JP2013047359A - 金属製品の皮膜形成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】低温で粉末粒子を塑性変形させながら基材に衝突させて緻密な皮膜を形成できるというコールドスプレー法の利点を生かし、高速で形成可能であるという利点から0.5mm以上の厚膜を形成できると共に、更にHIP処理を施すことで、基材への拡散接合によって皮膜自体の緻密化を図り、皮膜機能性と生産性が高い皮膜形成方法を提供する。
【解決手段】加熱したガスの音速以上の速度の噴流に金属又は金属とセラミックスの混合粉末を混合して噴出させ、基材の表面に衝突させることにより金属粉末粒子を塑性変形させ、かつ金属粉末粒子を溶融させることなく、基材の表面にコーティング層を形成する工程を繰返すことにより厚さ0.5mm以上の皮膜を形成し、皮膜に対してカプセリングすることなくHIP処理を施すことにより皮膜中の気孔を消滅させると共に、緻密度、密着性、硬度等の機械的特性を制御する。
【選択図】図4

Description

本発明は、圧延用ロール等の金属製品の皮膜形成方法に関し、特に金属或いは金属とセラミックスの混合粉末を皮膜材料に用いて、溶融させることなく、粉末粒子を加熱ガスと一緒に音速以上の高速度で基材表面に衝突させることにより、基材表面に厚膜の皮膜を形成し、更にこの皮膜に熱間静水圧プレス(HIP)処理を施して、皮膜の緻密度、密着性、硬度等を制御した金属製品の皮膜形成方法に関する。
産業機器の分野では従来、所定機能を要求される表層部のみに必要な特性を持つ材料を接合したり、表面に皮膜を形成して製造された部品等が使用されている。皮膜の厚さや特性、製品の形状に応じて種々の皮膜形成技術が利用されている。特に0.5mm以上の厚さが要求されるような製品では、古くから肉盛溶接や溶射が広く利用されており、最近では、所定の特性を持つ粉末材料を製品の表面にHIP法(熱間静水圧プレス法)を用いて形成する方法も出現している。
肉盛溶接法は金属の表面に所望特性を付与するための溶接手法であり、要求特性は耐摩耗性、耐食性、耐熱性などである。肉盛溶接法は、部材全体を耐摩耗性、耐食性、耐熱性などの特性を持った金属で製作すると高価になり、かつ部材全体をこのような特性を持った金属で製作するのが技術的に困難な場合や、製品稼動時の負荷によって摩耗した部材を補修する場合などに使用される。肉盛溶接法は、基材の表面に皮膜形成しようとする材料をフィラー材料とし、基材と通常ワイヤー形状のフィラー材を溶融させつつ肉盛していく方法であり、溶接手法にはエレクトロンビーム溶接、レーザ溶接を含めた種々の溶接法が適用可能である。しかしながら、主としてタングステン電極と基材との間でアルゴン等の不活性雰囲気を形成しながらアークを発生させ、基材と通常ワイヤー形状のフィラー材を溶融させるTIG(タングステン・イナートガス)溶接法が利用されている。
肉盛溶接法の技術的な問題としては、入熱量が大きく基材自体も溶融凝固するため、組織自体が鋳造組織を呈してしまうこと、溶接周囲部分に熱の影響が及ぶこと、更に気孔の残留、溶接金属の溶融・凝固に伴う割れや、大きな在留応力が発生することなどが挙げられる。
一方、溶射法は、加熱することで溶融又はそれに近い状態にした粒子を、基材表面に吹き付けて皮膜を形成する表面処理法である。溶射法は、材料の範囲が広く、吹き付ける材料(溶射材)に金属、セラミックス、プラスチック、サーメットなどが用いられ、また、基材にも金属、セラミックス、プラスチック、木など多くの材料に適用できるという利点を有している。
溶射法の技術的な問題点としては、溶射粒子が運ぶ熱量が小さいため、基材への入熱は小さく、熱的影響は比較的少ないものの、皮膜自体がポーラスな状態であり、基材と溶射粒子の密着強度が溶接などと比べて弱いことである。このため、通常はアンダーカットやサンドブラストなどの前処理によって基材表面を荒面化しておき、基材と凝固した溶射材との機械的な噛み合わせを十分に確保することで、密着強度の向上を図っている。
また、最近、低温で金属等の粉体原料を用いた低温高速の皮膜形成方法としてコールドスプレー法(CS法)が開発され、例えば特開2010-201415号公報(特許文献1)に示されるようなコールドスプレーガンを用いて対象物(基材)の表面に皮膜を形成するコールドスプレーコーティング手法が提案されている。即ち、図1に示すように、ヘリウム等の不活性ガスと粉体化皮膜材料を基材122に対して噴射するスプレーガン102と、スプレーガン102に粉体化皮膜材料を供給する粉体供給機104と、レーザのような熱源108と、全体を制御する制御ユニット106とを具備している。基材122に面して配置されたスプレーガン102は、粉体ライン114を介して粉体供給機104に接続され、ガスライン116を介してガス加熱器112に接続されている。スプレーガン102内の温度及び圧力が計測され、センサライン118を介して制御ユニット106に入力される。スプレーガン102はガス加熱器112から加圧ガスを供給され、粉体供給機104から粉体化皮膜材料を供給され、粉体化皮膜材料はスプレーガン102内部でガス流中に導入される。膨張ガス及び粉体化皮膜材料の流れが、スプレーガン102内のノズルの拡大領域を経て噴射口から噴射される。粉体化皮膜材料が処理対象物である基材122に衝突すると、粉体化皮膜材料内の粒体が平坦化及び変形されて、基材122上に皮膜を形成する。
このようなコールドスプレー法は、粉体化皮膜材料を溶融させることなく、不活性ガスと一緒に超音速流で固相状態のまま基材に衝突させて皮膜を形成するという特徴を持っており、粉末材料及び基材の温度上昇が少なく、変質、熱膨張の影響等も少ないという利点を有している。
しかしながら、コールドスプレー法は、皮膜材料が僅かではあるが気孔を含み、信頼性の点で十分でなく、低温成膜であるがために基材と皮膜材料との密着性が不十分、つまり機械的に密着しているだけで冶金学的な十分な結合は期待できないという問題がある。
一方、HIP法による表面の皮膜形成技術は、特に耐摩耗性の粉末材料を皮膜形成しようとする基材の表面に配置し、皮膜形成したい面全体を気密性のシート状の材料を用いて溶接などによって密封して覆い、内部を真空脱気してからHIP装置内に装入して、処理材料の再結晶化温度以上の高温下で高温高圧のガスにより圧縮して拡散接合させ(HIP処理)、このHIP処理後、カプセルを機械加工などにより除去して皮膜形成した製品を製造する方法である。
例えば圧延用ロールの製造例を図2に示して説明する。先ず図2(A)に示すように、円柱状の軸芯金1と、この軸芯金1に同心円状に配置した円筒状カプセル2との間の空間に金属粉体3を充填させて密封(カプセリング)した後、ピンチング4により金属粉体3の空間を真空状態にしてHIP装置に装入してHIP処理を行い、図2(B)に示すように金属粉体3を拡散接合させ、軸芯金1の表面に皮膜3Aを形成する。その後、カプセル2を除去して圧延用ロールを製品とする。
しかし、このHIP法は、皮膜形成したい面全体を気密性のシート状の材料を用いて溶接などによってカプセリングする必要があると共に、HIP処理後はカプセルを除去しなければならないという問題がある。
また、溶射法の一種であるプラズマ粉体溶接法とHIP法の組合せにより、皮膜層を2層で構成するものとして、例えば特開平7−268648号公報(特許文献2)に示される方法が知られている。かかるプラズマ粉体溶接法は、移行性プラズマアーク(Plasma Transferred Arc)を利用する溶接法であり、電気アークによって溶接トーチ内にアルゴンガスのプラズマを発生させ、ここに粉末を供給して溶融し、更にプラズマアークにより母材表面に溶接を行う方法である。
しかしながら、このプラズマ粉体溶接法は1層目の材料で皮膜形成した後、HIP法により2層目の材料で皮膜形成するが、2層目をHIP法で接合する場合には、緻密な層になっていない粉体そのままではHIP法で皮膜形成することは不可能であるため、結局HIP処理と同様にカプセルの装填及び除去が必要となる。
特開2010−201415号公報 特開平7−268648号公報
本発明は上述のような事情よりなされたものであり、本発明は、入熱量が大きく基材自体も溶融凝固するために、組織が鋳造組織を呈するほか、周囲の熱影響部の発生、気孔の残留、溶接金属の溶融・凝固に伴う割れや在留応力が発生するという肉盛溶接の問題点を解決し、皮膜自体がポーラスな状態であり、基材と溶射粒子の密着強度が溶接などと比べて弱いという溶射法の問題点を解決する皮膜形成方法を提供することを目的とする。また、本発明は、皮膜材料は僅かではあるが気孔を含み、信頼性の点で十分でなく、低温成膜であるがために基材と皮膜材料との密着性が不十分であるというコールドスプレー法の問題点を解決すると共に、HIP処理で問題となるカプセリング及びカプセルの除去を必要としない皮膜形成方法を提供することを目的とする。
即ち、本発明の目的は、低温で粉末粒子を塑性変形させながら基材に衝突させて緻密な皮膜を形成できるというコールドスプレー法の利点を生かし、高速で形成可能であるという利点から0.5mm以上の厚膜を形成できると共に、更にHIP処理を施すことで、基材への拡散接合によって皮膜自体の緻密化を図り、密着性が良く、硬度も高く、皮膜機能性と生産性が高い皮膜形成方法を提供することにある。
本発明は金属製品の皮膜形成方法に関し、本発明の上記目的は、加熱したガスの音速以上の速度の噴流に金属又は金属とセラミックスの混合粉末を混合して噴出させ、基材の表面に衝突させることにより金属粉末粒子を塑性変形させ、かつ前記金属粉末粒子を溶融させることなく、前記基材の表面にコーティング層を形成する工程を繰返すことにより厚さ0.5mm以上の皮膜を形成し、前記皮膜に対してカプセリングすることなくHIP処理を施すことにより前記皮膜中の気孔を消滅させると共に、緻密度、密着性、硬度等の機械的特性を制御することにより達成される。
また、本発明の上記目的は、前記ガスがヘリウム、窒素、アルゴンのいずれかであることにより、或いは前記金属又は金属とセラミックスの混合粉末の粒径が25〜45μm以下であるあることにより、或いは前記コーティング層が2種類以上の金属材料で成り、第1の粉末材料を噴出して第1層のコーティング層を形成した後、第2の粉末材料として金属又は金属とセラミックスの混合粉末を噴出して第2層のコーティング層を形成するあることにより、或いは前記第1層のコーティング層がHIP処理により軟化して塑性変形し易く、前記基材と前記第2層のコーティング層の熱膨張係数の差による熱応力を吸収する機能を有していることにより、或いは前記基材が板状であって、製品がスパッタリング又はイオンプレーティング用のターゲットであることにより、或いは前記基材が円柱状の鋼であって、前記粉末が耐蝕性、耐摩耗性のNi、Co基の金属粉末又はステンレス鋼粉末若しくは炭化物や酸化物セラミックスとの混合粉末であることにより、より効果的に達成される。
本発明によれば、従来製造が困難であった厚肉かつ緻密な皮膜層を有する製品の製造が可能となり、従来このような厚肉の皮膜層を形成するために用いられていたHIP法、つまり粉末を焼結しつつ基材に拡散接合する方法と比較しても、HIP処理前におけるカプセリングという煩雑な作業及びHIP処理後のカプセル除去作業が不要になるなど、工業生産の技術として、最良の手法を提供することができる。結果として、例えば円筒状のロールは勿論、冷却用の銅製のバッキングプレートが貼り合わされた板状の製品の製造等でも従来法より少ない工程で、かつ安価に製造することが可能となるなど厚肉の皮膜層を持つ製品の工業生産及び発展に寄与する点が極めて大きい。
コールドスプレー法の一例を示す構成図である。 HIP処理を説明するための図である。 本発明に用いるスプレーガンの一例を示す断面構造図である。 本発明の一例を示す工程図である。 コールドスプレー前の基材表面部の一例を模式的に示す断面構造図である。 第1層コールドスプレー後の基材表面部の一例を模式的に示す断面構造図である。 第2層コールドスプレー後の基材表面部の一例を模式的に示す断面構造図である。 HIP処理後(第1層と第2層の材料が同一の場合)の基材表面部の一例を模式的に示す断面構造図である。 本発明の一実施例を示す工程図である。
本発明は、コールドスプレー法の利点を生かしながらHIP処理の利点のみを利用し、コールドスプレー法とHIP法とを有効に融合させた皮膜生成方法である。即ち、本発明は、低温で粉末粒子を塑性変形させながら基材(対象物)の表面に衝突させて緻密な皮膜を形成できるという利点と、高速で皮膜形成可能であるという利点とから、先ずコールドスプレー法により0.5mm以上の厚さの皮膜を生成し、更にコールドスプレー法により形成された皮膜が緻密でガス透過性を有しない特性から、そのままHIP処理を施すことで、カプセリングすることなく皮膜自体の緻密化を図り、基材への拡散接合を行うことにより密着性が良く、硬度も高い接合性の良い皮膜を形成している。
本発明は、前段工程では図3に示すようなコールドスプレーガン10を使用したコールドスプレー法を用いて、第1のガス(例えば速度が速いHe)による第1層皮膜を形成すると共に、その後第2のガスによって最終厚さまでの第2層皮膜を形成し、更に後段工程にHIP処理を施して基材に最終的な厚さの、緻密度、密着性、硬度等の機械的性能が良い皮膜を形成するようになっている。勿論、第1層皮膜の形成のみでHIP処理を行っても効果は得られるが、1層のみでは厚さが0.1mm以下となり、実用化には2層以上の皮膜が必須となる。特に第1層の密着性が重視されるので、多層成膜の形成が望ましい。
また、皮膜材料とガスの組合せには制限はない。第1層は基材との十分な密着性を得るために、粒子の衝突速度が速くなるヘリウムガスを使用し、その後は安価な窒素ガスを使用するというのが合理的である。なお、第1層と第2層の材料は同一であっても構わない。
コールドスプレーガン10は、その開口部14が皮膜を形成するための基材表面に対向するように配置され、コールドスプレーガン10若しくは基材が相対的に移動し、面の皮膜形成が可能な構造になっている。コールドスプレーガン10は、粉体ラインを介して粉体供給機に接続されると共に、ガスラインを介してガス加熱器に接続されており、ガス加熱器からは少なくとも2種類のガスを切替えて供給できるようになっている。コールドスプレーガン10内の温度及び圧力はセンサ(図示せず)で計測され、計測されたデータがセンサライン若しくは無線で制御ユニットに送信されてフィードバックされ、コールドスプレーガン10内は所定温度及び所定圧力に保持されるようになっている。コールドスプレーガン10は、ガス加熱器を介してガス入口11から加圧ガスを受け(圧力4〜5Mpa、温度800〜1000℃)、粒径45μm以下の金属又は金属とセラミックスの混合粉末の粉体化皮膜材料が粉体ラインを介して粉体入口12からコールドスプレーガン10に加圧下で導入される。導入された粉体化皮膜材料はコールドスプレーガン10内部でガス流中に混合され、収束領域及び拡張領域を有するノズル13を経て先端の開口部14から音速以上の高速度(500〜1200 m/sec)で噴出される。ノズル13の先端部はドーム状のハウジングで覆われており、導入された加圧ガスの一部はガス出口16から排出され、所定圧力を保持するようになっている。また、ハウジング15内には基材を加熱して皮膜材料を準備するレーザ装置17が設けられていると共に、皮膜領域を加熱し、皮膜領域をアニーリングするレーザ装置18が設けられている。レーザ装置17及び18の出力容量は、104W/cm2〜105W/cm2である。
皮膜となる粉体化皮膜材料の粉体は、粒径45μm以下(325メッシュアンダー)、好ましくは粒径25μm以下の金属或いは金属とセラミックスを混合した金属粉末(粉体)であり、金属としては皮膜形成しようとする材料、つまりAl, Ni, Cu,
Ag, Co, Ta等の純金属、ステンレススティールやインコネル718, インコネル625などのNi基合金、ステライト6等のコバルト基合金などの合金が適用可能である。また、セラミックスとしては、アルミナやジルコニア等の酸化物、タングステンカーバイドや炭化ケイ素等の炭化物、ホウ化クロムや炭化ホウ素などのホウ化物、或いは窒化物などが使用可能である。これらの材料で成る粉体化皮膜材料の粉体をコールドスプレーガン10の粉末入口12から供給して導入する。
また、ガス加熱器により、キャリアガスとなるヘリウム、窒素或いはアルゴンガス等の不活性ガスを、4〜5MPaの圧力でガス入口11からコールドスプレーガン10内に供給する一方、メインのキャリアとなるガスはノズル13の中央部から先端部の開口部14から噴出し、皮膜を形成しようとする基材の表面に吹き付けられる。粉体化皮膜材料及びガスの流量と圧力は、それぞれの供給回路に設けられた流量調整弁や圧力調整弁により、所定の条件となるように制御ユニットによって制御される。
このようなコールドスプレーガン10を用いたコールドスプレー法による皮膜形成、その後に続くHIP処理について、図4の工程図を参照して本発明の皮膜形成方法を説明する。
先ず皮膜を形成する基材(対象物)の表面を脱脂処理、洗浄して皮膜形成の初期準備を行う(ステップS1)。このときの基材表面の断面構造は、例えば図5に示すようになっている。その後、制御ユニットによってガス加熱器及び粉体供給機を起動すると共に、コールドスプレーガン10を起動する。粉体供給機内の粉体化皮膜材料の粒径を25〜45μm以下に調整し(ステップS2)、レーザ装置17及び18で基材表面を加熱し、導入されたガスと共に粉体化皮膜材料を開口部14から噴出させて基材表面に音速以上の高速で衝突させる。粉体化皮膜材料としての金属粉末粒子が音速以上の高速で基材表面に衝突することにより、その衝撃で粒子自体が塑性変形(平坦化及び変形)すると同時に基材の表面も一部塑性変形し、酸化皮膜等が除去されて接合されると共に、開気孔がない程度にまで高密度化し、基材上に0.01mm〜0.3mmの第1層皮膜を形成する(ステップS3)。この状態の断面構造は、例えば図6のようになっている。第1層皮膜の形成後、ガス加熱器のガスを別のガスに切替え、上述と同様な方法により最終の厚さまで第2皮膜を形成する(ステップS4)。この状態の断面構造は、例えば図7に示すようになっている。
このように、コールドスプレー法により粉末状の皮膜材料を基材表面に高密度層を最終厚さまで形成した後、そのままHIP装置に装入してHIP処理を行う(ステップS5)。HIP処理後の断面構造は、例えば図8に示すようになる。HIP処理を適用する場合には、皮膜材料と基材表面を拡散接合する必要があり、これを実現するためには、前述のように、皮膜材料の再結晶温度以上の高温下で、通常は両者の界面をHIP処理時の高圧ガス雰囲気と遮断し、ガス圧力が拡散接合のための加圧力とすることが必要である。HIP処理により皮膜自体が更に緻密化されて無気孔の状態になると同時に、基材材料に拡散接合されて一体化する。
HIP処理での再結晶温度は材料によって異なり、純金属の場合は融点Tm[℃]に対して、再結晶温度(Tr[℃])は、例えばTr=(Tm+273)x(0.4 〜0.5) というような式で推定される。Ni基の合金(Niが主)であれば、Tm=1455℃であるので、再結晶温度Trは691〜864℃程度、チタンではTm=1675℃なので、Tr=779〜974℃となる。ちなみに銅では、Tm=1083℃でTr=542〜678となる。また、HIP処理でのガスは、ガスとの反応防止のために完全に不活性なアルゴンを使用する。温度、圧力は材料によって異なる。温度は効果を得るため、必要条件が再結晶温度以上になるが、溶体化処理を兼ねる場合には、これより更に高い温度になる。Ni基のスーパーアロイの場合の溶体化処理温度は1100〜1200℃であるので、Ni基のスーパーアロイ(インコネル718やインコネル625)のHIP処理温度は1150〜1185℃で、圧力は50〜150MPaである。
HIP処理では、少なくとも両者の界面の空間が真空状態の保持されることが必須で、このために両者を組合わせた状態で薄肉の鋼製の容器の中に真空封入するか、或いは界面の外周全てを溶接などの手法により封着することが必要である。しかしながら、本発明で使用するコールドスプレー法により形成された皮膜層は、前述のように気孔が極めて少なく、開気孔がない状態にまで緻密化されそれ自体が気密性を有しているので、高圧ガスを透過せず、従来行っていたようなカプセリング処理は不要となり、大幅な工程短縮及びコストダウンが可能となる。
かかるHIP処理の後、研削等の仕上げ加工を行って金属製品の皮膜形成が終了となる(ステップS6)。
なお、皮膜材料によっては、所定の強度等の特性を引き出すためには、更に熱処理を施す必要があり、例えばインコネル600系の材料は固溶強化現象を利用して強度を出すため、合金元素を高温下にて拡散させて固溶させる必要がある。HIP処理は溶体化処理温度とほぼ同じとなるため、HIP処理はこの役割も果たすこととなる。また、インコネル700系の皮膜材料では、溶体化処理後に時効析出処理を行って、強化化合物を粒内に析出させる必要があり、この場合には、HIP処理での温度圧力保持後の冷却を急速に行って固溶状態を維持し、500〜600℃の温度に長時間保持して、時効析出処理を行うことが必要となる。
また、芯材が鋼の場合、HIP処理での保持後の冷却速度が速いと、鋼のβ変体点通過時の体積変化により、皮膜層に割れを生じる場合がある。このような場合、保持温度から600℃程度の温度までは100℃/h程度の冷却速度で温度を下げることが望まれる。
本発明を実施する上での最良の形態は、加熱した音速以上の速度のヘリウム、窒素又はアルゴンガス噴流に金属若しくは金属とセラミックスの混合粉末を混合して噴出させ、基材の表面に衝突させて金属粉末粒子を塑性変形させ、かつ粉末粒子を溶融させることなく、基材表面にコーティング層を形成する操作を繰返すことにより厚さ0.5mm以上の皮膜を形成し、更にHIP(熱間静水圧加圧)処理を施すことにより皮膜中の気孔を消滅させると共に、緻密度を上げ、密着性、硬度等の機械的特性を制御することである。
更に、コーティング層が2種類以上の金属材料で構成され、第1層目の粉末材料を第1のガスで噴射してコーティング層を形成した後、第2層目の材料として金属又は金属とセラミックス等の混合粉末を第2のガスで噴射して2層以上のコーティング層を形成したのち、HIP処理を施すことにより皮膜中の気孔を消滅させると共に、硬度等の機械的特性を制御することができる。この場合、HIP処理時に高温に曝されるため、室温に戻した時に発生する基材と皮膜層の熱膨張の差により発生する熱応力を緩和するために、 第1層目のコーティング層が、HIP処理温度で軟化して塑性変化し易く、基材と第2層のコーティング層の熱膨張係数の差による熱応力を吸収する機能を有した材料であることが最も好ましい。
なお、対象製品の形状についても適したものがあり、基材が板状のスパッタリング或いはイオンプレーティング用のターゲット、或いは基材が円柱状の鋼であって、皮膜材料の粉末が耐蝕性或いは耐摩耗性のNi、Co基の金属粉末、或いはステンレス鋼粉末若しくは炭化物や酸化物セラミックスとの混合粉末から成る圧延等に使用される圧延用ロール、亜鉛メッキ鋼板製造用ロールなどへの適用が可能である。
以下に、本発明の実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例)
基材として外形220mm、長さ600mmのSCM435材を用い、皮膜材料にインコネル625粉末(粒径25〜45μm以下)を準備した。最終製品は亜鉛メッキ鋼板製造用ロールであり、本実施例による製造工程を図9に示す。SCM435材の外表面を切削加工して表面租度Rmax=2.5μmに仕上げ加工した後、ジクロールメタンを用いて脱脂処理を行い、図3に示したスプレーガン10で第1層目としてインコネル625粉末をHeガスをキャリアに用いて、噴射速度約1200m/sec、送り速度30m/secでコーティング処理を3パス行った。インコネル625層の厚さは0.2mmとなった。次いで、窒素ガスをキャリアガスとして同様の速度で噴射して最終的に厚さ15mmの第2層目のインコネル625層を形成してロール素材を作製した。インコネル625粉末の歩留まりは約90%であった。形成されたインコネル625層の相対密度は約94%で、残存している気孔は閉気孔状態になっていた。
次いで、このロール素材をHIP装置に入れ、装置内部を真空引きしてアルゴンガスで装置内部をガス置換し、約7MPaのアルゴンガスを注入した。次いで、HIP装置のヒータに通電して加熱すると同時に圧縮機を駆動して加圧して、最終的に1150℃、100MPaで3時間保持した。加熱電力を下げて降温・減圧して大気圧としてから、インコネル625層の組織を観察して結果、残存気孔はほとんど認められなかった。
なお、インコネル625粉末の歩留まりは約85%であった。そのまま、表面を研削加工して圧延用のロールとして使用し、圧延された板材の表面租度が十分であり、かつ十分な耐久性を有していることを確認した。
(比較例)
実施例と同様の材料を準備して、粉体プラズマ溶接法によりインコネル625層を形成した。ここで、粉体プラズマ溶接法とは、移行性プラズマアーク(Plasma Transferred Arc)を利用した溶接法であり、電気アークによって溶接トーチ内にアルゴンガスのプラズマを発生させ、ここに粉末を供給して溶融し、更にプラズマアークにより母材表面に溶接を行う方法である。形成されたインコネル625層はポーラスであり、そのまま熱間静水圧プレス法での緻密化は困難と推定された。このため、図2に示されたのと同様に、厚さ3mmの軟鋼薄板を用いてカプセリングを行い、SCM435芯材とインコネル層の外表面を完全に気密に覆った後、HIP処理装置に入れて実施例と同様の条件にてHIP処理を行った。室温、大気圧に戻してからカプセル材として用いた軟鋼材を穿削して除去した後、研削加工してロール材に仕上げた。カプセルが鼓状に変形していることもあり、インコネル625の加工除去量が多く、歩留まりは約60%であった。ロールとしての性能はほぼ同じであったが、全工程の時間は実施例の2倍、かつコストは3倍となった。
1 軸芯金
2 カプセル
3 金属粉体
4 ピンチング
10 コールドスプレーガン
11 ガス入口
12 粉体入口

Claims (7)

  1. 加熱したガスの音速以上の速度の噴流に金属又は金属とセラミックスの混合粉末を混合して噴出させ、基材の表面に衝突させることにより金属粉末粒子を塑性変形させ、かつ前記金属粉末粒子を溶融させることなく、前記基材の表面にコーティング層を形成する工程を繰返すことにより厚さ0.5mm以上の皮膜を形成し、前記皮膜に対してカプセリングすることなくHIP処理を施すことにより前記皮膜中の気孔を消滅させると共に、緻密度、密着性、硬度等の機械的特性を制御することを特徴とする金属製品の皮膜形成方法。
  2. 前記ガスがヘリウム、窒素、アルゴンのいずれかである請求項1に記載の金属製品の皮膜形成方法。
  3. 前記金属又は金属とセラミックスの混合粉末の粒径が25〜45μm以下である請求項1又は2に記載の金属製品の皮膜形成方法。
  4. 前記コーティング層が2種類以上の金属材料で成り、第1の粉末材料を噴出して第1層のコーティング層を形成した後、第2の粉末材料として金属又は金属とセラミックスの混合粉末を噴出して第2層のコーティング層を形成する請求項1乃至3のいずれかに記載の金属製品の皮膜形成方法。
  5. 前記第1層のコーティング層がHIP処理により軟化して塑性変形し易く、前記基材と前記第2層のコーティング層の熱膨張係数の差による熱応力を吸収する機能を有している請求項4に記載の金属製品の皮膜形成方法。
  6. 前記基材が板状であって、製品がスパッタリング又はイオンプレーティング用のターゲットである請求項1乃至5のいずれかに記載の金属製品の皮膜形成方法。
  7. 前記基材が円柱状の鋼であって、前記粉末が耐蝕性、耐摩耗性のNi、Co基の金属粉末又はステンレス鋼粉末若しくは炭化物や酸化物セラミックスとの混合粉末である請求項1乃至5のいずれかに記載の金属製品の皮膜形成方法。
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