JP6008443B2 - 積層溶射被膜形成方法 - Google Patents

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Description

本発明は、電気アーク溶射によって異種金属からなる複数の溶射被膜を基材の表面に積層形成する積層溶射被膜形成方法に関するものである。
溶射とは、アーク(電気)、ガス、プラズマ等の熱源によって金属からなる溶射材料(被覆材料)を溶融し、溶融した溶射材料(以下、金属溶滴と称する)を圧縮空気によって微粒子化して基材(被施工物)に吹き付けることにより、金属溶滴が微粒子化された溶射粒子による被膜(以下、溶射被膜と称する)を基材の表面上に形成する被覆技術である。溶射は金属性の基材に対しての防錆処理や耐磨耗性処理、および耐熱処理等を目的として広く活用されている。
電気アーク溶射は、電気式溶射法の一種であり、一対のワイヤ状(線状や棒状)の金属を溶射材料とし、その一対のワイヤ(溶射材料)間にアーク放電を発生させることによってそれらを溶融した金属溶滴を圧縮空気で微粒子化し、溶射粒子を吹き付ける。電気アーク溶射では、一対のワイヤ状の溶射材料をそれぞれ異なる金属(異種金属)とすることにより、形成される被膜の組成を任意に設定できるため、合金よりも自由度が高い組成設定が可能である(例えば特許文献1)。
電気アーク溶射で供給されるエアは、通常溶射装置の1次側でエア圧0.7MPa以上、エア流量1.5m/min以上のエア供給源を選択する。従来の電気アーク溶射装置では、供給されたエアをアトマイジング用エアーノズル口において、エア圧0.5MPa、エア流量1.0m/min程度に減圧装置で調整して溶射している。特に、アーク点の後ろからエアを吹き付けるタイプの溶射装置は、エア圧0.5MPa、エア流量1.0m/min以上に高くすると、溶射粒子が拡散しすぎて、粉塵となってしまったり、溶融するためのアーク電圧を上げたりする必要があるので、それに伴いヒュームが多く発生することが知られている。
基材の上に被膜を形成するに際し、目的とする防錆処理や耐摩耗処理などの性能をさらに向上させるために、異種金属の積層被膜を形成したいという要請がある。電気アーク溶射において溶射被膜を積層させている例として、密着の弱い金属同士の接着剤の役割を果たすボンディングコートがある。ボンディングコートは、例えば、基材と溶射材料の熱膨張率の差が大きい場合に、熱膨張率の差を緩和し、溶射被膜の密着を強くするために基材上に設ける薄い被膜である。ボンディングコートの一般的な例として、基材上にアルミニウム、錫、モリブデン、ニッケル−アルミニウム系合金、ニッケル−クロム系合金等を用いて薄い溶射被膜を形成し、その後に用途に応じたステンレス、銅、丹銅、アルミニウム、亜鉛等で溶射被膜を形成することが知られている(特許文献2)。しかしながら電気アーク溶射によって形成した溶射被膜は積層すると密着強度が低く、剥離しやすいという問題があるため、ボンディングコートの膜厚は30μm以下に抑える必要があることが知られている。
特許第1628133号 特開2005−336556号公報 特許第3186480号 特開平03−207847号公報
溶射被膜を積層しようとした場合、次のような問題がある。第1に、溶射被膜を積層する場合、溶射材料によって積層する順番に制限が生じるという問題がある。一般に、融点が高い材料(以下、高融点材料と称する)は、溶射粒子としたときの粒子が大きく、融点が低い材料(以下、低融点材料と称する)は、溶射粒子としたときの粒子が小さい。このため、低融点材料からなる被膜を先に基材上に形成すると、その被膜表面の凹凸が細かくなり、その後に粒子が大きい高融点材料の被膜が密着しづらくなる。したがって、高融点材料および低融点材料からなる2つ以上の被膜を基材上に積層形成する場合には、高融点材料から順に被膜を形成する必要がある。
しかしながら、複数の被膜を基材上に積層形成する順序は要求される性能に基づいて決定されるため、低融点材料の被膜を先に形成したい場合もある。このような場合には、層間の密着強度を向上させるために、低融点材料の被膜の表面をブラストによって粗くしたり、低融点材料の被膜と高融点材料の被膜との密着させるボンディングコートを更に形成したりすることが考えられる。また、塗装により粗面化する方法(特許文献3)もあるが、塗料は熱に弱いため高融点の材料を溶射した場合剥離の可能性が残る。そしてこれらのいずれも、作業効率の低下やコストの増大を招いていた。
第2に、溶射被膜を積層する場合、膜厚が厚くなるほど密着強度が低下するため、厚膜(50μm以上)の被膜を形成することができないという問題がある。薄膜を形成する場合には、溶融された溶射粒子が基材に到達した瞬間に急激に冷却されるため、溶射粒子は収縮した状態で基材に強固に嵌合する。しかし、連続的に溶射し厚膜を形成しようとすると基材との間に大きな温度差を生じる。溶射を連続して厚膜化している間は被膜の温度は表面に近くなるほど高く溶射粒子が膨張しているが、溶射を停止すると急激に冷却されて溶射粒子が収縮する。溶射被膜は機械的な嵌合によって密着しているため、粒子が収縮すると嵌合がはずれてしまい、密着強度が弱まって剥離する。そして、膜厚が厚くなると熱収縮も大きくなるため、密着強度の低下が顕著になってしまう。この熱収縮の問題を解決する手段の一つとして、基材をバナー等で加熱して、基材と溶射粒子の温度を近づけることが考えられる(特許文献4)。しかし、厚板鋼板や大面積の基材は現場において加熱することが難しいため、適用できない場合も多い。
第3に、アトマイジング用エアーノズル口でエア圧を0.7MPa以上にすると溶射は非常に良好で、強度の高い厚板鋼板の基材と単層被膜間の密着力が高まることが知られているが、単にエア圧を上げただけでは、密着力の強い異種金属の積層被膜を形成することができないという問題がある。基材上に金属と比べ強度の低い数百μm厚の溶射被膜を形成し、さらに異種金属の粒子径の異なる溶射粒子を衝突させ積層しようとすると、下層となる溶射被膜表面の強度の低い凹凸が変形し緩やかに嵌合する。加えて、溶射粒子が付着後収縮するため、強固に溶射粒子を嵌合させることができない。強固に嵌合させるためには、衝突させる溶射粒子は付着後出来る限り収縮しない程度に低温になっていなければならない。
本発明は、このような課題に鑑み、高い密着強度を得ることができ、異種金属からなる溶射被膜を任意の順序且つ任意の厚みで積層し、更に作業効率の向上やコストの削減を図ることが可能な積層溶射被膜形成方法を提供することを目的としている。
上記課題を解決するために、本発明にかかる積層溶射被膜形成方法の代表的な構成は、電気アーク溶射によって異種金属からなる複数の溶射被膜を基材の表面に積層形成する積層溶射被膜形成方法であって、ワイヤ状の金属からなる溶射材料をアーク放電によって溶融することにより得られる金属溶滴を、アーク点が負圧になるようにアーク点の近傍に高圧・高流量エアを噴出することによって微粒子化して溶射粒子とし、高圧・高流量エアによって溶射粒子を基材の表面に吹き付けることにより溶射被膜を形成する高速アーク溶射工程を含み、高速アーク溶射工程を異なる溶射材料を用いて二回以上繰り返すことにより、異種金属からなる複数の溶射被膜を積層形成することを特徴とする。
上記構成の高速アーク溶射工程では、圧縮空気(高圧・高流量エア)は、アーク点の近傍に、かかるアーク点が負圧になるように噴出されるため、噴射する圧縮空気の圧力を高め、空気の流量をさらに増大させることができる。したがって、高融点材料であっても溶射粒子が微細化すると共に、ワークと同程度まで冷却された状態で、かつ高速でワークに衝突することになる。これにより、低融点材料の上に高融点材料を溶射した場合の溶射被膜の密着強度を向上させることが可能である。したがって、先にした溶射被膜にボンディングコートやブラスト処理を必要とすることなく異種金属からなる溶射材料を任意の順序で積層することができ、作業効率の向上やコストの削減を図ることが可能となる。
更に上記構成によれば、大流量の高圧エアで吹き付けられる際に溶射粒子が低温化されるため、溶射粒子と基材との温度差を少なくすることができる。したがって、基材との温度差による溶射粒子の熱収縮に起因する剥離を抑制することができ、加熱処理を必要とすることなく任意の厚みの厚膜を積層することができる。
上記高速アーク溶射工程では、ワイヤ状の金属からなる溶射材料を3〜15kg/hで溶射装置に供給し、溶射装置において、供給された溶射材料に15+3Vの低電圧を掛けつつ100〜200Aのアーク電流を流すことにより、溶射材料を溶融して金属溶滴とし、アーク点の外側に一対に配置された0.7MPa以上かつ1.3m/min以上の高圧・高流量エアで金属溶滴を微粒子化して溶射粒子とし、0.7MPa以上かつ1.3m/min以上の高圧・高流量エアで溶射粒子を基材の表面に吹き付けるとよい。かかる構成により、上述した効果を確実に得ることが可能である。
本発明によれば、高い密着強度を得ることができ、異種金属からなる溶射被膜を任意の順序で、任意の厚みで積層し、しかも作業効率の向上やコストの削減を図ることが可能な積層溶射被膜形成方法を提供することができる。
本実施形態にかかる積層溶射被膜形成方法に用いられる溶射装置であるアーク溶射ガン装置を示す図である。 図1の溶射ノズルユニットの詳細図である。 本実施形態にかかる積層溶射被膜形成方法の実施例および比較例を示す図である。 エア圧0.7MPaにおけるエア流量と密着力の関係を示すグラフである。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。また理解を容易にするために、本実施形態では、積層溶射被膜形成方法に用いられる溶射装置について説明しながら積層溶射被膜形成方法について詳述する。
図1は、本実施形態にかかる積層溶射被膜形成方法に用いられる溶射装置であるアーク溶射ガン装置100を示す図である。なお、説明の都合上、図1では、駆動部110の蓋(不図示)を開いた状態を示し、手前側のアークシールド130b(図2参照)の図示を省略している。
図1に示すアーク溶射ガン装置100は、ワイヤフィーダ(不図示)から供給される一対の金属ワイヤ104a・104bを溶射材料とし、この金属ワイヤ104a・104bをアーク放電によって溶融し、それによって得られた金属溶滴をコンプレッサ(不図示)から供給される高圧・高流量エア(圧縮空気)を用いて微粒子化し、溶射粒子として噴出する。
アーク溶射ガン装置100は、主に、モータ118等を内部に備える駆動部110と、金属ワイヤ104a・104bが微粒化された溶射粒子を吹き出す溶射ノズルユニット112とから構成され、これらはコード・チューブ類によって接続されている。駆動部110にはワイヤフィーダから延びた2本の連絡チューブ114a・114bが接続されていて、これらによって駆動部110に1対の金属ワイヤ104a・104bが供給される。
駆動部110は、モータ118およびローラ120を有する。モータ118は、回転軸が上方を向くように筐体116の下部に設置されている。ただし、これに限定するものではなく、モータ118は駆動部110の筐体116の上部に配置されてもよい。ローラ120はモータ118と同軸方向であって、金属ワイヤ104a・104bと交差するように筐体116の内部に設置されている。また図1では図示していないが、筐体116の開口面を封止する蓋の裏側にも、金属ワイヤ104a・104bをローラ120へ押さえつける押さえローラが設けられる。これらにより、蓋(不図示)を閉じた状態でモータ118を駆動させると、ローラ120が回転し、ローラ120および押さえローラによって挟まれた金属ワイヤ104a・104bが繰り出される。
駆動部110には、その筐体116の内部にガイド管132a・132bが設けられていて、このガイド管132a・132bに金属ワイヤ104a・104bが供給される。ガイド管132a・132bは、導電性を有する金属性の管材からなり、電極136a・136bを介してそれぞれ電源コード(不図示)が接続される。これにより、電極136a・136bおよびガイド管132a・132bを通じて金属ワイヤ104a・104bに電圧を印加可能となる。
溶射ノズルユニット112において、ガイド管132a・132bの先端にはリーダチップ138a・138bがそれぞれ設けられている。リーダチップ138a・138bは管材であって、金属ワイヤ104a・104b同士を接触させるよう前方の一点(アーク交点P1)に向けて斜めに設置される。これにより、金属ワイヤ104a・104bはアーク交点P1へと案内され、アーク交点P1にて金属ワイヤ104a・104b同士の間にアーク電流が流れる、すなわちアーク放電が発生する。このアーク放電時の熱量によって、金属ワイヤ104a・104bは溶融して金属溶滴となる。溶射ノズルユニット112では、アーク放電の発生点(アーク交点P1)付近の側部をアークシールド130a・130b(図2参照)によって覆うことにより安全対策が図られている。
また溶射ノズルユニット112には、コンプレッサ(不図示)からの高圧・高流量エア(圧縮空気)を導くエアホース(不図示)が接続されている。このエアホースを介して供給された高圧・高流量エアはアトマイジング用エアーノズルブロック142の内部を通過し、アトマイジング用エアーノズル口144a・144b(図2参照)から吹き出される。
図2は、図1の溶射ノズルユニット112の詳細図であり、図2(a)は図1のノズルユニット112の正面図であり、図2(b)は図2(a)のA−A断面図である。図2(a)に示すように、アトマイジング用エアーノズルブロック142の正面中央にはリーダチップ138a・138bを通す開口部146が形成されている。アトマイジング用エアーノズル口144a・144bは、この開口部146に沿った細長い形状で、リーダチップ138a・138bの両脇に設けられている。
図2(b)に示すように、アトマイジング用エアーノズル口144a・144bは、それぞれアーク交点P1よりも前方の一箇所(合流域E1)に向かって斜めに圧縮空気を吹き出す構成となっている。これにより、アーク交点P1からその前方の合流域E1へ向かって負圧が生じる。当該アーク溶射ガン装置100では、この負圧で金属溶滴(溶かした金属ワイヤ104a・104b)を圧縮空気層まで吸い込ませて合流域E1で微粒子化させて溶射粒子にし、その後に溶射粒子を圧縮空気に乗せて基材に吹き付けている。すなわち、アーク放電の発生点(アーク交点P1)には圧縮空気を直接に当てないため、アーク放電時の熱量のロスを抑えることが可能となっている。
ここで、アーク熱で金属溶滴状態にされ圧縮空気で微粒化された溶射粒子は、基材表面に到達する寸前まで溶滴状態を維持するのが理想的である。基材に到達した溶射粒子は機械的な噛み合いによって物理的に基材表面に凝固・堆積して溶射被膜を形成する。その際、当該アーク溶射ガン装置100では、金属溶滴は圧縮空気にさらされることで熱量が小さくなるため、基材に吹き付ける溶射粒子の温度を常温近くにまで下げることが可能である。これによれば、基材への熱影響をさらに抑えることができる。
次に、本実施形態にかかる積層溶射被膜形成方法について説明する。本実施形態の積層溶射被膜形成方法では、電気アーク溶射によって異種金属からなる複数の溶射被膜を基材の表面に積層形成する。詳細には、本実施形態の積層溶射被膜形成方法では、上述したアーク溶射ガン装置100を用いて、金属ワイヤ104a・104b(ワイヤ状の金属からなる溶射材料)をアーク放電によって溶融することにより得られる金属溶滴を、アーク点が負圧になるようにアーク点の近傍に高圧・高流量エアを噴出することによって微粒子化して溶射粒子とし、高圧・高流量エアによって溶射粒子を基材の表面に吹き付けることにより溶射被膜を形成する高速アーク溶射工程を行う。そして、かかる高速アーク溶射工程を、異なる溶射材料を用いて二回以上繰り返すことにより、異種金属からなる複数の溶射被膜を積層形成する。
上述したように、本実施形態では圧縮空気はアーク点の近傍に噴出されるため、アーク放電時の熱量のロスを抑えることができる。したがって、噴射する圧縮空気の圧力を高め、空気の流量を増大させることができ、高融点材料であっても溶射粒子が好適に微細化することが可能である。また圧縮空気の圧力を高め、空気の流量を増大させることにより、アーク溶射ガン装置100から噴出された溶射粒子は、高速でワークに衝突し、密着力が高くなるため、先に形成した溶射被膜に対するボンディングコートやブラスト処理を必要とすることなく異種金属からなる溶射材料を任意の順序で積層することができ、作業効率の向上やコストの削減を図ることができる。
更に、溶射粒子は、大流量の高圧エアで吹き付けられる際に低温化され、ワーク(基材)と同程度まで冷却された状態となるため、溶射粒子と基材との温度差が低減される。これにより、基材との温度差による溶射粒子の熱収縮に起因する剥離を抑制することができ、加熱処理を必要とすることなく任意の厚みの厚膜を積層することが可能となる。
また好ましくは、高速アーク溶射工程では、溶射材料(金属ワイヤ)をアーク溶射ガン装置100に供給する速度を3〜15kg/hとし、アーク溶射ガン装置100において溶射材料を溶融する際の電圧を15+3Vの低電圧とし、電流量を100〜200Aとし、高圧エアの噴射圧を0.7MPa以上かつ流量を1.3m/min以上とするとよい。これにより、上述した効果を更に高めることが可能である。
なお、溶射材料としては、アルミニウム、アルミニウム合金、亜鉛、銅、銅合金、ニッケル、クロム、ニッケル・クロム合金等を例示することができる。また被溶射対象となる基材としては、金属、木材、コンクリート、プラスチック、セラミック、石膏、FRP等を例示することができる。ただし、これらは例示にすぎず、上記の材料以外を除外するものではない。
以下、本実施形態の効果について図面を参照して説明する。図3は、本実施形態にかかる積層溶射被膜形成方法の実施例および比較例を示す図である。図4は、エア圧0.7MPaにおけるエア流量と密着力の関係を示すグラフである。
アトマイジング用エアーノズル口でエア圧を0.7MPa以上にすると溶射は非常に良好で、厚板鋼板の基材と被膜の密着力が高まることが知られているが、単にエア圧を上げただけでは、異種金属の積層被膜を安定して形成することが可能なほどの低温にならず、密着力の強い異種金属積層被膜を得ることができなかった。このことは、アトマイジング用エアーノズル口でエア圧を0.9MPa、吐出流量を1.0m/minにして鋼材に亜鉛溶射を行った場合の密着力と、エア圧を0.7MPa、吐出流量を1.3m/minにして同様の溶射を行った場合の密着力とを、JIS H 8300付属書Aの引張密着強度試験方法(A法)に準拠して測定し比較したとき、密着力はエア圧0.7MPa、吐出流量1.3m/minにして溶射を行った場合の方が大きかったことから理解できる。
そこで、エア流量に着目し密着力との関連性について高速アーク溶射で溶射被膜を形成して試験をした。具体的には、アトマイジンク用エアーノズル口でのエア圧を一定に固定してエア流量を変化させたときの異種金属積層被膜の密着力を測定した。溶射材料は、φ1.3亜鉛線 φ1.3アルミ線を使用して、溶射条件を溶射電圧16V、アーク電流150Aとし、溶射量は亜鉛の場合10kg/h、アルミニウムの場合3kg/hに設定した。アトマイジング用エアーノズル口からのエア圧が0.7MPaのときに、吐出流量が、1.0m/min、1.1m/min、1.2m/min、1.3m/min、1.4m/minとなるように5種類のアトマイジング用エアーノズルを製作した。そして、ブラスト処理を施した厚さ6.0mmの鋼材にアルミニウム被膜100μm(下層)+亜鉛被膜100μm(中層)+アルミニウム被膜100μm(上層)の積層溶射被膜を形成したものを1流量に対し5枚製作し、JIS H 8300付属書Aの引張密着強度試験方法(A法)に準拠して密着力を測定し、平均値を出した。
破断は、すべての試験片において上層(アルミニウム)と中層(亜鉛)間の界面破断であり、その密着力は、図4に示すようにエア流量が1.0m/minから1.3m/minに増加するに従って上昇することがわかった。特に、1.2m/minから1.3m/minにかけては急激に密着力が上昇し、1.3m/minから1.4m/minの間は密着力の上昇が緩やかになることがわかった。これにより、エア流量を変化させると密着力が大きく影響を受けることが判明した。
上述したように、エア流量を上げることにより、単位体積当たりの溶射粒子の密度が低くなり、一層低温化された被膜が形成され、温度差による溶射粒子の熱収縮に起因する剥離を抑制することができるため、密着力が向上する。格段に密着力が向上すれば、従来密着が困難であった異種金属間の積層被膜を形成することが可能となる。上記の結果をふまえて、高速アーク溶射においてアトマイジンク用エアーノズル口でエア圧を0.7MPaかつエア流量を1.3m/minとして、各種の異種金属積層被膜を形成して密着力を測定し、従来の溶射条件で形成した各種異種金属積層被膜の密着力と比較を行った。
図3に示すように、本実施形態では、溶射材料として、亜鉛、アルミニウム、銅、および銅合金のなかから、2種類以上の溶射材料を選択し、それぞれの溶射材料ごとに高速アーク溶射工程を行うことにより、異なる金属からなる複数の溶射被膜を積層形成した。実施例における高速アーク溶射工程の条件は、高速エアの噴射圧を0.7MPaとし、高速エアの流量を1.3m/minとした。比較例における従来のアーク溶射工程の条件は、圧縮エアの噴射圧を0.5MPaとし、圧縮エアの流量を1.0m/minとした。基材には、すべての実施例および比較例において厚さ6.0mmの鋼材を用い、かかる鋼材の表面にブラスト処理を施した。なお、密着力試験については、JIS H 8300付属書Aの引張密着強度試験方法(A法)に準拠して行った。
図3に示すように、比較例1〜7では、すべてにおいて、複数の溶射被膜間において密着力の測定に至る前に剥離が生じている。このことから、従来のアーク溶射であると、基材上に形成された複数の溶射被膜間の密着力が不十分であり、密着不良が生じていることが理解できる。
これに対し、実施例1〜7ではすべてにおいて、剥離ではなく界面破断または凝集破断が生じる。界面破断とは、基材とその上に形成された溶射被膜との界面、または複数の溶射被膜間の界面において破断している状態であり、凝集破断とは溶射被膜の層内において破断している状態である。実施例1〜7では、界面破断および凝集破断のいずれにおいても5.8MPa以上の密着力を有している。一般に、塗料や塗膜(溶射被膜も含む)に求められる密着力の基準はおおよそ2〜3MPaであることから、本実施形態の積層溶射被膜形成方法によれば、異種金属からなる積層溶射被膜において極めて高い密着力が得られることが理解できる。
以上の結果から、高速アーク溶射よって高品質の異種金属積層被膜を得るためのエア条件として、アトマイジング用エアーノズルからの高圧エアの噴射圧を0.7MPa以上かつ流量を1.3m/min以上とするとよいことがわかった。
[防汚性能]
基材としてコンクリートおよびFRP板を用い、それらの表面に塗料により粗面を形成した後に塗料により粗面を形成し、丹銅(膜厚100μm)を溶射し、その後に銅(膜厚50μm)を溶射して積層した。なお、これらの溶射はすべて本実施形態の高速アーク溶射工程によって行われた。そして、溶射被膜形成後のコンクリートおよびFRP板を海水に浸漬させ、1〜2日経過後に緑青が発生し防汚効果が発揮されていることを確認した後、海水への浸漬を1年間継続した。その結果、1年後であっても、銅溶射被膜は基材の表面に残存しており、海洋生物の付着は確認されなかった。
[防食性能]
コンクリートを基材とし、その表面に粗面形成材を塗布した後、陽極となる亜鉛を500μmの膜厚で溶射し、かかる亜鉛溶射被膜上に、電気取り出し端子となる銅(丹銅でも可)をボンディングコートなしで溶射した。なお、これらの溶射はすべて本実施形態の高速アーク溶射工程によって行われた。そして、銅溶射被膜上にハンダで撚り線を溶着し、犠牲防食電流を流して電気測定を行った。その結果、半年間の実曝試験後であっても、端子部分の腐食が生じることなく犠牲防食電流が安定して流れることが確認された。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
本発明は、電気アーク溶射によって異種金属からなる複数の溶射被膜を基材の表面に積層形成する積層溶射被膜形成方法として利用することができる。
100…アーク溶射ガン装置、104a…金属ワイヤ、104b…金属ワイヤ、110…駆動部、112…溶射ノズルユニット、114a…連絡チューブ、114b…連絡チューブ、116…筐体、118…モータ、120…ローラ、130a・130b…アークシールド、132a…ガイド管、132b…ガイド管、136a…電極、136b…電極、138a…リーダチップ、138b…リーダチップ、142…アトマイジング用エアーノズルブロック、144a…アトマイジング用エアーノズル口、144b…アトマイジング用エアーノズル口、146…開口部

Claims (2)

  1. 電気アーク溶射によって異種金属からなる複数の溶射被膜を基材の表面に積層形成する積層溶射被膜形成方法であって、
    ワイヤ状の金属からなる溶射材料をアーク放電によって溶融することにより得られる金属溶滴を、アーク点の両脇に設けられた細長い形状のアトマイジング用エアーノズル口から該アーク点の近傍に高圧・高流量エアを噴出することによって微粒子化して溶射粒子とし、該高圧・高流量エアによって該溶射粒子を前記基材の表面に吹き付けることにより前記溶射被膜を形成する高速アーク溶射工程を含み、
    前記高速アーク溶射工程を異なる溶射材料を用いて二回以上繰り返すことにより、前記異種金属からなる複数の溶射被膜を積層形成することを特徴とする積層溶射被膜形成方法。
  2. 前記高速アーク溶射工程では、
    前記ワイヤ状の金属からなる溶射材料を3〜15kg/hで溶射装置に供給し、
    前記溶射装置において、前記供給された溶射材料に15+3Vの低電圧を掛けつつ100〜200Aのアーク電流を流すことにより、該溶射材料を溶融して金属溶滴とし、
    アーク点の外側に一対に配置された0.7MPa以上かつ1.3m/min以上の平面状の高圧・高流量エアで前記金属溶滴を微粒子化して溶射粒子とし、
    前記0.7MPa以上かつ1.3m/min以上の高圧・高流量エアで前記溶射粒子を前記基材の表面に吹き付けることを特徴とする請求項1記載の積層溶射被膜形成方法。
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