JP2012025983A - 被膜形成方法及びその方法により形成される複合材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】基材X表面にコールドスプレー法により被膜を形成する被膜形成方法であって、基材表面を加熱する加熱工程と、加熱工程後又は同時に基材の表面に作動ガスと共に粗化処理用粒体を超音速で噴き付け、基材表面の粗化処理を行う前処理工程と、前処理工程後、基材表面にコールドスプレー法により200℃以上900℃以下の作動ガスと共に被膜形成用粒体を噴き付け、基材表面に被膜を形成する被膜形成工程とを有することを特徴とする。
【選択図】図1
Description
基材表面にコールドスプレー法により被膜を形成する被膜形成方法であって、
基材表面を加熱する加熱工程と、
加熱工程後又は同時に、基材の表面に作動ガスと共に粗化処理用粒体を超音速で噴き付け、基材表面の粗化処理を行う前処理工程と、
前処理工程後、基材表面にコールドスプレー法により200℃以上900℃以下の作動ガスと共に被膜形成用粒体を噴き付け、基材表面に被膜を形成する被膜形成工程と
を有することを特徴とする。
まず、本発明の第1実施形態に係る被膜形成方法について説明する。第1実施形態に係る被膜形成方法は、基材表面を加熱する加熱工程と、加熱工程と同時に基材表面の粗化処理を行う前処理工程と、基材表面に被膜を形成する被膜形成工程とからなる。第1実施形態においては、加熱工程と前処理工程とを同時に行うため、これを第1工程とし、被膜形成工程を第2工程として、以下の説明を行う。
第1工程は、基材を加熱する加熱工程と、基材の表面に作動ガスと共に粗化処理用粒体を超音速で噴き付け基材表面の粗化処理を行う前処理工程とを、同時に行う工程である。以下、具体的に説明する。
基材Xとして用いる材質は、特に限定されないが、金属、ガラス、セラミック等が挙げられ、ステンレス、鉄、銅、アルミニウム等の金属やアルミナ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ジルコニア等のセラミックが好ましく、その中でもアルミニウム、窒化アルミニウム、アルミナが、特に好ましい。また、基材Xとしてセラミックを用いる場合の板厚は、特に限定されないが、0.7mm以上が好ましく、0.9mm以上が特に好ましい。板厚の上限は用途に応じて決めることができる。
基材表面の粗化処理に使用する粒体Aの材質としては特に限定されないが、例えば、金属、ガラス、セラミック等が挙げられ、クロム等の硬質の金属、及びアルミナ、炭化ケイ素、ジルコニア等のセラミックが好ましく、その中でもアルミナが特に好ましい。
作動ガス温度は特に限定されないが、500℃以上900℃以下が好ましい。作動ガス温度が500℃未満であると、表面粗化処理が不充分となるおそれがある。また作動ガスを900℃を超える温度とすることは、基材Xの酸化や熱傷を発生するので、好ましくない。ただし、基材Xの材質や粒体Aの材質、平均粒径又は形状により、この範囲以外の温度でも好適に採用できる。
スプレーガンと基材との距離は特に限定されないが、より密着強度の高い被膜を形成する観点から7mm以上20mm以下が好ましく、10mm以上15mm以下が特に好ましい。
第1工程におけるスプレーガンの移動スピードは、特に限定されないが、充分な密着強度を有する被膜を形成するために、適切に基材表面の粗化処理を行う観点から、1mm/s以上100mm/s以下が好ましく、20mm/s以上40mm/s以下が好ましい。
第2工程は、第1工程後、基材表面にコールドスプレー法により作動ガスと共に被膜形成用粒体Bを噴き付け、基材表面に被膜を形成する被膜形成工程である。以下具体的に説明する。
具体的には、第1工程前に、第2粒体フィーダー4に粒体Bを充填しておく。こうすることにより、第1工程の後、連続して第2工程を行うことができるため、第1工程により基材Xが適温となった状態で第2工程を行うことができ、第2工程で基材Xの予熱を必要とする場合に、効率よく基材Xの予熱を行うことができる。
被膜形成用粒体Bの材質としては、特に限定されないが、例えば、各種金属及び各種セラミックが挙げられ、金属としては、銅、アルミニウム、チタン、金、銀、ニッケル、亜鉛、鉄、タンタル、ニオブ等の純金属;ニッケルクロム合金、ニッケル基超合金、ステンレス鋼、亜鉛合金、アルミニウム合金、銅合金等の合金が挙げられる。セラミック基材と導電性材料との複合材を形成する場合には、銅、アルミニウム、金、銀、ニッケル、亜鉛又はこれらの二種類以上の合金が好ましく、銅、銀、アルミニウム及びこれらの合金が特に好ましい。
また、セラミック粒体としては凝集粒体が好ましく、凝集酸化チタンが特に好ましい。
作動ガス温度は、200℃以上900℃以下であることが重要である。作動ガス温度をこの範囲の温度とすることで、良好な密着強度を有する被膜を形成できるという本発明の効果が得られる。基材がセラミックで、粒体Bが金属である場合は400℃以上900℃以下が好ましく、粒体Bが銅の場合は450℃以上550℃以下が特に好ましい。作動ガスの温度が、450℃未満だと、銅被膜の場合は密着強度が低下するおそれがある。作動ガス温度が550℃を超えると銅被膜が酸化を起こすおそれがある。特に作動ガス温度が600℃を超えると銅被膜が酸化して着色するため600℃以下が好ましい。ただし、基材の材質や、粒体Bの材質、平均粒径又は形状によりこの範囲以外の温度でも好適に採用することができる。
第2工程におけるスプレーガンと基材との距離は、特に限定されないが、上記第1工程における距離を好適に用いることができる。
第2工程におけるスプレーガンの移動スピードは、特に限定されないが、充分な密着強度を有する被膜を形成する観点から、1mm/s以上120mm/s以下が好ましく、40mm/s以上80mm/s以下が、特に好ましい。
第2工程で形成する被膜の厚さの下限は、特に限定されないが、空隙率を下げる観点からは5μm以上が好ましく、10μm以上が特に好ましい。
第1実施形態により形成される複合材は、良好な密着強度を有するため、工業製品の材料として好適に用いられる。第1実施形態により形成される複合材は、特に限定されないが、セラミック基材に銅、銀、金又はアルミニウムの被膜を形成したものや、アルミニウム、鉄、ステンレス又は銅の基材に酸化チタンや銅、銀、金、アルミニウム、チタン、タンタル、ニオブ、インコネル、ニッケル系合金又はコバルト系合金の被膜を形成したものが挙げられる。
次に、本発明の第2実施形態に係る被膜形成方法について説明する。第2実施形態に係る被膜形成方法は、基材表面を加熱する加熱工程と、加熱工程と同時に、基材表面に粗化処理用粒体と共に金属粒体(以下「粒体C」ともいう。)を噴き付け、この基材表面に粗化処理を施すと共に、図2に示すようなボンド層を形成する前処理工程と、このボンド層表面に被膜を形成する被膜形成工程とを有する。具体的には、第2実施形態においては、加熱工程と前処理工程を同時に行うため、これを第1工程とし、被膜形成工程を第2工程として以下説明を行う。
第2実施形態における第1工程は、基材を加熱する加熱工程と、基材の表面に作動ガスと共に粒体A及び粒体Cを超音速で噴き付けて基材表面にボンド層を形成する前処理工程とを同時に行う工程である。以下具体的に説明する。
第2実施形態で用いる基材Xは、第1実施形態で例示した基材Xを好適に用いることができる。
第1工程のボンド層を形成する粒体Aの材質としては、特に限定されないが、第1実施形態における粒体Aを好適に用いることができる。金属ではクロムが好ましく、セラミックでは、アルミナ、炭化ケイ素、ジルコニア等が好ましく、充分な表面粗化処理を行う観点及び入手の容易さや経済性の観点からアルミナが特に好ましい。
第1工程に用いる金属粒体Cの材質としては特に限定されないが、銅、アルミニウム、銀、ニッケル又はボンド層の表面に形成される被膜に用いる金属粒子と同じ金属が好ましい。
第1工程における作動ガス温度は特に限定されないが、基材Xがセラミックである場合は、400℃以上550℃以下が好ましい。400℃未満だと、セラミックとの間に充分な密着強度を有するボンド層を形成することが困難となるおそれがある。また作動ガス温度が550℃を超えると、ボンド層を形成する金属の酸化が顕著になる場合がある。粒体Cが銅の場合、作動ガス温度が600℃以上になるとボンド層被膜が酸化してコーヒー色になる。ただし、基材Xの材質や粒体Cの材質、平均粒径又は形状により、この範囲以外の温度を好適に採用することができる。
スプレーガン2と基材Xとの距離は、特に限定されず、第1実施形態の第1工程におけるスプレーガンと基材との距離を、好適に用いることができる。
第1工程におけるスプレーガンの移動スピードは、特に限定されないが、充分な密着強度を有する被膜を形成するために適切なボンド層を形成する観点から、5mm/s以上100mm/s以下が好ましく、20mm/s以上50mm/s以下が特に好ましい。
第1工程でボンド層を形成した基材Xに被膜を形成する第2工程においては、作動ガス温度は200℃以上900℃以下である。それ以外の条件としては、第1実施形態の第2工程における各種条件を好適に採用することができる。
第2工程で使用する粒体Bの材質としては、特に限定されず、第1実施形態の第2工程で用いる粒体Bにおいて例示したものを用いることができる。その中でも、金属粒体を好適に用いることができ、ボンド層形成に用いた金属粒体Cと同じ金属が特に好ましい。
(テープ剥離試験)
セロハンテープを基材上に形成した被膜面に貼付して剥がし、被膜が剥がれないかを目視で確認した。剥がれが全くないものを「○」とし、わずかでも剥がれがあるものを「×」とした。
基材上に形成した直径25mmの被膜面に、直径25mmの鉄製丸棒の断面をエポキシ系接着剤にて貼り付けて試験片を作成した。底部中央に直径28mmの貫通孔が設けられた内寸65mm×65mm×70mmの升状の治具を用い、試験片の丸棒部分を下向きにしてこの治具の内側から治具底部の貫通孔に挿通し、基材の丸棒側の表面が治具の底部内面に当接するよう、試験片をセットした。引っ張り試験機(インストロン社製「5583型」)を用い、この治具を介して被膜面に接着させた丸棒を下向きに引いて被膜が剥がれる強度を測定し、この強度を密着強度とした。
(目視試験)
形成されたボンド層及び被膜を目視により観察し、酸化の程度を調べた。コーヒー色となったものを「×」、コーヒー色ではないが、変色しているものを「△」、変色が認められないもの「○」をとした。
表面粗化処理時の作動ガス温度と被膜の密着強度との関係、及び表面粗化処理用粒体の平均粒径と被膜の密着強度との関係を調べるため、上記実施形態1に示した方法に従って被膜を形成し、実施例1〜9及び比較例1〜3の複合材を得て、テープ剥離試験及び密着強度試験を行い評価した。
基材上に円形の開口を有するマスキングをして、以下の条件により直径25mmの円形状の金属被膜を形成した。なお、作動ガスの温度はスプレーガン出口に設置された熱電対により測定されるものである。
〔実施条件〕
・基材材質:アルミニウム(A5051)
・基材寸法:50mm×50mm×5mm
〈表面粗化処理条件〉
・表面粗化処理用粒体:アルミナ(粒度;#220)
・作動ガス:空気
・作動ガス温度:580℃
・作動ガス流量:16.7L/(分・mm2)
・作動ガス圧力:0.63MPa
・スプレーガンスピード:30mm/s
・スプレーガンと基材との距離:10mm
・粒体供給量:35g/分
〈被膜形成条件〉
・被膜形成用粒体:銅粉末 (平均粒子径;40μm)
・作動ガス:空気
・作動ガス温度:550℃
・作動ガス流量:16.7L/(分・mm2)
・作動ガス圧力:0.60MPa
・スプレーガンスピード:60mm/s
・スプレーガンと基材の距離:10mm
・粒体供給量:7g/分
基材材質、表面粗化処理に用いた方法、表面粗化処理時の作動ガス温度、表面粗化処理用アルミナの粒度を表1及び表2の記載の通りとした以外は、実施例1と同様にして基材上に金属被膜を形成し、実施例2〜9及び比較例1〜3の複合材を得、上記試験を行い評価した。ただし、ショットブラストで表面粗化処理を行った際のガス圧力は0.6MPaである。またアルミナ基材は50mm×50mm×1.2mmのものを用いた。実施条件及び得られた被膜の評価結果を表1及び表2に示す。
(実施例10〜15)
被膜形成時作動ガス温度と、被膜の密着強度との関係を調べるため、表3に示す実施条件とした以外は、実施例8と同様にして被膜を形成し、実施例10〜15の複合材を得、テープ剥離試験、密着強度試験及び被膜の目視試験を行い評価した。実施条件及び得られた被膜の評価結果を表3に示す。
(実施例16〜19)
被膜形成時作動ガス圧力及び被膜形成時作動ガス流量と、被膜の密着強度との関係を調べるため、表4に示す実施条件とした以外は、実施例8と同様にして被膜を形成し、実施例16〜19の複合材を得、テープ剥離試験及び密着強度試験を実施して評価した。評価結果を表4に示す。
基材上にまずボンド層を形成してから被膜を形成する場合において、ボンド層形成時の作動ガス温度と、被膜の密着強度との関係を調べるため、以下のような条件で金属被膜を形成し、実施例20〜24の複合材を得、テープ剥離試験、密着強度試験及びボンド層の目視試験を実施して評価した。
上記第2実施形態に示した方法に従って、以下の条件で実施した。金属被膜を形成する基材中央部分を、直径25mmの円形状に残し、他の部分をマスキングしてボンド層形成及び金属被膜形成を行った。
〔実施条件〕
・基材材質:アルミナ
・基材寸法:50mm×50mm×1.2mm
〈ボンド層形成条件〉
・表面粗化処理用粒体:アルミナ(粒度;#220)
・金属粒体:銅粉末(平均粒子径;40μm)
・作動ガス:空気
・作動ガス温度:400℃
・作動ガス流量:16.7L/(分・mm2)
・作動ガス圧力:0.60MPa
・スプレーガンスピード:60mm/s
・スプレーガンと基材の距離:10mm
・粒体供給量:8g/分
〈被膜形成条件〉
・被膜形成用粒体:銅粉末(平均粒子径;40μm)
・作動ガス:空気
・作動ガス温度:500℃
・作動ガス流量:16.7L/(分・mm2)
・作動ガス圧力:0.60MPa
・スプレーガンスピード:60mm/s
・スプレーガンと基材の距離:10mm
・粒体供給量:7g/分
ボンド層形成時作動ガス温度を表5の記載の通りとした他は、実施例20と同様にして金属被膜の形成を行った。結果を表5に示す。
2 スプレーガン
3 第1粒体フィーダー
4 第2粒体フィーダー
5 パウダーホース
6 パウダーホース
7 ガスホース
8 ガスライン
9 ガスライン
10 メインガスライン
11 圧力ガス供給装置
12 制御用コンピューター
13 スプレーブース
X 基材
Y ボンド層
Z 被膜
基材表面にコールドスプレー法により被膜を形成する被膜形成方法であって、
基材表面を加熱する加熱工程と、
加熱工程後又は同時に、基材の表面に作動ガスと共に粗化処理用粒体を超音速で噴き付け、基材表面の粗化処理を行う前処理工程と、
前処理工程後、基材表面にコールドスプレー法により作動ガスと共に被膜形成用粒体を噴き付け、基材表面に被膜を形成する被膜形成工程と
を有し、
上記基材がセラミックであり、上記被膜形成用粒体が金属粒体であり、
上記被膜形成工程における作動ガスの温度が400℃以上900℃以下、流量が8L/(分・mm2)以上30L/(分・mm2)以下、圧力が0.4MPa以上1MPa以下であることを特徴とする。
Claims (10)
- 基材表面にコールドスプレー法により被膜を形成する被膜形成方法であって、
基材表面を加熱する加熱工程と、
加熱工程後又は同時に、基材の表面に作動ガスと共に粗化処理用粒体を超音速で噴き付け、基材表面の粗化処理を行う前処理工程と、
前処理工程後、基材表面にコールドスプレー法により200℃以上900℃以下の作動ガスと共に被膜形成用粒体を噴き付け、基材表面に被膜を形成する被膜形成工程と
を有することを特徴とする被膜形成方法。 - 上記加熱工程を、上記前処理工程における高温の作動ガスの噴き付け、又は上記前処理工程における高温の作動ガスによる粗化処理用粒体の噴き付けにより行う請求項1に記載の被膜形成方法。
- 上記加熱工程を、加熱装置を用いた直接加熱により行う請求項1又は請求項2に記載の被膜形成方法。
- 上記前処理工程における作動ガスの温度が500℃以上900℃以下である請求項1、請求項2又は請求項3に記載の被膜形成方法。
- 上記基材がセラミックであり、上記被膜形成用粒体が金属粒体である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の被膜形成方法。
- 上記被膜形成工程における作動ガスの温度が400℃以上900℃以下、流量が8L/(分・mm2)以上30L/(分・mm2)以下、圧力が0.4MPa以上1MPa以下である請求項5に記載の被膜形成方法。
- 上記被膜形成工程における作動ガスの温度が450℃以上550℃以下、流量が10L/(分・mm2)以上20L/(分・mm2)以下、圧力が0.5MPa以上0.7MPa以下である請求項6に記載の被膜形成方法。
- 上記前処理工程において、粗化処理用粒体と共に金属粒体を噴き付け、基材表面にボンド層を形成する請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の被膜形成方法。
- 上記前処理工程及び被膜形成工程を同一の噴射手段を用いて行う請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の被膜形成方法。
- 基材と、
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の被膜形成方法により基材表面に形成される被膜と
を備える複合材。
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