている。重合法では、着色剤、離型剤、荷電調整剤等を含む結着樹脂モノマーの液滴を分散媒体中に分散させておき、当該液滴をラジカル重合等で硬化させてトナー粒子を得る。このとき、当該液滴には表面張力により表面積を最小にしようとする作用が働き、結果として球に近い形状のトナー粒子を得ることができる。反面、着色剤や離型剤等の他のトナー材料を包含させた結着樹脂の粒子を、粒子径が均一になるように形成させるには、反応温度や分散媒体に付加するせん断力等の製造条件でより緻密な制御が要求され、作業としては煩雑になる。そのような理由から、例えば特許文献2には、従来の粉砕法を用いてトナーを粒子状になるまで粉砕した後、このトナー粒子を熱処理して円形度を高くする方法が提案されている。
熱処理によりトナー粒子の円形度を高める方法は、比較的簡便な製造過程である粉砕法によって得た不定形のトナー粒子を、表面張力で容易に変形することが可能な粘度になるまで、熱処理機で加熱(融解)するだけである。その後、トナー粒子は、表面張力の作用によって、自然に球形に近くなるように変形する。このような熱処理は、重合法のように緻密な製造条件の制御や煩雑な作業を行わずとも、円形度の高いトナー粒子を得ることができるという点で極めて有効である。
特開2001−051445号公報 特開2010−169895号公報
しかしながら、トナー粒子を、表面張力で容易に変形可能な粘度になるまで加熱すると、結着樹脂に内包されるようにして存在する離型剤も融解することになる。このとき、結着剤と離型剤との間に働く大きな界面張力により、離型剤をトナー粒子の内部から外側に移動させる作用が働く。したがって、上記のように、トナー粒子中に含まれる離型剤の低融点化や添加量の増量が進んでいる現状でトナー粒子の熱処理を行うと、内包されていた離型剤が、より多くトナー粒子の表面にしみ出す原因にもなる。このしみ出しはブリードとも呼ばれ、トナー粒子の表面にブリードした離型剤は、上記の現像ローラーや帯電ブレードに付着してトナーの帯電を妨げ、トナーの帯電不良による画像の濃度むら、カブリ、トナー消費量の増加等の要因となる。また、トナー粒子の表面にブリードした離型剤は感光体の表面にも付着する。感光体の表面に付着した離型剤は、当初は透明な付着物として観察されるが、やがて自身にトナー粒子が付着することで感光体の表面にトナー粒子による固着汚れを生じさせる核となり、印刷枚数の増大に伴って非画像部へのカブリ等の問題を生じさせる要因となる。
以上の通り、低い定着温度のトナーが求められている昨今、トナー粒子の円形度を高くするために熱処理が必要となる方法を用いてトナーの製造を行うにあたり、トナー粒子中に含まれる離型剤のブリードに伴う感光体や現像ローラー及び帯電ブレードの汚れを抑制できなければ、それに起因する非画像部へのカブリ、ハーフトーン画像の濃度ムラ、トナー消費量の異常な増加等の問題を避けることが困難である。つまり、せっかく簡便な製造方法である粉砕法を用いてトナー粒子を得ながらも、熱処理により円形度を高める際にトナー粒子の表面に離型剤がブリードしてしまう現状では、このブリードに伴う感光体や現像ローラー及び帯電ブレードの汚れを抑制する方法が見つからない限り、トナー粒子の高い流動性と良好な印刷品質とを両立することは難しいということである。なお、このような状況は、熱処理を必要とする製造法だけに当てはまるものではなく、離型剤の融点が重合時の反応温度よりずっと低い場合、さらには保存時の熱履歴や撹拌に伴うストレスによって離型剤のブリードを生じうる点において、重合法によって製造されたトナーにも当てはまるものである。
本発明は、以上の状況に鑑みてなされたものであり、高い流動性を備え、かつ、トナー粒子表面への離型剤のブリードに起因した、非画像部へのカブリ、ハーフトーン画像の濃度むら、トナー消費量の異常な増加等を抑制することのできる静電荷像現像用トナー及び静電荷像現像用トナーの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために、トナー粒子表面にブリードした離型剤による感光体や現像ローラー及び帯電ブレードへの汚れを抑制するのに必要な離型剤の性状に主眼を置いて鋭意検討を重ねた結果、低い融点であっても特定範囲の針入度を備えた硬い離型剤をトナーに用いることにより、ブリードした離型剤による感光体や現像ローラー及び帯電ブレードへの汚れが抑制され、トナー粒子の高い円形度と、離型剤のブリードに起因した各種問題の抑制とを両立できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、結着樹脂、着色剤、離型剤及び荷電調整剤を含有するトナー母粒子を含んでなり、上記離型剤が、73〜76℃の融点、及び45℃において3以下の針入度を備え、上記トナー母粒子の円形度が、低円形度からの個数頻度の10%積算値として0.910以上であって、低円形度からの個数頻度の50%積算値として0.975〜0.985であり、上記結着樹脂として第一ポリエステル及び第二ポリエステルを含み、上記第一ポリエステルのフローテスターで測定した1/2法における溶融温度が160〜170℃であり、上記第二ポリエステルのフローテスターで測定した1/2法における溶融温度が210〜230℃であり、さらに、上記第一ポリエステル及び上記第二ポリエステルの質量比(第一ポリエステル/第二ポリエステル)が1.0〜2.1である静電荷像現像用トナーである。
上記着色剤に対する上記第一ポリエステル及び上記第二ポリエステルの合計質量の比[(第一ポリエステルの質量+第二ポリエステルの質量)/着色剤の質量]が6.2〜8.9であり上記トナー母粒子の100質量部中に上記離型剤を3.7〜4.3質量部含むことが好ましい。
上記離型剤の45℃における針入度が2以下であることが好ましい。
上記離型剤の酸価が0mgKOH/gであることが好ましい。
また本発明は、結着樹脂、着色剤、離型剤及び荷電調整剤を含む原料混合物を混合及び混練して原料混練物を得る混合混練工程と、上記原料混練物を粉砕した後に分級して原料粉砕物を得る粉砕分級工程と、上記原料粉砕物を、低円形度からの個数頻度の10%積算値としての円形度が0.910以上であって、低円形度からの個数頻度の50%積算値としての円形度が0.975〜0.985である粒子となるように熱処理してトナー母粒子とする熱処理工程と、上記トナー母粒子に外添剤として無機酸化物粒子を添加し混合する後混合工程と、を含み、上記離型剤が、73〜76℃の融点、及び45℃において3以下の針入度を備え、上記結着樹脂として第一ポリエステル及び第二ポリエステルを含み、上記第一ポリエステルのフローテスターで測定した1/2法における溶融温度が160〜170℃であり、上記第二ポリエステルのフローテスターで測定した1/2法における溶融温度が210〜230℃であり、さらに、上記第一ポリエステル及び前記第二ポリエステルの質量比(第一ポリエステル/第二ポリエステル)が1.0〜2.1である、静電荷像現像用トナーの製造方法でもある。
上記粉砕分級工程と前記熱処理工程との間に、前記原料粉砕物に外添剤として無機酸化物粒子を添加し、これらを撹拌することにより当該無機酸化物粒子を上記原料粉砕物の表面に付着させる前混合工程を含むことが好ましい。
本発明によれば、高い流動性を備え、かつ、トナー粒子表面への離型剤のブリードに起因した、非画像部へのカブリ、ハーフトーン画像の濃度むら、トナー消費量の異常な増加等を抑制することのできる静電荷像現像用トナー及び静電荷像現像用トナーの製造方法が提供される。
図1は、トナー母粒子の円形度分布を説明するグラフである。 図2は、本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法の一実施態様におけるフロー図である。
以下、本発明の静電荷像現像用トナーの一実施形態及び静電荷像現像用トナーの製造方法の一実施態様について説明する。
<静電荷像現像用トナー>
本発明の静電荷像現像用トナー(上記のように、単に「トナー」とも呼ぶ。)は、電子写真方式における画像形成法に用いられ、キャリアとともに用いられる二成分トナーであってもよいし、キャリアを用いない一成分トナーであってもよい。しかしながら、本発明のトナーによれば、トナー粒子の表面にブリードした離型剤で感光体や帯電ブレード及び現像ローラーが汚染されることに起因した各種の問題を抑制することが可能なので、このような観点からは、本発明のトナーは一成分トナーとして好ましく用いられる。また、本発明のトナーは、磁性材料を含有する磁性トナーであってもよいし、磁性材料を含有しない非磁性トナーであってもよい。
本発明のトナーは、結着樹脂、着色剤、離型剤及び荷電調整剤を含有するトナー母粒子を含んでなり、さらに、無機酸化物粒子である外添剤を含むことが好ましい。トナー母粒子は、結着樹脂、着色剤、離型剤及び荷電調整剤を混合、混練、粉砕及び分級して得られた原料粉砕物が熱処理されたものである。粉砕された状態である原料粉砕物の粒子形状は不定形であるが、これを熱処理により、原料粉砕物が少なくとも表面張力の作用で変形可能な粘度(これは結着樹脂の溶融粘度に依存する。)になるまで加熱すると、当該粒子は、表面張力によりほぼ球状となり、さらにその形状を維持したまま冷却されて固化することでほぼ球状のトナー母粒子となる。したがって、このトナー母粒子を含むトナーは、粉体としての流動性に優れたものになる。
なお、本明細書では、上述のように、結着樹脂、着色剤、離型剤及び荷電調整剤等の材料を混練、粉砕及び分級して得られた原料粉砕物をさらに熱処理したものをトナー母粒子と呼び、必要に応じてトナー母粒子に外添剤等が添加及び混合されて現像剤として供される状態となったものをトナー(静電荷像現像用トナー)と呼ぶ。また、後述のように、原料粉砕物に外添剤を添加してから熱処理を行ってトナー母粒子を得てもよいが、この場合、熱処理前に添加された外添剤はトナー母粒子の表面に付着してトナー母粒子と一体化していると考えられる。この場合、トナー母粒子と一体化した外添剤も含めてトナー母粒子と呼ぶ。つまり、熱処理を受け、かつトナー母粒子の構成材料である結着樹脂、着色剤、離型剤及び荷電調整剤を含む一纏まりの粒子をトナー母粒子と呼ぶ。以下、本発明のトナーを構成する要素について説明する。
[結着樹脂]
結着樹脂は、バインダーとも呼ばれ、トナー母粒子に含まれる成分の一つである。結着樹脂は、トナー母粒子に含まれる着色剤を分散させるとともに、印字の際の定着過程において定着ローラーの熱により記録媒体の表面で一旦溶融してから固化して皮膜となり、記録媒体の表面に着色剤を定着させる。
本発明のトナーに用いられる結着樹脂としては、特に限定はなく、従来公知のものを挙げることができる。このような結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体等のスチレン系共重合体、ポリエステル、エポキシ樹脂等の樹脂材料を挙げることができる。これらの結着樹脂は、単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。これらの結着樹脂の中でも、着色されやすく、鮮明な色彩のトナーが得られるとの観点からは、ポリエステルを好ましく例示できる。
なお、ポリエステルは、2価以上の多価アルコールと多塩基酸とからなるモノマー組成物を重合させることにより得られる。
ポリエステルの重合に用いられる2価のアルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のジオール類、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA等のビスフェノールAアルキレンオキシド付加物等を挙げることができる。
3価以上の多価アルコールとしては、例えば、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、蔗糖、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセリン、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等を挙げることができる。
2価の多塩基酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マロン酸、これらの酸の無水物等を挙げることができる。
3価以上の多塩基酸としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、これらの酸の無水物等を挙げることができる。
結着樹脂としてポリエステルを用いる場合、第一ポリエステル及び第二ポリエステルの二種のポリエステルを用いることが好ましい。これらのうち、第一ポリエステルは、フローテスターで測定した1/2法における溶融温度が160〜170℃であることが好ましく、第二ポリエステルは、フローテスターで測定した1/2法における溶融温度が210〜230℃であることが好ましい。上記のような溶融温度を備えた二種類のポリエステルを結着樹脂として用いることにより、コールドオフセットやホットオフセットの発生を抑制することができるので好ましい。上記のような溶融温度を備えるので、第二ポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂よりも高粘度の樹脂となる。
なお、フローテスターで測定した1/2法における溶融温度は、CFT−500D(株式会社島津製作所製)の1/2法で測定された溶融温度であり、昇温法による流動曲線(ピストンストローク−温度)において、流出終了点の温度とピストンストロークが最低値となる温度との差の1/2を求め、求めた値とピストンストロークが最低値となる温度との和となる位置の温度である。その測定の際の条件は、以下の通りである。
シリンダ圧力:5.0kgf/cm
ダイ長さ:1.0mm
ダイ穴径:0.5mm
開始温度:60℃
昇温速度:20℃/min
また、後述する着色剤に対する、第一ポリエステル及び第二ポリエステルの合計質量の比[(第一ポリエステルの質量+第二ポリエステルの質量)/着色剤の質量]は、6.2〜8.9であることが好ましく、第一ポリエステル及び第二ポリエステルの質量比(第一ポリエステル/第二ポリエステル)は、1.0〜2.1であることが好ましい。これらの範囲であることにより、コールドオフセットやホットオフセットの発生の抑制や、良好な離型性や定着性を得るとの観点から好ましい。
トナー母粒子中の結着樹脂の添加量は、トナーに要求される性能等を考慮して適宜設定されればよいが、一例として、トナー母粒子100質量部中に65〜95質量部であることを挙げることができる。
[着色剤]
着色剤は、トナーに着色力を与えるものであり、トナー母粒子に含まれる成分の一つである。本発明のトナーに用いられる着色剤としては、特に限定はなく、従来公知のものを挙げることができる。
具体的には、黒色の着色剤として、カーボンブラック、黒色を呈する磁性粉等が例示され、シアン色の着色剤の材料として、銅フタロシアニン、メチレンブルー、ビクトリアブルー等が例示され、マゼンタ色の着色剤として、ローダミン染料、ジメチルキナクリドン、ジクロロキナクリドン、カーミンレッド等が例示され、黄色の着色剤として、ベンジジンイエロー、クロムイエロー、ナフトールイエロー、ジスアゾイエロー等が例示される。その他、所望とする色に応じた着色剤を適宜選択して用いることができる。
トナー母粒子中の着色剤の添加量は、トナーに要求される着色力等といった性能等を考慮して適宜設定されればよいが、一例として、トナー母粒子100質量部中に5〜15質量部とすることを挙げることができる。
[離型剤]
離型剤は、ワックスとも呼ばれ、トナー母粒子に含まれる成分の一つである。離型剤は、画像形成や印字の際の定着過程において定着ローラーと印面(紙等の記録媒体)との間の離型性を高めるために用いられる。
本発明のトナーに用いられる離型剤は、73〜76℃の融点をもち、45℃において3以下の針入度を備える。離型剤がこのような融点を備えることにより、定着温度が低温化している状況にあっても十分な離型性を確保することができ、また、離型剤がこのような針入度を備えることにより、原料粉砕物が熱処理されたり、トナーが熱履歴や撹拌によるストレスを受けたりして離型剤がブリードしたとしても、この離型剤による感光体や帯電ブレード及び現像ローラーへの汚れが抑制される。ここで、融点は、示差走査熱量計を用いた熱分析における融解温度に対応する。また、針入度は、45℃にて測定を行うこと以外はJIS K2235に規定された条件にて求めることができる。すなわち、針入度は、一定温度に保った試料に規定の針が垂直に進入した長さ(mm)の10倍で表される数値であるので、この数値が3以下という小さなものであるということは、硬度が高いことを意味する。
離型剤が上記の針入度を備えることにより、ブリードした離型剤による感光体や帯電ブレード及び現像ローラーへの汚れが抑制される理由は必ずしも明らかでない。しかしながら、低い融点であるにもかかわらず高い硬度(=低い針入度)を備えた離型剤というのは、結晶性が高く、ブリードした後もトナー母粒子の表面で硬い皮膜のような状態で存在していると考えられる。そのため、ブリードした離型剤が他の部材に接触したとしても、当該離型剤がその部材に擦られた際に転写されてしまうことが強く抑制されることになり、結果として、ブリードした離型剤による感光体や帯電ブレード及び現像ローラーへの汚れが抑制されることになる。これにより、本発明のトナーでは安定した帯電特性が得られたり、感光体の汚れに起因した各種問題が抑制されたりする結果につながっていると推察される。なお、針入度は、45℃において2以下であることが好ましい。
本発明のトナーに用いられる離型剤としては、上記の融点及び針入度を持つものであれば特に限定されず、従来公知のものを挙げることができる。このような離型剤としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリαオレフィン等のポリオレフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス等の炭化水素系ワックス、ペンタエリスリトールベヘン酸エステル、ベヘン酸ベヘニル、クエン酸ベヘニル、モンタン系エステルワックス等のエステルワックス、カルナバワックス、ライスワックス、サゾールワックス等を挙げることができる。これらの離型剤は、単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの離型剤の中でも、αオレフィンをメタロセン触媒で重合させたポリαオレフィンを好ましく挙げることができる。このような離型剤は、高度な立体規則性を備えるため結晶性が高く、低融点でありながら高い硬度を備えるので好ましい。
離型剤の酸価は、0mgKOH/gであることが好ましい。例えば、上記のように、αオレフィンをメタロセン触媒で重合させたポリマーでは、酸価は0mgKOH/gとなる。酸価が0mgKOH/gであることにより、高い離型性が得られるので好ましい。
トナー母粒子中の離型剤の添加量は、トナー母粒子100質量部に対して3.7〜4.3質量部であることが好ましい。上記のように低融点かつ高硬度の離型剤を用いる場合に離型剤の添加量をこの範囲とすることにより、画像形成や印字の際の定着過程において、定着ローラーと印面との間で良好な離型性が得られるとともに、トナー母粒子から離型剤がブリードするのを抑制できるので好ましい。
[荷電調整剤]
荷電調整剤は、トナーの帯電量を調節するために添加されるものであり、トナー母粒子に含まれる成分の一つである。本発明のトナーに用いられる荷電調整剤としては、特に限定はなく、従来公知のものを挙げることができる。
このような荷電調整剤としては、ニグロシン、塩基性染料、モノアゾ染料などの金属錯体、サリチル酸やジカルボン酸等といったカルボン酸とクロム、ジルコニウム、アルミニウム等といった金属との塩又は錯体、有機染料、ナフテン酸や高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩化合物、芳香族系重縮合物等の樹脂型帯電制御材等を挙げることができる。このような荷電調整剤は、単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
トナー母粒子中の荷電調整剤の添加量は、トナーに要求される性能等を考慮して適宜設定されればよいが、一例として、トナー母粒子100質量部中に0.5〜8質量部であることを好ましく挙げることができ、1.6〜3.0質量部であることをより好ましく挙げることができる。
[その他の助剤]
トナー母粒子には、相溶化剤等の助剤成分を添加することができる。このような相溶化剤としては、ステアリン酸亜鉛等の化合物を挙げることができる。
[円形度]
トナー母粒子は、低円形度からの個数頻度の10%積算値として0.910以上の円形度(C10)とされ、低円形度からの個数頻度50%積算値として0.975〜0.985の円形度(C50)とされることが必要である。トナー母粒子の円形度をこのような範囲とすることにより、粉体としてのトナーの流動性を十分なものとすることができ、トナーの追従不良に基づく印字不良の発生を抑制することができる。C10は、0.915以上であることが好ましく、0.920以上であることがより好ましい。
なお、C10やC50といった円形度は、下記式(1)によって算出される、真円形状との相関係数を表す指標となる値であり、円形度が1.00であるトナー母粒子は真球状である。例えば図1に示すようなトナー母粒子の円形度の分布において、低円形度からの個数頻度の積算値が10%のときの円形度がC10であり、低円形度からの個数頻度の積算値が50%のときの円形度がC50となる。
円形度=(トナー母粒子投影像の円相当径から求めた円の周囲長)
/(トナー母粒子投影像の周囲長) ・・・(1)
より具体的には、C10やC50といった円形度は、例えばフロー式粒子像分析装置(本実施形態ではシスメックス株式会社製のFPIA−3000を用いた。)を用いて個数頻度の積算値がそれぞれ10%や50%のときの値として算出することができる。
[外添剤]
外添剤は、トナー母粒子に対して添加されることでトナー母粒子とともにトナーを構成する粒子成分であり、無機酸化物粒子である。外添剤は、トナー母粒子の表面に付着してトナー母粒子の帯電特性を向上させたり、トナー母粒子と分離した状態で存在してトナーの流動性を向上させたりする役割をもつ。
無機酸化物粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化セリウム、酸化アンチモン、酸化タングステン、酸化スズ、酸化テルル、酸化マンガン、酸化ホウ素等が挙げられる。これらの中でも、シリカを好ましく挙げることができる。無機酸化物粒子は、単独で、又は二以上を組み合わせて用いることができる。
無機酸化物粒子は、その表面が疎水化処理されていることが好ましい。疎水化処理の方法としては、従来公知の疎水化処理剤を疎水化処理前の無機酸化物粒子の表面に接触させて、疎水性のある官能基や成分を無機酸化物粒子の表面に化学結合させたり付着させたりする方法が挙げられる。無機酸化物粒子を疎水化処理するための疎水化処理剤としては、特に限定はなく、従来公知のものを挙げることができる。このような疎水化処理剤として、オクチルトリエトキシシラン、ポリジメチルシロキサン、ジメチルジクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン等を好ましく例示することができる。これらの疎水化処理剤は、単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。なお、市販の疎水化無機酸化物粒子を無機酸化物粒子として用いてもよい。
<静電荷像現像用トナーの製造方法>
次に、本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法の一実施態様について説明する。図2は、本実施態様の製造方法におけるフロー図である。本実施態様の製造方法は、混合混練工程S1と、粉砕分級工程S2と、前混合工程S3と、熱処理工程S4と、後混合工程S5と、を備える。以下、各工程について説明する。なお、下記説明では、上述の静電荷像現像用トナーの説明と重複する部分についての説明を適宜省略する。
[混合混練工程S1]
混合混練工程は、結着樹脂、着色剤、離型剤及び荷電調整剤を含む原料混合物を混合及び混練して原料混練物を得る工程である。なお、この工程で用いられる結着樹脂、着色剤、離型剤及び荷電調整剤については、既に説明した通りである。
上記の結着樹脂、着色剤、離型剤及び荷電調整剤を含む原料混合物は、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、タービン型撹拌機等の混合機を用いて混合された後に、二軸押出機や三本ロールミル等の混練機により加熱下で溶融混練されて原料混練物となる。得られた原料混練物は、粉砕分級工程S2に付される。
本工程において、73〜76℃の融点をもち、45℃において3以下の針入度を備えた離型剤を用いることが本発明のポイントであることは、既に述べた通りである。そのような離型剤を用いることにより、後述する熱処理工程S4での熱処理において離型剤がトナー母粒子の表面にブリードしたとしても、この離型剤が感光体や帯電ブレード及び現像ローラーに付着するのを抑制できる。
[粉砕分級工程S2]
粉砕分級工程S2は、混合混練工程S1で得られた原料混練物を粉砕した後に分級して原料粉砕物を得る工程である。
原料混練物を粉砕する際に用いられる粉砕機としては、特に限定はなく、例えばジェットミル、ターボミル等を挙げることができる。これらの中でも、ロータを用いて粉砕するロータ式粉砕機を好ましく挙げることができる。粉砕後の原料粉砕物は、後述する熱処理工程S4における熱処理後のトナー母粒子が体積平均粒子径5〜13μm程度となるような大きさになるように分級されることが好ましい。
[前混合工程S3]
前混合工程S3は、粉砕分級工程S2で得られた原料粉砕物に外添剤として無機酸化物粒子を添加し、これらを撹拌することにより当該無機酸化物粒子を原料粉砕物の表面に付着させる工程である。なお、この工程で添加される無機酸化物粒子は、原料粉砕物の表面を被覆しているので、後述する熱処理工程S4における熱処理を経てもなおトナー母粒子と一体になってその表面を被覆していると考えられる。そこで既に述べたように、本発明では、トナー母粒子と一体となってその表面を被覆している無機酸化物粒子もトナー母粒子の一部として扱うものとする。この工程を経ることにより、原料粉砕物の表面における離型剤の露出部分が無機酸化物粒子で被覆され、離型剤のブリードを抑制することが可能になる。
この工程では、無機酸化物粒子と原料粉砕物とを高速混合装置を用いて撹拌混合して、原料粉砕物の表面に無機酸化物粒子を付着させる。高速混合装置としては、特に制限されないが、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等を挙げることができる。
この工程で用いられる無機酸化物粒子としては、外添剤として既に説明した通りの無機酸化物粒子を用いることが可能であるが、特に疎水化処理されたシリカ粒子を好ましく用いることができる。
この工程では、原料粉砕物100質量部に対して、無機酸化物粒子を1〜3質量部の割合で混合させることが、無機酸化物粒子により表面が十分に被覆された原料粉砕物を得ることができるとの観点から好ましい。
なお、上記の工程の後、後述する熱処理工程S4の前に、さらに無機酸化物粒子を原料粉砕物に添加する工程を備えてもよい。このときに添加された無機酸化物粒子は、原料粉砕物の粒子と粒子の間に存在し、後述する熱処理工程S4における熱処理の間に原料粉砕物同士が融着してしまうのを抑制する。このときに添加する無機酸化物粒子の量としては、原料粉砕物100質量部に対して0.2〜1質量部程度を挙げることができる。
[熱処理工程S4]
熱処理工程S4は、前混合工程S3を経た原料粉砕物を、低円形度からの個数頻度の10%積算値としての円形度(C10)が0.910以上であって、低円形度からの個数頻度の50%積算値としての円形度(C50)が0.975〜0.985である粒子となるように熱処理してトナー母粒子とする工程である。
この工程では、前混合工程S3を経た原料粉砕物を加熱する熱処理を行う。原料粉砕物は、粉砕により得られたものであるので不定形な粒子形状となるが、これを熱処理により原料粉砕物が少なくとも表面張力の作用で変形可能な粘度になるまで加熱すると、表面張力でほぼ球状となり、その後冷却されて固化する。したがって、この工程を経ると、不定形だった原料粉砕物がほぼ球状のトナー母粒子となる。この工程を経たトナー母粒子はほぼ球状に整った形状をしているので、これを含むトナーは粉体としての流動性に優れたものになる。
従来、このような熱処理を経ると、トナー母粒子に含まれる低融点の離型剤がトナー母粒子の表面にブリードし、このブリードした離型剤が感光体や帯電ブレード及び現像ローラーの汚れの原因となっていた。しかしながら、本発明では、73〜76℃という低融点でありながら、45℃において3以下の針入度を備えた離型剤を特に用いることにより、上記の熱処理を経た際に離型剤がトナー母粒子表面にブリードしたとしても、この離型剤が感光体や帯電ブレード及び現像ローラーに付着することを抑制できる。このことは既に述べた通りである。
原料粉砕物を熱処理するには、例えば、原料粉砕物を含んだ気流を熱風中に投入し、その後、その気流を冷却する方法を挙げることができる。このような処理を行うことのできる装置は公知であり、例えば特開2004−276016号公報に開示されている球形化処理装置を用いることができる。このような球形化処理装置の具体例としては、日本ニューマチック工業株式会社から表面改質機として市販されているメテオレインボー(商品名)等が挙げられる。この種の装置では、熱風噴射ノズルから噴射される熱風中に原料粉砕物が噴射され、原料粉砕物は熱風との接触により表面が溶融し球形化される。
熱処理工程S4では、低円形度からの個数頻度の10%積算値としての円形度(C10)が0.910以上であって、低円形度からの個数頻度の50%積算値としての円形度(C50)が0.975〜0.985である粒子となるように、原料粉砕物を熱処理する。このようにして得られたトナー母粒子を含むトナーは、粉体としての流動性が優れるとともに、ブリードした離型剤による汚れの発生が抑制されるので、現像ローラーの回転に対して良好に追従して画像濃度を安定させるとともにジッタの発生等を抑制できるだけでなく、感光体や帯電ブレード及び現像ローラーにおける汚れの発生を抑制するので、これらに起因する非画像部へのカブリ、ハーフトーン画像の濃度ムラ、トナー消費量の異常な増加等を抑制することができる。C10は、0.915以上であることが好ましく、0.920以上であることがより好ましい。なお、既に述べた通り、前混合工程S3にて添加された無機酸化物粒子が熱処理工程S4で得られるトナー母粒子と一体となっている場合には、上記C10及びC50は、その一体となった無機酸化物粒子を含んだ状態でのトナー母粒子の円形度となる。
熱処理の温度は、原料粉砕物の円形度(C10及びC50)を上記の範囲とすることができるように適宜設定される。このような熱処理の温度の一例として、200〜400℃程度が好ましく例示され、230〜350℃がより好ましく例示される。
[後混合工程S5]
後混合工程S5は、熱処理工程を経たトナー母粒子に外添剤として無機酸化物粒子を添加し混合する工程である。この工程を経ることにより、トナー母粒子は印刷に供されるトナーとなる。
この工程で用いられる無機酸化物粒子としては、外添剤として既に説明した通りのものが挙げられるが、中でもアルミナを好ましく挙げることができる。無機酸化物粒子の体積平均粒子径は、0.1〜3μmであることが好ましく、0.1〜1μmであることがより好ましく、0.1〜0.5μmであることがさらに好ましい。このような体積平均粒子径を備えた無機酸化物粒子を用いることにより、トナーの帯電量を大きくして、カブリ等の発生を抑制できるので好ましい。トナー母粒子に無機酸化物粒子を添加した後、高速混合装置を用いてこれらを撹拌して混合する。無機酸化物粒子の添加量は、トナー母粒子100質量部に対して0.05〜4質量部であることを例示できるが特に限定されない。
以上の各工程を経て得られたトナーは、粉体としての流動性が優れるとともに、ブリードした離型剤による汚れの発生が抑制されるので、現像ローラーの回転に対して良好に追従して画像濃度を安定させるとともにジッタの発生等を抑制できるだけでなく、感光体や帯電ブレード及び現像ローラーにおける汚れの発生を抑制するので、これに起因する非画像部へのカブリ、ハーフトーン画像の濃度ムラ、トナー消費量の異常な増加等を抑制することができる。
以下に実施例を挙げて本発明の静電荷像現像用トナーをさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の記載では、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味する。
[トナーの調製]
表1〜3の配合にて各原料をヘンシェルミキサーにより混合した後、二軸混練機を用いて混練した。得られた混練物を溶融し、ロートプレックスにて粗粉砕した後、ジェットミルで微粉砕し、風力分級機を用いて分級して体積平均粒子径が9μmの原料粉砕物を得た。得られた原料粉砕物100質量部に対して、外添剤としてシリカ粒子(商品名:HDK−H30TM、クラリアント社)1質量部を加え、ヘンシェルミキサーを用いて混合した。その後、混合物に対して、シリカ粒子(商品名:HDK−H30TM、クラリアント社)0.5質量部をさらに加え、ヘンシェルミキサーで混合した。これを熱風処理機(メテオレインボーMR10、日本ニューマチック工業株式会社製)を用いて熱処理することにより、表1〜3に示す円形度C10及びC50の円形度のトナー母粒子を得た。なお、表1〜3にて、熱処理欄に「無し」と記載されているものについては、この熱処理を行っていない。
得られたトナー母粒子100質量部に対して、外添剤としてシリカ粒子(商品名:アエロジルRY300、日本アエロジル株式会社)0.60質量部と、シリカ粒子(商品名:CAB−O−SIL TG−C190、キャボットジャパン株式会社)0.05質量部とを加えた後にヘンシェルミキサーで混合し、さらにアルミナ粒子(商品名:AKP−50、住友化学工業株式会社)0.6質量部を加えてヘンシェルミキサーで混合して、実施例1〜10、参考例1〜2及び比較例1〜10のトナーを得た。
なお、表1〜3における各原料の配合量は質量部であり、表1〜3に記載した各原料はそれぞれ下記の通りである。
カーボンブラック: 商品名MA285、三菱化学株式会社
ポリエステルA: 商品名HP325、日本合成化学株式会社、フローテスターで測定した1/2法における溶融温度;165℃
ポリエステルB: 商品名ET2900、エスケーケミカルズ社、フローテスターで測定した1/2法における溶融温度;221℃
ポリエステルC: 商品名ER−561、三菱レイヨン株式会社、フローテスターで測定した1/2法における溶融温度;152℃
ポリエステルD: 商品名FC−1478、三菱レイヨン株式会社、フローテスターで測定した1/2法における溶融温度;234℃
相溶化剤: 商品名SZ−2000(ステアリン酸亜鉛)、堺工業株式会社
離型剤A: 商品名エルクリスタX−W−7100、出光興産株式会社、融点76℃、45℃における針入度2
離型剤B: 商品名エルクリスタ7023、出光興産株式会社、融点73℃、45℃における針入度2
離型剤C: ポリオレフィン系ワックス、融点72℃、45℃における針入度3
離型剤D: 商品名エルクリスタ4100、融点42℃、45℃における針入度1
離型剤E: 商品名ユーメックス110TS、三洋化成工業株式会社、融点145℃、45℃における針入度<3
離型剤F: 商品名HNP−5、日本精蝋株式会社、融点66℃、45℃における針入度>4
離型剤G: 商品名ハイワックス07040H、三井化学株式会社、融点87℃、45℃における針入度<3
荷電調整剤: 商品名BONTRON E−108(サリチル酸アルミニウム)、オリヱント化学株式会社
また、表1〜3では、ポリエステルA(本発明における第一ポリエステルに相当する。)の質量部及びポリエステルB(本発明における第二ポリエステルに相当する。)の質量部の和と着色剤であるカーボンブラックの質量部との比[(ポリエステルA+ポリエステルB)/(カーボンブラック)]を「(A+B)/カーボン」欄に示し、ポリエステルAの質量部とポリエステルBの質量部との比(ポリエステルA/ポリエステルB)を「A/B」欄に示した。なお、比較例9及び10では、ポリエステルA及びBの他にポリエステルC及びDを用いているため、これらの欄には、ポリエステルCをポリエステルAと換算し、ポリエステルDをポリエステルBと換算して算出した値を記載した。
[感光体への固着評価]
評価用レーザープリンタ(キヤノン株式会社製、製品名LBP9500C)を用いて、温度25℃、湿度50%の環境で印字率5%チャートを13,000枚印刷し、1,000枚ごとに感光体へのトナーの固着状態を調べ、何千枚印刷したときに感光体へのトナーの固着が観察されるのかを調べた。結果を表1〜3の「感光体固着」欄に示す。なお、表1〜3の「感光体固着」欄では、千を「K」の文字で示しており、例えば7,000枚であれば「7K」と示した。なお、コールドオフセットが発生した場合には当該欄に「*1」と表示し、ホットオフセットが発生した場合には当該欄に「*2」と表示し、トナーの追従不良によって画像が得られなくなった場合には当該欄に「*3」と表示した。
[スリーブ汚染]
上記評価用レーザープリンタを用いて、温度25℃、湿度50%の環境で印字率5%チャートを13,000枚印刷し、1,000枚ごとにスリーブ(現像ローラー)へのトナーによる汚染状態を調べ、何千枚印刷したときにスリーブへのトナーによる汚染が観察されるのかを調べた。結果を表1〜3の「スリーブ汚染」欄に示す。なお、表1〜3の「スリーブ汚染」欄では、千を「K」の文字で示しており、例えば7,000枚であれば「7K」と示した。なお、コールドオフセットが発生した場合には当該欄に「*1」と表示し、ホットオフセットが発生した場合には当該欄に「*2」と表示し、トナーの追従不良によって画像が得られなくなった場合には当該欄に「*3」と表示した。
[離型性評価]
上記評価用レーザープリンタを用いて、離型性不足による定着器への巻き付きや、紙面に形成された画像における爪痕の発生の生じない、紙面へのトナーの限界盛り量(g/m)を調べた。その盛り量を表1〜3の「離型性評価」欄に示す。この評価における目標値は、9.5以上である。なお、コールドオフセットが発生した場合には当該欄に「*1」と表示し、ホットオフセットが発生した場合には当該欄に「*2」と表示し、トナーの追従不良によって画像が得られなくなった場合には当該欄に「*3」と表示した。
[定着性評価]
上記評価用レーザープリンタを用いて普通紙(秤量64g/m)にベタ画像を印刷し、学振型耐擦堅牢度試験機(大栄科学精機製作所株式会社製、新型NR−100)を用いて上記ベタ画像の印面に対して以下の条件にて摩擦試験を行った。そして、摩擦の前後の画像について反射濃度計(マクベス社製)を用いて画像濃度を測定し、以下の式により定着率を算出して定着性を評価した。その結果を表1〜3の「定着性評価」欄に示す。なお、当該欄では、算出された定着率が85%以上のものを「◎」と表示し、算出された定着率が75%以上85%未満のものを「○」と表示した。
摩擦面:不織物(ハニロン株式会社製、商品名 COTTON PADS)
荷重:500g
往復回数:5回
水平往復距離:10cm
定着率(%)=(摩擦後の画像濃度/摩擦前の画像濃度)×100
Figure 0006009323
Figure 0006009323
Figure 0006009323
表1〜3に示す通り、本発明のトナーによれば、感光体へのトナーの固着やスリーブ(現像ローラー)の汚染が抑制され、同時に良好な離型性及び定着性やトナーの良好な追随性も得られることがわかる。特にスリーブ(現像ローラー)の汚染に関しては、既に述べたように、トナーの帯電不良の要因となるので、これを抑制できることによりトナーの良好な帯電性を得ることが可能になる。また、実施例1〜6と、参考例1〜2及び実施例7〜10とを対比すると、第一ポリエステル及び第二ポリエステルの溶融温度の範囲や、これらの合計量と着色剤との比や、第一ポリエステル樹脂と第二ポリエステル樹脂との比が上述の範囲であることにより、より良好な結果となることがわかる。

Claims (6)

  1. 結着樹脂、着色剤、離型剤及び荷電調整剤を含有するトナー母粒子を含んでなり、
    前記離型剤が、73〜76℃の融点、及び45℃において3以下の針入度を備え、
    前記トナー母粒子の円形度が、低円形度からの個数頻度の10%積算値として0.910以上であって、低円形度からの個数頻度の50%積算値として0.975〜0.985であり、
    前記結着樹脂として第一ポリエステル及び第二ポリエステルを含み、前記第一ポリエステルのフローテスターで測定した1/2法における溶融温度が160〜170℃であり、前記第二ポリエステルのフローテスターで測定した1/2法における溶融温度が210〜230℃であり、さらに、前記第一ポリエステル及び前記第二ポリエステルの質量比(第一ポリエステル/第二ポリエステル)が1.0〜2.1である静電荷像現像用トナー。
  2. 前記着色剤に対する前記第一ポリエステル及び前記第二ポリエステルの合計質量の比[(第一ポリエステルの質量+第二ポリエステルの質量)/着色剤の質量]が6.2〜8.9であり前記トナー母粒子の100質量部中に前記離型剤を3.7〜4.3質量部含む請求項記載の静電荷像現像用トナー。
  3. 前記離型剤の45℃における針入度が2以下である請求項1又は2記載の静電荷像現像用トナー。
  4. 前記離型剤の酸価が0mgKOH/gである請求項1〜のいずれか1項記載の静電荷像現像用トナー。
  5. 結着樹脂、着色剤、離型剤及び荷電調整剤を含む原料混合物を混合及び混練して原料混練物を得る混合混練工程と、
    前記原料混練物を粉砕した後に分級して原料粉砕物を得る粉砕分級工程と、
    前記原料粉砕物を、低円形度からの個数頻度の10%積算値としての円形度が0.910以上であって、低円形度からの個数頻度の50%積算値としての円形度が0.975〜0.985である粒子となるように熱処理してトナー母粒子とする熱処理工程と、
    前記トナー母粒子に外添剤として無機酸化物粒子を添加し混合する後混合工程と、を含み、
    前記離型剤が、73〜76℃の融点、及び45℃において3以下の針入度を備え、前記結着樹脂として第一ポリエステル及び第二ポリエステルを含み、前記第一ポリエステルのフローテスターで測定した1/2法における溶融温度が160〜170℃であり、前記第二ポリエステルのフローテスターで測定した1/2法における溶融温度が210〜230℃であり、さらに、前記第一ポリエステル及び前記第二ポリエステルの質量比(第一ポリエステル/第二ポリエステル)が1.0〜2.1である、静電荷像現像用トナーの製造方法。
  6. 前記粉砕分級工程と前記熱処理工程との間に、前記原料粉砕物に外添剤として無機酸化物粒子を添加し、これらを撹拌することにより当該無機酸化物粒子を前記原料粉砕物の表面に付着させる前混合工程を含む、請求項記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
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