JP2012025983A - 被膜形成方法及びその方法により形成される複合材 - Google Patents

被膜形成方法及びその方法により形成される複合材 Download PDF

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Abstract

【課題】従来コールドスプレー法による被膜形成が困難であった、基材と被膜形成用の粒体の組合せであっても、良好な密着強度を有する被膜の形成を可能にするコールドスプレー法による被膜形成方法及びその方法により得られる複合材の提供。
【解決手段】基材X表面にコールドスプレー法により被膜を形成する被膜形成方法であって、基材表面を加熱する加熱工程と、加熱工程後又は同時に基材の表面に作動ガスと共に粗化処理用粒体を超音速で噴き付け、基材表面の粗化処理を行う前処理工程と、前処理工程後、基材表面にコールドスプレー法により200℃以上900℃以下の作動ガスと共に被膜形成用粒体を噴き付け、基材表面に被膜を形成する被膜形成工程とを有することを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、コールドスプレー法により基材表面に被膜を形成する方法及びその方法により形成された被膜を備える複合材に関する。
今日、金属やセラミック、有機素材の基材表面に被膜を形成し、基材自体の機能に被膜の機能を付加した複合材料が各種分野で実用化され、その用途を広げている。このような被膜を形成するために、めっき処理、スパッタリング法、蒸着、溶射等の各種方法が用いられているが、中でも設備が簡素であり、低温で粒子を溶射するため被膜の酸化が少ないコールドスプレー法が注目されている。
このようなコールドスプレー法においては、基材と溶射する粒体との組合せに応じ、作動ガスの種類や温度、圧力等の条件を適宜変更して施工が行われる。しかし、基材と溶射する粒体の組合せによっては、これらの作動ガス条件を工夫しても、充分な密着強度を有する被膜を形成することが出来ない場合も多い。
そこで、被膜の密着強度を向上すべく、例えば、基材表面にショットブラストにより粒体を噴射して表面粗化処理を行ってから被膜形成を行う方法(特開2007―246967号公報参照)が提案されている。しかし、この方法ではセラミック等の硬質基材は充分に表面粗化処理できないという不都合がある。また材料基材をヒーターにより背後から加熱しながら溶射を行う方法(特開2008―302317号公報参照)が提案されているが、未だ充分な密着強度を得るには至っていない。
特開2007―246967号公報 特開2008―302317号公報
本発明はこれらの不都合に鑑みてなされたものであり、従来コールドスプレー法による被膜形成が困難であった、基材と被膜形成用粒体の組合せであっても、良好な密着強度を有する被膜を形成可能な被膜形成方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するためになされた発明は、
基材表面にコールドスプレー法により被膜を形成する被膜形成方法であって、
基材表面を加熱する加熱工程と、
加熱工程後又は同時に、基材の表面に作動ガスと共に粗化処理用粒体を超音速で噴き付け、基材表面の粗化処理を行う前処理工程と、
前処理工程後、基材表面にコールドスプレー法により200℃以上900℃以下の作動ガスと共に被膜形成用粒体を噴き付け、基材表面に被膜を形成する被膜形成工程と
を有することを特徴とする。
このように、基材表面を加熱する加熱工程後又はこの加熱工程と同時に、基材表面に作動ガス及び粗化処理用粒体を超音速で噴き付けて基材表面の粗化処理を行うことで、粗化処理が困難であった基材の表面にも充分な粗化処理を行うことができる。このようにして粗化処理された基材表面に、作動ガス温度を200℃以上900℃以下として、コールドスプレー法による被膜形成を行うことにより、従来被膜形成が困難であった、基材と被膜形成用粒体の組合せであっても、良好な密着強度を有する被膜の形成が可能となる。
上記加熱工程を、上記前処理工程における高温の作動ガスの噴き付け、又は上記前処理工程における高温の作動ガスによる粗化処理用粒体の噴き付けにより行うとよい。高温の作動ガスが有する熱又は高温の作動ガスと粗化処理用粒体とが有する熱により基材表面を加熱することで、より簡便に基材の温度を高めることができる。
上記加熱工程を、加熱装置を用いた直接加熱により行うとよい。基材を直接加熱することで、基材の温度をより効率よく高めることができる。
当該被膜形成方法においては、上記前処理工程における作動ガスの温度が500℃以上900℃以下であるとよい。この温度範囲の作動ガスと共に表面粗化処理用粒体を基材表面に噴き付けることにより、より硬質な基材にまで表面の粗化処理を施すことができ、密着強度が高い被膜形成が可能となる。
当該被膜形成方法においては、上記基材としてセラミックを用い、上記被膜形成用粒体として金属粒体を用いることができる。当該被膜形成方法によれば、セラミック基材上に良好な密着強度を有する金属被膜を形成することができる。
当該被膜形成方法においては、上記基材としてセラミックを用い上記被膜形成用粒体として金属粒体を用いる場合には、上記被膜形成工程における作動ガスの温度が400℃以上900℃以下、流量が8L/(分・mm)以上30L/(分・mm)以下、圧力が0.4MPa以上1MPa以下であるとよく、作動ガスの温度が450℃以上550℃以下、流量が10L/(分・mm)以上20L/(分・mm)以下、圧力が0.5MPa以上0.7MPa以下であるとさらによい。このような温度、流量、圧力の作動ガスを用いてコールドスプレー法による被膜形成を行うことにより、セラミック基材表面に、より高い密着強度を有する金属被膜を形成することができる。
上記前処理工程において、粗化処理用粒体と共に金属粒体を噴き付け、基材表面にボンド層を形成するとよい。このようにして基材表面にボンド層を形成し、その上にコールドスプレー法により被膜形成を行うことにより、基材と被膜形成用粒体との組合せが、基材表面の粗化処理だけでは被膜形成が困難な場合であっても、密着強度が良好な被膜を形成することができる。
当該被膜形成方法においては、上記前処理工程及び被膜形成工程を同一の噴射手段を用いて行うとよい。こうすることで、表面の粗化処理から被膜形成までの一連の作業を簡便に行うことができる。また、前処理工程に続けて間断なく被膜形成工程を行うことができるため、前処理工程で被膜形成工程のための予熱を効率的に行うこともでき、より密着強度の高い被膜を形成することができる。
従って、基材と、当該被膜形成方法により基材表面に形成される被膜とを備える複合材は、被膜が高い密着強度を有する。
ここで、「基材表面に被膜を形成する」とは、基材表面に直接被膜を形成する場合のみならず、他の層を介して被膜を形成する場合も含む。「粗化処理用粒体」とは、前処理工程において基材表面に噴き付けて基材表面を粗化処理する粒体をいい、ボンド層を形成する前処理工程においては、金属粒体と共に基材表面に被着してボンド層を形成する粒体をいう。「超音速」とは350m/s以上の速度をいう。また、「ボンド層」とは、基材と被膜に挟まれる中間層であって、被膜を形成するための下地となる層をいう。
以上説明したように、本発明の被膜形成方法によれば、従来被膜を形成することが困難な、基材と被膜形成用粒体の組合せであっても、良好な密着強度を有する被膜を形成することが可能となる。
本発明の第1実施形態及び第2実施形態に係る被膜形成方法に用いるコールドスプレー装置のシステム概要図である。 本発明の第2実施形態に係る被膜形成方法により得られるボンド層及び金属被膜を備える複合材の断面模式図である。
以下適宜図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。当該被膜形成方法は、基材表面を加熱する加熱工程と、加熱工程後又は同時に、基材の表面に作動ガスと共に粗化処理用粒体を超音速で噴き付け、基材表面の粗化処理を行う前処理工程と、前処理工程後、基材表面にコールドスプレー法により200℃以上900℃以下の作動ガスと共に被膜形成用粒体を噴き付け、基材表面に被膜を形成する被膜形成工程とを有する。
この被膜形成方法は、図1に示すようなコールドスプレー装置を用いて好適に実施できる。このコールドスプレー装置を用いて、加熱工程と、前処理工程と、被膜形成工程とを同一の構成によって行うことができる。
図1のコールドスプレー装置は、作動ガスを加熱するヒーター1と、加熱した作動ガスと共に粒体を超音速で噴出するスプレーガン2と、スプレーガン2から噴出する各種粒体を供給する第1粒体フィーダー3及び第2粒体フィーダー4と、ヒーター1に作動ガスを供給するガスホース7と、粒体フィーダー3、4からスプレーガンに粒体を供給するパウダーホース5、6と、粒体フィーダー3、4に作動ガスを供給するガスライン8、9と、ガスホース7、ガスライン8、9に作動ガスを供給するメインガスライン10と、メインガスライン10に作動ガスを供給する圧力ガス供給装置11と、作動ガスの流量や温度、粒体の移送をコントロールする制御用コンピューター12と、スプレーガン2を用いて作業を行うスプレーブース13とを備えている。Xは、被膜を形成する基材である。以下に示す二つの実施形態においては、上述する加熱、前処理、被膜形成の各工程が、すべてこの構成によりスプレーガン2から加熱した作動ガスと共に超音速の粒体を噴出することで行われる。
次に、スプレーガン2から作動ガスと共に粒体を噴出する仕組みを詳説する。粒体フィーダー3、4には、予め、基材及び形成する被膜の種類に応じて各種の表面粗化処理用粒体や被膜形成用粒体、後述するボンド層を形成する場合には金属粒体が充填される。作動ガスは、スプレーガン2に内蔵されるヒーター1により加熱される。この作動ガスは、圧力ガス供給装置11からメインガスライン10及びガスホース7を通じてヒーター1に供給される。一方、圧力ガス供給装置11からメインガスライン10及びガスライン8、9を通じて粒体フィーダー3,4にも作動ガスが供給される。この作動ガスにより粒体がパウダーホース5、6を通じてスプレーガン2に供給される。スプレーガン2に供給された粒体は、スプレーガン2内部で上記作動ガスと合流して加熱され、かつ超音速に加速されて、作動ガスとともにスプレーガン2から噴射される。なおスプレーガン2は、内部に作動ガスを超音速に加速するための狭さく部分を有するが、パウダーホース5、6からスプレーガン2へ供給される粒体は、このノズルの狭さく部分の前後いずれに供給されてもよい。(図1はノズルの狭さく部分の後に粒体を供給する場合を図示している。)
また、このコールドスプレー装置は、各粒体フィーダー3、4からスプレーガン2への粒体の移送及びスプレーガン2による粒体の噴出を制御し、さらに作動ガスの流量や温度の制御をするための制御用コンピューター12を有している。この制御用コンピューター12によって、スプレーガン2からの上記粒体の噴出が制御されている。スプレーガン2は、粒体を基材表面に噴き付けながら、基材表面と垂直な方向に走行する。スプレーガン2にはロボット(図示せず)が取り付けられ、スプレーガン2の走行は、このロボットによりコントロールされる。
<第1実施形態>
まず、本発明の第1実施形態に係る被膜形成方法について説明する。第1実施形態に係る被膜形成方法は、基材表面を加熱する加熱工程と、加熱工程と同時に基材表面の粗化処理を行う前処理工程と、基材表面に被膜を形成する被膜形成工程とからなる。第1実施形態においては、加熱工程と前処理工程とを同時に行うため、これを第1工程とし、被膜形成工程を第2工程として、以下の説明を行う。
(第1工程)
第1工程は、基材を加熱する加熱工程と、基材の表面に作動ガスと共に粗化処理用粒体を超音速で噴き付け基材表面の粗化処理を行う前処理工程とを、同時に行う工程である。以下、具体的に説明する。
図1に示したコールドスプレー装置において、第1粒体フィーダー3に、粗化処理用粒体(以下「粒体A」ともいう。)を充填する。次にヒーター1で作動ガスを加熱し、上述した手順により粒体Aと共に超音速に加速してスプレーガン2から噴射させる。スプレーガン2から超音速で噴射した高温の作動ガスと、この作動ガスにより超音速に加速され、かつ加熱された粒体Aとが、基材X表面に衝突し基材Xの表面を加熱すると同時に粗化処理を行う。
(基材X)
基材Xとして用いる材質は、特に限定されないが、金属、ガラス、セラミック等が挙げられ、ステンレス、鉄、銅、アルミニウム等の金属やアルミナ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ジルコニア等のセラミックが好ましく、その中でもアルミニウム、窒化アルミニウム、アルミナが、特に好ましい。また、基材Xとしてセラミックを用いる場合の板厚は、特に限定されないが、0.7mm以上が好ましく、0.9mm以上が特に好ましい。板厚の上限は用途に応じて決めることができる。
(表面粗化処理用粒体A)
基材表面の粗化処理に使用する粒体Aの材質としては特に限定されないが、例えば、金属、ガラス、セラミック等が挙げられ、クロム等の硬質の金属、及びアルミナ、炭化ケイ素、ジルコニア等のセラミックが好ましく、その中でもアルミナが特に好ましい。
粒体Aの平均粒径は特に限定されないが、45μm以上200μm以下が好ましく、60μm以上100μm以下が特に好ましい。粒体Aの平均粒径が200μmを超えると、基材表面を粗化しすぎるおそれがある。また平均粒径が100μmを超えると、基材がセラミックの薄板である場合、基材が割れる場合がある。また、粒体Aの平均粒径が45μm未満だと基材表面を充分に粗化処理することができないおそれがある。
粒体Aの供給量は、特に限定されないが、より高い密着強度を有する被膜を形成する観点から、20g/分以上50g/分以下が好ましく、30g/分以上40g/分以下が特に好ましい。
第1工程における粒体Aの飛翔速度は特に限定されないが、表面粗化処理を充分に行う観点から、350m/s以上450m/s以下が好ましい。
(作動ガス)
作動ガス温度は特に限定されないが、500℃以上900℃以下が好ましい。作動ガス温度が500℃未満であると、表面粗化処理が不充分となるおそれがある。また作動ガスを900℃を超える温度とすることは、基材Xの酸化や熱傷を発生するので、好ましくない。ただし、基材Xの材質や粒体Aの材質、平均粒径又は形状により、この範囲以外の温度でも好適に採用できる。
作動ガス流量は特に限定されないが、表面粗化処理を充分に行う観点から、8L/(分・mm)以上30L/(分・mm)以下が好ましい。薄いセラミック基材を表面粗化処理する場合には、充分に表面粗化処理を行う観点から10L/(分・mm)以上が好ましく、基材が割れないようにする観点から、20L/(分・mm)以下が好ましい。
作動ガス圧力は特に限定されないが、表面粗化処理を充分に行う観点から、0.4MPa以上1MPa以下が好ましく、薄いセラミック基材を表面粗化処理する場合には充分に表面粗化処理を行う観点から、0.5MPa以上が好ましく、基材が割れないようにする観点から、0.7MPa以下が好ましい。
基材の加熱及び表面粗化処理の作動ガスとして用いる気体は、特に限定されないが、例えば、空気、窒素、ヘリウム又はこれらの混合ガスを用いることができ、空気が経済性、操作性に優れるため、特に好ましい。
(スプレーガンと基材との距離)
スプレーガンと基材との距離は特に限定されないが、より密着強度の高い被膜を形成する観点から7mm以上20mm以下が好ましく、10mm以上15mm以下が特に好ましい。
(スプレーガンスピード)
第1工程におけるスプレーガンの移動スピードは、特に限定されないが、充分な密着強度を有する被膜を形成するために、適切に基材表面の粗化処理を行う観点から、1mm/s以上100mm/s以下が好ましく、20mm/s以上40mm/s以下が好ましい。
(第2工程)
第2工程は、第1工程後、基材表面にコールドスプレー法により作動ガスと共に被膜形成用粒体Bを噴き付け、基材表面に被膜を形成する被膜形成工程である。以下具体的に説明する。
図1に示したコールドスプレー装置において、第2粒体フィーダー4に、被膜形成用粒体(以下、「粒体B」ともいう。)を充填する。上述した手順によりヒーター1で作動ガスを加熱し、粒体Bと共に超音速に加速してスプレーガン2から噴射させる。スプレーガン2から超音速で噴射した高温の作動ガスと、この作動ガスにより超音速に加速され、かつ加熱された粒体Bとが、表面の粗化処理を終えた基材X表面に衝突する。こうして粒体Bが基材Xの表面に密着して積層し、基材Xの表面に被膜を形成する。
第1工程及び第2工程は同一の噴射手段すなわちスプレーガン2を用いて行うとよい。
具体的には、第1工程前に、第2粒体フィーダー4に粒体Bを充填しておく。こうすることにより、第1工程の後、連続して第2工程を行うことができるため、第1工程により基材Xが適温となった状態で第2工程を行うことができ、第2工程で基材Xの予熱を必要とする場合に、効率よく基材Xの予熱を行うことができる。
(被膜形成用粒体B)
被膜形成用粒体Bの材質としては、特に限定されないが、例えば、各種金属及び各種セラミックが挙げられ、金属としては、銅、アルミニウム、チタン、金、銀、ニッケル、亜鉛、鉄、タンタル、ニオブ等の純金属;ニッケルクロム合金、ニッケル基超合金、ステンレス鋼、亜鉛合金、アルミニウム合金、銅合金等の合金が挙げられる。セラミック基材と導電性材料との複合材を形成する場合には、銅、アルミニウム、金、銀、ニッケル、亜鉛又はこれらの二種類以上の合金が好ましく、銅、銀、アルミニウム及びこれらの合金が特に好ましい。
また、セラミック粒体としては凝集粒体が好ましく、凝集酸化チタンが特に好ましい。
被膜形成用粒体Bの平均粒径は特に限定されないが、被膜形成用粒体Bの凝集現象を抑制して、粒体フィーダーからスプレーガン2への粒体Bの供給を安定させる観点から、粒体Bの平均粒径は、5μm以上が好ましく10μm以上が特に好ましい。また、粒体Bの基材表面への衝突の衝撃で基材表面が削られることを抑制する観点から、100μm以下が好ましく、65μm以下が特に好ましい。粒体Bがセラミックの凝集酸化チタンの場合は、凝集粒体の平均粒径は、5μm以上30μm以下が好ましい。
粒体Bの供給量は特に限定されないが、5g/分以上9g/分以下が好ましく、6g/分以上8g/分以下が特に好ましい。
第2工程における作動ガス中の粒体Bの飛翔速度は、特に限定されないが、基材がセラミックの場合で、粒体Bが金属である場合は、400m/s以上500m/s以下が好ましい。
(作動ガス)
作動ガス温度は、200℃以上900℃以下であることが重要である。作動ガス温度をこの範囲の温度とすることで、良好な密着強度を有する被膜を形成できるという本発明の効果が得られる。基材がセラミックで、粒体Bが金属である場合は400℃以上900℃以下が好ましく、粒体Bが銅の場合は450℃以上550℃以下が特に好ましい。作動ガスの温度が、450℃未満だと、銅被膜の場合は密着強度が低下するおそれがある。作動ガス温度が550℃を超えると銅被膜が酸化を起こすおそれがある。特に作動ガス温度が600℃を超えると銅被膜が酸化して着色するため600℃以下が好ましい。ただし、基材の材質や、粒体Bの材質、平均粒径又は形状によりこの範囲以外の温度でも好適に採用することができる。
作動ガス流量は、特に限定されないが、基材がセラミックの場合で、被膜形成用粒体が金属である場合は8L/(分・mm)以上30L/(分・mm)以下が好ましく、10L/(分・mm)以上20L/(分・mm)以下が特に好ましい。
作動ガス圧力は、特に限定されないが、基材がセラミックで、粒体Bが金属である場合は0.4MPa以上1MPa以下が好ましく、0.5MPa以上0.7MPa以下が特に好ましい。
作動ガスとして用いる気体は、特に限定されないが、例えば、空気、窒素、ヘリウム、又はこれらの混合ガスを用いることができ、空気が経済性、操作性に優れるため、特に好ましい。ただし、形成される金属被膜の酸化を抑制する観点からは、窒素やヘリウム等の不活性ガスが好ましく、スプレーガン2から、より高速で粒体を噴出させる観点からは、ヘリウム及びヘリウムと窒素の混合ガスが好ましい。
(スプレーガンと基材との距離)
第2工程におけるスプレーガンと基材との距離は、特に限定されないが、上記第1工程における距離を好適に用いることができる。
(スプレーガンスピード)
第2工程におけるスプレーガンの移動スピードは、特に限定されないが、充分な密着強度を有する被膜を形成する観点から、1mm/s以上120mm/s以下が好ましく、40mm/s以上80mm/s以下が、特に好ましい。
(被膜)
第2工程で形成する被膜の厚さの下限は、特に限定されないが、空隙率を下げる観点からは5μm以上が好ましく、10μm以上が特に好ましい。
被膜の密着強度は特に限定されないが、セラミック基材上に形成される金属被膜である場合は、0.1MPa以上が好ましく、1.0MPa以上が特に好ましい。
(複合材)
第1実施形態により形成される複合材は、良好な密着強度を有するため、工業製品の材料として好適に用いられる。第1実施形態により形成される複合材は、特に限定されないが、セラミック基材に銅、銀、金又はアルミニウムの被膜を形成したものや、アルミニウム、鉄、ステンレス又は銅の基材に酸化チタンや銅、銀、金、アルミニウム、チタン、タンタル、ニオブ、インコネル、ニッケル系合金又はコバルト系合金の被膜を形成したものが挙げられる。
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る被膜形成方法について説明する。第2実施形態に係る被膜形成方法は、基材表面を加熱する加熱工程と、加熱工程と同時に、基材表面に粗化処理用粒体と共に金属粒体(以下「粒体C」ともいう。)を噴き付け、この基材表面に粗化処理を施すと共に、図2に示すようなボンド層を形成する前処理工程と、このボンド層表面に被膜を形成する被膜形成工程とを有する。具体的には、第2実施形態においては、加熱工程と前処理工程を同時に行うため、これを第1工程とし、被膜形成工程を第2工程として以下説明を行う。
ここでボンド層Yとは、図2の複合材において、基材Xと被膜Zとに挟まれる中間層であり、基材Xに対する被膜の密着性をより高めるために形成されるものである。第2実施形態における第1工程では、表面粗化処理用粒体Aは、基材表面の加熱及び粗化処理を行うと共に基材X表面に密着して積層する。すなわち、ボンド層Yは、粒体Aと金属粒体Cとが共に基材に積層することで形成される。
(第1工程)
第2実施形態における第1工程は、基材を加熱する加熱工程と、基材の表面に作動ガスと共に粒体A及び粒体Cを超音速で噴き付けて基材表面にボンド層を形成する前処理工程とを同時に行う工程である。以下具体的に説明する。
図1のコールドスプレー装置において、第1粒体フィーダー3に粒体A及び粒体Cを混合して充填し、第2粒体フィーダー4に粒体Bを充填する。上述した手順によりヒーター1で作動ガスを加熱し、粒体A及び粒体Cと共に超音速に加速してスプレーガン2から噴射させる。スプレーガン2から超音速で噴射した高温の作動ガスと、この作動ガスにより超音速に加速され、かつ加熱された粒体A及び粒体Cとが、基材X表面に衝突する。こうして粒体Aと粒体Cとが基材Xの表面に密着して積層し、基材Xの表面にボンド層を形成する。
このボンド層形成用の粒体Aと粒体Cとを混合する方法は、特に限定されないが、上記のように粒体フィーダー3、4に充填する前に混合してもよいし、第1粒体フィーダー3に粒体A及び粒体Cのうち一の粒体を充填し、第2粒体フィーダー4に他の粒体を充填しておいて、これらを別々にスプレーガン2に供給してスプレーガン2内部で混合することもできる。このように、粒体A及び粒体Cを別々にスプレーガン2に供給することで、より簡便に粒体の混合を行うことができる。
(基材X)
第2実施形態で用いる基材Xは、第1実施形態で例示した基材Xを好適に用いることができる。
(粒体A)
第1工程のボンド層を形成する粒体Aの材質としては、特に限定されないが、第1実施形態における粒体Aを好適に用いることができる。金属ではクロムが好ましく、セラミックでは、アルミナ、炭化ケイ素、ジルコニア等が好ましく、充分な表面粗化処理を行う観点及び入手の容易さや経済性の観点からアルミナが特に好ましい。
粒体Aの平均粒径は特に限定されないが、15μm以上65μm以下が好ましい。平均粒径が15μm未満だと、充分に基材表面を粗化処理できず、ボンド層を形成できないおそれがあり、平均粒径が65μmを超えると、基材表面への衝突の衝撃で基材表面や新しく形成されたボンド層を削るおそれがある。また、基材がセラミックの薄板である場合、粒体Aの平均粒径は15μm以上50μm以下が好ましい。その平均粒径が50μmを超えると、セラミック基材が割れるおそれがある。
(金属粒体C)
第1工程に用いる金属粒体Cの材質としては特に限定されないが、銅、アルミニウム、銀、ニッケル又はボンド層の表面に形成される被膜に用いる金属粒子と同じ金属が好ましい。
粒体Cの平均粒径は特に限定されないが、10μm以上65μm以下が好ましく、15μm以上50μm以下が特に好ましい。10μm未満では粒体Cが凝集現象を起こし粒体フィーダーからの供給が難しくなるおそれがあり、また65μmを超えるとが粒体Cが基材表面への衝突の衝撃で基材表面や新しく形成されたボンド層を削るおそれがある。
ボンド層を形成する粒体A及び粒体Cの合計供給量は特に限定されず、6g/分以上10g/分以下が好ましく、7g/分以上9g/分以下が特に好ましい。
ボンド層を形成する際の作動ガス中の粒体A及び粒体Cの飛翔速度は、特に限定されないが、350m/s以上400m/s以下が好ましい。
(作動ガス)
第1工程における作動ガス温度は特に限定されないが、基材Xがセラミックである場合は、400℃以上550℃以下が好ましい。400℃未満だと、セラミックとの間に充分な密着強度を有するボンド層を形成することが困難となるおそれがある。また作動ガス温度が550℃を超えると、ボンド層を形成する金属の酸化が顕著になる場合がある。粒体Cが銅の場合、作動ガス温度が600℃以上になるとボンド層被膜が酸化してコーヒー色になる。ただし、基材Xの材質や粒体Cの材質、平均粒径又は形状により、この範囲以外の温度を好適に採用することができる。
作動ガスとして用いる気体は、特に限定されないが、例えば、空気、窒素、ヘリウム、又はこれらの混合ガスを用いることができ、空気が経済性、操作性に優れるため、特に好ましい。ただし、形成されるボンド層中の金属の酸化を抑制する観点からは、窒素やヘリウム等の不活性ガスが好ましく、スプレーガン2から、より高速で粒体を噴出させる観点からは、ヘリウム及びヘリウムと窒素の混合ガスが好ましい。
(スプレーガンと基材との距離)
スプレーガン2と基材Xとの距離は、特に限定されず、第1実施形態の第1工程におけるスプレーガンと基材との距離を、好適に用いることができる。
(スプレーガンスピード)
第1工程におけるスプレーガンの移動スピードは、特に限定されないが、充分な密着強度を有する被膜を形成するために適切なボンド層を形成する観点から、5mm/s以上100mm/s以下が好ましく、20mm/s以上50mm/s以下が特に好ましい。
このボンド層Y全体の体積に対する粒体Aの体積比は特に限定されないが、基材X及び被膜Zとの密着強度を高める観点及び被膜形成後の粒体Aの流出を防止する観点から、50%以下が好ましく、30%以下が特に好ましい。粒体Aは粒体Cに比べ、噴射した粒体がボンド層に残留しにくいので、基材Xに噴射する粒体Aの体積の、噴射する粒体全体(粒体Aと粒体Cとの体積の合計)に対する割合は、40%以上50%以下が好ましい。
(第2工程)
第1工程でボンド層を形成した基材Xに被膜を形成する第2工程においては、作動ガス温度は200℃以上900℃以下である。それ以外の条件としては、第1実施形態の第2工程における各種条件を好適に採用することができる。
(粒体B)
第2工程で使用する粒体Bの材質としては、特に限定されず、第1実施形態の第2工程で用いる粒体Bにおいて例示したものを用いることができる。その中でも、金属粒体を好適に用いることができ、ボンド層形成に用いた金属粒体Cと同じ金属が特に好ましい。
また、第2工程で使用する粒体Bの平均粒径としては、第1実施形態の第2工程における粒体Bの平均粒径を好適に用いることができる。
以下に実施例を示し、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例及びその比較例として得られた被膜は、下記の各試験を以下の手順で行い評価をした。
<評価方法>
(テープ剥離試験)
セロハンテープを基材上に形成した被膜面に貼付して剥がし、被膜が剥がれないかを目視で確認した。剥がれが全くないものを「○」とし、わずかでも剥がれがあるものを「×」とした。
(密着強度試験)
基材上に形成した直径25mmの被膜面に、直径25mmの鉄製丸棒の断面をエポキシ系接着剤にて貼り付けて試験片を作成した。底部中央に直径28mmの貫通孔が設けられた内寸65mm×65mm×70mmの升状の治具を用い、試験片の丸棒部分を下向きにしてこの治具の内側から治具底部の貫通孔に挿通し、基材の丸棒側の表面が治具の底部内面に当接するよう、試験片をセットした。引っ張り試験機(インストロン社製「5583型」)を用い、この治具を介して被膜面に接着させた丸棒を下向きに引いて被膜が剥がれる強度を測定し、この強度を密着強度とした。
(目視試験)
形成されたボンド層及び被膜を目視により観察し、酸化の程度を調べた。コーヒー色となったものを「×」、コーヒー色ではないが、変色しているものを「△」、変色が認められないもの「○」をとした。
<被膜形成1>
表面粗化処理時の作動ガス温度と被膜の密着強度との関係、及び表面粗化処理用粒体の平均粒径と被膜の密着強度との関係を調べるため、上記実施形態1に示した方法に従って被膜を形成し、実施例1〜9及び比較例1〜3の複合材を得て、テープ剥離試験及び密着強度試験を行い評価した。
(実施例1)
基材上に円形の開口を有するマスキングをして、以下の条件により直径25mmの円形状の金属被膜を形成した。なお、作動ガスの温度はスプレーガン出口に設置された熱電対により測定されるものである。
〔実施条件〕
・基材材質:アルミニウム(A5051)
・基材寸法:50mm×50mm×5mm
〈表面粗化処理条件〉
・表面粗化処理用粒体:アルミナ(粒度;#220)
・作動ガス:空気
・作動ガス温度:580℃
・作動ガス流量:16.7L/(分・mm
・作動ガス圧力:0.63MPa
・スプレーガンスピード:30mm/s
・スプレーガンと基材との距離:10mm
・粒体供給量:35g/分
〈被膜形成条件〉
・被膜形成用粒体:銅粉末 (平均粒子径;40μm)
・作動ガス:空気
・作動ガス温度:550℃
・作動ガス流量:16.7L/(分・mm
・作動ガス圧力:0.60MPa
・スプレーガンスピード:60mm/s
・スプレーガンと基材の距離:10mm
・粒体供給量:7g/分
(実施例2〜9及び比較例1〜3)
基材材質、表面粗化処理に用いた方法、表面粗化処理時の作動ガス温度、表面粗化処理用アルミナの粒度を表1及び表2の記載の通りとした以外は、実施例1と同様にして基材上に金属被膜を形成し、実施例2〜9及び比較例1〜3の複合材を得、上記試験を行い評価した。ただし、ショットブラストで表面粗化処理を行った際のガス圧力は0.6MPaである。またアルミナ基材は50mm×50mm×1.2mmのものを用いた。実施条件及び得られた被膜の評価結果を表1及び表2に示す。
Figure 2012025983
Figure 2012025983
表1及び表2の結果から明らかなように、実施例1〜9で得られた被膜はいずれも良好な密着強度を有していることが分かる。コールドスプレー装置のスプレーガンを用いて表面粗化処理を行った場合、作動ガスを高温にして表面粗化処理を行った方が、常温で表面粗化処理を行った場合より、金属被膜の密着強度が高まることが分かった。また表2の結果から明らかなように、薄いセラミック基材の場合は、ショットブラストを用いて、粒度の粗い表面粗化処理用粒体により表面粗化処理を行うと、基材が割れてしまうことが分かった。
<被膜形成2>
(実施例10〜15)
被膜形成時作動ガス温度と、被膜の密着強度との関係を調べるため、表3に示す実施条件とした以外は、実施例8と同様にして被膜を形成し、実施例10〜15の複合材を得、テープ剥離試験、密着強度試験及び被膜の目視試験を行い評価した。実施条件及び得られた被膜の評価結果を表3に示す。
Figure 2012025983
表3の結果から明らかなように、セラミック基材に金属被膜を形成する場合は、被膜形成時作動ガス温度が400℃以上、より好ましくは450℃以上とすることによりさらに高い密着強度を得ることができることが分かった。また、銅被膜の場合550℃を超えると酸化が顕著となり、600℃を超えるとその色が大きく変わることが分かった。
<被膜形成3>
(実施例16〜19)
被膜形成時作動ガス圧力及び被膜形成時作動ガス流量と、被膜の密着強度との関係を調べるため、表4に示す実施条件とした以外は、実施例8と同様にして被膜を形成し、実施例16〜19の複合材を得、テープ剥離試験及び密着強度試験を実施して評価した。評価結果を表4に示す。
Figure 2012025983
表4の結果から明らかなように、セラミック基材に金属被膜を形成する場合は、被膜形成時作動ガス圧を0.4MPa以上、スプレーガン出口におけるガス流量を8L/(分・mm)以上とすることにより、良好な密着強度を有する被膜を形成できることが分かった。また、セラミック基材に金属被膜を形成する場合、被膜形成時作動ガス圧を0.5MPa以上とすることにより、より高い密着強度が得られることが分かった。さらに、薄いセラミック基材の場合においては、被膜形成時作動ガス圧を0.7MPa以下とし、スプレーガン出口におけるガス流量を20L/(分・mm)以下とすることによって基材が割れないようできることが分かった。
<被膜形成4>
基材上にまずボンド層を形成してから被膜を形成する場合において、ボンド層形成時の作動ガス温度と、被膜の密着強度との関係を調べるため、以下のような条件で金属被膜を形成し、実施例20〜24の複合材を得、テープ剥離試験、密着強度試験及びボンド層の目視試験を実施して評価した。
(実施例20)
上記第2実施形態に示した方法に従って、以下の条件で実施した。金属被膜を形成する基材中央部分を、直径25mmの円形状に残し、他の部分をマスキングしてボンド層形成及び金属被膜形成を行った。
〔実施条件〕
・基材材質:アルミナ
・基材寸法:50mm×50mm×1.2mm
〈ボンド層形成条件〉
・表面粗化処理用粒体:アルミナ(粒度;#220)
・金属粒体:銅粉末(平均粒子径;40μm)
・作動ガス:空気
・作動ガス温度:400℃
・作動ガス流量:16.7L/(分・mm
・作動ガス圧力:0.60MPa
・スプレーガンスピード:60mm/s
・スプレーガンと基材の距離:10mm
・粒体供給量:8g/分
〈被膜形成条件〉
・被膜形成用粒体:銅粉末(平均粒子径;40μm)
・作動ガス:空気
・作動ガス温度:500℃
・作動ガス流量:16.7L/(分・mm
・作動ガス圧力:0.60MPa
・スプレーガンスピード:60mm/s
・スプレーガンと基材の距離:10mm
・粒体供給量:7g/分
(実施例21〜実施例24)
ボンド層形成時作動ガス温度を表5の記載の通りとした他は、実施例20と同様にして金属被膜の形成を行った。結果を表5に示す。
Figure 2012025983
表5の結果から明らかなように、セラミック基材にボンド層を形成した上で、金属被膜を形成する場合、ボンド層形成時作動ガス温度を400℃以上550℃以下とすると、高い密着強度を得られることが分かった。また、ボンド層形成時作動ガス温度を、550℃以下とすると、ボンド層を形成する金属被膜の酸化を抑制することができ、600℃以下とすると銅がコーヒー色になることを抑制できることが分かった。
なお、本発明の被膜形成方法は、上記第1、第2実施形態に限定されるものではない。例えば、加熱工程後に前処理工程を行うことで、前処理工程の開始から基材を高温状態にすることができ、基材表面の粗化処理を効率よく行うことができる。また、加熱工程を赤外線ヒーターや電熱ヒーター等の加熱装置により直接基材を加熱することにより行うこともできる。前処理工程における表面粗化処理をショットブラスト等の装置を用いて行うことも可能である。また、レーザー装置により加熱を行いながら前処理工程の表面粗化処理を行うこともできる。また、加熱工程と前処理工程の表面粗化処理をレーザー装置によって行うこともできる。
本発明の被膜形成方法によれば、上述のように表面粗化処理が従来困難であった基材にも表面粗化処理を行うことができるので、各種分野における複合材をコールドスプレー法で製造する場合に好適に用いることができる。
1 ヒーター
2 スプレーガン
3 第1粒体フィーダー
4 第2粒体フィーダー
5 パウダーホース
6 パウダーホース
7 ガスホース
8 ガスライン
9 ガスライン
10 メインガスライン
11 圧力ガス供給装置
12 制御用コンピューター
13 スプレーブース
X 基材
Y ボンド層
Z 被膜
上記課題を解決するためになされた発明は、
基材表面にコールドスプレー法により被膜を形成する被膜形成方法であって、
基材表面を加熱する加熱工程と、
加熱工程後又は同時に、基材の表面に作動ガスと共に粗化処理用粒体を超音速で噴き付け、基材表面の粗化処理を行う前処理工程と、
前処理工程後、基材表面にコールドスプレー法により作動ガスと共に被膜形成用粒体を噴き付け、基材表面に被膜を形成する被膜形成工程と
を有し、
上記基材がセラミックであり、上記被膜形成用粒体が金属粒体であり、
上記被膜形成工程における作動ガスの温度が400℃以上900℃以下、流量が8L/(分・mm)以上30L/(分・mm)以下、圧力が0.4MPa以上1MPa以下であることを特徴とする。
このように、基材表面を加熱する加熱工程後又はこの加熱工程と同時に、基材表面に作動ガス及び粗化処理用粒体を超音速で噴き付けて基材表面の粗化処理を行うことで、粗化処理が困難であった基材の表面にも充分な粗化処理を行うことができる。このようにして粗化処理された基材表面に、作動ガス温度を400℃以上900℃以下として、コールドスプレー法による被膜形成を行うことにより、従来被膜形成が困難であった、基材と被膜形成用粒体の組合せであっても、良好な密着強度を有する被膜の形成が可能となる。
当該被膜形成方法においては、上記基材としてセラミックを用い、上記被膜形成用粒体として金属粒体を用いる。当該被膜形成方法によれば、セラミック基材上に良好な密着強度を有する金属被膜を形成することができる。
当該被膜形成方法においては、上記被膜形成工程における作動ガスの温度が400℃以上900℃以下、流量が8L/(分・mm)以上30L/(分・mm)以下、圧力が0.4MPa以上1MPa以下である。作動ガスの温度が450℃以上550℃以下、流量が10L/(分・mm)以上20L/(分・mm)以下、圧力が0.5MPa以上0.7MPa以下であるとさらによい。このような温度、流量、圧力の作動ガスを用いてコールドスプレー法による被膜形成を行うことにより、セラミック基材表面に、より高い密着強度を有する金属被膜を形成することができる。

Claims (10)

  1. 基材表面にコールドスプレー法により被膜を形成する被膜形成方法であって、
    基材表面を加熱する加熱工程と、
    加熱工程後又は同時に、基材の表面に作動ガスと共に粗化処理用粒体を超音速で噴き付け、基材表面の粗化処理を行う前処理工程と、
    前処理工程後、基材表面にコールドスプレー法により200℃以上900℃以下の作動ガスと共に被膜形成用粒体を噴き付け、基材表面に被膜を形成する被膜形成工程と
    を有することを特徴とする被膜形成方法。
  2. 上記加熱工程を、上記前処理工程における高温の作動ガスの噴き付け、又は上記前処理工程における高温の作動ガスによる粗化処理用粒体の噴き付けにより行う請求項1に記載の被膜形成方法。
  3. 上記加熱工程を、加熱装置を用いた直接加熱により行う請求項1又は請求項2に記載の被膜形成方法。
  4. 上記前処理工程における作動ガスの温度が500℃以上900℃以下である請求項1、請求項2又は請求項3に記載の被膜形成方法。
  5. 上記基材がセラミックであり、上記被膜形成用粒体が金属粒体である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の被膜形成方法。
  6. 上記被膜形成工程における作動ガスの温度が400℃以上900℃以下、流量が8L/(分・mm)以上30L/(分・mm)以下、圧力が0.4MPa以上1MPa以下である請求項5に記載の被膜形成方法。
  7. 上記被膜形成工程における作動ガスの温度が450℃以上550℃以下、流量が10L/(分・mm)以上20L/(分・mm)以下、圧力が0.5MPa以上0.7MPa以下である請求項6に記載の被膜形成方法。
  8. 上記前処理工程において、粗化処理用粒体と共に金属粒体を噴き付け、基材表面にボンド層を形成する請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の被膜形成方法。
  9. 上記前処理工程及び被膜形成工程を同一の噴射手段を用いて行う請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の被膜形成方法。
  10. 基材と、
    請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の被膜形成方法により基材表面に形成される被膜と
    を備える複合材。
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